• 検索結果がありません。

雑誌名 国立民族学博物館研究報告別冊

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "雑誌名 国立民族学博物館研究報告別冊"

Copied!
23
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

接触と変容の諸相 : ポリネシア人口移動と史的構 造論 : 西サモアの事例を中心として

著者 柄木田 康之

雑誌名 国立民族学博物館研究報告別冊

巻 006

ページ 331‑352

発行年 1989‑02‑20

URL http://doi.org/10.15021/00003740

(2)

柄木 田  ポ リ「 ネ シ ア人 口 移 動 と史 的構 造 論

ポ リ ネ シ ア 人 口 移 動 と 史 的 構 造 論       西サモアの事例 を中心として

柄 木 田  康  之*

1.は じめ に

HO人 口移 動 研 究 に お け る史 的構 造 論 皿.西 サ モ アか らニ ュ ー ジー ラ ン ドへ の人 口   移 動 の概 略

IV.ニ ュー ジ ー ラ ン ドにお け る複 層 的 労働 市   場

V.西 サ モ ア社会 の侵 食 と維持 VI.社 会 ・経 済 的地 位 とネ ッ トワ ー ク 田.周 辺社 会 の エ リー ト形 成 皿.結 び にか え て

1.は じ め に

  第 三 世 界 に お け る人 口移 動 は,近 代 化 理 論 で想 定 され る農 村 か ら都市 へ の0回 性 の 移 住(migration)で は な く,最 終 的 には起 点 に戻 って い く 「 還 流 的 人 口移動(circu‑

lation)」 を特 徴 とす る と近 年 指 摘 され て い る[CHAPMAN  and  PRoTHERo  1983]。

還 流 的 入 口移動 は,定 義上,移 動者 と生 家 の社 会 関係 の分 断 を意 味 せ ず,近 代 化 理論 に お いて は 伝統 社 会 か ら近 代 社 会 へ の変 化 の過 程 上 の過 渡 的段 階 を しめ す と捉 え られ て きた[Z肌INSKY  l979]。 しか しな が ら,多 くの 開発 途 上 国 で 還 流 的 人 口移 動 が広 範 かつ 永 続 的 な こ とが あ き らか とな る に つ れて,還 流 的人 口移 動 を 含 め た 人 口移 動 全 体 に対 す る新 た な解 釈 が求 め られ て きて い る。 これ は 同時 に,多 くの 開 発途 上 国 が先 進 諸 国 とは異 な る独 自 の社 会 経 済 的発 展 を遂 げて い る とい う認 識 に も とつ くもの で あ

る。

  従 属発 展 論 は,近 代 化 理論 に お け る 「伝統/近 代 」 と い う非 歴史 的二 元 論 に対 す る ア ンチ ・テ ー ゼ と して 提 出 され,社 会 経 済 発展 の研 究 に関 す る高度 に史 的な 研 究 法 で あ る 。従 属 発 展 理 論 の 基 本概 念 は 中心(core)と 周 辺(periphery)で あ る[(腥IROT and  HaLL  l982]。  ヨ ー ロ ッパ の拡 張 以 降 の資 本 主 義 的 世 界経 済 の動 因 は空 間 的 分 業 の 拡 大 で あ った 。 この 世 界経 済 は高 度 に発 展 した 中心 を生 み 出 した。 しか しな が ら,

中心 は そ の拡 張 の 動 因 とな る余 剰 を引 き出 す周 辺 を必 要 と し,周 辺 社 会 の経 済発 展 を

*鹿 児島大学南太平洋海域研究セ ンタよ

(3)

        犀立民族学博物館研究報告  別紐6号 阻 害 した[FRANK  l969]。 同時 に資 本 主 義 的世 界 経 済 の 中心 の変 化 が,周 辺 社 会 を も含 ん だ全 体 シス テ ムの 動 態 を規 定 し た と さ れ る[WALLERSTEIN  l974;CHASE‑

DuNN  and  RuBINsoN  l977]。  この 枠組 み に お いて は 第 三 世 界 に お け る移 動 者 は 搾 取 され た労 働者 と見 な され る。

  太 平洋 地域 で は島 嗅,さ らに は 国家 を越 え た広 範 な 社 会 的 ネ ッ トワ ー クが親 族 関 係 に も とづ き成 立 して い る こ とが指 摘 され て い る。 この よ うな ネ ッ トワ ー クは都 市 化 と と もに進 展 して きた もの で あ り,単 な る伝 統 的 紐 帯 以 上 の もの で あ る。還 流 的 人 口移 動 は この よ うな ネ ッ トワ ー クを基 礎 づ け る人 口移 動 パ タ ー ンで あ る。 本論 は,既 存 の 文献 資 料 を も とに,ポ リネ シァか らニ ュー ジー ラ ン ドへ の還 流 的人 口移 動 を含 め た 人 口移 動 を 考 察 し,従 属 発 展 論 を も含 め た史 的 構 造論 の有 効 性 と限 界 を考 察 しよ う とす る もの で あ る。

皿.人 口移動 研 究 にお け る史 的構 造 論

  史 的 構 造 論(historical  structuralism)は 従 属 発 展 論(dependency  theory)と そ の 発 展 形 た る 世 界 シ ス テ ム論(world  system  theory),お よ び フ ラ ン ス 構 造 マ ル ク ス 主 義 に 端 を 発 す る生 産 様 式 の 結 節(articulation  of  modes  of production)を 重 視 す る 立 場 に 二 分 し う る 。 こ の 枠 組 み で は,社 会 の 伝 統 ・近 代 部 門 は 発 展 段 階 で は な く, 単 一 の シ ス テ 云 を 構 成 す る 部 分 と して 理 解 さ れ る 。 こ れ ら の 研 究 は 伝 統 部 門 の 近 代 部 門 へ の 変 換 で は な く,複 数 の 部 門 を 統 合 す る シ ス テ ム 全 体 の 再 生 産 ・変 換 を 問 題 と す る 。 し た が っ て,従 属 発 展 論 は,人 口 移 動 研 究 に お い て 顕 著 な ミ ク ロ経 済 学 的 モ デ ル の 限 界 を 克 服 す る 利 点 も持 つ 。 人 口 移 動 に 関 して 個 人 レ ベ ル で 行 わ れ る コス ト ・ベ ネ フ ィ ッ ト分 析 は諸 資 源 ・経 済 的 機 会 が 空 間 的 に 不 均 等 に分 布 して い る こ と を 前 提 と す る 。 し か し な が ら,こ の 空 間 的 不 均 衡 は,そ れ 自体 が,歴 史 的 な 社 会 経 済 発 展 の 全 体 的 ス タ イ ル に よ っ て 規 定 さ れ て い る。 従 属 発 展 論 の 枠 組 み で は,個 人 レ ベ ル の 意 志 決 定 は,選 択 肢 の 分 布 を 規 定 す る 構 造 の 表 出 に す ぎ な い[AMIN  l974]。 問 題 と さ れ る の は,伝 統 か ら近 代 へ の 斉 一 的 変 換 を 前 提 と せ ず,個 人 の 意 志 決 定 を 規 定 す る 深 層 構 造 の 史 的 発 展 を 明 ら か に す る こ と で あ る 。

  ア ミ ン に よ れ ば,第 三 世 界 に お い て,労 働 力 と 同 等 に可 動 な 資 本 で は な く,人 々 が

都 市 に 移 動 す る こ と は,外 的 経 済 を 利 す る 体 制 の 強 要 を 顕 して い る 。 従 属 発 展 論 は 人

口 移 動 の 過 疎 地 域 に あ た え る 影 響,特 に 周 辺 地 域 か ら の 継 続 的 人 口 流 出 を 重 視 す る 。

こ の 現 象 は 人 口 移 動 に よ る 都 市 と 農 村 の 雇 用 ・労 働 比 の 均 衡 と い う経 済 的 前 提 に 反 す

(4)

柄木 田    ポ リネシア人口移動 と史的構造論

る が,従 属 発 展論 の 枠 組 み で は,農 村 か ら都 市 へ の人 口流 出,国 際 移 民,頭 脳 流 出, 第 一 次 産 品 の 輸 出 は,単 一 の構 造 の 表 出,つ ま り周 辺 地 域 か ら 中心 地域 へ の資 源 の 流

出 と して 理 解 さ れ る。 この結 果,中 心経 済 に支 配 さ れた 周 辺 経済 の余 剰 は 継 続 的 に流 出 し,周 辺 経済 は枯 渇 ・停 滞 す る。

  しか しな が ら,従 属 発 展論 に お け る 中心 と周辺 の二 元 論 自体 は 人 口移 動 に関 す る静 的 な視 角 に停 ま らざ るを え な い。 第一一に従属 発 展 論 に お いて は,周 辺 地 域 自体 が なぜ 存 続 しう るの か が 明 らか で はな い。 逆 に 周辺 地域 自 体 が存 続 し経済 的 に発 展 して い る

の は経 験 的 事 実 で あ る。 さ らに従 属 発 展 論 の二 元 論 は構 造 変 化 の 条件 を特 定 しえ な い。

中心 ・周 辺 は両 極 と して の み存 在 す るか らで あ る。 世 界 シス テ ム論 の枠 組 み で は,労 働 移 動 は 中心 と周 辺 間 の二 者 関 係 の 過 程 と してで はな く,単 一 の世 界 シス テ ムの 内 的 動 態 と して 理 解 さ れ る。世 界 シス テ ム論 の枠 組 み で は,資 本 主 義 的世 界 経 済 にお い て,

