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健康家兎含水炭素代謝に及ぼす強心

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(1)

健康家兎含水炭素代謝に及ぼす強心    配糖体の影響iに関すろ研究

        第 4 編

健康家兎血中乳酸,焦性葡萄酸量及び   強心配糖体投与によるその消長

金沢大学医学部第一内科敏室(主任 谷野i教授)

    車  谷  仁  男

      丑血8α01動九回αεα幅       (昭和29年12月22日受附)

第1章 第2章

第3章:

  1   2

庇  言

実験材料及び実験方法 実験成績及び考案 対照実験

g一ストロフアンチソによる血中乳酸及び焦 性葡萄酸の消長

  3 ヂギトキシソによる血中乳酸及び焦性葡萄    酸の消長

第4章 第4編の総括

第5章 第1編より第4編に至る総括的解説 第6章 結  論

   文  献

       第1章緒  血中乳酸量及び焦性葡萄酸量:が諸種疾患にお いて種々なる変動を来すことは,既に多数先進 の研究によって明らかにせられた所であるが,

彊心剤によるその変化に関する報告は甚だ少な い.余はg一ストロフアンチン及びヂギトキシ

ンが含水炭素代謝に及ぼす影響を検する目的 で,これら薬剤による健康家兎の心筋,骨酪筋 及び肝臓の糖原,乳酸並びに焦性葡萄酸含量の

   言

消長を追求し,既にその結果を第1乃至第3編 において報告した.

 本編においてはそれらと同時に測定せられた 血液乳酸及び焦性葡萄酸含量の推移について述 べることとする.強心配糖体が血申焦性葡萄酸 及び乳酸含量に及ぼす影響に関する先人の報告 は2〜3をあげ得るに過ぎない.

      第2章  1)実験材料:主実験では第1編における試験動 物と同一試黙を使:用した.なお対照実験として別に5 頭の動物を使用した.即ち主実験におけると同じく 2kg内外の雄性白色家兎を用い,購入後数日間飼養条 件を主実験用のものと同じくし,その健康を確めたる

実験材料及び実験方法

後,実験に供した.

 2)採血法:血液乳酸及び焦性葡萄酸は,蓮動,

欝血等その他種々なる条件によりて,変化を来すもの なるが故に,探血に当っては細心の注意を払った.即 ち第1編に述べたる如く実験当目は早朝より絶食と

【91】

(2)

し,最後の注射前2時聞は背位に固定し,最後の注射 後15分より30分目間に耳静脈より探亡した.その際血 液の凝固を防止せんがために予め注射器内に極小量の 結晶クエソ酸曹達を容れ,吸引せる血液は可及的速か に所要量をとり,直ちに除蛋白法を施した.

 3)血液乳酸測定法:血液2・Occを取りて,事前 に蒸溜水6・Occ,1n硫酸6・Occを容れたる大遠心沈 澱管中に移し,次いで109/dlのウォルフラム酸曹達 溶液6・Occを加えて20・Occとなし,30分後これを

遠心沈澱してシ:Folin−Wu 1)による除蛋白を終え, i欠 いでその上清15・Occを定量的に有物メスシリンダー に移し,これを苛性曹達にて中和せる後10%硫酸銅 5・Occ,5%石灰乳5・Occを加えて,時々振煙して30 分間放置し,以てVan−Slyke 2)罵倒による除糖を終 える.次いでこれに蒸溜水を加えて30・Occとなし,

遠心沈澱してその上清がα一Naphto1による糖反応陰 性なる時,その20・Occについて田中・遠藤の装i置23)

を用いて乳酸を酸化し,化生したアルデヒードを酸性 亜硫酸曹達液申でこれと結合せしめ,以後の定量操作

は,:Lauersen−Wahllander 3)旧法に準じて行った.

