• 検索結果がありません。

博 士 ( 医 学 ) 藤 永 雅 彦

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 医 学 ) 藤 永 雅 彦"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 医 学 ) 藤 永 雅 彦

     学 位 論 文 題名

Teratogenicity of nitrous oxide      ( 亜 酸 化 窒 素 の 催 奇 性 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  亜 酸化窒 素は,今日に至るまで150年以上にわたって広く臨床麻酔で使用されている。しかしな がら,亜酸化窒素は動物実験による催奇性が証明されており,その妊婦への使用の是非がこれまで にたびたび論争されてきた。にもかかわらず,亜酸化窒素による催奇性のメカニズムはこれまでよく 解 明され ていなかった。一連の研究においてラットのめwvo及びin vitroの実験モデルを用いて,

そのメカニズムを研究し,その成果をこの論文に要約した。

  これまでにわかっている亜酸化窒素の生化学的な作用は,メチオニン合成酵素阻害作用である。

亜酸化窒素は,この酵素の助酵素であるビタミンB12を不活化することによってメチオニン合成酵素 の 活性を 阻害し,生体内のDNA合成障害とメチル反応障害を引き起こす。このどちらもが,成長を 阻害し奇形を誘発すると考えられている。そこで,メチオニン合成酵素の生成産物である葉酸化合 物やメチオニンを投与することによって,亜酸化窒素の催奇性を阻害することができるという仮説を たて,検証した。

  一 方,メ カニズ ムは未 だに解 明されていないが,亜酸化窒素の生理学的な作用として交感神経 刺激作用がある。このことから,交感神経刺激作用によって子宮血流量が低下し催奇性が誘発され る,という仮説をたてた。この検証のために,子宮血流量を改善することが報告されているアドレナリ ン 作動性Qユ受容 体(以 下aエ受 容体)阻害薬を投与し,亜酸化窒素の催奇性に対する影響を調べ た。さらに,亜酸化窒素によって誘発される内臓転位症がai受容体刺激作用によるという仮説をた て,一連の実験を行った。

  伽vivoの実 験モデ ルは,1967年にFinkらが確立したものを応用した。Finkらは,妊娠ラットの 胎 生9日 目 に ,50―75%亜 酸化窒 素を48時 間以上 にわたっ て暴露 させ, 胎生21日 目(予 定出産 日の一日前)に胎児の成長過程を精査すると,高頻度の骨格異常や成長障害が見られることを確立 し た。本 研究で は,75% 亜酸化 窒素の24時間暴露をさまざまな胎生日に行い,それら以外にも奇 形が誘発されるかどうかを調べた。それに加えて,亜酸化窒素暴露と同時に様々な薬物投与を行い,

それぞれの催奇作用に対する阻害の有無を調べた。

  伽vitroの実験モデルは,1970年代にNewらによって確立された

「WholeEmbryoCultureSystem亅(全胚芽培養)を応用した。妊娠ラットの胎生8あるいは9日目に全胚

111

(2)

芽を顕微鏡 下に摘出し,回転式培養ボ トルを用いて48−72時間にわ たって培養し,胚芽の成長過 程 を顕 微鏡 下 に精 査し た。亜酸化窒素は培養ボトル の中のガス層に飽和させ, また培養液中に 種々の薬物 投与を行うことによって,それぞれの薬物の亜酸化窒素による催奇作用に対する阻害の 有無を調べ た。この実験モデルの有利な点は,母体を介した間接作用を排除することによって,亜 酸化窒素の胚芽への直接作用を調べることができるということと,種々の薬物の効果を系統的により 容易に調べることができるということである。

  伽VIVOの 実験モデルを使用した実験 から,次のような結果が得ら れた。亜酸化窒素に対する催 奇作用が強 く誘発されるのは,胎生8,9,及び11日目である。胎生8日目の亜酸化窒素暴露によっ て,流産, 軽度の骨格異常(肋骨及び椎骨の異常),そして内臓転位症が誘発される。内蔵転位症 の誘発は今 までに報告のない新しい発 見であった。胎生9日目の亜酸化窒素暴露によって,重度の 骨格異常が 誘発される。胎生11日目の 亜酸化窒素暴露によって,流 産のみが誘発される。葉酸化 合物の投与 は,軽度の骨格異常は阻害したが,他の催奇作用に対しては効果がなかった。フェノキ シベンザミ ン(長時間作用性ai受容体阻害薬)は,流産と軽度の骨格異常は阻害したが,他の催奇 作用に対しては効果がなかった。

