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雑誌名 国立民族学博物館研究報告別冊

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コンピュータと民族学 : 人口制御要因としての婚 姻規則 ―コンピュータ・シミュレーションによる 分析―

著者 杉藤 重信

雑誌名 国立民族学博物館研究報告別冊

巻 015

ページ 251‑275

発行年 1991‑12‑13

その他のタイトル Computers and Anthropology : Marriage Arrangements as a Factor in Population

Control: A Simulation Analysis of the Yolngu Case, N.T., Australia

URL http://doi.org/10.15021/00003605

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人 口制御要因 と しての婚姻規則

コ ン ピ ュ ー タ ・シミュレーション に よ る 分 析

杉 藤 重 信*

I.は じめ に

  1.研 究 の 目 的 と課 題

2.婚 姻 規 則 の 人 口 に 対 す る 効 果Ⅱ .ヨロンゴ 人 口資 料 の 分 析   1.調 査 地:ガ リ ウ ィ ン ク

2.人 口 資 料 に つ い て   3.  ヨ ロ ン ゴ ・シ ス テ ム

4.分 析

.  シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ・モ デ ル

  1.前 提 2.仮 説   3.  モ デ ル

.シ ミ ュ レ ー シ ョ ン結 果 の 分 析   1.結 果 の 表 示

2.単 婚 の 場 合 3.複 婚 の 場 合 4.総 合 評 価

V.討 論

I.は じ め に

  1.研 究 の 目的 と 課 題

  本 報 告 の 目的 は,コンピュータ ・シ ミュ レー シ ョ ンを もち い て人 口変 動 に対 す る婚 姻 規 則 の 効果 に つ い て分 析 を 行 な うこ とに あ る。

  多 くの脊 椎 動 物 な ど の個 体 群 は資 源 量 に た い してほ ぼ 平衡 に あ る ら し く,普 通 か な り安 定 な 密 度 で 存 在 して い る 。 こ の よ うな 個 体 群 は 平 衡 的 個 体 群 と呼 ば れ る

【PIANKA  1978:120]。 平 衡 的 個体 群 と して の狩 猟 採 集 民 の 人 口密 度 は0.01人/平 方 マ イル か ら40人/平 方 マイ ル と変 異 の幅 は 大 きい。 か れ らの 人 口密 度 は 必 ず しも潜 在 的資 源 量 と消 費 水準 の比 率 の 相違 に よって の み規 定 され るの で は な い。 それ は,そ れ ぞれ の社 会 に は食 糧 資 源 の 種 類 と量 を季 節 や年 々に お い て変 化 させ る こ と,食 糧 の再 配分 や 社 会 的 交換 な どの各 種 の機構 が 存 在 す る た め,環 境 の 許 容す る最 大 限 の 人 口密 度 にた い して 十 分 な 余裕 が み られ る 【HASSAN  1975:47】 た め で あ る。

  社 会 は 人 口の 安定 を め ざす は ず で あ る。 人 口増 加 は人 的 エ ネ ル ギ ーを ま して技 術革

*椙 山女学園大学 人間関係学部

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国立民族学博物館研究報告別冊  15号

新 が生 ず る可 能 性 を 開 く もの の,急 速 な人 口増 加 が 起 きる と周 辺 地域 との紛 争 が 生 じ た り,環 境 に対 す る過 搾 取 が 生 じ,社 会 に混 乱 を 生 む。 か とい って,人 口が 減 少 す る と,飽 和 人 口量 にた い して余 裕 が で き環境 に た い して過 搾 取 が 生 じる こ とは な い も の の,人 的 エ ネ ル ギ ーが低 下 して生 業 活 動 な どに支 障 を きたす こ とにな る。 また,急 速 な人 口減 少 は そ の社 会 の 滅亡 に も通 ず る。

  なん らか の 原 因 に よ り,食 糧 不 足 が 生 じた場 合,食 糧 が 比較 的 豊 か な地 域 へ移 動 を 行 な って,危 機 を 一 時 的 に 回避 す る こ とが で き る。あ るい は,儀 礼 的 殺 人や 嬰 児 殺 し, 移 動 時 の 老 人 や 病者,幼 児 の遺 棄 とい った人 口の強 制 的 な 削減 を 行 な うこ と もで き る。

しか し,地 域 移 動 や人 口の強 制 的 な 削減 な どが 実 施 され た り,他 の社 会 との 接 触 に よ る殺戮 や 疫 病 が 蔓 延 して人 口が 急 速 に減 少 した 場 合,人 口を どの よ うに支 えれ ぽ よい で あ ろ うか 。

2.婚 姻 規 則 の 人 口に た い す る効 果

  一般 に,婚 姻 規 則 は配 偶 者 選 択 を 規 定 し,配 偶 関 係 を もた な い男 女 成 員 の性 交 渉 の 抑 止 力 と して働 く。 す な わ ち,配 偶 者 選択 の条 件 の きび しい婚 姻 規 則 であ るほ ど配 偶 者 を 見 い だ す こ とが 困 難 に な り,人 口増 加 率 は下 降 せ ざ るを え な い。 逆 に,婚 姻 規 則 が 緩 や か で 配偶 者 選 択 の 条 件 が きび し くな け れ ぽ,配 偶 者 を 容 易 に発 見 す る こ とが で

き,人 口増 加 率 は高 ま るは ず で あ る。

  次 世 代 を 生 み 出す こ とが で き るの は女 性 で あ るか ら,女 性 の 未 婚者 を減 少 させ るに は配 偶 者 と して の 有 資格 者 が 複 数 の 女性 を独 占す る複 婚 制 の 方 が 単婚 制 に比 べ て有 利 に働 くは ず で あ る。 また,婚 姻 規 則 の 強制 力 が 強 け れば 強 い ほ ど婚 姻 規 則外 の婚 姻 の 発生 を低 く押 さえ,人 口増 加 率 を 下 げ る。 逆 に,強 制 力が 弱 くな れ ぽ 婚 姻規 則 外 の婚 姻 の比 率 が高 ま り,人 口増 加 率 を 上 昇 させ る こ とに な る。

  通婚 圏 は配 偶 関 係 を 求 め る こ との で き る地 理 的 制 限 も し くは社 会 的 制 限 を意 味 し, 婚 姻 規 則 に も とづ き配 偶 者選 択 を行 な う場 合 に お け る配偶 者 候 補 の数 を 制 限 す る。 す なわ ち,通 婚 圏が 小 さけ れ ば配 偶 者 候 補 の 数 は お のず とす くな くな っ て配 偶者 を 見 つ け る こ とが 困難 とな り,単 身者 が増 加 して 人 口増 加率 は 低 く押 さえ られ る。逆 に通 婚 圏が 大 きけ れ ぽ配 偶 者 候 補 を 探 す こ とが 容 易 とな り,人 口増 加率 の上 昇 に 寄 与 す るは ず で あ る。

  つ ま り,人 口増 加率 を 上 昇 させ るに は,

1.婚 姻 規則 を制 限 の す くな い緩 やか な シス テ ム に変 化 させ る

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2.配 偶者 選 択 の規 制 が きび しい シス テ ムの 場 合,複 婚 制 を と る 3.婚 姻 規則 に対 す る適 合 率 を落 す

4.通 婚 圏 を広 げ る

の 戦 略 が有 力で あ る。 人 口増 加 率 を 下 降 させ る に は上 記 の逆 の戦 略 を とれ ば よい。

  本 報 告 は 大 き く三 分 さ れ る。前 半 部 分 に お い て は,フ ィ ー ル ドワ ー クに も と づ き オ ー ス トラ リア ・ノ ー ザ ソ ・テ リ ト リ ー に あ る ガ リ ウ ィ ン ク と い う タ ウ ン シ ッ プ で え られ た 人 口 資 料 の 統 計 的 分 析 を 行 な う。 後 半 部 分 で は,現 実 に え られ た 資 料 を 含 ん で,婚 姻 規 則 に か ん す る 複 数 の モ デ ル を 構 築 し,そ れ を も と に 人 ロシミュレーション を 行 な い,そ れ ぞ れ の モ デ ル が も た ら す 人 口 の 挙 動 に つ い て 観 察 す る 。 最 後 に 現 実 デ ー タ と

シ ミ ュ レ ー シ ョ ン デ ー タ の 比 較 討 論 を 行 な う。

.ヨロンゴ 人 口資 料 の分析

1.調 査 地:ガリウィンク

  実 態 調 査 は,オ ー ス トラ リア ・ノ ー ザ ン ・テ リ ト リー 北 部 に あ る ア ー ネ ム ラ ン ド ・ ア ボ リジ ニ 領 の エ ル コ 島 の ガ リ ウ ィ ン ク と い う ア ボ リジ ニ ・コ ミ ュ ニ テ ィ に お い て 行 な わ れ た 。 期 間 は1984年 か ら1988年 に か け て4次 に わ た り通 算 約14ヵ 月 に わ た る。 調 査 方 法 は 民 族 誌 的 な 事 実 に た い し て は 参 与 観 察 と 聞 き取 り調 査 を 行 な い,人 口学 的 な 資 料 に つ い て は 関 係 諸 機 関 に お い て 文 書 の 収 集 も あ わ せ て 実 施 した 。

