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ビ ッ グ ・バ ン と シ テ ィ の 規 制(1)

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〈翻 訳 〉

ビ ッ グ ・バ ン と シ テ ィ の 規 制(1)

L.C.B.ガ ウ ア ー 加 賀 譲 治(訳)

訳者 ま えが き

イ ギ リス は 、1986年 に 「ビ ッ グ ・バ ン」 と 呼 ば れ る 証 券 市 場 に 関 す る 大 改 革 を 断 行 した 。 同 改 革 は 、 証 券 取 引 手 数 料 の 自 由 化 を は じめ とす る 証 券 業 者 の 単 一 資 格 制 度 の 廃 止 や 証 券 取 引 所 会 員 へ の 外 部 出 資 の 制 限 の 撤lyaを 中 心 とす る も の で あ り 、 証 券 市 場 の 活 性 化 を 通 じて 、 世 界 の 金 融 セ ン タ ー と して の 「シ テ ィ」 の 地 位 を 再 樹 立 しよ う とす る も の で あ った 。

イ ギ リス 会 社 法 研 究 の 権 威 、L.C.B,ガ ウ ア ー(L,C,B.Gower)教 授 は 、1988年1月 、 こ の 「ビ ッ グ ・バ ン 」 に 関 す る 小 論 を"TheModern

LaveReview"(Vo1。51,No.1)に 掲 載 した 。 題 名 は 、 「ビ ッ グ ・バ ン と シ テ ィの 規 制 」("BigBang"andCityRegulation)で あ る 。 わ が 国 も 、 「日本 版 ビ ッグ ・バ ン」 を 進 行 さ せ た 。 き わ め て 急 激 な 改 革 を 遂 げ 、 成 功 を お さ め て い る イ ギ リス の 証 券 市 場 改 革 に っ い て 、 法 律 学 の 碩 学 の 論 稿 に 学 ぶ こ と は 少 な くな い で あ ろ う 。 邦 訳 の 本 誌 掲 載 の 許 可 は1993年 に 出 版 元 よ り頂 戴 して お り 、 多 少 遅 く な っ っ て し ま っ た が 、 こ こ に掲 載 さ せ て い た だ く。 誤 訳 等 あ れ ば 、 同 学 諸 兄 姉 の ご 指 摘 を お 願 い す る も の で あ る。

ビ ッ グ ・バ ン と シ テ ィ の 規 制

本 稿 の題 名 で 使 う 「ビ ッグ ・バ ン」 と い う言葉 は 、 天体 物 理 学 上 の意 味 で 使

ロ コ

用 して い る わ け で は な い 。 も ち ろ ん 、 そ れ は 、 「金 融 サ ー ビス 業 界 」(financial

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servicesindustry)と 呼 ぶ こ と が 一 般 的 と な っ た 場 所 一 筆 者 は 、 こ れ を い か

ロ コ

なる地理 学 上 の含 意 も もたせ ず に、 「シテ ィ」(theCity)と 呼ぶ 一 にお い て 、 1983年 の 夏 以 降 に発 生 した大 変 動 また は 構 造 改 革 の こと を意 味 す る。 筆 者 は 、 これ ら一 連 の諸 改 革 とそ の結 果 にっ い て 、本 稿 にお い て 「個 人的 見 解 」 を述 べ る こ とを求 め られ て い る。

ビ ツ グ ・バ ン

シテ ィで起 きた この大 改 革 は 、類例 の ない もの とい うわ け で は ない。 た だ 特 筆す べ き は 、 他 の諸 国 にお け る 主要 な金 融 セ ン ター の 改 革 が50年 以 上 か か っ

て徐 々に行 わ れ て い るの に対 し、 シ テ ィで は4年 間 とい う短 い期 間 で急 速 に大 改 革 が成 し遂 げ られ た点 で あ る。 過 去 どの 国 に お い て も、 証 券投 資 及 び証 券 業 務 の諸 類 型 を根 本 的 に変 更す る の に、50年 以 上 を要 して い る。特 に証 券 投 資 は、近 年 とみ に 多様 化 な い しは複 雑 化 の一途 を辿 ってお り、証券 業 務 は 、別 個 独 立 の 自国業 務 か ら相 互 関 連 の あ る国際 的業 務 へ と進 展 した 。証 券 業 務 に関 す る境 界 線 が 除 去 され た結 果 、金 融 サ ー ビスを供 給 す る資 本 力 の あ る巨大 な コ ン グ ロマ リ ッ トが 成長 す る とい う現象 が起 きた。 これ に伴 い 、諸 国の金 融 セ ンター は数 々の 困 難 を 克 服 しなけれ ば な らなか った 。 そ の 中 で特 に連合 王 国 に 固有 な