  励vitroの実験モデルを使用した実験からは,次ぎのような結果が得られた。メチオニン投与によ って,内臓 転位症以外の亜酸化窒素によるほとんどの催奇作用が阻害された。それに対し,葉酸化 合物の投与 はほとんど効果がなかった 。め VOとぁvitroの実験モデ ルでは,観察される催奇作用 が異なることに留意する必要がある。aエ受容体阻害薬であるプラゾシン(フェノキシベンザミンより特 異性の高いaユ受容体阻害薬)が亜酸化 窒素による内臓転位症を阻 害した。aエ受容体刺激薬であ るフェニレフリンのみでも内臓転位症を誘発した。さらに,そのメカニズムに細胞内カルシウムの増加 によるカルシウムーカルモジュリン依存性プロテインキナーゼ2型の活性化が関与していることを証 明した。

  今回の一 連の研究によって,多くのメカニズムが亜酸化窒素による催奇性の原因として関与して いることが証明された。その中でも大きな要素は,亜酸化窒素の,1)メチオニン合成酵素阻害作用,

2)交感神 経刺激作用,のニっである。 メチオニン合成酵素阻害作 用は,DNAの合成障害とメチル 反応障害を 引き起こす。特に後者は,亜酸化窒素による催奇性の最も重要な要素である。交感神経 刺激作用は ,母体の子宮血流量低下と 胎児に対する直接のQエ受容 体の活性化を引き起こす。特 に後者は, 内臓転位症を誘発する。メチオニンの亜酸化窒素による催奇性を阻害するメカニズムを さらに解明していくのが,今後の課題である。

‑ 112

(3)

学位論 文審査の要旨

     学位論文題名

Teratogenicity of nitrous oxide      ( 亜 酸 化 窒 素 の 催 奇 性 )

  まず,学位論文の要旨について以下のような発表が行われた。

  一 連の研究 におい てラット の面wvo及び由vitroの 実験モデルを用いて,亜酸化窒素に よ る催奇性のメカニズムを研究した。これまでに解明されている亜酸化窒素の生化学的な 作 用はメチオニン合成酵素阻害作用である。そこでメチオニン合成酵素の生成産物である 葉 酸化合物やメチオニンを投与することによって,亜酸化窒素の催奇性を阻害することが で きるという仮説をたて検証した。一方,メカニズムは未だに解明されていなぃが,亜酸 化 窒素の生理学的な作用として交感神経刺激作用がある。このことから交感神経刺激作用 に よって子宮血流量が低下し催奇性が誘発されるという仮説をたて、アドレナリン作動性 0】受容 体(以下ai受容体 )阻害薬の亜酸化窒素の催奇性に対する影響を検討した。さら に 亜酸化窒 素によ って誘発 される内 臓転位 症がai受容 体刺激作用によるという仮説をた て一連の実験を行った。

  あvivoの実 験 モ デル は,1967年 にFinkらが 確立した ものを応 用した 。In vitroの実 験 モ デ ル は ,1970年 代 にNewら に よ っ て 確 立 さ れ たWhole Embryo Culture System

(全胚芽培養)を応用した。

  Inガゅの実験モデルを使用した実験から,次のような結果が得られた。亜酸化窒素暴露 によって,流産,軽度および重度の骨格異常,そして内臓転位症が誘発された。葉酸化合物の投 与は,軽度の骨格異常の誘発を抑制したが他の催奇作用は抑制しなかった。Q】受容体阻害 薬 であるフェノキシベンザミンは,流産と軽度の骨格異常の誘発を抑制したが他の催奇作 用は抑制しなかった。んviti.Dの実験モデルを使用した実験からは,次のような結果が得ら れた。メチオニン投与によって内臓転位症以外の亜酸化窒素による催奇作用が抑制された。

そ れに対し葉酸化合物は催奇作用を抑制しなかった。フェノキシベンザミンより特異性の 高いa1受容体阻害薬であるプラゾシンが,亜酸化窒素による内臓転位症の誘発を抑制した。

