九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
場面想定法を用いた相談場面におけるコンプリメン トの効果に関する検討 : 賞賛獲得欲求・拒否回避欲 求に着目して
川口, 智也
九州大学大学院人間環境学府
白濱, あかね
九州大学大学院人間環境学府
古賀, 聡
九州大学大学院人間環境学研究院
https://doi.org/10.15017/1911209
出版情報:九州大学総合臨床心理研究. 8, pp.25-36, 2017-03-15. 九州大学大学院人間環境学府附属総 合臨床心理センター
バージョン:
権利関係:
Bulletin of C側 :terfor Clinicαil PsychologyαmdHumα:n Develoむγnent,KツushuU,丸山ersity Vol. 8, P,会.25‑36.
場面想定法を用いた相談場面におけるコンプリメントの 効果に関する検討
−賞賛獲得欲求・拒否回避欲求に着目して一
川 口 智 也 九 州 大 学 人 間 環 境 学 府 / 白 演 あ か ね 九 州 大 学 人 間 環 境 学 府
古賀
聡九州大学大学院人間環境学研究院要約
本研究は,相談場面の想定において,解決志向ブリーフセラピー(SolutionFocused Brief Therapy: SFBT)の技法のlつであるコンプリメントを用いた際の効果を,調査対象者の心理的特性を考慮した上で 検討することを目的とした。大学生176名に対し,①相談体験尺度,②賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度(小 島ら, 2003),③相談後の問題への取り組み方について,コンプリメントを「努力への敬意」,「内的リソー スの示唆」,「外的リソースの示唆
J
,「困難への理解」の4条件に分けて質問紙調査を実施した。因子分析 の結果,相談体験について,解決への着目相談相手への信頼の2因子が見いだされた。解決への着目の 得点については「内的リソースの示唆」群が高く,相談相手への信頼の得点については「内的リソースの示 唆J
群が高くなる傾向にあることが明らかになった。また 賞賛獲得欲求が高いほど 「努力への敬意」お よび「内的リソースの示唆」が,解決への着目を高めるために有効であることが示された。さらに,「困難 への理解J
群において,問題へ取り組む力を弱める人が多いことが明らかになった。これらのことから,目 的に合わせてコンプリメントの内容を考慮することが有効である可能性が示された。キーワード:コンプリメント, SFBT,賞賛獲得欲求,拒否回避欲求
I.問題
解決志向ブリーフセラピー(Solution Focused Brief Therapy: SFBT)は, 1978年から1984年に かけて,ミルウォーキーのBFTC (Brief Family Therapy Center)のチームによって,ブリーフ セラピー(短期/家族療法:BFT)より発展した ものである(Lipchik et al., 2012。) DeJong&
Berg (2013)は,「クライアントと協働してクラ イアントの満足のいく未来のイメージを作るこ と」と,「クライアントがこの未来のイメージを 実現させるために必要な彼らの長所と力量につい て,臨床家とクライアントの両者が理解を深める
こと」を, SFBTでは目指すとしている。
SFBTの中で用いられる重要な技法のlつがコ ンプリメントである。例えば白木 (1994)は,コ ンプリメントについて クライエントの行動に敬
意を表わし,評価することであると説明している。
また, Trepper et al. (2012)は,コンプリメン トについて,「クライアントがすでによく行って いることを確認すること そしてそれらの問題が どのくらい難しいか認めること」と述べている。
さらに,黒沢(2008)は,「コンプリメントとは,
繰り返すが,リソースをフィードバックすること である。それも,相手が,それが自分のリソース なのだと気づき受け入れ できればそれを活かし 使えるようになることが大切だ、。」と述べている。
