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L  文 化 変 容 モ デ ル と 交 換 ・コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン 理 論

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(1)

接触と変容の諸相 : フィジーにおけるキリスト教 受容の過程と実態 : 文化変容再考

著者 橋本 和也

雑誌名 国立民族学博物館研究報告別冊

巻 006

ページ 407‑428

発行年 1989‑02‑20

URL http://doi.org/10.15021/00003743

(2)

橋本    フ ィジ ー にお け る キ リス ト教 受 容 の過 程 と実 態

フ ィ ジ ー に お け る キ リス ト教 受 容 の 過 程 と実 態        

        橋  本  和  也*

1.は じ め に

H.文 化 変 容 モ デ ル と 交 換 ・コ ミ ュ ニ ケ イ シ     ョ ン理 論

1.交 換 モ ー ド:生 成 モ デ ル

2.交 換 モ ー ド批 判 と コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン

      ・コー ド理 論 3.文 化変 容 モ デ ル

皿.土 着 教会 ・文 脈 化 理 論 の限 界

IV.多 元 的 ア プ ロー チ に向 けて 一 フ ィジ ー     ・キ リス ト教 の 実 際:都 市 と村 落 一

1.は

  フ ィジ ー にキ リス ト教 が 上 陸 して か ら150年 が経 った 。 今 で は土 着 の フ ィジ ー人 の 全 て が 宗 派 は違 って も キ リス ト教 徒 で あ り,彼 らの生 活 の 主 要 な 部 分 を キ リス ト教活 動 が 占め て い る。 また キ リス ト教 信 仰 が大 きな 精神 的な 支 え に な って お り,現 代 の フ

ィジ ー文 化 を語 る に は キ リス ト教 を抜 きに して語 れ な いの が 現 状 で あ る。

  これ ま で の フ ィジ ー文 化 研究 に お い て は,個 別 的 な事 象 研究 は な さ れ て も,様 々な 要 素 を 含 む 現実 を その まま 総 体 と して 理解 しよ う とい う試 み は な され て い な い。 特 に 宗 教 研究 に 関 して は現 代 の 研究 で あ りな が ら,わ ざ わ ざ キ リス ト教 的要 素 を排 除 して 伝 統 的 要 素 だ け を拾 い 出す もの で あ った り,キ リス ト教 研 究 と言 う と宣 教 の歴 史 の 研 究 で あ った りす る。 それ ぞ れ の 研究 の 価 値 を過 少 評 価 す るつ も りは な い が,現 実 の フ ィジ ー人 の世 界 観 か らはか け離 れ て い る と言 わ ざ るを得 な い。 彼 らは キ リス ト教 徒 で はあ って も,西 洋 か ら直輸 入 した まま の キ リス ト教 を踏 襲 して は いな い。 伝 統 的信 仰 と言 わ れ る もの も見 か け られ るが,そ れ は残 存 な どで は決 して な く,ま さ に現在 の信 仰 体系 の 中 に組 み込 ま れ て い る生 きた信 仰 で あ る。彼 らの 病気 観 に は信 仰 が密 接 に関 係 し,そ れ に近 代 医 学Q科 学 的合 理性 に基 づ く診 断等 もか か わ り,複 雑 な様 相 を 呈 し て い る。 価 値観 も一 様 で は な く,フ ィ ジ ー的 伝統 の尊 重 が声 高 に現 在 叫 ばれ て い る背 景 には,都 市化 ・高 学 歴化 等 に よ る価 値 観 の 大 きな変 化 があ る。世 界 観 ・病 気 観 ・価

*静 岡県立大学短期大学部

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国立民族学博物館研究報告  別 冊6号 値 観 とい った現 実 認 識 に かか わ る領 域 に お い て は,今 まで の0面 的 な 分析 方 法 で は も は や 全体 像 を描 き上 げ る こ とはで きな い 。

  現 実 は絶 え ざ る文 化 変容 の過 程 の 中 にあ る1)。 そ の変 化 の過 程 を歴 史 を 遡 って追 う 研 究 で は,方 法 論 的性格 にお い て その 範 囲 が 自ず と限 定 され,先 に あ げた 全 体的 な現 実 認 識 の諸 領 域 を すべ て視 野 に いれ た 研究 は 望 み 難 い。 現 在 必要 とされ るの は,変 容 の 過 程 の研 究 と とも に,現 時 点 に お け る相 互 に密 接 に関 係 しつつ 複 雑 にか らみ合 った 多 元 的世 界 の研 究 で あ る。

  本論 文 で は現 在 の フ ィ ジーの 多 元 的 世 界 を 理解 す る上 で キ ー ポ ィ ン トとな る キ リス ト教 研究 を 中心 に据 え て,文 化 変 容 の 理論 的 な解 明 と,そ の限 界 を ま ず呈 示 す る。 そ の 上 で単 な る文 化 変容 の過 程 研究 で は と らえ られ ぬ,複 雑 な要 素 が 関 係 し合 って 存在 す る現 実 め 多 元 的世 界 の 共 時 的 分析 の必 要 性 を提示 した い。 最 初 に,交 換 理論 と コ ミ

ュニ ケ イ シ ョ ン ・コ ー ド理論 か ら文 化変 容 モ デル を構 築 した い。 そ の モ デル に照 ら し 合 わせ て宣 教 師 学 の分 野 で 現 在 活発 に論 じ られ て い る教 会 の 「土 着 化」,ま た は ゴス ペル の 「文 脈化 」 理 論 の 限界 性 を指 摘 し,最 後 に現 時 点 にお け る共 時 的分析 によ る多 元 的世 界 観解 明 の今 日的 必要 性 とそ の有 効 性 を こ こで 改 めて示 した い と思 う。

L  文 化 変 容 モ デ ル と 交 換 ・コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン 理 論

  現 在 フ ィ ジ ー で は 「キ リス ト教 文 化 一 フ ィ ジ ー文 化 」 と い う等 式 が 成 立 し う る 。 そ の フ ィ ジ ー社 会 に お け る キ リス ト教 受 容 に よ る 文 化 変 容 の 過 程 を,交 換 ・ コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン理 論 か ら 分 析 す る の が こ の 節 の 目 的 で あ る 。

  キ リス ト教 上 陸 時 点 で は,宣 教 師 側 と 地 元 側 と は,全 く文 化 的 コ ン テ キ ス トを 異 に す る,何 の 交 渉 も な い,相 互 に 独 立 した 集 団 で あ っ た 。 一 人 の 宣 教 師 が 首 長 に 迎 え ら れ,村 で の 滞 在 を 許 さ れ た と して も,キ リス ト教 が 認 め ら れ た 訳 で は な か った 。 最 初 の 両 者 の 関 係 は,保 護 者 と 被 保 護 者(一 首 長 の 見 栄 を 満 足 さ せ る存 在)と の 関 係 で あ る 。 そ こ に は 西 洋 の 珍 し い 品 物 と地 元 の 食 料 と の 互 酬 的 交 換 に基 づ く相 互 作 用 に よ っ て 成 立 す る 「取 り引 きモ ー ド(transaction  mode)」 が 見 られ る[BARTH  1971:3‑

5]。 両 者 の 意 図 は 全 く異 な っ て お り,首 長 側 は 異 な る 容 姿 で 異 な る 品 物 を 持 つ 人 間 を 保 護 下 に 置 く こ と に 誇 り を 感 じ,宣 教 師 は こ れ を キ リス ト教 布 教 の た め の 第 一 歩 だ と 信 じて い た 。 こ の 段 階 は 西 洋 人 漂 流 者(beachcomber)が 村 に 受 け 入 れ ら れ て い た 状 況 と さ ほ ど 変 わ らな い 。

