• 検索結果がありません。

新 ス ト ル ー プ 検 査 II で 測 定 し た ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 特 徴

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新 ス ト ル ー プ 検 査 II で 測 定 し た ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 特 徴"

Copied!
144
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

新ストループ検査Ⅱで測定したストループ・逆スト ループ干渉の特徴

松本, 亜紀

https://doi.org/10.15017/1931991

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(心理学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

新 ス ト ル ー プ 検 査 II で 測 定 し た ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 特 徴

松 本 亜 紀

(3)

I

目 次

. . . 1

第 一 章 課 題 条 件 が ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 . . . 7

1 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 測 定 方 法 . . . 7

1 . S t r o o p ( 1 9 3 5 )の 実 験 . . . 7

2 . 刺 激 の 種 類 . . . 8

3 . 刺 激 の 呈 示 方 法 . . . 1 0 4 . 干 渉 の 得 点 化 . . . 11 5 . 反 応 方 法 . . . 1 3 2 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 説 明 理 論 . . . 1 8 1 . 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 説 . . . 1 8 2 . 知 覚 コ ー ド 化 説 . . . 1 9 3 . 反 応 競 合 説 . . . 2 1 4 . 変 換 説 . . . 2 4 5 . 干 渉 の 説 明 理 論 の ま と め . . . 2 7 3 節 実 験 1: 課 題 実 施 順 序 が ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 . . . 2 8 4 節 実 験 2: 反 応 様 式 が ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 . . . 3 6 第 二 章 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 発 達 ・ 加 齢 研 究 . . . 4 9 1 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 発 達 ・ 加 齢 研 究 . . . 4 9 1 . 発 達 ・ 加 齢 に 伴 う 干 渉 変 化 の 特 徴 . . . 4 9 2 . 読 み 能 力 と の 関 わ り . . . 5 0 3 . 色 覚 と の 関 わ り . . . 5 2 2 実 験 3: ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 生 涯 発 達 変 化 . . . 5 3

(4)

II

3 実 験 4: 言 語 習 熟 度 の 違 い が 両 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 . . . 6 9 4 実 験 5: 色 覚 の 低 下 が 両 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 . . . 7 8 第 三 章 ス ト レ ス ・ 覚 醒 度 が ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 に 及 ぼ す 影 . . . 8 9

1 節 ス ト レ ス ・ 覚 醒 度 の 変 化 と ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 . . . 8 9 2 節 実 験 6: 激 し い 運 動 が 両 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 . . . 9 2 3 節 実 験 7: 長 時 間 の 運 動 が 両 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 . . . 1 0 1 第 四 章 全 体 的 考 察 . . . 11 8 1 実 験 結 果 の ま と め . . . 11 8 2 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の メ カ ニ ズ ム . . . 1 2 1 1 . 表 象 変 換 と ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 . . . 1 2 1 2 . ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 違 い . . . 1 2 2 3 本 研 究 の ま と め . . . 1 2 4 4 新 ス ト ル ー プ 検 査 I I の 応 用 可 能 性 . . . 1 2 5 引 用 文 献 . . . 1 2 9 謝 辞 . . . 1 4 0

(5)

1

人 間 は , 目 や 耳 な ど の 感 覚 器 官 を 通 し て 多 く の 情 報 を 同 時 に 受 け 取 っ て い る 。 例 え ば , 車 を 運 転 し て い る と き は , 周 囲 の 車 や 道 路 付 近 の 歩 行 者 の 動 き , 信 号 や 道 路 標 識 と い っ た 視 覚 情 報 と 同 時 に 緊 急 車 両 の サ イ レ ン 音 や カ ー オ ー デ ィ オ の 音 , 同 乗 者 の 話 声 と い っ た 聴 覚 情 報 も 同 時 に 受 け 取 っ て い る 。 人 間 は こ の よ う に 多 く の 情 報 を 同 時 に 受 け 取 り , そ れ ら を 統 合 し て 環 境 の 認 知 を 行 っ て い る 。 そ の た め , 受 け 取 っ た 複 数 の 情 報 が 一 致 す る 内 容 で あ れ ば 認 知 が 促 進 さ れ る が , 一 致 し な い 内 容 を 受 け 取 っ た 場 合 は 認 知 に 葛 藤 が 生 じ 反 応 が 遅 れ る 。

例 え ば , カ ー ナ ビ は , 地 図 上 の 矢 印 と 音 声 の 両 方 で 進 行 方 向 を ガ イ ド し て く れ る も の で あ る 。 右 折 す る 際 , カ ー ナ ビ は 地 図 上 の “ → ” で 視 覚 的 に 右 折 を 指 示 す る と 同 時 に , 音 声 で も “ 右 に 曲 が っ て く だ さ い ” と 一 致 し た 情 報 を 聴 覚 的 に 指 示 す る た め , 運 転 者 は ス ム ー ズ に “ 右 折 ” と い う 反 応 を 行 う こ と が で き る 。そ れ で は ,“ こ の カ ー ナ ビ の 地 図 上 の 矢 印 は 時 々 間 違 っ た 情 報 を 示 す の で , 矢 印 は 気 に せ ず に 音 声 案 内 の 指 示 に 従 っ て く だ さ い ” と 言 わ れ た ら ど う だ ろ う か 。 音 声 案 内 の “ 右 に 曲 が っ て く だ さ い ” と い う 指 示 に 反 し て 地 図 上 に “ ← ” が 表 示 さ れ て い る と , 矢 印 の 情 報 に 惑 わ さ れ て “ 右 折 す る ” と い う 反 応 が 遅 れ て し ま う だ ろ う 。 こ れ は , 人 間 は 受 け 取 っ た 不 必 要 な 情 報 を 無 視 し よ う と し て も 完 全 に 無 視 す る こ と は 難 し く , 意 図 に 反 し て 情 報 を 自 動 的 に 処 理 し て し ま う 側 面 を 持 っ て い る と い う こ と を 示 し て い る 。

こ の よ う な 認 知 的 葛 藤 が 生 じ る 現 象 を 取 り 扱 っ た 研 究 の 一 つ に S t r o o p ( 1 9 3 5 ) の 実 験 が あ る 。S t r o o p ( 1 9 3 5 ) は , 単 語 の 意 味 と は 一 致 し な い イ ン ク 色 で 印 字 さ れ た 色 名 単 語 ( 以 下 , 不 一 致 刺 激 と 呼 ぶ ) に 対 し て , 口 頭 で イ ン ク の 色 を 答 え る よ う に 求 め る と , 単 な る 色 パ ッ チ ( 以

(6)

2

下 , 色 統 制 刺 激 と 呼 ぶ ) の イ ン ク の 色 を 答 え る 時 よ り も 反 応 時 間 が 遅 く な る こ と を 報 告 し た 。 例 え ば , 赤 い イ ン ク で 印 字 さ れ た 色 名 単 語 “み ど ” に 対 し て , イ ン ク 色 の “ あ か ” を 答 え る 反 応 時 間 は , 赤 い 色 パ ッ チ に 対 し て “ あ か ” と 答 え る 反 応 時 間 よ り も 遅 く な る 。 こ の 色 命 名 ( イ ン ク 色 を 答 え る こ と ) が 不 一 致 の 文 字 情 報 か ら 干 渉 を 受 け る 現 象 は , 研 究 者 の 名 前 を と っ て ス ト ル ー プ 干 渉 ( F i g u r e 1 ) と 呼 ば れ , こ れ ま で 心 理 学 の 様 々 な 領 域 に お い て 膨 大 な 数 の 研 究 が な さ れ て き た 。 そ れ は , ス ト ル ー プ 干 渉 と い う 現 象 自 体 が 非 常 に 興 味 深 い 研 究 対 象 で あ る と 同 時 に , 注 意 機 能 や 言 語 機 能 な ど , 認 知 の 個 人 差 を 測 定 す る た め の ツ ー ル と し て も 広 く 利 用 さ れ て い る か ら で あ る 。

F i g u r e 1 . ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 刺 激 と 課 題

(7)