  対 象 と す る 「ヨロンゴ 」 は,東 ア ー ネ ムランド に 居 住 す る オ ー ス ト ラ リ ア ・ア ボ リ ジ ニ で,現 在 約3000人 の 人 口 を 擁 す る 。 ヨ ロ ン ゴ と は 自称 で,「 人 間 」 を 意 味 す る。

ヨロンゴ を 自称 す る 人 び と は,東 ア ー ネ ム ラ ン ドの な か で も ゴ イ ダ ー 川 以 東,ロ ー バ ー 川 以 北 の オ ー ス ト ラ リア 大 陸 本 土 お よ び 沿 岸 の 島 じ ま に 居 住 す る 。 ヨ ロ ン ゴ は,こ れ ま で 様 ざ ま な 名 前 で よ ば れ て き た 。 ヨ ロ ン ゴが 初 め て 人 類 学 史 上 に 登 場 し た の は,ア メ リカ の 社 会 人 類 学 者 の ウ ォ ー ナ ー に よ っ てムルンギン(Mumgin)の 名 で よ ぽ れ た

【WARNER  1958】 こ と に よ る 。 そ の 後,バ ー ソ トに よ っ て ウ ラ ン ・ミ(Wulamba)

【BERNDT  19551,シ ャ ピ ロ に よ っ て ミ ウ イ ッ ト(Miwuyt)[SHAplRo  1981】 な ど と よ ば れ て き た 。

  お も な 調 査 地 の ガ リ ウ ィ ン ク は,ア ー ネ ムランド 東 北 部 の エ ル コ 島 の 南 西 端 に 位 置

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国立 民族学博物館研究報告別冊  15号

す る町 で,1942年 に メ ソジ ス ト ・ミッション に よ って創 立 され た 。現 在 では ミ ッシ ョ ンの手 を はな れ,ヨロンゴ 自身 の 手 に よって 自治 が行 なわ れ て い る。 町 は教 会,マ ー ケ ッ ト,学 校,病 院 な ど の諸 施 設 を 中心 に計 画 され,建 設 され た 。 ガ リウ ィ ン クお よ び そ の周 辺 地 区 に居 住 す る ヨ ロ ンゴ人 口は 登 録 され た もの で約1400人 を数 え る(社 会 保 障 の受 給 者 リス トに よ る)。 そ の大 半 は ガ リ ウ ィ ン クに居 住 し,定 期 的 な 収 入 を え る もの や社 会 保 障 の給 付 に よっ て生 計 を た てて い る もの も多 い。 しか し,週 末 に現 金 が手 元 に な い ときな ど,狩 猟 採 集 に依 存 す る部 分 もあ る。 また,季 節 に よ って儀 礼 が 行 なわ れ,そ の状 況 に よ って居 住 者 数 は不 定 で あ る。 乾 期 に は ホ ー ム ラ ン ド(ア ウ ト

・ステーション)に 居 住 してガリウィンク を離 れ,雨 期 に はタウン シ ップに戻 って く る。 また 乾期 には 各 種 の 儀 礼 が催 され るた め,人 口の流 動 が は な は だ しい 。

2.人 口資 料 に つ い て

  人 口資 料 と し て も ち い る も の は,ガリウィンク ・ヘ ル ス ・センター(診 療 所)に 保 存 され て い る も の で,ガリウィンク 在 住 のヨロンゴ の 人 び と の 健 康 管 理,出 生(死 亡) 管 理 を 目的 と して 作 成 さ れ た も の で あ る 。 こ れ は,つ ぎ の 四 種 の 記 録 か ら な っ て い る 。   1.  Birth Record

  2.  Death  Record   3.  Family  Card   4.Mother  Card

  Birth Recordは 出 生 に 関 す る 事 項 の 記 録 で,出 生 年 月 日,出 生 児 の 名 前,両 親 の 名 前,出 生 時 体 重,出 生 状 況 お よび 出 生 地 が し る さ れ て い る。1950年 代 以 降 の 記 録 が 記 載 さ れ て い る。

  Death  Recordは 死 亡 に 関 す る事 項 の 記 録 で,死 亡 年 月 日,死 亡 者 の 名 前 お よ び 死 亡 原 因 が し る され て い る 。 こ れ も1950年 代 以 降 の も の が し る さ れ て い る 。

  Family  Cardは 夫 の 名 前 を 中 心 に して そ の 家 族 構 成 が し る され て い る 。 こ こ に は, 夫,妻 お よ び 子 供 の 生 年 月 日,ク ラ ン名,サ ブセクション 名 が し る され て い る 。 こ の 記 録 の 記 載 開 始 年 代 は 不 明 で あ る が1890年 代 生 ま れ の 夫 の 家 族 か ら記 載 さ れ て い る 。 ま た,夫 が 複 数 の 妻 を も つ と き,婚 姻 が お こ っ た 順 に 妻 の 名 前 が し る さ れ て い る 。 子 供 は 母 親 の 名 前 に つ づ い て 出 生 順 に 記 録 さ れ て い る 。

  Mother  Cardに は 女 性 の 名 前 を 中 心 に か の 女 の 一 連 の 出 産 が し る さ れ て い る 。 記

録 は そ の 女 性 の 名 前,生 年 月 日,夫 の 名 前(も し,結 婚 し て い れ ば),出 生 日,新 生

児 お よ び 出 産 に 関 す る 記 述(性 別,正 常 ・異 常 出 産 の 別,体 重,そ の 他,出 産 時 に と

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られ た 医 学 的処 置 や 所 見 な ど)か らな っ てい る。

 以 上4種 の資 料 の限 界 は 以下 の とお りで あ る。 第 一 に,婚 姻 が 開 始 され た 時 点 お よ び終 了 した 時 点 が 明 らか で な い こ と。 第 二 に,ひ と りの ライ フサ イ クル を追 うた め に は資 料 が 分 断 され て い る こ と。 そ れ を復 元 す るた め に は個 人 名 を 手 が か りにす る しか な いが,ア ボ リジ ニは あ る種 の 世 襲 名 を も って お り,名 を贈 った 個 人 が 死 亡す る と贈 られた 方 は 名 前 を 忌避 して異 な る個 人名 を使 うよ うに な る。 そ のた め に 個 人 を追 跡 す る こ とが か な り困 難 で あ る。 こ うした前 提 の も とに人 口記 録 の復 元 を行 な って い る が い まだ に不 十 分 で あ る。 婚 姻 の発 生 の 時 点 に して も,第 一 子 の 出生 を手 が か りにす る

しか な い。 以 下 の 人 口学 的 な分 析 に お い て は これ を 手 が か りに し よ う と した 。

3. ヨロンゴ ・ シ ス テ ム

 ヨロンゴ は イ リチ ャと ドゥワの半 族 に 二 分 され,そ れ ぞれ の 半族 は4つ づ つ の 系 譜 的世 代(genealogical  generation)に 区 分 され る とい うサ ブセクション 型 の シス テ ム を もっ て い る(表1)。 また,個 人 は,地 域 集 団 も し くは 言 語 集 団 で あ る父 系 を た ど る 「 部 族 」 に 属 して い る。 部 族 は ふ たつ の半 族 に また が る こ とは な く,ど ち らか の 半 族 に属 して い る。

 配 偶 者 は 相 手半 族 のな か で 自己 と同一 の系 譜 的 世 代 か ら選 択 され る(こ れ を第 一 選 択 とす る)だ け で は な く,相 手 半 族 の なか で 自己 とは 一 つ は なれ た 系 譜 的世 代(自 己 の祖 父 母 あ るい は 自己 の孫 の 系 譜 的世 代 に あた る)か ら も選 択(こ れ を 第二 選 択 とす る)さ れ る(表2)。 また,ア ラ ソ ダ型 が交 叉 第2イ トコ との優 先 婚 を とる の に た い して,ヨロンゴ 型 で は 男 か らみ て母 方 交 叉 イ トコ(MBD,女 か らみ て 父 方交 叉 イ ト コ=FZS)と の優 先 婚 が 観 察 され る。 配 偶 者 は 婚 姻 規 則 の シス テ ム に合 致 す る候補 者 のな か か らあ らか じめ 決 め られ る(契 約 婚)。 夫 婦 の年 齢 差 が 大 きい こ とは忌 避 され ない。 女性 か らす れ ぽ 出 生 以前 に配 偶 者 が 決定 して い る場 合 が あ る。 ま た,複 婚(一

表1  hロ ン ゴの サ ブセクション(系 譜 的 世 代)名 Dhuwa半 族

D1=Burralang D2:wamut

D3:Balang D4:Gamarrang

Galiyan wamutjan Bilinydjan Gamanydj  an

Yirritja半 族

男 Yl:Bulany Y2:Gudjuk Y3:Ngarritj Y4:Bangadi

Bulanydj  an Gutj  an Ngarritjan Bangaditj  an

(摘 要:Dl〜4,  Y1〜4は 系 譜 的 世 代 の 略 号 と し て 後 に 用 い る 。  a,1は 長 音,  dはdh音)

