博 士 ( 工 学 ) 青 山 英 樹
学 位 論 文 題 名
法 線 ベ ク ト ル 検 出 に よ る 形 状 測 定 と 評 価 法 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
本 論 文 は ,法 線 ベ ク ト ル検 出 プ ロ ー ブを 提 案 ・ 試作 し,同 プロ ーブシ ステム をCNC三次元 座 標測定 機に組 み込み ,測 定点の 位置ベ クトル と法線 ベク トルを 直接検 出する ことを可能とする測 定シス テムを 構築す るこ とによ り,位 置ベク トルと 法線 ベクト ルの検 出に基 づく形状測定を評価 法とし て,機 械部品 基礎 形状の 測定評 価法, 自由曲 面加 工形状 の測定 評価法 ,自由曲面計算機モ デル の 構築 法に っいて 提案し ている 。本論 文は7章か ら成 り立っ ており ,各章 は以 下に示 す内容 となっ ている 。
第1章は ,緒論 を述 べてい る。研 究の背 景と して, 三次元 座標測 定機の 普及 と従来 の三次 元座 標測定 機によ る測定 の問 題点を 指摘し ている 。従来 の問 題点を 解決す るため ,測定点の位置ベク トルと 法線ベ クトル の直 接検出 を可能 とする 測定シ ステ ムを開 発し, 同測定 システムを基にした 機械部 品基礎 形状の 測定 評価法 ,自由 曲面加 工形状 の測 定評価 法,自 由曲面 計算機モデルの構築 法を提 案する ことを 研究 の目的 として いる。 また, 位置 ベクト ルと法 線ベク トルの検出法,機械 部品基 礎形状 の測定 評価 法,自 由曲面 加工形 状の測 定評 価法, 自由曲 面計算 機モデルの構築法に 関 す る 従 来 の 研 究 と 問 題 点 を 明 ら か に し て い る 。 さ ら に , 本 論 文 の 概 要 を 述 べ てい る 。 第2章は ,法線 ベク トル検 出プロ ーブに っい て述べ ている 。測定 点の法 線ベ クトル を直接 検出 する接 触式プ ローブ を提 案し, その検 出原理 を明ら かに してい る。同 プロー ブは,絶縁セラミッ ク球 表 面に 抵抗 薄膜と4っ の電極 を形成 した極 めて単 純な 構造と なって いる。 プ口 一ブと 被測定 物の接 触によ り,球 面抵 抗薄膜 ,電極 ,被測 定物, 定電 流電源 により 定電流 回路が形成される。
このと き,接 触点( 測定 点)か ら各電 極に流 れ込む 電流 は,接 触点と 各電極 間の抵抗値に反比例 してい るため ,電極 に流 れ込む 電流値 を検出 するこ とに より法 線ベク トルを 検出できる。また,
計算機 シミュ レーシ ョン により ,提案 したプ 口一ブ の設 計を行 い,同 設計に 基づき基礎プローブ の 試 作 を 行 っ てい る 。 試 作 され た 基 礎 プ ロー ブ の 直 径 は ,30.2 mmで あ り, 球 面 抵 抗 薄 膜は Ni―Crによ り 形 成 さ れた 。 測 定時に プロ ーブか ら得ら れるデ ータ は,球 面抵抗 薄膜上 に形成 さ れた電 極に流 れ込む 電流 値に等 価な電 圧値であるため,同電圧値を用いて法線ベクトルを算出(内
挿)す るため のアル ゴリ ズムを 提案し ている 。さ らに試 作した 基礎プ 口ーブ を用いて鋼球の測定 実験を 行い, 検出原 理と 法線ベ クトル 算出ア ルゴ リズム の確認 を行う ととも に,基礎プローブの 法線ベ クトル 測定精 度が 極座標 表示で 臼,¢ 方向 ともに 土0.7°であることを明らかにしている。
第3章は, 位置ベ クトル と法 線ベク トルの 測定シ ステ ムにっ いて述 べてい る。実 用プ 口一ブ に 要求さ れる仕 様とし て, 位置ベ クトル 測定精 度が 土10pm以下 とす ること を基に検討した結果,プ ローブ 球直径 は10mm, 法線ベ クト ルの測定精度は臼,¢方向ともに土0.1°とし,球面抵抗薄膜は 耐磨耗 性の高 い材料 によ り形成 するこ ととし た。 このた め,直 径10mmの 石英ガラス球表面に耐磨 耗性 材 料 で あ るTiNに よ り抵 抗 薄 膜 を 形成 し , 実 用プ ローブ の試作 を行っ た。同 プロ ーブを 基 にし た 法 線 ベ クト ル 検 出 プ ロ ーブ シ ス テ ム とCNC三次 元座標 測定機 を組み 合わせ ,位 置ベク ト ルと法 線ベク トル測 定シ ステム を構築 した。 さら に基礎 実験に より, 同測定 システムの法線ベク ト ル の 測 定 精 度 がp, ¢ 方 向 と も に 土0.1° で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 第4章は, 機械部 品基礎 形状 の測定 評価法 にっい て述 べてい る。構 築した 位置ベ クト ルと法 線 ベク ト ル の 測 定シ ス テ ム を用 いた 応用計 測(そ の1)と して, 機械部 品の主 要な構 成要 素であ る 平面, 円筒, 球の位 置ベ クトル と法線 ベクト ルの 検出に 基づく 測定評 価法の 提案を行っている。