1)「 文 化 変 容 とは,相 異 な る文 化 を持 つ 個人 の集 団 が,直 接 接触 を し,ど ち らか ま たは両 者 の も との文 化 の パ タ ー ンの変 化 を ともな う もの ・… 」tREDFIELD  1936:149‑152]。

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橋 本    フ ィジ ーに お け る キ リス ト教 受 容 の過 程 と実 態

  キ リス ト教 は 次 の 段 階 で 問 題 と な る 。 ト ン ガ 王 が キ リス ト教 を フ ィ ジ ー に 勧 め た の は1835年 で あ り,こ の 年 が キ リス ト教 伝 来 の 年 と さ れ て い る 。 し か し1830年 に は 既 に 2入 の タ ヒ チ 人 がOneata島(Lau諸 島)に キ リ ス ト教 教 師 と し て 首 長Takaiの 庇 護 下 に入 った 。 彼 ら は6年 間 島 に居 た に も か か わ ら ず,フ ィ ジ ー 語 で も,Lau諸 島 の 人 々 が 理 解 し う る ト ンガ 語 で も訓 戒 ・祈 禧 を せ ず,結 局 は 数 人 の 信 者 しか 得 る こ と が で き な か っ た 。 宣 教 師 が2人 に 言 語 の 学 習 を 命 じた が,習 得 不 十 分 で 布 教 も 不 本 意 に終 っ た[CALVERT  l983:9]。

  取 引 きモ ー ドに 基 づ く交 換 は,両 者 間 の 言 語 的 コ ミュ ニ ケ イ シ ョ ン が 存 在 しな い 段 階 で も成 立 す る 。 地 元 の 首 長 側 は こ の 段 階 で 満 足 して お り,そ れ 以 上 の こ と は 望 ん で                                                                     ラ ケ ム バ い な か った 。 そ れ に反 し宣 教 師 側 に は そ れ は 単 な る始 ま り に しか 過 ぎな い 。Lakeba 島 に 宣 教 師 カ ル ヴ ァ ー トが 着 い た の は1839年 で[CALVERT  I983:90‑91],現 地 の 人 々 に つ い て も言 語 も よ く知 ら ず 独 り だ け 取 り残 さ れ た 。 フ ィ ジ ー 人 教 師 が 既 に こ の 島 の4村 と近 く の4島 に お り,立 派 な 礼 拝 堂 も ト ン ガ 人 に よ っ て 建 て られ て い た 。 しか し彼 は 更 に 信 者 を 獲 得 す べ く独 り で 異 教 徒 の 中 に 住 み 込 ん だ 。 始 め は 台 所 か ら鉄 鍋 や フ ラ イ パ ン を 始 め,薬 罐2つ が 消 え た 。 葦 の 壁 が 切 ら れ て 着 物 も50点 持 ち去 られ た 。 そ れ を 首 長 が 知 っ て 怒 り,盗 み に か か わ った 数 人 の 子 供 達 の 指 が 切 ら れ た 。

  そ こ で カ ル ヴ ァ ー トは 首 長 と村 人 達 に言 葉 と行 動 で 愛 情 を 示 せ ば,人 々 の 役 に 立 つ だ け で な く,自 分 自 身 の 不 安 や 心 配 を 取 り除 く こ と が で き る と考 え,人 々 の 家 を 訪 ね た 。 こ れ は 言 語 の 習 得 に 大 い に 役 立 っ た 。 カ ル ヴ ァ ー トへ の 偏 見 が な くな り,人 々 は 彼 に親 切 に な っ た 。

  キ リス ト教 が 問 題 と な る の は,両 者 の 間 に 交 換 が 行 な わ れ,か つ 宣 教 師 や 西 洋 人 が も た ら し た 品 物(鉄 製 ナ イ フ,薬 品 等)が 手 渡 さ れ た 時 点 か ら で あ る 。 あ る 首 長 が 宣 教 師 に 「真 実 だ 。 白 人 の 国 か ら来 る も の は 皆 真 実 だ 。 マ ス ヶ ッ ト銃 と火 薬 は 真 実 だ 。 だ か ら あ な た の 宗 教 も真 実 に 違 い な い 」[SA肌INs  l983:519]と 言 った 。 こ の 場 合

        ンディナ      マ  ナ      マ  ナ

の 真 実(dina}と は,神 の 力(mana)の 現 わ れ で あ る 。 神 力 が 不 足 し て 失 敗 す る こ と は

    ラス

嘘(lasu)で あ る 。 既 に 拙 論[橋 本  1986:..で 述 べ た が,  L・au諸 島Lakeba島 首 長 くTui  Nayau)の 娘 の 病 気 の 原 因 を,土 地 の 司 祭 は 神 々 の 建 物 の 崩 壊 に 求 め,建 物 を 直 した が,一 向 に 良 くな ら な か っ た 。 彼 女 は 宣 教 師 の 投 薬 に よ っ て 治 癒 した 。 娘 は 以 後 熱 心 な キ リ ス ト教 徒 に な った[CALvERT  l983:111‑113]。 ま た 今 ま で 神 (kalou)だ と言 わ れ た 鳥 が,そ の 不 死 性 を 疑 っ た 若 い キ リス ト教 徒 の 首 長 に 矢 を 射 か

け ら れ,殺 さ れ た[CALVERT  l983:56ユ

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国立民族学博物館研究報告  別冊6号

1.交 換 モ ー ド  生 成 モ デ ル

  キ リス ト教 受 容 の 過 程 は,土 着 の 文 化 に 生 き る 人 々 に と って も,西 欧 キ リ ス ト教 文 化 を 身 に つ け た 宣 教 師 に と っ て も,認 識 の 変 化 を 伴 な う絶 え ざ る イ ン タ ラ ク シ ョ ン の 連 続 で あ っ た 。

  F・ バ ル トは̀̀Models  of Social  Organization"[1966]で,既 存 の 社 会 規 則(経 験 的 形 態)モ デ ル で は な く,そ の 規 則 を 生 み 出 す 生 成 モ デ ル の 作 製 を 目 指 した 。 彼 は 「複 雑 で 包 括 的 な 行 為 の パ タ ー ン(一 役 割)は,権 利 の よ り 単 純 な 特 定 化(一 地 位)か ら生 じ る と す る モ デ ル を 構 築 で き よ う。 … …(地 位 の 結 び つ き を 統 治 す る)規 則 は 最 も個 人 的 な 関 係 が 持 つ 取 り引 き 的 性 質 の 中 に 見 つ け られ よ う 」[BARTH  l971:31と 考 え る 。 彼 は 互 酬 性 の 観 念 が こ の よ う な 社 会 関 係 に と っ て の 基 本 で あ り,取 り引 き(trans‑

action)の 分 析 概 念 の 中 心 で あ る と 考 え,「 取 り 引 き とは,互 酬 性 に よ って 体 系 的 に 支 配 さ れ た 相 互 作 用 の 連 続 で あ る と言 え よ う 」[BARTH  1971:4]と 言 う。 そ れ に対 立 す る もの と し て は,取 り 引 き 関 係 の 根 本 的 否 定 と な る 利 他 主 義 に基 づ く 「統 合 (illcorporatiol1)関 係 」 を 措 定 して い る 。

