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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

液中の気泡核特性を考慮した均質媒体モデルによる キャビテーション流れの数値解析

鶴, 若菜

https://doi.org/10.15017/1931905

出版情報:九州大学, 2017, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

液中の気泡核特性を考慮した 均質媒体モデルによる

キャビテーション流れの数値解析

鶴 若菜

博士学位論文

九州大学大学院 工学府 機械工学専攻 2018年2月

(3)
(4)

i

目次

第1章 緒論 1

1.1 キャビテーションに関する研究の大要 1

1.2 キャビテーションの発生および形態に影響を及ぼす因子 3

1.3 キャビテーション流れの数値解析に関するモデルの大別と既往研究 4

1.4 キャビテーションの初生と気泡核挙動 7

1.5 本論文の目的と概要 8

第2章 翼周りのキャビテーション流れに及ぼす 気泡核数密度分布および溶存空気の影響 10

2.1 本章の目的 10

2.2 実験装置と方法 11

2.2.1 実験装置と供試翼 11

2.2.2 計測方法 15

2.2.3 実験条件 24

2.2.4 実験手順 29

2.3 単独翼周りのキャビテーション流れにおける 気泡核および溶存空気量の影響 30

2.3.1 気泡核数密度分布 30

2.3.2 時間平均揚抗力とキャビテーション様相 35

2.3.3 キャビティの様相と揚抗力係数の時間変動 46

2.4 本章のまとめ 57

第3章 均質媒体モデルによる翼周りのキャビテーション流れの数値解析 59

3.1 本章の目的 59

3.2 解析方法 59

3.2.1 解析モデル 59

3.2.1.1 Schnerr-Sauer(SS)モデル 60

3.2.1.2 Bubble Droplet 1(BD1)モデル 61

3.2.1.3 乱流モデル 62

(5)

ii

3.2.2 解析条件 66

3.2.2.1 キャビテーションモデルのパラメータ 67

3.3 異なる気泡核数密度を適用した数値解析 70

3.3.1 時間平均翼面圧力分布と揚抗力 70

3.3.2 キャビテーション様相と揚力の時間変動 73

3.3.3 キャビテーションの初生位置 79

3.4 本章のまとめ 80

第4章 シートキャビテーション初生過程に対する 気泡核特性と溶存空気の影響の実験的解明 81

4.1 本章の目的 81

4.2 実験装置と方法 82

4.2.1 実験装置 82

4.2.2 実験方法 84

4.2.3 実験条件 88

4.3 シートキャビテーションの初生の様相 91

4.3.1 主流中の単一気泡核からのシートキャビテーション初生過程 94

4.3.2 キャビテーション形態 97

4.3.3 溶存空気の影響 100

4.4 本章のまとめ 102

第5章 気泡核の流動挙動のLagrange解析とそれによる 気泡核数密度の空間分布を考慮したキャビテーション流れの解析 103

5.1 本章の目的 103

5.2 解析方法 103

5.2.1 Euler法における解析方法 103

5.2.2 Lagrange法による解析方法 105

5.2.2.1 単一気泡核の運動と成長 105

5.2.2.1.1 気泡にはたらく様々な力 105

5.2.2.1.2 本解析における気泡核の運動方程式 107

5.2.2.1.3 気泡核の成長 110

5.2.2.2 気泡核の運動および成長の解析方法 111

5.2.2.3 気泡核数密度比の算出 111

5.2.2.4 気泡核数密度比を導入したEuler解析 112

(6)

iii

5.3 解析結果 113

5.3.1 非キャビテーション流れのCFD解析結果 113

5.3.2 One-Way Euler-Lagrange法による解析結果 116

5.3.3 気泡核数密度の空間分布の算出結果 120

5.3.4 気泡核数密度の空間分布を考慮した シートキャビテーション初生の解析 126

5.4 本章のまとめ 132

第6章 結論 134

謝辞 140

記号

参考文献

(7)
(8)

1

第1章

緒論

1.1 キャビテーションに関する研究の大要

キャビテーションとは,液体の増速により,局所的に圧力が飽和蒸気圧以下となり,

液体が蒸発する気化現象である[1].この現象は,高速回転するポンプや水車などの流体 機械のみならず,管路やバルブなどでも生じる[2].さらに,水や油,液体燃料などあら ゆる液体で起こり得る現象である[3-5].また,図1.1に示すように,キャビテーション はその様相から以下に挙げるいくつかの形態に分類される[1].

バブルキャビテーション

気泡核が物体表面近傍の低圧部を通過する際に,大きな気泡へと成長し下流へ流れ るキャビテーション(図1.1(a)).

シートキャビテーション

物体表面の低圧部に生じるキャビテーション(図1.1(b)).薄い気膜の場合と小さな 気泡が集まった気泡群の場合がある.

クラウドキャビテーション

シートキャビテーションやボルテックスキャビテーションの一部または全部が離 脱し,雲状に見える微小気泡の群となって流下するキャビテーション(図 1.1(c)). ボルテックスキャビテーション

渦コアの低圧部に生じるキャビテーション(図1.1(d)).翼端渦など比較的安定に存 在する縦渦に生じる翼端渦キャビテーションや,カルマン渦などの横渦に生じて流 下するキャビテーションもボルテックスキャビテーションに分類される.

シートキャビテーションの体積変動は,流体機械の振動や騒音を引き起こす.また,

シートキャビテーションはクラウドキャビテーションの放出源であり,流下した気泡

(群)が圧力回復により物体表面近傍で崩壊すると壊食が生じる.このように,キャビ テーションは,工業および産業分野において流体機械の性能低下などの悪影響を与える 現象であり,多くの問題の一因となる.1999年に,H-IIロケット8号機のエンジン内部 で生じたキャビテーションが,エンジンの構成要素であるインデューサの翼の疲労破壊

(9)

2

を引き起こし,ロケット墜落へとつながったと報告されている[6].また,水素製造プラ ントの溶液および水素ガスの循環ポンプ内においてキャビテーションが生じ,これによ り水素ガスの爆発が生じた[7].流体機械の性能低下や事故を防ぐため,インデューサ内 のキャビテーションサージや旋回キャビテーションの抑制[8],管路内のキャビテーシ ョン検知[9]など,キャビテーションによる不安定現象の抑制・制御や機械的損傷の予防 を目的とした研究が多く行われている.

また,キャビテーションの抑制だけではなく,キャビテーション気泡の崩壊圧力を噴 霧の微粒化に応用した燃料噴射弁の提案[10]や,その他にも超音波洗浄機や医療分野に おける超音波キャビテーション[11,12]の応用など,キャビテーションの積極的な利用法 の検討も行われている.

