(2) 2.. ξ……(8). イ ンパ ル ス 状 ア ー ク の 反 応 論 的 非 平 衡 モ デ ル. 〈2・1〉ア ー ク プ ラズ マ のモ デ リング. 質量密度:. 本研 究 にお い. て は純 粋N2ガ ス中 のイ ンパル ス状 アー クプ ラズ マ を対 象 と し,さ らに簡 単化 の ため 次 の よ うな条 件 を仮 定 して い る: (1) 放 電 前の雰 囲 気圧 力は大 気 圧(0.1MPa)で あ る。(2) 電 子 お よび各 粒 子 の速度 分 布 はMaxwell分 布 で あ り,か つ電. 入 力パ ワー: Pin =σE2z……(10). 子温 度,ガ ス温 度 お よび励 起 温度 な ど全 て の粒 子 の温度 は 等 しい,す なわ ち一温 度 モデ ル で記 述 す る。 これ は電界 が 小さ いア ー ク内 では,圧 力0.1MPaの. ρ=Σjmjnj……(9). 状態 方程 式:. 場 合,電 子‑重粒 子 間. P=ΣjnjKT……(11). のエ ネル ギー緩 和 時 間が数 十nsオ ーダ にな る ことか ら今 回 の対象 に対 す る計 算 にお いては この仮 定 を用 いた。(3) ア ー ク プ ラズ マは 円 筒 対称 で あ り,(4) プ ラ ズマ の 円柱 対称 軸. こ こ でt:時. 回対 象 と して い る電流 が100A程. 間(s),r:中. 心 か ら半 径 方 向 へ の 距 離(m),. v:半 径 方 向 の 流 速(m/s),mj:粒. 方 向の流 れ を無視 す る。(5) 光 吸収 を無視 す る。 これ は今. 子jの 数 密 度(m‑3),Rj:粒. 度 であ り,光 放射 が温 度. 子jの 単 位 時 間,単. 分 布 へ与 える影 響 が小 さい と判 断 して,簡 単 化 の ため こ の. り の 生 成 率(kg/(m3・s)),ρ:質. 仮 定 を採 用 した 。(6) 乱流 の 効 果,粘 性 摩 擦 に よ る発熱 お. (Pa),η:層. よび 熱拡 散,お よび粒 子濃 度 勾配 によ る拡散 の効果 は無 視. (N/m3),μ0:真. ンタ ル ピ ー(J/kg),φ:内. (8) N2プ ラズ マの構 成要 素 と して,N2, びe‑の 計5種 の み存 在 す る。. 向 の ロ ー レ ン ツカ. 部 エ ネ ル ギ ー(J/kg),κ:熱 圧 比 熱(J/(kg・K)),Pin:入. ワ ー(W/m3),Prad:放. 〈2・2〉基 礎方 程式 本 計算 にお いて対 象 とす る軸 対称 イ ンパル ス状 ア ー クの挙 動 に つ いて は,以 下 の 時間依 存 型 , 一 次 元モ デ ルに よ り記述 で きる と仮 定 した:. 界 強 度(V/m),σ:導. 粒子jの 質量 保 存式:. あ る。. 射 損 失(W/m3),Ez:軸 電 率(S/m),Jz:電. 式(1)が. BoItzmann定. 伝導 力パ. 方 向の電 流 密 度(A/m2),. 回 方 向 の 磁 界 強 度(A/m),T:温. 瞬 時 値(A), k:. 力. 空 中 の 透 磁 率(=4πx10‑7H/m),h:エ. 率(W/(m・K)),Cp:定. Hθ:周. 位体 積あ た. 量 密 度(kg/m3),p:圧. 流 粘 性 係 数(Pa・s),Fr:r方. す る。(7) 電界 は 軸方 向,磁 界 は周 回方 向 にの み存在 す る。 N+2, N, N+お よ. 子jの 質 量(kg),ηj:粒. 度(K),I:電. 流. 数(=1.38×10‑23J/K)で. 反 応速 度 を考 慮 した粒 子 密 度 の 時 間 変化 を追随. す る項 で あ り,反 応 速 度 が 極 め て 大 き い と仮 定 した 局 所 熱 平 衡 モ デ ル か らの ず れ が 表 現 で き る,い. mjnj)=Rj……(1)運動 量 保存 式:. わ ゆ る反 応論 的非. 平 衡 モデ ル で あ る。. ∂(pv)/∂t+1/r∂(rvpv)/∂r=‑∂p/∂r+1/r∂/∂r(2rη∂r/∂r)‑2nv/r2+Fr…(2). 〈2・3〉 反 応 お よ び 反 応 速 度 定 数. 本 計 算 に お い て は5. 種 の 粒 子 を 考 慮 して い る 。 こ れ ら の 粒 子 間 に 生 じ る反 応 に つ い て,反. 