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表2婚 姻 例

第 一 選 択(Dl=Yl,  D2=Y2,  D3=Y3,  D4=Y4) Dhuwa半 族 男 Yirritja半 族 女

DI: Burralang = Y1: Bulanydjan D2: Warnut = Y2: Gutjan D3: Balang = Y3: Ngarritj an D4: Gamarrang = Y4: Bangaditjan

Yirritja半 族 男 Dhuwa半 族 女

Y I : Bulany = D I : Galiyan

Y2: Gudjuk = D2: Warnutjan Y3: Ngarritj = D3: Bilinydjan Y4: Bangadi = D4: Gamanydjan

第 二 選 択(Dl=Y3,  D2=Y4,  D3.  Y1,D4=Y2) Dhuwa半 族 男 Yirritja半 族 女

Dl: Burralang = Y3: Ngarritj an D2: Wdmut = Y4: Bangaditjan

D3: Balang = Yl: Bulanydj an D4: Gamarrang = Y2: Gutjan

Yirritja半 族 男 Dhuwa半 族 女

Y 1 : Bulany = D3: Bilinydj an Y2: Gudjuk = D4: Gamanydj an Y3: Ngarritj = Dl: Galiyan Y4: Bangadi = D2: Wamutjan

夫 多妻)が 認 め られ る。

  子 供 の 系譜 的 世 代 へ の 位置 づ け は 母 親 のそ れ に よ って 決 まる。 す な わ ち,父 親 側 の 半 族 の な か で,母 親 の 次 の系 譜 的 世 代 に相 当 す る世 代 名 が あ た え られ,母 系 的 に 決定 され る よ うに見 え る。

4.分 析

    1)年 齢

  1985年 現在,人 口資 料 に 記載 され てい る配 偶 関 係 に あ る人 び とは784人 で,287組 の 配 偶 関 係 が 存在 し,男241人,女380人 か らな る。 年 齢 の分 布 を み る と,1900年 以前 生 まれ か ら1960年 代 生 まれ の もの まで あ り,1985年 現 在 で最 高 年齢 者 は93歳,最 若 年 者 は16歳 で あ る。1950年 代 生 まれ の 人 び とが も っ と も多 く約3分 の1を しめ る(表3)。

2)  出生 数 の推 移

  ア ボ リジ ニ 人 口 の 推 移 は か れ ら の 移 動 性 の ゆ え に 把 握 しに くい 。 しか し,人 口 の 増

減 の 動 向 は ガ リウ ィ ン ク の ヘ ル スセンター の 出 生 の 記 録 に よ りみ る こ と が で き る(表

4)。Birth  Recordに よ る と 出 生 の 記 録 は1953年 以 降 か ら記 録 さ れ て い る 。 初 期 の 記

録 は 正 確 さ に か け る と予 想 され る も の の,年 ご と に 大 き く の び て い る 。60年 代 後 半 か

ら み る と70年 代 前 半 で は 約1.6倍 と な り,70年 代 後 半 で は 約2.4倍 と お お き くの び る 。

80年 代 前 半 で は 約2.2倍 と な っ て い る が,85年 は8月 ま で の 記 録 で あ る の で12月 ま で

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表3年 齢 の 分 布 生 年

1900年 以 前 1900年 代 1910年 代 1920年 代 1930年 代 1940年 代 1950年 代 1960年 代

合  計 不  明

夫 頻度

4 13 24 37 41 50 64 8 241 46

(%)

L7 5.7 10.O l5.4 17.0 20.7 26.6 3.3 100.0

累積

  1.7   7.1 17.1 32.5 49.5 70.2 96.8 100.1

妻 頻度

  1   9 24 44 76 77 104 45 380 117

(%)

0.3 2.4 6.3 11.6 20.0 20.3 27.4 11.8 100.0

累積

  0.3   2.7   9.0 20.6 40,6 60.9 88.3 100.1

合 計 頻度

  5 22 48 81 117 127 168 53

521 163

(%)

0.1 4.2 9.2 155 22.5 24.4 34.2 10.2 100.0

表4出 生 の 記 録 生 年

1956‑60年 1961‑65年 1966‑70年 1971‑75年 1976‑80年 1981‑85年

合計

18 43 125 195 304 271

13 23 58 95 130 126

  4 15 55 86 139 105

不明

1 5 12 14 35 40 (注:出 生 の記 録 は53年 か ら始 ま って い る。 また,85年 の記 録 は8月     まで。)

を推 計 す る と約2.9倍 とな って,増 加傾 向 はや や下 が る もの の,出 生 数 の増 加 が 著 し い。 出生 数 の増 加 はガリウィンク ・タウン シ ップ の諸 施設 の拡 充 に よって,周 辺人 口 を 吸収 して タ ウ ンシ ップの人 口が 成 長 した こ とや,ヘ ル スセンター の記 録 充 実 な どの 事 情 に よる もの と考 え られ る。

3)夫 と妻 の 年 齢 差

  夫 と 妻 の 年 齢 差 を み る と 平 均 が 約13歳 で,頻 度 が も っ と も 高 くな っ て い る の は0歳 か ら10歳 未 満 で44.1パ ー セ ン トを し め,20歳 未 満 の 累 計 は71パ ー セ ン ト と な る 。 い っ ぽ う,年 齢 差 が20歳 を 越 え る も の も約20パ ー セ ソ トと多 い の が 特 徴 的 で あ る 。 ぎ ゃ く に,妻 の 方 が 年 齢 が 高 い 場 合 は8.8パ ー セ ソ トを か ぞ え る に す ぎ な い(表5)。

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表5  夫 と 妻 の 年 齢 差

一11歳 以 上 一10〜‑1歳   0〜9   10〜19

20〜29 30〜39 40歳 以 上

計 不  明

頻 度

2 31 164 100 50 19   6

372 166

割 合(%) 0.5 8.3 44.1 26.9 13.4 5.1 1.6 100.0

表6  妻 の 人 数

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

合 計

頻 度

168 62 29 9 7 4 4   1   2   1 287

(%)

58.5 2L6 10.1

3.1 2.4 1.4 1.4 0.3 0.7 0.3 100.0

4)一 夫 多 妻 制

  ひ と りの 男 が 何 人 の 妻 と婚 姻 関 係 を も った か を み る と,も っ と も お お い も の で10人 で あ る が,約60パ ー セ ン トの 男 性 が1人 の 妻 と の み 婚 姻 関 係 を も っ て お り,2人 の 妻

ま で で 累 積 が80パ ー セ ン ト と な る こ と が 注 目 され る 。 平 均 す る と,ひ と り の 男 性 は 1.87人 の 妻 を も っ て い る こ と に な る(表6)。

5)部 族 構 成

  登 録 され て い る部 族 の 数 は 二 つ の半 族 を あわ せ て のべ36で あ る。 夫 の属 す る部 族数

が22で あ るの にた い して,妻 の属 す る部 族数 は36部 族 とな って い る。 こ の差 は,女 の

配 偶 者 を 求 め る のに 夫 よ りも通 婚 圏 を広 く求 め て い る こ とに よ る,と 思 わ れ る。また,

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表7所 属 部 族 の 分 布

lDj  ambarrpuyngu 2Liyagawumirr 3Gupapuyngu 4Dhalwangu 5Galpu

6Wangurri 7Warramiri 8Gumatj gGolmala lO Ritharrngu llDathiwuy l2 Wawilak 13 Ngaymil 14 Marrangu l5 Golpa 16 Djapu 17Djlalwarr l8 Wanambi 19Yanangu 20Ganalpingu 21(Toles  Is.)   そ の 他

不 明

半族

D D Y Y D Y Y Y D Y D D D D Y D D D D Y D

?