3

ス ト ル ー プ 干 渉 と は 反 対 に , 単 語 の 読 み が 不 一 致 の 色 情 報 か ら 受 け る 干 渉 は 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 ( F i g u r e 1 ) と 呼 ば れ て い る 。S t r o o p ( 1 9 3 5 ) は , こ の 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 に つ い て も 実 験 を 行 っ て お り , 不 一 致 刺 激 の 色 名 単 語 の 読 み の 反 応 時 間 は ,黒 イ ン ク で 印 字 さ れ た 色 名 単 語(以 下 ,語 統 制 刺 激)の 読 み の 反 応 時 間 と ほ と ん ど 変 わ ら ず ,口 頭 反 応 で は 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 生 起 し な い ( 干 渉 が 非 常 に 小 さ い ) こ と を 報 告 し て い る 。 文 字 読 み や 色 弁 別 が で き る 者 で あ れ ば ど の よ う な 対 象 者 で も 全 般 的 に 干 渉 が 生 じ る ス ト ル ー プ 干 渉 と は 異 な り , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 で 干 渉 が 生 起 す る 事 例 は 統 合 失 調 症 患 者 ( A b r a m c z y k , J o r d a n & H e g e l , 1 9 8 3 ) や 言 語 学 習 が 未 熟 な 幼 児 ( C o r b i t t , 1 9 7 8 ) と い っ た 特 殊 な 対 象 者 に 限 ら れ て い る 。 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 健 常 者 で は 基 本 的 に 生 起 し な い た め , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 認 知 の 個 人 差 を 測 定 す る た め の ツ ー ル と し て 用 い ら れ る こ と は ス ト ル ー プ 干 渉 と 比 べ る と 圧 倒 的 に 少 な か っ た 。

ス ト ル ー プ 研 究 の 標 準 的 な 反 応 方 法 は S t r o o p ( 1 9 3 5 ) が 用 い た 口 頭 反 応 で あ る が , 後 に 続 く ス ト ル ー プ 研 究 で は 口 頭 反 応 以 外 に も 様 々 な 種 類 の 反 応 方 法 が 生 み 出 さ れ た ( M a c L e o d , 1 9 9 1 )。 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 口 頭 反 応 で は 生 起 し な い が , 反 応 を キ ー 押 し ( F l o w e r s , 1 9 7 5 ; P r i t c h a t t , 1 9 6 8 ) や カ ー ド ソ ー テ ィ ン グ ( Vi r z i & E g e t h , 1 9 8 5 ) な ど 手 を 使 っ て 行 う マ ニ ュ ア ル 反 応 で は 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 起 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 。 こ れ は 反 応 方 法 と し て マ ニ ュ ア ル 反 応 を 用 い る と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 も 認 知 の 個 人 差 を 測 定 す る た め の ツ ー ル と し て 利 用 が で き る と い う こ と で あ り , 近 年 , マ ニ ュ ア ル 反 応 の 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 を 用 い て 認 知 の 個 人 差 を 測 定 す る 研 究 が 行 わ れ る よ う に な っ て き た 。そ れ ら の 研 究 の 中 で は , ス ト ル ー プ 干 渉 で は 検 出 さ れ な い 認 知 の 個 人 差 が 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 で は 検 出 で き る 事 例 が 報 告 さ れ て お り (例 え ば ,S o n g & H a k o d a , 2 0 11 ), ス

(8)

4

ト ル ー プ 干 渉 に 加 え て 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 を 測 定 す る こ と で 認 知 の 個 人 差 を よ り 詳 細 に 把 握 で き る こ と が 期 待 で き る 。

し か し , マ ニ ュ ア ル 反 応 で し か 生 起 し な い 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は , 口 頭 反 応 を 用 い た 知 見 が 多 く 蓄 積 さ れ て い る ス ト ル ー プ 干 渉 と は 課 題 条 件 が 異 な る た め , 両 干 渉 を 比 較 す る こ と が 難 し い と い う 問 題 点 が 指 摘 さ れ て

い る ( M a c L e o d , 1 9 9 1 )。 ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 を 比 較 す る

た め に は , 同 じ 課 題 条 件 で 両 干 渉 を 測 定 す る 必 要 が あ る 。

そ こ で 両 干 渉 を 同 じ マ ニ ュ ア ル 反 応 で 測 定 で き る よ う に 開 発 さ れ た の が 新 ス ト ル ー プ 検 査 (箱 田 ・ 佐 々 木, 1 9 9 0 ) で あ る 。 新 ス ト ル ー プ 検 査 は 4 種 類 の 課 題 で 構 成 さ れ て お り , ス ト ル ー プ 統 制 ・ 干 渉 課 題 で は 刺 激 の イ ン ク 色 が 意 味 す る 色 名 単 語 を 反 応 選 択 肢 か ら 選 ん で ペ ン で チ ェ ッ ク し , 逆 ス ト ル ー プ 統 制 ・ 干 渉 課 題 で は 刺 激 の 色 名 単 語 が 意 味 す る 色 パ ッ チ を 反 応 選 択 肢 か ら 選 ん で ペ ン で チ ェ ッ ク を し て 反 応 す る ( F i g u r e 2 )

F i g u r e 2 新 ス ト ル ー プ 検 査(箱 田 ・ 佐 々 木 ,1 9 9 0 ) 4 種 類 の 課 題

(9)

5

一 般 的 な ス ト ル ー プ 課 題 で は 刺 激 が 呈 示 さ れ て か ら 反 応 す る ま で に か か る 反 応 時 間 が 指 標 と な る が , 新 ス ト ル ー プ 検 査 は , 各 課 題 に お い て 一 定 時 間 内( 4 0 秒 間)に 正 し く 反 応 で き た 数( 正 答 数 )を 指 標 と し て い る 。 ま た , 干 渉 の 大 き さ は 統 制 課 題 と 干 渉 課 題 の 反 応 時 間 差 で 表 さ れ る こ と が 一 般 的 で あ る が , 新 ス ト ル ー プ 検 査 で は 統 制 課 題 と 干 渉 課 題 の 正 答 数 の 差 を と り ,そ れ を 統 制 課 題 の 正 答 数 で 割 る こ と(( 1 ),式( 2 ) )に よ っ て 算 出 さ れ る ( 以 下 , 新 ス ト ル ー プ 検 査 で 用 い ら れ る 干 渉 の 大 き さ を “ 干 渉 率 ”と 呼 ぶ )。こ れ は 干 渉 の 大 き さ が 実 験 参 加 者 の 作 業 量 水 準 の 影 響 を 受 け に く く す る た め で あ る 。 た と え ば 二 つ の 実 験 群 間 で 統 制 課 題 と 干 渉 課 題 の 正 答 数 の 差 が 同 じ で あ っ た と し て も , 両 群 の 統 制 課 題 の 成 績 に 大 き な 違 い が あ れ ば , 統 制 課 題 と 干 渉 課 題 の 正 答 数 の 差 が 持 つ 重 み が 異 な る た め で あ る (箱 田 ・ 佐 々 木 ,1 9 9 0 )

逆 ス ト ル ー プ 干 渉 率

× 1 0 0

・ ・ ・( 1 ) ス ト ル ー プ 干 渉 率

× 1 0 0

・ ・ ・( 2 )

“ 課 題 1 の 正 答 数 ” ― “ 課 題 2 の 正 答 数 ”

“ 課 題 1 の 正 答 数 ”

“ 課 題 3 の 正 答 数 ” ― “ 課 題 4 の 正 答 数 ”

“ 課 題 3 の 正 答 数 ”

(10)

6

箱 田 ・ 佐 々 木 ( 1 9 9 0 ) の 新 ス ト ル ー プ 検 査( 以 下 ,検 査 I と 呼 ぶ )は , 各 課 題 の 実 施 時 間 が 4 0 秒 間 と い う 短 い 時 間 で あ り , 課 題 成 績 の わ ず か な 変 動 に よ っ て 干 渉 率 は 大 き く 影 響 を 受 け る 。 そ こ で , 課 題 の 試 行 数 を 増 や す こ と に よ っ て 検 査 の 精 度 を 上 げ る た め に , 実 施 時 間 を 4 0 秒 間 か 6 0 秒 間 に し た 新 ス ト ル ー プ 検 査 I I (以 下 ,検 査 I I; 箱 田 ・ 渡 辺 ,2 0 0 5 ) が 作 成 さ れ て い る 。

ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 を 同 じ マ ニ ュ ア ル 反 応 で 測 定 で き る 新 ス ト ル ー プ 検 査 は 認 知 の 個 人 差 を よ り 詳 細 に 把 握 す る た め の ツ ー ル と し て の 活 用 が 期 待 で き る 。 し か し , 新 ス ト ル ー プ 検 査 が 用 い て い る 指 標 ( 正 答 数 , 干 渉 率 ) は , 現 在 の ス ト ル ー プ 研 究 で 主 に 用 い ら れ る 指 標 と 異 な る た め , 他 の 研 究 と の 比 較 を 行 う 場 合 に 新 ス ト ル ー プ 検 査 で 測 定 さ れ た 両 干 渉 が ど の よ う な 意 味 を 持 つ の か を 明 ら か に す る 必 要 が あ る 。