 おユ

困難 と い え ば 、(ア メ リカ合 衆 国 の グ ラス ・ス テ ィー ガル法 の よ う な)法 的 規 制 を行 うか 否 か は ま った く自由 で あ るに もか か わ らず 、連 合 王 国 には そ の構 成 員 の既 得権 益 を保 護す る 目的 のた め の取 引制 限規 則や 専 門職 団体 が存 在 す る こ

とで あ った 。 その 顕著 な例 が 、証 券 取 引 所 の 諸 規 則 で あ った。証 券 取 引所 規 則 は 、取 引 所 会 員 の 形 態 が有 限責 任 会 社 で あ る こ と を禁 止 し、 また 非 会 員 が 証券 取 引 所 に お い て 実 質 的 か っ 金 銭 的 な利 益 を得 る こ とを 禁 じ、「単 一 資 格 制 度 」

C4コ

(singlecapacity)一 本人 と して証券 取 引 を行 うマ ーケ ッ ト・メー カー の ジ ョ バ ー と他人 の代理 人 と して証券 取 引 を行 いかっ 最低 固定手数 料 に従 うブ ロー カー

との分 離 制 度 一 を明定 して い た。 そ れ ゆ え 、 ア メ リカ合 衆 国や 日本 の よ う な

他 の 国 々と は対 照 的 に、連 合 王 国 に は店 頭 市 場 が 発 達せ ず 、証 券 取 引所 の会 員

権 の存 在 こそが 金 融業 の 成熟 に不 可 欠 な も ので あ った 。 と ころが 、そ の会 員権

は証 券 取 引 所 規 則 に よ り入 手 不 可能 なも ので あ った 。 しか しなが ら、連 合 王 国

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に関 す る上 記 の事 情 は 、必 ず しも外 国 の証 券 業 者 が ロ ン ドンで 営 業 しない こ と とは結 び っ いて い な い。 反 対 に、 外 国法 入 の ロ ン ドン市 場 へ の流 入 は む しろ増 加 して いた の で あ る。 特 に ア メ リカ合 衆 国や 日本 の法 人 の 中 に は 、法 人 財 産 を 減 少 させ る こ と な く、許 され る ので あ れ ば ブ ロ ー カ ー 、 ジ ョバ ー及 び マ ー チ ャ ン ト ・バ ンク(merchantbank)を

[5コ

買 い 占め る こ とが で き る ほ どの資 力 を も っ た 法 人 もあ った。 それ らの諸 外 国の 法 人 を ロ ン ドン市 場 に引 き付 け た もの は 、 そ の規 則 に よ り外 国法 人 を排 斥 した 連 合 王 国 の 国 内証 券 市 場 で は な く、 いわ ゆ

C6ユ

るユ ー ロ債 市 場 で あ った 。 この幾 分 変 則 的 な市 場 は、 ど こに も固 定 され た 取 引 の場 所 は なか った。 それ は、 主 に専 門 家 の 間 で 電 話 か テ レ ック ス に よ り取 引 さ れ る24時 間 の 国 際 的 な店 頭市 場 で あ り続 け て い る。 この 市 場 に お い て取 引 さ れ る証券 の取 引総 額 は莫 大 で あ り、過 去 ロ ン ドン と ニ ュー ヨー クの 証 券 取 引 所 の売 買高 を合 計 した よ りもは るか に大 きな もの で あ った し、現 在 も同様 で あ る。

ユ ー ロ市場 に対 す る規 制 は 、 チ ュー リ ッ ヒに セ ンター を置 く"Associationof InternationalBondDealers"(AIBD)に よ る 自主規 制 に任 され て き た 。 しか

し、 何 らか の理 由 に よ り、 そ のセ ンター は ロ ン ドン に移 され た。 私 が 「何 らか の理 由に よ り」 と言 う の は、 この莫 大 な取 引 量 の 市場 の セ ン ター が なぜ 当地 に 移 され た か につ い て 、だ れ も調 査 して い ない か らで あ る。 ヨー ロ ッパ の 他 のセ ンター が そ うで あ る よ う に、連 合 王 国 に お い て も この市 場 を規 制 して い な い の で あ るか ら、規 制 して い な い こ とが 理 由 で な い こ とだ け は 明 らか で あ る。

