九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
不均一熱負荷並列ミニチャンネルの沸騰熱伝達およ び流量変動現象に関する研究
黒瀬, 築
https://doi.org/10.15017/2534448
出版情報:九州大学, 2019, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
不均一熱負荷並列ミニチャンネルの沸騰熱伝達および 流量変動現象に関する研究
黒瀬 築
2019 年 7 月
i
目 次
第 1章 序 論
1.1 は じ め に ··· 1
1.2 ミ ニ チ ャ ン ネ ル 内 を 流 れ る 冷 媒 の 流 動 ・ 沸 騰 熱 伝 達 の 基 礎 特 性 ··· 4
1.2.1 流 動 様 相 ··· 4
1.2.2 摩 擦 圧 力 損 失 特 性 ··· 5
1.2.3 沸 騰 熱 伝 達 特 性 ··· 6
1.2.4 沸 騰 熱 伝 達 に 関 す る 整 理 式 ··· 7
1.3 流 量 の 不 均 一 分 配 に 関 す る 従 来 研 究 ··· 9
1.3.1 T字 分 岐 で 生 じ る 気 液 二 相 流 の 相 分 離 特 性 ··· 9
1.3.2 流 路 間 熱 負 荷 が 不 均 一 な 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル で 生 じ る 流 量 分 配 ··· 9
1.4 並 列 流 路 の 不 安 定 流 動 に 関 す る 従 来 研 究 ··· 10
1.5 本 論 文 の 目 的 と 構 成 ··· 14
第 2章 流 量 分 配 お よ び 沸 騰 熱 伝 達 特 性 に 関 す る 直 接 通 電 加 熱 実 験
2.1 概 説 ··· 162.2 実 験 装 置 お よ び 実 験 方 法 ··· 16
2.2.1 実 験 装 置 ··· 16
2.2.2 実 験 方 法 ··· 18
2.2.3 テ ス ト セ ク シ ョ ン 分 岐 前 ク オ リ テ ィ の 算 出 ··· 19
2.2.4 局 所 熱 伝 達 率 の 算 出 ··· 20
2.2.5 予 備 実 験 ··· 22
2.2.6 実 験 条 件 ··· 25
2.3 流 量 の 不 均 一 分 配 特 性 ··· 27
2.3.1 不 均 一 熱 負 荷 条 件 下 の 管 外 壁 温 度 変 化 ··· 27
2.3.2 流 量 分 配 お よ び ク オ リ テ ィ 分 配 の 推 定 ··· 28
2.3.3 流 量 分 配 お よ び ク オ リ テ ィ 分 配 特 性 ··· 33
2.4 沸 騰 熱 伝 達 特 性 ··· 38
2.4.1 不 均 一 熱 負 荷 条 件 下 の 局 所 熱 伝 達 率 ··· 38
2.4.2 不 均 一 熱 負 荷 条 件 下 の2流 路 の 全 平 均 熱 伝 達 率 ··· 41
2.5 不 均 一 熱 負 荷 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 沸 騰 熱 伝 達 率 予 測 ··· 45
2.6 結 論 ··· 49
ii
第 3章 沸 騰 熱 伝 達 お よ び 熱 交 換 性 能 に 関 す る 高 温 流 体 加 熱 実 験
3.1 概 説 ··· 51
3.2 実 験 装 置 お よ び 実 験 方 法 ··· 51
3.2.1 実 験 装 置 ··· 51
3.2.2 実 験 方 法 ··· 54
3.2.3 テ ス ト セ ク シ ョ ン 分 岐 前 ク オ リ テ ィ の 算 出 ··· 55
3.2.4 冷 媒 へ の 伝 熱 量 の 算 出 ··· 55
3.2.5 平 均 熱 通 過 率 の 算 出 ··· 57
3.2.6 温 水 の 熱 伝 達 率 の 算 出 ··· 58
3.2.7 冷 媒 側 の 加 熱 区 間 平 均 壁 面 過 熱 度 の 算 出 ··· 60
3.2.8 冷 媒 の 加 熱 区 間 平 均 熱 伝 達 率 の 算 出 ··· 60
3.2.9 並 列 流 路 の 対 称 性 確 認 実 験 ··· 60
3.2.10 実 験 条 件 ··· 62
3.3 実 験 結 果 ··· 63
3.3.1 不 均 一 熱 負 荷 条 件 下 の 冷 媒 へ の 伝 熱 量 ··· 63
3.3.2 平 均 流 量 が 冷 媒 熱 伝 達 特 性 に 与 え る 影 響 ··· 68
3.4 結 論 ··· 73
第 4章 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 沸 騰 熱 伝 達 お よ び 流 量 分 配 予 測 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
4.1 概 説 ··· 744.2 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル ··· 74
4.2.1 モ デ ル 概 要 ··· 74
4.2.2 境 界 条 件 ··· 77
4.2.3 計 算 方 法 ··· 79
4.2.4 計 算 条 件 ··· 80
4.3 2並 列 流 路 を 対 象 と し た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ··· 81
4.3.1 加 熱 区 間 流 れ 方 向 の ク オ リ テ ィ , 熱 伝 達 率 お よ び 熱 流 束 分 布 な ら び に 流 量 分 配 の 予 測 ··· 81
4.3.2 モ デ ル の 妥 当 性 ··· 86
4.3.2.1 壁 温 変 化 モ デ ル 概 要 ··· 86
4.3.2.2 実 験 結 果 と の 比 較 ··· 87
4.4 10並 列 流 路 を 対 象 と し た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ··· 89
4.5 結 論 ··· 92
iii
第 5章 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル 内 で 生 じ る 密 度 波 振 動
予 測 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
5.1 概 説 ··· 94
5.2 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル ··· 94
5.2.1 モ デ ル 概 要 ··· 94
5.2.2 計 算 条 件 ··· 95
5.3 流 量 振 動 特 性 お よ び モ デ ル の 妥 当 性 検 証 ··· 97
5.3.1 入 口 サ ブ ク ー ル 条 件 下 の 流 量 振 動 特 性 ··· 97
5.3.2 モ デ ル の 妥 当 性 ··· 100
5.3.2.1 通 電 加 熱 実 験 で 得 ら れ た 振 動 発 生 境 界 お よ び 振 動 特 性 と シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 比 較 ··· 100
5.3.2.2 従 来 の 密 度 波 振 動 に 関 す る 研 究 と の 比 較 ··· 103
5.3.3 入 口 二 相 条 件 お よ び 逆 流 条 件 へ の 適 用 ··· 106
5.4 振 動 発 生 境 界 お よ び 振 動 周 期 ··· 107
5.4.1 均 一 熱 負 荷 条 件 下 の 振 動 発 生 境 界 お よ び 振 動 周 期 ··· 107
5.4.2 不 均 一 熱 負 荷 条 件 下 の 振 動 発 生 境 界 ··· 110
5.4.3 密 度 波 振 動 発 生 境 界 線 図 の 入 口 二 相 条 件 へ の 拡 張 ··· 112
5.5 流 量 振 動 が 熱 伝 達 特 性 に 与 え る 影 響 ··· 114
5.6 結 論 ··· 116
第 6章 総 括
総 括 ··· 117謝 辞 ··· 122
参 考 文 献 ··· 123
付 録A 摩 擦 圧 力 損 失 の 算 出 ··· 128
付 録B ド ラ イ ア ウ ト 開 始 ク オ リ テ ィ の 算 出 ··· 132
iv
主 な 記 号
本 論 文 で 使 用 す る 主 な 記 号 と 添 字 は 次 の と お り で あ る . こ こ に 記 載 し た 以 外 の 記 号 を 使 用 す る 場 合 に は , そ の 都 度 説 明 す る .