図1.1 キャビテーションの形態の分類

(a) バブルキャビテーション (b) シートキャビテーションと

クラウドキャビテーション

(c) クラウドキャビテーション (d) ボルテックスキャビテーション

(10)

3

1.2 キャビテーションの発生および形態に影響を及ぼす因子

キャビテーションの発生は圧力が飽和蒸気圧より低下することが条件であるが,実際 は低圧だけでは十分ではなく,様々な因子より影響を受ける.以下に主な因子を挙げる.

気泡核

Frenkel [13]は,2分子間のポテンシャルエネルギーを計算することにより,純水中の

分子1個分の点欠陥からキャビテーションを生じさせるためには,約104気圧の負圧が 必要であることを示した.しかし実際の流体機械内で生じるキャビテーションはこのよ うな大きな負圧下ではなく,液体の飽和蒸気圧程度で生じる.このことから,実際には,

キャビテーションの発生を助長する核が存在すると仮定され,ガラスの毛細管などを用 いた実験が行われた[14,15].その結果,水の引張耐力は10~270気圧と分子間ポテンシ ャルより計算された値に比べ小さく,ばらついており,これより液体中には気泡核が存 在し,キャビテーション初生に密接に関係しているとされている.気泡核は,周囲の圧 力がある圧力まで低下すると急膨張する.気泡核が,このような低圧場に十分な時間さ らされることで,キャビテーション気泡(以下気泡)へ成長する.

溶存空気

キャビテーションには,周囲の圧力が飽和蒸気圧以下になると気液界面から蒸発し気 泡核が成長する蒸気性キャビテーションと,液体中に溶解している不凝縮性気体が気液 界面から析出する気体性キャビテーションがある[16].これらの見た目による区別は非 常に困難であり,実際のキャビテーション気泡内は蒸気と不凝縮性気体で満たされてい ると考えてよい.溶存空気の持続的な析出・溶解は拡散に依存するため,蒸発に比べ長 い時間が必要である.溶存空気が過飽和となる低圧場にキャビテーションが生じると,

その気液界面から溶存空気が析出する.また,水道水や天然の水には飽和状態に近い量 の空気が溶けていると考えられ,不飽和水中ではキャビテーションの核となり得ないほ ど小さい気泡核も,低圧の死水域などで溶存空気が析出することにより,キャビテーシ ョンの核となり得る気泡核に成長する場合がある[17].そのため,溶存空気もキャビテ ーション初生および形態に関わる重要な因子となる.

境界層特性

物体表面近傍に生じるキャビテーションにおいては,気泡核,溶存空気に加え,境界 層もキャビテーション初生および形態に影響を及ぼす因子である[18].前節に挙げたバ ブルキャビテーションは,主に試験水中に多くの気泡核が存在する場合,または翼周り の流れなどにおいて,物体表面を層流境界層が完全に覆っている場合,あるいは剥離す ることなく速やかに乱流遷移するような場合に見られる.また,バブルキャビテーショ ンは,最低圧力点付近で気泡核が成長するため,気泡群で構成されるキャビティの前縁 は概ね最低圧力点近傍となる.一方,物体表面上に気泡核が付着することで形成される

(11)

4

シートキャビテーションの前縁は,最低圧力点ではなく,はく離・再付着点と密接に関 係していることが知られている[19].

気泡核は主流中に含まれているものに加え,壁面上の極微小なキズに存在する空洞部 が低圧にさらされ,その界面における蒸発および溶存空気の析出により空洞部が成長し て一部がちぎれることで,壁面近傍を流れるものもある[20].さらに,このようなキズ が低圧域に存在する場合,このキズを起点としたキャビテーションが生じる[21].その ため,表面粗さも重要な因子である.キャビテーションは他にも液体の物性など様々な 因子が関係する複雑な現象である.

1.3 キャビテーション流れの数値解析に関する モデルの大別と既往研究

流体機械の設計・開発段階において,キャビテーション流れの数値シミュレーション による性能予測が広く行われている.ここで,キャビテーション流れのシミュレーショ ン手法は,連続相をEuler的に,分散相をLagrange的に解くEuler-Lagrange法と,連続 相および分散相ともEuler的に解くEuler-Euler法がある.各手法の分類を図1.2に示す.

Euler-Lagrange 法には,まず連続相を解きその情報を基に分散相を解くが,分散相の

運動は連続相に影響しないとしたOne-Wayカップリング法[22]と,連続相と分散相の相 互作用を考慮した Two-Way カップリング法[23-25]がある.この方法により,連続相を 液相として気泡核分布を考慮したシミュレーションが行われている.

Euler-Euler法は均質媒体モデルと二流体モデルに分類される.二流体モデルには,界

面追跡・捕獲モデルがあり,気液界面の圧力が飽和蒸気圧で一定であるとしてその界面 を追跡するモデル[26,27]などがある.多く研究されている方法として,各相の運動方程 式を解かないFront-Tracking法[28],Level Set法[29]およびVoF(Volume of Fluid)法[30]

などがある.Front-Tracking 法は気液の界面にマーカーを設定し,そのマーカーを追跡

する.Level Set法は,各点から界面までの距離により定義されたLevel Set関数の空間,

時間変化を追跡する.VoF法は,次式のように各相の密度 , と気相体積分率(ボイ ド率) によって, = 0は液相, = 1は気相でセルが満たされているとし,0 < < 1 の範囲ではセル内に界面が存在するとしたものである.

= + 1 − (1.1)

二流体モデルは,界面を解像するのに十分な格子数を必要とするモデルや気液各相の 運動方程式を解くものがあり計算負荷が重く,複雑な流体機械内部などのキャビテーシ ョン流れには不向きである.VoF法から派生した均質媒体モデルは,VoF法と同様に混 相流体中の気相体積分率 は0から1までの値をとるが,セル内は気相と液相の均質な 流体として扱う.界面の厳密な取り扱いはできないが計算負荷が二流体モデルに比べ軽

(12)

5

いモデルであり汎用性が高いため,これまでに行われている流体機械の設計・開発にお けるシミュレーションのほとんどが均質媒体モデルによるものである.また,均質媒体 モデルには様々なモデルが提案されており,流体を密度が圧力のみによって変化するバ ロトロピー流体として扱うバロトロピックモデル[31],飽和蒸気圧との圧力差に応じた 湧き出し,吸い込みを表す湧き出しモデル[32]があり,さらに湧き出しモデルには蒸発・

凝縮モデルと気泡流モデルがある.湧き出しモデルは,次式の気相体積分率の輸送方程 式を解く.