応 定 数 が わ か っ て お り(6),計. 算 に組 み込 む こ と. の で き る も の を 表1に 示 す 。 こ れ ら の 反 応 の 反 応 速 度 定 数. エネ ル ギー 保存 式:∂/∂t[p(φ+υ2/2)]+1/r∂/∂r[rvp(h+v2/2)] αfは ほ ぼ 次 の 形 で 表 現 で き る 。 αf=α1Tα2exp(‑α3/ T)……(12). こ こで,α1,α2お よび α3は定 数 で あ る。各 反応 に 対 す るこ れ らの値 に ついて はDunn(6)が 実測 に よ り概 算 してお り,表 1に 付 記 した 。 これ らの逆 反 応 の反 応 速 度 定 数αrにつ いて. Pin‑Prad……(3)電荷中性条件式:. は,αrと αfとの次 の関 係 式(7)か ら求 めた 。 αr=K(T)αf……(13). =nN2+nN+……(4) オ ー ム 則:. こ こ で,K(T)は Ez=I/F∞02πσrdr…… (5). 平 衡定 数 で あ る 。平 衡 定 数K(T)に. つい. て は次 の よ うに分 配 関数Zと 反応 熱ψreacとか ら計 算 した。 例 えば,表1の. 第1番 のN2分 子 の衝 突解 離反 応 に対 しては,. Jz=σEz……(6). K(T)=(h2pmn2/2πmNmNkT)3/2ZN2/Z2Nexp(ψreac1/. Lorentz力: Fr=‑Jz×. μ0Hθ……(7). で あ る。 こ こ で ψreac1は こ の 反 応 の 反 応熱(J),hpはPlanck ア ン ペ ー ル 則:. Hθ=1/r∫roJzξd. 定 数(=6.63x10‑34J・s)で 1230. あ る. T. IEE Japan,. Vol. 119-A, No . 10, '99.
(3) N2イ. 表1. N2プ ラズ マ中 の反 応,反 応 定 数 お よび反 応熱 Table. 〈2・4〉 生成 速 度. ンパ ル ス状 アー ク の過 渡 解析. 1.. Reactions. in a N2 plasma. 採 用 した。式(1)か ら(3)の 差 分化 は コ ン トロール ボ リュー. 粒 子jが 単 位時 間,単 位体 積 あ た り. ム法 に よ り行 った。. に生成 され る質 量す なわ ち生 成速 度Rjは 一般 に次 の式 で書. 境界 条件 と して は,R=40mmに. け る。. お い ては 自由流 出 と し. た。 プ ラズ マ 中 心軸 上 で は全 て の物 理 量 のrに 対 す る微分 項 が0に な る よう に設定 す るす る と とも に,半 径 方 向速 度. Rj =mjLΣe=1(β″je‑β′je)αf,reNПi=1nβ′ie……(15). 成 分 に つい て はv=0と. した。. 成物 の化 学量 論係 数,α eは反 応eの 反応速 度定数,Lは 考慮. 〈2.7〉 計 算 手 法 本 計 算 にお い て は,次 の よ うに し て式(1)か ら式(11)か らな る連 立方程 式 を解 い た。(i)初期. する反応 の数,Nは. 圧 力分 布,速 度 分 布 お よび 温度 分 布 を与 え る。(ii)運動 方. ここで,β″je,β′jeは 反応eに お け る粒 子jの 反 応 物 また は生 考慮 す る粒 子 の数 で あ る。例 えば,N2. に対 す る生成 速 度 は 表1に 記 載 した 全 て の反 応 を考 慮 す る. 程 式(2)を 解 い て"を 求め る。(iii)このvを 用 い て,エ ネル. と以 下 の よ うに な る。. ギ ー方程 式(3)を 解 き,温 度Tを 求め る。(iv)さ らに りを用 い て,粒 子jの 質量保 存 方程式(1)を 解 き,各 粒子 の密度nj. RN2=mN2(‑αf1n2N2+. αr1η2NnN2‑αf2nN2nN. を求 め る。(v)求 め た各粒子 の密 度njか ら式(9)に よ り,新. + αr2n3N+αf3nN2+nN‑αr3nN2nN++. しくガ ス全 体 の質量 密度 ρを求め る。(vi)求めたTお よびnj とか ら状 態 方程 式(11)を 用 いて 圧 力pを 求め る。(vii)再び. αf6nN2+nN2ne‑αr6n2N2. 手 順(ii)に戻 る。 時 間刻 み につ いて はΔt=1.0×10‑9s=1.0 nsと してい る。