cp 比 熱 J/(kg·K)
g 重 力 加 速 度 m/s2
h 比 エ ン タ ル ピ ー J/kg
hʹ 飽 和 液 の 比 エ ン タ ル ピ ー J/kg
Δh 蒸 発 潜 熱 J/kg
p 圧 力 Pa
q 熱 流 束 W/m2
t 管 壁 の 厚 さ m
Δt 時 間 ス テ ッ プ の 間 隔 s
u 平 均 流 速 m/s
x 熱 平 衡 ク オ リ テ ィ -
xd i ド ラ イ ア ウ ト 開 始 ク オ リ テ ィ - z 加 熱 開 始 点 か ら の 距 離 m Δz 対 象 計 算 格 子 の 流 路 流 れ 方 向
に 占 め る 長 さ
m
Ac 流 路 断 面 積 m2
Ah 伝 熱 面 積 m2
D 管 内 経 m
G 質 量 速 度 kg/(m2·s)
K 平 均 熱 通 過 率 W/(m2·K)
L 加 熱 区 間 距 離 m
M 流 路 全 体 の 慣 性 質 量 kg
ΔP 圧 力 損 失 Pa
ΔPe x ヘ ッ ダ 間 の 圧 力 差 Pa
ΔPf 摩 擦 圧 力 損 失 Pa
ΔPs 位 置 損 失 Pa
ΔPa 加 速 損 失 Pa
Q 伝 熱 量 W
T 温 度 K
ΔT 壁 面 過 熱 度 (Tw – Ts a t) K
ΔTl n 対 数 平 均 温 度 差 K
ΔTt u b e 管 の 平 均 内 外 面 温 度 差 K
ΔTw a t e r 温 水 の 平 均 壁 面 過 熱 度 K
v
V 流 路 体 積 m3
W 質 量 流 量 kg/s
Ns u b サ ブ ク ー リ ン グ 数 -
Np c h フ ェ ー ズ チ ェ ン ジ 数 -
Nu ヌ セ ル ト 数 -
Pr プ ラ ン ト ル 数 -
Re レ イ ノ ル ズ 数 -
α 熱 伝 達 率 W/(m2·K)
λ 管 材 の 熱 伝 導 率 W/(m·K)
ρ 密 度 kg/m3
μ 粘 性 係 数 Pa·s
θ 水 平 面 と 主 流 正 方 向 の な す 角 rad
添 字
air 周 囲 空 気 ave 流 路 平 均 b 流 体 混 合 平 均 gain/loss ヒ ー ト ゲ イ ン/ロ ス
in 入 口
n 流 路 番 号
out 出 口
r 冷 媒
sat 飽 和
w 管 内 面
water 温 水
F 二 相
G 気 相
L 液 相
PH プ レ ヒ ー タ
TS テ ス ト セ ク シ ョ ン
1
第 1 章
序 論
1.1 は じ め に
近 年 , 冷 凍 空 調 機 器 を は じ め と し た ヒ ー ト ポ ン プ 機 器 の 需 要 は 世 界 で 増 加 し 続 け て お り , 平 成 26 年 度 エ ネ ル ギ ー 関 係 技 術 開 発 ロ ー ド マ ッ プ[1]に は ,「 高 効 率 ヒ ー ト ポ ン プ シ ス テ ム の 開 発 」 が 挙 げ ら れ る な ど , ヒ ー ト ポ ン プ 機 器 の 高 性 能 化 が 重 要 な 課 題 と な っ て い る . ヒ ー ト ポ ン プ 機 器 の 高 性 能 化 に は , 主 要 要 素 で あ る 熱 交 換 器 の 伝 熱 性 能 向 上 が 有 効 で あ る . 熱 交 換 器 の 性 能 が 向 上 す る と , 圧 縮 機 の 仕 事 あ た り の 冷 暖 房 能 力 す な わ ち 成 績 係 数 の 向 上 , あ る い は 熱 交 換 器 の コ ン パ ク ト 化 が 可 能 と な る . 熱 交 換 器 の コ ン パ ク ト 化 は , 地 球 温 暖 化 の 原 因 と な る フ ロ ン 系 冷 媒 の 充 填 量 の 削 減 に つ な が る だ け で な く ,現 在 広 く 使 用 さ れ て い る HFC32 等 の 微 燃 性 冷 媒 の 漏 洩 に 対 す る 安 全 性 向 上 に も 寄 与 す る .
高 性 能 コ ン パ ク ト 熱 交 換 器 の 開 発 に 対 す る ア プ ロ ー チ の 一 つ と し て ,現 状 5~7 mm の 冷 媒 流 路 径 を 1 mm 程 度 ま で 細 径 に す る ミ ニ チ ャ ン ネ ル 化 が 行 わ れ て い る . す な わ ち ,Fig. 1-1 に 示 す よ う な ,複 数 の 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 有 す る ア ル ミ 製 扁 平 多 孔 管 を 伝 熱 管 と し て 用 い た 熱 交 換 器 の 開 発 が 進 め ら れ て い る . 冷 媒 流 路 径 が 小 さ く な る と , 伝 熱 面 積 あ た り の 流 路 体 積 が 減 少 す る た め , 管 内 冷 媒 側 の 熱 伝 達 性 能 が 従 来 と 同 等 以 上 で あ れ ば , 熱 交 換 器 , 特 に 冷 媒 流 路 体 積 の 大 幅 な コ ン パ ク ト 化 が 可 能 と な る .
Fig. 1-1 Schematic diagram of the heat exchanger employing multiport extruded tubes
2
ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 用 い た 熱 交 換 器 ( 蒸 発 器 ・ 凝 縮 器 ) を 設 計 す る た め に は , ミ ニ チ ャ ン ネ ル 内 を 流 れ る 冷 媒 の 沸 騰/凝 縮 熱 伝 達 特 性 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る .特 に , 蒸 発 器 で は , 冷 媒 の 乾 き 度 ( ク オ リ テ ィ ) が 大 き く な る と , 伝 熱 面 が 乾 く ド ラ イ ア ウ ト が 生 じ て 熱 伝 達 性 能 が 著 し く 低 下 す る た め , 冷 媒 の 流 動 ・ 伝 熱 特 性 を 正 確 に 把 握 す る こ と が 肝 要 で あ る .
こ れ ま で , ミ ニ チ ャ ン ネ ル 内 を 流 れ る 冷 媒 の 沸 騰 熱 伝 達 お よ び 圧 力 損 失 の 基 礎 特 性 に 関 す る 研 究 が 多 く 行 わ れ て い る ( 後 述 の 1.2 節 参 照 ).ま た ,ヘ ッ ダ か ら 複 数 の 伝 熱 管 へ 冷 媒 が 分 配 さ れ る 際 に , 気 相 と 液 相 が そ れ ぞ れ か な り 不 均 等 に 分 配 さ れ る こ と が 報 告 さ れ て お り ,そ の 対 策 研 究 と 併 せ て , レ ビ ュ ー 論 文[2]に ま と め ら れ て い る . こ の よ う に 多 く の 関 連 研 究 の 成 果 が す で に 公 表 さ れ て い る が , ミ ニ チ ャ ン ネ ル 蒸 発 器 の 性 能 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す , 以 下 に 示 す よ う な 現 象 の 研 究 が 抜 け 落 ち て い る .
Fig. 1-2 に 示 す よ う に ,ミ ニ チ ャ ン ネ ル 熱 交 換 器 で は ,冷 媒 と 熱 交 換 を 行 う 空 気 が 冷 媒 の 流 れ 方 向 に 対 し て 垂 直 方 向 に 流 れ る た め , 冷 媒 流 路 間 で 熱 負 荷 が 不 均 一 と な り , 各 流 路 の 蒸 発 量 が 不 均 一 と な る . そ の た め , 流 路 間 で 流 動 抵 抗 に 差 が 生 じ て , 流 量 が 不 均 一 に 分 配 さ れ る こ と と な り , 特 に , 流 量 が 減 少 す る 流 路 で は , ド ラ イ ア ウ ト 域 が 拡 大 し て 性 能 の 低 下 に つ な が る . し か し な が ら , 扁 平 多 孔 管 を 対 象 に す べ て の 流 路 に な る べ く 均 等 な 熱 負 荷 を 与 え て 熱 伝 達 実 験 を 行 っ た 研 究[3-9]は 多 く あ る も の の ,熱 負 荷 の 不 均 一 に 起 因 す る 流 量 の 不 均 一 分 配 現 象 に つ い て は ,後 の 1.3 節 に 示 す よ う に , 研 究 は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い .
ま た ,ボ イ ラ な ど 大 径 流 路 を 対 象 と し た 従 来 の 研 究 か ら ,並 列 流 路 の 沸 騰 流 で は , 各 流 路 の 熱 負 荷 が 均 一 で あ っ て も , 流 量 が 周 期 的 に 変 動 す る 不 安 定 流 動 が 生 じ や す い こ と が 知 ら れ て い る[10].こ れ は ,並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル で も 生 じ る 可 能 性 が あ り , ド ラ イ ア ウ ト を 誘 発 す る た め 性 能 低 下 を 引 き 起 こ す 恐 れ が 大 き い が , ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 と し た 研 究 は 見 ら れ な い . さ ら に , ヒ ー ト ポ ン プ 蒸 発 器 の よ う に , 流 体 が 気 液 二 相 状 態 で 並 列 流 路 に 流 入 す る 場 合 に 生 じ る 不 安 定 流 動 を 対 象 と し た 研 究 も 行
Fig. 1-2 Unequal heating among parallel mini-channels in a multiport tube
熱負荷:小 空気流れ
Heat load : Larger (Air upstream) Air flow
Heat load : Lower (Air downstream)
Refrigerant flow
3 わ れ て い な い .