  F・ バ ル トは ノ ル ウ ェ ーの ニ シ ン 漁 を 事 例 と して 扱 い,船 長 ・網 の ボ ス ・船 員 達 の 役 割 と相 互 の 関 係 を,契 約 に 由 来 す る と考 え て い る[BARTH  l 971:9]。 取 り 引 き の 概 念 は,基 本 的 な 社 会 的 過 程 と して 取 り 出 さ れ る 。 こ れ は 体 系 的 に 適 用 さ れ る と,単 純 だ が 有 効 な 道 具 とな る 。 対 象 を,何 か 価 値 あ る も の を 獲 得 し よ う と社 会 的 行 為 に 従 事 す る 人 間 に戦 略 的 に 限 定 す る 。 個 々 の 行 為 者 が,取 り引 き に お い て 最 善 の コ ー ス を 取 ろ う とす る と,一 定 の 状 況 下 で は0定 の 傾 向 を 持 つ 行 動 を す る 。 船 長 は 口 数 少 な く, 自 信 ・知 識 ・経 験 の 豊 富 さ を 匂 わ せ て 権 威 を 示 し,網 の ボ ス は 逆 に ジ ョ ー ク を と ば し, ギ ャ ン ブ ル を し,自 分 の 行 動 の 結 果 を 恐 れ な い 人 物 を 演 じ る。 船 員 は い つ で も 積 極 的 に 熱 意 を 持 っ て 仕 事 に か か れ る と い う 姿 勢 を 示 す2)。2ケ 月 間 だ け の 契 約 だ が,こ リス ク の 大 き な ニ シ ン漁 で は 契 約 に 基 づ い た 役 割 分 担 が 典 型 的 に 行 な わ れ た 場 合 に は, 大 漁 が 保 証 さ れ,エ リー ト ・ク ル ー と し て 評 判 を 得 る 。

  次 に 彼 は 同 一 文 化 内 で の 統 合(integratiOn)の 過 程 を 扱 う 。 取 り 引 き の 概 念 は 社 会 的 過 程 の 生 成 モ デ ル を 提 供 す る だ け で な く,文 化 内 の 別 々 の 価 値 を 一 体 化 す る 過 程 に お け る 統 合 の モ デ ル を も提 供 す る。

A鴛=±bB  A:x≦y  B:x≧y

2)こ こ に は ゴ フ マ ン のunder  co血 血unication,  over  communication,役 割 の 観 念[BARTH   l971:3]やimpression  managementの 働 き[BARTH  l971:8]が 見 ら れ る 。

(6)

橋 本    フ ィジー に お け る キ リス ト教受 容 の過 程 と実 態

  上 の 交 換 式 に お い て 当 事 者 はAB共 に 得 た も の は 失 っ た も の と等 価 か,ま た は 失 っ た も の よ り多 い と考 え て い る 。 こ の 式 が 成 立 す る の は,(1)価 値 観 が 相 違 す る た め 相 互 に 利 益 が あ る と 考 え られ る か,(2)偽 の 情 報 に よ っ て 欺 さ れ て い る か,(3)情 況 ・時 間 的 に 別 々 の 必 要 性 を 持 っ て い た の か,な ど が 考 え られ る[BARTH  1971:13]。 取 り 引 き 関 係 が 続 く 中 で,価 値 評 価 は 次 第 に 「正 さ れ 」,任 意 性 も少 な く な る と い う フ ィ ー ド バ ッ ク が 行 な わ れ る[BARTH  l971:15]。 こ の よ う な 取 り 引 き は 一 領 域 内 で は 自 由 に な さ れ る が,他 領 域 と の 交 換 は,特 に貴 重 品 の 場 合 に は,容 易 に は な さ れ な い 。 こ れ は 価 値 の 一 体 化 の 度 合 い の 問 題 で あ り,一 領 域 内 の 方 が そ の 度 合 い が 大 き い こ と に                                                     アントルプルナ ル

原 因 が求 め られ る。 そ こ に両 領域 間 に橋 を か け る媒 介 者 た る事 業 家 の 出 現 が 見 ら れ る。 彼 の利 益 は両 領 域 間 の 価 値評 価 に相 異 が あ る こ とに 由来 す る。 事 業 家 は 文 化 的 ジ レ ンマ の存在 を前 提 に して始 め て 両 者 間 の通 訳 ・媒 介者 と な る[BARTH  l971:17

‑20ユ

  事 業 家 が媒 介 しな けれ ば成 立 しな い領域 間 の取 り引 き が交 換 の 一方 の極 で あ るな ら ば,他 方 の極 には 一 領域 内で,出 自 と 目的 と利害 を 同 じにす る 集 団 内で の相 互作 用

  イ ン コ  ポ レイ シ ョン

(=統 合 的 交 換)が あ る3)。

  F・ バル トの生 成 モ デ ル で は,一 領 域 内 の二 つ の グル ープ 間 の 取 り引 きがま ず 問 題 に され,価 値 観 ・役割 りに基づ く行 動 パ タ ー ンを二 つ の グル ープ と も既 に了 解 して い た 。文 化 変 容 の 問 題 との 関係 で 言 え ば,両 者 の間 で いか に価 値 に関 す る情 報 が交 換 さ れ,新 たな 価 値 を 両者 が いか に 自 己の文 化 内 に と り込 ん で解 釈 す る か と い う問題 にな

る。 そ れ はむ しろ価 値 観 が異 な る領域 間 の 交 換 に 近 い 状況 と考 え られ るが,決 定 的 な 違 い は文 化 接 触 当初 は媒 介 者 た る存 在 が ま だ介 在 しな い状 態 にあ る こ とで あ る。

  バル トの モデ ル の積 極 的 な 意 味 は,既 に成 立 して い る形 態 を 分類 す る よ り も ① 形 態 の生 成 過 程 を 発 見 し記 述 す る こ とに よ り,形 態 の 説 明 が 可 能 に な る。② 形 態 の変 化 を,形 態 生 成 の 基本 的 な変数 の変 化 と して 描 け る。 ③ 実験 と方 法 論 的 に等 価 な もの と して比 較 分析 を 容易 にす る[BARTH  1971:vユ 。 以 上 の 三 点 に生 成 モ デル の 特徴 が あ

                                                              インタラクション

る と彼 は言 う。 しか し相 異 な る文 化 を持 つ 二 つ の グル ープ が か か わ る相 互行 為 の場 合 に は,バ ル トの モ デル で は十 分 に対応 で きな い ので,変 更 を加 え る必要 が あ る。 そ の 時 には二 領 域 間 の 交換 と,一 つ の 形 態 が他 の形 態 へ と変 換 す る こ とが想 定 され る文 化 変容 の過 程 を も射程 内 に入 れ たモ デ ル とな る可 能 性 が あ る。

3)こ れ は サ ー リンズの 互 酬性 の3タ イプ との関 係 で言 え ば,前 者 は均 衡 的互 酬 性,後 者 は一 般   的互 酬性 と比 較 しえ る。

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国立民族学博物館研究報 告  別 冊6号

2.  交 換 モ ー ド批 判 と コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン ・ コ0ド 理 論

  こ こで はR・ ペ イ ン の2つ の 論 文 を 中 心 に 扱 う。 彼 は バ ル トの 前 論 文 を 批 判 しつ つ                                       インコ ポレイション

交 換 理論 を よ り完 備 した もの に した。 次 に統 合 的交 換 の モー ドに強調 点 を置 いて,バ ー ンス タ イ ンの コ ミュ ニケ イ シ ョン ・コー ド理 論 か らそ れ を読 み直 し

