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〔臨床実悪〕
(東京女医大誌●第23巻第2号頁48−51昭ン和28年5月)単核細胞に分化すろ骨髄芽細胞白血病
の一例に就て
東京女子医科大学内科教室(主任 三神美和教授)青 木 仲
アオ’ 干 ナカ 子 駆 (受付 昭和27年1月5助 緒 言 1904年目Reschard, Schillingは単核細胞 (Monocyten)が増加した白血病を…報告して以来 .Ewaldも赤之と同様の例症を追加し,共に此の白 血病は病理解剖上在来の骨髄性白血病と異なり網 内系から発生する特殊の白血病と認めたのである が,其の当時Naege正iは此の白血病をmonoti− toide Paramyeloblastenleucamieと称し,依然 として此の単核細胞を骨髄芽細胞から由来するも のと認めたのであった。近来に至り此の単核細胞 白血病は網内皮系から発生することを否定する学 窺があるのみならず,此の単核細胞白血病を骨髄 芽細胞にも二四内皮系にも属せざる特殊の白血病 としてSchilling轡型を否定する学説が起るに至 った。加之白血病の血液像には腫瘍的増殖をする 中心となるべき白血球の外に反応性増殖が加わる ことを主張する学説がある故に,私の鼓に報告す る単核細胞に分化する骨髄芽細胞に関しては多分 幾多の疑惑あることX信じ鼓に私の卑見を述べさ せて頂く。 症 例 患者:小○き0 60才,寡婦。 家族歴:夫68才にして後頭部腫瘍のため死亡。子供 6人中2入は結核で死亡。1入死産ぜる他同胞に特記 すべぎ疾患はない。、 既往症:現疾患発病迄全く健康で著患を知らない。初 .,o16才。閉経55才で月経に異常なく,出血性素質を みとめない。23才にて結婚。性病を否定する。 主訴:顔色の蒼白,弛張熱。 現病歴:昭和27年2月上旬軽度の咽頭痛があって悪 寒と共に39.5。Cの発熱あり。某医を訪れ耳下腺の腫 脹があるといわれてペニシリンの注射を受く。約1週 間で解熱したが,その後全身倦怠感が強く微熱を時々 見た。3月上旬再び悪寒と共に38.5。Cの発熱を見 た。開業医により尿検査の結果止口:炎と診断され再び ペニシリンの注射を受けたが中々解熱せず36。Cから 38。Cの発熱が続いた。自覚症状は比較的軽度で二度 目の発熱時には嘱頭痛はなくただ日夜をいとわぬ激し い発汗になやまされたという。4月上旬顔色の蒼白に なったのに気付く。動悸,面面等はない。歯齪出血, 皮下出血等の出血傾向なく,食慾は良好である。4月 下旬血液検査の結果ザーリー30%といわれ,5月1 日上記主訴のもとに入院した。 入院時の所見:脈搏は整で緊張良。体格並びに 栄養i中等度。顔色,皮膚は蒼白である。発疹,皮 下出血等は認めない。黄疽はないQ瞳孔反射は正 常。眼瞼結膜は強度に貧血性である。ロ腔粘膜も 貧血を呈し舌には薄き白苔がある。扁挑腺はやN 発赤しているが口腔内粘膜には潰瘍を認めない。 淋巴腺は頸部,「腋窩,鼠霞部に小豆大のものを2 ∼3個ふれるQ爪甲には変化をみとめない。肺肝 境界は第6肋骨。心濁音界は左方にやx拡大し, 聴診上心尖部及び心基底部に舜い収縮期雑音をき く。頸静脈部には著名な独楽音を聴取する。肺に は聴診,打診上異常をみとめない。 腹部は軽度に膨隆して肝臓を約2横指触れる。 圧痛なく硬さはやX硬く表面は平滑である。脾臓 は触れないが該部に抵抗を感ず。腹壁静脈は軽度 一一一E 48 一19 に怒張しているが腹水は証明しない。その他腹部 には異常の抵抗をみとめない。 足部には浮腫なく腱反射は正常。病的反射はな、 いQ 胸骨,肋骨,脛骨,脊椎等に叩打痛はない。 入院後の経過:入院当時36.8。