中心 ・周辺 な どの 下 位 シス テ ムは 全 体 シス テ ム 内で 移 行 し う るが,他 方 全 体 シス テ ム は,そ の 基本 的秩 序 を 変 え る こ とな く,常 に維 持 され る と理 解 さ れ る。 言 い換 え る と, 世 界 シス テ ム の構 成単 位 は周 辺 か ら,半 周 辺 あ る いは 中心 に移 動 しう るが,中 心 一 周 辺 関係 は維 持 され るの で あ る[CHAsE‑DuNN  and  RuBINsoN  l977]。

  ポ ル テ ス に よれ ば,資 本 主 義 的 世界 シス テ ムの 発 展 に関 す る人 口移動 の重 要 性 は, 二 つ の 関連 した 特 質 にあ る[PORTES  1978]。 つ ま り安 価 な 労 働力 資 源 と して の 移動 者 と,資 本 主 義 の 浸透 とい う拘束 下 に お け る,周 辺 社 会 の搾 取 され た 階級 の戦 略 と し て の人 口移 動 と い う,二 つ の 側 面 で あ る。 周 辺 地 域 の 労 働者 階 級 は,し ば しば空 間 上 不均 等 に分 布 した経 済 的機 会 を 利 用 しよ う とす るが,構 造 的 レベル で は,中 心 と周 辺 の経 済 関 係 が,移 動者 に その 労 働力 を必 要 と され る地 域 で最 も安 価 に売 ら しめ る よ う 条 件づ け る ので あ る。 従 属 発 展論 は租 税 ・強 制 労 働 ・商 品経 済 の浸透 な ど が人 口移 動 の 意志 決 定 に与 え る構 造 的 拘束 を 明 らか に して きて お り,そ れ 自体 は構 造 決定 論 の 立 場 を と るが,あ る意 味で は人 口 移動 研 究 に対 す る ミク ロお よ びマ ク ロ的視 点 の統 合 の 可 能 性 を提 示 して い るの で あ る[WoOD  1981]。

  ポル テ ス によ れ ば,人 口移 動 は単 一 の 世 界 シス テ ム に組 み込 ま れ るよ うにな った 労 働 力 の 利 用 が 問題 で あ り,こ の利 用 は以 下 の 四 つ の条 件 に も とつ く。 第 一 に労 働 移動 は地 域 間 の 経済 的利 点 の比 較 を通 じて 生 ず る の で は な く,世 界 シス テ ム の 中心 地 域 の 経 済 ・政 治 制度 の周 辺 地 域 へ の浸 透 に よ って生 ず る。 第 二 に資本 主 義 経 済 の 世 界 規模 で の 漸 進 的 統合 に よ り,周 辺 地 域 の 支配 階級 が労 働 力 の解 放 を よ り利 益 と見 る状 況 が 生 まれ て い る。 第 三 に移 動者 を安 価 な 労 働力 と して利 用す るた め の移 動 者 の 地 位 の操 作 が可 能 で あ る こと。 第 四 に移 動 者 が,生 存 あ る い は経 済 的 利 益 の確 保 の 手 毅 と して,

333

(5)

        国立民族学博物館研究報告  別冊6号 自 ら相 互扶 助 の ネ ッ トワー ク を形 成 し,そ れ に依 存 しうる こ とで あ る。

  他方,フ ラ ンス構 造 マ ル ク ス主 義者 は単 一 の世 界 シス テ ム よ りも個 々の社 会 編 成 体 か らの視 点 を 強調 す る。 メイ ヤ ス ーに よれ ば,重 商 主 義 ・資本 主 義 的 制 度 の 周辺 社 会 へ の浸 透 は失 敗 す る か,非 資 本 主 義 社 会 を根 本 的 に変革 せ ざ るを え な い。 と ころ が, いわ ゆ る 「 農 民 の保 守 性 」 で は な く,む しろ周辺 資 本 主 義 の特 徴 自体 が,非 資 本 主 義 社 会 編 成 体 の維 持 の 鍵 とさ れ る の で あ る[MEILLASSOUX  l  972,1977]。 生 産 の前 提 と して 生 命 の再 生 産 を 前提 とす る こ とで 特 徴 づ け られ る リネ ー ジ生 産 様 式 は,包 括 的経 済 ・社 会 ・人 口体 系 を 構 成 し,社 会 保 証 体 系 と して機 能 し うる。 メ イ ヤス ーは,こ の リネ ー ジ生 産様 式 が 社会 保証 機 能 を果 た しう る ことが,都 市 の複 層 的労 働 市 場 と還 流 的人 口移動 の共 生 関 係 の 前提 条件 で あ る とす る。租 税 ・商 品経 済 ・強 制 労 働 の た め に, 周 辺 地 域 の 人 々は賃 金 労 働 を 余 儀 な くさ れ るが,非 公 式 的 経済 部 門 に参 与 す るた あ, 雇 用 の み か らは完 全 な 生 計 を 維 持 で きな い。 この た め彼 らは,周 期 的 に故 郷 に戻 り・

非 資本 主 義 的 生 産様 式 に も参 与 す る よ う仕 向 け られ る・ こ こで 労 働 者 は 自 らの労 働力 を 維持 す る賃 金 を雇 用者 か らえ るが,家 族 の再 生 産 と して の 労 働 力 の再 生 産 は親 族 集 団 な ど に委 ね られ る ので あ る。 労 働 力 の再 生 産 まで を視 点 に含 め れ ば,安 価 な労 働 力 は,賃 金 労働 者 ばか りで はな く,そ の 親 族 集 団 を も含 め た二 重 の 搾 取 に依 存 す る ので あ る。 した が って,賃 金 労 働 者 ばか りで な く,周 辺資 本 主 義 に と って も,移 動 者 の家 族 ・村 落 共 同 体 と の関係 の維 持 は必 須 事 項 で あ る。 この よ うな資 本 主 義 的 経 済 へ の併 合 の た め,農 村 共 同 体 は 同時 に侵 食 ・維 持 され,資 本 主 義 にス ム ー ズ に移行 せ ず,長 期 にわ た る危 機 を経 験 す るので あ る。 この よ うな構 造 は 一 つ の社 会 編 成 体 にお い て 資 本 主 義 ・非 資 本 主 義 的生 産様 式 が結 節 した 構造 と理 解 され る。

  資 本 主 義 的世 界 シス テ ムの 周 辺 地 域 の 浸透 が周 辺 社 会 に対 して もつ 影 響 は,周 辺 社 会 を 同時 に侵食 し維 持 す る と い う矛 盾 を は らん だ もので あ り,こ の矛 盾 を概 念 化 す

る とい う こと は 史 的 構 造 論 の大 きな 課 題 の一 つ で あ る[BURAWAY  l976;McGEE l982;MEILLASSOUX  1972,1977]。 こ こで 還 流 的 人 口移 動 は,資 本 主 義 の周 辺 社 会 に対 す る浸 透 の 矛盾 と して 現 れ る。 世 界 シス テ ム論 は単 一 の世 界 シス テ ム 内 の 中心 ・ 周 辺 間 の不 等 価 交 換関 係 にそ の 条 件 を求 め た。 メイ ヤ ス ー を筆 頭 とす るフ ラ ンス構 造

マ ル ク ス主 義 者 は,単 一 の世 界 シス テ ム よ り も周 辺 社 会 の多 様 な 社 会 編 成 体 か らの視

角,特 に労 働 過 程 に お け る親 族 集 団 の 搾 取 を 強 調す る。両 者 の間 の論 争 には 激 しい も

の が あ った が,こ こで は 両者 の視 角 は矛 盾 す る もので は な く,補 完 的 な もの で あ る と

述 べ る に留 め て お きた い[FOSTER‑CARTER  l978]。

(6)

極木田  ポリネシア人 口移動 と史的構造論

皿・ 西 サ モ ア か ら ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 人 口 移 動 の 概 略

  西 サ モ アに 関 す るい くつ か の 既 存 の研 究 を 総合 す る と,史 的 構 造 論者 の論 点 が支 持 され る。 つ ま り,移 動 労働 者 を通 しで世 界 シ ス テ ム に組 み込 ま れ た,西 サ モ アの社 会 構 造 は侵 食 され る と 同時 に維 持 され た と考 え られ る。 ポ リネシ ア系 の移 動 労働 者 は, ニ ュー ジー ラ ン ドの 複 層 的 労働 市 場(fragmented  labor  maket)に おい て,そ の社 会 移 動 壷 阻 ま れ た。 ま た西 サ モ ア 側 で は,移 動 労 働 者 か らの 仕 送 りが,西 サ モ アの 既存 の社 会 階層 を維 持 す る よ うに 用 い られ た。西 サ モ ア の移 動 労 働 者 は,親 族 関係 の ネ ッ

トワー クを通 じて ニ ュー ジー ラ ン ドへ の還 流的 移動 労 働 を 行 って い た と考 え られ る。

しか し,親 族 関係 を通 した移 動 労 働 も,複 層 的 労 働市 場 の 特 定 の 層 に 人 々 を編 入 す る とい う意 味 で,既 存 の労 働 市 場 の構 造 を維 持 す る もの で あ った 。 以 上 の諸 点 は,ポ ル

表1‑a  西 サモ ア人 によ る国 際 移動  一 純移 動 一 西 サ モ ア に ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドに お け る 純 移 動

年 おける純移動

(1) (2)        (3)

1964 595 1965 一467 444 1966 一1204 820 1967 一1065 1370 1968 一1372 347 1969 596 1970 1442 1971 1972 1560・            1862

1973 一2238 2047        1829

1974 一4090 3225        3101

1975 一2482 2635        2989

1976 一1193 1214        1718

1977 一2796 336          636

1978 1332 一140          552

1979 371 480

1980 315 741

1981 一2108 1073

1982 283

出 典:(1)Western  Samoa  Quarterly  Statistical  Bulletins           [CONNELL  l983:32]