同時に ,従来 の位置 ベク トル検 出に基 づく平 面, 円筒, 球の測 定評価 におけ る問題点を明らかに し,提 案した 測定評 価法 との比 較を行 ってい る。 また, 提案し た測定 法は, 従来の測定法と比較 し2〜3倍 の 測定 効 率 が 得 られ ること が明ら かにさ れて いる。 構築し た測定 システ ムを 用いて 平 面,円 簡,球 の測定 評価 実験を 行い, 測定精 度に っいて 検討し ,提案 した測 定評価法の有効性・
実用性 を確認 してい る。
第5章は, 自由曲 面加工 形状 の測定 評価法 にっい て述 べてい る。構 築した 位置ベ クト ルと法 線 ベク ト ル の 測 定シ ス テ ム を用 いた 応用計 測(そ の2)と して, 自由曲 面加工 形状の 測定 評価法 の 提案を 行って いる。 提案 の中で ,自由 曲面加 工形 状の測 定評価 におけ る基本 的考え方を明らかに してい る。ま た,自 由曲 面を意 匠曲面 と機能 局面 に分類 し,そ れぞれ の局面 に対する評価項目と して, 意匠曲 面の場 合は 法線ベ クトル,機能曲面の場合は位置ベクトルとすることを示している。
設計形 状から 加工形 状へ の写像 を座標 変換と して モデル 化し, 加工形 状の評 価と座標変換の関係 を明ら かにす るとと もに ,従来 自由曲 面加工 形状 の評価 法とし て採用 されて いるべストフィット 法と提 案した 評価法 との 比較を 行い, その違 いを 明らか にして いる。 また, 測定評価の基本的考 え方を 実現す るため の評 価手順 を提案 し,計 算機 シミュ レーシ ョン実 験によ り,提案した評価手 順の有 効性を 確認し てい る。
第6章は, 自由曲 面計算 機モ デルの 構築法 にっい て述 べてい る。構 築した 位置ベ クト ルと法 線
ベクト ルの測 定シ ステム を用い た応用 計沮IJ(その3)として,位置ベクトルと法線ベクトルに基 づく自 由曲面 加工 形状計 算機モ デル構築法の提案を行っている。従来の曲面パッチ定義式は,パッ チコー ナ一点 の位 置ベク トル, 接線ベ クトル およ びねじ れべク トル, ある いはこれらのべクトル に等価 な制御 点を 必要と してい た。し たがっ て, 物理モ デルの 観測デ ータ を直接用いて計算機モ デルを 構築す るこ とが困 難であ り,そ の構築 が容 易では なかっ た。こ の問 題を解決するため,位 置・法 線ベク トル 測定シ ステム により 得られ る測 定点の 位置ベ クトル と法 線ベクトルの観測デ一 夕を直 接用い て計 算機モ デルを 構築す るため の曲 面パッ チ定義 式を提 案し ている。また,同曲面 パッチ により 構築 される 計算機 モデル の曲面 パッ チ間の 位置ベ クトル と接 線ベクトルの連続性に っいて 数式的 に証 明する ととも に,切 削加工 によ り連続 する複 数の局 面パ ッチの加工面(物理モ デ ル ) を 形 成 し , そ の 観察 か ら パ ッ チ間 の 接 続 状 態 が滑 ら か で あ るこ と を 確 認 して い る 。 第7章は, 本論文 のま とめを 示して いる。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授
岸浪 斎藤 池田 鵜飼
建史 勝政 正幸 隆好
本論文 は,形 状測 定にお ける沮lJ定値として従来の位置ベクトル検出に加え法線ベクトル検出の 必要性 とその 利点を 指摘し ,法 線ベク トルを 検出す るた めのプ 口―ブ の原理と設計法を示すとと もに同 プロー ブの試 作を行 い, それを 用いた 形状測 定法 と評価 法に関 する研究成果を取りまとめ たもの である 。本論 文tま7章から成り立っており,各章の主な内容と成果は以下のとおりである。
第1章は緒 論であ り,三 次元 座標沮lJ定機の 普及 と従来の三次元座標測定機による測定の問題点 を指摘 し,本 研究の 背景と 位置 づけを 明確に すると とも に,本 研究の 目的と論文の構成の述べて いる。
第2章で は,測 定点と 法線ベ クトル を直 接検出 するた めのプ 口一 ブを提 案し, その検 出原理 を 明らか にする ととも に,計 算機 シミュ レーシ ョンに より 設計を 行い, 検出原理を確認するための 基礎プ ロー ブの試 作を行 ってい る。 同プロ ーブは セラミ ック球 表面 に抵抗 薄膜と4端 子を形 成し