理 由が何 で あれ 、 連 合 王 国 が 主要 な製 造 業 国 で な くな って も、 ロ ン ドンは 、 特 にユ ー ロ市 場 の恩 恵 に よ り主 要 な国際 的 な金 融 市 場 と な った こと は事 実 で あ り、 これ は連 合 王 国 と して も望 んだ こ とで あ った 。 しか し、 そ の市 場 は環 境 の 変 化 に適 応 す る の に、 きわ め て緩 や か な時 間 を要 した 。 ゆえ に、 ロ ン ドンの金 融 セ ンタ ー は 、 ア メ リカ合 衆 国 、 日本 及 び ス イ ス の資 本 の充 分 な法 人 に よ り支 配 され て い る主 要 な 国際 的 な市 場 と、 ア メ リカ合 衆 国や 日本 の 企業 と競 争 す る

こ と とな る資 本 の不 充 分 な イギ リス企 業 に よ って支 配 され てい る不 安 定 な 国 内

市 場 と に分 割 され た セ ンター に な った 。 なぜ な らば 、 証券 取 引所 規 則 に もか か

わ らず 、外 国法 人 は 、連合 王 国 の上 場証 券 か ら完全 に排 除 され たわ けで は な か っ

たか らで あ る。 これ らの多 くの証 券 は ニ ュー ヨー ク証 券 取 引所 に も上 場 し、 ま

た あ る程 度 は東京 証 券 取 引 所 に も上 場 した 。実 際 、 イ ギ リス化 学 工 業 合 同会 社

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(ICI)の 株 式 は 、 ロ ン ドン市 場 よ り も ニ ュ ー ヨ ー ク 市 場 で ア メ リ カ 預 託 証 券

ロ コ

(ADR)と して よ り少 な い 費 用 で 取 引 され て い る と い わ れ て い る。

1979年 に 、 き わ め て 重 要 な 関 連 す る 二 つ の 事 件 が 生 起 した 。 第1に 、 公 正 取 引 庁 長 官(Director‑GeneralofFairTrading)が ロ ン ドン証 券 取 引 所 規 則 集(StockExchangeRuleBook)を 制 限 的 取 引 慣 行 審 判 所(Restrictive

CS]

PracticesCourt)に 付 託 した こ とで あ る。 こ の訴 訟 に っ い て は 、長 期 的 に は 良好 な結 末 を迎 え た が 、短 期 的 に は誠 に不 幸 な結 論 と な った 。 なぜ な らば 、 こ の訴 訟 は 、 証 券 取 引所 は不 本 意 で あ った が 、対 策上 そ の諸 規 則 を 変 更 させ る こ と に な った か らで あ る。

第2の 事 件 は 、 同 年 の 総 選 挙 に お け る保 守 党 の 勝 利 に 伴 う 為 替 管 理 (ExchangeControl)の 廃 止 で あ った 。 この こ とは 、 連 合 王 国 の 投 資 事 業 を きわ め て重 大 な 国際 化 に 直面 させ た 。 と い うの も、海 外 投 資 をす る イギ リス人 に と って は、 以 前 に比 べ海 外 投 資 は は るか に容 易 に な り、外 国法 人 も また 同様 と な った か らで あ る。特 に保 険 会 社 、 信 託及 び年 金 基 金 な どの よ う な イギ リス の機 関 投 資 者 は 、 これ 以 降 、 ア メ リカ合 衆 国 及 び そ の他 の諸 国 に投 資 して 、 そ の ポー トフ ォ リオ を多様 化 させ るよ う に な った 。有 利 な事 業 展 開 の 主要 な部 分 が、 自国 で は な く、 ア メ リカ合 衆 国 に よ って もた らされ る ことが判 明 した とき 、 イ ギ リス金 融 サ ー ビス業 務 は そ の弱 さを さ らに強調 させ られ る こと と な った。

さ らに、1983年 も重 要 な年 に な った 。 前 述 した 証 券 取 引所 規 則 問題 の審 判 付 託 に関 す る 中間 判 決 を 求 め る手 続 は、 実 にゆ っ くり と した 進 展 しかせ ず 、 ま た膨 大 な資 料 を必要 と した 。1984年 に は審 理 が 開始 され る こ とが 望 まれ た が 、 そ の審 理 に は数 週 間 を要 し、 最終 判 決 が 出 され る前 には他 の手 続 も必要 と な る

こ とは避 け られ な い と思 われ た。 そ の間 、 イギ リス の伝 統 的 な当事 者 対 立 裁判

Csユ

組 織(adversarialsystem)を 利 用 し、 勅 選 弁 護 士 ・非 勅 選 弁 護 士 ・事 務 弁 護 士 ・専 門 家 の 証 人 な ど を 活 用 して 審 査 を 行 い 、 単 一 資 格 制 度 の 下 で の 契 約 が 不