∂ + = + 1.2 ここで, は気相密度, は均質媒体の速度, および はそれぞれ蒸発,凝縮の気 液間の質量輸送率である.このモデルは,場の局所圧力が飽和蒸気圧を下回ると気相の 割合が増加するとしたKunzら[33]のモデル,

= min − , 0 1 − 0.5

1.3

= " 1 −

1.4

およびMerkleら[34]のモデル,

= min − , 0 1 −

0.5

1.5

= "max − , 0

0.5

1.6

などがある.ここで, , "は蒸発,凝縮係数であり, は液相密度, は圧力, は飽 和蒸気圧, および は速度スケールおよび時間スケールである.また,気泡流モデ ルとして,簡略化された Rayleigh-Plesset 方程式により流体の密度変化を模擬する Schnerrら[35]によるモデル,

= max − , 0

( 1 − 3

) *2 −

3 1.7

= min − , 0 "

( 1 − 3

) *2 −

3 1.8 もある. (は混合相の密度, )は気泡核半径である.気泡力学モデルなどにおいて,セ ル内を気相が占める割合によらず気泡流として扱っている場合が多く[35,36],セル内が 気相でほぼ満たされるような場合にはモデルの前提から逸脱している.また,バロトロ ピックモデルのように状態方程式を扱うモデルでは圧縮性を扱うことができる[37].

これらの均質媒体モデルを用いたベンチマークテストが行われ,Kato[38]は,均質媒

(13)

6

体モデルによる予測精度にばらつきがあることを報告している.図1.3は,Katoにより 報告された均質媒体モデルを用いた単独翼周りのキャビテーション流れの揚力係数の 予測結果を基に,著者が作成したキャビテーション数に対する揚力係数の図である.図 中に実線で示されているのは実験結果であり,初生後揚力係数がやや微増し,その後ブ レークダウンしているのに対し,均質媒体モデルによる予測結果は,実際より早い段階 でキャビテーションが初生し,ほとんどの場合,初生後に揚力係数が比較的なだらかに 低下している.

流体機械の小型化・高性能化を実現するためには,汎用性が高く高精度なキャビテー ション流れの解析手法を確立する必要がある.

図1.3 均質媒体モデルによる揚力係数(文献[38]より著者が作成)

Euler-Lagrange

Euler-Euler

気泡追跡法

二流体モデル

One-Way Coupling Two-Way Coupling

界面追跡 界面捕獲

図1.2 キャビテーション解析手法の分類

均質媒体モデル 状態方程式モデル

湧き出しモデル

(14)

7

1.4 キャビテーションの初生と気泡核挙動

均質媒体モデルに限らずほとんどのモデルに共通する課題として,シートキャビテー ションの初生の再現が挙げられる.シートキャビテーションの初生は,Knappら[39]お

よびPlesset[40]による詳細な観察や気泡力学の観点から研究される以前は,流れ場の圧

力が飽和蒸気圧以下になると生じると考えられてきた[41].しかし,Knapp らおよび

Plessetの研究に続き,1969年に,同一試験片,同様の実験条件においてタンネルが異な

ると初生キャビテーション数が異なるというJohnsson効果が報告され[42],気泡核や境 界層特性がキャビテーションの初生に大きく関係することが示された.また,Obaら[43]

は,キャビテーションの諸因子の影響を再検討しその程度を解明するため,オリフィス 内の流れを対象に気泡核および溶存空気の飽和度に着目した調査を行い,気泡核の消滅 キャビテーション数への影響や,キャビテーション挙動に及ぼす水の空気飽和度の影響 を示した.しかし,気泡核,溶存空気,境界層特性などの,様々な条件下においてどの ようにキャビテーションが初生するかは未だ十分明らかにはなっていない.

また,数値解析において,Two-Way Euler-Lagrange法による気泡核の空間的分布を考 慮したキャビテーション流れのシミュレーションが行われている[23-25].これらの解析 では,低圧部の上流遠方では Lagrange 的に気泡核を追跡し,閾値を設けて気泡核が成 長した段階でLevel Set関数の時間的,空間的変化を解くLevel Set法などに切り替えて

いる.Hsiaoら[25]による解析では,主流中の気泡核に加え,壁面上に気泡核の生成点が

ばらまかれて配置されており,周波数一定で一定サイズの気泡核が放出されている.

気泡核を追跡するためには,気泡核の並進運動を解く必要がある.ここで,液体中で 運動する気泡核に作用する力は,

① 浮力

② 圧力勾配による力

③ 揚力

④ 抗力

⑤ 付加質量力

⑥ 履歴力

が挙げられる[44].これらの力については,気泡流の分野において研究が行われている.

さらに,固体壁面近傍を流れる気泡核には

⑦ 壁力

が作用する.気泡が壁面の近傍を運動している場合には,たとえ静止流体中でも壁面の

(15)

8

存在により気泡周囲に生じる圧力分布によって壁に垂直な方向の力がはたらき,この力 のことを壁力,壁効果などと言う[45,46].この壁力に関しては研究例が少なく,静止流 体中を運動する気泡にはたらく壁力に関する研究例は数例あるものの[45-47],流中を運 動する気泡に関してはほとんど例がない.壁面近傍から生じるシートキャビテーション の初生を扱う場合,壁力は重要であると考えられるが,気泡の運動方程式を解く研究例 においても,壁力を考慮した例はほとんどない.

1.5 本論文の目的と概要

本研究の目的

本研究では,均質媒体モデルや二流体モデルに共通した課題であるシートキャビテー ションの初生に対し,工業・産業分野に適用可能な手法によるその再現性の向上を目的 とする.とくに,最重要因子である液中気泡核の流動特性とシートキャビテーションの 初生に着目し,以下の項目を実施する.

(a) 単独翼周りのキャビテーション流れにおける気泡核数密度分布 および溶存空気量の影響の実験的解明

(b) 単独翼周りのキャビテーション流れに及ぼす気泡核数密度分布の影響の 均質媒体モデルによる検証

(c) 流れ中の気泡核によるシートキャビテーションの初生過程の調査

(d) One-Way Euler-Lagrange法による気泡核の運動追跡および 気泡核数密度の空間分布のモデル化

(e) 均質媒体モデルによる気泡核の空間分布を考慮した キャビテーション流れの調査

本論文の概要

本論文は,全6章で構成されている.第1章で本研究の背景および目的を述べ,第2 章以降で上述の(a) – (e)の実施結果を述べる.

まず第2章では,液中の溶存空気および気泡核の,物体表面上に生じるシートキャビ テーションの初生,キャビテーションの形態,非定常挙動などに対する影響を明らかに する.その際,シートキャビテーションは物体表面上の境界層の特性に大きく依存する と考えられることから,迎角の異なる単独翼周りのキャビテーション流れにおいて,溶 存空気量の監視のもと気泡核およびキャビテーション様相の観察を行う.さらに,初生

(16)

9

キャビテーション数,揚抗力特性や非定常挙動に及ぼす気泡核数密度分布および溶存空 気量の影響を調査する.