      (2)New  Zealand  Statistics  of  External  Migration

          l977‑1978,  Table  3,[DouGLAs  l985:419]。 西

          サ モ ア人 は エ ス ニ シ テ ィ ー と して 定 義 さ れ て い る 。

      (3)The  Department  of  Statisticsに よ る未 刊 の 資 料

          [BEDFoRD  ,1981:121]

(7)

表1‑b  西 サ モ ア人 に よ る国 際移 動

国立民族学博物館研究報告  別 冊6号 一 出入 国 一

西    サ    モ    ア    (1) ニ ユ ー ジ ー ラ ン ド  (2)

年 出        国

入    国

総 数 隈 リ 潔 陰 ジ歌 入    国 出    国

1964 1947 1352

1965 9867 10334 2046 1602

1966 9295 10499 2721 1901

1967 11031 12096 3374 2004

1968 9990 11362 2600 2226

1969 15729 2418 1882

1970 15436 3996 2554

1971 4508

1972 5834 4274

1973 15294 17532 6194 4147

1974 19193 23283 9222 5997

1975 19797 22279 8575 5940

1976 18707 19900 8249 4698 7084 5870

1977 20807 23613 10990 4185 4600 4264

1978 25257 26589 12472 4047 4420 4560

1979 22405 22034 9872 6407

1980 39563 39248 25304 8093

1981 43627 45735 31582 8035

1982 39434 39141

出 典:(1)Western  Samoa  Quaterly  Statistical  Bulletins[CoNNELL  l983:32‑33]

    (2}New  Zealand  Statistics  of  External  Migrat三 〇n  l 977‑1978,  Table  3[DouGLAs         l985:419]

テ ス の 述 べ る,世 界 シ ス テ ム の 浸 透,周 辺 社 会 の 支 配 層 に対 す る労 働 移 動 の 利 益,移 動 労 働 者 の 地 位 の 操 作,移 動 労 働 者 の 相 互 扶 助 と い う四 つ の 条 件 を 充 た す も の で あ り, 以 下 で は こ れ らの 諸 点 を 検 討 し た い 。

  し か しな が ら,多 く の 研 究 は ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 国 際 移 民 を 強 調 す る が,移 動 の 流 れ や タ イ プ を 体 系 的 に 区 別 して い な い こ と を 留 意 せ ね ば な ら な い 。 西 サ モ ア の 人 口 移 動 で は,ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 国 際 移 住 が 経 済 的 影 響 の 面 で は 最 も 重 要 で あ る か も

しれ な い が,規 模 の う え で は ア メ リカ ン ・サ モ ア へ の 移 住 が 最 も大 き か っ た 。

  西 サ モ ア か ら の,ま た 西 サ モ ア へ の 国 際 移 動 に 関 す る信 頼 し う る 統 計 を 得 る こ と は

難 し い 。 しか し な が ら,こ れ らの 統 計 は,数 値 上 は 一 貫 しな い が,歴 史 的 資 料 と 矛 盾

し な い 一 定 の 傾 向 を し め す 。 表1は 西 サ モ ア の 西 サ モ ア 人 に よ る 人 口 移 動 の い くつ か

の 統 計 を示 し た も の で あ る 。 こ こ で 明 らか な こ と は,ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド と西 サ モ ア 間

の 人 口 移 動 に お い て は,粗 移 動(grOSS  mOVement)が 純 移 動(net  mOVement)を は る

(8)

柄木田  ポ リネシア人 口移動 と史 的構造論

か に 上 回 っ て い る こ と で あ る 。 つ ま り 西 サ モ ア 人 は 単 に ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ 恒 久 的 に 移 住 して い た の で は な く,両 者 の 間 を 還 流 して い た と 理 解 さ れ る の で あ る 。 ま た 表 は 西 サ モ ア 人 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 移 住 の ピー ク が1974年 前 後 に あ る こ と を 示 して い る。

  1950年 代 後 半 か ら1960年 代 前 半 に か け て,ア メ リ カ ン ・サ モ ア で は,米 国 資 本 の カ ツ オ 缶 産 業 の 最 低 賃 金 制 度 が 高 賃 金 労 働 を 保 証 して い た[SHANKMAN  I976]。 しか し な が ら,ア メ リカ 合 衆 国 内 務 省 は 西 サ モ ア か ら の 移 動 者 が カ ツ オ 産 業 の 要 職 を し め, ア メ リカ ン ・サ モ ア 人 は 失 職,あ る い は ハ ワ イ ・カ ル フ ォ ル ニ ア に 移 住 して い る と 見 な し た 。 ア メ リカ ン ・サ モ ア は,そ の 後,移 動 労 働 者 に 対 す る 排 外 的 な 雇 用 政 策 を 打 ち 出 し,1960年 代 半 ば に は,西 サ モ ア か ら の 移 動 が 減 少 した と さ れ る 。

  1950年 代 後 半 か ら60年 代 前 半 に か け て,ア メ リ カ ン ・サ モ ア へ の 移 住 は 上 下 す る が, 一 方 で ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 移 住 は 着 実 に 上 昇 し た

。 表1が 示 す よ う に,こ の ピ ー ク は1970年 代 半 ば に 見 ら れ る。 後 に 述 べ る よ う に,1974年 に は ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド政 府 は 太 平 洋 島 喚 諸 国 か ら の 移 動 制 限 を 始 め た の で あ る 。 シ ャ ン ク マ ン に よ れ ば,移 動 費 用 と政 府 に よ る 制 限 の た め,ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 移 動 者 は 学 歴 な ど一 定 の 特 徴 を 持 つ 集 団 と な っ た 。 さ ら に 移 動 制 限 の も とで は 親 族 関 係 が 移 動 手 段 と し て 特 に 重 要 と な っ た[SHANKMAN  l976]。 西 サ モ ア 人 は,お も に 経 済 的 理 由 か ら,ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドに 移 住 す る こ と を 好 ん だ と い う。 ア メ リ カ ン ・サ モ ァ は 西 サ モ ア か ら多 く の 移 動 者 を 受 け 入 れ た が,多 額 の 仕 送 り と い う点 で は,ア メ リ カ ン ・サ モ ア は ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド と は 比 較 に な ら な か っ た 。

  ピ リ エ は,西 サ モ ア の 三 つ の 管 区(Aleipata,  Safata,  Palauli)の 農 業 生 産 と 人 口 成 長 の 関 係 に 関 す る 再 調 査 報 告 で,1950年 代 後 半 と1960年 代 前 半 に 人 口 成 長 と 人 口構 造 の 規 定 因 に 変 化 が あ っ た と述 べ て い る[PIRIE  l971]。 人 口 成 長 率,お よ び 人 口構 造(性 ・年 齢)の 変 差 は,50年 代 に は,換 金 作 物 の 発 展 の 地 域 差 に 結 び 付 い て い た 。 しか しな が ら,68年 ま で に は,農 業 生 産 の 変 差 は,あ る 程 度 人 口 構 造 ・成 長 の 変 差 を 説 明 す る も の の,む し ろ 管 区 が 外 部 に い か に 多 くの 成 員 を 持 つ か が 重 要 な 要 素 と成 っ

た 。

  表2は こ の 時 期 の 換 金 作 物 か ら の 現 金 収 入 の 変 化 を 示 して い る 。1955‑56年 の 換 金

作 物 の 生 産 性 は 低 か った が,1967‑68年 に は さ ら に 悪 化 して い る 。1955‑56年 で は

Aleipataが 一 人 当 た り の 収 入 が 最 も 低 か っ た が,1967‑68年 ま で の パ ー セ ン ト上 の

減 少 は 最 も少 な い 。 逆 に,1955‑56年 に0人 当 た り の 収 入 が 最 も 高 か っ たSafataが

1967‑68年 ま で の 時 期 に 最 も痛 手 を 被 っ た 。 こ れ はSafataに お い て 最 も発 展 して い

(9)

表2  輸出用作物か らの現金収入

        国立 民 族 学 博 物 館 研 究 報 告    別 冊6号

1955‑56年 と1967‑68年($W.S.)

Aleipata Safata Palauli

1955‑56 1967‑68 1955‑56  1967‑68 1955‑56 1967‑68

コ ブ ラの一 人 当 た り 収 入 19.30 11.70 10.20      6.26 21.00 7.29 カ カオ の一 人 当 た り 収 入 1.91 0.05 2.48      1.97 7.35 2.32 バ ナナ の一 人 当 た り 収 入 0.27 a27 18.97      0.35 1.87 0.11 一 人 当 た り 収 入 の 小 計 21.48 14.02 31.65      8.58 30.22 9.72

1955‑56年/1967‑68年 間

の一 人 当 た り収入 の変 化 一34 一73 一68

(%)

男 子 労 働 力 の 全 収 入 149.30 87.45 237.55    47.25 203.25 52.83

出 典:[PIRIE  l971:98]

た 換 金 作 物 の 停 滞 が 主 因 で あ っ た こ と に 関 連 し て い る 。

  1956年 か ら1961年 ま で の 時 期 は,急 激 な 人 口 成 長 が 特 徴 で あ り,Aleipataが5.6 パ ー セ ン ト と い う最 も高 い 年 間 上 昇 率 を 示 して い る(表3)。Safataは4.  1パ ー セ ン ト