そ こ で 本 稿 は ,新 ス ト ル ー プ 検 査 I I で 測 定 さ れ る ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 特 徴 を 明 ら か に し , 両 干 渉 の 違 い を 検 討 す る こ と を 目 的 と す る 。 ま ず , 第 一 章 で は , 新 ス ト ル ー プ 検 査 I I の 課 題 条 件 が 両 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 す る た め に ,実 施 順 序( 実 験 1),反 応 様 式( 実 験 2 に つ い て の 実 験 を 行 う 。 第 二 章 で は , ま だ 明 ら か に さ れ て い な い マ ニ ュ ア ル 反 応 に よ る 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 発 達 ・ 加 齢 変 化 を 検 討 す る た め に , 生 涯 発 達 変 化 ( 実 験 3), 言 語 習 熟 度 の 影 響 ( 実 験 4), 色 覚 の 影 響 ( 実 5) に つ い て の 実 験 を 行 う 。 第 三 章 で は , 新 ス ト ル ー プ 検 査 I I を 用 い た 応 用 的 研 究 例 と し て ,一 過 性 の 覚 醒 度 の 変 化 の 影 響 を 検 討 す る た め に , 激 し い 運 動 の 影 響 ( 実 験 6), 長 時 間 の 運 動 の 影 響 ( 実 験 7) に つ い て の 実 験 を 行 う 。 最 後 に 第 四 章 で は , 本 研 究 の 実 験 結 果 を 総 合 的 に 考 察 し , ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 違 い を 検 討 す る 。

(11)

7

第 一 章 課 題 条 件 が ス ト ル ー プ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 に 及 ぼ す 影 響

1 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 測 定 方 法

ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は , テ ス ト の 実 施 方 法 に よ っ て そ の 干 渉 の 大 き さ が 変 化 す る 。 本 節 で は テ ス ト の バ リ エ ー シ ョ ン ( 測 定 方 法 ) と 測 定 方 法 に よ る 課 題 条 件 の 違 い が ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て レ ビ ュ ー す る 。

1 . S t r o o p ( 1 9 3 5 )の 実 験

ス ト ル ー プ テ ス ト は S t r o o p ( 1 9 3 5 ) が 行 っ た 実 験 か ら 様 々 な バ リ エ ー シ ョ ン に 発 展 し て き た 。ま ず ,ス ト ル ー プ 研 究 の 原 点 と な っ た S t r o op

( 1 9 3 5 ) の 実 験 に つ い て 紹 介 す る 。こ の 実 験 で は ,1 枚 に つ き 1 0 0 個 の 刺

激 が 印 刷 さ れ た 3 種 類 の カ ー ド( 語 統 制 刺 激 カ ー ド ,色 統 制 刺 激 カ ー ド , 不 一 致 刺 激 カ ー ド ) が 使 用 さ れ た 。 語 統 制 刺 激 カ ー ド は ,5 種 類 の 色 名 単 語 ( 赤 , 青 , 緑 , 茶 , 紫 ) が 黒 イ ン ク で 1 0 0 個 印 刷 さ れ , 色 統 制 刺 激 カ ー ド は , 語 統 制 刺 激 カ ー ド に 使 用 さ れ た 5 種 類 の 色 の 色 パ ッ チ が 1 0 0 個 印 刷 さ れ て い た 。 そ し て , 不 一 致 刺 激 カ ー ド は , 単 語 の 意 味 と は 一 致 し な い イ ン ク 色 で 印 字 さ れ た 色 名 単 語 が 1 0 0 個 印 刷 さ れ て い た 。実 験 参 加 者 は , カ ー ド に 印 刷 さ れ た 刺 激 に つ い て , 単 語 も し く は イ ン ク の 色 名 を で き る だ け 早 く 正 確 に , 声 に 出 し て 読 み 上 げ る こ と が 求 め ら れ ,1 0 0 個 全 て の 刺 激 を 読 み 終 わ る ま で に か か っ た 時 間 が 計 測 さ れ た 。

色 統 制 刺 激 ( 色 パ ッ チ ) カ ー ド と 不 一 致 刺 激 カ ー ド の カ ー ド 1 枚 あ た り , つ ま り ,1 0 0 個 の 刺 激 の イ ン ク の 色 命 名 に か か っ た 時 間 を 比 較 す る と ,色 統 制 刺 激 カ ー ド が 平 均 6 3 . 3 秒 に 対 し て ,不 一 致 刺 激 カ ー ド は 平 均

11 0 . 3 秒 で あ り , 色 パ ッ チ よ り も 不 一 致 の 色 名 単 語 の 色 命 名 が 有 意 に 遅

く な っ た 。 こ の よ う に , 不 一 致 の 単 語 か ら 色 の 処 理 が 受 け る 干 渉 が ス ト

(12)

8 ル ー プ 干 渉 で あ る 。

次 に , 語 統 制 刺 激 カ ー ド と 不 一 致 刺 激 カ ー ド の カ ー ド 1 枚 当 た り の 単 語 読 み に か か っ た 時 間 を 比 較 す る と , 語 統 制 刺 激 ( 黒 イ ン ク で 印 字 さ れ た 色 名 単 語 ) が 平 均 4 1 . 0 秒 に 対 し , 不 一 致 刺 激 カ ー ド は 平 均 4 3 . 3 秒 で あ り , 黒 イ ン ク の 色 名 単 語 と 不 一 致 の 色 名 単 語 の 単 語 読 み の 反 応 時 間 に 有 意 差 は な か っ た 。 ス ト ル ー プ 干 渉 と は 反 対 に 不 一 致 の 色 か ら 単 語 の 処 理 が 受 け る 干 渉 が 逆 ス ト ル ー プ で あ る が , こ の 実 験 結 果 が 示 す よ う に , ス ト ル ー プ 干 渉 は 大 き な 干 渉 を 示 す 一 方 で 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 干 渉 が 非 常 に 小 さ く , 両 干 渉 に は 干 渉 の 大 き さ に 非 対 称 性 が あ る こ と が 大 き な 特 徴 で あ る 。

2 . 刺 激 の 種 類

ス ト ル ー プ テ ス ト で 使 用 さ れ る 刺 激 条 件 は ,S t r o o p ( 1 9 3 5 ) で 用 い ら

れ た 3 条 件 ( F i g u r e 3 ( a )色 統 制 刺 激 ,( d )語 統 制 刺 激 ,( f )不 一 致 刺 激)

の 他 に , 単 語 の 意 味 と イ ン ク 色 が 一 致 し て い る 一 致 刺 激 が 存 在 す る

( F i g u r e 3 ( g ) )。 一 般 的 に , 一 致 刺 激 の 色 命 名 は 色 統 制 刺 激 の 色 命 名 よ

り も 反 応 時 間 が 速 く , 一 致 刺 激 に は 色 命 名 を 促 進 す る 効 果 が あ る 。 し か し , 一 致 刺 激 の 促 進 効 果 は 不 一 致 刺 激 の 干 渉 効 果 と 比 べ る と 小 さ い こ と が 報 告 さ れ て い る ( M a c L e o d , 1 9 9 1 )

ま た , 色 や 語 の 統 制 刺 激 は ,S t r o o p ( 1 9 3 5 ) が 使 用 し た も の と は 異 な る バ ー ジ ョ ン が 存 在 す る 。ま ず ,色 統 制 刺 激 に つ い て は 色 パ ッ チ ( F i g u r e

3 ( a ) ) 以 外 に も ,色 と は 関 係 の な い 単 語 ( F i g u r e 3 ( c ) ) や 無 意 味 つ づ り ,

複 数 の X ( F i g u r e 3 ( b ) ) が 用 い ら れ る こ と が あ る 。 色 命 名 は , 複 数 の X よ り も 色 と は 関 係 の な い 単 語 に 対 し て 色 命 名 す る 時 間 が 長 く な る 。 つ ま り , 刺 激 に 言 語 的 な 意 味 合 い が 増 す ほ ど , 色 命 名 が 遅 く な る 。 ス ト ル ー プ 干 渉 の 大 き さ は 不 一 致 刺 激 と 統 制 刺 激 の 比 較 に よ っ て 決 め ら れ る た め ,