C10コ

当 で反 競 争 的(anti‑competitive)な もの と な るのか 否 か 、 また500頁 に も及

ぶ証 券 取 引所 の規 則 集 が 異常 な体 系 で あ るのか 否 か を決 定す べ きで あ ると、 私

は指 摘 した。 遅 き に失 した が 、後 日政 府 は この意 見 を共 有 して 、公 正 取 引 庁 の

感触 を探 り、秘 密 裏 に交 渉 を 開始 した。 公 正 取 引 庁 に と って は あ る程 度 無 念 さ

が残 るも ので あ った で あ ろ う(こ の審判 はか つ て ない も っと も大 き な事 件 で あ っ

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た と い え よ う)。 結 局 、 こ の 交 渉 は1983年7月 の 通 商 大 臣 に よ る 議 会 声 明 に っ

C11コ

なが り、 証 券 取 引所 理事 会 が通 商 大 臣 と イ ング ラ ン ド銀 行 総 裁 の 意 向 どお りに 証 券 取 引 所 規 則 を修 正す る こ とに 同意 し、 そ れ ゆえ 、 そ の後 の立 法 が 今 回 の 訴 訟 を 回避 させ 、 証 券 取 引所 を制 限的 取 引 慣行 法 の適 用 か ら排 除す る こ と と な っ

た ので あ る。

これ に対 して マス メデ ィア がす ぐに反 応 した が 、 そ の 多 くは保 守 党 政 府 が シ テ ィの支 持 者 た ち に臆 病 に も屈服 した とい う もの で あ った。 事 実 、 この こ とは 、 わ が 国 の金 融 サ ー ビス業 界 の組 織 全 体 と証券 市 場 の体 系 をす ぐさ ま変 更 す る結 果 に結 び付 き、 ま さ に水 門 を 開 けた よ う な もの と な った。

この和 解 に従 って、証 券 取 引所 にお い ては 一 定期 間 を か け て段 階 的 に 諸 改 革 を進 め て い くべ きか 、 それ と もそれ ら全 部 を 一挙 に推 し進 め るべ きか が 論 争 の 焦 点 と な った 。 「ビ ッグ ・バ ン」 とい う表 現 が 使 わ れ 始 め た の も、 こめ 論 争 が 最 初 で あ る。 結 局 、 証券 取 引所 は どち らも選 択 しなか った。 証 券 取 引 所 がす ぐ

に実 施 した の は、 会 員権 規 則 の緩 和 、 証 券取 引所 理 事 会 に お け る非 会 員 理 事 の 増 員 及 び 懲 戒 手 続 に 関す る変 更 で あ った 。 そ の他 の こと は 、来 るべ き1986年

10月27日 の 「ビ ッグ ・バ ン ・デ ー」 と記 述(ま た は誤 記 とい うべ き か)さ れ るそ の 日まで 延 期 され る こ と とな った 。

証 券 取 引 所 が まず 実施 した の は、 会 員業 者 が法 人 化 す る こと を許 され る よ う に、 そ の規 則 を緩 和 した こ とで あ る。 同時 に 、外 部 機 関 に よ る会 員 業 者 資 本 の 株 式 所 有 率 は30%ま で 許 可 さ れ た が 、 そ の 後 は 外 部 機 関 の 株 式 所 有 率 が 100%ま で 緩 和 され るで あ ろ う と い う見通 しも発表 した。 結 局 、外 部 機 関 は会 員 業 者 の発 行 済株 式 総 数 の29.9%ま で は す ぐにで も取 得 で き る よ う に な り、

そ れ が 許 可 され た な らば残 りの70,1%も 取得 す る オ プ シ ョンを も った の で あ る。 す なわ ち、 会 員業 者 は 、事 実 上 は外 部 機 関 にす べ て所 有 され る こ と に な っ た が 、 これ が 法 律 上 完 成 す るの は、「ビ ッグ ・バ ン ・デ ー」 ま で待 た な け れ ば な らなか った 。 今 日、 一つ の例 外 を除 いて 、外 部 機 関 に よ って 支配 され て い な い主 要 な会 員 業 者 は存 在 して い な い。 そ して 、 そ の外 部機 関 の ほ とん どが 、 ア メ リカ合 衆 国 の影響 下 に あ る多 国籍 銀行 で あ る。