た 単純構 造と なって おり, 定電流 電源 を介し て被測 定物と 接続さ れて いるっ プ口ー ブと綾剛定物 の 接触に 伴い 接触点 (測定 点)か ら各 電極に 流れ込 む電流 値より 接触 点位置 ,すな わち法線ペク ト ル方向 を検 出して いる。 また,7all定電 流値から接触点位置を同定するためのキャルブレーショ ン 方法と 法線 ベクト ルを算 出(内 挿) するた めのア ルゴリ ズムを 提案 してい る。さ らに試作した 基 礎プ口 一ブ を用い て鋼球 の測定 実験 を行い ,検出 原理と 法線ベ クト ル算出 アルゴ ルズムの確認 を 行って いる 。
第3章で は ,実 用的プ ローブ 仕様 として ,プ口 ーブ球 直径は10mm,位 置ベ クトル 測定情 度は土 10,um, 法線ベ クトル の測定精度は臼,¢方向ともに土0,1°,球面抵抗薄膜は高耐磨耗性を百する こ と を 要 求 し, こ の 要 求 に基 づ き , 直 径10mmの 石英 ガ ラ ス球表 面に耐 磨耗 性材料 であるTiNを 蒸 着 し て 実 用プ 口 一 プ の 試作 を 行 っ て い る。 ま た , 同 プ口 ーブとCNC三 次元座 標測定 機を 組み 合 わせ, 位置 ベクト ルと法 線ベク トル の測定 システ ムを構 築し, 基礎 実験に より, 同測定システ ム の 法 線 ベ クト ル の 測 定 精度 が 臼 , ¢ 方向 と も に 土0.1° で あ るこ と を 明 ら かに し て い る 。 第4章で は ,機 械部品 の主要 な構 成要素 である 平面, 円筒, 球の 位置ベ クトル と法線 ベク トル の 検出に基づく沮lJ定評価法の提案を行っている。同時に,従来の位置ベクトル検出に基づく平面,
円 筒,球 の測 定評価 におけ る問題 点を 明らか にし, 提案し た測定 評価 法との 比較を 行っており.
提 案 し たcIJ定法 は従来 の測定 法と 比較し て2〜3倍 の測 定効率 が得ら れるこ とを明 らか にして い る 。 ま た , 第3章で構 築され た測定 システ ムを 用いて 平面, 円筒, 球の 測定評 価実験 を行い ,測 定 精 度 に っ い て 検 討 し , 提 案 し た 測 定 評 価 法 の 有 効 性 ・ 実 用 性 を 確 認 し て い る 。 第5章で は ,自 由曲面 加工形 状に 対する 測定評 価の基 本的考 え方 を明ら かにし ,使用 目的 から 自 由曲面 を意 匠曲面 と機能 曲面に 分類 し,意 匠曲面 の場合 は法線 ベク トルを ,機能 局面の場合は 位 置ベク トル を評価 基準と するこ とを 示して いる。 また, 設計形 状か ら加工 形状へ の写像を座標 変 換とし てモ デル化 し,加 工形状 の評 価と座 標変換 の関係 を明ら かに すると ともに ,従来自由曲 面 加工形 状の 評価法 として 採用さ れて いるべ ストフ ィット 法と提 案し た評価 法との 比較を行い,
そ の違い を明 らかに してい る。さ らに 測定評 価の基 本的考 え方を 実現 するた めの評 価手順を提案 し , 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 実 験 に よ り 提 案 し た 評 価 手 順 の 有 効 性 を 確 認 し て い る 。 第6章で は ,位 置ベク トルと 法線 ベクト ルに基 づく自 由曲面 加工 形状計 算機モ デルの 構築 法の 提 案を行 って いる。 すなわ ち,従 来の 曲面パ ッチ定 義式の 問題点 とし て,物 理モデ ルの測定デー タ を直接 用い て計算 機モデ ルを構 築す ること が困難 である ことを 指摘 し,こ の問題 を解決するた め , 第3章 で構 築され た測定 システ ムによ り得 られる 位置ベ クトル と法 線ベク トルを 直接用 いて 計 算機モ デル を構築 する曲 面パッ チ定 義式を提案している。また,同曲面′くッチ間の位置ベケト
ルと接線ベクトルの連続性にっいて数式的に証明するとともに,切削加工により加工面(物理モ デル)を形成し,その 観察からパッチ間の接続状態 が滑らかであることを確認している。
第7章 は 結 諭 で あ り , 論 文 全 体 の ま と め を 述 べ 成 果 の 統 括 を 行 っ て い る 。 以上のように本論文は,工業製品の形状測定と評価法に,独自の方法論を提案し,実際にその 有効性を確認したものであって,計測工学および精密工学に寄与するところが大きい。よって著 者は博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。