続いて,第3章においては,前章で用いた単独翼を対象に均質媒体モデルによるキャ ビテーション流れの解析を実施する.キャビテーションモデルには気泡力学がベースで

あるSchnerrら[35]のモデルおよび非定常挙動の再現性を向上したYamamotoら[48]のモ

デルを用いる.また,均質媒体モデルの気泡核数を扱う解析において,実際の気泡核分 布を模擬している例は少なく,実際の流れ場をよく再現するためチューニングされた値 が用いられることが多い.モデルのパラメータである気泡核径,気泡核数密度に対して,

モデルで推奨されるデフォルト値と,前章で得られた結果を基に算出した値を用いた場 合の比較を行う.均質媒体モデルにおける気泡核に関するパラメータの,キャビティ初 生位置,および揚抗力特性,非定常挙動への影響を示す.

次に,第4章においては,シートキャビテーションの初生過程に着目し,溶存空気お よび気泡核のシートキャビテーションの初生に対する影響を実験的に調査する.二次元 縮小拡大流路内の流れを対象に,気泡核数密度および溶存空気量の監視のもと,流れ中 の気泡核によるシートキャビテーションの初生過程の観察を行う.また,キャビテーシ ョンが初生し,初生頻度や安定的に存在するキャビテーション数を検討する.

第5章では,気泡核の流動特性を明らかにするため,第4章の二次元縮小拡大流路の 液単相の流れに対し二次元CFD解析を行い,その結果を基にLagrange的に気泡核の追 跡を行う.その際,壁面近傍を流動する気泡核に対して壁力を考慮する.また,初期気 泡核径が異なる場合の追跡を行い,各力の影響および気液のスリップ速度を評価する.

さらに,スリップ速度を用いて気泡核数の空間的な分布を算出する.続いて,気泡核数 の空間的分布を取り入れた均質媒体モデルによる CFD 解析を行い,キャビテーション 初生位置への気泡核数密度の空間分布の影響を検討する.

第6章では本論文の結論を示す.

(17)

10

第2章

翼周りのキャビテーション流れに 及ぼす気泡核数密度分布

および溶存空気の影響

2.1 本章の目的

キャビテーションは,液中に気泡核が存在し,低圧に十分な時間さらされると生じる

[1].また,Numachi[49]およびHammittら[50]は,気泡核に加え空気含有量も重要な因子

であり,空気含有量が初生キャビテーション数に影響することを示した.これまでに行 われた気泡核および溶存空気に関する研究は,オリフィスやベンチュリ管などを用いた 例が多く[43],それらにより初生および消滅キャビテーション数への影響が示されてき た.また,境界層特性が異なる場合におけるキャビテーション初生の観察等により,物 体表面上における境界層特性もキャビテーション流れに影響を及ぼすことが示された [51-52].しかし,境界層特性が異なる場合に,溶存空気および気泡核がどのようにキャ ビティ様相や非定常現象などキャビテーション流れに影響を及ぼすのかは必ずしも明 らかではない.

本章では,単独翼形周りの流れを対象とし,液中の溶存空気量が異なる条件下におけ る,揚抗力および気泡核数密度分布の計測,キャビティ様相の観察を行い,溶存空気お よび気泡核がキャビテーションの初生,キャビティの形態,時間平均揚抗力,非定常キ ャビテーション時のキャビティ変動,揚抗力変動に及ぼす影響を調査した.また,境界 層の特性が大きく異なる低迎角,中迎角,高迎角のそれぞれの場合について調査した.

既往の研究では,溶存空気が気泡核特性に代表される水質の条件を十分に明確にした上 でこれらを調査した例はないため,現象解明だけではなく,キャビテーションのモデリ ングおよび数値解析の検証データとしても貴重であると考える.

(18)

11

2.2 実験装置と方法

2.2.1 実験装置と供試翼

図2.1に示すように,本実験の実験装置は,上部タンク,下部タンク,試験部,回流 ポンプから構成される.図2.2に示す試験部は,高さ200mm,奥行き81.5mmの矩形断 面を有する.図 2.3 に示す供試翼は,翼弦長 c=100mm,スパン長 s=81mm(翼端隙間

τ=0.5mm)のClark Y-11.7%翼である.供試翼の材質は真鍮である.また,キャビティ様

相の観察および気泡核数密度分布の計測のため,試験部の上下面および側面をアクリル 製としている.さらに,上部タンクの上部には,大気解放弁,真空ポンプ,圧縮機が接 続されている.表2.1,2.2,2.3に回流ポンプ,真空ポンプ,圧縮機の諸元を示す.また,

表2.4に翼前縁を原点としたClark Y-11.7%翼の座標を示す.さらに,翼周りの流れを調 査するため,直径 0.5mm の取圧孔を設けた同寸法の翼を用いて翼面圧力分布を計測す る.図2.4および表2.5に取圧孔の位置を示す.取圧孔は翼負圧面に19点,正圧面に6 点の合計25点である.

(19)

12

x y

2.1 キャビテーションタンネル

2.2 試験部

2.3 Clark Y-11.7%翼 Test section

Tank

Circulating pump

Differential pressure transducer

(Venturi flow meter)

High-speed camera

Light Mirror

pref

Side Top

Observed view

200mm

(20)

13

2. 1 回流ポンプ 横軸渦巻流ポンプ(横田製作所)

型式 YM‐3022

吸込口径 300mm

吐出口径 250mm

全揚程 12m

吐出し量 15m3/min

回転数 1200rpm

原動機出力 45kW

2. 2 真空ポンプ

油圧回転型真空ポンプ(大阪真空機器製作所)

型式 0V‐K3000Ⅱ

排気速度 3000L/min

到達真空度 0.005TORR

回転数 380rpm

所要動力 3.7kW

到達真空度 14L/hr

2.4 取圧孔位置

(21)

14 表2. 3 圧縮機

田邊エヤーコンプレッサー(田邊空気機械製作所)

型式 M55-A

回転数 650rpm

行程容積 1.04m3/min

圧力 8.5kgf/cm2

所要動力 8.3PS

2. 4 Clark Y-11.7%翼座標

Clark Y-11.7%翼 後縁厚みを0.52mm (単位: mm)

x ys yp x ys yp

0.000 0.000 0.000 46.000 8.864 -2.044

0.050 0.234 -0.467 48.000 8.736 -1.970

0.100 0.373 -0.594 50.000 8.588 -1.896

0.200 0.580 -0.781 52.000 8.421 -1.823

0.400 0.892 -1.051 54.000 8.237 -1.749

0.800 1.374 -1.429 56.000 8.035 -1.676

1.200 1.786 -1.697 58.000 7.815 -1.602

2.000 2.537 -2.027 60.000 7.577 -1.529

3.000 3.302 -2.261 62.000 7.321 -1.456

4.000 3.913 -2.452 64.000 7.050 -1.384

5.000 4.428 -2.605 66.000 6.763 -1.312

6.000 4.876 -2.713 68.000 6.463 -1.240

8.000 5.643 -2.846 70.000 6.151 -1.169

10.000 6.300 -2.938 72.000 5.827 -1.099

12.000 6.862 -2.996 74.000 5.492 -1.030

14.000 7.344 -3.024 76.000 5.146 -0.962

16.000 7.757 -3.025 78.000 4.790 -0.895

18.000 8.107 -3.005 80.000 4.423 -0.829

20.000 8.392 -2.967 82.000 4.046 -0.764

22.000 8.614 -2.914 84.000 3.659 -0.701

24.000 8.783 -2.852 86.000 3.263 -0.639

26.000 8.908 -2.782 88.000 2.858 -0.580

28.000 9.000 -2.707 90.000 2.444 -0.521

30.000 9.068 -2.631 92.000 2.023 -0.465

32.000 9.119 -2.556 94.000 1.593 -0.410

34.000 9.151 -2.482 96.000 1.154 -0.358

36.000 9.163 -2.409 97.000 0.931 -0.333

38.000 9.152 -2.336 98.000 0.708 -0.308

40.000 9.117 -2.263 99.000 0.484 -0.284

42.000 9.057 -2.190 100.000 0.260 -0.260

44.000 8.972 -2.117

(22)

