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本章のまとめ

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 139-158)

第5章 気泡核の流動挙動の Lagrange 解析とそれによる

5.4 本章のまとめ

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以下となることのみがキャビテーションの発生要件であり,さらに気泡流モデルにおい ては,気泡核がそのまま成長してキャビテーションに至ることを想定している.実際に は,乱流遷移後の乱れにより付着した気泡核の一部を起点としてシートキャビティの発 生に至ることから,気泡核の流動と流れの乱れの相互作用を考慮したキャビテーション の初生モデルが必要であると考えられる.また,本章で実施した気泡核の挙動の追跡は 球形気泡を仮定したものであったが,実際には壁面近傍において気泡核は偏平化してお り,各種流体力,とくに壁力および付加質量項が不適当であると考えられる.このため,

実際には偏平化した気泡核が壁上をすべるように流下する様子が観察されるのに対し て,解析結果では気泡核が壁を貫通するなど,両者で相違点が多い.よって,より適切 な気泡核の流体力モデルが必要であると考えられる.さらに,実際のすべりの効果を,

気泡核数密度の空間分布と気相の体積分率の生成項の中で簡単にモデル化したが,これ についてもより適切なモデリングの必要性が指摘される.

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第6章

結論

物体表面に発達するシートキャビテーションは流体機械の性能低下や不安定流動,振 動・騒音,壊食の根源となる悪質な流動現象であり,その CFD 解析による予測精度の 向上は機械の性能向上のみならず信頼性向上の面においても非常に重要かつ急務な課 題である.本研究は,工業・産業分野でも利用可能である低コストでシンプルな均質流 媒体モデルによるシートキャビテーションの予測精度の向上に資することを目的とし,

とくにシートキャビティの形成過程における最重要因子である液中の気泡核および液 中溶存空気量に着目した実験,数値解析を実施した.

第1章では,物体周りに生じるキャビテーションの形態や,既往のキャビテーション モデルの概要と予測精度の現状等の研究背景を述べた上で,本研究の目的を明示した.

第2章では,液中の溶存空気および気泡核が単独翼周りに生じるキャビテーション流 れに及ぼす影響を詳細に明らかにすることを目的に,Clark Y-11.7%単独翼周りの流れを 供試翼として実験を行った.シートキャビテーションの初生・発達に対しては液中気泡 核と翼面上の境界層の干渉が重要であることが考えられたため,境界層の特性が異なる 複数の迎角条件下において,溶存空気および気泡核数密度分布を変化させた場合のキャ ビテーションの初生,形態,時間平均揚抗力係数,キャビティ変動,揚抗力変動を調査 した.

キャビテーションの初生に関しては,翼負圧面上の境界層が層流はく離することなく 最低圧力点直後で乱流遷移する迎角2°では,溶存空気および気泡核数が少ない場合の 方が,それらが多い場合に比べて初生キャビテーション数が小さかった.一方,負圧面 の層流境界層がはく離・再付着して乱流遷移にいたる迎角8°では,初生キャビテーシ ョン数に溶存空気および気泡核数による大きな違いは見られなかった.また,翼負圧面 の大部分が乱流はく離域である迎角 20°では,溶存空気および気泡核数が少ない場合 の方が初生キャビテーション数が小さかった.このように,翼負圧面上に発達する境界 層特性の違いにより,キャビテーション初生に対する気泡核数および溶存空気の影響が 異なることが示された.

一方,発達したキャビテーションの形態については,迎角 2°および8°では,溶存 空気および気泡核数密度が高いと翼前縁付近からバブルキャビテーションが発生し,溶

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存空気および気泡核数が少ない場合は,乱流遷移点または層流はく離点近傍からシート キャビテーションが発生した.一方,迎角20°では,翼面上のキャビテーションの様相 に溶存空気および気泡核数による大きな差は見られなかった.

次に,時間平均揚抗力については,迎角2°では,溶存空気および気泡核数が多い場 合,キャビテーション数の低下に伴い抗力が増大しその後低下することが確認された.

揚力についてはキャビテーションの初生後から減少を開始した.一方,溶存空気および 気泡核数が少ない場合は,キャビテーションはより低いキャビテーション数で初生後す ぐに成長し,キャビテーション領域が大きく変動する遷移キャビティ振動に移行すると 同時に揚力・抗力ともすぐに減少を開始した.迎角 8°では,時間平均揚抗力係数に,

溶存空気および気泡核数による大きな違いは見られず,キャビテーションの初生後に揚 力は微増,抗力は急増し,クラウドキャビテーションを伴う部分キャビティ振動の発生 に伴い,揚力・抗力とも減少に転じた.また,迎角20°では,溶存空気および気泡核数 により初生キャビテーション数は異なっていたが,溶存空気および気泡核数によらず,

キャビテーションが発生すると揚力・抗力ともに急増した.