C乃至39.5。C の弛張熟が1週間続き左上臆内側に小豆大の皮下 出」血nを認めたので1見おきに100cc宛の輸血を行 った。全身状態は良好で食慾は旺盛である。毎日 激しい発汗があり,之は発熟と無関係である。輸 血施行後熟は次第に下降し約2週闇は36.2QC乃 至37.50Cであったが,5月27日突然40.5GCの 発熟あり,胸部前面,上騰,下肢に薫麻疹様の発疹 を生じた。掻痒感はない。ペニシリン1日20万 単位を用いたところ翌日よりやΣ熟は下降して来 たが5月29日下肢に粟粒大乃至小豆大の皮下出 血を認め,同時に扁桃腺の発赤,腫脹を来した。 皮下出血は増加して足背,足蹄にも及び5月31 日三等出血斑とは異り下肢に結節性の紅斑を多数 生じ大きさは直径約2cmの円形であった,圧痛を 訴う。発熟は依然39℃前後である。輸血及びペ ニシリン療法を続行し,紅斑は結節を残してや)s. 褐色をおび皮下出血も次第に消裾した。6月末日 咽頭痛を訴え扁桃腺発赤腫脹す。7月1日舌にア フタ様潰瘍をみる。その頃より田部不快感及び難 聴を訴え食慾が次第に衰えて来た。こXうみにス トレプトマイシン1日1gを10日間使用してみ たところ2∼3日聞やΣ解熟の傾向をみたが,そ の後再び体温の上昇を示して来た。舌のアフタ様 潰瘍は次第に増加して円形をなし,表面は偽膜様 の白苔でおおわれ,7月11H顎下淋巴腺が指頭 大に腫脹し扁桃腺.頗粘膜にも多数の同様な潰瘍 を認めた。 患者は口腔内疹痛のため摂食殆んど不能となり 且つ高直及び激しい発汗のために衰弱加わり,7 月末日足背に浮腫をみるに至った。出血性傾向は ない。肝臓は依然2横指触知するが聡臓はふれな い。その後も輸血を続行したが衰弱は次第に加わ り,難聴高度となったQ8月14日腹部の膨隆著 明となり,鼓腸と共に腹水を証明した。 8月17日血便1回あり,8月18日上臆:及び手 背に少数の皮下出血を認めた。8月19日血便が 再びあり8月20日全身衰弱のもとに死亡した。 発病から数えて全経過は7ゲ月である。
骨髄穿刺所見小叩き060叢♀
ltdiik[Tk Sl i/s Ml 2s/61mp,/7 f 2s/711義山霧i41?翻男1雛凱鋤
k
リ .好 個 中 小腫瘍
核 細 ン パ 中桿状
{ 分 葉 匿 酸 型1 型1 型 胞1麹
…球: st l r 核i 球[ 型i34.75・1・,.75 プラスーマ細胞履∴蒙1。
5.75 0.25 1.0 50.0 5.5 0.5 0 0.5 0 1.75 0 14.25 0.5 2.25 18.75 1.75 0 0 01o
O.75 1 010
27.8 49.0 17.O O.8 3.2 0.6 ・ o o o o 1.O O.6 0 44.25 31.25 6.5 2.0 8.75 2.75 1.O O.5 0.5 0 2,工5 0.25 0.15末梢血液所見小○き060歳♀
雌辺11/・125/・レ1/・1・・/・
1赤 血 球 潔 白 血 球 数1
ヘモグロビン ザーリー唾色素指数
血 小 板 数1綱状赤血球
骨髄芽球
i 大 型
1中 型
/ト 型 腫 瘍 型 1単 核 細胞 リ ,好 好 ン ハ 球 中 球桿状核
分 葉 核 酸 球 1プラスマ細胞 124万・ i4200’@1, 30.o黶^.n
1.25 1 696bO i 8矯 30.25. 1 ?u75]e i
o.75 I fZ・i51 11.5 i o [ o ll o 11 0 0・ピ醐器器
瀦。驚認
40.75%1 65.50/Oi 48.0 14.75 2.25 0.5 ” 27.25 6.25 0.25 i, o O.25 ii O.25 0.25 l r 41e40 f 49200 9%「 23編 ] 67.25% 81.60% 30.0 ] 36.6 24.5 11 27.2 ] 12.s 1 17.2 1 O.25 .1.6 . 5 工4.O O.75 ) o.2s I o.so 1 O.75 ] o’ O.6 10.2 ]zo