計 算は,圧 力伝 搬 がR=40㎜ に達 す る時. + αf7nN2+nNne‑αr7nN2nN)……(16). 点 まで行 って い る。. こ こで,αfeおよびαreは,それ ぞ れ正反 応 お よび逆 反 応 の反. 〈2・8〉初 期 値. 応 定数 で あ り,下 付 の添 え字 は 表1に お け る式 番号 を表 す。. 〈2・8・1〉閉空 間 内一定 体積N2ガ. 〈2・5〉 N2プ ラ ズマ の熱 力 学・輸 送 特性 お よび放 射損 失. スの温 度増 加 に とも な. 本論 文で取 り扱 うイ ンパ ル ス状過 渡 アー ク にお いて は,反. う圧 力 上昇. 応 平衡 が 成 り立 ってい な い と考 え られ る。 この場 合,厳 密. 極 めて 早 い時 間 内 に しか も狭 い領 域 に エネ ル ギー が注 入 さ. イ ンパ ル ス状 アー クが発 生 した瞬 間で は,. には各 時 間 ステ ヅプ ご とに得 られ た粒 子 組成 を用 いて 熱 力. れ る た め,そ の 領域 で は1気 圧 以 上 の高 圧状 態 に な って い. 学 ・輸 送特 性 お よび放 射 パ ワー を 計算 する必 要 が あ る。 し. る と考 え られ る。 この状 態 を模 擬 す るた め,閉 空 間 内 一定. か し,本 報 で は まず複 雑 さ を避 け るた め,熱 力 学 ・輸 送特. 体 積 のN2ガ ス に エ ネル ギー が 注 入 さ れ温 度 が 上 昇 し,そ. 性 と して,Chapman‑Enskog法. れ に ともな って圧 力 も上昇 して い る状 態 を 考 え る。 この よ. の第 一 次近似 で 求め た熱 平. 衡 状 態 の も の を温 度 に のみ 依 存 す る量 とみ な して 用 い た 。 した が って,粒 子 密度 の 生成,消 滅 に 関わ る反 応 論的 な粒. うな状 態 が イ ンパ ル スア ー クの初 期段 階 で発 生 してい る と 仮定 し,温 度 増加 に対 す るN2プ ラズ マの圧 力上 昇 を計算 し. 子組 成 の 非平 衡性 に特 に着 目 して い るこ とに な り,温 度 平. た。温 度が 変化 して も質量 が保 存 され る とい う条 件 の も と,. 衡 に達 してか らの反 応 平 衡 に な る まで の遅 れ時 間 な どが検. Guldberg‑Waageの. 討 で きる。本 計算 には0.1MPaのN2ガ. 電 荷 中性 条件 式 を解 いて 粒子 組 成お よび圧 力 上昇 を計算 し. ス に対 す る熱 力 学 ・. 式(分 子の解 離反 応),Sahaの. 式お よび. 輸送 特性 値 を用 い た。た だ し質量 密度 ρに つ いて は,各 計 算. た。図1に 圧 力上 昇の 計算 結果 を示 す。同図 にお いて,破 線. ステ ッ プ ご とに式(9)か ら逐 次 求 めた 。 放射 損 失Pradに つ. はN2の 解 離 ・電 離反 応 を考慮 しな い,い わゆ る理想 気体 の. いて は,原 子 ・イ オ ン線 ス ベ ク トル放 射 と連続 スペ ク トル. 状 態 方 程式 に伴 う圧 力 上昇 で あ り,他 方 実線 は そ れ らを考. 放射 とを 考慮 し,圧 力 依 存性 も考 慮 した。. 慮 した場 合 の も ので あ る。 同図 にお い て,温 度300Kの. 〈2・6〉解 析 空 間,境 界 条 件 およ び計 算手法 と して,R=40mmの. 合 は大 気圧0.1MPaで. 解 析 空間. 成11年. り大 きい領 域 に. お いて,実 線 が破 線 よ りも大 き くな って い る。 これはN2が. 向に290点 非 等分割 し,分 割 区間 にス タ ヅガー ドグ リッ ドを 電 学 論A,119巻10号,平. あ り,温 度 の 上昇 とと もに圧 力 も比. 例 的 に 大 き くな って い く。温 度7500Kよ. 円柱 空間 を考慮 した 。これ らを半 径方. 場. 1231.