さらに,黒沢(2008)は,リソースには内的リソー スと外的リソースがあると述べ,前者は本人の能 力や性格,後者は家族や友人,専門機関などがあ てはまると論じている。このように,コンプリメ ントの定義は文献によって様々であるため, どの ようなコンプリメントによって, どのような効果
26 九州大学総合臨床心理研究第8巻 2016
が得られるのかについて検討する必要がある。
コンプリメントの内容や,コンプリメントによ る効果についての実証的な研究は行われてきてい る(中村・山本:2009,石丸ら: 2013)が,その 数は少ない。例えば,中村・山本(2009)では,
コンプリメントをグループメンバ一間で行いあう インタラクテイブコンプリメントや,対象者自身 の能力や長所を対象者自身に答えさせる質問をす るというセルフコンプリメントを行うことによっ て,自尊感情尺度得点,特性的自己効力感尺度得 点,肯定的感情尺度得点が高まることを示してい る。また,石丸ら(2013)は コンプリメントの 内容をカテゴリに分類し 「具体化」して伝える ことがコンプリメントにおいて重要であるとして いる。しかしこれらの研究においてコンプリメ ントを受けた者が コンプリメントにおいて期待 される体験をしているかについては示されていな い。 SFBTにおけるコンプリメントの効果を調査 するにあたって,まずはSFBTにおいてコンプリ メントに期待されている体験がなされているかを 調査することが重要であると筆者らは考える。
SFBTにおいてコンプリメントに期待されている 体験としては,例えば黒津(2008)の「相手が,
それが自分のリソースなのだと気づき受け入れ,
できればそれを活かし使えるようになること」な どが挙げられる。
さらに,コンプリメントを受けた際に,具体的 にどのような解決に向けた行動が見られるかにつ いても調査する必要がある。なぜならば,コンプ リメントを受けることによってSFBTで期待され るような体験が得られたとしても,その後に解決 に向かう行動が見られなければ,少なくともコン プリメントのみでは 解決を促したことにはなら ないからである。
また,先行研究より一定の効果があることが示 されているコンプリメントであるが,コンプリメ ントのもたらす影響は 肯定的なもののみである のだろうか。小島ら(2003)は,肯定的なフィー
ドバックが必ずしもフィードバックされた側に良 い影響を及ぼすとは限らないことを指摘している。
同研究では,賞賛獲得欲求が高い人に対する肯定 的フィードバックは満足感をもたらすが,拒否回 避欲求が高い人に対する肯定的なフィードバック は,「はにかむ」「くすぐったい」「照れる」「はじ らう」といった,照れの感情をもたらすことが明 らかにされており,場合によっては肯定的フィー ドバックが社会的脅威として受け止められる可能 性を示唆している。コンプリメントが肯定的な フィードバックの一種であるとすると,賞賛獲得 欲求が高いほどコンプリメントは有効に働く可能 性があると考えられるが,一方で,拒否回避欲求 が高いほどコンプリメントは有効に働かなくなる
ということが仮説として考えられる。
以上のことから,本研究では,コンプリメント に期待される効果について述べられた文献をもと に相談体験尺度を作成する。そして,コンプリメ ントの内容によって,相談体験尺度の得点にどの ような違いがあるかを調査する。また,コンプリ メントを受ける側の特性として,賞賛獲得欲求と 拒否回避欲求に着目し これらの得点が相談体験 尺度の得点に影響するかについても調査する。さ らに,コンプリメントを受けた際に,コンプリメ ントを受けた者が解決に向けてどのように行動す るかについても調査する。
II.方法
1. 調査対象者と調査時期
X年12月に, A県内B大 学 の 大 学 生102名, C 大学の大学生41名, D大学の大学生18名およびE 県内F大学の大学生15名の合計176名を対象に,
個別自記入形式の質問紙調査を実施した。回答依 頼時には,文書と口頭で説明合意を得た。なお,
回答に欠損のあった1名をデータから除外した。
回答者の性別は男性86名 女性90名であった。ま た,年齢は18〜24歳(M= 20.5, SD = 1.35)であっ た。
川口・自j良,古賀 場関想、定法を用いた梧談場面におけるコンプリメントの務莱に関する検討 27
2.質問紙の内容 1)フェイスシート
学年,性関,年齢について め
2 )コンブリメントを受ける 記述
よる吉出