(13)

9

色 統 制 刺 激 に 何 が 用 い ら れ る か に よ っ て 干 渉 の 大 き さ が 変 わ る 。 色 統 制 刺 激 に 言 語 的 な 意 味 合 い が 増 す ほ ど , 不 一 致 刺 激 と 統 制 刺 激 の 差 が 小 さ く な る た め , 干 渉 の 大 き さ が 減 少 す る と い う こ と で あ る 。 次 に , 語 統 制 刺 激 に つ い て は , 白 い 背 景 に 黒 イ ン ク で 色 名 単 語 が 呈 示 さ れ る ( F i r u r e

3 ( d ) ) 以 外 に , ネ ガ テ ィ ブ 配 色 ( 背 景 が 黒 ) の 実 験 の 場 合 , 語 統 制 刺 激

が 白 い 文 字 ( F i r u r e 3 ( e ) ) や 灰 色 の 文 字 で 呈 示 さ れ る こ と が あ る 。 新 ス ト ル ー プ 検 査 は ,S t r o o p ( 1 9 3 5 )と 同 じ( a )色 統 制 刺 激 ,( d )語 統 制 刺 激 ,

( f )不 一 致 刺 激 を 使 用 し て お り ,( g )一 致 刺 激 は 使 用 し て い な い 。

F i g u r e 3 ス ト ル ー プ テ ス ト の 刺 激 の 種 類 と 例

(14)

10

3 . 刺 激 の 呈 示 方 法

刺 激 の 呈 示 方 法 に は 1 枚 の カ ー ド に 印 刷 さ れ た 刺 激 リ ス ト に 連 続 し て 反 応 さ せ て 総 反 応 時 間 を 計 測 す る リ ス ト 刺 激 呈 示 と , 刺 激 を 1 個 ず つ 呈 示 し て , 刺 激 ご と に 反 応 時 間 を 計 測 す る 単 一 刺 激 呈 示 が あ る 。S t r o op

( 1 9 3 5 ) が 用 い た の は ,リ ス ト 刺 激 呈 示 で あ る 。カ ー ド に 印 刷 さ れ た 1 0 0

個 の 刺 激 を 全 て 読 み 終 わ る ま で に か か っ た 総 反 応 時 間 が 計 測 さ れ , 総 反 応 時 間 を 刺 激 数 で 割 っ て 刺 激 1 個 あ た り の 平 均 反 応 時 間 が 推 定 さ れ る 。 し か し , 総 反 応 時 間 に は , 誤 反 応 や 誤 反 応 を 修 正 し た 時 間 が 含 ま れ る た め , リ ス ト 刺 激 呈 示 で は 刺 激 1 個 あ た り の 正 確 な 反 応 時 間 を 測 定 す る こ と は で き な い 。

そ こ で ,タ キ ス ト ス コ ー プ や C R T な ど の 刺 激 呈 示 装 置 を 用 い て 刺 激 を 1 個 ず つ 呈 示 し , ボ イ ス キ ー や ボ タ ン 押 し な ど で 反 応 さ せ , 刺 激 ご と の 正 確 な 反 応 時 間 を 計 測 す る 単 一 刺 激 呈 示 が 用 い ら れ る よ う に な っ た 。 リ ス ト 刺 激 呈 示 が 主 流 で あ っ た 時 代 に , タ キ ス ト ス コ ー プ に よ る 単 一 刺 激 呈 示 を 行 い , 単 一 刺 激 呈 示 で ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 起 す る こ と を 確 認 し た の が D a l r y m p l e - A l f o r d & B u d a y r ( 1 9 6 6 )で あ る 。 単 一 刺 激 呈 示 で は , 刺 激 1 個 あ た り の 平 均 反 応 時 間 は 誤 反 応 を 除 外 し た 正 反 応 の 反 応 時 間 の み を 用 い て 算 出 さ れ る 。 現 在 は , こ の 単 一 刺 激 呈 示 が ス ト ル ー プ テ ス ト の 主 流 と な っ て い る 。

新 ス ト ル ー プ 検 査 は , 集 団 で の 実 施 を 可 能 と す る た め , リ ス ト 刺 激 呈 示 を 用 い て い る 。 リ ス ト 刺 激 呈 示 と 単 一 刺 激 呈 示 を 比 較 す る と , 同 じ 刺 激 を 用 い て い て も 単 一 刺 激 呈 示 よ り も リ ス ト 刺 激 呈 示 の ス ト ル ー プ 干 渉 が 大 き く な る( S a l o , H e n i k & R o b e r t s o n , 2 0 0 1 )。 ま た , リ ス ト 刺 激 呈 示 で は 個 々 の 刺 激 特 性 に よ る 干 渉 に 加 え , リ ス ト の 構 造 に よ る 干 渉 効 果 が 生 じ る と い わ れ て い る ( D a l r y m p l e - A l f o r d & B u d a y r, 1 9 6 6 )。 こ の よ う

(15)

11

に , リ ス ト 刺 激 呈 示 と 単 一 刺 激 呈 示 で は , 誤 反 応 の 扱 い や リ ス ト 構 造 か ら 受 け る 影 響 の 違 い が あ る た め ,同 じ 刺 激 と 反 応 方 法 を 用 い た と し て も , 得 ら れ た 反 応 時 間 の 意 味 に 差 が あ る こ と に 注 意 が 必 要 で あ る 。

4 . 干 渉 の 得 点 化

干 渉 の 大 き さ の と ら え 方 , つ ま り , 干 渉 の 得 点 化 に は 多 く の 方 法 が 存 在 す る 。J e n s e n & R o h w e r ( 1 9 6 6 )の レ ビ ュ ー で は ス ト ル ー プ 干 渉 に つ い 1 6 種 類 も の 得 点 計 算 式 が 紹 介 さ れ て い る ( Ta b l e 1 )。干 渉 の 得 点 と し て 最 も 用 い ら れ て い る の は ,S t r o o p ( 1 9 3 5 )が 用 い た 干 渉 課 題 ( 不 一 致 刺 激 ) と 統 制 課 題 ( 語 統 制 刺 激 や 色 統 制 刺 激 ) の 反 応 時 間 差 ( Ta b l e 1

J ) で あ る が ( M a c L e o d , 1 9 9 1 ), 他 に も , 不 一 致 刺 激 の 反 応 時 間 そ の も

の を 干 渉 の 得 点 と す る も の ( C o m a l l i , Wa p n e r & We r n e r, 1 9 6 2 ) も あ る 。 得 点 計 算 に は 反 応 時 間 が 用 い ら れ る の が 一 般 的 で あ る が , 新 ス ト ル ー プ 検 査 は 決 め ら れ た 制 限 時 間 内 に 遂 行 す る こ と が で き た 課 題 正 答 数 を 用 い る(箱 田 ・ 佐 々 木, 1 9 9 0 ) 。 新 ス ト ル ー プ 検 査 で は , 統 制 課 題 の 正 答 数 か ら 干 渉 課 題 の 正 答 数 を 引 き , そ れ を 統 制 課 題 の 正 答 数 で 除 し た “ 干 渉

率 ”(( 1 ) , ( 2 ) )を 干 渉 の 得 点 と し て 用 い て い る 。 こ の よ う に 干 渉 の 得

点 化 に は 多 く の 方 法 が 存 在 し ,研 究 者 に よ っ て 用 い る も の が 異 な る た め , 研 究 結 果 間 を 比 較 す る 際 に は 干 渉 得 点 の 持 つ 意 味 を 考 慮 す る 必 要 が あ る (嶋 田, 1 9 9 4 )

箱 田 ・ 佐 々 木 ( 1 9 9 0 )は , 新 ス ト ル ー プ 検 査 で 用 い ら れ る “ 干 渉 率 ” と 従 来 の 研 究 で 用 い ら れ る 干 渉 の 得 点 計 算 式 の 相 関 を 検 討 し て お り ,“ 干 渉 率 ”は ,Ta b l e 1 J e n s e n & R o h w e r ( 1 9 6 6 )に あ る 得 点 計 算 式 HJK NO と 強 い 相 関 が あ る こ と が 確 認 さ れ て い る 。 こ れ は ,“ 干 渉 率 ” が 上 記 の 得 点 計 算 式 で 算 出 さ れ た 研 究 と 比 較 可 能 で あ る こ と を 示 し て い る 。