証 券 取 引 所 が 単̲̲̲̲.格 制 度 を廃 止 す るの は 、 この時 の和 解条 項 に お い て で は

なか った 。 む しろ反 対 に 、和 解 にお い ては 、単 一 資 格制 度 は当面 の 間維 持 され

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るべ きで あ る と認 識 され てお り、 ゆえ に政府 も、利 害 対 立 を防 止 す るた め に同 制 度 を保 護 す る こ とが 価 値 的 で あ る と考 え て いた 。 そ こで 、証 券 取 引 所 に 関 す る議 論 に耳 を傾 けた と ころ、単̲̲̲.格 制度 は記憶 の ない 時代 か ら存 在 した とか 、 同制 度 は公 共 的 な証 券 取 引 所 が 投 資 者 の 保 護 のた め に存 在 す る とい うよ う な意 見 もみ られ た 。 もち ろ ん 、実 際 に マー ケ ッ ト ・メ イキ ングの ジ ョバ ー を保 護 し 始 め た の は 、20世 紀 に な って か らで あ る。 証 券 取 引 所 に お い て は 、 和 解 の 条

C12]

件 と な って い た 最 低 固定 手 数 料(fixedminimumcommissions)の 廃 止 の 後 に、 単 一資格 制 度 が生 き残 る こ とはで き な い と常 に議 論 され て いた 。 した が っ て 、 固 定 手 数 料 が 「ビ ッグ ・バ ン ・デ ー」 に廃 止 され た な らば 、単 一 資 格 制 度 も廃 止 され るで あ ろ う と発 表 して いた 。 国際 的 な取 引 を除 き、単 一 資 格 制 度 が 存 続 す るの は 、「ビ ッグ ・バ ン ・デ ー」 まで と考 え られ て いた 。 ジ ョバ ー は 統 廃 合 が 行 わ れ 、 そ の数 がだ んだ ん少 な くな って いた の で 、衰 退 した業 界 と な り っ っ あ った 。 事 実 、単 一資 格 制 度 は 、 ア メ リカ合 衆 国 の 専 門家 の見 方 で は 「反 競 争 的 」 な も の とみ られ て いた 。 証 券 取 引 所 が 廃 止す る こ とを決 定 しなか った とす れ ば、 単0資 格 制度 は、 お そ らくも っと早 い うち に消滅 して いた で あ ろ う。

1)こ の こ と は 、1984年 制 限 的 取 引 慣 行 法(証 券 取 引 所 編)に よ っ て 行 わ れ た 。 現 在 、 1986年 金 融 サ ー ビ ス 法(FinancialServicesActfir・)が 同 法 を 廃 止 し 、 そ の 機 能 を 代 替 し て い る 。

訳 注

[1]周 知 の よ うに、「ビ ッグ ・バ ン」 とい う言葉 は、20世 紀 前半 に、 ベ ルギー の天文 学 者 ル メー トル とロシアの物理 学者 ガモ フが 中心 とな って打 ち立 てた定 常宇宙 論 に対 抗 す る概念 と しての天文学 上 の用語 で あ り、最 初宇宙 はきわ め て高湿 で高密度 に凝 集 し た物 質で あ ったが 、 その後大 爆発 が起 きて膨 張 を始 めた とす る理論 で あ るが(『 現 代 用語 の基礎 知識2002』<自 由国 民社>921頁 〉、 この用 語 を金融界 の大 改革 に応用 した もので あ る。す なわ ち、金 融 界 にお け る 「ビ ッグ ・バ ン」 とは、1986年10月 にイ ギ リスで行 われ た金 融 ・証券 制度 の歴 史 的 な大 改 革 を指 す 。 その後 、1986年 か ら1989 年 に か け て フ ラ ンス で 行 わ れ た 証 券 市 場 ・制 度 の改 革 を 「プ テ ィ ・バ ン」 と 、1987 年 以 降 に カナ ダで行 われ た金 融 改 革 を 「リ トル ・バ ン」 と、2001年 まで に行 われ た

日本 の金 融制度 改革 を 「日本版 ビ ッグ ・バ ン」 と通称 す るよう になる。 いずれ にせ よ、

一 連の世 界的 な金融制度 ない し証券市場 に関 す る大改 革の起点 とな った のが、 イギ リ ス の 「ビッグ ・バ ン」 で あ った 。

[2]「 シテ ィ」 とは、地 理的 には ロ ン ドンの 旧市 部 の ほぼ1マ イル四方 の地域 を指 し、

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イ ギ リス の 金 融 ・商 業 の 中 心 地 区 を い う が(『 新 英 和 辞 典 』 〈研 究 社 ・1960年>311 頁)、 ガ ウ ア ー 教 授 の よ う に 、 「シ テ ィ 」 を も っ て 土 地 を 指 さ ず に 、 「イ ギ リ ス の 金 融