50 23 33 16 29 22 31 22 10 10 8 2 3 5 1 1 1 1 1 1 1 1 0 272

15

56 80 41 48 28 33 23 21 20 15 14 11 9 5 4 3 3 3 3 2 1 1 19 443 95

106 103 74 64 57 55 54 43 30 25 22 13 12 10   5   4   4   4   4   3   2   2 19 715 llO

比 率(%) 14.8 14.4 10.3 9.0 8.0 7.7 7.6 6.0 4.2 3.5 3.1 1.8 1.7 1.4 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.4 0.3 0.3 2.7 100.0

累 積(%)

14.8 29.2 39.5 48.5 56。5 64.2 71.8 77.8 82.0 85.5 88.6 90.4 92.1 93.5 94.2 94.8 95.6 96.2 96。8 97.2 97.5 97。8 100.5

(摘 要:半 族 のYはYirrtja半 族,  DはDhuwa半 族 を あ ら わ す 。)

上 位10部 族 で 人 口 は 約90パ ー セ ン トに も お よび,こ れ ら が ガ リ ウ ィ ン ク お よ び 周 辺 地 域 の 主 要 部 族 で あ る こ とが わ か る(表7)。

    6) ヨロンゴ 婚 姻 規 則 の 人 口 学 的 分 析 く半族 シ ス テ ム 〉

  夫 と妻 の 半 族 に対 す る帰 属 をみ る と ドゥ ワ半 族 が夫135人 ・妻240人 で あ る の に対 し,イ リチ ャ半 族 は 夫136人 ・妻203人 とな って い る。 両 半 族 で夫 の数 が 均 衡 して い る の に対 し,妻 の数 では 若 干 の差 がみ られ る。 しか し,そ れ ぞ れ 有意 な差 では な い(表 8)。 い っぽ う,夫 と妻 の婚 姻 の組 み合 せ の うち ドゥ ワ とイ リチ ャの組 み 合 せ が一 例

を除 き,か な らず 守 られ て お り,ヨ ロ ン ゴシス テ ムの うち で半 族 規 則 は も っ と も厳 格

                                                              259

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国立民族学博物館研究報告別冊  15号

表8  半 族 へ の帰 属

ドウ ワ半 族 イ リチ ャ半 族

合 計 不 明

夫 頻度

135 136 271 16

(%)

49.9 50.1 100.0

妻 頻 度

240 203 443 96

(%)

54.2 45.8 100.0

合 計 頻 度

375 339 714 112

(%)

52.5 47。5

100.0

に 守 られ てい る。 聞 き取 り調 査 に お い て も,過 去 に お い て一 例 が 知 られ て い るだ け で あ る との こ とで あ った 。

〈 サ ブ セ ク シ ョ ン ・シ ス テ ム 〉

  各 サ ブセクション ご と に 所 属 人 口 を 比 較 す る とバ ラ ツ キ が み ら れ る(表9a,  b)。

しか し,夫 と 妻 の 数 が 逆 転 し て い る の は 第2選 択 の う ちY4:D2に み られ る だ け で, 残 りは い ず れ も 妻 の 人 口 が 夫 の 人 口 を 上 回 っ て い る 。Y4ク ラ ス の 男 か ら み る と 第 二 選 択 に お い て は 女 が 不 足 し て い る も の の,第 一 選 択 と あ わ せ る と女 の 数 は 男 の 数 を 上 回 る こ と に な る 。

  こ の 表 を み る 限 りヨロンゴ シ ス テ ム は う ま く機 能 し て い る よ うに 思 え る が,ヨ ロ ソ ゴ シ ス テ ム を 長 期 に わ た り維 持 し て い る と す る と,子 供 の サ ブ セ ク シ ョ ンへ の 帰 属 は 母 親 の そ れ に よ っ て 決 定 され る の で,特 定 の 系 譜 的 世 代 へ の 人 口 の か た よ りは,次 の

表9a  第 一 選 択 の 組み 合 せ 夫:妻

Dl D2 D3 D4

Y1=32:39 Y2=19:38 Y3=32:53 Y4=30:84

夫:妻 Yl Y2 Y3 Y4

D1=25:70 D2=14:28 D3=33:65 D4=51:54

表9b  第二 選 択 の組 み 合 せ 夫:妻

Dl D2 D3 D4

Y3=32 Y4=19 Y1=  32 Y2=30

53 84 39 38

夫:妻 Yl Y2 Y3 Y4

D3  ・ 25 D4=14 D1=33 D2=51

65

54

70

28

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世 代 に おい て も保 たれ る。 そ こ で,こ う した サ ブセクション ご との人 口の ば らつ きの 長期 的 な効 果 が 問 題 とな ろ う。 サ ブセ ク シ ョ ンへ の 帰 属 は母 親 に よっ て決 まるか ら, 母親 の世 代 の人 口の 規模 は こ の世 代 に い た って も守 られ る。 そ のた め,お そ ら く婚 姻 規則 を厳 格 に 守 って い る と配 偶 者 候補 の数 が ゼ ロに な って しま う場 合 もあ る もの と考 え られ る。

〈配偶 者 選 択 〉

  ヨ ロ ン ゴ シス テ ムの配 偶 者 選 択 につ い て み る と,全 体 と して は第 一 選 択 に適合 す る もの が182例,第 二選 択 が113例 で,両 者 に は1パ ー セ ソ ト水 準 で有 意 な差 が み られ, 第 一 選 択 に選 好 が 働 いて い る よ うに見 え る(表10)。 つ ぎに,第 一 子 の 出 生 を手 が か

りに して配 偶 関 係 の変 化 を み て み る。 人 口資料 には 婚 姻 の 発 生 時 点 が記 録 され て お ら ず,そ の た め第 一 子 の出 生 を 判 別 の規 準 と して もち いた 。

  第 一 子 の 出生 年 代 ごとに 第 一 選択 と第 二 選 択 の あ いだ に選 好 が は た ら くか ど うか を み る と,1960年 代 生 まれ の39例 と19例(1パ ー セ ン ト水 準 で有 意 な 差 が認 め られ る)

を除 き,各 年代 に お いて い ず れ も第一 選 択 が 多 く現 れ る もの の1パ ーセ ン ト水 準 で は 有 意 な 差 は な い。 これ は お そ ら く第一 選 択 に 選 好 が働 きつ つ も,現 実 に配 偶 者 が 存在 す るか ど うか とい った規 準 に よって 第一 選 択 と第二 選 択 の選 好 が 働 くの で,基 本 的 に 第 一 選 択 の ほ うが 多 い も の の有 意 な差 とな っ てあ らわれ に くい もの と思 わ れ る。

  つ ぎ に,第 一 選 択 と第 二 選 択 をあ わせ て規 則 に対 す る適 合 と不 適 合 とい う点 でみ る と,全 体 と しては295例 が 適 合 であ るの に た い して133例 が 不適 合 とな っ てい る(68.9 パ ーセ ン トの 適 合 率)。 両 者 の あ い だ に は1パ ー セ ソ ト水 準 で有 意 な差 が 存 在 し,規 則 に適 合 す る よ う選 好 が働 い て い る こ とが観 察 され る。 い っぼ う,時 期 別 に み る と,

表1① 第 一 選 択,第 二 選択 へ の選 好 お よび 規 則 へ の適 合件 数       (第一 子 の 出生 年 代 に よる)

出生年代判明分

1949年 ま で 1950年 代 1960年 代 1970年 代 1980年 代

出生年代不明 総 計

第 一 選 択 154

32 34 39 41 8 28 182

第二選択

96 16 26 19 28 7 17 113

規 則 へ の 適 合 250

48 60 58 69 15 45 295

規則か らの逸脱

93 14 22 22 25 10 40 133

不  明

76 18 13 14 29 2 34 110

261

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国立民族学博物館研究報告別冊  15号

い ず れ も規 則 に 対 す る 適 合 と不 適 合 の あ い だ に は 第1子 出 生 年 代 が 不 明 の も の と80年 代 を の ぞ い て い ず れ も1パ ー セ ン ト水 準 で 顕 著 な 差 が あ り,婚 姻 規 則 に た い し て 適 合 す る よ う選 好 が 働 い て い る よ うに み え る 。

  婚 姻 規 則 に 対 す る 適 合 率 の 変 化 を み る と,1950年 以 前 が77.4パ ー セ ソ トで あ る の に た い し て,50年 代 が73.2,60年 代 が72.5,70年 代 が73.4,80年 代 が60.0,出 生 年 代 不 明 が52.9と な っ て い る。 時 期 が 下 が る に つ れ て 少 しず つ 適 合 率 が 下 降 し て い る が,出 生 年 代 が 不 明 の も の を 除 く と 全 体 で 婚 姻 規 則 へ の 適 合 が250例 で 不 適 合 が93例 の72.9 パ ー セン ト と な っ て い る 。

Ⅲ .シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ・モデル

1.前 提

人 口 と婚 姻 規則 に 関す るシミュレーション の た め に 以下 の前 提 を お く。

A.性 交 は 婚 姻 関 係 を もつ 配 偶 者 に よ って行 な わ れ, B.そ の結 果,配 偶 者 を もつ 女 性 の み が 出産 す る。

C.ま た,配 偶 者 は 限 定 され た 親 族 空 間 か ら求 め られ,特 定 の人 口集 団 の年 齢 別     死 亡 率 と年 齢 別 出生 率,出 生 性比 は時 間 を 越 え て一 定 で あ る とす る。

2.仮 説

  も し,性 交 は婚 姻 関 係 を もつ配 偶 者 に よ って の み行 なわ れ そ の結 果,配 偶 者 を もつ 女 性 のみ が 出生 す る とす れ ぽ,配 偶 者 を 決 定 す る婚 姻規 則 が 複 雑 で あれ ば あ る ほ ど配 偶 者 選 択 に 困難 が生 ず る はず で あ る。 そ して,も し婚 姻 規 則 が 遵 守 され る とす れ ぽ, 婚 姻 規 則 の 複 雑 さに した が って,特 定 の人 口の 増 減 に影 響 が現 れ るはず で あ る。 とい