(16)

12 Ta b l e 1

ス ト ル ー プ の 基 本 得 点 と 得 点 計 算 式(J e n s e n & R o h w e r, 1 9 6 6 に よ る ) 基本得点

W C CW 算出された得点

A B C D E F G H I J K L M N O P

*)Cp = Wに対するCの回帰に基づくCの予測値。

**)CWp = Cに対するCWの回帰に基づくCWの予測値。

***) CWおよびCの粗点は、この数式でz得点に変換される。

C+CW (CW-C)/W CW-CWp**

CWz-2Cz+10***

W×(CW-C)/C

W×(CW-C)/(C×CW) C-W

C-Cp*

C/CW (mW-C)/C CW-C C/W W/C (C+W)

(C-W)/(C+W) (C-W)/W

時間測度(秒)

Word カード (語統制刺激)

Color カード (色統制刺激)

Color-Word カード (不一致刺激)

得点計算式

(17)

13 5 . 反 応 方 法

刺 激 へ の 反 応 方 法 は , 声 に 出 し て 反 応 す る 口 頭 反 応 と , 声 に 出 す 以 外 の 方 法 で 反 応 す る マ ニ ュ ア ル 反 応 の 二 つ に 大 別 で き る 。 口 頭 反 応 は 1 類 の み で あ る が , マ ニ ュ ア ル 反 応 に は 多 く の 種 類 が 存 在 す る 。 新 ス ト ル ー プ 検 査 の 反 応 方 法 も マ ニ ュ ア ル 反 応 で あ り , 紙 面 に 印 刷 さ れ た 反 応 選 択 肢 を ペ ン で チ ェ ッ ク し て 反 応 す る ( 以 下 , 新 ス ト ル ー プ 検 査 の 反 応 方 法 を 紙 面 マ ッ チ ン グ 反 応 と 呼 ぶ )。マ ニ ュ ア ル 反 応 に は 他 に も ,色 や 単 語 が 書 か れ た キ ー や , 色 や 単 語 を 割 り 当 て ら れ た キ ー ( 例 え ば , 赤 へ の 反 応 は “1”, 緑 へ の 反 応 は “2” の キ ー ) を 押 し て 反 応 す る キ ー 押 し 反 応 の 他 , 色 や 単 語 が ラ ベ ル さ れ た 箱 に カ ー ド を 入 れ た り , 色 や 単 語 ご と に 分 け て カ ー ド の 山 を 作 っ て 反 応 す る カ ー ド ソ ー テ ィ ン グ 反 応 , 色 名 単 語 を キ ー ボ ー ド で タ イ プ し て 反 応 す る タ イ ピ ン グ 反 応 , デ ィ ス プ レ イ 上 の 反 応 選 択 肢 を 直 接 指 で 押 し て 反 応 す る タ ッ チ パ ネ ル 反 応 , 反 応 選 択 肢 を マ ウ ス カ ー ソ ル で ク リ ッ ク し て 反 応 す る ク リ ッ ク 反 応 , 反 応 選 択 肢 を 注 視 す る こ と に よ っ て 反 応 す る 注 視 ポ イ ン テ ィ ン グ 反 応 な ど が あ る 。 こ れ ら の 反 応 方 法 を 用 い て 測 定 さ れ た ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 得 点 の 一 覧 を Ta b l e 2 に 示 す 。

ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は , 口 頭 反 応 と マ ニ ュ ア ル 反 応 で 干 渉 の 量 が 大 き く 変 化 す る 。 口 頭 反 応 で は , ス ト ル ー プ 干 渉 は 生 起 す る が , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 生 起 し な い 。 一 方 で , マ ニ ュ ア ル 反 応 で は , 一 部 の 実 験 を 除 い て , ス ト ル ー プ 干 渉 と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 両 方 が 生 起 す る 。 ま た , ス ト ル ー プ 干 渉 は 口 頭 反 応 と マ ニ ュ ア ル 反 応 の 両 方 で 生 じ る が , マ ニ ュ ア ル 反 応 よ り も 口 頭 反 応 に お い て 干 渉 が 大 き く な る と い わ れ て い る ( M a c L e o d , 1 9 9 1 )

ス ト ル ー プ 干 渉 や 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 起 し な か っ た 実 験 に は あ る

(18)

14

共 通 点 が み ら れ る 。 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 起 し な か っ た 実 験 で は 宋 ・ 箱 田

( 2 0 11 ) を 除 い て ,色 属 性 の タ ー ゲ ッ ト 刺 激 に 対 し て 反 応 も 色 属 性 で 行 っ

て い る 。 ま た , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 起 し な か っ た 実 験 で は M a g e n &

C o h e n ( 2 0 0 7 ) を 除 い て , 言 語 属 性 の タ ー ゲ ッ ト 刺 激 に 対 し て 反 応 も 単

語 属 性 で 行 っ て い る 。 こ の よ う に , 刺 激 と 反 応 の 情 報 属 性 ( 単 語 で あ る か 色 で あ る か ) が 一 致 し て い る と き は 干 渉 が 生 じ に く い 。 こ の 刺 激 と 反 応 の 情 報 属 性 の 影 響 に つ い て は 第 2 節 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 説 明 理 論 の “ 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 説 ” と “ 変 換 説 ” で 詳 し く 論 じ る 。

(19)

15 Table 2

反応方法の違いによるストループ・逆ストループ干渉の生起(その 1)

著者 呈示方法 反応方法 ターゲット 反応 ベースライン ストループa 逆ストループa

口頭反応 Stroop (1935)

Exp. 1 リスト 口頭 単語 単語を発音 語統制刺激 2.3 sb

Exp. 2 リスト 口頭 単語を発音 色統制刺激 47 sb*

Pritchatt (1968)

Exp. 1 リスト 口頭 単語 単語を発音 語統制刺激 0.8 sb

リスト 口頭 単語を発音 色統制刺激 14.8 sb*

Logan & Zbrodoff (1998)

Exp. 1 単一 口頭 単語を発声 色統制刺激 180 msc*

Exp. 2 単一 口頭 単語 単語を発声 一致刺激 11.0 msc

単一 口頭 単語を発声 一致刺激 124 msc*

Blais & Besner (2006)

Exp. 1 単一 口頭 単語 単語を発声 一致刺激 2.0 msc

マニュアル反応 Pritchatt (1968)

Exp. 2 リスト キー押し 単語 単語ラベルのキー 語統制刺激 3.0 sb

リスト キー押し 単語 色ラベルのキー 語統制刺激 3.7 sb*

リスト キー押し 単語ラベルのキー 色統制刺激 16.1 sb*

リスト キー押し 色ラベルのキー 色統制刺激 10.4 sb*

Martin (1981)

単一 カードソーティング 単語 単語ごとに山を作る 語統制刺激 3.4 s

(20)

16 Table 2

反応方法の違いによるストループ・逆ストループ干渉の生起(その 2)

著者 呈示方法 反応方法 ターゲット 反応 ベースライン ストループa 逆ストループa

Virzi & Egeth (1985)

Exp. 1 単一 カードソーティング 単語 単語ラベルの箱 語統制刺激 1.7 sb

単一 カードソーティング 単語ラベルの箱 色統制刺激 9.8 sb*

単一 カードソーティング 単語 色ラベルの箱 語統制刺激 6.8 s

単一 カードソーティング 色ラベルの箱 色統制刺激 1.8 sb Sugg & McDonald (1994)

Exp. 1 単一 タッチパネル 単語タッチ 色統制刺激 124 msce*

単一 タッチパネル 単語 単語タッチ 語統制刺激 17 msce

単一 タッチパネル 単語 色タッチ 語統制刺激 57 msce*

単一 タッチパネル 色タッチ 色統制刺激 8 msce

Logan & Zbrodoff (1998)

Exp. 1 単一 キー押し 割り当てられたキー 色統制刺激 93 msc*

単一 タイピング 単語をタイピング 色統制刺激 176 msc*

Exp. 2 単一 タイピング 単語をタイピング 一致刺激 255 msc*

単一 タイピング 単語 単語をタイピング 一致刺激 7.0 msc

Durgin (2000)

単一 マウスクリック 単語 色をクリック 語統制刺激 69.0 msc*

単一 マウスクリック 色をクリック 色統制刺激 9 msc*

Blais & Besner (2006)