サ ー ビ ス 業 界 」 と 同 意 義 で 使 用 す る こ と も 多 い 。

[3]グ ラ ス ・ス テ ィ ー ガ ル 銀 行 改 革 法(Glass‑SteagallBankingReformAct)と 通 称 さ れ て い る 。1929年 の ア メ リ カ合 衆 国 に お け る 大 恐 慌 に 対 す る 一 連 の ニ ュ ー デ ィ ー ル 政 策 の 一 環 と し て 制 定 さ れ た 銀 行 法 くBankingAct1933)に 提 案 議 員 の 名 前 を っ け た 呼 び 名 で あ る 。 本 法 は 、 ① 連 邦 法 銀 行 及 び 連 邦 準 備 制 度 加 盟 銀 行 に よ る 証 券 引 受 の 原 則 禁 止 ・持 分 証 券 の 取 得 の 禁 止 、 ② 連 邦 準 備 銀 行 の 関 係 会 社 が 主 と し て 引 受 等 の 証 券 業 務 を 行 う こ と の 禁 止(い わ ゆ る 銀 証 分 離)、 ③ 証 券 会 社 に よ る 預 金 受 入 の 禁 止 、 ④ 連 邦 準 備 制 度 加 盟 銀 行 と 主 と し て 引 受 等 の 証 券 業 務 を 行 う 会 社 と の 間 の 役 員 ・従 業 員 の 兼 任 禁 止 の4項 目 か ら成 る(田 中 英 夫 編 『英 米 法 辞 典 』 〈東 京 大 学 出 版 会 ・1991年>381頁 、 鴻 常 夫=北 沢 正 啓 『英 米 商 事 法 辞 典[新 版]』 〈商 事 法 務 研 究 会 ・1998年>428頁 参 照)。

[4]ロ ン ドン 証 券 取 引 所(LSE)に お い て は 、 古 く よ り単 一 資 格 制 度(singlecapaci七y) を 採 用 し て い た 。 す な わ ち 、LSEの 会 員 は ブ ロ ー カ ー(broker)と ジ ョバ ー(jobber) に 厳 格 に 分 離 さ れ 、 両 者 を 兼 営 す る こ と は 許 さ れ な か っ た の で あ る 。 ブ ロ ー カ ー と は 、 他 人 の 委 託 を 受 け て そ の 代 理 人 と し て 他 人 勘 定 で 証 券 の 売 買 を 行 う 委 託 売 買 業 務 で あ

り 、 ジ ョバ ー と は 、 自 らが 自 己 勘 定 で 証 券 売 買 の 当 事 者 と な る 自 己 売 買 業 務 で あ る 。 こ の よ う な 単 一 資 格 制 度 の 下 で 、 ブ ロ ー カ ー と ジ ョバ ー が 行 う 取 引 の 機 構 は 、 ジ ョ ビ ン グ ・シ ス テ ム(}obbingsystem)と 呼 ば れ 、 こ の 職 能 分 化 は 他 の 証 券 取 引 所 に 見 られ な いLSEの 顕 著 な 特 徴 と し て 注 目 さ れ て い た 。

1986年 の ビ ッ グ ・バ ン に よ り 、 こ の 単 一 資 格 制 度 に 終 止 符 が 打 た れ た 。 理 由 は 、 こ の よ う な 古 い 体 質 、 す な わ ち 閉 鎖 的 な 会 員 制 度 、 証 券 業 者 の 小 さ な ス ケ ー ル と い う 状 態 で は 、 国 際 競 争 力 の 低 下 は 避 け られ な い と 判 断 さ れ た た め で あ る 。 ビ ッ グ ・バ ン 後 、 ジ ョバ ー は ブ ロ ー カ ー 業 務 も行 え る よ う に な り 、 他 方 ブ ロ ー カ ー も 自 己 勘 定 に 基 づ く デ ィー ラ ー 業 務 を 行 え る こ と と な り 、 両 者 の 職 能 区 分 は 解 消 さ れ た(W.A.ト ー マ ス 著 ・飯 田 隆e稲 富 信 博=小 林 嚢 治 訳 『イ ギ リ ス の 証 券 市 場 』 〈東 洋 経 済 新 報 社 ・ 1991年>24頁 以 下 、 稲 富 信 博 『イ ギ リ ス 資 本 市 場 の 形 成 と 機 構 』 〈九 州 大 学 出 版 会 ・ 2000年>295頁 以 下 、 河 本 一 郎=大 武 泰 南=神 崎 克 郎 『証 券 取 引 ハ ン ドブ ッ ク(最 新 版)』 〈ダ イ ヤ モ ン ド社 ・1990年>697頁 参 照)。

[5]マ ー チ ャ ン ト ・バ ン ク と は 、19世 紀 初 頭 、 イ ギ リス に お い て 貿 易 商 人(merchant) が 貿 易 手 形 の 引 受 を 行 う に 伴 い 、 銀 行 家(banker)と な っ て い っ た こ と に 起 源 が あ