こ の よ う な 現 象 を 解 明 す る た め ,本 研 究 で は ,並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 と し て , 実 験 に よ り 均 一 ・ 不 均 一 熱 負 荷 場 に お け る 沸 騰 熱 伝 達 お よ び 流 量 分 配 ・ 不 安 定 流 動 現 象 の 基 礎 特 性 を 明 ら か に す る と と も に , こ れ ら を 予 測 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル の 開 発 を 行 っ た . 本 研 究 の 成 果 は , 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル 熱 交 換 器 の 高 性 能 化 , コ ン パ ク ト 化 に 資 す る の み な ら ず , 相 変 化 を 利 用 す る 多 く の 伝 熱 機 器 へ の 応 用 が 期 待 で き る .
4
1.2 ミニチャンネル内を流れる冷媒の流動・沸騰熱伝達の基礎特性
前 述 し た よ う に , ミ ニ チ ャ ン ネ ル 内 気 液 二 相 流 の 流 動 な ら び に 沸 騰 熱 伝 達 の 基 礎 特 性 は , 流 路 間 の 不 均 一 流 量 分 配 や 不 安 定 流 動 を 伴 わ な い 条 件 に つ い て は , 幅 広 く 明 ら か に さ れ て お り ,レ ビ ュ ー 論 文[11][12]に も ま と め ら れ て い る .本 論 文 で は ,並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 特 性 に つ い て , 単 一 ミ ニ チ ャ ン ネ ル で 得 ら れ て い る 知 見 を 利 用 し て 検 討 し て い る . こ こ で は , 本 研 究 と 同 じ 内 径 1 mm の 水 平 円 管 内 を 流 動 す る 冷 媒 の 流 動 様 相 , 圧 力 損 失 お よ び 沸 騰 熱 伝 達 の 特 性 を 実 験 的 に 明 ら か に し た 榎 木 ら [13-16]お よ び Matsuse ら[17]の 研 究 を 引 用 し て , ミ ニ チ ャ ン ネ ル 内 の 気 液 二 相 流 動 と 沸 騰 熱 伝 達 の 基 礎 特 性 に つ い て 述 べ る . ま た , ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 と し た 既 存 の 沸 騰 熱 伝 達 整 理 式 に つ い て も 説 明 す る .
1.2.1 流 動 様 相
榎 木 ら[13]は , 冷 媒 R410A を 用 い て , 質 量 速 度 30~400 kg/(m2·s), ク オ リ テ ィ 0.05~0.9 の 範 囲 で 断 熱 気 液 二 相 流 の 可 視 化 実 験 を 行 い , 流 動 様 相 の 観 察 結 果 を 報 告 し て い る . 質 量 速 度 G と ク オ リ テ ィ x の 関 係 で 表 し た 流 動 様 式 線 図 を Fig. 1-3 に 示 す . ま ず , 質 量 速 度 100 kg/(m2·s) 以 上 の 条 件 で は , 低 ク オ リ テ ィ 側 で は ス ラ グ 流
(Slug flow), 高 ク オ リ テ ィ 側 で は 環 状 流 (Annular flow) と な り , そ の 遷 移 ク オ リ テ ィ は 低 流 量 ほ ど 大 き い .ま た ,質 量 速 度 200 kg/(m2·s) 以 上 の 高 流 量 で は ,ス ラ グ 流 か ら 環 状 流 へ の 遷 移 の 間 に チ ャ ー ン 流(Churn Flow)と な り ,質 量 速 度 100 kg/(m2·s) で は ,気 液 が 上 下 に 分 離 し て 流 れ る 波 状 流(Wavy flow)と な る こ と が 確 認 さ れ て い る .一 方 ,低 流 量 の 質 量 速 度 50 kg/(m2·s)以 下 の 条 件 で は ,ク オ リ テ ィ の 増 大 と と も に , ス ラ グ 流 , 波 上 流 , 層 状 流 (Stratified flow) の 順 に 流 動 様 相 が 変 化 す る こ と が 報 告 さ れ て い る .
Fig. 1-3 Flow pattern map of a horizontal circular mini-channel (Enoki et al. [13])
5
1.2.2 摩 擦 圧 力 損 失 特 性
榎 木 ら[14]お よ び Matsuse ら[17]に よ っ て そ れ ぞ れ 得 ら れ た R410A と HFC32 の 断 熱 気 液 二 相 流 の 摩 擦 圧 力 損 失 に つ い て ,摩 擦 圧 力 損 失 勾 配 ΔPf/ΔL と ク オ リ テ ィ x の 関 係 を ,Fig. 1-4 に 示 す .図 中 ,冷 媒 ご と に 記 号 の 形 を 変 え ,質 量 速 度 ご と に 色 分 け を し , 観 察 さ れ た 流 動 様 式 ご と に 記 号 内 の 模 様 を 変 え て い る . 摩 擦 圧 力 損 失 は , 従 来 径 管 と 同 じ よ う に ,高 流 量 ほ ど 大 き く ,ク オ リ テ ィ が 大 き い ほ ど 増 大 す る .特 に , 気 相 の 体 積 流 量 比 が 急 激 に 大 き く な る 低 ク オ リ テ ィ 域 に お い て , ク オ リ テ ィ の 増 加 に 対 す る 摩 擦 圧 力 損 失 の 変 化 が 大 き い .
Fig. 1-4 Changes of measured pressure drop gradient of R410A and HFC32 with quality (Enoki et al. [14], Matsuse et al. [17])
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0.5 1 5 10 50 100
G kg/(m2·s) Slug Wavy Stratified Churn Annular 30
50 100 200 400
x ΔPf /ΔL kPa/m
R 32R 410A
6
1.2.3 沸 騰 熱 伝 達 特 性
Fig. 1-5 に ,榎 木 ら[15]に よ っ て 得 ら れ た R410A の 内 径 1 mm の ミ ニ チ ャ ン ネ ル 内 の 沸 騰 熱 伝 達 率 を , 局 所 熱 伝 達 率 α と ク オ リ テ ィ x の 関 係 で , 流 量 ご と に 図 を 分 け て 示 し て い る . ミ ニ チ ャ ン ネ ル で は , 従 来 径 管 の 場 合 と 同 様 に , 高 流 量 ・ 高 ク オ リ テ ィ で は 二 相 強 制 対 流 蒸 発 熱 伝 達 が , ま た , 高 熱 流 束 で は 核 沸 騰 熱 伝 達 が 支 配 的 と な る 特 性 を 示 す も の の , 低 流 量 の 低 ク オ リ テ ィ で は , 低 熱 流 束 の 条 件 に お い て , 従 来 径 管 に 対 す る 熱 伝 達 整 理 式 の 予 測 に 比 べ て か な り 良 好 な 熱 伝 達 特 性 が 現 れ る こ と が 報 告 さ れ て い る . 特 に ,G = 100 kg/(m2·s)の x = 0.4 付 近 ,G = 200 kg/(m2·s)の x = 0.25 付 近 の q = 2, 4 kW/m2で , 熱 伝 達 率 の 顕 著 な 増 加 が 見 ら れ る . こ れ は , ミ ニ チ ャ ン ネ ル に お い て , 低 流 量 ・ 低 ク オ リ テ ィ で は , 流 動 様 式 は ス ラ グ 流 と な り , ス ラ グ 流 の 気 体 プ ラ グ 周 囲 の 液 膜 は な め ら か で 非 常 に 薄 く な る . こ の 薄 い 液 膜 を 介 し た 熱 伝 導 に よ る 蒸 発 熱 伝 達 の 寄 与 が 大 き い た め , か な り 高 い 熱 伝 達 率 を 示 す と 報 告 さ れ て い る . ま た , ク オ リ テ ィ が 増 大 し て あ る 値 を 超 え る と , 伝 熱 面 の 乾 く ド ラ イ ア ウ ト が 生 じ て 熱 伝 達 率 が 著 し く 低 下 し て い る . 質 量 速 度 が 小 さ い 50 kg/(m2·s)で は , 比 較 的 低 い ク オ リ テ ィ で ド ラ イ ア ウ ト が 発 生 し て , そ の 後 , 熱 伝 達 率 は 緩 や か に 減 少 し て 液 単 相 の 値 に 近 づ き , 一 方 で , 質 量 速 度 が 大 き い ほ ど 高 い ク オ リ テ ィ で ド ラ イ ア ウ ト が 生 じ て , 熱 伝 達 率 が 急 激 に 低 下 す る .