と最 も 低 い 。 こ れ は,ピ リエ に よ れ ば,バ ナ ナ 生 産 の 後 退 を 反 映 して い る 。 し か し な が ら,1961年 か ら1966年 の 間 に は,Safataの み が 自 然 成 長 率 に 匹 敵 す る 成 長 率 を 維 持 し た 。AleipataとPalauliに お い て は,平 均 年 間 成 長 率 は1・4パ ー セ ン トに ま で 減 少 した 。 つ ま り,か な り の 人 口 流 出 が 生 じた の で あ る。 ピ リ エ は こ れ を コ コ ナ ッ の 生 計 生 産 の 拡 大 に 結 び 付 け て い る 。 さ き に 見 た よ う に,Safataが 換 金 作 物 の 上 で, 最 も損 害 を 被 った か ら で あ る 。 人 口 構 造 の 変 化 は,Aleipataが,男 子 労 働 力18パ ー セ ン トの 流 出 と,最 も 影 響 さ れ て い る こ と を 示 して い る 。SafataとPalauliは 男 子

表31956‑1971年 間 の 人 口 の 変 化

センサス年次  }A珈 司 臨 陣 ㎞li除 管 区

人  口  総 数

1971年(11月) 1966年(9月) 1961年(9月) 1956年(9.月)

4236 3770 3512 2673

6732 6255 5197 4245

6290 5813 5397 4359

17258 15838 14106 11277 年 間 人 口 増 加 率(average  annual%change)

1956‑71年 1961‑66年 1956‑61年 1951‑56年

2.3 1.4 5.6 2.4

1.5 3.7 4.1 3.6

1.6 1.4 4.4 3.5

1.7

2.3

4.6

3.2

出 典:[PIRIE  l 971:98]

(10)

柄木 田   ポ リネシア人 口移動 と史的構造論

労 働 力5パ ー セ ン トの 流 出 と影 響 が少 な い。  ピ リエに よれ ば,Aleipataか らの 継 続 的 な 人 口流 出 は,近 年 の換 金 作 物 の発 展 に関 連 す る ので あ るが,こ れ は 人 口 流 出 を抑 止 す る もの で は な く,逆 に移住 の費 用 を捻 出 す る もの で あ った。 反 対 にSafataは 換 金 作 物 が最 も後 退 した に も関 わ らず,人 口流 出が 最 も少 な い。 した が って,ピ リエは 特 定 の管 区 の 人 口 流 出 の規模 は地 元 の経 済 的 機 会 で はな く,過 去 の移 住者 との関 係 に 依 存 す るよ うに な り、高収 入 は人 口流 出 を 低 下 せ ず,む しろ人 口流 出 の 財 政 的手 段 と な った と述 べ て い る。 ピ リエ の議 論 は,賃 金 ・経 済 的機 会 の差 で は な く,世 界 シス テ ム との統 合 が 人 口流 出 の必 要 条件 で あ る こ とを しめ す事 例 と して解 釈 し うる。

IV.ニ ュ ー ジ0ラ ン ド に お け る 複 層 的 労 働 市 場

  ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 西 サ モ ア 人,さ ら に は ポ リネ シ ァ 人 一 般 の 国 際 移 動 を 可 能 と した 構 造 的 条 件 は,第 二 次 大 戦 以 降 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドの 経 済 発 展 で あ る 。 ギ ブ ソ ン に よ れ ば,1950年 代 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドは,輸 入 代 替 産 業 の 成 長 を 保 護 す る た め に, 関 税 と輸 入 許 可 制 度 を 導 入 した 。1954‑55年 か ら1965‑66年 ま で の 問,製 造 業 全 体 の 成 長 の ほ ぼ26パ ー セ ン トが 輸 入 代 替 産 業 の 成 長 に よ る も の で あ る 。 こ の た め 製 造 業 に お け る雇 用 と 労 働 需 要 が 急 増 した 。

  ポ ル テ ス に よ れ ば,人 口 流 出 が 起 き る に は,雇 用 者 が 移 動 者 の 政 治 的 弱 点 を 操 作 し, 安 価 な 労 働 力 と して 利 用 し う る 条 件 が 存 在 しな け れ ば な ら な い 。 ポ リネ シ ア 人 は こ の 条 件 を 満 た し た と 思 わ れ る 。 当 初,マ オ リ系 住 民 が 、 国 家 の 保 護 の 下 で 拡 張 して い く 産 業 の 労 働 力 を 形 成 し た 。 しか し な が ら,ヨ ー ロ ッパ 系 住 民 と比 較 して,ホ ワ イ ト ・ カ ラ ー 職 の す べ て で マ オ リ系 住 民 は 少 数 派 で あ っ た 。 政 府 に よ って 始 め ら れ た 職 業 訓 練 に も か か わ ら ず,労 働 力 の 分 節 化 が 成 立 した の で あ る。 ポ リネ シ ア 系 労 働 移 民 が 編 入 さ れ た の は,こ の マ オ リ系 住 民 が 既 に 多 数 を 占 め る 労 働 力 階 層 で あ っ た 。

  マ オ リ系 住 民 を 含 め た ポ リネ シ ァ 人 の 職 業 的 特 徴 は,彼 ら が 労 働 市 場 の 非 熟 練 層 を 占 め る よ う に な っ た こ とを 示 し て い る 。 表4は,わ ず か で は あ る が,ポ リネ シア 人 の 職 業 分 布 の 通 時 資 料 を 示 して い る。 男 女 と も,'production  and  related  workers, transport  equipment  operators  and  labourers'と い う 非 熟 練 カ テ ゴ リ ー に,ポ リネ

シ ア 系 労 働 者 を 最 も 多 く見 出 せ る 。

  一 つ の 可 能 性 と して,マ オ リ以 外 の ポ リネ シ ァ 人 の 移 住 は,マ オ リ系 住 民 の ニ ュ ー

ジ ー ラ ン ド労 働 市 場 に お け る 上 昇 移 動 に よ っ て 不 足 し た 非 熟 練 労 働 力 を 充 た した と い

い う る か も し れ な い 。 し か し な が ら,表4は マ オ リ系 労 働 力 の 職 業 的 上 昇 移 動 を 全 く

(11)

        国立民族学博物館研究報告  別 冊6号 表4‑a太 平 洋 諸 島民,マ オ リ,ニ ュー ジー ラ ン ド全体 の男 子 労働 力 にお け る職 業分 布       (%、

       職          業    陣 次 壽翻 マオリ除 体

    Pro飴ssional,  Technical  and  Related  Workers          1976    2.7    4。0  12。1       1981         2.3         2.6       12.1     Administrative  and  Management  Workers          1976    0。2    1.0    4.4       1981        0.3        0.6        5.5

    Clerical  alld  Related  Workers                    ユ976    3.6    3.7    8. l       l981         3.5         3.2         7.4     Sales  Workers                                1976    1.1    2.7    9,0       1981        1.2        1.4      12.5

 

    Service  Workers                              1976    4.0    4.9    5.4

      198ユ         5,3         4.8         5,8     Agricultural,  Animal  Husbandry,  Forest  Workers,    1976    2.6  ユ2.2  12.6   

Fishermen  and  Hunters

      1981      1.9       13.5       13.2     Production  and  Related  Workers                  1976  78.8  66.7  46.6     Transport  Equipment  Operators  and  Labourers

      l981      72.5       62.9      43.9     New  Workers  Seeking  Employment                1976    0.2    0.9    0.4       1981      1.3         2.2         5.2     0ccupation  Inadequately  Defined          1976      6.2      3.5      1.6       1981         2.1         1.5         0.5     Not  Reporting  Any  Occupation          1976      0.4      0.4      0・1       1981         9.2         7.1         2.3

出 典:[GIBsoN  1983:36]

示 して い な い。 労 働 力 全 体 と比 較 して,マ オ リ系 住 民 は や は り非 熟 練 職 にお いて 多 数 派 で,熟 練 職 で 少 数 派 に 停 ま って い る。 全 体 と して の 労 働力 の職 業 構 造 に吸収 され る ので は な く,ポ リネ シア系 の 労 働 力 は ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド経 済 の非 熟 練 ・周 辺 的下 層 を 構 成 した ので あ る。 ク ーは,い くつ か の第 三 世 界 の 都 市 に お い て 同様 の現 象 を報 告 し, 移 動 者 の適 応 を理 解 す るの に,個 人 の 特徴 よ りも経 済 の 全 体 と して の条 件 を研 究 す る こ とを提 唱 して い る[Koo  l978,1984]。

  資本 主 義 経 済 にお い て この よ うな労 働 市場 の 分 節 が生 じる こ とは,大 規模 な 国 家 レ

ベ ル で の 独 占 が発 展 す る につ れ て,二 重 産 業 構 造 が 発達 す る こ とに よ って 説 明 され て

きた 。第 一 次 分 節 は,主 と して企 業 が生 産 要 因 と産 品 市場 の支 配 に よ り高 利益 を 上 げ

(12)

柄木田    ポ リネシア人 口移動 と史的構造 論

    表4‑b  太 平 洋諸 島民,マ オ リ,ニ ュー ジー ラ ン ド全体 の女 子 労 働 力 にお け る職 業 分 布

..    職        業    年 次 藷醸 マオリ 全 体

      Pro免ssional,  Technical  and  Related  Workers        1976    6.3  10.0  18.2       1981         4.6         7.6        18.O     Administrative  and  Management  Workers            1976    0.1    0,2    0.7       1981      0.1         0.3         1.1     Clerical  and  Related  Workers                    l976  12.3  19.7  33.4       1981        13.4       15.1        32.3

    Sales  Workers                                1976    2.4    6.3  11.7

      1981      2.7         4.1        11.2

    Service  Workers                              1976  21.4  19.2  12。2

      1981       21.1        19.7       12。3     Agricultura1,  Animal  Husbandry,  Forest  Workers,    1976    0.6    5.2    5.4    F三

shermen  and  Hunters

      1981         1。2         6.6         6.4     Production  and  Related  Workers                  1976  49.0  31.7  16.1    T

ransport  Equipment  Operators  and  Labourers

      1981        42.7       32。2       14.6     New  Workers  Seeking  Employment                1976    1.0    3.0    0。6