密難や問題について想定してもらうための刺激 文 を4種類作成した。この科議文;こ織さ,相談に コンプリメントを受ける場面の刺激文を提示 しコンプリメントを受けた結果,今後どのように 困難や問題に取ち組んで、いくかについて自
この際,閤難や問題の状況につ いての料数文には,時間をかけて努力しているが うまく行かないこと,内的Jlソ…ス(能力や性格 など),外的リソース〈相談に乗ってくれたり,手 伝ってくれる
必ず含むものと
ちの人〉の3つについての記述を また,コンプリメントを行う
カウンセラーと ここで圏難や問題を抱えている
となる大学生がより しやすい困難や問題の る必要があった。そのため,八田 (2009)および李・語井(2010)を参考に,大学 生の遭遇しやすい困難や問題の内容として,対人 隣接および学業の問題を扱うこととした。 2なお, 大学生の対人関係の問題については橋本(1997)
対人葛藤,対人劣等,対入車耗の3つ られると述べているが,間研究によると,
人劣等や対人牽耗の方が対人葛藤よりも遭遇し ると示しているやそのため,対人 としては,対人劣等および対人 牽耗の状況を設定すること
は考えた。対人劣等は栢手が嫌な思いをしてい ないか気になる,知人とどのようにつきあえばい いのか分からなくなった,といった,
る事懇やスキルの欠如などに関するも るとされる。また,対人磨耗は,あま母親しくな い入と会話した,無理に相手に合わせた会話をし
た,といった,社会規範から逸脱したものではな いが配患や気寂れを伴う対人関採がストレスをか けている事態であるとされるG
さらに,刺激文の中のコンブワメントは,先述 の文献(白木(19告訴; Trepper et al. (2012) ;
(2008))における定義にもとづいて作成し なお,黒沢(2008)からは,外的リソースに養告
したコンプリメントと内的リソ…ス;こ着目したコ ンブリメントの2種類を作成し合計で 4種類の コンプリメント条件を作成した9 具体的には,白 木(1994)の定義よち,
f
時間をかけて努力したこ とに敬意を評ずるコンプリメントJ
,黒沢〔200訟 の定義より,f
内的リソ…スへのコンブlJメントjと「外的リソースへのコンブワメントj,そして,
et al. (2012)の定義よ与, f取ち いる物事が困難であることを認めるコンプリメン
ト
J
の4引である〔なお 以下の図表中において は,それぞれをf
努力への敬意J
「内的リソース の示唆jf
外的1)ソースの示唆J r困難への理解j
と表記する入
つまり,困難や問鰭を拾えてい
談室に相談に行き,カウンセラーからコンブリメ ントを受ける場面を競査対象者に想定してもらい,
ためにどのように作動するかを自 してもらうということである。なお,こ 査では,対象者ごとに刺激文中のコンプリメント の麓類を4つのうちのいずれかに設定し,被験者 間許闘で行う。間難や問題状況の刺激文および教 示,コンプリメントの内容を表l
3)相談体験た度
de Shazer (1988), Harvey et al. (2012), (2008), Lipchik et al. (2012),白木(1994),
et al. (2012)における,コンブリメン される効果やコンブワメントの目的に関 する記述をもとに索開項自を作成し,調査を行っ た。教示は,「以下の項自は,コメントをもらっ た時のあなた蕗身lこどの程度当てはまちますかむ も当てはまると思うものに1つ
O
をつけてくだ28 九州大学総合臨来心理研究第8希 2016
表1 質需紙における各場面の刺激文およびヰンブリメントの内容
想定を求めた場海
j易商l
場経百2
場密3
場関4
さい。jと 5件法で回答を求めた9 4)
2003)
−拒否回避欲求尺度(小島ら,
−拒苔関避欲求尺度(小島ら,
2003)を用い, 18壌自に合いて5件法で回答を めた。なお,教示は,
f
普段のおなたについておします。以下の項目は,あなた串身に
にlつ
O
をつE 結県
l,名尺度の検討 1)報誌
f
本験足度も当てはまると患うもの ください
J
とし相談体験尺震の12項目について,最尤法による 悶子分析を行った。由子数は, 1.0以上の
が2つ あ っ た こ と 〈 第1昌子からIJ僚に5.44,1.46, 0.94)から2因子解を指定し ブ白マックス回転