,交 換 を コ ミュ ニ ヶ イ シ ョ ンと して 捉 え る視 点 を提 示 した 。 ペ イ ン とバル トの 両 者 は生 成 モ デ ル を 扱 って い る と は い いな が ら,実 際 の事 例 がバ ル トの 場合 は ニ シン漁 に関 す る0文 化 内 の 契約 と役 割,ペ イ ンは ワ イ ンの 交 換,切 手 交 換,パ トロ ン とク ライ ア ン トの事 例 等 で, 一 文 化 内で か つ 両 パ ーテ ィの 間 で既 に了 解 が 成 立 して い る場 合 だ け を問 題 に して い た 彼 らの事 例 で は文 化 接触 当 初 の よ うな,両 パ ーテ ィ間 に いか に相 互 了 解 性 が 成立 す る か とい うメ カ ニ ズ ムに つ い て は 問 題 とは な らな か った。 生成 モ デル に と って は,試 行 錯誤 を重 ね て 相 互 に了解 可 能 な コー ドを作 り上 げ る経 過 が ま さ に基 本 的 な 問題 とな ぐ ・ そ して これ こそ が 文 化変 容 の動 態 をつ か ま え る モ デル とな る ので あ る。

  ペ イ ンは次 の 四 点 か ら,交 換 モ ー ドの 見直 しを して い る。 力,価 値,統 合,媒 [PAINE  l974:5]の 四点 で あ る。 最初 の力 に関 して は バ ル トのモ デ ルで は無 視 され て いた 。 交 換 に お い て両 者 間 に均 衡 が 成 立す るの は,交 換 自体 に均衡 を 目指 す 性質 が あ る か らで は な く,交 換 に か か わ る両 者間 に地 位 の 対等 性 が あ るか らで あ る。 取 り引 き に関 係 す る者 は,自 己 に と って の 最 適 な価 値 と選 択 を得 るた め に状 況 を操 作 した い と 望 む。 そ こに 均衡 が存 在 す る と考 え るの は単 な る主 観 的 な満 足 にす ぎな い。 力 に 関 し て均 衡 の と れ た 交 換 に は互 酬 性 原 理(両 者 共 に権 利 と 義務 を 持 つ)が 認 め られ,均 衡 の とれ ぬ 交 換 が成 立 し て い る 所 に は相 補 性 原 理(一 方 の 権 利 が他 方 の 義 務 とな る

[GOULDNER  l960:169])が 認 め られ る と言 え よ う。

  価 値 を バ ル トは外 在 的な もの で あ り,全 て の 価 値 は 比較 可 能 で,そ れ 故 市 場 化 す る と考 え る。 しか し交 換 され ぬ 独 立的 で 個 人 的 な 内 在 的 価 値 につ いて は無 視 して い た [PAINE  1974:13]。 交 換 理論 の一 つ の 次 元 と して無 視 して はな らぬ の が,こ の 内在 的 価 値 で あ る 。 例 え ば,ク リス マ ス の贈 物 交 換 や,G・ ベ イ トソ ンが分 裂 的紛 争 の 忌 避 の た め に行 な う事 例 と して示 した 同価 値 ・同品 目の 交 換[BATESON  l935:178‑‑

183]な ど に,内 在 的(主 観 的)価 値 の存 在 を指 摘 し得 る。

イン テグ レイ シ ョン

  統 合 の 問題 で バ ル トは 「取 り引 きの過 程 は・… … ・伺 時 に統合 と制 度 化 の 方 向 に 向か

                                                    インコ ポレイション

っ て い く」[BARTH  l971:14]と 述 べ て い る が,ペ イ ンは 統 合 的 交 換(機 械 的 連 帯,                         ランザクション

内 在 的価 値,共 有 等)と,取 り引 き的交 換(組 織 さ れ た連帯,外 在 的 価 値,社 会 的経

                                          インテグレイション

済 的 交 換等)の 両 者 の 関 係 を 成 立 させ て い るの が統 合 で あ る とい う。 す な わ ち先 の交 412

(8)

橋 本    フ ィジー に お け る キ リス ト教 受 容 の過 程 と実態

図1ペ

換 の 二 つ の モ ー ドが 一 つ の 体 系 を 構 築 して い る の だ と主 張 す る 。 そ れ をA・F・C・ ワ レ ス の 均 衡 的 構 造 か ら 価 値 に 関 す る 様 々 な 種 類 に つ い て の 洞 察 を ま と め る 形 で 次 の よ う な 図 式(図1)を 提 示 し て い る[PAINE  l974:21]。 こ こで 特 に 強 調 した い こ と は ・ 交 換 の 場 で はa1津b1と い う共 通 の 物 差 しで 測 れ る 外 在 的 価 値 を 交 換 す る が,各 グ ル ー プ 内 で はa1→a2 , b1→b2と い う 相 互 に 独 立 し た 内 在 的 価 値 に よ っ て 評 価 し直 して い る 点 で あ る 。 外 在 的 価 値a1・b1は グ ル ー プ 内 で 変 換 さ れ,グ ル ー プ 独 自(ま た は 個 人 特 有)の,言 わ ば 主 観 的 な 価 値a2・b2と して 完 成 さ れ る の で あ る 。 こ の 図 式 は 次 の ミ ドル マ ン,そ の 後 の コ ミ ュ ニ ヶ イ シ ョ ン ・コ ー ドの 問 題 と合 わ せ て,文 化 変 容 の 過 程 分 析 に と っ て 非 常 に 有 効 で あ る 。 し ば ら く ペ イ ン の 説 明 を 追 っ て 行 こ う。

  ミ ドル マ ン と は,価 値 観 の 相 異 す る集 団 間 の 交 換 に 介 入 す る こ と に よ り,両 集 団 間 の 統 合 を 恒 久 的 に 阻 止 す る存 在 で あ る 。 ま た ミ ドル マ ンの 介 在 を 認 め る 集 団 は,個 め 独 自 性 を 保 ち つ つ 他 方 で は 何 らか の 他 者 依 存 性 を 求 め る 多 元 主 義 的 性 格 を 持 つ こ と に な る[PAINE  l974:24‑26ユ

                    トランザクション

  ペ ィ ン は,バ ル トが 取 り 引 き 的 交 換(以 後T・ モ ー ド交 換 と 言 う)を 専 ら扱 った の

                            インコ ポ レイション

で,交 換 の も う一 つ の 形 で あ る 統 合 的 交 換(以 後1・ モ ー ド交 換 と言 う)に 力 点 を 置 き,両 者 の バ ラ ン ス を 保 と う と 考 え た 。 特 に1・ モ ー ド交 換 の 性 格 を 明 確 に す る た め に,バ ル トの モ デ ル に バ ー ン ス タ イ ン の コ ー ドと 社 会 的 コ ン トロ ー ル に 関 す る 理 論 を 重 ね た[PAINE  l976:65‑66]。 交 換 に お い て は,交 換 モ ー ド,媒 介 モ ー ド,社 会 的

コ ン トロ ー ル ・モ ー ド,そ れ に コ ー ド化 モ ー ドの 関 係 性 が 重 要 な 問 題 と な る。

  偶 然 テ ー ブ ル を 共 に し た レ ス トラ ンの2人 の 客 の 一 方 が,自 分 の ワ イ ン の 小 瓶 を 隣 り の 客 に 注 ぎ 入 れ る と,そ の 客 も ワ イ ン を 返 し た 。 こ れ は レヴ ィ ・ス トロ ー ス の 良 く 知 ら れ た 互 醜 性 の 事 例 で も あ る[PAINE  l976:691。 両 者 は 同 一 の 資 源(ワ イ ン)を