 4)血液焦性葡萄酸測定法32・4−Dinitrophenylhy−

drazineを使用するLuの変法5)によって行い,血液 2・Occを取り,これを氷冷せる10%三塩化酷酸10・Occ を漏るる有栓遽心沈澱管に移し,振盟混和旧約10分氷 室に放置し,然る後1分1500回転,5分間遠心沈澱し て,その上清3.Occを大試験管に取る.叉一方:Blank 用として,10%三塩化酷酸5・Occに蒸溜水1・Occを 加えて大試験管に用意す.これらの試験管を25。Cの 温浴中に入れて10分間放置し,…欠に2・4−Dinitrophe−

nylhydrazine試薬各1・Occ宛加えて混和し,再び 25。Cの温浴に正確に5分間入れて取出し,各々にキ シレン3・Occ宛入れ,室気を2分間迅速に吹き込ん で,両暦の分離後毛細管ピペジトで下層の水層を除去 し,次いでキシレン暦に10%炭酸曹建液6・Occ宛加 え,再び室気を2分間迅速に吹き込み,静置後キシレ ン層を除去し,次いで水層5・Occを正確に探取し,

これに3n苛性曹達液2・5cc混和し,室温に10分放 置後光電比色計で測定した.

第3章実験成績及び考案

 1)対照実験(第;1,2,3表)

 血液乳酸及び焦性葡萄酸は共に筋肉蓮動,璽 血等によりて著しく増加するものなるを以て,

家兎を固定せる直後より2時問後に亘る数回の 測定により,Mendel 6)氏等の所謂血液乳酸安 灘値に達する鳥毛を知り,数時間周定緊縛の血 液乳酸及び焦性葡萄酸量に如何なる影響を及ぼ すやを検し,以て以後の両翻心配糖体注射時に おける血液乳酸及び焦性葡萄酸:量の変化の対照

とすることとした.

 先進諸家の測定せる健康家兎における安静時 血液乳酸値は,第1表に示す如くで,8〜65mg

/diにして,その動揺は甚だ広範囲に及んでい る.扱て余は健康家兎を背位に固定し,常に前 記の操作諸点に留意して,血液中乳酸及び焦性 葡萄酸含量を測定し,第2,3表に示す如き成 績を得た.即ち余の威績に従えば,乳酸量につ いて見れば,固定直後は最高にして以後漸次下 降し,固定後1時聞より2時問に至る聞は殆ん

ど安定にして動揺せす.5例の卒均値は固定直

後25.1m9/dl,15分後18.1mg/d1,30分後11.ブ mg/dl,1時聞後9.7m9/dl,2時間後9.7mg

/dlにして,固定後1時聞にして静止値に達し 以後殆んど動揺を示さすして略ヒ安定せられ た.面縛による温血動物の血液乳酸の浩長に関 しては,輻喜多7)は過乳酸血を来すと述べ,藤 井8),河村9、はその作用機序を中枢性のものな りと結論している.然るに一:方堂森10)は背位固 定家兎における動脹血乳酸量の時間的動揺を検 索し,何れも固定直後最:高にして,2時闇後最

終1表 健康家兎血液乳酸量

測定者

Mende1 6)

河 村 9)

引 間 20)

水 野 21)

Parfeutjev 2)

堂 森 10)

斎 藤 12)

1925 1928 昭 5 昭 5 1931 昭 10 昭 12

血液乳酸量  mg/d1

9〜45

13.1 〜24.2   8〜65

8.60〜15.50 10.71〜24.57

季均値 mg/d1

22 28 64.63

12.72 15.87

(3)