15

2. 5 取圧孔座標

Clark Y-11.7%翼 取圧孔位置 (単位: mm)

負圧面 圧力面

取圧孔 x ys 取圧孔 x yp

S0 0.00 0.00 P1 10.00 -2.94

S1 3.00 3.30 P2 20.00 -2.97

S2 6.00 4.88 P3 30.00 -2.63

S3 10.00 6.30 P4 40.00 -2.26

S4 15.00 7.55 P5 50.00 -1.90

S5 20.00 8.39 P6 60.00 -1.53

S6 25.00 8.85

S7 30.00 9.07

S8 35.00 9.16

S9 40.00 9.12

S10 45.00 8.92

S11 50.00 8.59

S12 55.00 8.14

S13 60.00 7.58

S14 65.00 6.91

S15 70.00 6.15

S16 75.00 5.32

S17 80.00 4.42

S18 85.00 3.46

2.2.2 計測方法

本実験では,作動流体を常温の水とする.まず迎角を変化させた場合における,非キ ャビテーション状態の翼周りの流れを調査するため,限界流線の調査,翼面圧力分布お よび揚抗力計測を行う.揚抗力計測は,翼を支持する片持ち梁に歪ゲージを取り付け,

曲げ歪を計測する.また,キャビテーション流れに対する,溶存空気および気泡核の影 響を調査するため,実験前の脱気により水中の溶存空気量を変化させて実験を行う.溶 存空気量は,溶存酸素量(DO)を計測し,溶存酸素量により評価する.各 DO 条件に おける気泡核数密度分布の計測,揚抗力計測,キャビティ様相の観察を行う.また,揚 抗力およびキャビティ様相との関係を調査するため,キャビティ様相の撮影は揚抗力の 計測と同期して行う.

測定装置

試験部に流入する流量の計測には,上部タンクと下部タンクの間に設けたベンチュリ 差圧式流量計を用いる.試験部入口の境界層の発達によりベンチュリ差圧式流量計より 得た流量を試験部断面で除した平均流速 Uaと試験部入口の主流流速 Uinに差が生じる ため,レーザードップラー流量計によりUinを計測し,次の校正式を得た.

(23)

16

Uin=1.09Ua+1.28×10-2 (2.1)

図2.2に示す試験部上流の圧力変換器にて試験部入口圧力を計測する.差圧式流量計,

および圧力変換器の出力は動歪計測器,AD変換ボードを介してデジタル信号に変換す る.各計測機器の諸元を表2.6 – 2.9に示す.

揚抗力計測は,表 2.10 に示す歪ゲージを用いて行う.翼を支持する片持ち梁に歪ゲ ージを取り付け,曲げ歪を計測する.溶存酸素量(DO)の計測には,表2.11に示すDO メーターを用いる.気泡核数密度分布の計測およびキャビティ様相の観察は,表2.12お よび 2.13 に示す高速度カメラを用いて行う.また,キャビティ様相の撮影と揚抗力の 計測を同期するため,表2.14に示すアナログ信号入力モジュールを用いる.各計測,観 察等の方法については次節以降に述べる.

翼面限界流線

翼表面上に形成される境界層の状態を確認するため,翼面上の限界流線を油膜法によ り調査する.オレイン酸,タービン油,グリース,および正圧面に赤の顔料を,負圧面 に青の顔料を配合した油膜を塗り,150~300sの間一定流量を流して,油膜パターンを 得る.

翼面圧力分布計測

油膜法による翼面限界流線の調査に加え,図2.4に示した取圧孔を設けた翼を用い て,翼面圧力分布を計測する.各取圧孔は図 2.5に示すように,ポリウレタン製のチ ューブをバルブを介して 5 台の圧力変換器に接続し,全25点の圧力をバルブで切り 替えを行いs0~s4,s5~s9,s10~s14,s15~p1,p2~p6の5回に分け計測する.各回 の始めに計測値が収束するまで放置する.収束後サンプリング周波数を 1024Hz とし て約60s間計測を行い,時間平均をとる.さらに,以下のように圧力係数を算出する.

= −

0.5 (2.2)

揚抗力計測

本実験では取圧孔を設けた Clark Y-11.7%翼と同寸法の取圧孔のない供試翼を用い,

翼に作用する揚力および抗力を計測する.図2.6に示すように,翼根元の台座に取り付 けた20mm×10mmの断面をもつ片持ち梁に歪ゲージをはり付け,翼弦方向の力Fxと翼 弦に垂直な方向の力 Fyを計測する.それぞれの方向について対向面の梁の長さ方向の 同位置に歪ゲージをはり付け,2組の2ゲージ法で2成分の力を計測する.本計測では 翼端隙間を設けているため,流れの翼スパン方向の非対称性からモーメントが生じると 想定されるが,この影響は小さく流体力は翼中央に集中して作用していると仮定して計 測を行う.

(24)

17

供試翼には翼弦方向の力Fxと翼弦に垂直な方向の力Fyが作用し,これによりそれぞ れの方向への曲げ歪εxεyが生じる.FxおよびFyεxεy2変数関数であり,εxεy 微小であると仮定して,FxFyをテイラー展開し一次の項までとると次式を得る.

= +

= + (2.3) また,εxεyは歪ゲージの出力電圧VxVyと比例関係にあるので,

= ! + !

= ! + ! (2.4) と変換できる. ′$i=1,2j=1,2)は検定により次のように求め,

% ′ ′

′ ′ & = '9.94618 −0.01670

0.03067 1.65771 - (2.5) 得られたFxおよびFyから,迎角αを考慮することにより,抗力FD,揚力FLが次式で求 められる.

.

/0 = ' cos 4 sin 4

− sin 4 cos 4- 0 (2.6)

揚力係数CLおよび抗力係数CDを次式のように算出する.

/= /

0.578 (2.7)

.= .