O.602
0.4 0 0検査成績
諸種検査成績は別表の如くである。樹眼底検査 によって両側に小出血斑をみとめた。一49一
20 血液所見は最も変化のあるところでMay−Gie− msa及びMay−Field氏染色法(佐藤)により次 の如き所見を得た。 赤血球系統に於ては高度の貧血を示して骨髄内 赤芽球は著明に減少しているが,骨髄及び末梢血 液中には巨大赤芽球は出現していない。白血球数 は9800∼58800聞を動揺して発熟高度となった時 はその数も多い様である。併し死亡2日前には急 激に5400に減少したQ 塗抹標本によってその形態を観察すると,白血 球の大部分は大なる単核性の白血球でP5められ, その大なるものは直径28μに及んでいる。其の 経過を追って直径を測定するに末期に至るに従い 直径の小なるものが増加した。 此の単核急白!月球に就て更に精細に勧察してみ ると,次の二つの細胞型に分ける事が出来るQ其 の一は核が円型,原形質ゐ幅は狭く全く無頼粒性 .平等に塩基性に染るものと,他の一は原形質が淡 く塩基性に染り巾が広く形は多型で偽足を出すも’ のもある。核も叉円型でなく楕円形,及びEhrli− chの移行型と称すべき蹄型,分葉核,核の一側 に陥凹のあるものがある6又核の陥凹部に極めて 微細な淡黄褐色に染る顯粒を有するものもあった がAuer小体は認められない。前者は骨髄芽細胞 で後者は単核細胞であると思われるd 核小体は両者何れに点ても明確,その数は2∼ 4個,円型叉は類円型である。叉核分裂像も数個 みとめられ,その分裂角度はユ⑪0度内外である。 以上の他に正常の骨髄芽細胞とは異り巨大型で 核は類円型で多形で沼気細胞の様な観を与えるも のが少数みとめられた。
Peroxydase及びOxydase反応は単核細胞は
殆んど陰性で,弱く陽性のもの僅に2%位である。Neutralr6t及びJanusgrUn超生体染色を施行
するとアメーtバ様還動をなす単核細胞をみとめ, その原形質二叉はNeutralrotの二二を殆んどみ とめその数は極めて少数のものから35個位に及 ぶものあり,叉Neutralrotの頼粒が核の陥凹部 に集合しているものもみとめた。墨粒二二試験は :殆んど陰牲で,単核細胞100個の中2個口少数の .墨粒を食喰しているのをみとめた。 経過と共に此等の単核細胞は減少して末期には 骨髄芽細胞殊に小骨髄芽細胞の出現をみた。胸骨 骨髄穿刺を施行して組織小片を採取し,それを切 片標本として鏡検するに,上記血液細胞と同一の 細胞で殆んど占められているのをみとめた。 叉経過中皮膚に出現した結節様紅斑部の試験的 切除を行い,病理組織学的検索を施行せしに,白 血病性細胞の多数浸潤しているのがみとめられ た。病理解罰及び組織學朗所見
骨髄:骨髄は骨髄芽細胞が非常に増殖して所謂 “骨髄芽細胞髄Myelob工astem:nark”と称する もので脂肪細胞は殆んど介在せず,之は生前に検 索した組織標本と類似し,骨髄芽細胞から単核細 胞に移行分化したものも相当に多い。叉赤芽球は 少くなく小型,’巨核細胞(血小板芽細胞)も散見 し其の数が少くない。 脾臓:重量290g,自血病性細胞の底幅性浸潤 と増殖があり,淋巴演胞は非常に萎縮し赤血球の 造血巣はみとめられない。 肝臓:全体に白血病性細胞の彌漫性浸潤がある がGlisson氏鞘には結節様の白血病性細胞浸潤は 極めて軽度であった。 淋巴腺:肝臓に比し骨髄芽細胞の浸潤が強い。 