413

(9)

国立民族学博物館研究報 告  別 冊6号 共 に 持 ち,両 者 間 に 地 位 の 違 い が な く,返 礼 の 原 理 が 支 配 し て い る 。 そ れ に 対 し,別

々 の 資 源 を 持 ち,別 々 の 地 位 に あ る バ ト0ン と ク ラ イ ア ン トの 間 で は,保 護 と敬 意 ・ 奉 仕 が 交 換 さ れ る 。 こ の 関 係 も レ ス ト ラ ン の 事 例 と 同 様1・ モ ー ド交 換 で あ る が,社

会 的 コ ン ト ロ ー ル が 強 調 さ れ る も う1つ 別 の 形 態 で あ る[PAINE  I 976:70]。

  こ こ で 交 換 モ ー ドの 変 換 と い う 重 要 な 指 摘 が な さ れ る 。T・ モ ー ド交 換 に 規 則 が 加 わ り,そ れ を 両 者 が 認 め る よ う に な る と1・ モ ー ド交 換 に 呑 み 込 ま れ,よ り 高 い 忠 誠 が 求 め ら れ る(院 内 総 務 と陣 笠 議 員,南 米 の 農 場 主=支 配 者 た る 父 と 負 債 を 負 う農 民 等)[PAINE  I976:71‑72]。 逆 に,市 場 に開 か れ て い る パ トロ ン と ク ラ イ ア ン トの 関 係 で は,1・ モ ー ドに 固 定 さ れ て い る に も か か わ らず 選 択 肢 と し て の パ ト ロ ン が 複 数

に な り,外 部 世 界 の 知 識 を 得 てT・ モ ー ド化 して い く。

  コ ミ ュ8ケ イ シ ョ ン ・ コ ー ドと 社 会 的 コ ン トロ ー ル と の 関 係 は 密 接 で あ る 。 ペ イ ン は ベ イ ト ソ ン及 び バ ー ン ス タ イ ン を 考 慮 し な が ら,コ ー ド化 と は 「1つ の メ ッ セ ー ジ が,そ の 送 り手 の 意 図 を 正 確 に 理 解 さ れ る よ う に す る 試 み で あ る 」[PAINE  l976:

73ユ4)と 定 義 して い る 。 社 会 的 コ ン トロ ー ル に は,コ ー ド化 と の 関 係 で2種 類 考 え ら れ る 。 閉 鎖 的 メ ッ セ ー ジ ・ シ ス テ ム と 開 放 的 メ ッ セ ー ジ ・ シ ス テ ム の2つ で あ る 。 閉 じ られ た メ ッ セ ー ジ ・シ ス テ ム は 地 位 に 定 位 し た グ ル ー プ に み ら れ る 。 地 位 が グル ー プ の 同 意 を得 る 中 心 的 な 基 盤 と な る 。 個 人 的 自 律 性 が 喪 失 して い る 代 り に,社 会 的 ア イ デ ンテ ィ テ ィ が 高 め ら れ て い る 。 開 か れ た メ ッ セ ー ジ ・シ ス テ ムで は,個 人 的 な 意 図, 動 機,性 向 に 定 位 して い る 。 閉 鎖 的 シ ス テ ム で は,重 要 な の は 内 容 よ り も,事 物 が ど

の よ う に,何 時 言 わ れ る か で あ り,話 し手 の 意 図 は 当 然 だ と 受 け 取 られ る 傾 向 に あ る 。

                        リス トリクティド

こ の よ う な コ ー ドの あ り方 は 限 定 コ ー ドと言 わ れ る 。 一 方 開 放 的 シ ス テ ム で は,何                                                                         エラポレ

言 われ るか が重 要 で あ り,話 し手 の 意 図 が 当 然 だ とは 考 え られ な い。 この コ ー ドは 精

イテイド

密 コ ー ド と言 わ れ る[PAINE  l976:73]。

  交 換 モ ー ド,コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン ・つ 一 ドの 分 析 か ら ミ ドル マ ン の 役 割 が 明 確 に な る 。 ミ ドル マ ン は1・ モ ー ドを 支 え て お り,ク ラ イ ア ン トは 自 分 自 身 の 領 域 か ら外 に 行 か ず に す む 。 ミ ドル マ ン は 自 ら は 開 放 シ ス テ ム に 所 属 しな が ら,自 分 の ク ラ イ ア ン トに は 閉 鎖 シ ス テ ム の 中 に い る 幸 福 感 を 与 え る[PAINE  l976:79]。 外 部 か ら の 情 報 が 漏 れ ク ラ イ ア ン トの 価 値 観 を 変 化 さ せ る危 険 が あ る 所 で は,ミ ドル マ ン は 情 報 操 作 を 行 な う。 彼 が わ ざ わ ざT・ モ ー ド交 換 に 従 事 す る の は ク ラ イ ア ン トの た め だ と示 し

4)ベ イ トソ ンは,コ ー ド化 と は 「与 え られ た メ ッセ ー ジを 解 釈 す る 方 法 に つ いて の 指 示 」   [BATESON  l951:158]だ と定 義 す る 。バ ー ンス タ イ ンは コー ド化 とは 「特定 の意 味 の創 造 と   構 成,そ れ らの 発 送 と受 け 取 りのた め の 両 者 の状 況 を コ ン トロール す る こ と」[BERNSTEIN   1972:474]と 定 義 す る 。

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橋本  フ ィジ ーに お け る キ リス ト教 受 容 の過 程 と実 態

つ つ,自 分 の ク ラ イ ア ン ト ・グ ル ー プ 同 士 の 距 離 を 維 持 し よ う と す る 。 ク ラ イ ァ ン ト は そ れ ぞ れ の 限 定 コ ー ド内 で コ ミュ ニ ケ イ シ ョ ン を し,ミ ドル マ ン は 学 習 に よ っ て ク ラ イ ァ ン トに 近 付 い て い く。 こ れ は ミ ドル マ ン が 精 密 コ ー ドを 使 用 して い る こ と を 示 し て い る 。 ミ ドル マ ン は ク ラ ィ ァ ン トが い か に 世 界 を 感 知 す る か だ け で な く,世 界 が ク ラ イ ア ン トを ど の よ う に 感 知 す る か に 関 心 を 持 つ 。 ク ラ イ ア ン トが1つ か そ れ 以 上 の 精 密 コ0ド を 使 い 始 め る と い う難 局 が 生 ず る と,ク ラ イ ア ン トの 新 た な 論 理 的 世 界 感 知(T・ モ ー ド,E・ コ ー ド)が,必 ず し も 今 ま で の 情 趣 的 世 界 感 知(1・ モ ー ド, R・ コ ー ド)に よ っ て 達 成 さ れ て い った よ う な ク ラ イ ア ン トす べ て の 利 益 の 実 現 を も

た らす も の で は な い と ミ ドル マ ン は 教 え 示 す 。 ク ラ イ ア ン トは 自 己 の 限 定 コ ー ドを 使 用 し主 観 性 を 保 ち,ミ ドル マ ン と の 間 に 相 互 主 観 性 を 打 ち た て る 。 こ の 時 ミ ドル マ ン は,ク ラ イ ア ン トが 問 題 に せ ず に済 む こ と を す べ て 彼 ら に 代 っ て 問 題 に せ ね ば な ら な い 。 こ こ ま で く る と 精 密 コ ー ドを 学 習 して も,そ れ が 必 ず し も有 用 に は な ら ぬ 人 々 の 存 在 が 想 定 さ れ る[PAINE  l976:80]。