0.578 (2.8) また,揚抗力の変動に対する応答性の確認のため,試験部水中でハンマリング試験を 行い,図2.7 に示すボード線図,および翼弦方向に74Hz,翼垂直方向に 208Hzの固有 振動数を得た.周波数50Hzにおけるゲイン,位相遅れは,翼弦に垂直な方向はそれぞ れ0.51dB,2.3deg.であり,翼弦に水平な方向はそれぞれ0.52dB,8.8deg.であり,この程 度の周波数までは非定常の計測が有効であると考えられる.

キャビティ様相観察

キャビティ様相の観察では,図 2.2 に示す位置に鏡を設け,高速度カメラ(Vision

Research,Phantom V310)を用い翼負圧面および側面の撮影を1台の高速度カメラを用

い同時に行う.フレームレートは8000fpsとし,撮影時間は各1sである.その他の撮影 時の設定を表2.15に示す.また,撮影と同期して,アナログ信号入力モジュールを用い て,揚抗力を計測し,キャビティ様相と各変動の関係を調査する.

気泡核計測と気泡核数密度分布

キャビティ様相の観察と同時に,翼中心から約 130mm 上流に高速度カメラ(Vision

Research,Phantom V4.3)を試験部上面側に設置し気泡核の観察を行う.撮影はバック

(25)

18

ライト法により行い,得られた画像群より気泡核数および気泡核径を計測する.気泡核 数密度分布の計測における高速度カメラの設定を表2.16に示す.

画像処理法を図2.8に示す.この処理は,MATLAB(Math Works社)を用いて行う.

撮影した画像のノイズを除去するため,画像群から平均画像を作成し(①),撮影した 各画像と平均画像の差分をとる(②).その後,Canny法[53]により気泡核の輪郭を検出 する.まず,全画像に平滑化処理を行い輝度値の微分をとる.さらに輝度値の勾配の最 大値を算出し,各点での勾配をその最大値で除した値が閾値以上となる位置を気泡核の 輪郭として検出する(③).輪郭の内側を塗りつぶし,検出された気泡核のうち気泡全 体が撮影範囲の内側にある気泡核のみを計測するため,画像の境界に接している気泡核 を除去し(④),画像内の気泡核数と気泡核の投影面積から球形を仮定して気泡核径を 算出する.さらに,気泡核半径を10µm毎に別けて気泡核数をカウントし,撮影フレー ム数および検査体積(1.5mm×3.1mm×4mm),半径刻み(10µm)で除して気泡核数密度 分布を得る.なお閾値は,各点の勾配を全画像の輝度値の勾配の最大値で正規化した0

~1の範囲で表され,本実験においては,処理結果と撮影動画を目視で比較し閾値を決 定する.

(26)

19 Drag force(FD)

Lift force(FL) Hydrofoil

Flow

strain gauge

cantilever(20mm×10mm)

2.5 翼面圧力分布計測装置

2.6 揚抗力計測部

(27)

20 -30

-20 -10 0 10 20

Magnitude [dB]

100 101 102 103

-150 -100 -50 0

Frenquency [Hz]

Phase [degree]

-30 -20 -10 0 10 20

Magnitude [dB]

100 101 102 103

-150 -100 -50 0

Frenquency [Hz]

Phase [degree]

(b) 翼弦平行方向 (a) 翼弦垂直方向

2.7 揚抗力計測部ボード線図

2.8 気泡核計測画像処理法

(28)

21

2. 6 シリコン・ピエゾ抵抗式圧力変換器

UNIK5000 (GE Sensing & Inspection Technologies)

容量 0kPa~200kPa

精度 ±0.04%

周波数応答 5kHz

2. 7 差圧計

PD-200GA,PD-2KA (KYOWA CO., LTD)

容量 20kPa 200kPa

定格出力 15mV/V以上(3000×10-6ひずみ)±1%

非直線性 ±0.3%RO

ヒステリシス ±0.2%RO

2. 8 動歪計測器

DPM-603A (KYOWA CO., LTD)

出力電圧 ±5V

非直線性 ±0.2%FS

周波数特性 DC~10kHz 偏差±10%

ローパスフィルタ 10,30,100,300,1000Hz カットオフ点-3dB±1dB 約-12dB/oct

2. 9 A / D 変換ボード USB-6210 (National Instruments)

分解能 12bit

入力チャンネル数 8ch

入力電圧範囲 L/H =5V/5V

変換時間 5µsec

非直線性 ±3LSB以下

外部トリガー ±2V以上

(29)

22

2. 10 歪ゲージ

KFWS-2N-120-C1-23 L5M3R (KYOWA CO., LTD)

ゲージ率 (24℃,50%RH) 2.07±1.0%

ゲージ長さ 2mm

ゲージ抵抗 (24℃,50%RH) 120.0±0.8Ω

ゲージ率温度係数 +0.008% /℃

線膨張係数 23.4PPM /℃

2. 11 DOメーター DO-31P (東亜ディーケーケー)

型式 DO-31P型

溶存酸素(DO)測定範囲 0.00~20.00mg/l

溶存酸素(DO)分解能 0.01mg/l

水温 測定範囲 0.0~50.0℃

水温 精度 0.1℃

再現性 0.03mg/l

2. 12 高速度カメラ1

PhantomV4.3Vision Research

センサ SR-CMOS 512×512ピクセル

撮影速度 フルフレーム:1000PPS

分割フレーム:90000PPS

露光時間 最短:10µs

2. 13 高速度カメラ2 PhantomV310Vision Research

センサ SR-CMOS 1280×800ピクセル

撮影速度 フルフレーム:3250PPS

分割フレーム:500000PPS

露光時間 最短:1 µs

(30)

23

2. 14 アナログ信号入力モジュール

USB-6341 (National Instruments)

分解能 12bit

入力チャンネル数 16ch

チャンネルゲインリスト 32

入力FIFO数 512

入力ゲイン 1,2,4,8

2. 15 キャビティ様相観察高速度カメラ設定

PhantomV310Vision Research

分解能 640 x 400 pixels

フレームレート 8000 fps

露光時間 1 µm

撮影時間 1.024 s

2. 16 気泡核計測高速度カメラ設定

Phantom V4.3Vision Research

分解能 256 x 512 pixels

空間分解能 6 μm/pixels

フレームレート 4000 fps

露光時間 10 µm

撮影時間 1.024 s

(31)

24 2.2.3 実験条件

キャビテーションは,流れの境界層特性によりその形態が大きく異なることが知られ ている.そこで本研究において,まず,対象とするClark Y-11.7%翼周りの非キャビテー ション状態における,油膜法による翼面限界流線,翼面圧力分布および揚抗力特性を調 査した結果を示す.