うの は,配 偶 者選 択 が 困難 にな り,配 偶 者 を もた ぬ 女性 が 出現 す るか らで あ る。 以上 の 仮説 に した が い 複数 の婚 姻 規 則 と人 口の関 係 に つ い て シ ミュ レー シ ョンを試 み る。

3. モデル

    1)モ デ ル の 枠 組 く枠 組 〉

  シ ミュ レー シ ョンは,コンピュータ が 発 生 す る時 間 にそ って 死 亡,出 生,婚 姻 が 出

来 事 と して生 ず る よ う プ ロ グ ラ ム され た(図1)。 以上 の 人 口学 的 な 出来 事 は,あ ら

(14)

図1 シミュレーション の流 れ

か じめ 用 意 された 閉 鎖 的 な 人 口集 団 のな か で 生ず る。 それ ぞ れ の 出来 事 は そ の ロジ ッ クに した が って適 切 な時 点 で発 生 す る乱 数 に よ って推 移 す る。

  閉 鎖 的 な人 口集 団 は,あ る一 定 の年 齢 別 死 亡 確 率 と出生 率,出 生性 比 を もつ 。 そ し て,既 婚 の女 性 に か ぎ り子 ど もを 出 産す る。 人 口の 移動 は考 慮 に いれ な い。 した が っ て,シミュレーション は 閉 ざ され た 世 界 に お い て行 な わ れ る。 また,シ ミュ レ ー シ ョ ソ ・プ ロ グ ラムに はコンピュータ の制御 す る時 計 が 組 み 込 まれ て お り,プ ロ グ ラ ム内 の 一年 ご とに 当初 年 の 人 ロ成 員 全 員 の生 死 の別 ・出生 ・配偶 者 さが しが 行 な われ る。

シ ミ ュ レー シ ョンは100年 間 とす る。

〈3種 の 初 期 人 ロ 〉

 シミュレーション の 結果 に初 期 人 口の規 模 に よる効 果 の可 能 性 を 考 え,3種 の初 期 人 口を用 意 した 。 具 体 的 には この3種 の初 期 人 口は 通婚 圏 に相 当 す る と考 え る こ とが

263

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国立民族学博物館研究報告別冊    15号

で き る 。 そ れ ぞ れa型,b型,  c型 と よぶ 。  a型 は 人 口 が 少 な い 初 期 人 口 で,男92名, 女65名,計157名,b型 は 中 規 模 の 初 期 人 口 で,男174名,女206名,計380名,  c型 は

も っ と も 大 き い 初 期 人 口 で,男351名,女392名,計743名 で あ る 。

  初 期 人 口 は,あ ら か じめ 設 定 し た 初 期 値(同 一 年 齢 の 同 数 の 男 女 が 配 偶 者 選 択 を は じ め る と い う も の)か ら開 始 し,初 期 値 の 影 響 を 十 分 に 脱 した とお も わ れ る200年 間 の 試 行 を 数 回 行 な っ た あ と,人 口学 的 に 偏 り の な い も の を 選 ん だ も の で あ る 。 初 期 人 口 を 決 め る た め の 試 行 に お い て,婚 姻 シ ス テ ム は 単 婚 ・半 族 と した 。 の ち に ふ れ る よ うに,複 雑 な シ ス テ ム は 人 口 減 を ま ね き や す く,初 期 人 口 の 設 定 に と っ て 有 益 で は な く,加 え て,初 期 人 口 中 の 個 人 レ コ ー ドの 基 礎 と な る シ ス テ ム(半 族,ク ラ ン,セ ク シ ョ ソ,サ ブ セ ク シ ョ ン)の 記 録 に と っ て 有 利 な 半 族 シ ス テ ム を 採 用 した も の で あ る 。

〈年 齢 別 死 亡率 〉

 シミュレーション の た め の 年齢 別 死 亡 率 は,0歳 時 平 均 余 命 が 男34.3歳,女37.2歳 の 西 カ メル ー ンの年 齢 別 死 亡 率表 に も とつ い て い る(表ll)。3種 の 初 期 人 口値 は こ の 年齢 別 死 亡 率表 か ら逆 算 して年 齢 別人 口を求 め た。 この数 値 が 採 用 され た理 由 は,

表11年 齢 別 死 亡 率 年齢 階層

    0歳 1‑5歳 6‑10歳 11  一 一   15歳 16‑20歳 21‑25歳 26‑30歳 31‑35歳 36‑40歳 41‑45歳 46‑50歳 51‑55歳 56‑60歳 61‑65歳 66‑70歳 71‑75歳 76‑80歳 80歳 以 上

0.2758 0.0787 0.0403 0.0197 0.Ol57 0.Ol63 0.0231 0.0164 0.0282 0,0276 0.0314 0.0540 0.0874 0.0588 0.0965 0.2000 0.5000 1.0000

0.2562 0.0854 0.0352 0.0224 0.0162 0.0222 0.0255 0.0206 0.0217 0.0356 0.0525 0。0611 0.1032 0.0703 0.0851 0.2000 0.5000 1.0000

(注:1980年 に お け る西 カ メル ー ソの年 齢 別 死 亡 率 『1983年版 世 界 人

    口年 鑑 』 に よる。)

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ア ボ リジ ニの 狩猟 採 集 段 階 での 年齢 別 死 亡 率 に関 す る資 料 が な く,狩 猟 採 集 社 会 で あ る縄 文 時 代 の 推 定平 均 余命 が この程 度 と推 算 され る こ とで あ る こ と,加 え て,年 齢 別 死亡 率 が,平 均 余 命 の如 何 にか か わ らず 相似 で あ る こ とに よ って い る。

〈男女 の 出 生 性 比 〉

  出生 性 比 は 男 子 の0歳 時 死 亡 率 の 高 い こ とか ら 自然 状 態 に お い てや や 男 児が 多 く, 女 児 が少 な く出 産 され る。 そ の 比 率 は,出 産 児 数 の51.22パ ー セ ン トが 男 児 で あ る の に た い して の こ る48.78パ ーセ ソ トが 女 児 で あ る こ とに よ っ てい る。 年 齢 別 死 亡 率 も そ れに 照 ら して0歳 児 の死 亡 率 は 男 児 に 多 くな っ て い る(表11を 参 照)。

〈 出 生 確 率 〉

  可 出 産 年 齢 は13歳 か ら45歳 ま で と し,出 産 間 隔 と して は,3年 間 に 一 回 出 産 す る 場 合 を 最 高 に して,年 齢 別 に 変 化 を も た せ た 。 総 出 生 率(年 齢 別 出 生 率 の 累 積)は ブ ヅ

シ ュ マ ンに な ら い4.69と した[How肌L  1979:216】 。

  2)婚 姻 規 則 の モ デ ル

〈単 婚 と複 婚 〉

  単婚 とは 同一 時 間 内 に 複数 の配 偶 者 の 存在 を認 め ない もの で,配 偶 者 が 死亡 す る こ とに よっ て のみ 次 の 配 偶 者選 択 が 行 なわ れ る。 複 婚 とは 同一 時 間 内 に複 数 の配 偶 者 の 存在 を認 め るが,た だ し配偶 者 の数 の 逆 数 に比 例 して配 偶 者選 択 の確 率 が生 ず る もの と した。 す なわ ち,配 偶 者選 択 は配 偶 者 の 多 い もの ほ ど困 難 に な る ので あ る。 な お, 複婚 の場 合,男 性 に は 複 数 の配 偶 者 と の婚 姻 を認 め るが,女 性 の場 合 に は それ を認 め な い こ とにす る。

〈外婚 規 則 〉

  外 婚 規 則 に は,日 本 型 ・クラ ン型(2種)・ 半 族 型 ・セ ク シ ョン型 ・サ ブ セ ク シ ョ ン型 ・ヨ ロ ン ゴ型(2種)の8種 類 を も うけ る。

  日本 型 とは配 偶 者 選 択 が 父母 兄 弟 姉 妹 以外 に求 め られ る もの で,配 偶 者 の選 択 の幅 は 最 も大 きい。

 クラン 型 とは配 偶 者 を 自己 が所 属 す るクラン 以外 の成 員 か ら求 め らる もの で,所 属 す る人数 を一 定 に した うえ で ク ラ ンの数 を3種 の初 期 人 口値 に よっ て異 な る よ うに し

た。2種 の ク ラ ン型 とはクラン の数 に よ って 人 口変 化 の ちが い が どの よ うに あ らわれ

265

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国立民族学博物館研究報告 別冊    15号

るか をみ よ う とす る もの で,2型 は1型 に対 し半数 の ク ラ ン数 とな って い る。

  半 族型 とは オ ース トラ リアを は じめ とす る社 会 に み られ る社 会 的 な 分類 概 念 で,あ る社 会 を ふた つ の グル ー プに分 割 して い る。 そ れ ぞ れ の社 会 集 団 に所 属 して い る人 び

とは 別個 の カ テ ゴ リーに所 属 して い る と認識 して い る。半 族 組 織 が配 偶 者 選択 に適 用 され る場 合,配 偶 者 は 自己 とは こ とな る半 族 の 中か ら も とめ られ る。

