第4章 シートキャビテーション初生過程に対する
4.3 シートキャビテーションの初生の様相
4.3.1 主流中の単一気泡核からのシートキャビテーション初生過程
気泡核のシートキャビテーション初生に対する促進効果と抑制効果が確認されたこ とから,シートキャビテーションが初生するための好適な気泡核数密度の範囲があると 考えられる.本節では,この気泡核の促進効果および抑制効果の度合いを明らかにする ために,シートキャビテーションの初生頻度と持続時間の調査を行った.フィルター不 使用時においては,DO条件によらず,キャビテーション数を段階的に低下させると最 終的にはバブルキャビテーションとなった.また,低,中DO条件のシートキャビテー ションからバブルキャビテーションに至るまでに,キャビテーション数の低下に伴いシ ートキャビティの初生の頻度(したがって,消失の頻度)が増加していくことが分かっ た.図4.14にフィルター不使用時のシートキャビティ初生頻度を示す.なお,高DO条 件では常にバブルキャビテーションであったため,低,中DO条件の結果のみ示してい る.また,フィルター使用時のシートキャビティ初生頻度を図4.15に示す.縦軸は撮影 時間内の初生した回数を撮影時間で割り,1秒間当たりの初生の回数を示している.ま た,シートキャビティの初生の定義は,気泡が壁面に接触し,シートキャビティを形成 して消失に至るまでの最小時間が本実験において 4ms であったことから,4ms 以上の 間シートキャビティの持続が確認されたときと定義した.
図4.14より,フィルター不使用時の低DO条件では,σ=0.71 程度から初生頻度が増 加していることが分かる.σ=0.71よりもキャビテーション数が高い段階では,シートキ ャビティが形成されると持続しやすく,σ=0.71 程度までキャビテーション数が低下す ると,頻繁に初生と消失を繰り返すことを示している.また,フィルター不使用時の中 DO条件では,フィルター不使用時の低DO条件に比べ,σ=0.81程度から緩やかに初生 頻度が増加していることが図4.14から分かる.これより,低DO条件ではσ=0.71 程度
から,中DO条件ではσ=0.81程度から,気泡のシートキャビテーション初生に対する抑
制効果が大きくなっていると考える.図4.5に見られたように,キャビテーション数の 低下に対し,気泡数密度は徐々に増加している.よって気泡核のシートキャビティ抑制 効果も顕在化しバブルキャビテーションに移行していると考えられる.
図4.15のフィルター使用時においては,高DO,中DO条件のσ=0.77~0.78付近で初 生頻度が最も高くなることが分かった.非キャビテーション状態からキャビテーション 数を低下させていくと,徐々に初生の頻度が増加し,初生頻度のピークを超えると崩壊 しにくくなりシートキャビティの発生回数が減少した.このことはシートキャビティが 長時間安定して存在することを意味する.また,DO値が低くなるにつれ,初生,崩壊 の周期が長くなることが分かった.これは,DO値が低いと気泡数も少なく,キャビテ ィ初生を抑制する効果が小さくなるためと考える.
シートキャビティの持続時間を,フィルター不使用時のシートキャビテーションが確 認された低,中DO条件について図4.16に,フィルター使用時について図4.17に示す.
また,持続時間を以下の式で近似した曲線も各図に載せている.
95
! " = #
( − $%)& (4.2)
ここで,k,nおよび$%は定数であり,$%はシートキャビティが消失しなくなるキャビテ ーション数の予測平均値である.
図4.16 (a)に示すフィルター不使用時における中DO条件では,図4.14に示した初生
頻度は増加しているが,比較的高いキャビテーション数からシートキャビティが初生し,
短い周期で初生,崩壊が繰り返されていることが分かる.これは,多数の気泡が流入す ることによるシートキャビティ発生の促進効果と成長を抑制する効果の両方によるも のと考える.図4.16 (b)に示すフィルター不使用時の低 DO条件では,シートキャビテ ィが初生する比較的高いキャビテーション数において,シートキャビティが一度初生す ると長時間持続するが,キャビテーション数の低下とともに流動する気泡数が増加する ため,持続時間が短くなり,σ = 0.70程度でバブルキャビテーションとなっている.
一方,図4.17に示すフィルター使用時の結果においては,どのDO条件においても,
キャビテーション数の低下に伴いシートキャビティが持続する傾向にあることが分か る.高DO条件では,σ = 0.76程度から,急激に持続時間が長くなっており,これは,
気泡の供給に加えキャビティ界面における溶存空気の析出によるものであると推察す る.低,中DO条件においてもキャビテーション数の低下に伴い,持続時間が伸びてい くが,高DO条件に比べ$%が小さく緩やかに持続時間が伸びていることが分かる.また,
図 4.17(c)および図 4.16(b)より,低 DO 条件においてはシートキャビティの持続時間に
ばらつきが大きいことが分かった.
0.650 0.7 0.75 0.8
2 4 6 8 10
Occurence number of cavitation inception [s-1 ]
Cavitation number, σ Medium
Low
Bubbly cavitation Bubbly
cavitation
0.650 0.7 0.75 0.8
1 2 3
Occurence number of cavitation inception [s-1 ]
Cavitation number, σ High
Medium Low
図4.14 フィルター不使用時初生頻度 図4.15 フィルター使用時初生頻度
96
(b) 低DO
(c) 低DO (a) 中DO
(b) 中DO (a) 高DO
図4.16 フィルター不使用時シートキャビティ持続時間
図4.17 フィルター使用時キャビティ持続時間
97