博 士 ( 工 学 ) 竹 田 英 章
学 位 論 文 題 名
高 波 浪 条 件 を 対 象 と し た 防 波 堤 の 耐 波 設 計 法 の 高 度 化 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の要 旨
1959年に 「 港 湾工 事 設 計示 方 要 覧」 が 、1959年 に「 港 湾 工事 設 計 要覧 」 が 刊行さ れ 、 いら い 港 湾技 術 は 長足 の進歩を 遂げ、 港湾建設 技術は1967年に「港 湾構造 物設計 基準」として集大成された。そして最新の港湾技術は「港湾の施設の技術上の基準・同解説」
に折り込まれっつ現在に至っている。
しかし、海域での活動が広範囲に展開され、防波技術が格段に発展したのにもかかわらず、
防波 堤災害の 減少傾 向はみら れない。 過去30年 間の防波 堤災害事例によれば、消波工の 被災が最も多く、っいで堤体の滑動・転倒が多い。
防波堤は設計波高を多少上回る波浪に対しても致命的被災を受けない構造物であるのが望 ましく、この原因としては、設計波浪算定法に起因するものもあるが、防波堤の安定限界状 態における研究が未だ充分ではないことによるものである。
このため、本研究では、防波堤の滑動現象と消波工を構成する消波ブロックの安定現象を 追究した。そして、耐波設計法の向上に必要ナよ課題を選定して、実施設計の観点から実験的 研究によりそれらの課題を検討した。
第1章の序論では研究の背景と目的を述べてある。
第2章では、現行設計法における未解明問題すナよわち混成堤直立部の滑動現象、消波ブロ ック被覆堤の直立部に作用するカ、消波プロックの安定問題および従来ケーソンに消波機能 を付加することの可否を検討した。そして、最近の防波堤災害事例から耐波設計法高度化に 必要な課題を選定した。
混成堤直立部の滑動は、ロッキングによルマウンドが締まることによるズレの状態、滑動 が始まる遷移状態、明らかに滑動と判断される状態の3段階に分類ホることができ、現行の 波力算定式は明らかに滑動が認められる状態に相当するものであることを示した。消波プ口 ック被覆堤の直立部に作用するカは、消波プロックの圧力、消波工を通過して壁体に作用す る流体カおよび消波工の波浪作用時の反カで、平常時および波浪時の直立部に作用すtるカの 機構を追究した。消波工空隙の大きさに関しては、消波プロックの重量が大きくなって形状 が大きくなると、壁面に作用する波圧は大きくナょるが、消波工の天端幅を2〜3ケ並びとす る現行設計では、プロック重量の増大に伴う空隙の大きさの増大は消波工断面の増加で補完 されている。消波プロックの波浪安定所要重量はハドソン式により算定されるが、同式は 砕波を前提に導かれているので、非砕波領域にあっては安定重量が波高の3乗に比例するか どうかを検証しなけれぱならない。また、同式には周期および斜め入射波が考慮されていな い。水理模型実験より非砕波領域においても安定重量は波高の3乗に比例することを確かめ た。 消 波 工の 法 勾 配に つ いては、 ハドソ ン式の適 用限界 は4/3くcotゼく2で、 法勾配 を1:2より 緩 く して もcotば‑2で の 重 量が 必 要 で ある 。 周 期に 関 し ては 、 周 期7秒以 下および14秒以上の波にたいしてはKo値が小さくなる。一般に周期の短い設計波は波高が
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小さいので、波高3乗の点から特に留意しなければならない。斜め入射波に対してはブロッ ク重量を増減するにはいたらない。従来ケ←ソンの外側隔室を消波部とするケーソンの滑動 抵抗カは、混成堤と消波プロック被覆堤の中間に位置する。ことに上部透過・下部不透過壁 ケ ― ソ ン に あ っ て は 周 期 の 長 い 波 に 対 し て も 消 波 効 果 の 大 き い こ と が 判 明し た。
以上の検討により、現 行設計法での未解明問題が明らかになったので、最近10年間の災 害事例を検討した結果、波力問題として高天端混成堤に作用する波カとケーソンに作用する 揚圧カを、直立部の滑動抵抗増大策として堤体背後補強工法とアスファルトマット工法を、
消波プロックに関しては海底急勾配条件下における消波プロック被覆堤の安定性、消波プ口 ック大重量化対策としての高比重コンクリ―トの導入および消波ブロック被覆堤の堤頭処理 を、耐波設計法の高度化に必要な課題として選定した。
第3章では、堤体の波力算定法にかかわる事項、ここでは港湾の新しい要請である親水防 波堤を念頭に、しかも致命的な災害を被る可能性のある高天端混成堤の波カと設計にあたり 大きナょ要素を占める揚圧カにっいて検討した。高天端混成堤の直立部に働く波力算定法では、