る よ う で あ る 。 そ の 後 、 マ ー チ ャ ン ト ・バ ン ク は 、 時 代 の 変 化 に 適 応 して 、 新 た な 活 動 分 野 を 開 拓 し 、 生 き 残 っ て き て い る 。19世 紀 を 通 じ て 、 イ ギ リ ス の 海 外 投 資 の 担 い 手 と な り 、 そ の 後 は 証 券 発 行 の 引 受 業 務 か ら 会 社 金 融 の ア ドバ イ ザ ー と して の 役 割 に 発 展 し た 。 戦 後 、 イ ギ リ ス の 輸 出 金 融 方 式 を 開 発 した の も 、 ユ ー ロ ・ダ ラ ー 業 務 を ロ ン ドン で 開 発 した の も 、 マ ー チ ャ ン ト ・バ ン ク で あ っ た(『 現 代 用 語 の 基 礎 知 識 2002』 〈自 由 国 民 社>236頁 参 照)。

[6]ユ ー ロ ・マ ー ケ ッ トは 、 地 理 的 に 特 定 の 場 所 を 指 す わ け で は な く、 概 念 的 な 市 場 で

あ り 、 あ る 国 の 通 貨 取 引 が そ の 国 以 外 で 行 わ れ る な ど の 場 合 に 成 立 す る 市 場 で あ る 。

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ユ ー ロ と 言 わ れ る の は 、 ヨ ー ロ ッパ に 起 源 が あ る か ら そ う 表 現 さ れ る だ け で あ り 、 取 引 の 場 所 は ど こ で も よ く 、 ユ ー ロ ・マ ー ケ ッ トに は 国 境 は な い 。 元 々 、 戦 後 の 冷 戦 中 に 、 ア メ リ カ 合 衆 国 に よ る 資 産 凍 結 を 恐 れ た ソ 連 及 び 東 欧 諸 国 が ドル 預 金 を ヨ ー ロ ッ パ の 銀 行 に 預 け 入 れ た の が 始 ま りで あ る 。 そ の 後 、 西 ヨ ー ロ ッパ 各 国 の 経 済 復 興 、 ア メ リ カ 合 衆 国 の 慢 性 的 貿 易 赤 字 ま た は 預 金 金 利 上 限 規 制 、 イ ギ リ ス の ポ ン ド防 衛 の た め の 信 用 規 制 に よ り 多 額 の ドル 預 金 が 有 利 な 運 用 先 を 求 め て 出 来 上 が っ た の が 、 ユ ー ロ ・マ ー ケ ッ トで あ る 。 ユ ー ロ ・マ ー ケ ッ トに は 、 ユ ー ロ ・カ レ ン シ ー 市 場 、 ユ ー ロ ・ ク レジ ッ ト市 場 、 ユm・ ポ ン ド(ユ ー ロ 債)市 場 が あ る(前 掲 『証 券 取 引 ハ ン ドブ ッ ク(最 新 版)』703頁 参 照)。

[7]ア メ リ カ 預 託 証 券(AmericanDepositaryReceipts)と は 、 ア メ リ カ 合 衆 国 に お い て 外 国 株 式 の 現 株 の 代 わ り に 売 買 さ れ る 代 替 的 証 券 で あ る 。1927年 に 、 モ ル ガ ン ・ ギ ャ ラ ン テ ィ ・ トラ ス トに よ り 考 案 さ れ た 。 す な わ ち 、 現 株 は 母 国 の 銀 行 に 預 け 、 そ れ に 対 応 す る ア メ リ カ 合 衆 国 の 銀 行 がADRを 発 行 し て 、 ア メ リ カ合 衆 国 の 市 場 で の 売 買 を 可 能 に す る と い う 制 度 で あ る 。 日本 か ら のADRの 第 一 号 は ソ ニ ー で あ る が 、 イ ギ リ ス の 企 業 の 株 式 の 多 く も ア メ リ カ 合 衆 国 に お い て 売 買 さ れ る よ う に な っ た 。 ADRが 「イ ギ リ ス 市 場 の 分 裂 」 を 招 い た と い わ れ る(代 田 純 「機 関 化 傾 向 と 取 引 所 改 革 一 ビ ッ グ ・バ ン の 意 味 す る も の 一 」 証 券 研 究109巻 く1994年>207頁 以 下 参 照)。