第2表 健康家兎静脹血中乳酸含量 固定後二二血中乳酸の時間的推移

:No.1

〃 2

〃 3

〃 4

〃 5

0分後

 23.4mg/d1  33.9 〃  25.3 〃  18.4 〃

i

 24.2 〃

ユ5分後

11.2mg/d1 21.3 〃 19.6 〃 18.9 〃 19.4 〃

30分後

10.7mg/d1 12.1 〃 12.2 〃 12.2 〃 11.3 〃

1時間後

9.2mg/d1 9.2 〃 10.4 〃 9.0 〃 10.8 〃

2時間後

9・2mg/d1 10.6 〃

9.9 〃 9.5 〃 9.7 〃

沙門125・・〃1・8・・〃1・1・7〃

9・7〃

P9・7〃

第3表 健康家兎灘脈血中焦性葡萄酸含量 固定後翻脈血中焦性葡萄酸の推移

No.1

〃 2

〃 3

〃 4

〃 5

0分後

3.34mg/dI 4.67 〃 4.17 〃 4.67 〃 4.20 〃

15分後

3.08mg/dI 4.50 〃 3.92 〃 4.04 〃 3.60 〃

30分後

2.17mg/dI 4.25 〃 3.09 〃 3.70 〃 3.00 〃

1時間後

2.08mg/dI 2.80 〃 2.84 〃 3.00 〃 2.75 〃

2時聞後

1.71mg/dI 2.50 〃 2.00 〃 1.75 〃 2.15 〃

平均14・2・〃13・83〃13・24〃【2・7・〃12・・2〃

低となり,固定後45分を経て動脈血中乳酸量は その安静値に達したと述べている.〜これより余 の実験成績は略ヒ堂森10)の述べる所に一致する

ものの如くである.次に焦性葡萄酸含量につい て見れば,とれも乳酸の場合における如く,固 定直後は最高にして,固定時間の長くなると共 に低値となり,2時間後には最低値を示した.

5例の雫均値は固定直後4.21m9/dl,15分後 3.83m9/dl,30分後3.24mg/d1,1時聞後2.70 mg/dl,2時間後2,02mg/dlにして,固定時間 の経過と共に漸次減少値を示している.幅喜多 7)は家兎血液焦性葡萄酸は縄縛後1〜2時間で 最高値を示し,爾後漸次手甲値叉は減少値を示 すと述べたるも,余の実験成績に従えば必ずし もしからすして,各例共固定直後最高値を示 し,以後乳酸の例における如く漸次減少を示し

た.

 2)g一スト・ファンチンによる血中乳酸及び

焦性葡萄酸の消長(第4,5,6表)

 Dietrich l 1)は犬を用いて実験的侶帽辮1閉鎖不 全症を作り,その血中乳酸量の増量及び蓮動負 荷後の比較的増量を認め,との乳酸増量は心臓 機能変化の結果,末梢殊に筋肉内に血液循環綾 徐となり,ために筋肉内酸素供給不足せるため なりと説明した.ヌ,斎藤12)はパラフィン心嚢内 注入及び大動脈起始部結紮による実験的心臓障 碍家兎におや・ては,安静時血液乳酸量はすべて 健康時に比して増量し,且つ〜これは一般に衰弱 大なりと思惟せらるるものにおヤ・て顕著なりと 述べている.Himwich 13)等は心筋梗塞犬では股 動脈血に比し,冠静脈血の乳酸値は増加してい ると述べ,二村上等14)は冠翻脈洞カテーテル挿 入法により,犬を用いて心筋新陳代謝の研究を なし,冠静脈血と股動脈血との乳酸及び焦性葡 萄酸値を比較し,大多数の例で冠翻脈血値の方 が低く,g一ストロファンチン0.05〜0.075mg

【93】

(4)

注射により,乳酸及び焦性葡萄酸は何れかが動 脈言値に接近する時は,他の一方が開いて来る

と述べ,心筋梗塞時には冠静脈血の乳酸値は4 例で接近して,2例で離れ,焦性葡萄酸は2例 で冠静脈血が股動脈.血を越し,他の4例では不 変で,ヒれらの利用が梢ミ不良になっているが 如き結果を得たと述べている.