逆 に01受容体刺激薬であるフェニレフリンが内臓転位症を誘発した。さらに,そのメカニ ズ ムに細胞内カルシウムの増加によるカルシウム―カルモジュリン依存性プロテインキナ ーゼ2型の活性化が関与していることを証明した。

    ―113―

一 弘

   

   

物 間

本 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  今回の一連の研究によって,多くのメカニズムが亜酸化窒素による催奇性の原因として 関与し ている ことが証明された。その中でも大きな要素は,亜酸化窒素の1)メチオニン 合成酵素阻害作用,2)交感神経刺激作用のニっである。メチオニン合成酵素阻害作用は,

DNAの 合成障 害とメチル反応障害を引き起こす。特に後者は亜酸化窒素による催奇性の最 も重要な要素である。交感神経刺激作用は,母体の子宮血流量低下と胎児に対する直接の al受容体の活性化を引き起こす。特に後者は内臓転位症を誘発する。亜酸化窒素による催 奇性を メチオ ニンが抑 制する メカニズ ムをさらに解明していくのが今後の課題である。

  以上が学位論文の要旨に関する発表であり,この発表について主査および副査からの質 疑があった。

  まず, 副査の吉岡教授より,1)亜酸化窒素による催奇性は,投与される亜酸化窒素の 濃度に 依存す るか,2)亜酸化窒素に交感神経刺激作用があるとすると,そのメカニズム はいか なるも のが考えられるか,3)亜酸化窒素による催奇性にはエンブリオの時期にai 受容体 を介し たCaM kinaseの活 性化が関与しているとすれば,亜酸化窒素以外の物質で もCaM kinaseを活性化するものは内臓転位症を誘発しうるのか,といった質問があった。

  続いて ,副査の本間教授より1)臨床的に亜酸化窒素は催奇性を持つことが示されてい るか,2) 内臓転位症の誘発は亜酸化窒素に特異的な作用なのか,あるいは他の麻酔薬で も誘発 しうる のか,3)子宮血流の低下はいろいろな要因で起こりうるが,なぜ亜酸化窒 素によ る子宮 血流低下は催奇性の原因となり得ると考えられるか,4)鳥類における催奇 性との関連,などに関する質問があった。

  最後に 主査の 劔物教授 より1)むvivoと由vitroで結果が異なる点についてはどのよう に説明 できる のか,2)この研究結果より導出される亜酸化窒素の臨床使用における問題 点 ( 妊 娠 す る 可 能 性 の あ る 患 者 へ の 投 与 の 可 否 ) に 関 す る 質 問 が あ っ た 。   以上の質問に対して申請者は,自らの実験結果と過去の文献を引用し,おおむね適切に 回答した。

  この論文は亜酸化窒素が催奇性をもつことを明らかにし,またその機序についても解明 したことで評価され,今後,他の薬剤による催奇性の機序解明への応用や, 亜酸化窒素の 臨床における適切な使用方法の確立に役立っことが期待される。

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに 十分な資格を有するものと判定した。

114

参照

関連したドキュメント

→放射状岩脈群をもつ大規模な海底複成火山→背斜軸上の割れ目噴火による陸上の複

質の蓄積抑制による効果も考えられる.犬の正常心においてL

   次に,グルコシルセラミド由来の内在性スフインゴ糖脂質を枯渇させることが可能であ るグ ルコシ ルセラミ ド生合成酵素阻害剤(D 一 PDMP )を用い内因性GM3 のインスリンシグ

   胆 管 上皮によ るEMS の 被覆は , 2 週 後には 70 %の症例 で観察 された。 4 週以 降では 全例に 認め, 55 %では EMS のほ ぼ全体が

また , 今回 の実 験結 果 から 刺激 による内皮細胞からの EDRF 放出には細胞外或いは 細胞内 Ca2+ の動態が深く 関与することが示された。 従来,agonist による細胞内

   これを要するに、著者は、高速増殖炉用燃料被覆管材として、P 、B 、Ti およ び Nb の成分調 整と複合添 加により改良した SUS316

   第6 章では、まず三元系 FeCl3 ーPbCl2 −GIC の加圧成形した状態での抵抗率と三元系 FeCl3 −PbCl2

Na , K‑ATPase と GLUT1 にもこれに 類似した 量的関係が認められたが、 HK 型、 LK 型の網状赤 血球のTfR 含量は同程度であった。これらの成績は、 HK 型とLK 型は stomatin