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博 士 ( 医 学 ) 齋 藤 典 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 齋 藤 典 子

学 位 論 文 題 名

リ ン パ 管 内 皮 細 胞 が 産 生 す る ラ ミ ニ ン 421 は 悪 性 黒 色 腫 の 遊 走 を 促 進 す る

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景と目的】

  リンパ飾転移の有無は,悪性黒色腫の重要な予後因子のひとっであるが,リンパ行性転 移のメカニズムの解析は血行性転移に比べ,遅れをとってきた。しかし最近、リンパ管内皮 細胞のマーカー分子の発見や単離・培養技術の向上などにより,リンパ節転移のメカニズム が癌組織におけるりンパ管新生という観点から解析されるようになってきた。その結果,癌 細胞の産生するりンパ管新生因子として,VEGF―CやVEGF−Dなどが見出された。またCXCR4や CCR7などのケモカインに対する受容体を発現した癌細胞がりンパ節への高転移性を示すこ となども報告されてきている。本研究では,リンパ管内皮細胞の産生する液性因子が悪性黒 色腫細胞に対してどのような影響を及ぼすのか,特に,悪性黒色腫細胞の増殖・遊走能に及 ぼす影響について調べた。

【材料と方法】

1.細胞株 :ヒト 悪性黒色 腫細胞 株(A375M,C8161,GAK,G361,MeWo)およびヒト新生児 真皮由来リンパ管内皮細胞(LEC)を用いた。

2. LEC培養上清の作製:FBSを含まないEGM2―MV2培地でLECを24時間培養し,その培養上清 (LEC―CM)を回収した。

3.細胞増殖能の測定:水溶性ホルマザンを生成するテトラゾリウム塩であるWST―8を用い たアッセイで細胞増殖能を評価した。

4.細胞遊走能の測定:細胞遊走能は,トランスウエル・チャンバーを用いたケモタキシス アッセイで評価した。

5.熱処理、限外濾過:LEC一CMの熱処理は,56℃,あるいは90℃で5分間行った。また,マ イクロポアフイルターを用いて分子量を指標にLECーCMを分画した。

6.  Reverse transcriptionーpolymerase chain reaction (RTーPCR)  :細胞カゝら抽出した全 RNAをもとに 逆転写 反応を行い,cDNAを得た。このcDNAを鋳型にして標的遺伝子特異的な プライマーペアを用いてPCRを行った。

7.ウエスタンブロッティング法:LEC−CMをSDS―PAGEで展開し,PVDF膜に転写した。標的蛋 白に特異的な一次抗体,続いてペルオキシダーゼ標識二次抗体を反応させた。ペルオキシダ ーゼを化学発光試薬を用いて検出した。

8.免疫沈 降:抗 ラミニン1抗体をプロテインAセファロースに結合させた。この複合体を LEC―CMと混合させた後,遠心によってプロテインAセファロースー抗ラミニン1抗体に結合す る蛋白を分離した。

9.フローサイトメトリー:悪性黒色腫細胞表面におけるインテグリンとCD151の発現を,

それぞれを特異的に認識する一次抗体と螢光色素FITC標識二次抗体を用いてフローサイト メトリーにより解析した。

10.インテグ リンの 機能阻害 :イン テグリン の機能 を阻害す るために 抗インテグリンa3

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抗体(SM−Tl)あるいは 抗インテ グリンa6抗体(GoH3)で悪性黒色腫細胞をケモタキシスア ッセイの前30分からアッセイ終了まで処理した。

11. CD151の発現抑制:CD151の発現を抑制するためにCD151に対するsiRNAを悪性黒色腫細 胞にりポフェクション法で導入した。siRNAによるCD151の発現抑制は,抗CD151抗体を用い たウェスタンブロット法で確認した。

【結果およぴ考察】

  本 研究では ,悪性黒色腫細胞とLECとの相互作用,特にLECが悪性黒色腫細胞の増殖・遊 走性に及ぼす影響について検討した。まず,LEC―CMは5系の悪性黒色腫細胞の増殖性には影 響を及ぼさをかったが,それらに対してケモタキシスを誘導することが明らかとなった。こ のことは,LEC−CMには悪性黒色腫細胞に対してケモタキシス活性をもつ因子が含まれている ことを示している。LECによって分泌されケモタキシス活性を有する因子としてケモカイン の報告がある。しかし,本研究で見出されたLEC−CMのケモタキシス活性は,分子量100 kDa 以 上の粗分 画に認められ,低分子量(8から14 kDa)であるケモカイン・ファミリーに属す るものではないと考えられた。