(4) 図2. イ ンパル ス 電 流波形. Fig. 2.. 図1. Impulse. current.. 閉空 間 一定 体積 のN2ガ ス の温 度上 昇 に とも な う圧 力 上昇. Fig. 1. Pressure rise in N2 plasma dition of mass conservation.. under. the con-. 3.. 計 算 結 果. 図3(a),(b)お よ び(c)に,半. 径 方 向 の 流速,温 度 お よび. 解離 し,粒 子 数 が増 す ため圧 力 が上 昇 す るこ とを 示 して い. 圧 力 の半 径 方 向分 布 の時 間 的推 移 を,r=0‑20㎜. る。 さ らに温 度 を上 昇 させ る電 離 に よ り粒子 数 が増 加 す る. で 示 す。 同図(a)か ら,電 流 が 流 れ始 め て か らt=10μsで. ため圧 力 上昇 度 が増 し,温 度T=30000Kで は圧 力p=34 MPaに まで達 す る。こ の計算 結果 を用 いて初 期圧 力分 布 を. r<5㎜. の範 囲 で流 速 が800m/s以. の範 囲. 上 に達 してお り,径. 方 向 に高速 に広 が ろ う と して い る こ とが わか る。 これ によ. 次節 の よ うに与 え る。. り,t=100μsで. 〈2・8・2〉 初 期温 度,圧 力 お よび速度 分布 イ ンパル ス アー クが発 生 した直後t=0に お け る温 度 分布 は測 定例 もほ. 高 圧 プ ラズ マ流 体 が膨 張 して い る。 こ のr=19mm付. とん どな く明 らかで な い。 そ こで本 計 算 にお いて は,初 期. 止 して い る周 囲気体 との 間 には っ き りと した境 界 が生 じて. 湿度 分 布 形状 を次 の二 次関数 で表 せ る と仮定 した 。. お り,衝 撃 波 が 発生 して い る こ とが確 認 で きる。 この よう. ここではT0=5000K, r′=2mmと. 近の. に衝 撃 波 が計 算 で き るの も 本モ デ ル の 特徴 の 一 つで あ る。 この よ うに1000m/s程. 度 の衝 撃 波 が発生 す るこ とは赤崎氏. らも実測 して い る(8)。. した。さ らにT0=10000,. 2.5, 5㎜. 半径 位 置 ま で急 速 に高 温 ・. 位 置 で は径 方 向速 度 を有 す る流体 と,ま だ擾 乱 が達 せ ず静. T(r9t=0)=max[T0‑(T0‑300/rr2)r2,300](17). 6000, 4000K, r1=1,. は 約19mmの. 同図(b)で は,t=0μsに. に 変更 した場 合 につ い. お い て は初期 状 態 と して放 物型. て も本 論 文で掲 げ るモデ ル に よ りイ ンパ ルス状 ア ー クの 挙. の温 度 分布 を呈 して い たの が,t=10μsで. 動 を計算 したが,t>2μsの. 領 域 がr=5㎜. 範 囲 にお いて は温 度,圧 力 な ど. は300K以. 上の. に まで 到 達 して い る。 一 方,中 心 温 度 は. ジ ュー ル エ ネ ル ギー の注 入 に よ り上 昇 して お り約7500K. の物 理 量 はい ず れの場 合 にお いて もほぼ 同様 にな るこ と を 確認 で きた。 す なわ ち,初 期 温 度 分布 が 本計 算結 果 に与 え. に達 して い る。 さ らに時 間 が経 過 し,t=50μsに. る影 響 は 小 さい もの と推 測 で きる。初 期圧 力 分布 に つ いて は,与 え た初期 温 度分 布か ら図1を 用 い て与 えた 。速 度vに. る 。 しか し,中 心付 近 の 温度 分 布 は,逆 に径 方 向 に縮 まる. つ いて は全 て0m/sと. 方 向 に変化 して い る。 これ は外 径 方 向へ の 対流 によ って熱. した。. 上 の領 域 がr=14mm付. な る と温. 度 約300K以. 近 に まで伝 搬 してい. ここでは イ ンパ ルス電 流. が伝 搬 され る と同 時 に電 流 に よ るジ ュー ル 熱が 中心付 近 に. 波形 の 例 と して図2に 示 す イ ンパ ル ス波 形 を選 ん だ 。 こ の. の み で生 じて い る ため で あ る。 こ の よ うに温 度 分 布 の時 々. 波 形 は後 述 す る 実験 にお け るイ ンパル ス 波形 の近 似 式 で あ. 刻 々 の変 化 は径 方 向へ の対 流損 失 とジ ュー ル入 力 との兼 ね. り,別 途 実 測 と比較 す るた め に この波 形 を選 ん だ。 