 セクション 型 とは 人 び とを半 族 に 分 割 した あ と,そ れ ぞ れ の半 族 をふ た つ づ つ の系 譜 的世 代 に分 割 す る もの で,配 偶 者 は 対 立 す る半 族 の うち同 一 の 系譜 的 世 代 に 属 す る

もの の中 か らえ らば れ る。

  サ プ セ クシ ョン型 とは 人 び とを半 族 に分 割 した後 それ ぞ れ の半 族 を4つ ず つ の系 譜 的 世 代 に分 割 す る もの で配 偶 者 は対 立 す る半 族 の うち 同一 の系 譜 的世 代 の 中か らえ ら ぼ れ る。

  2種 のヨロンゴ 型 の うち1型 と名 づ け た も のは レヴ ィ=ス トロー ス のモ デ ル に よる も ので,か れ の女性 の限 定 交 換 モデ ル の説 明 のた め に 使 わ れ た もので あ る[レ ヴ ィ=

ス トロース  1977:314‑355】 。 それ に た い して,2型 は 筆 者 の 現 地 で の 聞 き取 りに も とつ くもの で あ る。

  両 者 に 共 通す る規 則 は つ ぎの とお りで あ る。 す なわ ち,ヨ ロ ン ゴ型 とは サ ブ セ クシ ョン型 の 社会 組 織 を 持 って い るが,配 偶 者 は 自己 と同一 の 系 譜 的 世 代 に相 当す る相 手 半 族か ら選 択 され る(こ れ を第 一 選 択 とす る)の み な らず 自己 とは 系譜 的 世 代 が一 つ は なれ た(自 己 の祖 父 母 あ るい は 自己 の孫 に あ た る系 譜 的 世 代)系 譜 的世 代 に相 当す る相手 半 族 か ら選択(こ れ を 第二 選 択 とす る)さ れ る。

  2種 のヨロンゴ 型 の うち,1型 は系 譜 的 に み て 第 一選 択 と第 二 選 択 とが 交互 に あ ら

わ れ る とい うもの で,例 えぽ,自 己(か りに男 性 とす る)の チ チ が第 一 選 択 の配 偶 者

(自 己 の ハ ハ)と 婚 姻 関 係 を結 んだ とす る と,自 己 は第 二 選 択 の な か か ら配 偶 者 選択

を行 な い,自 己 の異 性 キ ョウダイ は 第一 選 択 か ら配 偶 者 を選 択 す る。 さ らに,自 己 の

ムス コは 自己 とは異 な る配偶 者 選 択 に よ って婚 姻 し,自 己 の ムス メは 自己 と同 一 の 配

偶 者 選 択 をす る こ とに な る。 それ にた い して,2型 は 第 一 選択 と第 二 選 択 を 現 実 に 存

在 す る配 偶者 候 補 に よ って 決定 す る も ので,第 一 選 択 の候 補 者 が存 在 す れ ば そ れ を 選

ぶ が,も しな けれ ぽ 第 二 選択 か ら配 偶 者 を 選 ぶ。 した が って,自 己 とは異 な る半 族 の

同 一 の系 譜 的 世 代 か ら配 偶 者 を選 択 す る とい うセ ク シ ョン型 とは 事 実上,同 一 で あ る。

(18)

〈婚 姻規 則 の遵 守 〉

  また,ヨ ロ ンゴの 現 実 の人 口資 料 か らえ られ た 婚 姻 規 則 に対 す る遵 守 率 を モ デル に ふ くめ た。 そ れ は,ヨロンゴ2型 に つ い て1婚 姻 機 会 あ た り70パ ー セ ソ トの確 率 で 規 則 を ま も り,そ れ 以 外 は逸 脱 的 な配 偶者 選 択 を 行 な うもの で あ る。 しか し,出 生 した 子 供 の系 譜 的 世 代 名 称 は母 系 的 に 決 定 され るの で,た とえ 両親 の婚 姻 が逸 脱 的 で あ っ て も,規 則 どお りで あ る。 以上,シ ミュ レー トす る シス テ ムのバ リエ ー シ ョンは 婚 姻 規 則 の遵 守 率 を変 化 させ るヨロンゴ3型 を含 め て9種 類 あ って,さ らに そ れ ぞれ 単 婚

と複婚 が あ る の であ わ せ て18通 りと な る。

.シミュレーション 結 果 の分 析

1.結 果 の 表 示

 シミュレーション は18通 りの モ デ ルで3種 類 の初 期 人 口を それ ぞれ10回 つ つ試 行 し た 。 結 果 の表 示 は10回 の試 行 か ら人 口増 加率 を と り,そ の 平均 値,人 口 の最 大値,最 小 値 お よび平 均 値 を算 出 した。

2.単 婚 の 場 合(表12a)

  初 期 人 口157人 の 場 合,100年 間 のシミュレーション の 結 果,人 口が 上 昇 傾 向 に あ る も の は 人 口増 加 率 の 高 い も の か ら ク ラ ン1型,ヨロンゴ3型,日 本 型,半 族 型 の4種 で,最 大 の 人 口 増 加 率 を 示 す も の は ク ラ ン1型 の 人 口 増 加 率0.45パ ー セ ン トで あ る。

そ れ に た い して,の こ るクラン2型,セ ク シ ョ ン 型,サ ブ セ ク シ ョ ン型,ヨロンゴ1

表12a各 初 期 人 口ご との平 均 人 口増 加率 の比 較:単 婚 の場 合 シ ス テ ム型

日 本 型 クラン 1型 ク ラ ン2型 半 族 型

セクション 型

サ ブセクション 型

ヨ ロ ン ゴ1型 ヨ ロ ン ゴ2型 ヨ ロ ン ゴ3型

157人

  0.0039   0.0045

‑O .0091   0.0029

‑O .Ol12

‑0 .Ol35

‑O .0455

‑O .Ol12   0.0040

380人

0.0068   0.0063

‑0 .0139 0.0037

‑0 .0046

‑0 .0081

‑0 .0146

‑0 .0046 0.0034

743人 0.0064 0.0073

‑0 .0011 0.0028 0.0002 0.0000

‑O .0064 0.0002 0.0049

267

(19)

国立民族学博物館研 究報告別冊  15号 型,ヨロンゴ2型 は人 口が 減 少 してゆ く。 最悪 の シス テ ムはヨロンゴ1型 とな って い

る。

  初 期 人 口380人 の場 合 人 口増 加 率 の 高 い もの か ら 日本型,クラン1型,半 族 型,ヨ ロ ソ ゴ3型 と,初 期 人 口157人 の 場 合 と順位 は異 な る もの の シス テ ム の種 類 は 同様 で あ る。一 、 残 る4種 は人 口増 加 率 が マ イ ナス で あ る。 もっ と も低 い 人 口増 加 率 はヨロンゴ 1型,続 い てクラン2型 とな り,サ ブセ ク シ ョン型 とセクション 型 ・ヨロンゴ2型 は 人 口増 加率 を マ イ ナ ス な が ら上 昇 させ る。 人 口増 加 率 は 初 期 人 口157人 の場 合 よ り ク ラ ソ2型 以 外 の す べ て の シ ス テ ムに おい て 向 上 が み られ る。

  初 期 人 口743人 の場 合,い ず れ の シス テ ム も人 ロ増 加 率 を 向上 させ,マ イ ナ ス成 長 はクラン2型 とヨロンゴ1型 の2種 とな る。 人 口増 加 率 が マイ ナ ス成 長 した も のは 日 本 型 と半 族 型 で,そ れ 以外 の シ ステ ムは 目ざ ま し く人 口増 加 率 を 向上 させ て い る。

  初期 人 口の 影 響 を み る と,初 期 人 口が 大 きい ほ ど婚 姻 規 則 の 複 雑 さに よる人 口減 少 を補 う傾 向 が み られ る。 この 初 期 人 口の大 き さ とは現 実 の社 会 に お い て は通 婚 圏 の規 模 とみ なす こ とが で き るの で,複 雑 な婚 姻 規 則 ほ ど通 婚 圏 を 拡 大 す る こ とに よ って人 口減 少 の不 利 を 補 うこ とが で き る と考 え られ る。

3.複 婚 の 場 合(表12b)

  初 期 人 口157人 の 場 合,ヨロンゴ1型,サ ブ セ ク シ ョ ン型,セ ク シ ョ ン型 ・ ヨ ロ ン ゴ2型 の4種 の シ ス テ ム は 人 口増 加 率 が マ イ ナ ス で あ る の に た い し て そ れ 以 外 の シ ス テ ム は 人 口増 加 率 が プ ラ ス で あ る 。も っ と も 人 ロ増 加 率 が 高 い も の は ヨ ロ ン ゴ3型 で,