図2.9に迎角-4°~20°の非キャビテーション状態の翼負圧面の圧力分布を示す.縦 軸は-Cp であり,横軸は,翼前縁を基準とした翼弦方向の位置を翼弦長で割った値を示 している.また,レイノルズ数ReRe=cUinl=4.5×1051.0×106である.Clark Y-11.7%

翼のゼロ揚力角に近い迎角-4°では,翼前縁で圧力が上昇し,その後 x/c=0.2 まで圧力 が緩やかに低下し,x/c=0.2 より下流ではほぼ一定の値となっている.迎角 0°および 2°では負圧の目立ったピークが見られず,x/c=0.2付近で最低圧力点となり緩やかに圧 力回復している.迎角4°から迎角が大きくなるにつれて最低圧力点がやや前縁側に変 化しており,前縁付近の負圧が大きくなっていることが見て取れる.また,迎角6°お よび8°の翼面圧力はx/c=0.1~0.2付近で勾配がやや変化している領域が見られ,ここ で層流はく離し再付着していると考えられる.一方,迎角14°では翼前縁で-Cp =5.2程 度から急激に圧力回復し,x/c=0.5より下流ではほぼ一定の圧力に保たれ,この領域では く離していると考えられる.迎角20°ではx/c=0.2程度で翼負圧面圧力がほぼ一定とな っていることから,はく離域がx/c=0.25まで拡大していると推察する.

続いて図2.10に迎角-2°から20°の場合の油膜法の結果を示す.レイノルズ数は翼 面圧力分布と同様にRe=4.5×105~1.0×106である.図より迎角-2°から2°まで,紺色 の矢印で示すように x/c=0.25 付近に油膜のはがれ方が異なる箇所がある.この箇所は,

迎角の小さい最低圧力点の下流に位置しており,この付近で乱流に遷移していると考え る.迎角4°ではこの箇所が上流側へ移動しており,さらに,翼後縁において圧力面か ら回り込んできた赤い油膜で表される乱流はく離域が生じている.この乱流はく離域は,

迎角が大きくなるにつれて上流側へ拡大し,迎角 20°では翼負圧面の約 90%がはく離 領域であることが分かる.白の矢印で翼スパン中央における乱流はく離点を示し,紺色 の矢印で翼スパン中央における乱流遷移点を示す.この矢印が示す点より判断した,迎 角に対する翼面の境界層特性を図2.11に示す.迎角4°程度までは,翼負圧面の最低圧 力点付近で層流境界層から乱流に遷移すると考えられ,迎角が大きくなるにつれて,乱 流への遷移域が翼前縁へと近づいている.迎角約6°から12°程度の間では,翼前縁付 近に層流はく離泡が生じていると推察される.また,迎角に対する非キャビテーション 状態の揚抗力係数を図 2.12 に示す.青の実線が揚力係数を,赤の実線が抗力係数を示 す.揚力係数は迎角が大きくなるにつれ増大し,12°でピークを迎え失速する.約18° から 20°の範囲において揚力係数がほぼ一定となっているが,これは,本研究で用い たタンネルの試験部に対して供試翼のブロッケージが大きく,翼負圧面側の流れが上壁 により押さえられ,はく離しにくくなるためであると考えられる.抗力係数は,迎角が

(32)

25

大きくなるにつれ傾きを大きくしながら単調増加する.揚抗比は2°から 3°の間で最 大となり,これより高迎角側では単調に減少する.以下では,迎角条件を,翼の最低圧 力点付近で層流から乱流に変化すると考えられる迎角2°,層流はく離後再付着する迎 角8°,負圧面の大部分で乱流はく離している迎角20°として,境界層特性が異なる流 れに対する気泡核数密度および溶存空気の影響を調査する.

本実験は,各迎角に対し,溶存酸素量を高DO(大気圧下での飽和溶存酸素量に対し て約70%以上),中DO(約50%),低DO(30%以下)の3条件に分け実験を行う.迎 角2°および8°は試験部入口流速を8.2 m/sとし,迎角20°においては実験装置の構 造上,試験部入口流速を6.0m/sとした.なお,Mtsurnariら[54]がレーザードップラー流 速計(LDV)を用いて計測した入口流速 ULDVより,キャビティの非定常挙動が見られ る状態においても,ULDVの標準偏差は Uinの最大 2%程度であることが分かっている.

よって,試験部入口流速は試験中ほぼ一定を保っており,以下の実験で見られるキャビ テーション様相における入口乱れの影響は十分に小さいものと考えられる.

表2.17~2.19に各迎角に対する実験条件を示す.

(33)

26

2.10 油膜パターン

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 2 4 6

x/c

-C p

Suction surface, -4deg.

Suction surface, 0deg.

Suction surface, 2deg.

Suction surface, 4deg.

Suction surface, 6deg.

Suction surface, 8deg.

Suction surface, 14deg.

Suction surface, 20deg.

2.9 翼負圧面圧力係数

乱流遷移

乱流はく離

(34)

27

0 10 20

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.2 0.24 0.28

L if t C o e ff ic ie n t, C

L

D ra g C o e ff ic ie n t, C

D

Angle of attack, α [deg.]

Lift coefficient Drag coefficient

2.12 非キャビテーション状態における揚抗力特性

2.11 境界層特性マップ

0 10 20

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Angle of attack, α [deg.]

N o rm a li z e d d is ta n c e , x /c

Laminar boundary layer Transition boundary layer

Laminar

separation bubble Turbulent boundary layer

Turbulent separation

(35)

28

2. 17 迎角2°実験条件 高DO条件

溶存酸素量,DO 93 %

試験部入口主流速度,Uin 8.2 m/s

温度,T 31.5℃

レイノルズ数,Re 10.8×105

DO条件

溶存酸素量,DO 49 %

試験部入口主流速度,Uin 8.2 m/s

温度,T 25.4℃

レイノルズ数,Re 9.44×105

低DO条件

溶存酸素量,DO 15 %

試験部入口主流速度,Uin 8.2 m/s

温度,T 31.5℃

レイノルズ数,Re 10.8×105

2. 18 迎角8°実験条件 DO条件

溶存酸素量,DO 86 %

試験部入口主流速度,Uin 8.2 m/s

温度,T 29.4℃

レイノルズ数,Re 10.6×105

DO条件

溶存酸素量,DO 49 %

試験部入口主流速度,Uin 8.2 m/s

温度,T 24.8℃

レイノルズ数,Re 9.17×105

DO条件

溶存酸素量,DO 17 %

試験部入口主流速度,Uin 8.2 m/s

温度,T 31.4℃

レイノルズ数,Re 10.2×105

(36)

29

2. 19 迎角20°実験条件 高DO条件

溶存酸素量,DO 69 %

試験部入口主流速度,Uin 6.0 m/s

温度,T 10.8℃

レイノルズ数,Re 4.44×105

DO条件

溶存酸素量,DO 53 %

試験部入口主流速度,Uin 6.0 m/s

温度,T 11.3℃

レイノルズ数,Re 4.74×105

低DO条件

溶存酸素量,DO 23 %

試験部入口主流速度,Uin 6.0 m/s

温度,T 14.0℃

レイノルズ数,Re 5.07×105

2.2.4 実験手順

実験前後に溶存酸素量(DO)を計測する.DO値に加え,各実験前後に上部タンク内 水位,大気圧および水温を測定し,実験前後の変化が小さいことを確認する.また,試 験部入口圧力 と,測定した水温より飽和蒸気圧 :,液密度 および動粘性係数; を 得て,キャビテーション数σ,およびレイノルズ数Reを以下のように算定する.

