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博 士 ( 獣 医 学 )花 房泰 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 )花 房泰 子

    

学 位 論文 題名

バベ シ ア原 虫感 染に とも なう免疫 応答、

  

病 態 な ら び に 原 虫 表 面 抗 原 の 解 析 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  

バベシア原 虫感染症においては、宿主が致死的な症状を示す原 虫 と、 宿主 が 激烈 な 症状 を 示さず生存す る原虫が知ら れている が 、そ の病 態 形成 に 関与 す る機序の詳細 は明らかでは ない。ま た 、バ ベシ ア 原虫 感 染馬 は 低寄生率で原 虫を保有する ことがあ り、確実 な診断法の開 発が望まれている。本研究では、まずパベ シア原虫 感染症におけ る宿主の免疫反応と病態形成の関連につい て、

2

種の バベシア原虫を 用いて解析を 行った。次い で、原虫表 面抗原のエピトープ解析を行った。

  

まず致死的 な症状を示さ ない系として 、

Babesia microti

感染 マウスに おける宿主免 疫反応の解析を行った。これまで、宿主体 内からの

B

 microti

排 除機構には、T 細胞の関与が重要であると さ れ て い た が 、 詳 細 は 明 ら か に さ れて い なか っ た。 そこ で 、

BALB/c

マ ウ ス 、

CD4+

も し く は

CD8+T

細 胞 欠 損 マ ウ ス 、 お よ び

severe combined immunodeficient (SCID)

マウスを用いた解析を 行 った 。そ の 結果 、

B. microti

の排 除 には

CD4+T

細 胞と 、そ の 産生する

interferon‑gamma (IFN‑

ア)が重要であることが示唆さ れ た。

B. microti

感染 防 御に は

T

細胞が重要で あることから

T

細 胞 クロ ーン を 樹立 し 、

SCID

マウス に受け身移入 して、その感 染 防 御能 を調 べ た。 そ の結 果 、樹立した

T

細 胞ク口ーンのう ち

3

株 が感染初期の原虫増殖を顕著に抑制した。さらに、

B

 microtl

感 染 マ ウ ス に お け る サ イ ト カ イ ン 産 生 を 測 定 し た と こ ろ 、

interleukin‑2 (IL‑2)

、IL‑4 、tumor necrosis factor ‐alpha (TNF ー

a

)、一酸化窒素(N0 )のいずれも血清中の濃度は検出限界以下で あった。

  

病態の形成 には、宿主の免疫反応、特に過度のサイトカインの

産生が関与することが知られている。B .

mjcr

〇巧感染宿主が、高

い寄生率 を示したにも 関わらず、死亡しなかったのは、本原虫が

(2)

組織に障害を与えるサイ卜カインを誘導しないことに起因する可 能性が考えられる。そこで次に寄生率が低いにも関わらず宿主が 死亡する例として、B ,

 cabaDi

実験感染馬における病態解析を 行った。

    B

. caballi 実験感染馬における病理学的検索の結果、増殖性糸 球体腎炎と肺水腫が認められ、直接の死因は肺水腫による呼吸不 全と考えられた。このような病態形成には、サイ卜カインやフリ ーラ ジ カ ル が 関与 し て い る こと が 知 ら れ て いる 。 そ こ で 、

B

 caballi

感染馬における末梢血リンバ球のサイ卜カイン

mRNA   

の発現を、reverse transcriptase polymerase chain reaction

(RT‑PCR)

法 に よ り 調 べ た 。 そ の 結 果 、

1

頭 で は

IFN‑7

TNF‑a

IL‑2

、` 別の個 体に おいて は

TNF‑amRNA

の発現が増強 されていた。いずれの個体においても

IL‑4 mRNA

の発現に変化は 見られなかった。さらに

NO

の産生を調べたところ、デキサメサ ゾン

(Dex)

投与馬の感染末期において、血清中の

NO

レベルが上昇 していた。そこで、1 頭のウマに

Dex

とアミノグアニジン(AG) を 投与して感染経過を調ぺたところ、

AG

非投与馬と比較して

AG

Dex

投与馬で高い寄生率と低いNO レベルが認められたが、ウマは 最終的には死亡した。以上の結果から、B . caballi 感染馬におい ては、

NO

TNF‑a

が誘導され、これらが原虫増殖抑制ならびに 病態の形成に関与していることが示唆された。同時に組織障害に はNO 依存性の経路と非依存性の経路が存在することが予想され た。

  

次に、ウマピ□プラズマ原虫感染馬の確実な血清診断の系を確 立す る た め に 、

B

 equi

30kDa

ピ口プ ラズム 主要表 面抗 原 ゆ30) 上のB 細胞工ピトープの同定と解析を行った。その結果、ペ プ チ ド

123FYQEVLFKGFEAV135

が 、 最 も 強 い 陽 性 反 応 を 示 し、この領域に主要なB 細胞エピトープが存在することが明らか となった。また、B . equi p30 に対するモノク口ーナル抗体(MAb)

36/133.97

によって認識されるエピ卜ープ領域の同定を行った。

その 結 果

27ASGA¥rV DFQLESI39

の 領域が 極めて 強い陽 性反 応

を示し、この領域にェピ卜ープが存在することが明らかとなっ

た。しかし、今回同定した

B

細細胞エピ卜一プと

MAb 36/133.9

ェピ卜ープはアミノ酸配列が異なっているうえ、一次構造上でも

100

アミノ酸残基程度離れた領域に存在していた。そこで、

MAb 36/133.9

B

eq

p30

に対する結合が、感染馬血清によって阻

(3)

害されるか否かを確認する目的で競合阻害

ELISA

を行った。そ の結果、

MAb 36/133.97

と感染馬血清の間で競合が起こること が確認された。この結果は、B . equi p30 の高次構造に起因する ものであると考えられる。

  