実 際 の. 合 い に よ って 決定 され てい る。 なお,こ の 時 間範 囲 で は熱. 計 算 にお いて は,こ の波 形 に対 して次 の ような式 を用 い て. 伝 導 に よ る損 失は 相 対 的 に小 さ い。. 〈2・9〉イ ンパ ルス 電流波 形. 同 図(c)は 圧 力分 布 変 化 で あ る。 プ ラ ズ マ の温 度 上 昇 と. 近 似 した。. と もに圧 力 も上 昇 して お り,温 度 分 布 の 変化 とほ ぼ 同様の. i=Γ(ε‑ζ1t‑ε‑ζ2t)……(18) ここで,ε は 自然 対数 の底,Γ=79.7A, ζ2=3.36x106s‑1で. 推 移 を示 して い る。放 電 中心 付近 にお いて は2.5MPaに ζ1=2.71×104s‑1,. も. 達 して い る。 この ように イ ンパ ル ス状 アー クにお い ては 瞬 間的 に 圧 力が 数 十 気圧 にな りうる こ とが,本 モデ ル に よ り. ある 。図 中細 い 実線 が計 算 に 用い た 波. 形 であ り,太 い線 が後 で述 べ る実 験で 得 られ た波 形で あ る。 ここで は,式(18)の 性 質 を有 す る電 流源 が アー クに 直列 に. 予想 で きた。 この よ うに放 電路 内部 圧 力が 数 十 気圧 に な る こ とは 文 献(1)に お い て も実 験 的報 告 例 が あ る。 図4は,t=50μsに. 接 続 され,強 制 的 に電 流 を供 給 され て い る と仮定 して 計 算. お け る 粒 子組 成 の半 径 方 向分 布 で あ. る。 図 か らN2が お もに 中 心付 近 に お い て解 離 してNが 生. す る。 1232. T. IEE Japan,. Vol. 119-A, No. 10,'99.
(5) N2イ. 図4 Fig. in. 4. an. 時刻t=50μsに お け る粒 子 密度 の 単 径方 向 分布. Radial. distribution. impulse. N2. 図5 Fig. 5.. 4.. ンパ ル ス状 ア ー クの 過 渡 解 析. arc. at. of particle. composition. t=50 ƒÊs.. イ ンパル ス発 生 回路 Impulse. generating. circuit.. イ ンパ ル ス状 ア ー ク を 用 い た ス ペ ク トル 観 測. 〈4.1〉 イ ンパ ル ス発 生 回路 およ び スペ ク トル観 測 装置 こ こで構 築 したモ デ ルの 妥 当性 を検 証 す るた め に実験 室 内 にお い て イ ンパ ル ス状 ア ー ク を実際 に発 生 させ,ア ー クか らの放射 スペ ク トル観 測 を行 い,こ の分 光 デ ー タ をも とに アー クプ ラズ マ の温度 を評価 した。. 図3. 図5に イ ンパル ス発生 回路 を示 す。回路 は コ ンデ ンサ,抵. 径方向の流速,温 度お よび圧力の半径方向 分布. Fig. 3. Time variations in radial radial flow velocity, temperature an impulse atmospheric N2 arc.. distributions and pressure. 抗 お よび球 ギ ャップの直列 回路 か らな って い る。コ ンデ ンサ Cを 直 流充 電 し,そ れ を球 ギ ャップ 間 で 自然 破 壊 させ る こ. of in. とによ りイ ンパ ルス アー ク を発 生 させて い る。ギ ャップ間隔 は10㎜. で あ る。ギ ャップ間 中央部 の イ ンパ ル ス アー ク か. らの発 光 を レ ンズお よび 光 フ ァイ バ束 に よ り分 光器 に 導 い てい る。分 光器 の結 像 面 に さ らに光 ファ イバ束 を二つ 並べ, その フ ァイバ別 端 に光 電 子増 倍管 を取 り付 ける こ とに よ り, 相 異 な る二 つ の波 長 にお ける スペ ク トル放 射 強度 の時 間 変 じ,そ れ が 対 流 に よ ってr=13㎜. 付 近 まで 運 ば れて きて. い る。 この位 置 まで 電子 の密 度1018m‑3ま. 化 を同 時 に測定 で き るよ うに して い る。 こ こで は本 装 置 に よ り波 長746nmに. で大 き くな って. いる。 電 学 論A,119巻10号,平. 長661㎝ 成11年. 1233. お け るNス ペ ク トル放 射強 度IN746と 波. にお け る連続 スペ ク トル放 射強 度Icont661と を同.