を行ったむその結果と因子関相関を表2に示す。
第l関子比解決するための能力の存在や活用,
解決のための題顕の入や物の活用,国難に惑じて
コンブリメントの穣懇
いたものの見方を変えることについての項畏から されているg これらは 解決のためのリソー スへ着目したり,臨難や問題と思っていたものの 中から解決がすでに起こっている部分への務日を 測定する項目であると言える。そのため,第1因
自}因子(α口 .86)と命名した。
コンプリメントを受ける場麗 ら克て,相談相手が話を聞いてく れているか,自分のことを心配し理解してくれて いると思うかを問う項目で講成されている。その た め , 第2悶子は{相談相手への信頼}国
(α= .92)と命名したり結果を表2 2)賞賛獲得欲求・拒杏回避欲求尺度
賞 賛 獲 得 欲 求e拒否国避欲求尺度(小島ら,
2003) 自について,最尤法による因子分析 昭子数は,小島らな003)と同様の構 られるか確認するために2顕子とし,
マックス回転を行っ 2因子とも 成されたため,
その結果,第1毘子およ ら(2003)と同じ項臨 ち(2003)と同様に,仁人と
川口・白演・古賀 場面想定法を用いた相談場面におけるコンプリメントの効果に関する検討 29
表2 コンプリメン卜による解決志向尺度についての因子分析結果 (N= 175, R2 = .62)
第l因子解決への着目(α=.86) 第l因 子 第2因子 共通性 (1) 自分には,困難を解決するための能力があると思う .84 ‑.29 .51 2 (2) 困難や問題だと感じているものについての見方が変わると思う .63 12 .50 3 (3) 自分の,問題を解決する力に着目できるようになると思う .81 .01 .67 4 (9) 自分の持っている,困難を解決するための能力を活用できると思う .80 .07 .71 5 (10) 困難の中であっても,うまく進んでいる部分があったと思う .62 .08 .44 6 (12) 自分の周りにある,困難を解決する上でカになってくれそうな人や物を頼れると思う .45 .25 .40 第2因子相談相手への信頼(α=.92)
7 (5) 相談相手は,私の話をよく聞いてくれていると恩う 8 (7) 相談相手は.私のことを心配してくれていると思う 9 (8) 相談相手は,私のことを理解してくれていると思う 注:括弧内の数字は質問紙で提示された順番を示す
話すときはできるだけ自分の存在をアピールした い」などで構成される第l因子は【賞賛獲得欲求]
因子(α=.82),「意見を言うとき,みんなに反対 されないかと気になる」などから構成される第2 因子は【拒否回避欲求]因子(α=.83)と命名した。
2.賞賛獲得欲求・拒否回避欲求が相談体験に与 える影響の検討
賞賛獲得欲求と拒否回避欲求から相談体験尺度 の各下位尺度がどの程度予測できるかを検討する ため,各コンプリメント条件において,{賞賛獲 得欲求]因子得点と【拒否回避欲求}因子得点そ れぞれを独立変数,{解決への着目]因子得点と{相 談相手への信頼]因子得点を従属変数として,強 制投入法による重回帰分析をそれぞれ行った。
その結果,「外的リソースへのコンプリメント」
および「取り組んでいる物事が困難であることを 認めるコンプリメント」を受ける場面を想定する よう教示された群においては,【賞賛獲得欲求】
因子および【拒否回避欲求}因子は相談体験尺度 の各下位因子を予測しない結果となった。また,
「内的リソースへのコンプリメント」を受ける場面 を想定するよう教示された群においては,【賞賛獲 得欲求] (/3 = .45, p < .01)が正の方向へ【解決 への着目】を予測することが示された (R2= .16, F (2, 43) = 5.40, p < .01)。さらに,「時間をかけ
て取り組んだことに敬意を評するコンプリメン ト」を受ける場面を想定するよう教示された群に おいては,{賞賛獲得欲求]伊= .53, p < .001)
第l因 子 第2因子
一.03 .91 .80 一.07 .91 .76 .06 .88 .84 因子関相関 .53
内的 Jll, = .16**
• .45•• •
賞賛獲得欲求 I 3>1 解決への着目
拒否回避欲求 I I 相談相手への信頼 時間 Jll, = .21・・・
I