Fig. 1-5 The relation between measured heat transfer coefficient of R410A and quality (Enoki et al. [15])
0 5 10 15
kW/(m2 ·K)
G = 50 kg/(m2·s) Circular
Horizontal G = 100 kg/(m2·s) q kW/m2
2 4 8 16 20 24
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0 5 10 15 20
G = 200 kg/(m2·s)
kW/(m2 ·K)
x
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
x
G = 400 kg/(m2·s) Circular Horizontal R410A q kW/m2
2 4 8 16 20 24
7
1.2.4 沸 騰 熱 伝 達 に 関 す る 整 理 式
単 一 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 と し た 沸 騰 熱 伝 達 率 整 理 式 が ,Zhang ら[18],Saitoh ら [19], 宮 田 ら[20], 榎 木 ら[21]等 に よ っ て 提 案 さ れ て い る . 榎 木 ら[21]は , 宮 田 ら の 沸 騰 熱 伝 達 整 理 式[20]を 修 正 し ,円 形 流 路 を 対 象 と し て ,幅 広 い 管 径 ,流 量 ,熱 負 荷 お よ び 流 体 物 性 条 件 に つ い て , 沸 騰 熱 伝 達 率 を 精 度 よ く 予 測 す る 整 理 式 を 提 案 し て い る . 特 に , 本 研 究 で 対 象 と し て い る 内 径 1 mm の 円 形 流 路 に 対 し て は , 最 も 精 度 が 良 い .そ の 整 理 式 は ,従 来 径 管 で も み ら れ る 二 相 強 制 対 流 蒸 発 熱 伝 達 αfcと 核 沸 騰 熱 伝 達 αnbの 寄 与 に 加 え て ,ミ ニ チ ャ ン ネ ル 特 有 の 液 膜 熱 伝 導 蒸 発 αlf( 気 体 プ ラ グ 周 囲 の 薄 液 膜 の 蒸 発 )の 寄 与 を 考 慮 し て 作 成 さ れ て い る .榎 木 ら の 式 を Table 1-1 に 示 す .榎 木 ら の 式 は ,広 範 の 条 件 で 得 た デ ー タ( デ ー タ 総 数 1388,内 径 0.51-3.69 mm,
水 と CO2を 含 む 11 種 の 冷 媒 , 垂 直 上 昇 ・ 下 降 ・ 水 平 流 を 含 む ) の 88%を ±20%以 内 で ,98%を ±30%以 内 で 予 測 す る .
ま た , 矩 形 流 路 を 有 す る 扁 平 多 孔 管 を 対 象 に , 直 接 通 電 加 熱 も し く は 冷 媒 と 対 向 し て 流 れ る 温 水 に よ る 加 熱 に よ り 全 て の 流 路 に 均 一 な 熱 負 荷 を 与 え た 場 合 に つ い て , Kaew-On ら[3], Mortada ら[4],Chien ら[8]は , 実 験 に よ り 沸 騰 熱 伝 達 率 を 測 定 す る と と も に , 実 験 値 を 再 現 す る 予 測 式 を そ れ ぞ れ 提 案 し て い る . し か し な が ら , い ず れ も 流 路 間 の 熱 負 荷 差 は 考 慮 さ れ て い な い .
8
Table 1-1 The Enoki et al. boiling heat transfer coefficient correlation [21]
Correlation n
n
n T
SC
F
1 sat1
1 L e
nb L fc
lf Δ
Thin liquid film evaporation heat transfer Nucleate boiling heat transfer for horizontal flow
8 . 1
2 . 0 14 . 0 18 . 0
L V
e
36 12 . 0 max
Ca
Fr Ca D
for vertical upward flow
41 . 0 25 . 0
L V
e 1.14 Ca
D
for vertical downward flow
82 . 0 e 2.7Ca D
x
x x
1
L
V
4 . 4 4 . 1
sat L
b 25 . 1 L
1 10 1
1 T F qD D x G S
where q is the total heat flux for Freon
for H2O
22 . 5
L V L 58 . 1
L2 b2
26 . 1
L2 b2 sat L p sat L
b b 7 L
10 246 . 0
a Δh D
a D T c T D C D
v
n
5 . 0
V b L
66 2 .
0
D g
673 .
0 n
for CO2
533 . L0 581 . 0
L V sat L
b b
207 L Pr
T D C D
n
745 .
0 n
Forced convection heat transfer
1 . 1
tt
1 1
F
1 . 0
V L 0.5
L V 9 . 0 tt
1
x
x
0.4 L 8 . 0
L
L 0.023 L G1 xD Pr
D
LjT
Ca
L
T V 1
x G x
j
gD Fr G
V L L
2
25 . L 0 4 . 1
crit sat 1 . 0
crit sat sat L
b b
L 1
10
Pr
T T P
P T D C D
n
5 . 0
V b L
51 2 .
0
D g
437 . 0
crit sat 309 . 0
L
855 V
. 0
P n P
5 . 0
V
b 0.51 L2
D g
9
1.3 流 量 の 不 均 一 分 配 に 関 す る 従 来 研 究
1.3.1 T 字 分 岐 で 生 じ る 気 液 二 相 流 の 相 分 離 特 性
こ れ ま で , 衝 突 T 字 型 分 岐 流 路 (1 つ の 入 口 流 路 と 入 口 流 路 に 対 し て 垂 直 な 2 つ の 出 口 流 路 )に お け る 気 液 二 相 流 の 相 分 離 特 性 に つ い て ,内 径 が 比 較 的 大 き い 10 mm 以 上 の も の を 含 め て 多 く の 研 究 が 行 わ れ て い る[22-29]. こ れ ら の 研 究 で は , バ ル ブ を 用 い て 2 つ の 出 口 流 路 の 流 動 抵 抗 を 変 化 さ せ る こ と で 出 口 流 量 を 調 節 し , 出 口 後 に 設 置 さ れ た 気 液 分 離 器 に よ っ て 気 相 と 液 相 を 分 離 し , 各 相 の 流 量 を 測 定 す る こ と で , 気 液 の 相 分 離 特 性 , す な わ ち ク オ リ テ ィ 分 配 特 性 を 調 査 し て い る .1 辺 0.5 mm の 矩 形 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 と し た Chen ら[29]の 実 験 を 含 め ,流 路 径 に よ ら ず ,流 動 抵 抗 が 大 き く 流 量 が 減 少 す る 流 路 で は ク オ リ テ ィ が 減 少 し , 一 方 で , 流 量 が 増 大 す る 流 路 で ク オ リ テ ィ が 増 大 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る . ま た , 流 入 ク オ リ テ ィ が 大 き く な る ほ ど , 分 岐 後 の ク オ リ テ ィ が 均 等 に な り や す い こ と が 報 告 さ れ て い る .
1.3.2 流 路 間 熱 負 荷 が 不 均 一 な 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル で 生 じ る 流 量 分 配
極 少 な い が , 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 各 流 路 の 熱 負 荷 が 不 均 一 な 条 件 に お け る 流 量 分 配 特 性 に 関 す る 研 究 が 行 わ れ て い る . 大 西 ら[30]は , 内 径 0.8 mm の 水 平 2 並 列 流 路 に 流 路 間 不 均 一 な 熱 負 荷 を 与 え る こ と で 生 じ る 流 量 の 不 均 一 分 配 に つ い て 報 告 し て い る . 実 験 で は ,2 流 路 に 分 岐 す る 前 の 流 量 と 分 岐 後 の 片 側 1 流 路 の 流 量 を 測 定 す る こ と で , 流 量 分 配 を 測 定 し て い る . こ の と き , 流 量 計 が 設 置 さ れ て い な い 流 路 に は バ ル ブ を 取 り 付 け , 流 量 計 と 同 じ 流 動 損 失 を 付 加 す る こ と で , 熱 負 荷 に よ る 影 響 の み 検 討 し よ う と し て い る . 実 験 条 件 は , 入 口 ク オ リ テ ィ 0( 液 単 相 ) で 2 流 路 の 平 均 質 量 速 度 240 kg/(m2·s)で あ る . 実 験 の 結 果 , 熱 負 荷 の 大 き い 流 路 で 流 量 が 減 少 す る こ と を 報 告 し て お り , こ れ は , 蒸 発 量 が 増 大 す る ほ ど 圧 力 損 失 が 高 く な る た め ,2 流 路 の 圧 力 損 失 が 釣 り 合 う よ う に , 熱 負 荷 の 大 き い 流 路 で 流 量 が 減 少 し , 熱 負 荷 の 小 さ い 流 路 で 流 量 が 増 大 し た た め と し て い る .