 撮て余は健康家兎にg一ストロフアンチン最 小致死量1回及び絶最小致死量一続2週闇耳静

第4表 健康家兎にg一ストロフアン  チン最:小致死量1回注射後の血   中乳酸及び焦性葡萄酸含量

乳  酸 焦性葡萄酸 正常家鮒劇g・7m・/dl l 2・・2m・/qI

No.56

〃 57

〃 58

〃 59

〃 60

11.8 〃 11.1 〃 12.6 〃 14.1 〃 9.8 〃

2.08 〃 1.83 〃 2.23 〃 2.05 〃 2.20 〃

第6表 健康家兎にg一ストロフアン  チン薬効量連続2週間注射後の血   中乳酸及び焦性葡萄酸含量

乳  酸 焦性葡萄酸

均1…9〃12・・8〃

正常家兎対劇g・7m・/d112・・2mg/d1

測定範囲19・8一・4・・11・83−2・25 対照に対する醐率1+22・6%1+2・9%

推計学鮪意性i有

第5表 健康家兎にg一ストロファン  チン施最:小致死量連続2週間注射  後の血中乳酸及び焦性葡萄酸含量

乳  酸

No.66

〃 67

〃 68

〃 69

〃 70

11.8 〃 10.9 〃 9.2 〃 12.3 〃 8.5 〃

ユ.80 〃 2.03 〃 1.50 〃 2.02 〃 2.67 〃

均1…5〃12…〃

測定範囲18・5一・2・3」・・5・一2・67 対照}・対する増副+・・8%1一・・9%

擶瞠鮪昏倒無

焦性葡萄酸

正常家兎対照 

9・7mg/d12・021ng/d1

No.61

〃 62

〃 63

〃 64

〃 65

11.7 〃 11.9 〃 13.0 〃 14.7 〃 11.8 〃

2.11 〃 2.30 〃 2.58 〃 2.17 〃 3.00 〃

逢い2・6〃12・43〃

測定範囲[1・・7一・4・7i2…一3…

対照に対する購i+29・8%F2・・2%

推計学内意倒有

脈内に注射し,家兎耳静脈血の乳酸及び焦性葡 萄酸含量を測定し,第4,5表に示す如き成績 を得た.即ち正常値に比して両例共血液乳酸含 量は増加し,焦性葡萄酸含量は前者は不変で,

後者では梢ζ増加の傾向を示せるも,推計学的 には有意の変化とは認められなかった.ヒれよ りg一ストロラアンチン中毒量注射例では,末 梢循環血中に過乳酸血が認められるのは明らか であるが,焦性葡萄酸量には著しき変化は来さ ざるものの如くである,次にg一ストロフアン チン薬効量棋勢2週問耳静脈内に注射し,耳下 脹血の乳酸及び焦性葡萄酸含量を測定し,第6 表に示す如き成績を得た.即ち正常値に比し て,本例では血液乳酸及び焦性葡萄酸含量は殆 んど不変であった.

 3)ヂギトキシンによる血申乳酸及び焦性葡 萄酸の溝長(第7,8,9表)

 恒川15)は心臓障碍時における乳酸代謝を攻究 し,非代償性心疾患者では血中乳酸及び焦性葡 萄引値共に安静値高く,辻動負荷及び乳酸負荷 で著しい回復遅延を示すといい,叉佐藤16)は心 臓病者では,夜聞一斗酒に血中乳酸が著明に減 少すると述べている.前田17)は健康人並びに諸 種血行障碍時にヂギコリン,オレアンドリゲニ

ン,ネリウムA等の唯心剤を投与して,血中焦

(5)

性葡萄酸の減少を認め,又稻垣及び不破18),小 黒及びその他の人々19)は健康人運動負荷後の血 糖,乳酸及び焦性葡萄酸含量に及ぼすヂギコリ ンの影響を追求し,ヂギコリン注射により非投 与時に比して,蓮田後の乳酸及び焦性葡萄牙の 上昇軽減と安静値への恢復時間の短縮を来し,

且つ叉血糖:量も響動後の上昇が軽減したと述べ ている.而してこれにより小黒等は蓮動負荷時 本土心剤は心臓予備力の高張に寄与することを 確めたと報告している.村上h)はストロフアン チンの例で述べた如く,冠静脈七十ナーテル挿 入法により心筋新陳代謝の研究をなし,ヂギト キシン0・3mgを静三内に注射 して,45分後,

90分後に探噛し,乳酸及び焦性葡萄酸はストロ フアンチンの場合と同様な態度を示したと述べ ている.撮て余は健康家兎にヂギトキシン最小 致死量1回及び砥最:小致死量連続2週二二静脈 内に注射し,耳静脈血の乳酸及び焦性葡萄酸を 測定し,第7,8表に示す如き成績を得た.即 ち正常値に比して両町共血液乳酸含量は増加    第7表 健康家兎にヂギトキシン     最小致死量1回注射後の血中      乳酸及び焦性葡萄酸含量