[8コ イ ギ リ ス に お い て は 、 カ ル テ ル 、 再 販 売 価 格 維 持 等 の よ う な取 引 を 制 限 す る い わ ゆ る独 占 禁 止 関 連 の 協 定 や 行 為 が あ り 、 こ れ が 公 益 に 反 す る と 判 断 さ れ る 場 合 、 公 正 取 引 庁 長 官 が そ の 案 件 を 制 限 的 取 引 慣 行 審 判 所 に 付 託 す る こ と と な っ て い る 。 同 審 判 所 が か か る 協 定 等 を 違 法 と 判 断 した 場 合 に は 、 審 判 所 の 判 決 に よ り そ の 協 定 等 の 実 施 が 禁 止 さ れ る(前 掲 『英 米 商 事 法 辞 典[新 版]』288、818頁 参 照)。 本 文 に あ る よ う に 、

ロ ン ド ン証 券 取 引 所 諸 規 則 が 競 争 制 限 に 当 た る の で は な い か と い う 疑 い に よ り 、 公 正 取 引 庁 長 官 が 制 限 的 取 引 慣 行 審 判 所 に そ れ を 付 託 した の で あ る 。

[9]ガ ウ ア ー 教 授 は"adversarialsystem"と 表 現 し た が 、 通 常"adversarysystem"

と い う こ と が 多 い 。 「当 事 者 対 立 主 義 」 と か 「当 事 者 対 抗 主 義 」 と 訳 す 。16世 紀 ま で イ ギ リス を 除 く ヨ ー ロ ッパ で 一 般 化 し て い た 糺 問 主 義(inquisitorialsystem)、 す な わ ち 裁 判 官 の 職 権 に よ り 訴 訟 手 続 き が 開 始 さ れ 、 裁 判 官 が 職 権 に よ り 犯 人 ・証 拠 ・証 人 を 捜 査 ・糺 問 ・裁 判 す る 組 織 と 対 置 さ れ る 概 念 で あ る。"adversarysystem"は 、 対 立 す る 両 当 事 者 が そ れ ぞ れ 自 己 に 有 利 な 法 律 上 ・事 実 上 の 主 張 及 び 証 拠 を 出 し合 っ た 上 で 、 中 立 の 第 三 者 が 決 定 す る 方 式 を い い 、 イ ギ リ ス 法 の 裁 判 組 織 の 大 き な 特 徴 を

なす(Black'sLaWDictionary,6thed.,P53,前 掲 『英 米 法 辞 典 』31、454頁)。

[10]公 正 取 引 な い しは 独 占 禁 止 の 観 点 に 立 て ば 、 企 業 の 行 う 行 為 が 競 争 を 制 限 す る こ と と な る よ う な 場 合 、 例 え ば カ ル テ ル 、 排 他 条 件 付 取 引 、 不 当 廉 売 な ど の 「反 競 争 的 」

(anti‑competitive)な 場 合 に 法 規 制 の 対 象 と な る(実 方 謙 二 『独 占 禁 止 法 〔第3 版 〕』 〈有 斐 閣 ・1995年>1〜2頁 参 照)。

[11]イ ン グ ラ ン ド銀 行(BankofEngland)は 、1689‑97年 の 対 仏 戦 争 の 財 政 的 基 盤

を 固 め る た め に 、1646年 イ ン グ ラ ン ド銀 行 法(BankofE皿glandAct1646)に よ っ

て 設 立 さ れ た 。1946年 に 国 が 資 本 株 式 を 買 い 取 り 、 以 後 、 イ ン グ ラ ン ド銀 行 は 銀 行

(9)

監督権 限 を有す るほか 、金 融 ・証 券市場 に規制 を及 ぼす よ うに な り、 イギ リスの中 央 銀行 と してその機能 を果 た してい る。"BankingAct1979"に よ り、 イ ング ラ ン ド銀 行 の証 券 取 引規 制権 限 は強化 され た(前 掲 『英 米 商 事法 辞 典 〔 新 版 コ』98頁 、前 掲

『 英 米法 辞典』88頁)。

[12]ロ ン ドン証券 取 引所 の原 型 は、20世 紀 初頭 にす で に形成 され て いた。 単 一 資格 制

度 、会員 制 と市 場集 中、 そ して最 低固定 手数料 が その エ ッセ ンスで あ る。 これ らは三

位 一体的 な関係 にあ った と評 され る。 こう した諸制 度 は、個 人投 資者が 主流 だ った 時

代 には適合 したが、機 関投資者の時代 に なると、次第 に不適合 な面 が 目立 ち始 め てい っ

た。中 で も、最 低 固定 手数料 につ い ては、元 々市場 集 中 と関連 す るもので あ った(代

田 ・前掲 「 機 関化傾 向 と取 引所 改革」199頁 以下 参照)。 「ビ ッグ ・バ ン」 に よ り、最

低 固定手 数料 も含 めた これ らの諸制 度 はすべ て改革 され てい く ことにな る。

参照

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