以 上 の よ う に , 流 路 間 の 熱 負 荷 差 に よ り 生 じ る 流 量 分 配 の 特 性 に つ い て も 僅 か に 報 告 例 が あ る . し か し な が ら , ヒ ー ト ポ ン プ 蒸 発 器 で 用 い ら れ る 気 液 二 相 状 態 で 流 入 す る 条 件 や 低 流 量 条 件 を 包 括 す る 一 般 特 性 は 不 明 で あ る し , 流 量 ・ ク オ リ テ ィ の 不 均 一 分 配 の 結 果 生 じ る 流 路 全 体 の 熱 伝 達 特 性 を 明 ら か に し た 研 究 は こ れ ま で に な い .
10
1.4 並 列 流 路 の 不 安 定 流 動 に 関 す る 従 来 研 究
並 列 流 路 の 沸 騰 流 で は ,流 動 が 不 安 定 に な り や す い こ と が 一 般 的 に 知 ら れ て お り , ボ イ ラ や 沸 騰 水 型 原 子 炉 な ど を 対 象 と し た 研 究 が 多 く 行 わ れ て い る[10]. 並 列 流 路 に 気 液 二 相 状 態 で 流 入 す る 場 合 に 発 生 す る 可 能 性 が あ る の が , い わ ゆ る “ 密 度 波 振 動”で あ る .た だ し ,従 来 の 研 究 は サ ブ ク ー ル で 流 入 す る 系 を 対 象 と し て お り ,二 相 状 態 で 流 入 す る 条 件 を 対 象 と し た 研 究 は み ら れ な い . 密 度 波 振 動 の 発 生 機 構[10]を 以 下 に 引 用 す る .
① 加 熱 部 に 流 体 が 流 入 し て か ら 沸 騰 し て 流 出 す る ま で に あ る 時 間 遅 れ ( 通 過 時 間 ) を 要 す る .
② 入 口 流 量 に 変 動 が 生 じ る と , そ の 変 動 は 出 口 ま で 伝 播 す る の に 通 過 時 間 を 必 要 と す る た め に ,沸 騰 領 域 内 に お け る 気 液 二 相 流 の 密 度( ク オ リ テ ィ )や 各 相 の 流 速 お よ び 各 圧 力 損 失 項 は , 入 口 流 速 変 動 に 対 し て 時 間 遅 れ を 生 じ る .
③ 多 並 列 管 系 で は ,各 流 路 の 出 入 口 ヘ ッ ダ 間 の 差 圧 に 拘 束 さ れ る た め ,各 流 路 の 差 圧 変 動 は , 各 流 路 の 入 口 流 速 が 変 化 す る よ う に フ ィ ー ド バ ッ ク さ れ る .
な お ,発 生 機 構 に つ い て は ,後 の 5 章 5.3.1 項 に ,本 研 究 で 得 た 結 果 を 図 に 示 し な が ら 説 明 し て い る .
不 安 定 流 動 ( 流 量 振 動 ) が 生 じ る と , 周 期 的 な 流 量 の 減 少 に よ っ て , ド ラ イ ア ウ ト 開 始 点 が 時 間 的 に 変 化 す る . 特 に , ボ イ ラ や 原 子 炉 の 様 な , 外 部 か ら 大 き な 熱 負 荷 を 与 え る 系 で は , ド ラ イ ア ウ ト が 生 じ る と 急 激 に 管 壁 温 度 が 上 昇 す る た め 配 管 損 傷 の 危 険 が あ る . こ の よ う な 背 景 か ら , ボ イ ラ や 原 子 炉 を 対 象 に , 並 列 流 路 に サ ブ ク ー ル で 流 入 す る 系 の 振 動 発 生 限 界 や 振 動 特 性 に 関 す る 研 究 が 多 く 行 わ れ て い る . 実 験 的 研 究 で は , 有 富[32]が 大 気 圧 下 の 水 の 2 並 列 流 路 内 沸 騰 上 昇 流 を 対 象 に 実 験 を 行 い , 入 口 流 速 が 小 さ い ほ ど , 熱 流 束 が 大 き い ほ ど , ま た 加 熱 区 間 が 長 い ほ ど 流 量 振 動 が 生 じ や す い こ と を 報 告 し て い る .さ ら に ,有 富[32]は ,流 量 振 動 の 周 期 に つ い て , 最 も 影 響 を 与 え る 因 子 は 流 体 の 加 熱 部 の 通 過 時 間 で あ り , 振 動 周 期 が 加 熱 部 の 流 体 通 過 時 間 と 同 じ オ ー ダ ー と な る こ と , さ ら に 熱 流 束 が 大 き い ほ ど 流 体 の 平 均 速 度 が 大 き く , 圧 力 損 失 の 時 間 遅 れ が 小 さ く な る た め , 周 期 が 短 く な る こ と を 報 告 し て い る .
ま た , 一 般 に , 入 口 サ ブ ク ー ル を 対 象 と し た 密 度 波 振 動 の 発 生 限 界 線 図 ( 安 定 判 別 図 )は ,無 次 元 数 の サ ブ ク ー リ ン グ 数 Nsubお よ び フ ェ ー ズ チ ェ ン ジ 数 Npchの 関 係 で 示 さ れ て お り , そ の 例[10]を ,Fig. 1-6 に 示 す . サ ブ ク ー リ ン グ 数 と フ ェ ー ズ チ ェ ン ジ 数 は そ れ ぞ れ 次 式 で 定 義 さ れ る .
L G in
sub
G
( )( 'h h )
N h
(1.1)
11
Fig. 1-6 Stability boundary for inlet subcooled condition [10]
L G
pch G
( )Q
N hW
(1.2)
こ こ で ,
Nsub : サ ブ ク ー リ ン グ 数 [-]
Npch : フ ェ ー ズ チ ェ ン ジ 数 [-]
ρL : 液 相 密 度 [kg/m3]
ρG : 気 相 密 度 [kg/m3]
h' : 飽 和 液 の 比 エ ン タ ル ピ ー [J/kg]
hin : 流 路 入 口 比 エ ン タ ル ピ ー [J/kg]
Δh : 蒸 発 潜 熱 [J/kg]
Q : 流 体 加 熱 量 [W]
W : 流 体 質 量 流 量 [kg/s]
図 中 の プ ロ ッ ト を 繋 い だ 曲 線 は , 曲 線 よ り 左 側 が 安 定 流 動 , 右 側 が 不 安 定 流 動 と な る こ と を 表 す . 図 に 示 す よ う に , 流 量 振 動 が 生 じ る フ ェ ー ズ チ ェ ン ジ 数 は , サ ブ ク ー リ ン グ 数 に 対 し て , 極 小 値 を 持 つ こ と が 知 ら れ て い る . ま た , 平 均 出 口 ク オ リ テ
ィ xo u t ( 流 量 振 動 が 生 じ な い と 仮 定 し て 見 積 も ら れ る 流 路 出 口 ク オ リ テ ィ ) 一 定 の
プ ロ ッ ト は , ク オ リ テ ィ ご と に 右 肩 上 が り の 直 線 で 示 さ れ , サ ブ ク ー リ ン グ 数 が 大 き い 領 域 で は ,振 動 発 生 限 界 は 平 均 出 口 ク オ リ テ ィ 一 定 の 直 線 で 近 似 的 に 表 さ れ る . 図 の 例 で は ,xo u t = 0.2 の 直 線 で 安 定 限 界 が 近 似 さ れ る .