  LECが分泌 する100 kDa以上の分子としてラミニン,ナイドジェンなどの細胞外マトリッ クス構成成分が報告されている。細胞外マトリックス成分は様々な種類の癌細胞に対してケ モタキシスを誘導することが知られている。そこで細胞外マトリックス成分であるラミニン,

ナイドジェンに着目してLEC−CMに含まれるケモタキシス活性について検討を進めた。ラミニ ンとコラーゲンとを架橋する役割をもっナイドジェンは,LEC−CM中に存在することがウエス タンブロット法によって確認されたが,LEC−CMからナイドジェンを除去しても,C8161細胞 に対するケモタキシス活性は減少することはなかった。このことから,ナイドジェンはケモ タキシス活性の本体ではないと判断し,引き続きLEC―CM中のラミニンの存在とそのケモタキ シ ス活性に ついて調べた。RT‑PCR船よぴウエスタンブロット解析の結果から,LECはa4,a 5,ロ1、ロ2、ッ1のラミニン鎖を発現していることが明らかとなった。ラミニンッ1鎖上の エピトープを認識する抗ラミニン―1抗体を用いた免疫沈降によってLEC−CMからラミニンvl 鎖からなる複合体を除いた。この抗ラミニン−1抗体処理LEC―CMは,悪性黒色腫細胞に対する ケモタキシス活性が失われていた。また,抗ラミニンー1抗体での免疫沈降物をウエスタンブ ロ ット解析 したとこ ろ,yl鎖 はa4およ ぴB2鎖と複 合体を 形成して いることがわかった。

こ のことか ら,LEC―CMに含まれるラミニンa4ロ2yl(ラミニン421)の三量体が悪性黒色腫 の遊走を刺激していると考えられた。

  ラ ミニンに 対して悪性黒色腫細胞が遊走しているのであれば,悪性黒色腫細胞はラミニ ン を認識す る接着因子を発現しているはずである。ラミニンa4鎖を認識する接着因子にイ ン テグリンa6ロ1お よぴa3ロ1が知られている。そこで,これらのインテグリンの発現をフ ローサイトメーターで解析したところ,用いた悪性黒色腫細胞すべてにこれらインテグリン の 発 現 が認 められた 。ラミ ニン結合 性インテ グリン と複合体 ・tetraspanin−enriched microdomainを形成し,ラミニンを介した細胞運動性を調節する因子にCD151がある。悪性黒 色腫細胞株C8161およぴMeWoのCD151の発現をsiRNAを利用して抑制し,LECーCMに対するケモ タキシスを調べたところ,これらの細胞のケモタキシスは有意に低下した。以上の結果から,

悪性黒色腫細胞はヲミニン結合性インテグリンを介してLEC−CM中にあるラミニンに対して ケモタキシスを示すと考えられた。  

【結語】

  ヒト新生児真皮由来リンパ管内皮細胞の培養上清(LEC−CM)に含まれる悪性黒色腫細胞遊 走刺激因子について検討した。その結果,LEC−CMに含まれるラミニン421が悪性黒色腫細胞 のケモタキシスを刺激していることが明らかとなった。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   山 本 有 平 副 査   教 授   安 田 和 則 副 査   准 教 授   濱 田 淳 一

学 位 論 文 題 名

リンパ管内皮細胞が産生するラミニン421 は 悪性黒色腫の遊走を促進する

  りンパ飾転移の有無は,悪性黒色腫 の重要な予後因子のひとっであるが,リンパ行性転 移のメカニズムの解析は血行性転移に 比ベ,遅れをとってきた。しかし最近、リンパ管内 皮細胞(LEC)のマーカー分子の発見や単離・培養技術の向上などに より,リンパ節転移の メカニズムが癌組織におけるりンパ管 新生という観点から解析されるようになってきた。

その結果,癌細胞の産生するりンパ管新生因子として,VEGFーCやVEGF−Dなどが見出された。

またCXCR4やCCR7栓どのケモカインに対する受容体を発現した癌細 胞がりンパ節への高転 移性を示すことなども報告されてきている。本研究では,LECの産生する液性因子が悪性黒 色腫細胞に対してどのような影響を及ばすのか,特に,悪性黒色腫細胞の増殖・遊走能に及 ばす影響にっいて調べた。

  その結果,LEC培養上清(LEC−CM)は5系の悪性黒色腫細胞の増殖 性には影響を及ぼさな かったが,それらに対してケモタキシ スを誘導することが明らかとなった。このことは,

LEC一CMに は悪性黒色腫細胞に対してケモタキシス活性をもつ因子が含まれていることを示 している。LECによって分泌されケモタキシス活性を有する因子としてケモカインの報告が ある。しかし,本研究で見出されたLEC―CMのケモタキシス活性は,分子量100 kDa以上の粗 分画に認められ,低分子量(8から14 kDa)であるケモカイン・ファミリーに属するもので はないと考えられた。