I .53山賞賛獲得欲求 I 弓 解決への着目
|
拒否回避欽求| |
相談相手への信頼** p< .01 *** p< .001
図1賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度が相談体験尺 度に与える影響
が正の方向へ【解決への着目}を予測することが 示された (R2= .27, F (2, 42) = 9.04, p < .001。) 結果を図1に,各コンプリメント条件での相互相 関表を表3に示す。
3.コンプリメント条件による解決への着目得点 の比較
コンプリメントの4つの条件を独立変数,相談 体験尺度の【解決への着目}因子の点数を従属 変 数 と し た1要 因4水 準 被 験 者 間 計 画 の 分 散 分析を行った結果,有意な主効果が見られた(F
(3,171) = 3.65, p < .05。) Shafferl法による多重 比較を行ったところ,「内的リソースへのコンプ リメント」における得点が,「時間をかけて取り 組んだ、ことに敬意を評するコンプリメント」より も有意に高いことが示された (p< .01)。結果を 図2に示す。
努力への 内的リソ}ス外的リソース 困難への 敬意 の示唆 の示唆 理解
{相談相手への信頼}因子得点についての分散 分析結果
比較を行ったところ 有意差は示されなかった。
しかし「内的リソースへのコンプリメント」に おける得点が「外的リソースへのコンプリメント」
(p < .10)および「取り組んでいる物事が困難で あることを認めるコンプリメント」 (p< .10)に おける得点よりも有意に高い傾向が示された。結 果を図3に示す。
4 .09
14 .59*事.
4 19 .06 50傘 榊
市
i l
︐ 4一即日一回
l a
−
−h一Qd﹁DH734−
l 2 4
十pく.10 表3 各コンプリメント条件における各変数の基礎統計量および相関係数
時間をかけて取り組んだことに敬意を評するコンプリメント(N=44) 相関係数
M SD 1 2 3
284 .72 一 一.08 .43"
3.74 .71 一 一.08
2.92 .60 ‑
2.99 .72
相関係数 3 .45紳
.04
相関係数 3 17 .28
相関係数 3 .17 .18
十 2 .13
2 09
2 .07
4 す 5
3
2
1
図3
門J
一 つ u R u d吐
ιu
m一
Y 7 5 1
D
一2 3 4 9
3一
β 6 5 1
D−
4 A
巳d氏vnLS一
β β 5 8 M
l賞賛獲得欲求 2.84
2拒否回避欲求 3.74
3解決への着目 3.13
4相談相手への信頼 2.91 取り組んでいる物事が困難であることを認めるコンプリメント (N =42)
M 3.08 3.82 3.16 3.33
コンプリメントの4つの条件を独立変数,相談 体験尺度の{相談相手への信頼]因子の点数を従 属変数とした1要因4水準,被験者間計画の分散 分析を行った結果有意な主効果が見られた (F
(3,171) = 3.61, p < .05。) Shaffer法による多重
努力への 内的リソース 外的リソース 困難への
敬意 の示唆 の示唆 理解
[解決への着目]因子得点、についての分散分析 結果
コンプリメント条件による相談相手への信頼 2016
M 2.95 3.77 3.31 3.34 第8巻 九州大学総合臨床心理研究
l賞賛獲得欲求 2 拒否回避欲求 3解決への着目 4相談相手への信頼
内的リソースへのコンプリメント(N=46) l賞賛獲得欲求
2 拒否回避欲求 3解決への着目 4相談相手への信頼
外的リソースへのコンプリメント (N =43)
l賞賛獲得欲求 2 拒否回避欲求 3 解決への着目 4相談相手への信頼
* = p < .05 •• = p < .01 ••• = p < .001
*
4. 得点の比較 図2 30
4 5
3
2
1
川口・自讃・言糞 場面想定法を用いた相技場面におけるコンプリメントの効巣に関する検討 31
5.コンブリメント条件による取り組み方の各カ テゴリ出現数の比較
告白記述で回苓を求めた,コンプワメントを受 けた後の問題や国難への取り組み方について,筆
よび、臨床心理学を専攻する大学院生2 3名で協議しカテゴリ分頼を行った。カテゴりは,
f
継続J
,「増強して継続J , I