クラン 1型 が そ れ に つ ぐ。 ク ラ ン2型,半 族 型,日 本 型 は ほ ぼ 同 様 の 人 口増 加 率 で こ れ に つ ぐ。

表12b  各 初 期 人 口 ごとの 平 均 人 口増 加 率 の 比 較:複 婚 の場 合 シ ス テ ム 型

日本 型 ク ラ ン1型

クラン 2型 半 族 型

セクション 型 サ ブ セ ク シ ョ ン 型

ヨ ロ ン ゴ1型 ヨロンゴ 2型 ヨ ロ ン ゴ3型

157人

0.0045   0.0058 0.0047   0.0046

‑0 .0092

‑0 .Ol55

‑O .0267

‑0 .0092   0.0059

380人

0.0094   0.0087   0.0056   0.0090   0.0061   0.0038

‑0 .0022   0.0061   0.0079

743人

0.0089

0.0090

0.0051

0.0088

0.0063

0.0062

0.OO21

0.0063

0.0070

(20)

  初 期 人 ロ380人 の 場 合,日 本 型 が も っ と も 高 く,つ づ い て 半 族 型,クラン1型,ヨ ロ ソ ゴ3型 が 順 に 人 口増 加 率 が 高 い 。 そ れ に た い し て,初 期 人 ロ157人 の 場 合 人 口 増 加 率 が マ イ ナ ス で あ った サ ブセクション 型,セ ク シ ョ ン型,ヨ ロ ン ゴ2型 は プ ラ ス に 転 じ,マ イ ナ ス は ヨ ロ ン ゴ1型 の み で あ っ た 。 人 口 増 加 率 は す べ て の シ ス テ ム に お い て 増 加 した 。

  初 期 人 口734人 の 場 合,人 口増 加 率 の 高 さ の 順 位 で は 先 の2種 の 初 期 人 口 と ほ ぼ 同 じで あ る が,人 口増 加 率 が マ イ ナ ス の シ ス テ ム は な くな っ て い る 。 人 口増 加 率 が も っ と も低 い も の は ヨ ロ ン ゴ1型 と 変 わ りな い 。 しか し,人 口増 加 率 の 増 加 は プ ラ ス に 転 じたヨロンゴ1型 と サ ブ セ ク シ ョ ン型 を 除 い て,微 増 も し く は 減 少 して お り規 模 の 効 果 を 生 か し て い な い よ う に 見 え る 。

  複 婚 制 の 優 位 さ は,す べ て の 初 期 人 口,す べ て の シ ス テ ム型 に お い て 単 婚 の 人 口増 加 率 よ り複 婚 の シ ス テ ム の 人 口増 加 率 が ま さ っ て い る こ と に よ っ て も 示 さ れ る 。 複 婚 の シ ス テ ム が 単 婚 の シ ス テ ム に 比 べ て,女 性 と い う人 口 資 源 を 有 効 利 用 して い る こ と を 示 し て い る と も い え る 。 そ れ は,シ ス テ ム が 複 雑 で あ れ ぽ あ る ほ ど 有 効 で あ る は ず で あ る 。 複 雑 な シ ス テ ム とは 女 性 と い う人 口資 源 へ の ア ク セ ス を よ り強 く制 限 す る も の で,も し複 婚 の シ ス テ ム で あ れ ぽ,有 資 格 の 配 偶 者 候 補 が 資 源 を 独 占 す る こ と に な っ て,資 源 の 有 効 利 用 が 図 られ る こ と に な る 。 た と え ば,ク ラ ン2型,セクション 型

・ヨ ロ ン ゴ2型 ,サ ブ セ ク シ ョ ン型,ヨ ロ ン ゴ1型 の 単 婚 の 場 合 と複 婚 の 場 合 を み れ ぽ 歴 然 と し て い る 。

4.総 合 評 価(表13a,b,c,d)

〈 シ ス テ ム の 効 果 〉

  初 期 人 ロ の 規 模 に か か わ らず 人 口増 加 率 の 上 位 に 位 置 づ け られ る の は 日本 型,半 族 型,クラン1型,ヨ ロ ン ゴ3型 の 複 婚 シ ス テ ム で あ る 。 ま た,日 本 型,ク ラ ン1型 の 単 婚 シ ス テ ム も 上 位 グ ル ー プ に 続 い て い る。 ぎ ゃ くに,下 位 に 位 置 づ け ら れ る の は ヨ ロ ン ゴ1型,サ ブセクション 型,ヨロンゴ2型 ・セクション 型 の 単 婚 シ ス テ ム で あ る 。 ヨ ロ ン ゴ3型 に つ い て は,後 に の べ る の で,こ こ で は そ れ 以 外 の シ ス テ ム に つ い て 評 価 して み る 。

  上 位 の シ ス テ ム に は 複 婚 の も の が 多 く,下 位 の シ ス テ ム に は 単 婚 の も の が 多 い 。 複 婚 の 単 婚 に 対 す る 優 位 に つ い て は 前 項 に ふ れ て い る 。 シ ス テ ム の 内 容 に つ い て み る と 上 位 の シ ス テ ム は,9種 の シ ス テ ム の うち 配 偶 者 選 択 の 方 法 が 下 位 の シ ス テ ム に 比 べ て 単 純 で あ る。

269

(21)

国立民族学博物 館研 究報告別冊  15号

  日本 型 は 父母 兄 弟 姉 妹 の 婚姻 を禁 じた の で 配偶 者 の候 補 の制 限 は最 低 限 とい え る。

また,クラン1型 も,自 己 と同一 のクラン の成 員 に た い して配 偶 者 選 択 が 禁 じられ る にす ぎな い。 半族 型 は,異 性 の人 口を 二 分 して 自己 と同一 の 半族 成 員 に対 し配 偶 者 の 禁 止 が 行 な わ れ る も ので あ る。 それ にた い して,ヨロンゴ2型 ・セ ク シ ョ ン型 に お い ては 半 族 に 加 え て2種 の 系譜 的世 代 が 加 わ る もの で,異 性 の人 口を四 分 して 配偶 者 を 4分 の1の 異 性人 口か ら求 め る こ とに な る。 また,サ ブセ クシ ョ ン型 は,半 族 に 加 え て4種 の 系 譜 的世 代 が加 わ る もの で,異 性 の 人 口を 八分 して 配偶 者 を8分 の1の 異性 人 口か ら求 め る こ とに な る。ヨロンゴ1型 は,サ ブセ クシ ョン型 のバ リエ ー シ ョンで

あ る。

表13a  婚 姻規 則 シ ス テ ムの 評価:全 初 期 人 口 [上 位1‑10位 ま で]

順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位

シ ス テ ム 型

日 本 型 ・複 婚 クラン 1型 ・複 婚 半 族 型 ・複 婚 日 本 型 ・複 婚 半 族 型 ・複 婚

クラン 1型 ・複 婚 ヨ ロ ン ゴ3型 ・複 婚

クラン 1型 ・単 婚 ヨ ロ ン ゴ3型 ・複 婚 日 本 型 ・単 婚

初期 人 口

380 743 380 743 743 380 380 743 743 380

人  口 増加率

0.0094 0.0090 0,0090 0.0089 0.0088 0.0087 0.0079 0.0073 0.0070 0.0068

100年 後 に お け る 最大値

1189 2365 1087 2283 1992 1169 1084 1742 1747 978

最小値

663 1291 679 1337 1187 676 523 1161 1186 605

平均値

997.70 1864.30 950.20 1836.00 1815.00 928.50 858.10 1558.10 1521.10 764.60 [下 位1‑10位 ま で]

順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位

シ ス テ ム 型

ヨロンゴ 1型 ・単 婚 ヨ ロ ン ゴ1型 ・複 婚 サ ブセクション 型 ・複 婚 ヨ ロ ン ゴ1型 ・単 婚 ク ラ ン2型 ・単 婚 サ ブ セ ク シ ョ ン型 ・単 婚

ヨロンゴ 2型 ・単 婚

セクション 型 ・単 婚

ヨロンゴ 2型 ・複 婚 セ ク シ ョ ン型 ・複 婚

初 期 人 口

157 157 157 380 380 157 157 157 157 157

人  口 増加率

一 〇.0455

‑0 .0267

‑0 .0155

‑0 .0146

‑0 .0139

‑0 .0135

‑0 .0112

‑0 .0112

‑O .0092

‑0 .0092

100年 後 に お け る 最大値

16 34 160 164 187 86 162 162 110 110

最小値

0 2 1 55 39 9 27 27 27 27

平均値

  6.40 14.20 68.20 93.40 105.10 46.50 57.70 57.70 67.70 . 67.70

(22)

      表13b  婚 姻 規 則 シ ステ ムの評 価:初 期 人 口157人 の場 合       [上位1‑5位]