  交 換 の 過 程 で 力 の 差 異 が 生 ず る 。 野 心 を 抱 く政 治 家 は 力 を 得 られ る 状 況 を 探 し,ま た は そ の 状 況 を 自 ら作 り 出 す 。 他 人 が 行 動 の 規 制 を 受 け,相 互 に コ ミsニ ケ イ シ ョ ン が 出 来 ぬ よ う な 「分 断 」 が 存 在 す る 状 況 で,こ の 社 会 的 距 離 と コ ー ドを 操 作 す る こ と で 彼 は 「力 」 を 獲 得 す る 。

  以 上R・ ペ イ ンの2つ の 論 文 を 要 約 して き た 。 キ リス ト教 受 容 の 初 期 の 段 階 か ら改 宗 ま で の 過 程 は,特 に 内 在 的 価 値 と外 在 的 価 値 が そ れ ぞ れ1・ モ ー ド交 換 とT・ モ ー ド交 換 に か か わ る モ デ ル と 重 な り合 う。 そ し て 後 半 の 統 合 と コ ー ドか ら の 分 析 的 視 点 は,今 や 全 国 民 が キ リス ト教 徒 に な っ て い る フ ィ ジ ー 人 の 現 状 を 分 析 す る0助 と な る 。 特 に 「交 換 モ ー ド と コ ミュ ニ ケ イ シ ョ ン ・コ ー ドの 変 換 」 と い う 視 点 か ら は,文 化 変 容 の 過 程 を モ ー ド ・ コ ー ドの 変 換 の 過 程 と し て 捉 え る こ と を 可 能 に す る ダ イ ナ ミ ッ ク

な モ デ ル を 形 成 し得 る 。

3.  文 化 変 容 モ デ ル

                                                          ムベテ

  キ リス ト教 の 受 容 当初 は,必 然 的 に 旧来 の神 々 に仕 え る 司祭(bete)氏 族 か ら強 い抵 抗 を 受 けた 。 しか し既 に鉄 製 の道 具,マ スケ ッ ト銃 等 の西 洋 文 明(=神 の威 力)を 眼

                                      ディナ

に し た フ ィ ジ ー 人 は キ リス ト教 の 神 が 真 実(dinの だ と 信 じ る よ う に な っ た 。 こ の 時 交 換 さ れ た 事 物 と,そ れ に 乗 せ ら れ た メ ッ セ ー ジ は 図2の よ う に な る 。

  a1#b1は 両 者 間 に 成 立 した 取 り 引 き モ ー ドに よ る 交 換 で あ る 。 a2を 鉄 製 道 具 等 の 西 洋 に お け る 評 価 と す る と,異 領 域 との 取 り 引 き で は そ の 価 値 が 変 化 す る 。blb2に 415

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図2  交 換 のT・ モ ー ド と1・ モ ー ド

      国立民族学博物館研究報告  別冊6号 いて も同様 の こ とが 言 え る。Bに と っ て は豊 富 に あ る食 物 と貴 重 な鉄 製 品 と は通 常 で は 交 換 す べ くもな いが,Aに

と って の 必 需 品(食 物)と は交 換 可 能 で あ った 。 この交 換 の メタ レヴ ェル で は,首 長側 の宣 教 師 を 保護 す る とい う 誇 りや西 洋 ゐ品 物 を持 つ こ と に よ る力 の増 大 と,宣 教 師 側 の 地 元 民 を改 宗 させ る可 能 性 とが 交 換 され て い る。 特 に鉄 製 品 の フ ィ ジー側 にお け る 内在 的価 値(b2)は 宣 教 師 の 想 像以 上 の もの で あ った。 す な わ ち鉄 製 品 は"a2と して は 西洋 に お け る 日常 的 な単 な る道 具 で あ った が,b2と して は キ リス ト教 の 神 が 西洋 人 に授 けた もの で あ る と考 え られ た。 西洋 の文 脈 で は結 び つ か な か った もの が,フ ィジ ーの 文 脈 で は結 び つ けて 考 え られた 。 こ の結 びつ け るパ タ ー ン5》の違 い こそ が文 化 の違 い で あ る と言 う こ とが で きる。        '

  その 最 も顕 著 な 例 が 西 洋 の 医薬 品 で あ った。 フ ィジ ーで は 現在 で も い くつ か の病 気

                                                                      テヴオロ

は,土 地 の 神 や 精 霊,そ れ に呪術 に よ って 呼 び 出 され た 死 者 の 霊(総 称 してtevoroと 現 代 で は 呼 ば れ る)等 に よ って もた ら され る と信 じられ て い る。 当時 は す べて の変 異

に神 々の 介在 を認 め て い た。 それ 故,宣 教 師 の 施 薬 に よ って病 気 が 治癒 す る こ と は,

                                      ムベテ

す な わ ち キ リス ト教 の 神 に 仕 え る 「司 祭(伽 の」 た る 宣 教 師 が 土 地 の 神 々 を 制 圧 した と い う論 理 に な る 。

  こ こ で 言 うa2,  b2は 一 文 化 内 で の 内 在 的 価 値 体 系 で あ る 。 コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン ・ コ ー ドで は 限 定 コ ー ドに 相 当 す る 。a1,  b1は 価 値 体 系 の 異 な る2つ の 集 団 間 に 成 立 し た 取 り 引 き モ ー ド に お い て 交 換 さ れ た 価 値 で あ る 。 宣 教 師 は 本 国 か ら 送 ら れ て く る 衣 服 や 備 品 を,労 働 力 や 食 物 と交 換 した 。 供 給 が絶 え る こ と は 宣 教 活 動 と宣 教 師 一 家 の 生 活 に と っ て 致 命 的 で あ っ た[CALvERT  I983:20‑21]。 宣 教 活 動 の 背 後 に は 常 に本                                                           マ ナ

国 が垣 間 見 え,そ の 援 助 と西 洋 文 明無 しには キ リス ト教 の威 力@伽 の は発揮 で きな か った。

  言 語 を学 習 す るに つ れ,宣 教 師 は地 元 の 限定 コ ー ドを 獲得 して い く。 現在 標 準 語 と

            ムバウ

な って い るBau方 言 に よ る 翻訳 聖 書 が 出版 され た の は1847年 で あ る6)。そ れ と同時 に 西 欧 社 会 を 真 似 た 「市 民政 治 の規 則」 を改 宗 した 首 長達 に示 した が,受 け入 れ られ る こ とは な か った。 しか し改 宗 に伴 って刑 罰 に関 す る規 則 が変 化 を 受 け る こ とは あ った。

5)結 びつ け るパ タ ー ンにつ いて はBA・T EsoN[1982:8‑13]参 照 。

6)出 版 当時Bau島 は ま だ 改宗 して いず,隣 りのViwa島 で 出版 さ れ た[DERRIcK  974=

  101]。        :'

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0

橋 本    フ ィジー に お け る キ リス ト教受 容 の 過 程 と実 態

以 前 な ら罪 を 犯 せ ば 撲 殺 さ れ て い た が,以 後 は 聴 取 さ れ た 後 ロ ー プ で 打 た れ る 等 の 罰 が 決 め ら れ た[DERRIcK  1974:101]。 地 元 の 旧 来 の 文 化 的 了 解 性 も キ リ ス ト教 受 容 と と も に 変 化 して い く。        1