消化器1口腔より小腸上部の全長にわたり多数 の潰蕩があった。胃潰蕩は壊疽性で胃壁に白血病 姓細胞浸潤あり。此の壊疽性病変は口内炎と同様 の原因であると思われる。廻腸にも此の浸潤が強 くおなじ様な壊疽性変化が見られた。 腎臓: 両側に限局した白血病細胞の禰漫性浸 潤がある。 硬脳膜:出血及び白血病性細胞浸潤をみる。 心臓及び脳質には著変がない。 大網動画は白血病性の細胞の浸潤が強く,且つ 腸潰瘍の成因も白血病性の細胞の浸潤によるもの と思われ,従って腹水中に血液中にみとめられた のと同様の白血病性細胞を多数検出した。 考 按 本鰯の生前並びに病理解剖的所見によると,骨髄芽 細胞白血病であることは骨随芽細胞増生が主体である 一一 50 一21一 ことから立証出来るのである。然し乍ら本例は病症の 時期により血液像を異にし,初期に於ては単核紬胞が 多かりしも其の経過と共に骨髄芽緬胞性に変化し,そ の増械は互いに相反していた。単核細胞の方が劇増し た時期は単核細胞白血病と称してもよいと思われ,私 は比の単核細胞の出現を反応性とは考えない。 本例に於ける骨髄芽細胞のOxydase及びPeroxy− dase反応は大部分のものに陰性を示していた。文献 を徴するに,急性骨髄性白血病に湿て末梢血液中及び 骨髄内の骨髄芽細胞の一部,叉は全都が往々にして, Oxydase及びPeroxydase反応陰性を示すことは Jagieにより指摘され,我が国に酒乱ても鈴木の報告が ある。この原因を骨髄芽細胞の退形成機転に帰してい る。本紀を案ずるに勝沼,芳賀氏等は常態骨髄内には Oxydase及びPeroxydase反応陰陽2た通りの骨髄 芽細胞があることを強調し,其の陰性のものは胎生時 代の性状を有するものと説明されている。其の故に此 の様な骨髄芽細胞が白血病性に増殖すればOxydase 及びPeroxydase反応陰性の骨髄芽細胞白血病が成 立し得る可能性があるものと解釈したいのである。 而して本誌の血液内の単核細胞の形態を考うるに, 骨髄芽細粒の性状を有し且つ分葉核型は少い点は Schillingの左方移動状態であるも普通の単核細胞と 異なる点は円型,類円型,分葉型の核を有するにもか かわらず一様に核小体を有する事,及び原形質内に正 常の如き染色誤糧を有するものが少いこと,超生体染 色並びに面訴貧壌試験は陰性を示すものが大部分を占 めていることである。而して核が多型となって原形 質:の幅の狭い無告粒性のものは Naegeli, Rohr, Schuユtenが側骨髄芽:細胞と称したものに一致してい る。’従って原形質の幅の広恥ものは骨髄芽性プラスV 細胞と称し得るものを散見しているが,之は極めて少 i数である故に魚棚しなかった。併して骨髄芽細胞の小 型却ちMikromyeloblastenも亦単核細胞様の変化を 営んでいた。 結 論 私は60才の女子が亜急性の経過を採った白血. 病に就て其の末梢:血液と骨髄とを詳細に検索せし に,此の白血病は骨髄芽細胞の増殖が主体である ことを認めた。 併し其の経過する時期により単核細胞白血病の 血液像を呈し,之に少数の骨髄芽細胞が附随して いた。N或時期には骨髄芽細胞白血病と称すべき・ 血液像で之に少数の単核細胞が附随せるが如く其 の経過によって一様の血液像ではなかった。 此の骨髄芽細胞の大部分はOxydase及びPer− oxydase反応の陰性のもので,陽性のものは趣 めて少くない。又単核細胞の大部分は矢張り骨髄 芽細胞の夫の如く歩調が同様であった。 夫故に私の実験例は単核細胞に分化する骨髄芽 細胞白血病であって,此の単核細胞は反応性に増 殖:したものではないことを主張したい。 欄筆に臨み終始御指導を賜り且つ御校閲頂きたる佐 藤清名誉教授,三神美和教授に深甚なる謝意を表す。