                                          }

      1981     3.0     5.8     1.3    0ccupation  Inadequately  Defined       1976     6.2      4.2      1.5       1981     2.3     1.6     0.7   Not Reportlng  Any Occupation       1976   0.6    0.6    0.2       1981     9.1     7.0     2.2

出 典:[GIBSON  1983:36]

うる独 占 ・寡 占部 門 で 雇 用 され る労働 者 に よ って構 成 され る。 この 部 門 の企 業 は,一 ・

時 的雇 用 や競 合 的第 二 次 部 門 の 小 企業 へ の下請 け を拡 大 ・縮 小 す る こ とで,景 気 変動

に対 応 しう る。第 二 次 部 門 の労 働 力 は,独 占 ・競 合 部 門 両者 の一 時 的な 非 熟 練職 に よ

って 構成 され る。 両 者 と も短 期 の景気 変動 や不 確 実性 の負 担 を 吸収 す る場 とな って い

る。 西 サ モ ア人 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の労 働 移動 は,西 サ モ ァ が ニ ュ ー ジー ラ ン ドに

対 し,二 次 的 労 働 力 を提 供 す る よ うにな った と理 解 し うる。

(13)

        国立民族学博物館研究報告  別冊6号

  V.西 サ モ ア 社 会 の 侵 食 と 維 持

  シ ャ ン クマ ンは,西 サ モ アが1960年 代 ま で に 低 開発 の 周辺 地 域 に陥 った とす る。第 二 次 大戦 直 後 上昇 した西 サ モ アの 農業 収 入 は,1960年 代 に 入 り急 激 に減少 した 。 しか しな が ら,消 費 は着 実 に上 昇 し,貿 易 赤 字 を 引 き起 こ した 。 さ らに わず かな 経 済 発 展 も,ヨ ー ロ ッパ 人,パ ー ト ・ヨー ロ ッパ 人 の 手 に 集 中す る こ と とな った。 サモ アの 経 済 は,地 域 内 の生 産要 素 と再 分 配 が支 配 的 な 未 開 発 の 状 態 か ら,地 域 外 の生 産 要 素 と 再 分配 制 度 が支 配 的で 外 部 の 経済 に編 入 され た 低 開発,つ ま り周 辺 の状態 へ 移 行 した

ので あ る。

  人 口移 動 の影 響 の 内,重 要 な もの に仕 送 り があ る。 しか しな が ら,ニ ュー ジ ー ラ ン ドか らの仕 送 りは,1960年 代 の間,西 サ モ アの 社 会 経 済 構 造 を 変換 しえな か った。 む しろ構 造論 者 が 主 張す る よ うに,西 サ モ アの 社 会 構 造 は 同 時 に維 持 ・侵 食 さ れ たの で あ る。 仕 送 りは 都 市 ・農村 間 お よび コ ミュニ テ ィ ー 内で の 格 差 を維 持,拡 大 した。 ポ ル テ スが述 べ る よ う に,世 界 規 模 で の 資本 主 義 の 結 節 は 労 働 移動 が,中 心 地域 ばか り で はな く,周 辺 地 域 の 支配 階級 の 利 益 とな る状 況 を生 ん だの で あ る。

  シ ャ ンクマ ン[SHANKMAN  1976]は,こ の時 期 の西 サ モ アへ の仕 送 りの 影 響 を報 告 して い る。 仕 送 り自体 に は幾 つ か の 回路 が あ る が,こ の う ち為 替 は正 確 に記 録 し, 分布 を調 べ る こ と がで き る[CURSON  l982]。 為 替 は ほ とん どニ ュ0ジ ー ラ ン ドか ら の も ので あ り,1969年 には調 査 され た仕 送 り(双 方 向)の 約 二 分 の 一 を しめ た 。記 録

され た為 替 の 分 布 は 都 市部 に偏 って い た。 首 都 た る ア ピア(Apia)は 人 口の20パ ーセ ン トを 占 め るが,仕 送 り額 で は50パ ーセ ン トを しめ る。 仕 送 り全 体 が為 替 と同 じ分布 を して い る と仮 定 す る と,仕 送 りはア ピア とそ の他 の地 域 の格 差 を 強化 して い る こ と に な る。

  仕 送 りの使 い方 自体 もサ モ ア の階 層 を 強 化 した 。パ ー ト ・サ モア ンは サ モ アの 伝 統 経 済 の核 た る富 の再 分 配 に完 全 に は参 与 して い な い た め,彼 らは仕 送 りの使 い方 に選 択 の余 地 が あ る。 逆 に サ モア 人 の仕 送 りの 受 け 手 は寛 容 性 が位 階 ・威 信 の基 盤 とな る 伝 統 的地 位 体 系 の完 全 な参 与 者 で あ る。 した が って,こ れ らの 資 金 の ほ とん ど が,広 範 な 社 会 に お け る 上昇 的社 会 移動 のた めの 「資本 」 と して で はな く,サ モ ア の地 位 体 系 中で 用 い られ る。

  しか しな が ら,西 サ モ ア の貨 幣経 済 が ヨー ロ ッパ 人 とパ ー ト ・サ モア ンの少 数 の 集

団 に よ って 支配 され て い る こ と に留 意 され ね ばな らな い 。 ビ ッツ[PITT  l970]に よ

れ ば,ア ピアの 大 規 模 な企 業 は サ モア人 を ヨー ロ ッパ 人 の 社 会集 団 か ら排 除す る こ と

342

(14)

柄木田   ポリネシア人口移動と史的構造論

に よ って そ の独 占を 永続 化 して い る。 経 済 的 エ リ ー トは,高 利 の 貸 付 あ るい は投 資 で は な く,消 費 活 動 を 勧 め る貸 付 な どに よ って,サ モ ア人 の 都 市 経 済 へ の参 与 を抑 制 し た。 さ らに土 地 所 有 制 度 自体 も問 題 を 複 雑 に して い る。 シャ ン クマ ンに よ れ ば,西 サ モ ア の土 地 は80パ ーセ ン トが サモ ア人 の 所有 で は あ る が,個 人 所 有 に対 す る法 的 規 制 とそ れ に伴 う不 安 定 な個 人 所 有 の た め,サ モ ア人 所 有 の土 地 は ヨ ー ロ ッパ 人 所 有 の プ ラ ンテ ー シ ョ ンと比較 して 競 争 力 が な い。

  した が っ て,サ モ ァ人 は,事 実 上,大 規 模 な 資 本 集 中型 経 済 活動 か ら排 除 され,伝 統 部 門 に お いて地 位 を追 求 す る こ とを奨 励 さ れ て い るの で あ る。仕 送 りを大 規 模 な 資

本形 成 に用 いえ な い こ とか ら,サ モ ア人 は仕 送 りを再 分 配 活 動 ・小規 模 な 消 費 に用 い るので あ る。 仕 送 りは また 人 口移 動 に再 投 資 さ れ る。 な ぜ な ら,サ モ ア人 は人 口移 動 が,そ の費 用以 上 の仕 送 りを可 能 と し,西 サ モ ァ の 限 られ た機 会 を克 服 で き る こ とを 知 って い るか らで あ る。

  村 落 レベル にお い て も仕 送 りの 影響 は,既 存 の構 造 を強 化 す る もので あ った。 シ ャ ンクマ ンの 調 査 したSa'asi(仮 名)と よ ばれ る村 落 で は,仕 送 りが1969年 の 現 金 収 入 の最 も重 要 な 構 成要 素 で あ った 。 さ らに仕 送 り自体 が,仕 送 りを 受 けて い る世 帯 とそ うで な い世 帯 の 間 ば か りで はな く,全 て の世 帯 間 の富 の 差 を生 み だす 最 も重 要 な 要 素 で あ った。 しか し,仕 送 り は村 落 の 政 治経 済 を根 本 的 に変 換 す る もので はな か った 。   Sa'asiへ の仕 送 りは村 落 内 の 三 つ の回 路,    aiga(親 族 集 団),教 会,商 人

を通 る。 シャ ン クマ ンに よれ ば1960年 代 に コ ブ ラの生 産 量 が 減少 した際,商 人 は 損 失 を補 うた め に掛 け売 りの 方 法 を 変 えて い る。 そ れ 以前,人 々 は加 工 済 み の コブ ラを拡 大 家 族 単 位 で 売 って いた 。 しか しな が ら,個 人 単 位 の 掛 け売 りを始 め,加 工 用 の ナ ッ

ツを 買 い入 れ る こ とで 買 い 付 け費 用 を抑 え,商 人 は生 産 量 の 減少 に よ る損 失 を 補 った ので あ る。 未加 工 コブ ラの 安価 な価 格 は,村 人 の 購 買 力 を低 下 させ,商 人 に と って も マ イナ ス とな った か も しれ な い。 しか しな が ら,仕 送 りが村 人 の購 買 力 を 拡 大 した の で あ る。 した が って,仕 送 りは商 人 の 利 益 とそ の 中心 的 役割 を維 持 した。

  逆 に,仕 送 りはaigaの 経 済 ・政 治 的一 体 性 を弱 体 化 した 。 仕 送 りは,再 分 配 体 系

の 中心 と して のmatai(首 長)を 通 さず,分 配 しえ た か らで あ る。 送 り手 と受 け手 は

仕 送 りをaigaで はな く個 人 資 産 と して見 る傾 向 が あ り,広 範 な 再 分 配 に対 す る サ ン

ク シ ョ ンに もか か わ らず,仕 送 りの共 有 は近 親 に限 られ る傾 向 に あ った。 しか しな が

ら,こ の こ とがmatai自 身 が仕 送 りの受 け手 とな り,富 を再 分 配 す べ き圧 力 を生 み だ

した。 つ ま り,mataiが 仕送 りの分 配 を通 して そ の威 信 を維 持 ・拡 大 す る一方,威 信

の究 極 的基 盤 が移 住 と仕送 りに よ って 弱 体 化 され る とい う矛 盾 した傾 向 が生 じた の で

      343

(15)