  1850年 に は,Viti  L、evu本 島 東 部 で は 戦 い が 続 い て い た 。 中 で もBau島 は そ の 一                                           ザ コムバ ウ

つ の 中心 で あ っ た 。Bau島 の 首 長Ratu  Seru  Cakobauは マ ス ケ ッ ト銃 の 威 力 を 積 極 的 に認 め 外 人 部 隊 を 編 成 し死 傷 者 の 数 を 急 増 さ せ た が,そ れ と 同 時 に キ リス ト教 の                                                           ヴ ィワ

神 の 力 を認 めaフ ィジ ー を 平 定 した 後 に 改宗 す る約 束 を 隣…りのViwa島 の若 い首 長

ヴェ ラ  ニ

Veraniと し た 。 し か し戦 況 は 変 わ らず,  Veraniは そ れ 以 上 の 遅 延 に 耐 え られ ず 改 宗                                           ヴェラロタ

し,も は や 戦 い に は 加 わ ら な くな っ た 。・対 岸 のVerata地 区 と長 年 対 立 し て い たBau 島 は,1850年 の3月 にVerataに 勝 っ た 。 Verataの 首 長 は,  Viwa島 の 宣 教 師 と 若

      ヴェラ ニ           ザ コ ム バ ウ

首 長Veraniを 訪 ね,  Verataの 人 々 の 生 命 請 い をCakobauに 頼 ん で くれ る よ う に 依 頼 した 。CakobauはVeraniが 共 に 戦 い に 行 く な ら無 条 件 で 認 め よ う と言 っ た が, そ れ は 不 可 能 だ っ た 。 そ れ で もViwa島 にVerataの 人 々 が 来 る な ら生 命 を 取 ら ず,' 村 を 焼 くだ け にす る と 約 束 し て くれ た 。 船 で 迎 え に 行 く とVerataの 人 々 は 村 を 去 る

こ と を 拒 ん だ 。Bau島 の 戦 士 はVerataを 焼 い た 。 村 人 はNaloto村 に 逃 げ,そ こ に                               ンガヴインデイ

戦 い が 移 っ た 。Bau島 の 若 い 首 長Gavidiが そ の 戦 い で 死 ん だ の を 契 機 に 休 戦 と な っ た 。        .

  Viwa島 の 宣 教 師 とVeraniは,そ の 時Bau島 の 船 が 沈 黙 し た ま ま 引 き上 げ る の を 知 っ て,朝 早 くBau島 に行 っ た 。"若 い 首 長 の 葬 式 で,彼 の 妻 達 が 伴 死 さ せ られ る の を 止 め さ せ よ う と 思 った が,既 に 遅 く3人 の 妻 が 絞 殺 さ れ て い た 。Cakobauは 自 分 の 妹 に も伴 死 を 命 じ た が,Gavidiの 臣 下 か ら彼 女 は 妊 娠 して お り彼 ら の 氏 族 の 将 来 の 首 長 が 生 ま れ る か も知 れ ぬ と い う こ と で 命 乞 い が な さ れ た 。 そ の 代 り にGavidiの                                                   タムプア

が 身 代 り を 申 し出 て 死 ん だ 。 こ の 時 宣 教 師 が 持 っ て 来 たtabua(鯨 歯)は 受 け 取 りを 拒 否 さ れ た 。 終 了 後Cakobauは 近 従 の 者 に,「 宣 教 師 は ど ん な 困 難 も顧 み ず,何 処 へ で も我 々 を 救 う た め に 行 く。 逆 に 我 々 は 常 に お 互 い に 殺 し合 お う と す る。 彼 の 来 る の が 遅 れ て 残 念 だ 。 間 に 合 っ て い た らGavidiの 母 の 命 を 助 け ら れ た の に 」 と漏 ら した と言 う[CALVノRT  l 983:300‑302]。 宣 教 師 はCakobauの 父 の 死 の 時 に も伴 死 を 何 と か 止 め さ せ よ う と した が,人 数 を5人 に ま で 減 少 さ せ る こ と は で き た が,伴 死 自 体 を 廃 止 さ せ る こ と は で き な か っ た[CALVERT  l983:321‑322]。

  Cakobauが 信 仰 を 告 白 した の は1854年4月30日 で[CALVERT  I983:335],彼 妻 が 公 式 に 洗 礼 を 受 け た の は1857年1月11日 で あ っ た[CALVERT  l983:357]。 彼 の 信 仰 告 白 と 共 に彼 の 支 配 下 の 村 で は 一 斉 に 改 宗 が 行 な わ れ た 。

      417

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国立民族学博物 館研究報告  別冊6号   この局 面 で 明確 にな る こ とは,宣 教 師 も フ ィ ジ ー人達 も共 に相 手方 の コ ー ドを理 解

し始 め た こ とで あ る。 宣 教 師 は,首 長 の死 には妻 達 の伴死 が執 行 され る こ とを知 り,

                      タムプア

彼 女 達 の 命 乞 い に 鯨 歯(tabua)を 持 っ て か け つ け た 。 鯨 歯 の 価 値[PHILLIP$  1951:

22‑25;DEAN  l921:77‑89;HooPER  l982:84‑134;橋 本1984:198‑208]は ィ ジ ー の 文 脈(ま た は 限 定 コ ー ド)を 知 ら ず に は 理 解 す る こ と は で き な い 。 宣 教 師 は 鯨 歯 を 贈 って,女 達 の 生 命 と 引 き換 え に し よ う と した 。 先 の 図 式 に あ て は め る と,a1=

鯨 歯,b1=女 達 の 生 命 と な る 。 こ の 交 換 は フ ィ ジ ー文 化 の 文 脈 の 中 で 行 な わ れ た 典 型 的 な1・ モ ー ド交 換 で あ る と い う こ と が で き る 。鯨 歯 は 人 間 の 生 命 に か か わ る よ う な 重 大 な 申 し入 れ を す る 場 合 に 贈 ら れ る。 そ れ は 戦 い の 同 盟 を 求 め た り,妻 を 求 め た りす る 場 合 で あ り,ま た 正 式 に 他 地 域 の 首 長 一 行 を 迎 え る 場 合 で あ る。 特 に歓 送 迎 の 場 合 に は,ホ ス ト側 の 総 力 を あ げ て鯨 歯 が 集 め られ,来 客 に 贈 ら れ る。 来 客 も 同 様 に し て 集 め た も の を 返 礼 と して 贈 る。a1津b1は,命 乞 い の 場 合 等 価 交 換 だ と 考 え ら れ る 。 依 頼 内 容 に よ っ て 鯨 歯 の 大 き さ や 数 が 自 ず と 決 ま っ て く る が,1・ モ ー ド交 換 に お い て は 外 在 的 価 値 の追 求 よ り も む し ろ 交 換 品 に載 せ ら れ た メ タ ・ レ ヴ ェ ル の メ ッ セ ー ジ の 方 が 重 要 視 さ れ る。 特 に宣 教 師 とCakobauの 間 で は 鯨 歯#妻 達 の 命 が 等 価 で あ                             ザ コムバ ウ

る と一 応 考 え ら れ る 。 し か しCakobauの 父 の死 に際 して は,妻 達 全 員 が 伴 死 す る の で は な く選 ば れ た5名 が 絞 殺 さ れ た が,こ の5名 の 助 命 の た め に 宣 教 師 が 自 分 の 財 産 全 て と鯨 取 り 用 の 船 を 贈 る と 申 し出 て も 聞 き入 れ ら れ な か った 。