Exp. 1 単一 キー押し 単語 単語ラベルのキー 一致刺激 35.0 msc*

Exp. 2 単一 キー押し 単語 単語ラベルのキー 一致刺激 24.0 msc*

Magen & Cohen (2007)

Exp. 5 単一 キー押し 単語 割り当てられたキー 一致刺激 2.0 msc*

(21)

17 Table 2

反応方法の違いによるストループ・逆ストループ干渉の生起(その 3)

著者 呈示方法 反応方法 ターゲット 反応 ベースライン ストループa 逆ストループa

宋・箱田 (2011)

リスト 紙面マッチング 単語 色に印 語統制刺激 7.7 個d*

リスト 紙面マッチング 単語に印 色統制刺激 0.8 個d

単一 マウスクリック 単語 色をクリック 語統制刺激 5.8 個d*

単一 マウスクリック 単語をクリック 色統制刺激 4.1 個d*

aストループ干渉と逆ストループ干渉の得点は,不一致刺激とベースラインの差をとったものである。干渉の有無を示す有意性検定は,”e”を除 き,不一致刺激とベースライン間で行われている。

b単位は秒である。これは一つのブロックに対する誤反応分も含んだ総反応時間の平均差である。

c単位はミリ秒である。これは正反応一つに対する反応時間の平均差である。

単位は反応個数である。これは一定時間内の反応個数のうち,正反応のみの個数である。個数が多いほど反応が速い。

e干渉の有意性検定は,干渉得点と母平均 0 との間で行われている。

p < .05.

(22)

18

2 ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 説 明 理 論

本 節 で は , ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が な ぜ 生 じ る の か と い う 干 渉 の 説 明 理 論 に つ い て 述 べ る 。S t r o o p ( 1 9 3 5 ) は , 自 身 の 実 験 結 果 に 対 し て 訓 練 に よ る 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 の 差 異 と い う 行 動 理 論 の 観 点 か ら 両 干 渉 を 説 明 し た 。S t r o o p ( 1 9 3 5 ) の 研 究 の 後 , 認 知 心 理 学 の 黎 明 期 で

あ る 1 9 7 0 年 代 か ら は , 刺 激 ― 反 応 間 の 認 知 過 程 に お け る 干 渉 の 生 起 の

仕 方 が 議 論 さ れ る よ う に な り , 知 覚 コ ー ド 化 説 , 反 応 競 合 説 , 変 換 説 が 提 案 さ れ た 。 ま ず , 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 説 か ら 紹 介 す る 。

1 . 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 説

こ の 説 は 訓 練 に よ っ て 形 成 さ れ る 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 の 差 異 と い う 観 点 か ら ス ト ル ー プ ・ 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の 生 起 を 説 明 す る も の で あ る 。 刺 激 に 対 し て , 強 い 連 合 強 度 の 反 応 が よ り 弱 い 連 合 強 度 の 反 応 に 対 し て 干 渉 す る 。S t r o o p ( 1 9 3 5 ) に よ る と , 単 語 刺 激 は “ 読 む ” と い う 特 定 の 反 応 と 結 び つ い て い る が , 色 刺 激 は “ 眺 め る ”,“ 色 命 名 を す る ”,“ 手 を 伸 ば す ”,“ 避 け る ” と い っ た 様 々 な 反 応 と 結 び つ い て い る 。 そ の た め , 単 語 刺 激 に 対 し て 単 語 読 み と い う 反 応 が 行 わ れ る( 訓 練 さ れ る )頻 度 は , 色 刺 激 に 対 し て 色 命 名 が 行 わ れ る 頻 度 よ り も 多 く , 前 者 の 方 が 後 者 よ り も 刺 激 ― 反 応 の 間 の 連 合 強 度 が 強 く な る 。 色 命 名 よ り も 単 語 読 み の 反 応 時 間 が 速 い の は こ の 連 合 強 度 の 違 い に よ る も の で あ り , そ の た め 強 い 連 合 強 度 の 単 語 読 み か ら 弱 い 連 合 強 度 の 色 命 名 へ の 干 渉 , つ ま り ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 じ る の で あ る 。 反 対 に , 色 命 名 か ら 単 語 読 み へ の 干 渉 で あ る 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 生 じ な い 。

ま た , U l e m a n & R e e v e s ( 1 9 7 1 ) は , ス ト ル ー プ 刺 激 の 走 査 課 題 を 用 い た 実 験 を 行 い , 強 い 習 慣 が 弱 い 習 慣 に 対 し て 干 渉 す る と 述 べ て い る 。 U l e m a n & R e e v e s ( 1 9 7 1 ) は , カ ー ド に 印 刷 さ れ た 刺 激 リ ス ト 上 か ら 指

(23)

19

定 さ れ た 色 ( 指 定 さ れ る 色 は 1 色 の み ) の 色 パ ッ チ や 色 名 単 語 を 見 つ け て , そ の 色 名 を 言 い な が ら 素 早 く 印 を つ け る と い う ス ト ル ー プ 課 題 を 実 施 し た 。 こ の 走 査 課 題 で は 通 常 の ス ト ル ー プ 課 題 と は 反 対 に , 語 統 制 刺 激 よ り も 色 統 制 刺 激 に 対 す る 反 応 時 間 の 方 が 短 く , 習 慣 強 度 は 単 語 探 索 よ り も 色 探 索 の 方 が 強 い た め , 色 か ら 単 語 へ の 干 渉 で あ る 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 じ る こ と が 予 測 さ れ た 。 実 験 の 結 果 , 予 測 通 り , ス ト ル ー プ 干 渉 ( 不 一 致 刺 激 と 色 統 制 刺 激 の 色 走 査 反 応 時 間 差 ) は ゼ ロ か ら マ イ ナ ス と な り , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 ( 不 一 致 刺 激 と 語 統 制 刺 激 の 単 語 走 査 反 応 時 間 差 ) が 生 じ た 。

刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 は 刺 激 ― 反 応 の 適 合 性 ( c o m p a t i b i l i t y ) と し て も 論 じ ら れ る 。 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 課 題 で あ る 単 語 読 み は , 単 語 刺 激 に 対 し て 単 語 反 応 を す る た め 刺 激 ― 反 応 に 適 合 性 が あ る ( 連 合 強 度 が 強 い )。

し か し , ス ト ル ー プ 干 渉 課 題 で あ る 色 命 名 は 色 刺 激 に 対 し て 単 語 反 応 を し な け れ ば な ら な い た め 刺 激 ― 反 応 の 適 合 性 が な い ( 連 合 強 度 が 弱 い )。

ス ト ル ー プ 干 渉 は 刺 激 ― 反 応 の 適 合 性 が な い た め に 生 じ る と さ れ て い る 。

1 節 の“5 . 反 応 方 法 ”で は ,言 語 属 性 の 刺 激 に 対 し て 言 語 属 性 の 反 応 ,

色 属 性 の 刺 激 に 対 し て 色 属 性 の 反 応 と い う よ う に , 刺 激 ― 反 応 の 適 合 性 が あ る と き は 干 渉 が 生 じ に く い こ と を 示 し た ( Ta b l e 2 )。 こ の 結 果 は , 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 説 に 合 致 す る も の で あ る 。

2 . 知 覚 コ ー ド 化 説

知 覚 コ ー ド 化 説 は , 干 渉 が 刺 激 ― 反 応 間 の 認 知 過 程 の 初 期 , つ ま り 刺 激 の コ ー ド 化 段 階 で 生 じ る と い う も の で あ る 。 H o c k & E g e t h ( 1 9 7 0 ) は , 知 覚 段 階 に お け る 色 の コ ー ド 化 に 必 要 な 時 間 が 長 く な る と 言 語 情 報 に 注 意 を 引 き 付 け ら れ て し ま う た め , ス ト ル ー プ 干 渉 が 大 き く な る と 述 べ て い る 。 リ ス ト 呈 示 の 不 一 致 刺 激 の イ ン ク 色 に 対 し て , 指 定 さ れ た 一 色 の

(24)

20

個 数 を 数 え る , 走 査 を 行 う と い っ た 低 次 の 知 覚 課 題 で あ れ ば 色 の コ ー ド 化 が 速 い た め 言 語 情 報 へ の 注 意 の 引 き 付 け を 除 去 で き 色 命 名 へ の 干 渉 は 生 じ な い 。 し か し , ス ト ル ー プ 課 題 や 記 憶 検 索 課 題 の よ う に 高 次 の 認 知 を 必 要 と す る 課 題 で は 色 の コ ー ド 化 に 時 間 が か か る た め , 言 語 情 報 へ 注 意 が 引 き 付 け ら れ て 色 命 名 へ の 干 渉 ( ス ト ル ー プ 干 渉 ) が 生 じ る 。 反 対 に , 十 分 な 注 意 量 を 配 分 さ れ た 単 語 読 み へ の 干 渉 ( 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 ) は 生 じ な い 。