        国立民族学博物館研究報告   別冊6号 あ る。

  VL  社 会 ・経 済 的 地 位 と ネ ッ ト ワ ー ク

  ポル テ ス に よ れ ば,生 存 と経 済 的利 益 の手 段 と して の人 口移 動 は,移 動 者 間 の 相 互 扶 助 の ネ ッ トワ ー ク の形 成 に依 存す る 。 カ レ ン[KALLEN  l982]は ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 集 中的移 住 の時 期 に,西 サ モ ァ社 会 が伝 統 お よ び近 代 的基 準 に も とつ く二 つ の 地 位 体 系 を生 み だ した と述 べ て い る。 親 族 関 係 に も とつ く人 口移 動 は この時 期 の重 要 な 戦 略 で あ った。

  カ レ ンは西 サ モ ア の世 帯 の サ ンプ ル調 査 を も とに,世 帯 と非 同居 世 帯 成 員 の特 徴 を 報 告 して い る。 非 同居 世 帯 成 員 の 平均 値 は1.9人 で あ るが,国 外 に居 住 して い る成 員 の 平 均 が1.1人 と,西 サ モ ア 内 に居 住 して い る非 同居 成 員(0.8人)よ り も多 い。 カ レ ンに よれ ば,全 て の質 問 表へ の 回 答 は,都 市/農 村,matai/非mataiの 地 位,社 会 経 済 的 地 位 指標(SES),国 外 に居 住 す る移 住 者 との親 族 関 係 に よ って重 集 計 さ れた 。 こ れ らの 変 数 の相 関関 係 は非 パ ラ メ ト リック相 関係 数(Kendall  Tau)に よ って検 定 さ

        表5  世帯主,世 帯成 員,国 内移動者,国 際移動者の特徴       (%)

      非 移 動 者      移  動 者

      世帯主 世融 蠣 鋸 駒 讐

                                                      一

  教    育

      5年 以 下        77      55    39        27       6〜9年        15      38    56        63   職    業

      農     業        54      56    24        1       ブ ル ー ・カ ラー      16        17      39      65

                      ,

      ホ ワイ ト ・カ ラー      30      27      37      34

教会内婚        i…    9・}96  5・

エスニ・ク・グループ内婚1  97(・)  lg5  77

出生児数6人 以下    i  52(・)  16・  88

  教会帰属

      旧来の教会       89(b)        86     新 興 教 会      11(b)        14

                                                  一

          a)世 帯 主 と世 帯成 員 の数 値

          b)世 帯 主,世 帯成 員,国 内移 動 者 を合 わせ た数 値

          出典:[KALLEN  l  982:106‑107]

(16)

柄木田   ポリネシア人口移動と史的構造論 れ た。

  表5は 国 内 ・国 外 移 住 者,お よ び世 帯 主 ・世 帯 成 員 の 特徴 を集 計 した もの で あ る 。 調 査 デ ータ は移 動 がSESの 増加 と相 関 し, SESの 増加 が生 家 との 距 離 に相 関す る こ とを示 して い る。 国 外 移 住 が 国 内 移住 よ り も 「近 代 性 」 と連 関 して い る こ とは 明 らか で あ る。 表6は 世 帯 の特 徴 を 示 して い る。 約51パ ー セ ン トの世 帯 で一 人 以 上 の世 帯 成 員 が国 外 にい る。 都 市 の世 帯 は 農村 部 の 世 帯 よ り も国 外 に居住 す る世 帯 成 員 の割 合 が 多 く,同 様 に都 市 世 帯 で 成 員 が よ り頻 繁 に国 外 に移 動 して い る。 さ らに都 市世 帯 が, 国 外 に居住 す る親 族 を よ り多 く持 って い る。

  しか しな が ら,こ の移 動 と都 市 ・近 代 化 と い う相 関 は一 貫 した もの で は な い。 カ レ ンは居住 地,matai/非mataiの 地 位,  SESお よ び国 外 に居住 す る子 供 の数 によ っ て世 帯 を重 集 計 した 。 居 住 地 と 解α瓶/非 規α妬 の地 位 の 間 には有 意な 相 関 が あ り,農 村 部 の 世帯 主 の65パ ーセ ン トがmataiで あ るの に対 し,都 市部 の世 帯 主 の35パ ーセ ン トが mataiで あ る にす ぎな い 。 SESに 関 して は農村 部 の 世帯 主 の約83パ ー セ ン トが低 位 の SESを 持 つ の に対 し,都 市部 の世 帯 主 の 約34パ ーセ ン トが低 位 のSESを 持 つ に す ぎ な い。 逆 に都 市部 の 世 帯 主 の約21パ ー セ ン トが 高位 のSESを 持 つ の に対 し,農 村 部 の世帯 主 の約5パ ー セ ン トが 高位 のSESを 持 つ に す ぎな い。 ま たmataiが 長 た る世 帯 は低 位 のSESを 持 つ 傾 向 に あ る。 しか しな が ら,国 外 に居 住 す る世帯 成 員 の 数 に 関 して は,都 市/農 村 部 の 差 は非matai/matai世 帯 の差 に対 応 しな い。 約33パ ー セ ン トの都 市世 帯 と約27パ ー セ ン トの農 村 世帯 が 国外 に居 住 す る五 人 以 上 の世 帯 成 員 を持 つ 。 しか しな が ら約33パ ーセ ン トのmatai世 帯 が 国外 に居 住 す る五 人 以 上 の世 帯 成 員 を 持つ の に対 し,非matai世 帯 で は,約27パ ーセ ン トが国 外 に居 住 す る五 人 以 上 の 世 帯 成員 を持 つ に す ぎな い。 世 帯 主 のSESは 国 外 に居 住 す る世 帯 成 員数 とは有 意 な 相 関 を示 さな い。 これ らの デ ータ は都 市/非matai/高SESと い う要素 と農 村/matai/低 SESと い う要 素 は正 の相 関 を示 す が,伝 統 ・近 代 の 二 元 論 が移 住 に関す る差 異 を 説 明

しな い こ とを示 して い る。

      表6世 帯 の 人 口 移 動 に 関 す る 特 徴

      (%)

                   降 村剖 都市訓 全 体

移 動経 験 の ある世 帯 成 員 あ り      41      64      51 5回 以 上 の 移動 経 験 を もつ世 帯 成 員 あ り      12      35      一 ニ ュー ジ ー ラ ン ドに居 住 す る親 族 あ り        74      92      81

出 典:[KALLEN  1982:108‑109]

345

(17)

国立民族学博物 館研究報告  別冊6号   しか しな が ら,カ レ ンに よ れ ば,親 族 の ネ ッ トワ ー ク が移動 の主 た る枠 組 み を提 供

して い る と い う。 国外 に居 住 す る世 帯 成 員 の数,世 帯 成 員 に よ る国外 訪 問 の 頻度,国 外 か らの 訪 問 者 の 頻度 とい う変 数 は 相 互 に正 の相 関 を しあす。 さ らに,国 外 に居 住 す る子 供 の 数 は,matai世 帯,都 市 世 帯,高SES世 帯 で 多 い ので あ る。 カ レ ンに よれ ば,こ れ らの 特徴 を持 つ 世 帯 は よ り教 会 に 関連 した 活動 に参加 して い る。 国外 のサ モ ァ人 コ ミュニ テ ィ ーで は教 会 が西 サ モ ア との紐 帯 を 再 強 化 す るよ うに機 能 して お り, カ レ ンは 移住 志 向 を持 つ世 帯 に特 徴 的 なmataiの 地 位 と教 会 の連 関 は,国 外 の コ ミュ ニ テ ィ ーか らの手 助 け を反 映 して い る と述 べ て い る。

  カ レン によ れ ば,親 族 の ネ ッ トワ ー クは,国 家 の 境 界 を越 え て集 団 と して の ア イデ ンテ ィテ ィ ーを維 持 し,同 時 に多 様 な地 位 に あ る人 々の 経済 ・政 治 的 利 害 を満 たす た め の,今 日の サ モ ア の戦 略 を現 して い る 。 サ モ ア人 は,新 た に導 入 され た 西 欧 的価 値 に も とつ く近 代 ・都 市 志 向 の地 位 体 系 と,土 地 と位 階 と い うfa'aSamoaの 基準 に も と つ く伝 統 ・農 村 志 向 の地 位 体 系 とい う,二 つ の共 存 す る地 位体 系 を発 達 させ た。 しか しなが ら,こ の二 つ の体 系 は相 互 に独 立 した もの で は な く,二 者 間 の フ ィー ドバ ック が存在 す る。 両 体 系 は 選 択 的 に他 体系 の価 値 を 編入 し,両 体系 間 で 地 位 の転 換 が可 能 な ので あ る。 サ モ ア人 の見 方 で は,親 族 ネ ッ トワ ー クを媒 体 とす る,人 間,情 報,技 術,貨 幣 の永 続 的交 換 は,故 郷 ・国外 を 問わ ず,サ モ ァ 人 が利 用 しう る選 択 肢 の幅 を 拡 大 す るので あ る。

  しか しな が ら,太 平 洋 島 喚 社 会 か らニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の移 住 を 可 能 と した構 造 的 条 件 は,ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドに もは や存 在 しな い[CilBSON  l983]。 多 国籍 企 業 の 進展 が,こ れ まで 支 配 的で あ った 国 内 の独 占 ・中小 企業 の双 方 に脅 威 を与 え て い る。 安 価 な 労 働力 ・資 源 ・エ ネル ギ ー,公 害 規 制 の欠 如,労 働 組合 活動 の抑 制 な どの,最 適生 産 条件 を提 供 す る地 域 を世 界 規模 で 組 み合 わせ る組 織構 造 の競 争 力 に,国 内 の独 占 ・ 中小企 業 とも対 抗 しえ な い。