波力増大が顕著になる条件を示した。高天端に伴い静水面とその上方で波圧は増大して壁体 に作用する波カは合田の式で算定される値よりも大きくナょるので、合田の式を高天端防波堤 にも適用できるように新しいパラメータを導入した。揚圧カにっいてはフーチング付きケー ソンでその特性を検討した。現行設計法はフーテングが短い場合は安全側、長い場合には危 険側の設計とナよる。
第4章では、直立部の滑動抵抗増大策として、背後盛石等による堤体補強工法とアスフア ルトマット工法を採り上げ、アスフアルトマットにっいては品質特性の経年変化を調査した。
補強体の破壊時の滑り面は、現行設計の滑動抵抗が最小となる滑り面とは異ナょっている。補 強工法での滑動抵抗カは、補強体が方塊あるいは盛石いずれの場合でも、直立部の滑動抵抗 カと補強体の滑動抵抗カとの和として求めることが可能であることを示した。アスフアルト マット工法にっいては、低温海域の増毛港にアスフアルトマットの供試体を海中に沈設して 品質特性の変化を調査した。同時にケ―ソン下面から採取した7年経過後のアスフアルトマ ットにっいても試験を行った。7年経過後も品質劣化の徴候はみられず、摩擦係数の低下も 全くなかった。したがって、海中下のアスフアルトマット工法は充分に実用に耐えられるこ とが明らかになった。
第5章では、消波ブロック被覆堤の設計法高度化に関して、急勾配海底地形における波力、
消波プロック大重量化対策としての高比重コンクリート消波プロックの安定性および堤頭部 における消波プロックの安定性にっいて検討した。急勾配条件下では衝撃砕波により直立堤 では 現行 設計 法で の2〜3.7倍の波カが生じた。 消波工の設置により衝撃砕波カは消失す るが、それでも現行設計での波圧低減 率を1 .0にする必要がある。消波工はHI/|>1で法 先が不安定になり、消波ブ口ックは現行設計のK。値では安定が保持されない。消波ブ口ック の比重の違いによる安定性にっいては、比重を高めることによる重量増大の効果は大きい。
小さな被害率に対しては比重の違いによるK。値の違いはほとんどみられないが、被害率5% では比重が大きくなるとK。値は大きくなっている。なお、比重2.3の普通コンクリートで は周期の短い波に対してはKo値が小さくなっているが、比重の大きなコンクリ―トではその ような傾向はみられない。消波プロック被覆堤にっいて大規模不規貝lI波平面実験を実施した。
堤頭部では港内側の端部周辺のプロックの移動が顕著でしかも堤幹部に比べて被害が進行し やすい。結果として堤頭部の消波プロ ック重量は堤幹部の1.5倍必 要であることが確認さ れた。
第6章の結言侖では、本研究全般のとりまとめを行って、主要な結諭を示した。
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 佐 伯 浩 副 査 教 授 板 倉 忠 興 副 査 教 授 藤 田 睦 博 副 査 助 教 授 山 下 俊 彦 学位論 文題名
高波 浪条件 を対象とした防波堤の 耐波 設計法 の高度化に関する研究
1950年 に 「 港 湾 工 事 設 計 示 方 要覧 」が 、1959年 に「 港湾 工事 設 計要 覧」 が刊 行さ れ 、い らい 港湾 技術 は長 足の 進歩 を 遂げ 、港 湾建 設技 術は1967年に「港湾構造物設計 基準」として集大成された。そして最新の港湾技術は「港湾の施設の技術上の基準・同解説」
に折り込まれっつ現在に至っている。
しかし、海域での活動が広範囲に展開され、防波技術が格段に発展したのにもかかわらず、
防 波堤 災害の減少傾向はみられない 。過去30年間の防波堤災害事例によれぱ、消波工の 被災が最も多く、っいで堤体の滑動・転倒が多い。
防波堤は設計波高を多少上回る波浪に対しても致命的被災を受けない構造物であるのが望 ましく、この原因としては、設計波浪算定法に起因するものもあるが、防波堤の安定限界状 態における研究が未だ充分ではナょいことによるものである。
このため、本研究では、防波堤の滑動現象と消波工を構成する消波プロックの安定現象を 追究した。そして、耐波設計法の向上に必要な課題を選定して、実施設計の観点から実験的 研究によりそれらの課題を検討した。
第1章の序論では研究の背景と目的を述べている。
第2章では、現 行設計法における未解明問題すなわち混成堤直立部の滑動現象、消波ブロ ック被覆堤の直立部に作用するカ、消波プロックの安定問題および従来ケ―ソンに消波機能 を付加することの可否を検討した。そして、最近の防波堤災害事例から耐波設計法、高度化 に必要な課題を選定した。
混成堤直立部の滑動は、ロッキングによルマウンドが締まることによるズレの状態、滑動 が始まる遷移状態、明らかに滑動と判断される状態の3段階に分類することができ、現行の 波力算定式は明らかに滑動が認められる状態に相当するものであることを示した。消波プロ ック被覆堤の直立部に作用するカは、消波プロックの圧力、消波工を通過して壁体に作用す る流体カおよび消波工の波浪作用時の反カで、平常時および波浪時の直立部に作用するカの 機構を追究した。水理模型実験より非砕波領域においても安定重量は波高の3乗に比例する こと を確 かめ た。 消波 工の 法勾 配 にっ いて 憾、 ハド ソン 式の 適用限界は4/3くcotaく 2で 、 法勾 配を1:2より 緩く して もco ta‑2での 重量 が必 要で ある。周期に関しては、