(6) 図6. Nお よび連続 スペク トル放射強度波形. Fig. 6. Waveforms of radiation intensities of N spectral line at 746 nm and continuous spectra at 661 nm. 図7. Fig.. 時 に測定 して い る。 本装 置 の測定 波 長幅 Δλは1.0nmで る。 これ らのデ ー タ はサ ンプ リン グ時間50nsの. あ. 7.. sion. 圧 力2.5MPaに お け る放 射係 数 比 εN746/εcont661の 温 度 依 存 性 Temperature. dependence. coefficients ƒÃN746/ƒÃcont661. of at. a. ratio. of. pressure. emisof. 2.5. MPa.. デ ジ タイ. ザ を介 しパ ソコ ンに保 存 され る。 〈4・2〉 イ ンパ ルス状 ア ーク温 度 の時 間変 化 〈4・2・1〉Nお よ び連 続 ス ペ ク トル放 射 強度 波 形. 図. 6に,二 つの スペ ク トル放 射強 度 の測定 例 を示 す。Nお よび 連続 スペ ク トル放 射 強度 は 両者 と も立 ち上が りにお い. 極. めて 急 激 に上 昇 して い る。 そ の後,電 流 の減 少 と とも に発 光強度 も急速 に減衰 して い る。別 途,マ ル チチ ャ ンネル デ ィ テ ク タを用 い て スペ ク トル観 測 を行 った が,こ の 電 流値 で は電 極蒸 気 か らの もの はほ とん ど観測 されな か った 。 した が って,こ の 実験 に お け るア ー クに は電極 材 料の 混 入は ほ とん どな い とい ってよい。 ここでは これ らの二 つのスペ ク ト ル放 射強 度 比 を 用い て,局 所 熱 平衡 を仮定 した場 合 の アー ク温 度 を次 節 の よ うに して 求 めた 。 〈4・2・2〉連続 スペ ク トルお よびNス. 図8. ペ ク トル の放 射 係. 数比 古 典 論 に よれ ば温 度Tの 気体 か ら波長 域 λ± Δλ に放射 され る連 続 スペ ク トルの放 射係 数εcont(W/(m3・sr)). 気 中 イ ンパ ル ス アー ク の 中心温 度 変化. Fig. 8. impluse. Temperature arc.. variation. at the. center. of an. は次 の よ うに書 け る(9)。 まで 変化 す る と急 激 に 大 き くな る。 温 度 が9000Kを εcont =1/(4. こ こ で,ε0は. πε0)16πe6η2e/3c3(6πm3ekT)1/2cΔλ/λ2……(19). あ る。 一 方,熱 (W/(m3・sr))は. の算 定 は 同図 すな わ ち圧 力2.5MPaの 近 の圧 力 が2.5MPa程. 素 電 荷(=1.60×10‑19C)で. 平 衡 状 態 に お け るNス. る と放射 係数 比 εN746/εcont661は減 少 して い く。 温度 変化 放射 係 数 比 を用 いて. 行 う。 この 理 由 は前 節 のモ デ ル計 算 にお い て アー ク 中心付. 真 空 中 の 誘 電 率(=8.85×10‑12F/m),cは. 光 速(=3,00x108m/s),eは. 越え. 〈4・2・3〉 温 度変 化. ペ ク トル 放 射 係 数 εN. 度 に 計算 され て い る ため で あ る。 前節 で理 論的 に求 めた放射 係数 比. εN746/εcont661の温 度 依 存性 と,実 験 か ら得 られ た 放射強. 次式 で表 せ る。. 度 比IN746/Icont661とを 比較 す る こ とに よ り温 度 を求め た。 εN =nN/ 4πZNhpc/λgAexp(‑ψ/kT)……(20) ψ は 上 準 位 エ ネ ル ギ ー(J),gは の 縮 態 度,Aは 波 長661お. 遷 移 確 率(s‑1)で. よ び746nmの. εN746/εcont661を 温 度Tに びnNに. 