態めて継続J
,「方略 変更J .I
記述なしJ
の5つに分類した。実験協力者1入あたりの4場詣における して議議j
r n
号めなしjの,カテゴリごとの出現数の合計を得点化 した(O〜4点〉。その上でコンプリメントの 4 つの条件を独立変数,カテゴワの出現数の得点を
とした, l要国是水準の被験者間計画の 分散分析を各カテゴリについて行った。その結果,
「弱めて継続jカテプリについて有意な主効果が られ (F (3,158)口 3.79.p < .05). Shaffer法 記よる多重比較を行ったところ,
f
取り組んで、い る物事が密難であることを認めるコンブワメン トJ
における出現数が,7
内的リソースへのコン ブリメントJ
(p < .05)およびf
外的リソ…スへ のコンブワメントJ
(p<
.05)よりも有意に多い ことが示された。結果を菌4に示す。4
*pく.0ら 3
*
。
努カへの 内約リソース 外的リソース 困難への
敬愈 の示唆 の示唆 理解
図4
f
弱めて継続」カテゴ1)の出現数についての分 数分析結果W.考察
1. 相談体験に賞賛回避欲求・拒否問瀧欲求が与 える最多響について
f
内的リソースへのコンプ1)メントjおよび「時 間をかけて取ち組んだことに敬意を表するコンブ リメントjを受ける場面を想定するよう教示され た群iえ{賞賛獲持款求]因子の得点が高いほど{解 決への着目}毘子の得点が高くなることが示され これは,{賞賛獲縛欲求}因子で灘定してい るものと,コンブワメントの内容が合致したため と考えられる。:賞賛獲得欲求}因子は,自身の 能力や魅力,存在への賞賛の欲求を測定する項目 で撰或されている。一方で、 「内的リソースへの コンプリメントjや「時間をかけて取り組んだこ とに敬意を表するコンブワメントJ
は,コンブリ メントを受ける入自身の能力や努力を糞賛するも のである。そ的ため 「内的ワソースへのコンリメントjゃ
f
時間をかけて取り組んだことに敬 意を表するコンブワメント」は{震賛護得欲求}国子の得点が高い人に対して行うほど解決への着 践を促すために有効であると考えられるむ
「外的リソースへのコンブワメントj や「取り組んでいる物事が臨難であることを認め るコンブワメント
J
は,コンブリメントを受ける 人島J
きのことではなく その人の賭与にあるもの り組んで、いる物事の難しさを認めるフィード パックであった。そのため,これら2プリメントは[賞賛議得欲求}
コン してい る欲求を満たす賞費ではなく,これら2条持のコ ンブリメントでは[糞賛護得欲求}因子が相談体 験疋授の各下位尺度を予測しない結果とごとったと 考えられる。
また,{拒寄回避欲求}因子は,いずれのコン ブワメント条件においても相談体験尺度の各下位 菌子を予期しない結果となった。小島ら(2003) では,{拒否田避欲求}菌子が高いiまど,脅定的
フィードパックを受けた際に照れなどを感 くなることが示されていた。そのため,本研究に
32 九州大学総会議床心理研究第8巻 2016
おいても,{拒寄回避欲求]扇子が高いほどコン プリメントを受ける想定をした際に接れ安感じや すく,相談体験え震の得点が低くなると筆者ちは 考えていた。この佼説が支持されなかった要因と して,小島ら(2003)で患いられたフィードパッ クの場出と本研究で用いたコンプリメント ける場面の性質の違いが考えられるむ小島ら (2003)でi之小集団で意見を出し合う状沼で底 分の発言するJII裏番が思ってきたという場部を
している一方,本研究で辻,カウンセラ…に相談 に行く場面を設定しているGつまり
J
、鳥ら(2003) における場面では 肯定的フィードパックを行う 入とフイ…ドパックを受ける告分自身の他に小メンバーという し7こi)宝,
おいて想定するよう教示されたのはコンブワ メントを行うカウンセラーと,コンプリメントを る自分自身のニ者のみで,第三者が存在しな いという違いがあった。小島ら(200おにおいて 見られた掠れは,肯定的フィードパックを受けて いる自分を第三者に見られることによるもので あったことが考えられ本研究で設定した場面で はそもそも慣れを感じらましにくく,相談イ本験尺度
も影響しなかった可能性がある。
2.コンプリメントの種類による解決への務自の 軽度の差について
相談斧験尺疫の下位因子である
. .