ま た ,Wi l l i a m s ( 1 9 7 7 ) も 干 渉 は コ ー ド 化 段 階 に あ る と い う 立 場 を と っ て お り ,課 題 関 連 情 報( 色 )か 非 課 題 関 連 情 報( 言 語 )か に 関 わ ら ず , コ ー ド 化 し な け れ ば な ら な い 刺 激 の 情 報 量 が 増 え る と 知 覚 段 階 に お け る コ ー ド 化 に 要 す る 負 荷 が 大 き く な る た め , ス ト ル ー プ 干 渉 が 増 大 す る と 述 べ て い る 。

知 覚 コ ー ド 化 説 へ の 反 証 こ れ ら の 知 覚 コ ー ド 化 説 で は 説 明 で き な い 現 象 が あ る 。 ま ず , 一 致 刺 激 が 色 統 制 刺 激 や 不 一 致 刺 激 よ り も 反 応 時 間 が 速 く な る と い う 促 進 効 果 が 説 明 で き な い ( H i n t z m a n , C a r r e , E s k r i d g e , O w e n s , S h a f f & S p a r k s , 1 9 7 2 )。 一 致 刺 激 は 色 情 報 に 加 え 言 語 情 報 が あ り ,色 情 報 の み の 色 統 制 刺 激 よ り も 情 報 量 が 多 い 。そ の た め ,

Wi l l i a m s ( 1 9 7 7 ) の 説 に 従 え ば 一 致 刺 激 は 統 制 刺 激 に 比 べ て 色 命 名 が 遅

く な る は ず で あ る 。 さ ら に ,H o c k & E g e t h ( 1 9 7 0 ) の 説 に 従 え ば , 一 致 刺 激 に お い て も 言 語 情 報 へ 注 意 が 引 き 付 け ら れ る た め 言 語 情 報 の な い 色 統 制 刺 激 と 比 較 し て 色 命 名 が 遅 れ る は ず で あ る か ら で あ る 。

ま た , 知 覚 コ ー ド 化 説 で は 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 口 頭 反 応 で は 生 じ な い 一 方 で マ ニ ュ ア ル 反 応 で は 生 じ る こ と が 説 明 で き な い 。 不 一 致 刺 激 で 言 語 情 報 へ の 注 意 が 引 き 付 け ら れ る の で あ れ ば , 言 語 処 理 が 促 進 さ れ て 色 情 報 か ら の 干 渉 で あ る 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は ど の よ う な 場 合 で も 生 じ な い

(25)

21

は ず で あ る 。 同 様 に , 知 覚 段 階 に お け る 情 報 量 が 増 え る こ と が 原 因 で あ れ ば , ど の よ う な 場 合 で も 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 じ な い は ず で あ る か ら で あ る 。

3 . 反 応 競 合 説

反 応 競 合 説 は , 干 渉 が 刺 激 ― 反 応 間 の 認 知 過 程 の 後 期 , つ ま り 反 応 段 階 で 生 じ る と い う も の で あ る 。こ の 説 の 一 つ に 相 対 的 処 理 速 度 説 が あ る 。 M o r t o n & C h a m b e r s ( 1 9 7 3 ) は , 色 情 報 と 言 語 情 報 の 処 理 は 同 時 並 行 で 進 み , そ れ ぞ れ の 情 報 に 対 応 す る 反 応 は 一 つ の 出 口 へ の 到 達 を 巡 っ て 競 争 す る と 述 べ て い る 。相 対 的 な 処 理 速 度 は 色 よ り も 言 語 の 方 が 速 い た め , 色 刺 激 へ の 反 応 が 求 め ら れ る ス ト ル ー プ 干 渉 課 題 で は , 先 に 出 口 へ 到 着 し た 言 語 刺 激 に 対 す る 反 応 を 抑 制 し な け れ ば な ら ず 干 渉 が 生 じ る 。一 方 , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 課 題 の 場 合 は , 先 に 出 口 に 到 達 す る 言 語 刺 激 に 対 し て 反 応 す れ ば よ い た め , 色 刺 激 か ら 干 渉 を 受 け る こ と は な い と い う 考 え で あ る 。

P o s n e r & S n y d e r ( 1 9 7 5 ) も 同 様 に , 色 と 言 語 の 相 対 的 な 処 理 速 度 の 違 い に 着 目 し た 説 明 を 行 っ て お り ,言 語 情 報 は 自 動 的 に 処 理 さ れ る た め , 非 自 動 的 な 処 理 で あ る 色 情 報 よ り も 先 に 出 口 に 到 達 し て , 遅 れ て 到 達 す る 色 情 報 へ の 反 応 に 干 渉 す る と 述 べ て い る 。

こ れ ら の 反 応 競 合 説 は , 色 と 言 語 の 相 対 的 な 処 理 速 度 や 処 理 の 自 動 化 の 程 度 を 変 化 さ せ る こ と に よ っ て 検 証 さ れ て い る 。 色 処 理 よ り も 言 語 処 理 が 速 い た め に 言 語 か ら 色 へ の 干 渉 で あ る ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 じ る の で あ れ ば , 言 語 処 理 が 遅 く な れ ば ス ト ル ー プ 干 渉 が 減 少 し , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 増 大 す る は ず で あ る 。 色 名 単 語 に マ ス ク を か け て 読 み や す さ を 低 下 さ せ た 実 験 で は ,マ ス ク が な い 条 件 と 比 べ て ス ト ル ー プ 干 渉 が 減 少 し , 口 頭 反 応 で 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 じ た ( D y e r & S e v e r a n c e , 1 9 7 2 ;

(26)

22

G u m e n i k & G l a s s , 1 9 7 0 )。 ま た , 色 名 単 語 を 鏡 文 字 や 上 下 さ か さ ま に し た 場 合 も 同 様 に , ス ト ル ー プ 干 渉 が 減 少 し , 口 頭 反 応 で 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 じ た こ と が 報 告 さ れ て お り ( D u n b a r & M a c l e o d , 1 9 8 4 ), 反 応 競 合 説 を 支 持 す る 結 果 と な っ て い る 。

ま た , 相 対 的 に 速 い 処 理 で あ る 言 語 処 理 速 度 を 遅 ら せ た 上 記 の 実 験 と は 反 対 に , 通 常 遅 い 処 理 で あ る 色 処 理 を 訓 練 に よ っ て 速 め た 実 験 で も 反 応 競 合 説 を 支 持 す る 結 果 が 得 ら れ て い る 。 最 初 に こ の 試 み を 行 っ た の は S t r o o p ( 1 9 3 5 ) で あ る 。S t r o o p ( 1 9 3 5 ) は , 実 験 参 加 者 に 不 一 致 刺 激 に 対 し て 色 命 名 だ け を 8 日 間 学 習 さ せ た 。 色 命 名 学 習 の 前 後 で 不 一 致 刺 激 に 対 す る 色 命 名 の 反 応 時 間 を 比 較 す る と 学 習 前 よ り も 学 習 後 の 反 応 時 間 が 短 く な り , 色 命 名 が 不 一 致 の 言 語 情 報 か ら 受 け る 干 渉 ( ス ト ル ー プ 干 渉 ) が 減 少 し た 。 一 方 , 不 一 致 刺 激 の 単 語 読 み の 反 応 時 間 を 比 較 す る と , 学 習 前 よ り も 学 習 後 の 反 応 時 間 が 長 く な り , 単 語 読 み が 不 一 致 の 色 か ら 受 け る 干 渉 ( 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 ) が 増 大 し た 。