< = − :

0.5 (2.8)

=> = 7

; (2.9) 気泡核数密度分布の計測,揚抗力計測,キャビティ様相の観察は同時に行う.試験部 入口流速は一定とし,タンク内圧力を非キャビテーション状態から段階的に下げ,各キ ャビテーション数における各計測および観察を行う.揚抗力のサンプリング周波数を

1024Hz,サンプリング時間を40s間として,全サンプリングデータから時間平均揚抗力

を得る.さらに,キャビティの様相観察は揚抗力計測と同期して行い,キャビティの非 定常挙動と揚抗力の時間変動の関係を調査する.

(37)

30

2.3 単独翼周りのキャビテーション流れにおける 気泡核および溶存空気量の影響

2.3.1 気泡核数密度分布

図 2.13に,迎角2°,8°,20°の非キャビテーション状態からスーパーキャビテー ション状態までの各キャビテーション数および各 DO 条件における気泡核数密度を示 す.横軸は気泡核半径を,縦軸はカウントした全気泡核数を検査体積で除した数密度を 表している.ここで,気泡核半径を映像にて計測するためには,気泡核を少なくとも3 ×

3pixelsで解像する必要があると言われている[55].本計測の空間分解能は6μm/pixelで

あるため,G = 9μm以下の範囲は正しく計測できていない.さらに,画像処理のエッヂ 検出の際の誤差により,G = 20μm以下は正しく計測できていないと考える.図中に破線 で各 DO 条件においてキャビテーションの初生が観察された初生キャビテーション数

(<)を示す.高,中DO条件の気泡核数密度はキャビテーション初生後,キャビテー ション数の低下に伴い増加している.一方,低DO条件は,キャビテーションが初生し てもほぼ一定の値となっている.大気圧 Hにおける飽和溶存酸素量をDOKHLとし,各DO 条件に対して試験部入口で溶存酸素量が飽和状態となる圧力をヘンリーの法則より求 め,Uin=8.2m/sとして以下の式からキャビテーション数<MNKHLを求めると,

<MNKHL =

DODOKHL H:

0.5 (2.10)

高DO条件ではσDOsat=2.0以上,中DO条件ではσDOsat=0.8程度,低DO条件ではσDOsat=0.4

程度となる.また,実際の実験では,迎角2°の高DO条件ではσ=0.60.75程度,迎角 8°の高DO条件はσ=1.6程度,迎角20°の高DO条件はσ=4.7程度から,翼面上のシー トキャビテーションの一部または全部が翼面からはがれ流下するクラウドキャビテー ションが見られた.クラウドキャビテーションとして放出された気泡群が,キャビテー ション数の低下とともに DO 値が高いほど潰れにくくなり,タンネル内を循環するた め,高,中DO条件において気泡核数密度が増加したと考える.また,迎角によらずDO 値が高い条件ほど,キャビテーション数の低下に伴い気泡核数密度が増加する傾向が確 認できる.次に,図2.14に各DO条件における迎角2°の気泡数密度分布を示す.また,

迎角8°の場合の気泡核数密度分布を図 2.15 に,迎角 20°の場合の気泡核数密度分布 を図2.16に示す.横軸は気泡核半径であり,縦軸は半径10µm毎に気泡核数をカウント し,検査体積および半径幅10µmで除した値,つまり各気泡核半径における数密度のス ペクトルを表している.また,比較のため文献値[56-59]も載せている.本研究により得 られた気泡核数密度分布は,過去の研究による値と同様に右下がりの分布となっており,

大きな差異は見られない.どの迎角においても,低DO条件の気泡核数密度分布は,キ ャビテーションの初生,成長に伴い比較的大きい径の範囲でやや増加しているが,高,

中DO条件では,キャビテーション初生後急激に数密度が増加し,分布がグラフの右上

(38)

31

へと移動しているように見える.これは,先に述べたように,タンネルが閉ループ構造 で,一度キャビティによって生成された気泡が潰れずに循環するためである.いずれの 迎角においても,DO条件が異なると,同程度のキャビテーション数でも気泡核数密度 分布は大きく異なることが分かる.

2.13 気泡核数密度 (a) 迎角2°

(b) 迎角8°

(c) 迎角20°

0.5 1 1.5 2

10-1 100 101 102

cavitation number, σ number of bubble nuclei [cm-3 ]

High DO Middle DO Low DO

1 2 3 4 5 6

10-2 10-1 100 101 102 103

cavitation number, σ number of bubble nuclei [cm-3 ]

High DO Middle DO Low DO

1 2 3

10-2 10-1 100 101 102

cavitation number, σ number of bubble nuclei [cm-3 ]

High DO Middle DO Low DO

(39)

32

2.14 迎角2°の気泡核数密度分布

(a)DO条件

(b) 中DO条件

(c) 低DO条件

10-6 10-5 10-4 10-3

103 105 107 109 1011 1013 1015

radius of bubble nucleus [m]

DO = 16%

number density distribution of bubble nuclei [m-4 ]

σ = 1.80 σ = 0.60 σ = 0.50 σ = 0.41 σ = 0.30

Peterson et al. (1975) Cartmill & Su (1993)

Liu & Brennen, LTWT (1998) Keller & Weitendorf (1976)

10-6 10-5 10-4 10-3

103 105 107 109 1011 1013 1015

radius of bubble nucleus [m]

DO = 49%

number density distribution of bubble nuclei [m-4 ]

σ = 1.76 σ = 0.81 σ = 0.69 σ = 0.59 σ = 0.51

Peterson et al. (1975) Cartmill & Su (1993)

Liu & Brennen, LTWT (1998) Keller & Weitendorf (1976)

10-6 10-5 10-4 10-3

103 105 107 109 1011 1013 1015

radius of bubble nucleus [m]

DO = 93%

number density distribution of bubble nuclei [m-4 ]

σ = 1.77 σ = 1.02 σ = 0.82 σ = 0.52 σ = 0.31

Peterson et al. (1975) Cartmill & Su (1993)

Liu & Brennen, LTWT (1998) Keller & Weitendorf (1976)

表 2. 13  高速度カメラ 2  PhantomV310   ( Vision Research )
表 2. 14  アナログ信号入力モジュール
図 2.9  翼負圧面圧力係数
表 3.1  3 次元解析における 境界条件
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参照

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