0 10 20
0 5 10
Npch Nsub
R-113 I.D. 10.2 mm
Saha et al [42]
xou =t 0
xout = 1.0 Subcooled
region
Super heated region xout
= 0.2 (Stability boundary)
12
ま た , 密 度 波 振 動 の 発 生 限 界 を 予 測 す る た め , 数 値 解 析 的 研 究 が 多 く 行 わ れ て い る .有 富[32]は ,2 並 列 流 路 内 上 昇 流 を 対 象 に ,流 量 振 動 を 予 測 す る 解 析 モ デ ル に つ い て 報 告 し て い る . 有 富[32]の モ デ ル は , 質 量 保 存 式 と エ ネ ル ギ ー 保 存 式 を ラ グ ラ ン ジ ュ 空 間 で 解 き , オ イ ラ ー 空 間 へ 移 行 し て 運 動 量 保 存 式 を 解 く 手 法 で , 流 量 振 動 の 予 測 を 可 能 と し た . こ の 手 法 で は , 後 述 す る 集 中 定 数 系 の モ デ ル と は 異 な り , 振 動 発 生 中 に 流 体 エ ン タ ル ピ ー が 流 れ 方 向 に 非 線 形 増 加 す る 現 象 を 再 現 で き る . 有 富 は , シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 検 討 に よ り , 流 動 安 定 性 を 支 配 す る 因 子 は 流 路 出 口 合 流 後 の ク オ リ テ ィ で あ り , 出 口 ク オ リ テ ィ が 大 き い ほ ど 不 安 定 流 動 が 生 じ や す く な る こ と を 報 告 し て い る .
Clausse and Lahey [33]は ,有 富[32]と は 異 な る 流 量 振 動 モ デ ル に つ い て 報 告 し て い る . ま た , こ の モ デ ル は , そ の 後 の 多 く の モ デ ル に 応 用 さ れ て い る[34-37].Clausse and Lahey の モ デ ル の 概 略 を Fig. 1-7 に 示 す .計 算 領 域 は ,サ ブ ク ー ル 液 加 熱 区 間 Ls, 二 相 域 加 熱 区 間 Lb, 後 流 側 非 加 熱 区 間 Lrの 3 区 間 に 分 け ら れ , 沸 騰 開 始 点 ま で の サ ブ ク ー ル 領 域 と 加 熱 区 間 後 流 非 加 熱 区 間 は 複 数 の 計 算 格 子 に 分 割 さ れ る . 加 熱 区 間 内 の 二 相 域 区 間 は 1 つ の 計 算 格 子 で 表 さ れ ,集 中 定 数 系 と し て 取 り 扱 う .こ の と き , 二 相 域 区 間 の 入 口 か ら 出 口 ま で 質 量 流 量 は 一 定 で , エ ン タ ル ピ ー は 線 形 上 昇 す る と 仮 定 す る . 単 流 路 対 象 で は あ る が , 流 路 入 口 出 口 の 圧 力 を 境 界 条 件 と し て 与 え る こ と で 流 量 振 動 を 予 測 す る こ と が で き る .
Fig. 1-7 Schematic diagram of the simulation model by Clausse and Lahey [33]
Subcooled liquid (Heated) Boiling two-phase flow
(Heated) Riser (Non-heated)
Ls Lb Lr
Flow
Heated length (constant)
13
Guo ら[34] は ,Clausse and Lahey[33]の モ デ ル を , 内 径 10 mm の 2 並 列 流 路 に 拡 張 し て , 加 圧 水 沸 騰 上 昇 流 で 生 じ る 流 量 振 動 の 発 生 限 界 を 予 測 し て お り . 入 口 サ ブ ク ー ル 度 が 小 さ い ほ ど ,小 さ い 熱 流 束 で 振 動 が 生 じ る こ と を 報 告 し て い る .他 に も , Zhang ら[35], Libo ら[36], Liu ら[37]な ど に よ っ て ,Clausse and Lahey[33]の モ デ ル を 応 用 し た 並 列 チ ャ ン ネ ル の 振 動 解 析 が 行 わ れ て お り , 振 動 の 発 生 限 界 等 に つ い て 報 告 さ れ て い る が , す べ て サ ブ ク ー ル で 流 入 す る 条 件 を 対 象 と し て い る .
以 上 の よ う に , 並 列 流 路 で 生 じ る 密 度 波 振 動 に 関 し て , い く つ か シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル が 提 案 さ れ て い る . し か し な が ら ,Clausse and Lahey[33]の モ デ ル は , そ の 応 用 研 究[34-37]を 含 め て , 流 量 振 動 の 発 生 限 界 を 明 ら か に す る こ と に 目 的 を 絞 っ て モ デ ル 構 築 し て お り ,前 述 し た よ う に ,二 相 域 を 集 中 定 数 近 似 し て い る .す な わ ち , 流 量 振 動 発 生 後 の 加 熱 区 間 内 の 非 線 形 な エ ン タ ル ピ ー 分 布 ( ク オ リ テ ィ 分 布 ) を 再 現 す る こ と が で き な い . し た が っ て , 流 量 振 動 に よ る ド ラ イ ア ウ ト 点 の 変 化 を , 正 確 に 予 測 す る こ と が で き な い . ま た , 入 口 サ ブ ク ー ル の 系 を 対 象 と し て い る た め , ヒ ー ト ポ ン プ 蒸 発 器 の よ う な ,入 口 二 相 条 件 に は 適 用 す る こ と が で き な い .さ ら に , 入 口 流 速 が 負 と な る , す な わ ち 入 口 で 逆 流 が 生 じ る よ う な 大 き な 流 量 振 動 を 再 現 で き な い .一 方 で ,有 富[32]の 手 法 は ,入 口 二 相 条 件 お よ び 逆 流 条 件 に 適 用 で き る 可 能 性 が あ る も の の , こ れ ら に つ い て 検 討 し た 研 究 例 は 見 当 た ら な い .
こ の よ う に , 従 来 の 流 量 振 動 の 研 究 で 対 象 と さ れ て き た 条 件 は 限 ら れ て お り , ヒ ー ト ポ ン プ 蒸 発 器 に 相 当 す る よ う な , ① ミ ニ チ ャ ン ネ ル , ② 入 口 二 相 条 件 , ③ 流 れ 方 向 の 伝 熱 面 温 度 が ほ ぼ 一 定 で 熱 流 束 が 変 化 す る ,④ 並 列 流 路 間 の 熱 負 荷 が 不 均 一 , と い っ た 条 件 に ま で 適 用 で き る 一 般 性 の 高 い 知 見 と シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル が 求 め ら れ て い る .
14
1.5 本 論 文 の 目 的 と 構 成
本 論 文 は , 流 路 間 の 熱 負 荷 が 不 均 一 な 条 件 を 含 め て 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 沸 騰 熱 伝 達 と 流 量 変 動 現 象 を 実 験 に よ っ て 明 ら か に す る こ と , ま た , こ れ ら の 特 性 を 予 測 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル を 開 発 す る こ と を 目 的 と し て い る . 前 節 ま で に 述 べ た よ う に , こ れ ら の 特 性 は こ れ ま で ほ と ん ど 検 討 さ れ て お ら ず , 明 ら か に さ れ て い な い .
本 論 文 は , 本 章 を 含 め て 全 6 章 か ら 構 成 さ れ , 続 く 2 章 以 降 の 目 的 お よ び 内 容 は 以 下 の 通 り で あ る .
第 2 章 で は , 内 径 1 mm の 水 平 2 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 に , 冷 媒 HFC32 お よ び HFC134a を 用 い て 実 験 を 行 い ,流 量 分 配 ・ 沸 騰 熱 伝 達 特 性 に 与 え る 熱 負 荷 不 均 一 度 の 影 響 に つ い て , 平 均 流 量 , 入 口 ク オ リ テ ィ お よ び 冷 媒 物 性 を 変 え な が ら 検 討 す る . 第 2 章 で は , 直 接 通 電 ( 管 内 面 一 様 熱 流 束 ) で 冷 媒 を 加 熱 し て お り , ク オ リ テ ィ は 流 れ 方 向 に 線 形 に 増 加 す る . 実 機 蒸 発 器 と 加 熱 方 式 が 異 な る が , 流 量 分 配 の 基 礎 特 性 を 明 ら か に す る う え で 重 要 な 実 験 で あ る . 初 め に , 流 路 間 の 熱 負 荷 が 不 均 一 な 場 合 に 生 じ る 流 量 ・ ク オ リ テ ィ 分 配 を , 流 量 計 を 用 い ず に 定 量 的 に 推 定 す る 方 法 を 検 討 し , そ の 結 果 得 ら れ た 分 配 特 性 を 考 察 し て , 流 量 分 配 予 測 式 を 作 成 す る . 次 に , 不 均 一 熱 負 荷 時 の 沸 騰 熱 伝 達 率 に つ い て , 均 一 熱 負 荷 時 の 結 果 と 比 較 し な が ら 考 察 し , 単 一 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 沸 騰 熱 伝 達 率 整 理 式 と 上 記 の 流 量 分 配 予 測 式 を 用 い て 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 平 均 熱 伝 達 率 を 予 測 す る 方 法 を 検 討 す る .
