学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2016 年 6 月 22 日(水)
報告番号:甲 第 1699 号 氏名:西山 遼太
論文審査
担当者 主査 教授 近津 大地 印
副査 教授 塚原 清彰 印
副査 教授 小西 眞人 印 審査論文の題目:Identification and functional analysis of choline transporter in tongue cancer:
A novel molecular target for tongue cancer therapy
(舌癌におけるコリントランスポーターの同定と機能解析:舌癌に対する新規の治療法)
著 者:Ryohta Nishiyama, Fumiaki Nagashima, Beniko Iwao, Kana Inoue, Arisa Midori, Yuiko Kawai, Tsuyoshi Yamanaka, Hiroyuki Uchino, Masato Inazu
掲載誌:Journal of Pharmacological Sciences, doi: 10.1016/j.jphs.2016.04.022.
論文要旨:
ヒト舌ガン細胞株である HSC-3 を用いて、コリン取り込みの分子的および機能的特性を調べ、さらにコ リン取り込みの阻害とアポトーシスによる細胞死の間の相関関係について検討した。その結果、リアル タイム PCR によりコリントランスポーターの mRNA は CTL1 と CTL2 が発現していることが確認された。ウ エスタンブロット法および免疫染色では CTL1 と CTL2 の両方のたんぱく質が HSC-3 細胞で発現しており、
それぞれ細胞膜及びミトコンドリアに位置していた。コリンの取り込みはプロトン(H+)との交換輸送で あり、Na+フリーの環境下でコリン取り込みが増強した。コリン取り込みはコリンアナログである HC-3 によって阻害され、さらに種々のカチオン性薬物によっても阻害された。そして細胞外培地のアルカリ 化により有意に増加し、酸性化によって減少した。HSC-3 細胞におけるコリン輸送システムは、いくつ かの薬理学的および機能的特性に関して CTL1 に似ていた。コリン取り込み阻害薬およびコリン欠乏状態 では細胞の生存率が低下し、caspase-3/7 活性が増加した。細胞外のコリンは主に CTL1 を介して輸送さ れ、カチオン系薬剤による CTL1 の機能阻害は、アポトーシスによる細胞死を促進すると考えられた。さ らに、CTL2 はミトコンドリアにおけるコリン酸化の制御に関与しており、その機能は、エピジェネティ ックなメカニズムに関与が示唆され、また、CTL2 の機能阻害もまたアポトーシスによる細胞死を促進す ると考えられた。
審査過程:
1. 本研究の背景、目的、意義に関する的確な説明がなされた。
2. 本研究は適切な研究計画のもとに行われた。
5. 舌扁平上皮癌細胞株 HSC-3 培養実験系について質疑応答がなされた。
4. カチオン系薬剤による阻害実験で、HSC-3 のアポトーシス・ネクローシスの判別についての質疑応答 がなされた。
5. 本研究結果を踏まえた今後の展望が述べられた。
価値判定:
ヒト扁平上皮癌の細胞株 HSC-3 培養実験系において、細胞膜およびミトコンドリアに存在するコリント ランスポーターたんぱく質である CTL1 および CTL2 の機能を阻害することで、アポトーシスによる細胞 死を促進することが解明された。今後、舌扁平上皮癌治療のための新しい治療法になる可能性があり、
その臨床的意義は極めて高い。よって学位論文としての価値を認める。