第8表健康家兎にヂギトキシン駈  最小致死量蓮続2週間注射後の  血中乳酸及び焦性葡萄酸含量

No.106

〃 107

〃 108

〃 109

〃 110

乳  酸

13.3m9/d1 10.8 〃 12.4 〃 10.0 〃 12.5 〃

焦性葡萄酸

2.08mg/d1 2.12 〃 2.30 〃 2.08 〃 2.08 〃

均1・1・8〃12・・3〃

測定範囲1・…一・3・312・・8−2・3・

正撒兎対馴9・7〃12・・2〃

アル・一ル対馴g・8〃1・・97〃

正照 常に 家比 兎し

_対

ア対 ル照 コに

1比 ルし

増減率

推計学的

有意性

増減率

推計学的

有意性

+ 21%

+ 20%

+ 5%

十 8%

恥9表健康家兎にヂギトキシン  薬効量際目2週闇注射後の血  中乳酸及び焦性葡萄酸含量

No.101

〃 102

〃 103

〃 104

〃 105

乳  酸

14.5mg/d1 15.0 〃 ユ5.4 〃 12.9 〃 14.8 〃

焦性葡萄酸

2.03mg/dI 2.85 〃 2.80 〃 2.03 〃 2.17 〃

均i・4・5〃12・37〃

測定範剛・2・9−15・412・・3−2・85

正撒兎対副g・7〃12・・2〃

アルール対馴8・7〃1・・85〃

正照 常に 野比 歯し 対

増減率1+49%

推計学的

有意性

礁陣減率

選階雛

+ 64%

+ 17%

十 28%

No.111

〃 112

〃 113

〃 114

〃 115

乳  酸

13.6mg/d1 9.7 〃 1ユ.6 〃 10.2 〃 11.6 〃

焦性葡萄酸

1.83mg/d1 1.58 〃 1.72 〃 1.80 〃 1.43 〃

均[1・・3〃i1・67〃

測定範囲lg・7一・3・61・・43一・・83

正常矯対照lg・7〃12・・2〃

アルール対照1・…〃i・・94〃

正照 常に 家比 兎し 対_.

ア対 ル照 コに

1比 ルし

増減率

推計学的

有意性

増減率

推計学的

有意性

+ 16%

+ 11%

一 17%

一 14%

【95】

(6)

し,明らかに末梢循環血は母乳酸血症を呈し た.叉焦性葡萄酸含量は何れも増力ロの傾向を示 したが,推計学的には有意な変化は認められな

かつ:た.

 次にヂギトキシン薬効量連続2週側帯静脈内 に注射し海る後,動物耳静脈血中の乳酸及び焦 性葡萄酸を測定し,第9表に示す如き成績を得 た.即ち正常値に比して本四では血液乳酸含:量 は梢ζ増加の傾向を示せるも,推計学的には有 意な変化は認められす,叉焦性葡萄酸含量は梢

ζ減少の傾向を示せるも,ヒれも亦推計学的に は有意な変化とは見徹されなかった.上述最小 致死量使翔例,孤最:小致死量使用例及び薬効量 使用例には,夫々同量のアルコール注射の対照 動物同数をおV・た.とれら対照例における測定 成績と正常値との間には推計学的有意な差は認 められなかった.叉ヂギトキシン使用例におけ る測定値を夫々のアルコール対照例における測 定成績と比較するに,前者と正常対照値との比 較の場合と概ね同意義の差が認められた.

第4章第4編の総括

 以上諸実験の成績を総括する時は,次の如く

である.

 1)健康家兎を背位に固定する時は,固定後 脚1時聞を経て耳章章血中乳酸含量は,その安 静値に達し,爾後固定後2時聞に至るまでは殆

んど安定であった.

 2)健康家兎を背甲に判定する時,耳静脈血 中焦性葡萄酸含:量は,固定直後最高にして,固 定後2時聞に亘る数回の測定では,漸次減少を 示し,2時間後最低値となった.

 3)g一ストロフアンチン:最小致死量1回注射 例では,血液乳酸含量は増加し,焦性葡萄酸含 量は殆んど不変であった.

 4)g一ストロフアンチン施最:小致死量漣続2 週外注挙例では,血液乳酸含量は増加した.焦 性葡萄酸含量は矛傑増加の傾向を示せるも,推 計学的には有意の変化は認められなかった,

 5)g一ストロフアンチン薬効量連続2週間注 射例では,血液乳酸含量及び焦性葡萄酸含量は 殆んど不変であった.