第 3 章 で は ,第 2 章 と 同 じ 2 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 に ,冷 媒 R410A を 高 温 流 体 で 加 熱 す る 実 験 , す な わ ち ,2 章 の 方 法 と 比 べ て よ り 実 機 蒸 発 器 に 近 い 加 熱 方 法 で 実 験 を 行 い , そ の 結 果 に つ い て 述 べ る . 高 温 流 体 の 温 度 を 流 路 ご と に 調 節 し , 流 路 間 で 冷 媒 側 伝 熱 面 温 度 に 差 を 与 え る こ と で 熱 負 荷 を 不 均 一 に 設 定 し , 熱 負 荷 の 不 均 一 度 と 冷 媒 へ の 伝 熱 量 ( す な わ ち 伝 熱 性 能 ) の 関 係 を 検 討 す る . 高 温 流 体 で 冷 媒 を 加 熱 す る 場 合( 通 電 加 熱 と 比 べ れ ば 壁 面 温 度 一 定 と み な せ る 場 合 ),ド ラ イ ア ウ ト 開 始 点 よ り 後 流 で は 熱 伝 達 率 が 低 下 し て 熱 流 束 が 低 下 す る . ヒ ー ト ポ ン プ 蒸 発 器 の 性 能 は ド ラ イ ア ウ ト 域 の 大 き さ に よ り 大 き く 変 化 す る た め , 本 実 験 結 果 に 基 づ く 検 討 は 重 要 で あ る .
第 4 章 で は , 本 論 文 で 最 も 重 要 な , 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 沸 騰 熱 伝 達 特 性 お よ び 流 量 分 配 を 予 測 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル に つ い て , モ デ ル の 説 明 と , シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 の 考 察 を 行 う . 本 モ デ ル は , 各 流 路 の 計 算 に は 単 一 流 路 対 象 の 圧 力 損 失 予 測 式 と 沸 騰 熱 伝 達 整 理 式 を 用 い , 別 に 並 列 流 路 間 の 相 互 作 用 を 計 算 す る こ と で 流 量 分 配 を 含 む 沸 騰 熱 伝 達 性 能 を 予 測 す る モ デ ル で あ り , ヒ ー ト ポ ン プ 蒸 発 器 の 開 発 ・ 設 計 に 非 常 に 有 用 で あ る .4 章 で は , 本 モ デ ル に よ る 加 熱 区 間 流 れ 方 向 の ク オ リ テ ィ ・ 熱 伝 達 率 の 変 化 , 流 量 分 配 の 予 測 結 果 を 示 し ,3 章 の 実 験 結 果 と 比 較 す る こ と に よ っ て モ デ ル の 妥 当 性 を 検 証 す る .ま た ,実 機 蒸 発 器 に 近 い 10 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 対 象 と し た 計 算 を 行 い , 並 列 流 路 間 の 熱 負 荷 分 布 が 熱 伝 達 特 性 に 与 え る 影 響 を 明 ら か に す る .
15
第 5 章 で は ,4 章 と 同 じ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル を 用 い て , 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル で 生 じ る 不 安 定 流 動 現 象 に 着 目 し て 検 討 を 行 う .2~4 章 で の 実 機 蒸 発 器 を 想 定 し た 流 入 条 件 で は ,特 に 入 口 ク オ リ テ ィ が 0.1~0.2 程 度 と 比 較 的 高 い こ と に よ り ,不 安 定 流 動 は 生 じ な か っ た .し か し な が ら ,強 制 循 環 ル ー プ を 用 い た 蒸 発 管 の 基 礎 研 究 や , 実 機 で も 凝 縮 器 後 流 に サ ブ ク ー ラ ー を お い て 蒸 発 器 入 口 ク オ リ テ ィ を 下 げ る 場 合 な ど , 蒸 発 管 入 口 ク オ リ テ ィ が 低 下 す る と 流 動 振 動 が 生 じ る 可 能 性 が あ る が , こ れ ま で 入 口 二 相 条 件 で の 流 量 振 動 の 発 生 限 界 を 明 ら か に し た 研 究 は な い .1.4 節 で 述 べ た よ う に , 流 量 振 動 が 生 じ る と , 沸 騰 熱 伝 達 性 能 の 低 下 を 引 き 起 こ す 恐 れ が あ る た め , こ の こ と に 関 す る 検 討 は 非 常 に 重 要 で あ る .5 章 で は , 流 量 振 動 の 実 験 結 果 と 計 算 結 果 を 比 較 し て モ デ ル の 妥 当 性 を 検 証 す る . さ ら に , 流 量 振 動 の 発 生 限 界 と 平 均 流 量 , 入 口 ク オ リ テ ィ お よ び 熱 負 荷 の 不 均 一 度 の 関 係 に つ い て 検 討 し , 流 量 振 動 が 熱 伝 達 特 性 に 与 え る 影 響 に つ い て 考 察 す る .
第 6 章 で は , 本 論 文 各 章 の 結 論 を 再 度 ま と め , 総 括 す る .
16
第 2 章
流 量 分 配 お よ び 沸 騰 熱 伝 達 特 性 に関 す る 直 接 通 電 加 熱 実 験
2.1 概 説
本 章 で は , 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル に お い て , 流 路 間 の 熱 負 荷 が 不 均 一 な 条 件 下 で の 気 液 二 相 流 量 分 配 お よ び 沸 騰 熱 伝 達 の 基 礎 特 性 を 明 ら か に す る た め ,2 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル を 用 い て 実 験 を 行 い , 流 量 分 配 ・ 沸 騰 熱 伝 達 特 性 に 与 え る 熱 負 荷 の 不 均 一 度 , 平 均 流 量 , 入 口 ク オ リ テ ィ お よ び 冷 媒 物 性 の 影 響 に つ い て 議 論 す る . 本 章 で 示 す 実 験 は , 各 流 路 の 加 熱 を 直 接 通 電 加 熱 ( 管 内 面 一 様 熱 流 束 ) で 行 っ た . 測 定 デ ー タ を も と に , 流 路 間 の 熱 負 荷 が 不 均 一 な 場 合 に 生 じ る 流 量 ・ ク オ リ テ ィ 分 配 を , 流 量 計 を 用 い ず に 定 量 的 に 推 定 す る 方 法 を 検 討 し , そ の 結 果 得 ら れ た 分 配 特 性 を 考 察 し て ,流 量 分 配 予 測 式 を 作 成 し た .次 に ,不 均 一 熱 負 荷 時 の 沸 騰 熱 伝 達 率 に つ い て , 均 一 熱 負 荷 時 の 結 果 と 比 較 し な が ら 考 察 し , 従 来 の 単 一 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 沸 騰 熱 伝 達 整 理 式 お よ び 上 記 の 流 量 分 配 予 測 式 を 用 い て , 並 列 ミ ニ チ ャ ン ネ ル の 平 均 熱 伝 達 率 を 予 測 す る 方 法 を 検 討 し た .
2.2 実 験 装 置 お よ び 実 験 方 法
2.2.1 実 験 装 置本 実 験 で 使 用 し た 強 制 循 環 テ ス ト ル ー プ の 概 略 を Fig. 2-1 に 示 す . 試 験 冷 媒 は , 液 単 相 状 態 で 循 環 ポ ン プ を 出 て , 質 量 流 量 と 温 度 ・ 圧 力 を 測 定 さ れ た 後 , プ レ ヒ ー タ で 所 定 の ク オ リ テ ィ ま で 加 熱 さ れ ,2 並 列 流 路 の テ ス ト セ ク シ ョ ン に 分 岐 し て 流 入 す る .そ の 後 ,テ ス ト セ ク シ ョ ン を 出 て 合 流 し ,凝 縮 器 を 経 て 循 環 ポ ン プ に 戻 る . 試 験 冷 媒 の 圧 力 は ,凝 縮 器 内 の 冷 媒 を 冷 却 す る ブ ラ イ ン の 温 度 を 調 節 し て 制 御 し た .