図8に,そ. も同様 に次 第 に低 下 して い き,t=300μsで. あ る。 これ らを そ れ ぞ れ. は約4000Kに. な って い る。 同 図 には,本 論 文 の モデ リング に よ って得 ら. よ. れ たア ー ク中 心温 度 の 計算 結 果 を実線 で付 記 した。 同図 か. 対 して 求 め た 。 こ こ で,neお. ら,○ はほ ぼ実 線 上 に あ る こ とがわ か る 。 すな わ ち,計 算 結 果 と実験 結 果 とがほ ぼ 一致 して い る。 こ の こ とか ら,本. もので あ る。 同図 にお い て 度 が5000Kか. あ り,大 き. の比. つ い て は 熱 平 衡 組 成 値 を 用 い た 。 そ の 結 果 が 図7で. あ る 。 こ の 図 は 圧 力2.5MPaの. お いて 中 心 温度 は約7500Kで. な 変 動 はな い 。 その後,電 流値 の低 下 に ともな い中心 温 度. 土 順 位 エ ネ ル ギ ー レペ ル. も の に 対 して 計 算 し,そ. 放 射 係 数 比 εN746/εcont661は,温. の結 果 を○ で 示 す。 同 図 に 示 す よ うに,時 間域. 5<t<75μsに. 論 文 にお け るモデ リングの妥 当性 が 一 部 示さ れた といえ る。. ら9000K 1234. T. IEE Japan,. Vol. 119-A, No. 10, '99.
(7) N2イ. 高値 約80A,波. ンパ ル ス 状 ア ー ク の過 渡 解 析. 頭 長/波 尾 長=1/30μsオ. ー ダ の イ ンパ ル ス. 状 アー ク にお いて は,数 百m/s以. 上の 速度 で 径方 向 に膨 張. してお り,中 心温 度が 約7500Kに. な ってい る こ とが判 明 し. た。 この と きア ー ク 内の 内部 圧 力 は2.5MPaに まで 達 して いた。 一 方 ,大 気 圧 にお ける イ ンパ ル ス状 ア ー クの スペ ク トル 測 定 を行 った。 波 長746nmに 長661nmに. お け るNス ペ ク トル 線 と波. お け る連続 スペ ク トル の放 射 強度 の 時 間 変化. を測定 した。 これ らの放 射 強度 比 か ら温 度 の時 間変 化 を算 出 した。 そ の結 果,温 度 の実 測値 は,今 回 のモ デ リング に よ り得 られ た温 度 の計 算値 とほぼ 一 致 した。 本 モデ ル の特 図9. 徴 は,反 応論 的 非 平衡組 成,圧 力 上 昇お よび圧 力伝 搬 が計. アー ク中 心部 に お け る粒 子組 成 の熱 平衡 状 態 か らの ず れ. Fig. 9. Deviation in number density. 算 可能 な こ とで あ り,大 気 圧故 障点 アー クや 雷放 電 路 の解 析 に も応 用・展 開 可能 で あ る。. from local thermal equilibrium at the center of an impluse arc.. t=50μsま で の範 囲 で約7500Kで. (平成11年2月15日. 受付,平 成11年6月14日. ほ ぼ一定 にな る理 由は,. 文. この温 度域 では 注入 エ ネル ギー が この よ うな短 い時間 にN2 の解離 に消 費 され る,す な わちN2の 解 離 反応 が顕著 に な り. (1). M. A. Uman:. これ に よ り見掛 け上 の比熱 が 大 き くな るた めで あ る。 また,. (2). S. I. Braginskii:. 今回 の実験 にお い て は大 気 中 に酸素 が 含 まれ て い るが,実. (3). nel",. 測 した温 度 は純粋N2で の計 算結 果 と同程度 で約7500Kに. Sow.. A. Loeb, and. Lightning, Phys.. (4). したこ とか ら,温 度4000K程. 急 激 に上 昇. J. Appl.. A. M. Voronov. (5). (6). アー ク中 心部 にお け る粒 子組 成 が局 所 熱平 衡状 態 を仮 定. 示 す。t=50. 所熱平衡状 態 にあ る こ とを 示 して い る。