︐z a
ロ討
因子の得点について辻,
f
内的リソースへのコン プリメントjを受ける場富を想定するよう教示さ れた群のほうが,「時間をかけて取り組んだこと るコンプリメントjを受ける場面を ょう教示された群よりも有意に高いこと された。黒沢(2008)は 「本人にとってわ かりきったワソースよちも まさかそれがワソー スなんて,という意外性のあるものを納得できる ようにフィードパックすることのはうが,はるか に治療的である。J
と述べている。このことから,シ ︺
J4
又 一
v
フ
﹀ え
ドパックする内容の意外性という冨から考 をかけて努力したことに比べて,自
身に内的ワソースがあるということがよち着自さ れにくかったため 調査対象者がコンプリメント る場面を想定した擦の意外性が高まったと られる。なぜなら 時開をかけて努力したと いうことは,努力会したという言定的令体験でも あり会がら,問題や困難に長い時間苦しんでいた という棒験でもあるからである。そのため,物事 がうまくいっていないという困難な状況を提示し た今回の場面に主いて,欝査対象者が着目しやす かったと考えられるG
内的リソ…スがあるということ
呂されにくかったと考えられる要問とし 困難や問題の状況の刺激文も挙げられる。な ぜ、なら,刺激文中において,時聞を し ているがうまく行かないことについては,「毎晩 夜遅くまで資料作成に取り組みました
J
などの直をかけてきたことが番かれている で,内的ワソース(能力や性格など〉について
「なかなか綿簿できる などの
な記述となっていたためである。
め,調査対象者にとって,内的ワソースをブイ ドパックされた際の方が意外性が高か。たと えちれる。そして 意外性をもって内的リソース が受け入れられることによって それまで開題や 困難に向いていた自が内的リソ…スを始めとし た解決に向けられるようになったと考えられる。
また,「内的リソースへのコンプリメント
J
が{解 日}因子を促した背景として,提示おれ ら,菌難や問婚の中にあって岳身がうま く出来ていない,自分の能力が足りないためにう まく行かないと考えていたところに,性格や能力 について内的ワソースへのコンブリメントという 形で肯定的なブイードパックを受ける場面を想定 することによって,問題へばかち着吾していた状 況から解決へ着目できるようになったということも考えちれる。
3.コンブリメントの種類による相談相手への舘 艇の程度の差について
川口・白i寮・古賀 場問想定法を患いた樟談場捕におけるコンプリメントの効果に慢する検討 33
相談体験尺度の下位国子である[詣設相手への 因子の得点に合いて泣
r
,詩的リソースへ のコンプリメントJ
を受ける場面を想定するよう された群のiまうがf
時間をかけて取り組ん だことに敬意を評するコンブリメント」を受ける 場面を想定するよう教示された群およびf
外的リ ソースへのコンプリメントJ
を受ける場富を想定 するよう教示された群よりも有意に高い傾向にあ ることが示された。密難や問題の中にあって,白 うまく対処出来ていない 自分の能力が足り ないと考えていたところに 性格や能力について 内的ワソースへのコンブリメントという的なフィードパックを受けることによって,相談 なって話を開いてくれると感じられ た可能性があるむ
4. コンブリメントの種類による間賠への取り組 み方の差について
コンプワメントを受ける場面の想定後の問題へ め車り組み方については 「弱めて経続
J
カテゴ りの出現数は,「取り組んでいる物事が困難であ ることを認めるコンブワメントjを受ける場面を 想定するよう教示された群が 「内的リソースへ4のコンブワメント」を受ける場加を想定するよう 教示された群および「外的リソースへのコンブワ メントjを受ける場閣を想定するよう教京された
よりも多い結果となった。このことから,「取 り組んでいる ることを認めるコン ブリメント
J
を受ける想定をすることによって,うまく進まないの泣自身のせいではなく,取与 んでいる物事そのものが難しいためであると感じ られ,取り組む勢いや力を弱めるという行動が取 られやすくなったことが考えられる。ただし,「弱 めて継続」カテゴリに辻,
f
あきらめるJ
といった,問題への取り組みそのものをやめてしまう行動も れていた。こ ら,問題の難しさをコン プリメントとしてブイ…ドパックすること
り組んでいる問題が難しいなら解決できる 蕪いと感じさせ,解決を諦めさせてしまう可能性
も考えられる。
5.まとめと今後の課題
本研究では,大学生の5常的ごと問題を設い, 4 つのコンプリメントの条件によって,相談体験尺 度の得点および\具体的な問題への取り
どのような違いが為るか,賞賛獲得欲求・
避欲求尺衰の得点はどのように相談体験尺授の得 るかを調査することで,よち右効なコ ンブワメントのあり方を明らかにすることを試み たむ
その結果
J
内的リソースへのコンプリメントJ
が,コンブリメントを行う慨への信頼を高めるた めに有効であ与,とりわけ賞賛獲得欲求の高い相 うiまと解決的な部分へ着自させるために ること,
f
時間をかけて取ち組んだこと 評するコンプリメン日は賞賛獲得欲求 うlまど解法への着目を促すために 有効であること,f
耳支り組んでいる物事が菌難で あることを認めるコンプリメントJ