  宣 教 師 が 鯨 歯 に 妻 達 の 助 命 と い う メ ッ セ ー ジ を 載 せ て 贈 り,そ れ をCakobauが 否 した こ の 交 換 の メ タ ・ レ ヴ ェ ル で は キ リ ス ト教 受 容 に 関 す る メ ッ セ ー ジ が 交 換 され て い た 。 宣 教 師 は フ ィ ジ ー の 文 脈 に 沿 っ て 相 手 に 十 分 敬 意 を 表 しつ つ,西 洋 的 ・キ リ ス ト教 的 価 値 観 か ら 人 命 救 助 を 請 願 した 。Cakobauは フ ィ ジ ー の 文 脈 で は そ れ ま で 助 け る こ と が で き な か っ た 死 者 の 妻 達 の 生 命 を,キ リス ト教 で は救 助 しえ る こ と を 知 っ た 。 助 命 を 認 め る こ と は そ れ ま で の 「他 界 観 」 を 棄 て る こ と で あ る 。 死 者 の 魂 が 死 者 の 国 へ 旅 を す る途 中 に は 妻 達 の 魂 が 後 を 追 って く る の を 待 つ 場 所 が あ る 。 伴 死 を 廃 止 す る こ と は,そ こ で 待 つ 死 者 の 魂 を 悲 し ま せ,嘆 き な が ら旅 を 続 け,死 者 の 国 で も 0人 前 に 扱 わ れ ぬ 不 名 誉 を 与 え る こ と に な る の で あ る[THoMsoN  l895:340 ‑359;

BEAucLERE  l 916:1‑9]。 改 宗 を しな い う ち は 妻 達 の 伴 死 を 廃 止 す る こ と は で き な い 。 しか し公 式 の チ ャ ン ネ ル を 通 して な さ れ た 要 請 に よ って,伴 死 者 の 数 を 少 な くす る こ とは 可 能 で あ っ た 。 そ し て 伴 死 自体 の 廃 棄 は,キ リス ト教 的 救 済 の 文 脈 を 待 っ て 始 め て 可 能 に な る の で あ る 。

  この 段 階 で は,別 々 の 文 化 の そ れ ぞ れ の 限 定 コ ー ドを 背 負 っ た 者 同 士 が,相 互 行 為

(14)

橋 本  フ ィ ジー に お け る キ リス ト教受 容 の過 程 と実 態

を 通 じて 自 ら の コ ー ドを 変 え て い く過 程 が 見 られ る 。 交 換 の 過 程 で は 言 語 学 習 等 を 通 じ て 両 者 が 相 互 の 情 報 を 蓄 積 し,相 手 の コ ー ド に従 っ て メ ッセ ー ジ を 発 し,自 ら 言 わ ん と す る 内 容 を 相 手 に 理 解 さ せ る こ と が 可 能 に な っ て い く。 キ リス ト教 受 容 と 共 に, 単 な る 交 換 で は な く,価 値 を共 有 す る こ と に な る 。

  2つ の 相 異 な る 限 定 コ ー ド に 橋 を か け,そ れ ぞ れ に 解 読 可 能 な メ ッ セ ー ジ を 送 る こ と が で き る の は ミ ドル マ ンで あ る 。 こ の ミ ドル マ ン は 自 己 の コ ー ドを 保 ち な が ら,相 手 方 の コ ー ドを 意 識 的 に 学 習 し,自 ら の 中 に二 者 に ま た が る 新 た な る コ ー ドを 創 出 し て い る の で あ る 。 こ の 新 た な る コ ー ドは 精 密 コ ー ドで あ る と言 う こ と が で き る 。 こ の 精 密 コ ー ド は メ ッセ ー ジ の 予 言 性 と 了 解 性 を 共 有 し な い両 者 の 間 に 成 立 し た 新 た な コ ー ドで あ る。 バ ー ン ス タ イ ンは 限 定 コ ー ドを 使 用 す る 下 層 階 級 の 子 供 と,精 密 コ ー ド を 使 用 す る 中 流 階 級 の 教 師 の 間 で の コ ミュ ニ ヶ イ シ ョ ンの 困 難 さ を 指 摘 した[BERN‑

STEIN  1981]。 そ れ を 交 換 の2つ の モ ー ドの 特 徴 と し て ペ イ ンは 考 え た[PAINE  1976:

74]。 更 に ミ ドル マ ン の 機 能 分 析 で は,2つ の 限 定 コ ー ド(ま た は1・ モ ー ド)の 間 に 橋 を か け る ミ ドル マ ン が 使 用 す る の が 精 密 コ ー ド(ま た はT・ モ ー ド)で あ る と考 え て い る 。

  フ ィ ジ ー 文 化 に 出 会 っ た 宣 教 師 と新 た に キ リス ト教 に触 れ た フ ィ ジ ー 人 は,そ れ ぞ れ ど ん な コ ー ドを 使 っ て お り,相 互 関 係 を 積 み 重 ね て い く過 程 で い か な る コ ー ドを 創 出 して い っ た の で あ ろ う か 。 地 元 の コ ー ドを,強 い 氏 族 的 紐 帯 に 結 ば れ た 集 団 定 位 的 な 限 定 コ ー ドだ と考 え る と,宣 教 師 の 持 つ コ ー ドは,西 洋 の 個 人 定 位 的 な 精 密 コ ー ド

だ と考 え る べ きで あ ろ う 。 し か し宣 教 師 の 行 動 の 動 機 は,貿 易 業 者 や 商 人 の よ う な 利 益 追 求 に は な く,宗 教 的 な も の で あ る 。 そ の 意 味 で は 限 定 コ ー ド的 だ と言 う こ と が で き る 。 コ ー ド理 論 の 曖 昧 な 点 が こ こ に あ る 。 宣 教 師 の コ ー ドは,フ ィ ジ ー 人 に比 べ れ ば 精 密 コ ー ドに 近 く,同 じ西 洋 の 貿 易 業 者 等 に 比 べ れ ば 限 定 コ ー ドに 近 くな る 。 しか し この 場 合,宣 教 師 の 求 め て い る こ とが 取 り 引 き(T)モ ー ド交 換 に よ る 利 益 で は な く, 価 値 観 ・世 界 観 の 変 更 と キ リス ト教 世 界 と い う一 つ の ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 持 つ 者 の 統

合 を 目 指 す と い う点 で,そ こ に 意 識 的 な 限 定 コ ー ドの 存 在 を 措 定 す る 必 要 が あ る 。   西 洋 キ リス ト教 世 界 の 限 定 コ ー ドを 担 い つ つ フ ィ ジ ー の 限 定 コ ー ドを 習 得 して い っ

た の が 宣 教 師 で あ り,フ ィ ジ ー の 限 定 コ ー ドを 担 い つ つ キ リ ス ト教 の 限 定 コ ー ドを 獲 得 して い っ た の が フ ィ ジ ー 人 キ リス ト教 受 容 者 達 で あ っ た 。 後 者 の 中 で 一 番 影 響 力 を                         ザ コムバ ウ

持 って い た信 者 が,実 はCakobauで あ った 。 彼 の 改 宗 と共 に支 配 下 の 村 々が0斉 改 宗 した 。 そ れ 故 キ リス ト教 はCakobauの 宗 教 だ と言 わ れた 。 改 宗 以 前 か ら宣 教 師 との 接触 が 多 く,西 洋 キ リス ト教 的 限定 コ ー ドとの 戦 いの 中 で身 を も って そ れ を体 験       419

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