 6)ヂギトキシン最:小致死量1回注射例で は,血液乳酸含量は塘制した,焦性葡萄酸含量 は梢ミ増加の傾向を示したが,推計学的には:有 意の変化は認められなかった.

 7)ヂギトキシン砥最:小致死量連続2週間注 射例では,血液乳酸含量は増加し,焦性葡萄酸 含量は梢ぐ増加の傾向を示したが,推計学的に は有意の変化は認められなかった.

 8)ヂギトキシン薬効量連続2週聞注射例で は,血液孚L酸含量は梢ζ増加の傾向を,又焦性 葡萄酸含量は梢ζ減少の傾向を示せるも,両者 共推計学的には,有意な変化は認められなかっ

た.

第5章第1編よリ第4編に至る総括的解説

 余は健康家兎にg一ストロフアンチン及びヂ

ギトキシンを静脈内に注射し,心筋,跨線筋及 び肝臓の糖原,乳酸及び焦性葡萄酸含量,並び に血液中乳酸及び焦性葡萄酸含量を測定し,含 水炭素代謝に及ぼすこれら両張心配糖体の影響 を検し,その成績を夫々各編において報告し た.こヒではこれらの成績を総掩し,併せて各 臓器間の代謝関係について:考察を試みることと

する.

 即ちg一ストロフアンチンの健康家兎心筋,

骨酪筋及び肝臓内含水炭素代謝,及び血液中乳 酸並びに焦性葡萄酸含量に及ぼす影響の相互的 関係を考案するに,g一ストpフアンチン最小致 死量1回耳側脈内注射例においては,糖原につ いて見れば,心骨及び肝臓では減少し,骨芦川 では梢ζ減少の傾向を示せるも推計学的には有

(7)

斜な変化は認められす,次に乳酸については,

心筋及び血液では増加し,骨酪筋では減少し,

又肝臓では減少の傾向を示せるも推計学的には 有意の変化とは見倣されなかった.更に焦性葡 萄酸について見れば,心筋及び骨酪筋では減少 し,肝臓及び血液では殆んど不変であった.こ れより健康家兎にg一月半ロフアンチン最小致 死量1回注射例では,心筋,肝臓共に糖原分解 が充まり,而も心筋においては酸化的代謝過程 が悪化して,ために乳酸利用不良となり蓄積を 来したるものと思考され,叉〜二の〜二とは末梢に おける過乳酸血の一因をなしたものと思われ る.叉一方骨儲物での乳酸及び焦性葡萄酸の減 少,或いは肝臓におけるヒれら成分の減少的傾 向等から見れば,とれら両組織では心筋におけ る如き酸化的代謝過程の悪化が生来せられなか ったのみならす,反って充進的傾向にあると解 せられる.とれは強心配糖体の心筋に対する特 異性の一面を表現するものならんと思考する.

次にg一ストロフアンチン施最小致死量連続2 週間耳静脹内注射例においては,糖原は心筋及 び肝臓では減少し,骨酪筋では減少の傾向を示 せるも推計学的には有意な変化は認められす,

乳酸は心筋及び血液で増加し,骨即吟ではヒれ に反して減少し,肝臓では梢ミ減少の傾向を示 したるも,推計学的には有意の変化とは見徹し 難く,焦性葡萄酸は堅砦筋及び肝臓では減少 し,心筋では梢ζ減少の傾向を,血液では寧ろ 禾徹増加の傾向を示せるも,何れも推計学的に は有意の変化とは見徹されなかった.これより g一ストロフアンチン施最小致死量手続2週間注 射例では,心筋,肝臓共に糖原分解が充まり,

同時に心筋では酸化的代謝過程が悪化して,乳 酸の利用不良となり,末梢循環血中には過乳酸 血を来すも,骨盤筋及び肝臓では本実験条件下 では,必ずしもその酸化機構は心筋における如 くには侵されす,反って新進傾向にあるものの 如く,ために乳酸も増加を示さす焦性葡萄酸も 減少したものと思考される.次にg一ストロフ アンチン薬効量蓮続2週聞耳静脈内注射例にお

いては、糖原は心筋及び肝臓共に梢ζ増加の傾 向を示せるも,推計学的には有意な変化は認め られす,導引筋では不変で,乳酸について見れ ば心筋及び血液では殆んど認むべき変化はな く,骨導筋では減少し,叉肝臓では梢ζ減少の 傾向を示すも推計学的には有意な変化は認めら れす,焦性葡萄酸は心筋及び肝臓では減少し,

骨儲筋では梢ζ減少の傾向を示せるも推計学的 には有意な変化とは見徹し得す,血液では殆ん ど不変であった.これよりg一ストロフアンチ ン薬効量連続2週間注射例においては,各被検 臓器,及び組織においてその酸化的代謝過程が 充進ぜるものと解せられる.