遷移キャビティ振動時のキャビティの変動について述べると,迎角 2°および8°で は,溶存空気および気泡核数が少ない方が,それらが多い場合に比べて大きくキャビテ ィが変動した.一方,迎角20°では,翼負圧面上で発達,変動するキャビティの様相に 大きな違いは見られなかったが,翼面上のキャビティから放出されるクラウドキャビテ ーションが溶存空気の多い条件の方が翼下流で残存していた.これは,溶存空気が多い 場合には,翼面上のキャビティの形成過程においてより多くの溶存空気がキャビティ内 部に析出し,クラウドキャビテーション内に不凝縮ガスとして残ったためであると考え られる.

遷移キャビティ振動時の揚抗力の時間変動について述べると,迎角 2°および8°で は,溶存空気および気泡核数が少ない場合の方が,変動周期が短く,変動の振幅は大き かった.一方,迎角20°では,揚力変動の周期は溶存空気量が少ない場合の方が短かっ たが,振幅は溶存空気量が多い場合の方が大きかった.揚力変動の振幅は,キャビティ の体積変動の振幅に依存する.迎角2°および 8°では,溶存空気および気泡核が少な い場合にのみ気膜状のシートキャビティが形成されキャビティの体積変動が大きいと 考えられる.一方,迎角20°では,溶存空気量によらず気膜状のシートキャビティが翼 面上に形成されており,溶存空気が多い場合の方がより多量の溶存空気がキャビティ内 に析出するため体積が大きく,体積変動の振幅も大きかったものと考えられる.

第 3 章では,前章の実験で対象とした単独Clark Y-11.7%翼型周りのキャビテーショ ン流れの予測精度の確認を目的に,均質媒体モデルを用いたキャビテーション流れの二 次元および三次元 CFD解析を実施した.とくに,均質媒体モデルにおけるモデルパラ メータとして用いられる気泡核数密度および気泡核径が揚抗力特性やキャビテーショ

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ンの様相に及ぼす影響を調査した.キャビテーションモデルには,気泡流ベースの均質 媒体モデルであるSchnerr-Suaer (SS)モデルおよびそれより派生したBD1VFモデルを採 用し,モデルパラメータにデフォルト値および前章での実験結果から算出した気泡核数 密度と初期気泡核径を適用した.

まず,時間平均揚抗力について述べると,キャビテーションモデルおよび気泡核数密 度の差異による違いは小さく,いずれの解析結果においても,実験より高いキャビテー ション数で揚力の低下が開始した.この傾向は既往のキャビテーションモデルによる解 析でよく見られる傾向と一致している.

次にシートキャビティの内部の構造について述べると,二次元および三次元解析のい ずれの結果においても気泡核数密度が小さい場合に,キャビティ内部のボイド率が小さ かった.また,二次元解析の結果では,気泡核数密度が大きい場合の方が,シートキャ ビテーションの変動が大きく,揚力係数の変動の振幅が小さくなることが示された.一 方,三次元解析の結果では,二次元解析結果に比べ,キャビティの様相および揚力係数 に大きな変動が見られなかった.

また,キャビテーションの初生の予測精度については,キャビテーションモデルおよ び気泡核数密度に依らず,初生キャビテーション数は実験より高かった.しかし,シー トキャビティ形成後のキャビティの前縁の位置を見ると,実験値に合わせた気泡核数密 度が小さい場合の方がより実際に近くなる結果が得られた.このとき,最低圧力点での 圧力が飽和蒸気圧より低かったことから,気泡核数密度が小さい場合においてはまだキ ャビテーション気泡は成長段階にあり,シートキャビティの形成には至らなかったと考 えられる.このように,キャビテーションモデルに単純な均質媒体モデルを使用する場 合においても,モデルパラメータである気泡核数密度の取り扱いにより,少なくともシ ートキャビティ形成開始点,すなわち前縁の位置の予測精度を向上し得ることが分かっ た.

第4章では,第2章および第3章において液中に存在する気泡核の数密度がシートキ ャビテーションの形成過程において重要であることが分かったため,改めて流動する気 泡核を起点としたシートキャビテーションの初生過程を確認・解明することを目的に,

よりシンプルな流れ場である二次元縮小拡大流路内のキャビテーション流れを対象に 実験を行った.実験では,流動する気泡核からキャビテーションの初生に至るまでの観 察を行い,とくにシートキャビテーション初生過程に対する気泡数密度分布および溶存 空気の影響について検討した.

まず,シートキャビテーションの初生については,流路中を流動する気泡が流路縮小 部において壁面に急激に近づき,最低圧力点を通過した後に壁面に接触し,接触部が流 動する気泡から取り残されてシートキャビテーションの初生に至ることが多いことが 分かった.

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