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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

1 研究の目的

植物が示す環境応答の一つに、地上部が光の方向に偏差成長する光屈性反応がある。こ の反応は植物が光の方向を何らかの形で感受し、植物ホルモンの一つであるオーキシン

(IAA) の偏差分布を形成し、IAA含有量が多い非照射側の組織が伸長することで生じると考

えられている。しかし、光受容から IAAの偏差分布形成、屈性までの詳細な分子機構は明 らかにされていない。この光屈性形成機構の解明を困難にしている原因の一つに、光屈性 反応様式の多様性があげられる。現在、地上部の光屈性反応は植物が受容する光量に従っ て三つの反応、弱青色光パルス照射によって誘導される一次正光屈性、中程度の光照射で の不屈性、強青色光連続照射で誘導される二次正光屈性に分けられている。これらの反応 の初期応答は、青色光受容体型キナーゼである phototropin1 (phot1) の青色光受容によるキ ナーゼ活性の変化と考えられている。実際、phot1は二次正光屈性反応を誘導する強青色光 連続照射によって自己リン酸化し活性化することが報告されている。しかし、一次正光屈 性を誘導する弱青色光パルス照射でのphot1 のリン酸化状態の変化についての報告はない。

本研究は、トウモロコシ幼葉鞘の一次正光屈性形成機構の解明を目的に遂行された。

2 研究の方法と結果

本研究では始めに、青色光受容に必須なトウモロコシの青色光受容体遺伝子についてデ ータベースサーチを行い、既知のZmPHOT1に加えて、これまで報告の無かったZmPHOT2 を見出した。定量PCRによる解析から、幼葉鞘にはZmPHOT1、幼葉にはZmPHOT2がそれ ぞれ高発現していることを明らかにした。また、抗イネphot1抗体を用いたSDS-PAGE/ウエ スタンブロッティングにより、Zmphot1タンパク質がZmPHOT1のmRNAと同様に幼葉鞘 に多く存在することを明らかにした。さらに、SDS-PAGE/ウエスタンブロッティングにより、

Zmphot1 のリン酸化状態に対する弱青色光パルス照射および強青色光連続照射の影響を調

べた結果、一次正光屈性を誘導する弱青色光パルス照射による明確な変化は観察できなか った。一方、二次正光屈性を誘導する強青色光連続照射による Zmphot1 のバンドシフトが 観察され、そのバンドシフトはλ-フォスファターゼ処理によって観察されなくなった。こ れらの結果から、強青色光連続照射によって Zmphot1 のリン酸化レベルが上昇すること、

および弱青色光パルス照射による Zmphot1 のリン酸化状態の変化がごくわずかあることが 示唆された。より詳細にZmphot1 のリン酸化状態の変化を調べるために、リン酸化プロテ オーム解析を幼葉鞘先端0-3 mmを材料として進めた。網羅的なリン酸化プロテオーム解析 では、弱青色光パルス照射によってリン酸化状態が明らかに変化するタンパク質は検出さ

(2)

れなかった。そこで、より検出感度の高いSelected reaction monitoring によって、Zmphot1 由来のリン酸化ペプチドを選択的に解析した結果、Zmphot1のSer291およびSer376のリン 酸化レベルが弱青色光パルス照射によって、幼葉鞘の照射側半分で非照射側半分よりも高 くなることが示された。続いて、これらの弱青色光パルス照射によって上昇するリン酸化 の一次正光屈性への関与を明らかにするために、シロイヌナズナの phot1phot2 欠損変異体 に野生型ZmPHOT1遺伝子、リン酸化部位であるSerをAlaに置換した変異型ZmPHOT1遺 伝子をそれぞれ導入し形質転換植物体を作出した。シロイヌナズナ phot1phot2 欠損変異体 は一次正光屈性や二次正光屈性、葉柄の角度、葉緑体集合運動、葉の展開、気孔の開閉な どのphotが関わる青色光応答反応が失われている。野生型ZmPHOT1遺伝子を導入した形 質転換植物体ではそれら青色光応答反応が回復することが確認された。一方、変異型

ZmPHOT1遺伝子を導入した形質転換体では一次正光屈性は回復しなかった。よって、弱青

色光パルス照射によって誘導される Zmphot1 のリン酸化は一次正光屈性に関与している可 能性が示された。変異型ZmPHOT1を導入した形質転換体の他の表現型も観察したところ、

二次正光屈性、葉柄の角度、葉緑体集合運動は回復していたが葉の展開と気孔の開閉は回 復していなかった。以上の結果から、青色光応答に応じて必要とされる Zmphot1 のリン酸 化部位はその生理反応により異なることが示唆された。

3 審査の結果

本研究において、トウモロコシ幼葉鞘の一次正光屈性において Zmphot1 が働く可能性が 示された。実際に、一次正光屈性を誘導する弱青色光パルス照射によって Zmphot1 がリン 酸化され、そのリン酸化レベルが幼葉鞘の照射側半分で非照射側半分よりも高くなること が示された。さらに、形質転換シロイヌナズナを用いた研究から、そのリン酸化がシロイ ヌナズナの一次正光屈性に一次正光屈性に関与している可能性が示された。加えて、他の 表現型観察から青色光応答に応じて必要とされる Zmphot1 のリン酸化部位はその生理反応 により異なることが示唆された。以上の成果は、植物生理学上、100年以上にわたり研究さ れ続けている光屈性形成機構に対して新たな視点・知見を与えるものである。これらの研 究の主要部分は、すでに国際的な学術雑誌に発表され、高い評価を得ている。よって、博 士(理学)の学位に十分値するものと判定した。

4 最終試験の結果

本学の学位規定にしたがって、試験および試問を行った。公開の席上で論文発表を行い、

専攻教員による質疑応答をもって試験にあてた。また論文審査委員が本論文および関連分

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野について試験を行った。その結果、専門科目および外国語について十分な学力があるこ とを認め、合格と判定した。

参照

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