これは,前 節 で局所 熱平衡 状 態 を仮 定 して温度 算 定 した結 果 が今 回 の計 算 結 果 とよい 一致 を示 した こ とを裏 付 けて い る。すな わ ち,ア ー ク 中心付 近 に限 って 言 えば,数 マイ ク ロ秒 の時 間オ ー ダに お いて局 所 熱平 衡 状態 が 成 立 す る。 この こ とは赤 崎氏 らの 実 測結果(8)とも一 致 す る。t>50μsの 範 囲にお い ては,N+2, N,N+お よびe粒 子 に 対 す るnj/neqjが1以 上 にな り,局 所 熱 平衡 を仮 定 した も の よ りも多 くな って い る こ とを示 して いる。 これ は,温 度 が 低 くな って い る ため再 結 合 な どの 反 応 の特性 時 間が 今 回対 象 と して い る時間 軸 に 比較 して 長 く な っ たた めで あ る と考 え られ る。 論. 本 論 文 にお い て は,反 応速 度 を考慮 した反 応 論 的非 平 衡 一次 元 モデ ル をイ ンパ ル ス ア ー ク を対象 に構 築 した 。 この ンパ ル ス アー クにお け る温 度,圧 力 お. よび粒 子組成 分 布 とその時 間変化 を計 算 した。そ の結果,波 電 学 論A,119巻10号,平. 成11年. of a Spark Eliezer,. Simulation. 57 , 2501-2505 Discharge•h,. Tech.. Chan-. (1958). A. Ludmirsky,S.. A. M. Voronov. Phys.,. M. G. Dunn. 36, amd. 1235. in. and. Helium. by. S. Maman. Fast. Spark. Dis-. (1984) Balance Phys.. 8,. 1106-1110. Lett.,. in. 19,. a. 460-. High. : "Pulsed. Pressure",. High-. Sow.. Phys.. (1991). K. A. Lordi:. 339-345. V. N. Zhuravlev at. "Measurement. Recombination. in. Expanding. of. N+2•{e-. Nitrogen. Flows",. (1970). 高 柳:「 電 子・原. (8). 赤 崎,村. (9). J. F. Bott: "Spectroscopic Measurement of Temperatures Argon Plasma Arc", Phys. Fuilds, 9, 1540-1547 (1966). 岡,浜. 子・分. 子 の 衝 突 」,p.. 182. (1972)培. 風館. 本:「 二 波 長 レー ザ 干 渉 法 を 用 い た 大 気 中 イ ンパ ル ス. ア ー ク の 研 究 」,電. μsまでは,nj/neqjは ほぼ1で あ り,ア ー ク中 心部 が ほぼ局. モデ ル を用 いて,イ. 1068-1074. (7). した もの に比較 して どの くらいず れ て い るのか を定 量 的 に 示す ために,今 回 の組 成 計算 結果 を局所 熱平衡状 態 の結 果 で. 結. Dover.. V. L. Goryachev: •gEnergy. Discharges. Dissociative AIAA,. 6.. 34,. Phys.,. and. F. G. Baksht, Tech.. 討. 割った ものnj/neqjを 計算 した 。図9にnj/neqを. Development. 462(1993). 度 にみ られ る酸素 の解 離反 応. によ る比 熱 の上 昇 の影 響 が 少 なか った ため と考 え られ る。 検. (1969). of the. Explosion. Pulsed. Current. 5.. p. 177. M. Loebenstein,. High-Current. ほ ぼ80%で 支配 的 で あ り,温 度 が 約7500Kに. 献. JETP,. Y. Gazit: •gPoint. charges•h,. なってい る。 これ は,空 気 中 にお い ては 窒素 が構 成 要素 の. "Theory. 再 受付). 学 論A,. 101,. 255‑262. (1981). in.
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