順位 1位 2位 3位 4位 5位

シ ス テ ム 型

ヨ ロ ン ゴ2型 改 ・複 婚 ク ラ ン1型 ・複 婚 ク ラ ン2型 ・複 婚 半 族 型 ・複 婚

ク ラ ン1型 ・単 婚 日本 型 ・複 婚

人   口 増加率

0.0059 0.0058 0.0047 0.0046 0.0045 0.0045

100年 後 に おけ る 最大値

381 374 380 367 372 333

最小値

214 179 137 163 154 139

平均値

290.90 289.10 266.80 259.50 25420

255.80 [下 位1‑5位 コ

順位 1位 2位 3位 4位 5位

シ ス テ ム 型

ヨ ロ ン ゴ1型 ・単 婚 ヨロンゴ 1型 ・複 婚 サ ブセクション 型 ・複 婚 サ プ セ ク シ ョ ン型 ・単 婚

ヨ ロ ン ゴ2型 ・単 婚 セクション 型 ・単 婚

人  口 増加率

一 〇.0455

‑0 .0267

‑0 。0155

‑0 .0135

‑0 .0112

‑0 .0112

100年 後 に お け る 最大値

16 34 160 86 162 162

最小値

0 2 1 9 27 27

平均値

6.40 14.20 68.20 46.50 57.70 57.70

      表13c [上位1‑5位]

婚 姻 規 則 シス テ ム の評 価:初 期 人 口380人 の場 合

順位 1位 2位 3位 4位 5位

シ ス テ ム 型

日本 型 ・複 婚 半 族 型 ・複 婚

クラン 1型 ・複 婚 ヨ ロ ン ゴ3型 ・複 婚 日本 型 ・単 婚

人   口 増 加率

0。0094 0.0090 0.0087 0.0079 0.0068

100年 後 に おけ る 最大値

ll89 1087 1169 1084 978

最小値

663 679 676 523 605

平均値

997.70 950.20 928.50 858.10 764.60 [下位1‑5位]

順位 1位 2位 3位 4位 5位

シ ス テ ム 型

ヨロンゴ 1型 ・単 婚 ク ラ ン2型 ・単 婚 サ ブセクション 型 ・単 婚

セクション 型 ・単 婚

ヨ ロ ン ゴ2型 ・単 婚

人  口 増加率

一 〇.Ol46

‑0 .0139

‑0 .0081

‑0 .0046

‑0 .0046

100年 後 に お け る 最大値

164 187 271 477 477

最小値

55 39 87 122 122

平均値

93.40 105.10 178.90 271.00 271.00

271

(23)

国立民族学博物館研究報告別冊   15号

表13d  婚 姻 規 則 シス テ ム の評 価:初 期 人 口743人 の 場 合 [上 位1‑5位]

順位 1位 2位 3位 4位 5位

シス テ ム型

クラン 1型 ・複 婚 日本 型 ・複 婚 半 族 型 ・複 婚

クラン 1型 ・単 婚 ヨ ロ ン ゴ3型 ・複 婚

人  口 増加率

0.0090 0.0089 0.0088 0.0073 0.0070

100年 後 に お け る 最大値

2365 2283 1992 1742 1747

最小値

1291 1337 1187 1161 1186

平均値

1864.30 1836.00 1815.00 1558.10 1521.10 [下 位1‑5位]

順位 1位 2位 3位 4位 5位

シ ス テ ム型

ヨ ロ ン ゴ1型 ・単 婚 クラン 2型 ・単 婚 サ ブ セ ク シ ョ ン 型 ・単 婚

ヨロンゴ 2型 ・単 婚 セ ク シ ョ ン型 ・単 婚

人  口 増加率

一 〇.0064

‑0 .0011   0.0000   0.0002   0.0002

100年 後 に お け る 最大値

512 750 1031 997 997

最小値

307 602 539 558 558

平均値

395.90 668.10 755,30 77L60 771.60

  概 念 的 な 配 偶 者 候 補 の 数 は 日 本 型,クラン1型,クラン2型,半 族L型,セ ク シ ョ ン 型 ・ヨロンゴ2型,サ ブ セ ク シ ョ ン 型,ヨ ロ ン ゴ1型 の 順 に 少 な くな っ て ゆ く。 シ ミ

ュ レ ー シ ョ ソの 結 果 も こ れ に 即 して い る と い え る 。

〈 婚 姻 規 則 に 対 す る 適 合 率 〉

  ヨ ロ γ ゴ3型 は,70パ ー セ ソ トの 確 率 で 婚 姻 規 則 に 適 合 す る よ うに した も の で あ る 。 婚 姻 規 則 か ら は ず れ た カ ップ ル は,系 譜 的 世 代 の 規 則(第 一一選 択 も し くは 第 二 選 択 か ら 配 偶 者 を 選 ぶ と い う も の)は 守 っ て い な い が,半 族 規 則 は 守 り,子 供 の 系 譜 的 世 代 は 母 親 の そ れ に よ っ て 決 ま る と い う2点 に つ い て は 規 則 ど お りで あ る 。

  こ の シ ス テ ム は,単 婚 の 場 合 と 小 規 模 な 初 期 人 口 の 場 合 に 効 果 が 大 き い 。 初 期 人 口

が743人 で 複 婚 の 場 合,ヨロンゴ2型 とヨロンゴ3型 の 人 口増 加 率 の 差 は0.0007で あ

る の に た い して,743人 で 単 婚 の 場 合 は0.0047,380人 で 複 婚 の 場 合0.OO18,380人 で

単 婚 の 場 合0.008,157人 で 複 婚 の 場 合0.0151,157人 で 単 婚 の 場 合0.0152と な っ て,

両 者 の 差 が ひ ら く。

(24)

V.討 論

  ガ リ ウ ィ ンク ・タウン シ ップは1942年 に メ ソジ ス ト ・ミッション に よって 創 立 され た 。ミッション 開設 の 目的 は,崩 壊 しつ つ あ る民 族 とみ な され て い た ア ボ リジ ニを救 済 し よ う とす る活 動 の 一環 と して,キ リス ト教 の布 教 活 動 お よび 農業 に経 済 的 基 盤 を お く 自立 的 な ア ボ リジ ニ ・コ ミュ ニテ ィの 成長 を きず くこ と,西 洋 的生 活 様 式 を 教 育 す る こ とに あ った 。 そ のた め,教 会 と学 校,農 場,病 院 が そ の柱 とな って コ ミ ュニテ ィが 運 営 され た。ミッション 建設 の の ち,ガリウィンク の所 在 す る エル コ島 お よび 周 辺 の 島 々や 本土 か ら人 口移 動 が 起 こ り,コ ミ ュニ テ ィに 人 口集 中が 起 こ った。 白人 社 会 は,ガリウィンク ・タ ウ ンシ ップへ の集 住 と市 場 経 済 を もた ら した。 か つ て な い規 模 の人 口の集 中 を み た ガ リウ ィ ン クの現 状 は,他 の ア ボ リジ ニ ・コ ミュニ テ ィ と同 じ

く白人 社 会 との 接 触 変 容 に よっ て崩 壊 す る と信 じ られ て い た 状 態 か ら,新 た な 社会 再 編成 へ の途 上 の姿 と見 る こ とが で き る。

  ガ リウ ィ ン クの現 状 が ヨ ロ ン ゴ人 ロへ あ た え る影 響 は次 の4点 に 要約 で き る。 つ ま り,ま ず,ガ リウ ィ ン クが 建 設 され た こ とに よ って1000人 を 越 え る人 び とが集 住 した こ と。 この結 果,数 多 くの 部 族 が 集結 し,事 実 上 通婚 圏 が拡 大 した 。 次 に,白 人 社 会 との接 触 に よ って 各種 の影 響 を こ うむ りつつ も,婚 姻 規 則 に お い て70%前 後 の適 合 率 が維 持 され て い る こ と。 キ リス ト教 は 複婚 を忌 避 し単 婚 をす す め,契 約 婚 や 老 人 に よ る娘 との婚 姻 に た い して,反 発 が あ る こ と。 出生 数 が 増 加 して い る こ と,で あ る。

 シミュレーション の 結 果 とあわ せ て 考 察す る と次 の こ とが い え る。 通 婚 圏 の 拡 大 は 人 口増 加 率 に プ ラス に は た ら く。 そ して,第 一 選 択 と第 二 選 択 以 外 の配 偶 者 との 婚 姻 が増 え,婚 姻 規 則 に 対 す る適 合 率 が 落 ち る と人 口増 加 率 に プ ラス セ こは た ら く。しか し, 全面 的 に単 婚 を 選 択 す る と人 口増 加 率 が 下 落す る。ガリウィンク のヨロンゴ を 見 る と, 出生 数 の増 加傾 向 に も現 れ て い る よ うに人 口は 増 加 の途 上 に あ る。

  婚 姻 規 則 に た い して70パ ーセン トの適 合 率 の 意 味 す る と ころ は何 であ ろ うか。 た と え ぽ,過 去 に お い て ほ ぼ100パ ー セン トに近 い 遵 守 率 を も って お り,ご くわ ず か の例 外 だ け が規 則 を ま も って い な い とい う社会 が存 在 した と仮 定 す る。 それ が な ん らか の 社会 変 化 の結 果 社 会 規範 の強 制 力 が お とろ え,規 則 にた い す る遵守 率 が落 ち た とみ る

こ とに し よ う。

  た しか に,ア ボ リジ ニー 般 やヨロンゴ が 白人 との接 触 以降 にお い て そ の社 会 的 な統 制 力 が 低 下 した こ とは い なめ な い。 す でに み た よ うに キ リス ト教 の影 響 とみ られ る配

273

参照

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