S t r o o p ( 1 9 3 5 ) の 他 に も , 刺 激 と 反 応 の 対 連 合 を 新 た に 学 習 さ せ て ,

色 処 理 と 言 語 処 理 の 相 対 的 な 処 理 速 度 を 操 作 し た 実 験 が あ る 。G l a s e r &

D o l t ( 1 9 7 7 ) は , 赤 い 色 パ ッ チ は “N A F” と 命 名 し ,“R E D” と い う 色 名

単 語 は “D U Z” と 読 む と い う よ う に , 色 命 名 と 色 名 単 語 読 み を そ れ ぞ れ 新 し く 無 意 味 綴 り と 対 連 合 学 習 さ せ た 。 無 意 味 綴 り を 使 っ た 新 た な 色 命 名 と 色 名 単 語 の 読 み の 練 習 を 続 け た 結 果 , 色 統 制 刺 激 と 語 統 制 刺 激 へ の 反 応 時 間 が 同 じ 程 度 に な っ た と き , 不 一 致 刺 激 に 対 す る 色 命 名 と 単 語 読 み の 速 度 も 同 程 度 に な っ た 。 つ ま り , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が ス ト ル ー プ 干 渉 と 同 程 度 生 じ た こ と が 示 さ れ て い る 。

処 理 速 度 説 へ の 反 証 上 記 の 結 果 は , 色 と 言 語 の 相 対 的 な 処 理 速 度 が 干 渉 生 起 を 決 定 づ け る も の で あ る こ と を 示 し て い る 。 し か し , 相 対 的 な

(27)

23

処 理 速 度 で は 説 明 で き な い 結 果 も あ る 。G l a s e r & G l a s e r ( 1 9 8 2 ) は , 不 一 致 刺 激 の 色 情 報 ( 色 パ ッ チ ) と 言 語 情 報 ( 黒 イ ン ク で 書 か れ た 色 名 単 語 ) を 別 々 に 呈 示 し , 両 刺 激 の 呈 示 開 始 時 間 差 ( S t i m u l u s O n s e t

A s y n c h r o n y : S O A ) を 操 作 し た 。 速 く 処 理 さ れ た 刺 激 属 性 が 遅 い 刺 激 属

性 に 対 し て 干 渉 す る の で あ れ ば , 先 行 呈 示 さ れ た 刺 激 が 後 続 の 刺 激 に 対 し て 干 渉 す る は ず で あ る 。 し か し 結 果 は , 色 名 単 語 が 色 パ ッ チ よ り も 1 0 0 m s 先 行 呈 示 さ れ て も 遅 延 呈 示 さ れ て も ス ト ル ー プ 干 渉 は 生 じ , そ の 干 渉 量 は 両 刺 激 が 同 時 に 呈 示 さ れ た と き 最 大 に な っ た 。 さ ら に , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 色 パ ッ チ を 色 名 単 語 よ り も 4 0 0 m s 先 行 呈 示 し て も 生 じ な か っ た 。 こ の 結 果 は , 色 と 文 字 の 処 理 速 度 の 違 い が 干 渉 生 起 を 決 定 付 け る も の で は な い こ と を 示 し て い る 。

自 動 的 処 理 説 へ の 反 証 M a c L e o d & D u n b a r ( 1 9 8 8 ) は , 形 に 対 し て 決 め ら れ た 色 名 で 答 え る ( 以 下 , 形 ― 色 命 名 と 呼 ぶ ) 対 連 合 学 習 を 行 わ せ , 形 ― 色 命 名 の 自 動 化 に 伴 う , 形 と 色 の 干 渉 効 果 を 検 討 し た 。 学 習 初 期 で は 元 々 よ く 学 習 さ れ て い る 色 命 名 の ほ う が 形 ― 色 命 名 よ り も 反 応 時 間 が 速 く , 干 渉 は 不 一 致 の 色 か ら 形 ― 色 命 名 へ の 干 渉 ( 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 ) の み が 生 じ た 。 し か し , 形 ― 色 命 名 の 学 習 が さ ら に 進 む と , 反 応 時 間 は 依 然 と し て 色 命 名 よ り も 形 ― 色 命 名 の ほ う が 遅 い に も 関 わ ら ず , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 だ け で な く , 不 一 致 の 形 か ら 色 命 名 に 対 す る 干 渉 も 生 じ る よ う に な っ た 。

さ ら に 形 ― 色 命 名 の 学 習 が 進 み , 形 ― 色 命 名 と 色 命 名 の 反 応 時 間 が 同 程 度 に な る と , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 消 失 し , 不 一 致 の 形 か ら 色 命 名 に 対 す る 干 渉 の み が 生 じ る よ う に な っ た 。 こ の 結 果 は , 色 と 文 字 の 処 理 速 度 の 違 い が 干 渉 生 起 を 決 定 付 け る も の で は な い こ と を 示 す も の で あ る 。 M a c L e o d & D u n b a r ( 1 9 8 8 ) は ,よ り 自 動 性 の 高 い 刺 激 ― 反 応 セ ッ ト が ,

(28)

24

自 動 性 の 低 い 刺 激 ― 反 応 セ ッ ト に 対 し て 干 渉 す る と 説 明 し て お り , 相 対 的 な 処 理 速 度 や 処 理 の 自 動 性 の 有 無 で は な く , 刺 激 ― 反 応 の 連 合 強 度 を 強 調 し た 立 場 を と っ て い る 。

4 . 変 換 説

変 換 説 は , 刺 激 ― 反 応 間 の 認 知 過 程 で 記 憶 表 象 を 変 換 す る 必 要 が あ る と き に 干 渉 が 生 じ る と い う も の で あ る 。 こ の 説 は , 口 頭 反 応 で は 生 起 し な い 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が , キ ー 押 し や カ ー ド ソ ー テ ィ ン グ な ど の マ ニ ュ ア ル 反 応 で は 生 起 す る と い う 現 象 を 説 明 で き る 。 つ ま り , 口 頭 反 応 に お い て 逆 ス ト ル ー プ 課 題 は 単 語 刺 激 に 対 し て 語 彙 的 な 情 報 ( l e x i c al

i n f o r m a t i o n ) で 反 応 す る の で 表 象 変 換 の 必 要 は な く 干 渉 は 生 じ な い 。一

方 , マ ニ ュ ア ル 反 応 で は 単 語 刺 激 を 視 覚 的 な 色 情 報 ( s e n s o r y c o l o r

i n f o r m a t i o n ) に 変 換 す る 必 要 が あ る の で 干 渉 が 生 じ る の で あ る 。

Vi r z i & E g e t h ( 1 9 8 5 ) は , カ ー ド ソ ー テ ィ ン グ 課 題 を 用 い て 変 換 の 効 果 を 検 証 し た 。 そ の 結 果 , 刺 激 が 書 か れ た カ ー ド を 色 名 単 語 の ラ ベ ル が つ い た 箱 の 中 に 分 類 す る 条 件 で は , 色 統 制 刺 激 よ り も 不 一 致 刺 激 の 色 へ の 反 応 時 間 が 遅 く な り ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 じ た が , 語 統 制 刺 激 と 不 一 致 刺 激 の 色 名 単 語 へ の 反 応 時 間 に は 有 意 差 が な く , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 は 生 起 し な か っ た 。 一 方 で , 色 パ ッ チ が つ い た 箱 の 中 に 分 類 す る 条 件 で は , 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 の み が 生 じ ,有 意 な ス ト ル ー プ 干 渉 は 生 起 し な か っ た 。 マ ニ ュ ア ル 反 応 で あ っ て も 言 語 か ら 色 へ の 変 換 が な け れ ば 口 頭 反 応 と 同 様 に 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 起 し な い と い う 結 果 は , 変 換 が 干 渉 生 起 を 決 定 づ け て い る こ と を 示 し て い る 。

不 一 致 刺 激 の 色 名 単 語 ( 言 語 情 報 ) に 対 し て 色 情 報 で 反 応 す る と 逆 ス ト ル ー プ 干 渉 が 生 起 す る こ と は , デ ィ ス プ レ イ 上 の 反 応 選 択 肢 を 直 接 指 で 押 し て 反 応 す る タ ッ チ パ ネ ル 反 応 ( S u g g & M c D o n a l d , 1 9 9 4 ) や , マ

参照

関連したドキュメント

大学は職能人の育成と知の創成を責務とし ている。即ち,教育と研究が大学の両輪であ

四二九 アレクサンダー・フォン・フンボルト(一)(山内)

(1)東北地方太平洋沖地震発生直後の物揚場の状況 【撮影年月日(集約日):H23.3.11】 撮影者:当社社員 5/600枚.

FPSO

有利な公判と正式起訴状通りの有罪評決率の低さという一見して矛盾する特徴はどのように関連するのだろうか︒公

[r]

の主として労働制的な分配の手段となった。それは資本における財産権を弱め,ほとん

  支払の完了していない株式についての配当はその買手にとって非課税とされるべ きである。