周期7秒以下およ び14秒以上の波にたいしてはK。値が小さくなる。一般に周期の短い設計 波は波高が小さいので、波高3乗の点から特に留意しナょければならない。斜め入射波に対し
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てはプロック重量を増減するにはいたらない。従来ケ―ソンの外側隔室を消波部とするケー ソンの滑動抵抗カは、混成堤と消波プロック被覆堤の中間に位置する。ことに上部透過・下 部不透過壁ケーソンにあっては周期の長い波に対しても消波効果の大きいことが判明した。
さらに、最近10年間の災害事例を検討した結果、波力問題として高天端混成堤に作用す る波カとケーソンに作用する揚圧カを、直立部の滑動抵抗増大策として堤体背後補強工法と アスファルトマット工法を、消波プロックに関しては海底急勾配条件下における消波プロッ ク被覆堤の安定性、消波ブロック大重量化対策としての高比重コンクリートの導入および消 波ブ ロッ ク被 覆堤 の堤 頭処 理を 、耐 波設計法の高度化に必要な課題として選定した。
第3章では、堤体の波力算定法にかかわる事項、ここでは港湾の新しい要請である親水防 波堤を念頭に、しかも致命的な災害を被る可能性のある高天端混成堤の波カと設計にあたり 大きな要素を占める揚圧カにっいて検討した。高天端混成堤の直立部に働く波力算定法では、
波力増大が顕著になる条件を示した。高天端に伴い静水面とその上方で波圧は増大して壁体 に作用する波カは合田の式で算定される値よりも大きくナよるので、合田の式を高天端防波堤 にも適用できるように新しいパラメ―タを導入した。揚圧カにっいてはフーチング付きケ―
ソンでその特性を検討した。現行設計法はフーチングが短い場合は安全側、長い場合には危 険側の設計となる。
第4章では、直立部の滑動抵抗増大策として、背後盛石等による堤体補強工法とアスフア ルトマット工法を採り上げ、アスフアルトマットにっいては品質特性の経年変化を調査した。
補強体の破壊時の滑り面は、現行設計の滑動抵抗が最小となる滑り面とは異なっている。補 強工法での滑動抵抗カは、補強体が方塊あるいは盛石いずれの場合でも、直立部の滑動抵抗 カと補強体の滑動抵抗カとの和として求めることが可能であることを示した。アスフアルト マット工法については、低温海域の増毛港にアスフアルトマットの供試体を海中に沈設して 品質特性の変化を調査した。同時にケ―ソン下面から採取した7年経過後のアスフアルトマ ットにっいても試験を行った。7年経過後も品質劣化の徴候はみられず、摩擦係数の低下も 全くなかった。したがって、海中下のアスフアルトマット工法は充分に実用に耐えられるこ とが明らかになった。
第5章では、消波プロック被覆堤の設計法高度化に関して、急勾配海底地形における波力、
消波プロック大重量化対策としての高比重コンクリート消波プロックの安定性および堤頭部 における消波プロックの安定性にっいて検討した。急勾配条件下では衝撃砕波により直立堤 では現行設計法での2〜3.7倍の波カが生じた。消波工 の設置により衝撃砕波カは消失す るが、それでも現行設計で の波圧低減率を1.0にする必要がある。消波工はH i/a冫1で法 先が不安定になり、消波プロックは現行設計のKo値では安定が保持されない。消波ブロック の比重の違いによる安定性にっいては、比重を高めることによる重量増大の効果は大きい。
小さナょ被害率に対しては比重の違いによるKo値の違いはほとんどみられないが、被害率5% では比重が大きくなるとKo値は大きくなっている。なお、比重2.3の普通コンクリートで は周期の短い波に対してはKD値が小さくなっているが、比重の大きナよコンクリートではその ような傾向はみられない。消波プロック被覆堤にっいて大規模不規則波平面実験を実施した。
堤頭部では港内側の端部周辺のプロックの移動が顕著でしかも堤幹部に比べて被害が進行し やすい。結果として堤頭部 の消波プロック重量は堤幹部の1.5倍必要であることが確認さ れた。
第6章の結諭では、本研究全般のとりまとめを行って、主要ナょ結諭を示した。
これを要するに、著者は高波浪条件を対象とした防波堤の耐波設計法の高度化に関する 諸問題を解決したもので、港湾工学、海岸工学の進展に貢献するところ大なるものがある。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認められる。
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