  ニ ュー ジー ラ ン ドで は,輸 入代 替 産 業 が最 も打 撃 を うけ た。 半 加 工 に携 わ る多 国籍

企業 の子 会社 のプ ラ ン トが この部 門 に集 中 して い た の で あ る。 東 南 ア ジァ の輸 出加工

区(free  production  zone)な どの新 た な発 展 を 受 け て,多 国籍 企 業 の 操業 が合 理 化 さ

れ つ つ あ る。 経 済 不 況 の 発 端 か ら,ポ リネ シア系 の 移 住 者 は公 に帰 国 を 勧 め られ,強

要 され て い る。1974年 にニ ュ ー ジー ラ ン ド政 府 は滞 在 期 間 を大 幅 に制 限 し,ポ リネ シ

ア系 移住 者 の 出入 国 を 細 か く規制 し始 めた 。 しか しな が ら,こ の規 制 は 考 え られ て い

た以 上 に困難 な もの で あ った 。 資本 の 立場 か らは,移 動 が一 時 的で 短 期 的現 金 収 入 を

目指 して い る ほ ど,労 働 者 を搾 取 しう る。 ポ リネ シア系 移 民 が定 住 化 の傾 向 を示 し始

(18)

柄木田    ポ リネシア人 口移動 と史的構造論

め た こ と は,移 民 労 働 が 生 み だ す 矛 盾 の 一 つ で あ る 。

Yll.周 辺 社 会 の エ リ ー ト形 成

  と ころで,ワ ー ラ ー シュ タ イ ンは,周 辺 地 域 の 特 徴 の0つ と して,土 着 の 国 家 が 弱 体 な 点 を指 摘 して い る[WALLERsTEIN  1974]。 これ を 受 け て マル カ ス は,小 規 模 国 家 あ るい は ミニ 国家 を,規 模 や 世 界 シス テ ム 内で の位 置 とい う側 面 を無 視 し,国 民 国 家 を 分析 す る の に適 当 な概 念 を も って 分析 す るこ と 自体 が,概 念 上 の バ イ ア ス を構 成 す る と指摘 して い る。 ワ ー ラー シュタ イ ン自 身 が,周 辺 社 会 の 分析 単 位 と して の 国家 の重 要 性 を否 定 して,周 辺 地 域 の 地 位 集 団 ・社 会階 級 が 自 ら に対 して もつ視 角 を直 接 把 握 す べ き こ とを強 調 して い る。 マ ル カス は これ を さ ら に進 め,次 の よ うに述 べ て い る。 周 辺社 会 を分 析 す るに あた って,分 析概 念 と して 国 民 国家 が 恣意 的 で あ る とい う こ とは,逆 に,周 辺 社 会 の エ リー トの 活 動 が柔 軟 で あ る こ とを反 映 して い る。 言 い換 え る と,周 辺 社 会 の エ リー トは 自 らの 行 動 を説 明 ・正 当化 す るの に国民 国家 とい うモ デル を 用 い る こ と もで き るが,用 い る必 然性 はな いの で あ る。 マル カ ス は,ト ンガの エ リー トが 自 らの地 位 を形 成 ・維 持 す るにあ た って,ト ンガを 国 家 と して また 国 際 的 ネ ッ トワ ー ク と して 表 象 して き た と述 べ て い る[MARcus  l981]。

  これ まで み て きた よ うに,太 平洋 島 喚社 会 の エ リー トの地 理 的 自 己規 定 は,近 年, 国家 を越 え る傾 向 が あ る。 西 欧社 会 との 接触 以 降,太 平 洋 島 喚 社 会 の エ リー ト達 は新 た な 社 会規 定 の範 疇 に も留 意 し続 けて きた。 しか しな が ら,そ の機 能 が外 社 会 か ら派 生 した 政 治 ・経 済 制 度 によ って 規 定 さ れ る よ う にな る につ れ て,彼 らの エ リー トと し て の 特 性 も究 極 的 に変 化 して い る。 他 方,多 様 な 地域 を結 びつ け る親 族 の ネ ッ トワー クの 存 在 は 個 人 が そ の生 活機 会 と活 動 の場 を 得 る選 択 肢 の 範 囲 を拡 大 した。

  マ ル カス は トンガ の政 治 的発 展 期 を二 つ の 時 期 に分 け て い る。0つ は1875‑1965年 の イ ギ リス 保 護 下 の 立憲 君 主制 期 で あ り,他 方 は1965年 以 降 の トン ガ島 民 の 国 際 化 の 時期 で あ る。 マ ル カ ス に よれ ば,1875年 の ツボ ウー 世 の 立憲 君 主 制 宣 言 は ポ リネ シア に お け る ヨー ロ ッパ 植 民地 主 義 の 進展 に対 す る意 図 的 な適 応 で あ った 。 イ ギ リス は世 界 の政 治 ・経 済 上 の 混 乱 か ら トンガ を 「 保 護 」 し,王 権 に よ っ て外 的影 響 の導 入 が 制 御 さ れ る 回路 を提 供 した 。1965年 以 降 の トンガ は,他 の 国家 と多索 的紐 帯 を持 つ 独 立 国家 と して み る こ とが で きる。 この紐 帯 を通 じて トンガ か ら様 々 な場 所 に恒 久 的 移 民

・還 流 的 労働 移 動 が 生 じて い る。 トンガ の エ リー ト層 の 形 成 は,よ り富 ん だ地 域 の 資

源 に対 す るあ る種 の 寄 生 を可 能 とす る,国 際 的親 族 ネ ッ トワ ー クの発 展 に依 存 して き

(19)

国立民族学博物館研究報告  別 冊6号 た ので あ る。

  立憲 君 主制 期,平 民 層 の エ リー トが 新 た な 秩序 の 中で 形成 され た。 彼 らは 教会 の ヒ エ ラル キ ーに お い て卓越 した親 族 集 団 に よ って構 成 され,究 極 的 に は官 僚 的地 位 を 与 え られ る。 や が て遠 い,あ るい は忘 れ さ られ て いた 首 長 との関 係 が 「発 見」 され る が,

これ は彼 らが新 た な 制度 の枠 組 み 内で の達 成 を正 当 化 した後 にお いて の み で あ っ た。

地域 の商 業 は ヨ ーロ ッパ 人 の商 人 の子孫 た る少 数 の トンガ の エ リー トに よ って支 配 さ れ,ト ンガ に お いて 獲得 され た大 部 分 の富 は トンガ外 に投 資 され た 。

  経 済 的 に トンガ のエ リー トは,政 府 と教 会 の ヒエ ラル キ ーに お け る地 位 の支 配 と親 族 ネ ッ トワ ーク を通 じて,ト ンガ社 会 の 地 域 資源 を蓄 積 し再 分 配 す る者 で あ る。 しか しな が ら,彼 らの エ リー トと して の地 位 は 土 地 な どの生 産 手段 の直 接 的 支配 に よ る も の で は な く,島 民 の消 費慣 行 の支 配 に依 存 して い る。 文 化 的 イ デ オ ロ ギ ーは,独 立 と 王権 の維 持 とい う トンガ の 歴史 的偉 業 によ って支 え られ て きた。

  近 年,多 くの トンガ 出 身 者 が 国外 に存 在 し,彼 らの不規 則 な トンガ へ の仕 送 り と ト ンガ 側 で の 輸 入 品 への 欲 求 の 急増 が,ト ンガ 経済 に対 し不 安定 要 因 を与 え続 け て い る。

同時 に還 流 的 労 働移 動 が よ り広範 な 潜 在 的 中流階 級 の基盤 と成 りつつ あ る。 この 種 の トンガ の 社 会 ・経済 発 展 を理 解 す る際 に重 要 な こと は,ト ンガ の恒 久 的 移 民 と トンガ に留 ま った 人 々の 関係 の特 質 で あ る。

  この よ うな ネ ッ トワ ー クが新 旧 の エ リー ト層 に お いて 最 も発 達 して お り,首 都 に集 中 して い る こ とは 明 らか で あ る。 立憲 君 主 制 期 に は,ネ ッ トワ ーク に も とつ く資 源 の 共 有 は 王 国 内 で 維 持 され て いた 。 トンガ の 社 会 構造 の 国際 化 にお い て は,こ の よ うな エ リー ト形 成 の 特質 が空 間 的 に拡 大 した の で あ る。新 たな エ リー ト層 は親 族 集 団 の0 員 の 教 育 にお け る成功 に しば しば依存 して い る。 海外 で の教 育 の 後,彼 らは トンガ に 戻 り,政 府 ・教 会 内で の役 職 体 系 に組 み込 ま れ るの で あ る。

  マル カス は 新 旧 の エ リー トが連続 体 の二 つ の 極 と して 理解 しう る と述 べて い る。 旧

来 の エ リー トの極 が外 社 会 との 関係 を トンガ 内の 伝 統 的 地位 に明 確 に転 化 して い る の

に対 し,新 た な エ リー トの極 は トンガ外 で 得 た資 源 を トンガ 内 の エ リー トと して の地

位 に転 化 す る手 段 を持 たな い。 こ こで,他 国 か らの援 助 に完 全 に依存 して しま う と い

う危 険 性 に も関 わ らず,ッ ポ ウ四 世 が トンガ の社 会 ・経 済 発 展 の 基 盤 を希 求 して い る

とい う事 実 は,一 方 で 国 民 国家 モデ ル に も とつ く トンガ を 国際 関 係 にお い て提 示 す る

と同時 に,国 際 化 す る トンガ社 会 の 経済 ・象 徴 的 核 と して の トンガの 地 位 を 維持 しよ

うとす る努 力 と して 理解 さ れ る。 マ ル カ ス に よれ ば,ト ンガの エ リー トは,ト ンガ を

国家 と して,ま た 国 際 的 ネ ッ トワー ク と して表 象 して い る。 ここで トンガ の 国 民 国家

(20)

