第3章 均質媒体モデルによる翼周りのキャビテーション流れの数値解析
3.2.2 解析条件
本解析においては,式(3.28)による分子粘性の修正は行わないが,Yamamotoら[48]の 手法により渦粘性のみをカットする.時間項には二次精度オイラー陰解法を,移流項は 混合係数を使用しロバスト性を確保するANSYS CFX に実装された High Resolutionを 適用した.収束条件として,各検査体積における各保存式の残差の平方自乗平均が10-4 以下に達したとき収束したとみなした.時間ステップΔtはΔt=1.0×10-5sとした.
境界条件を表3.1に示す.二次元解析では,解析領域の手前と奥の境界を対称境界と する.上下壁面に関しては,第2章の迎角に対する非キャビテーション状態の揚抗力特 性(図2.12)から高迎角(18°~20°)では上下壁面の翼周りの流れに対する影響が見 られるものの,迎角 8°の場合上下壁面の影響はほとんどないと考えられることから,
すべりを許容した壁面境界とした.また,キャビテーション数σ,揚力係数CL,圧力係 数Cpは,液相密度 ',飽和蒸気圧pv,翼中心から 200mm上流の断面平均圧力pref,翼
中心から200mm上流の速度Uinを用いて次式のように定義した.
図3.5 SSモデル(上)とBD1モデル(下)における各相の取り扱い
図3.6 分子粘性および渦粘性のボイド率に対する変化
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0 200 400 600 800 1000
2 4 6
8 [×10-4]
Void fraction, α
f(αv) [kg/m3 ] µm [Pa・s]
µt=f(α)νt,org
Viscosity Filtering (Yamamoto et al., 2015)
Reboud Correction (Reboud et al., 1998)
Standard
67 b = M W−
0.5 'P 9 3.30
\…= j…
0.5†‡ 'P 9 3.31
\O= − M W
0.5 'P 9 3.32 ここで,FLは揚力である.
3.2.2.1 キャビテーションモデルのパラメータ
SSモデルおよびBD1モデルなどのキャビテーションモデルにおいて,いくつかのモ デルパラメータがある.本解析においては,気泡核に関するモデルパラメータである気 泡核数密度 nnucと初期気泡核径 dnucに対し,SS モデルにおいて推奨される nnucおよび dnucを適用した場合と,第 2章で得られた実際のnnucおよび dnucを適用した場合の比較 を行う.BD1モデルのモデルパラメータである気体定数IJ,温度Kなどのnnucおよびdnuc
以外のモデルパラメータは一定として,nnucおよび dnucのキャビテーション流れに対す る影響を調査する.
実験結果と適合するnnucおよびdnucは,図3.7に示す実験により得られた低DO条件 の溶存酸素量が約1.3mg/L(17%)の場合の気泡核数密度分布を用いて算出する.図3.7
より,σ=0.51において気泡核数密度が全体的にやや増加していることが分かる.本実験
装置は閉ループ構造となっており,溶存酸素の飽和圧力から算出したキャビテーション
数σDOsat=0.4に近いσ=0.51 で,キャビテーションにより生じた気泡が残存して循環する
ことにより,気泡核数が増加したものと考えられる.解析には,気泡核が循環すること による気泡核数の増加が見られない,σ =1.10~2.86 における気泡核数密度分布から得 られる,気泡核半径rに対する気泡核数密度分布の近似式N(r),
logŠ * = −3.5 − 3log* 3.28 を用いる.また,非キャビテーション状態での翼面上の負圧のピークCp,minをCp,min =-3.5 と仮定する.さらに,十分に脱気された条件(低DO条件)下の実験でキャビテーショ ン初生が観察されたσ =1.8における主流の圧力を M Wとし,気泡核の体積変化は等温か つ準静的過程であるとして,主流圧力 M Wおよび Cp,minより算出される最低圧力におい て臨界半径*∗となる気泡核の半径rprefをLaplaceの式から得られる
*∗= − 4&
3 − 3.33 より求める.ここで,&は表面張力, は気泡核の周囲の液体の圧力であり, Jは気泡核 内の不凝縮性気体の分圧である.また,気泡核への析出や溶解はないとしている.nnuc
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およびdnucは,臨界半径以上の大きさの気泡核の発泡がキャビテーションの発生に起因 すると考えると,以下の式で算定される.
( -.= ‹ Š * Œ*•
MŽ•• 3.34 Œ -.= 2
( -.‹ *Š * Œ*•
MŽ•• 3.35 以上より,nnuc=2.4×108 m-3,dnuc=3.3×10-6 mを得た.SSモデルで推奨されるdnuc=2.0×10
-6mおよびnnuc =1.6×1013m-3の場合[62]と比較すると,それぞれ気泡核径は1.65倍,気泡
核数は1.5×10-5倍である.初期気泡核径のオーダーは同じであるが,気泡核数密度が大
きく異なる.
図3.8に,実験結果に相当する気泡核数密度が小さい場合(nnuc=2.4×108 m-3)と,そ れよりも10‘倍大きい場合における式(3.5)および式(3.15)から得られる気泡核半径とボ イド率の関係を示す.横軸はボイド率で,縦軸は気泡核半径を示す.また,赤線は気泡 核数密度が低い場合を,青線は気泡核数密度が高い場合を示している.また,BD1モデ ルにおいて分散相を液相とした場合の液滴半径を破線で示す.図3.9に,各気泡核数密 度に対する各モデルにおける分散相の表面積を示す.図3.8と同様に,赤線は気泡核数 密度が低い場合を,青線は気泡核数密度が高い場合を示している.また,液滴に対して は破線で示している.図3.8より,キャビテーション初生時のようなボイド率が小さい 範囲では,気泡核数密度の違いにより気泡核半径がおよそ1 オーダー以上の差があり,
また,気泡核数密度が高い場合の表面積密度は,気泡核数密度が小さい場合に比べ,1 オーダー以上大きいことが分かる.これより,気泡核数密度が大きいとキャビテーショ ン初生が起きやすいと予測される.
境界条件
入口 P’(=8.1 m/s
出口 pref–0.5ρlUin2
上下壁面 Free slip wall
翼面 No slip wall
翼根元側壁面 No slip wall
翼スパン中央断面 Symmetry
表3.1 3次元解析における境界条件
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図3.7 気泡核数密度分布
' %1−%
3 *, 31−% *LMNO [m}e ] * [m}e ]
図3.8 気泡核数密度分布
図3.9 気泡核数密度分布
10-6 10-5 10-4 10-3
103 105 107 109 1011 1013 1015
radius of bubble nucleus [m]
DO = 17%
number density distribution of bubble nuclei [m-4 ]
σ = 2.86 σ = 1.71 σ = 1.30 σ = 1.10 σ = 0.51
Peterson et al. (1975) Cartmill & Su (1993) Liu & Brennen, LTWT (1998) Keller & Weitendorf (1976)
log N(r) = -3.5-3log r
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
10-2 10-1 100 101 102 103 104 105
nnuc : large nnuc : large (drop) nnuc : small nnuc : small (drop)
α
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1
nnuc : large nnuc : large (drop) nnuc : small nnuc : small (drop)
α
70