は,問題や菌 難へ没入していることから脱することを龍すため に有効であるといった,コンプリメントの有効な あり方が示されたGこれらが示されたことによって,内容を考厳し てロンプリメントを行うことで,セラピーの自 に応じた,より有効なコンブリメントを行うこと ができる可能性が見いださ
ただし本研究で用いた場韻は実際の問題を 扱ったもので、はないため 実際に何らかの問題や 困難に直面している入がコンプリメント
際の体験とは異なる可能性がある。また,本研究 コンブ。ワメント
談相手が非SFBT的なア
いない場合や,相
…チを行っ
いては測定していない。コンブワメントを受けて や, SFBT以 外 の ア プ ロ ー チ か ら フィードパックを行った場合と比較した研究を行 うことで,よちSFBTにおけるコンブ。リメントに 特徴的な効果を明らかにすることが出来るで為ろ
っ
。
34 九州大学総合臨床心理研究第8巻 2016
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Effectiveness of compliments in scenes of counselling by the scene imagination method:
Focusing on praise seeking and rejection avoidance need
Tomoya KA WA GU CHI, Akane SHIRAHAMA
Graduate School of Human-Environment Studies, Kyushu University Satoshi KOGA
Faculty of Human-Environment Studies, Kyushu University
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The purpose of this research is to analyze the effects of compliment, which is a kind of technique in Solution- Focused Brief Therapy, in imaginary scenes of counseling, considering the subjects' psychological traits. For the above purpose, factor analysis of questionnaire responses from 176 college students was performed. The questionnaire covered (1) experiment of counseling scale, (2) praise seeking and rejection avoidance need scales, and (3) the approach to the problem after counselling, by using four types of compliments: respecting the effort, suggesting the internal resource, suggesting the external resource, and understanding the difficulty. Factor analysis of experiment of counseling scale yielded two factors: focusing on solution and reliance on counselor. The score of focusing on solution was larger in suggesting internal resource, and the score of reliance on a counselor was larger in suggesting internal resource. Additionally, a higher score of praise seeking need resulted in, a higher score of focusing on solution, in respecting the effort, and suggesting the internal resource. Moreover, on getting complimented for understanding the difficulty, majority of people had to put in fewer efforts to solve the problem.
These findings show the effectiveness of optimizing the contents of compliment, considering the purpose of therapy.
Keywords: compliment, SFBT, praise seeking need, rejection avoidance need