柄木田  ポ リネシア人口移動 と史的構造論

モデル に も とつ く社会 ・経 済 発 展 は,国 家 間 の 世 界 シス テ ム に巻 き込 ま れ た 周 辺 国 家 とい うよ りも,自 らの周 辺 た る恒 久 的移 民 ・還 流 的 移 動 者 の 中心 と して の ト ンガ の 地 位 を押 し進 め よ う とす る試 み と して 理解 され るの で あ る。

  マル カス は 世 界 シス テ ム 内の 周辺 性 と文 化 的 差 異 の可 視 性 の 間 に は正 の 相 関 関 係 が あ る とい う仮 説 を提 示 して い る。 周 辺 国家 は,世 界 シス テ ムか らの圧 力 を 欠 い て い る た あ,大 規 模 な 国 家 が得 る こ とので きな い,あ る種 の文 化 的変 差 と創 造 性 を 自 らの も の と し うる。 周 辺 エ リー トの 中心 エ リー トに比 した 利 点 は,中 心 エ リー トが 自 らの 流 布す る国 民 国 家 モ デ ル に縛 りつ け られ て い るの に対 し,周 辺 エ リー トは選 択 肢 た る複 数 の枠 組 み 内 で 柔 軟 に行 動 しう る とい う こ とで あ る。 トンガ に留 ま る人 々は,移 動 者 との 関係 を維 持 せ ず に は社 会 ・経済 的 上昇 を望 めな い か も しれ な い。 しか しな が ら, 人 口の 国際 化 は少 な く とも よ り広 範 な社 会 ・経 済 移 動 の可 能 性 を提 示 して い るの で あ る。 この よ うな ネ ッ トワ ー クの 特質 とそ の 内 的社 会 構 造 へ の 影 響 は,よ り広 範 な 研 究 の対 象 とされ るべ きで あ ろ う。

皿.結 び に か え て

  近 年,人 類 学 的 な 都 市 化 ・人 口 移 動 研 究 が レ ッ ド フ ィ ー ル ド流 の 近 代 化 理 論 に も と つ く研 究 か ら,従 属 発 展 論 に も とつ く研 究 へ と 変 化 して い る こ と が 指 摘 さ れ て き て い る[GEROLD‑SCHEEPERS  a,riC1  VAN  BINSBERGEN  l978;(iREGORY  riC1  PICHE  1978;

KEMPER  1979;MAGuBANE  and  O'BRIEN  l  972;MARGOLIES  l 978]。 ケ ンパ ー は こ の よ うな 転 換 を 文 化 主 義(culturalism)か ら史 的 構 造 論(historical  structuralism) へ の 移 行 と し て 捉 え て い る[KEMPER  l979]。 本 稿 で は,ポ リネ シ ァ 人 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の 人 口 移 動 を 中 心 に ,史 的 構 造 論 に よ る 太 平 洋 島 喚 社 会 の 人 口 移 動 研 究 の 有 効 性 を 考 察 した 。 西 サ モ ア の 事 例 は 史 的 構 造 論 の 主 張 す る 幾 つ か の 点 を 支 持 す る も の で あ る 。 第 一 に,西 サ モ ア か ら の 移 動 者 を 生 み 出 し た 層 は 必 ず し も 「近 代 」 的 な 層 で は な い 。 伝 統 的 首 長 層 の 世 帯 が 西 サ モ ア 外 に 居 住 す る 成 員 を 有 す る 傾 向 が あ る の に 対 し,世 帯 主 の 教 育 ・職 業 な ど の 近 代 的 社 会 経 済 的 指 標 は 移 動 成 員 と の 相 関 が 見 られ な か っ た 。 こ れ は 伝 統/近 代 と い っ た 二 元 論 を あ ら か じ め 想 定 す る の で は な く,両 者 を 単 一 の シス テ ム を 構 成 す る 部 分 と して 見 る 必 要 性 を 示 して い る。

  第 二 に,労 働 移 動 の 影 響 は.̲..2 一 ジ ー ラ ン ド ・西 サ モ ア の 双 方 で 既 存 の 構 造 を 単 に

変 革 す る も の で は な く,同 時 に 維 持 す る も の で あ っ た 。 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドへ の ポ リ ネ

シ ァ 人 の 人 口 移 動 を 可 能 と し た 条 件 の 一 つ は,第 二 次 世 界 大 戦 以 降 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン

      349

(21)

国立民族学博物 館研究報告  別冊6号 ドの経 済 発 展 で あ った 。 しか しな が ら同時 に,ニ ュー ジー ラ ン ドにお い ては ヨ ー ロ ッ パ系 住 民 とマ オ リ系 住 民 か らな る複 層 的 な 労 働 市場 も成 立 して お り,西 サ モ ア人 を始 め とす る ポ リネ シア系 の移 動 者 はマ オ リ系 住 民 の 占め る労 働 市 場 の層 に組 み込 ま れ る こ と とな った 。 つ ま り,エ ス ニ シテ ィ ー に も とつ く労 働 市 場 の 複層 性 が,ポ リネ シア 系 住 民 の 社 会 ・経 済 移 動 を阻 止 した の で あ る。

  さ ら に,労 働移 動 の西 サ モ ァ 自体 に与 え た影 響 も既 存 の 階層 構 造 を維 持 す る もの で あ った 。 これ は,(1)移 動 者 か らの仕 送 りが都 市 部 に集 中 し都 市 と農 村 の 格差 を維 持 し た こ と,(2)仕 送 り に よ る収 入 の差 が 世帯 間 の経 済 的 格差 を再 強 化 した こ と,(3>仕 送 り の 多 くが伝 統 的再 分配 経 済 に用 い られた こ と に よる。

  西 サ モ ア の事 例 は,ポ ル テ ス の あ げ る労 働 移 動者 の地 位 の操 作,労 働移 動 自 体 の既 存 の 階級 構 造 の維 持,さ らに 労働 移 動 者 の 伝 統 的相 互 扶 助 関係 へ の依 存 とい う諸 点 を 支 持 す る。 こ こで文 化 主 義 的 研 究 が 移 動 者 の 都市 化 過 程 で の文 化 的機 構 に も とつ く適 応 を問題 とす るの に対 し,史 的 構 造論 は文 化的 機 構 の維 持 自体 を可 能 とす る シ ス テ ム の 条件 を問 題 とす る ので あ る。

  史 的 構 造論 に も とつ く研 究 は,第 三 世 界 の 都 市化 過 程 の 独 自性 を 明 らか に す る 点 で は 大 きな功 績 があ った 。 しか しな が ら,従 来 の 人類 学 的研 究 の特 徴 た る地域 社 会 側 の 論 理 を 明 らか にす る点 で は大 きな 問題 を残 して い る。 これ は,史 的構 造 論 に も とつ く 研 究 の経 済 決 定 論 的 側 面 は も と よ り,こ れ ら がそ の 研究 単 位 を 国家 ・地 方 レベル に置 く こ とで,ミ ク ロな社 会 側 の視 点 を見 失 って きた 点 に起 因す る。 本 稿 で は トンガ に関 す る人 口移 動 の 詳 細 を提 示 す る こ とはで きな か った。 しか しな が ら マル カ ス の資 料 を 考 察 す るな ら,史 的 構 造論 の 主 張 が トンガ にお い て も当て は ま る と考 え る こと は 的外 れ で はな いだ ろ う。 問題 は,ポ ル テ スや メ イヤ ス ーが主 張 す る よ う に,移 動 者 の 維 持 す るネ ッ トワ ー クが シス テ ム 側 の論 理 の み に よ って成 立 して い る のか とい う点で あ る。

カ ーテ イ ンは 複数 の生 産 様 式 の結 節 は,世 帯 レベル で見 た 場 合,世 帯 が社 会 の 近 代 ・ 伝 統 部 門 の 双方 に依 存 しよ う とす る こ とで あ る と し,還 流 的 人 口移 動 を世 帯 側 の戦 略

と して見 る こ とを提 唱 して い る[CURTAIN  I981]。 さ ら にマ ル カ ス の分析 は,研 究

者 側 の 社 会 構 造 レベル の 分 析 モ デル が,行 為 者 が社 会 的 行 為 に際 して用 い る表 象 モ デ

ル と一致 す る必 然 性 が な い こ とを示 して い る。 我 々は 近代 化 理論 の二 元 論 に は も は や

戻 る こ とはで きな い。 問 題 と され るべ きは,シ ス テ ムが社 会 的行 為 を通 じて い か に再

生 産 ・変 換 され るか とい う こ とで あ る。

参照

関連したドキュメント

The Australian National University, North Australia Research Unit.. Kenthurst NSW: Kangaroo

1958 Concerning Trobriand Clans and the Kinship Category Tabu. Madison: The University of Wisconsin

1980 An Application of the Outline of Cultural Materials to Film

1981 Miwuyt Marriage: the Cultural Anthropology of Affinity in Northeast Arnhem

I have clarified the relation among the concepts of clothes, accessories and cosmetics, and also made a new concept that comprises all these three concepts,

Bulletin of the National Museum of Ethnology. Special Issue

Pasudski's Phonographic Records and the Ainu Culture, Sapporo: Hokkaido

The constant effort involved in producing an ideal and certain fixed shape created the demand for incessant changes in style, and led to fashion as we know it