  LECが分 泌する100 kDa以上の分子と してラミニン,ナイドジェンなどの細胞外マトリッ クス構成成分が報告されている。細胞 外マトリックス成分は様々な種類の癌細胞に対して ケモタキシスを誘導することが知られ ている。そこで細胞外マトリックス成分であるラミ ニン,ナイドジェンに着目してLEC−CMに含まれるケモタキシス活性について検討を進めた。

ラミニンとコラーゲンとを架橋する役割をもっナイドジェンは,LEC―CM中に存在すること がウエスタンプロット法によって確認 されたが,LEC‑CMからナイドジェンを除去しても,

C8161細胞 に対するケモタキシス活性は減少することはなかった。このことから,ナイドジ エンはケモタキシス活性の本体ではないと判断し,引き続きLEC−CM中のラミニンの存在と そのケモタキシス活性について調べた。RT‑PCRおよぴウエスタンブロット解析の結果から,

LECはa4,a5, ロ1、 ロ2、Vlのラミニン 鎖を発現していることが明らかとなった。ラミ ニンッ1鎖 上のエピトープを認識する抗ラミニンー1抗体を用いた免疫沈降によってLEC―CM からラミニンv1鎖からなる複合体を除いた。この抗ラミニン一1抗体処理LEC―CMは,悪性黒 色腫細胞に対するケモタキシス活性が失われていた。また,抗ラミニン―1抗体での免疫沈 降物 をウエスタンブロット解析したとこ ろ,vl鎖はa4およぴB2鎖と複合体を形成してい るこ とがわかった。このことから,LECーCMに含まれるラミニンa4ロ2V1(ラミニン421)

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の三量体が悪性黒色腫の遊走を刺激していると考えられた。

  ラミニンに対して悪性黒色腫細胞が遊走しているのであれば,悪性黒色腫細胞はラミニ ンを認識する接着因子を発現してぃヽるはずである。ラミニンa4鎖を認識する接着因子にイ ン テグリンa6ロ1韜よびぱ3ロ1が知られている。そこで,これらのインテグリンの発現を フローサイトメーターで解析したところ,用いた悪性黒色腫細胞すべてにこれらインテグ リ ンの発現 が認め られた。 ラミニン結合性インテグリンと複合体tetraspanin―enriched microdomainを形成し,ラミニンを介した細胞運動性を調節する因子にCD151がある。悪性 黒色腫細胞株C8161およぴMeWoのCD151の発現をsiRNAを利用して抑制し,LEC−CMに対するケ モタキシスを調べたところ,これらの細胞のケモタキシスは有意に低下した。以上の結果 から,悪性黒色腫細胞はラミニン結合性インテグリンを介してLEC‑CM中にあるラミニンに 対してケモタキシスを示すと考えられた。

  公 開発表 にあたり ,副査安田和則教授から、1)新生児真皮由来リンパ管内皮細胞を使 用 した本研 究と、 実際の生 体系との相同性について、2)他種のりンパ管内皮細胞を使用 し た場合に 発現が 予測され る因子について、3)液性因子の他のスクリーニング方法につ いて、4)今後の実験計画についての質問があった。次いで副査濱田淳一准教授から、1) ラ ミ ニ ン421の悪 性 黒色腫 への直接 作用を 示す方法 について 、2)悪性黒 色腫細 胞株に よ る 、 リン パ 管 内皮 細胞培 養上清へ の遊走 能の違い にっいて 、3)ラミニ ン421は生体 の ど こ に存 在 し てい るか、4)悪 性黒色腫 の転移 において ラミニ ン421は どこで 作用し て いるか、 につい ての質問 があった。次に、主査山本有平教授より、1)血管内皮細胞に 発 現するラ ミニン との作用 の違いについて、2)臨床応用への展望についての質問とコメ ントがあった。いずれの質問に対しても申請者は自らの研究内容と文献を引用し、妥当な 回答をした。

  こ の論 文 は ,ラ ミニ ン421がLECに よって 産生・分 泌され ,さらに 悪性黒色 腫細胞 に 対してケモタキシス活性を有することを初めて示した点で高く評価され,今後,悪性黒色 腫 の 病 態 の 解 明 や 新 た な 診 断 お よ ぴ 治 療 法 の 開 発に っ な がる こ と が 期待 さ れ る。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ 申 請者 が 博 士( 医学) の学位を 受ける のに充分 な資格を 有する ものと判 定した 。

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参照

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