テ ス ト セ ク シ ョ ン の 概 略 を Fig. 2-2 に 示 す . テ ス ト セ ク シ ョ ン は , 同 一 水 平 面 上 で 左 右 対 称 に 設 置 さ れ た 2 並 列 流 路 で , 共 に 内 径 1.0 mm, 外 径 1.4 mm, 全 長 1040 mm の 銅 製 円 管 で あ る .T 字 分 岐 部 (Fig. 2-2 中 の 太 線 部 ) は , 流 路 内 径 2 mm で あ る .Fig. 2-2 に 示 す よ う に , 分 岐 前 と 合 流 後 の 差 圧 な ら び に 合 流 後 の 圧 力 を 測 定 し た .加 熱 区 間 は 各 流 路 中 央 部 の 800 mm で ,交 流 電 源 に よ る 直 接 通 電 加 熱 を 行 っ た . ま た , 各 流 路 の 加 熱 区 間 内 流 れ 方 向 4 点 の 管 側 部 に 熱 電 対 を ス ポ ッ ト 溶 接 し , 管 外 壁 温 度 を 測 定 し た . な お , プ レ ヒ ー タ お よ び テ ス ト セ ク シ ョ ン は , 断 熱 材 で 覆 っ た う え で , 冷 媒 の 蒸 発 温 度 に 近 い 温 度 に 保 た れ た 恒 温 室 内 に 設 置 す る こ と で , 周 囲 空 気 と の 熱 交 換 を 抑 制 し た .
17
Fig. 2-1 Schematic diagram of the test loop
Fig. 2-2 Schematic diagram of the test section
M.C. Mixing chamber
Flow meter Pump Condenser
F
M. C. M. C.
Channel 1
Channel 2
T T
P
Test section
PreheaterT
P
AC source
T1-1
~
T1-3T1-2 T1-4
200 200 180
200
120 800
~
AC sourceChannel 1
Channel 2
120
T2-1 T2-2 T2-3 T2-4 ΔP0
P
18
2.2.2 実 験 方 法
実 験 で は , テ ス ト セ ク シ ョ ン に 冷 媒 を 気 液 二 相 状 態 で 流 入 さ せ , 流 路 間 で 熱 流 束 を 均 一 あ る い は 不 均 一 と し て , 各 測 定 項 目 の 測 定 を 行 っ た . 計 測 は , 全 測 定 項 目 が 定 常 ( ド ラ イ ア ウ ト 発 生 に よ り 壁 温 が 周 期 的 に 変 化 す る 場 合 は 準 定 常 状 態 ) と な っ て か ら サ ン プ リ ン グ 数 10 Hz 程 度 で 30 秒 以 上 行 い , そ の 時 間 平 均 を 代 表 値 と し た .
以 下 に , 各 測 定 項 目 に つ い て , デ ー タ 取 得 方 法 お よ び デ ー タ 整 理 方 法 を 示 す .
(a) 冷 媒 圧 力 の 測 定
プ レ ヒ ー タ 入 口 圧 力 , テ ス ト セ ク シ ョ ン 出 口 圧 力 の 測 定 は 圧 力 伝 送 器 , テ ス ト セ ク シ ョ ン 差 圧 の 測 定 は 差 圧 伝 送 器 を 用 い て 行 っ た .
(b) 冷 媒 流 量 の 測 定
冷 媒 流 量 の 測 定 に は , コ リ オ リ 式 質 量 流 量 計 を 用 い た . ま た , 冷 媒 の 2 流 路 平 均 質 量 速 度 Gaveは 以 下 の 式 で 求 め た .
av e
2 c,r
G W
A (2.1)
こ こ で
Gave : 冷 媒 の 2 流 路 平 均 質 量 速 度 [kg/(m2·s)]
W : 冷 媒 の 2 流 路 合 計 質 量 流 量 [kg/s]
Ac,r : 冷 媒 1 流 路 の 流 路 断 面 積 [m2]
(c) テ ス ト セ ク シ ョ ン 管 外 壁 温 度 お よ び 冷 媒 温 度 の 測 定
テ ス ト セ ク シ ョ ン の 管 外 壁 温 度 は ,T 型 熱 電 対 ( 直 径 0.08 mm の 素 線 ) を ス ポ ッ ト 溶 接 し て 測 定 を 行 っ た . ま た , プ レ ヒ ー タ 入 口 ・ テ ス ト セ ク シ ョ ン 出 口 の 各 混 合 室 に お け る 流 体 温 度 の 測 定 に は ,T 型 シ ー ス 熱 電 対( シ ー ス 径 1.6 mm)を 使 用 し た . 実 験 で 用 い た 全 て の 熱 電 対 は , 恒 温 槽 と 標 準 温 度 計 ( 白 金 測 温 抵 抗 体 ) を 用 い て 検 定 を 行 い ,測 定 誤 差±0.13 K 以 下 の 検 定 曲 線 を 作 成 し て 使 用 し た .ま た ,本 実 験 で 最 も 重 要 な 冷 媒 と 管 壁 の 温 度 差 は , 後 述 2.2.4 節(f)に 示 す 飽 和 状 態 の 冷 媒 を 用 い た 検 定 に よ り ,±0.025 K 以 内 で 評 価 さ れ る .
(d) プ レ ヒ ー タ お よ び テ ス ト セ ク シ ョ ン に お け る 加 熱 量 の 測 定
プ レ ヒ ー タ お よ び テ ス ト セ ク シ ョ ン で の 冷 媒 加 熱 は , 交 流 電 源 を 用 い て 直 接 通 電 加 熱 を 行 っ た . 通 電 電 力 ( 加 熱 量 ) は , デ ー タ ロ ガ ー に 含 ま れ る 電 流 ・ 電 圧 入 力 モ ジ ュ ー ル で 測 定 し た 電 流 と 電 圧 の 積 か ら 算 出 し た .
(e) 測 定 機 器 の 仕 様 と 測 定 誤 差
測 定 機 器 の 仕 様 お よ び 測 定 誤 差 を , ま と め て Table 2-1に 示 す .
19
Table 2-1 Measurement errors
Measurement item Measuring instrument Measurement error
Absolute pressure Pressure transducer ±0.25%
Differential pressure Differential pressure
transducer ±0.1 kPa
Mass flow rate Mass flow meter ±0.075 g/min
[Gave: ±0.8 kg/(m2·s)]
Refrigerant temperature T-type thermocouple ±0.13 K
Wall temperature T-type thermocouple ±0.13 K
Voltage at the preheater and test
section Volt meter ±0.2%
Current at the preheater and test
section Ampere meter ±0.2%
2.2.3 テ ス ト セ ク シ ョ ン 分 岐 前 ク オ リ テ ィ の 算 出 (a) プ レ ヒ ー タ に お け る ヒ ー ト ゲ イ ン/ロ ス 検 定
テ ス ト セ ク シ ョ ン で 2 流 路 に 分 岐 す る 前 の ク オ リ テ ィ ( 以 下 , 分 岐 前 ク オ リ テ ィ と 称 す ) を 算 出 す る た め に は , プ レ ヒ ー タ で の 冷 媒 の エ ン タ ル ピ ー 上 昇 量 を 正 確 に 見 積 も る 必 要 が あ る .そ の た め ,プ レ ヒ ー タ で の 電 気 加 熱 に よ る 熱 入 力 の み な ら ず , プ レ ヒ ー タ 入 口 混 合 室 か ら テ ス ト セ ク シ ョ ン 入 口 分 岐 部 ま で に , 周 囲 空 気 と の 温 度 差 に よ っ て 交 換 さ れ る 小 さ な 交 換 熱 量( ヒ ー ト ゲ イ ン/ロ ス )も 考 慮 し た .ヒ ー ト ゲ イ ン/ロ ス を 見 積 も る 検 定 試 験 で は ,プ レ ヒ ー タ か ら テ ス ト セ ク シ ョ ン 入 口 ま で 冷 媒 を 液 単 相 状 態 に 保 っ て 流 動 さ せ , 周 囲 空 気 の 温 度 を 変 化 さ せ な が ら , 冷 媒 の エ ン タ ル ピ ー 上 昇 量 を も と に ヒ ー ト ゲ イ ン/ロ ス Qgain/loss,PHを 算 出 し た . そ の 結 果 を も と に , 周 囲 空 気 温 度 Tairと プ レ ヒ ー タ 内 の 冷 媒 平 均 温 度(TTS,in + TPH,in)/2 の 温 度 差 に 対 し て , 有 次 元 の ヒ ー ト ゲ イ ン/ロ ス 検 定 式 を 次 式 の よ う に 作 成 し た .
PH,in TS,in gain/loss,PH 0.0377 air
2
T T
Q T
(2.2)
こ こ で ,
Qgain/loss,PH : プ レ ヒ ー タ で の ヒ ー ト ゲ イ ン/ロ ス [W]
Tair : 周 囲 空 気 温 度 [K]
TPH,in : プ レ ヒ ー タ 入 口 混 合 室 温 度 [K]
TTS,in : テ ス ト セ ク シ ョ ン 分 岐 前 非 加 熱 部 管 壁 温 度 [K]