以上の結果より、バベシア原虫感染症における病態形成機序の

一端が明らかとなった。また、今回同定したB . equip30 上のB 細

胞工ピトープ領域は、株間で多様性に富む領域であったが、数種

の抗原を組み合わせることにより、ウマピ口プラズマ症の診断用

抗原として使用できる可能性が示された。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助 教 授

小 沼    操 橋 本    晃 神 谷 正 男 杉 本 千 尋

     学位論文題名

バベシア原虫感染にともなう免疫応答、

病 態ならび に原虫表面抗原の解析

  パ ベ シ ア 原 虫 感 染 症 に お い て は 、 宿 主 が 致 死 的 な 症 状 を 示 す 原 虫 と 、 軽 い 症 状 で 生 存 す る 原 虫 が 知 ら れ て い る が 、 そ の 病 態 形 成 の 機 序 は 明 ら か で は な い 。 ま た 、 パ ベ シ ア 原 虫 感 染 馬 は 低 寄 生 率 で 原 虫 を 保 有 す る こ と が あ り 、 確 実 な 診 断 法 の 開 発 が 望 ま れ て い る 。 本 研 究 で は 、2種 のパ ベシ ア 原虫 感 染 症 に お け る 宿 主 の 免 疫 反 応 と 病 態 形 成 の 関 連 に つ い て 解 析 を 行 う と と も に 、1種 の 原 虫 表 面 抗 原 の エ ピ ト ー プ 解 析 を 行 っ た 。

  ま ず 致 死 的 な 症 状 を 示 さ な い 系 と し て 、Babesia micrd感 染 マ ウ スに おけ る 宿主 免疫 反応 の解 析 を 行 っ た 。 こ れ ま で 、 宿 主 体 内 か ら のBm曲 ・0d排 除 機 構 に は 、T細 胞の 関与 が 重要 であ ると され て い た が 詳 細 は 明 ら かに され てい なか っ た。 解析 の結 果 、B.m向 .0ロの 排除 にはCD4゛T細胞 と、 その 産 生 す るmterferonlgamma(IFN. ア) が重 要で ある こ とが 示唆 され た 。そ こでT細胞クローンを樹立 し、SCID マ ウ ス へ の 受 け 身 移 入 実 験 に よ っ て 、 そ の 原 虫 排 除 能 を 調 ぺ た 結 果 、 樹 立 し たT細 胞 ク 口 ー ン の う ち3株 が感 染初 期の 原 虫増 殖を 顕著 に 抑制 した 。し かし 、B.mね口 ロ感 染マ ウ スで は、mtedeukm・2nL・ 2)、IL.4、山mornecrosbfactor・mpha卩NF,a)、一酸化窒素叫0)のいずれも検出されなかった。B,m向・0d 感 染 宿 主 が 、 高 い 寄 生 率 を 示 し た に も 関 わ ら ず 、 死 亡 し な か っ た の は 、 本 原 虫 が 組 織 に 障 害を 与 え る サ イ ト カ イ ン を 誘 導 し な い こ と に よ る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 次 に 、 寄 生 率 が 低 い に も 関 わら ず 宿 主が死 亡する例として、B.ca6a口 実験感染馬における病態解析 を行った。

  Bcaballi実 験 感 染 馬 に お け る 病 理 学 的 検 索 の 結 果 、 増 殖 性糸 球体 腎炎 と 肺水 腫が 認め られ 、 直接 の 死 因 は 肺 水 腫 に よ る 呼 吸 不 全 と 考 え ら れ た 。 実 験 感 染 馬 に お け る 末 梢 血 リ ン パ 球 の サ イ ト カ イ ン mRNAの 発 現 を 調 べ た 結 果 、1頭 で はIFN‑ア 、TNF‑aIL2、 別 の 個 体 に お い て はTNF‑aの 発 現 が 増 強 さ れ て い た 。 さ ら にNOの 産 生 を 調 べ た と こ ろ 、 デ キ サ メ サ ゾ ン 投 与 馬 の 感 染 末 期 に お い て 、 血 清 中 のNOレ ベ ル が 上 昇 し て い た 。 以 上 の 結 果 か らBcaballi感 染 馬 に お い て は 、NOTNF‑aが 誘 導 さ れ 、 こ れ ら が 原 虫 増 殖 抑 制 な ら び に 病 態 の 形 成 に 関 与 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。   次 に 、 ウ マ ピ ロ プ ラ ズ マ 原 虫 感 染 馬 の 簡 便 な 血 清診 断 の系 を確 立す るた め に、B equiピ 口プ ラズ ム 主 要 表 面 抗 原(p30)上 のB細 胞 エ ピ ト ー プ の 同 定 と 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 感 染 馬 血 清 が 認 識 す るB細 胞 エ ピ ト ー プ とB equi p30に 対 す る モ ノ クロ ーナ ル抗 体(MAb)が認 識 する エピ トー プ は別 の領 域 に 存 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ ら ニ つ の エ ピ ト ー プ は ア ミ ノ 酸 配 列 が 異 な る う え 、 一 次 構 造 上 で も100ア ミ ノ 酸 残 基 程 度 離 れ て 存 在 し て い た が 、 競 合 阻 害 試 験 の 結 果 、MAbと 感 染 馬 血 清 抗 体の 間で 競 合が 起こ るこ と が確 認さ れた 。こ の 結果 は、B equi p30の 高次 構造 に 起因 する もの であ る と考 えら れ た。

    967

(5)

  

本研究はバベシア原虫感染症における病態形成ならびに

B

細胞工ピトープの解析に重要な知見を

提供するものである。よって審査員一同は花房泰子氏が博士(獣医学)の学位を受けるのに十分な

資格を有するものと認めた。

参照

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