 次にヂギトキシンの健康家兎心筋,骨壷筋及 び肝臓内含水炭素代謝及び血液中乳酸並びに焦 性葡萄酸量に及ぼす影響の相互的関係を考案す るに,ヂギトキシン最:小致死量1回耳静脈内注 射例においては,糖原について見れば,心筋及 び肝臓では減少し,骨酪筋では漕ぐ減少の傾向 を示せるも推計学的には有意な変化とは見倣さ れす,乳酸は心筋及び血液では増加し,これに 反して骨儲筋では減少し,肝臓では減少の傾向 を示せるも推計学的に有意の変化とは見罪し難 く,叉焦性葡萄酸について見れば,心筋では不 変で,肝臓及び骨儲筋では減少し,又血液では 寧ろ梢ヒ増加の傾向を示せるも,推計学的には

:有意の変化とは見徹されなかった.とれよリヂ ギトキシン最小致死量1回注射例では,心筋及 び肝臓共に糖原分解が尤まり,且つ心筋では酸 化的代謝過程の悪化したるため,乳酸の利用が 減じてその蓄積を来し,末梢循環の静脈血中に

は過乳酸血が認められるに至る.早撃筋及び肝 臓では,本実験条件下においては,その酸化機 構は著明なる影響を受けすして,その機能を途 行ずるものの如くである.次にヂギトキシン雅 最:小致死量連続2週聞耳静聴内注射例において は,糖原について見れば,心筋,骨儲筋及び肝 臓共に減少し,乳酸は心筋,骨導筋及び血液で は増加し,肝臓では硬く減少の傾向を示せる も,推計学的には有意な変化とは見徹し難く,

【97 】

(8)

叉焦性葡萄酸は,心筋,肝臓及び骨儲筋で減少 し,血液では反対に寧ろ梢ζ増加の傾向を示し たるも推計学的には有意な変化とは見徹されな かった.とれよリヂギトキシン砥最小致死量連 続2週闇注射例では,各被検臓器,組織共に糖 原分解充まり,心筋及び置網筋では同時に酸化 的代謝過程も障碍せられ,乳酸の利用が悪化し てその蓄積を来し,それと共に末梢静脈血中に は過乳酸血が生じ,同時に焦性葡萄酸は心筋及 び骨油筋で減少を来した.とれに反し肝臓では 酸化過程は寧ろ充進ぜるものの如く,乳酸及び 焦性葡出面は減少乃至減少傾向を示したるもの

と思考される.次にヂギトキシン薬効量連続2 週間耳静脈内注射例においては.糖原について

見れば,心筋,骨儲筋及び肝臓共梢ヒ増加の傾 向を示せるも,推計学的には有意な変化は認め られす,乳酸は骨酪筋では減少し,心筋及び肝 臓断集減少の傾向を,血液は増加の傾向を示 したるも,何れも推計学的には有意の変化とは 見倣し難く,叉焦性葡萄酸は心筋では梢ヒ増加 の傾向を,血液では減少の傾向を示せるも,推 計学的には何れも有意の変化とは見徴されす,

骨二筋では殆んど不変で,肝臓では減少を示し た.即ちヂギトキシン薬効量注射例において は,一命筋及び肝臓におv・て乳酸叉は焦性葡萄 酸の減少が見られ,これは酸化的代謝過程の充 進と解せられる.心筋における所見も明確では ないがこれと同様に考うべきであろう.

第6章 結  以上より健康家兎含水炭素代謝に及ぼす両強 心配糖体の影響は次の如く考えられる.

 1)幌張心配糖体共その中毒量投与では,心 筋及び肝臓の糖原分解を早め,薬効量投与では 嫌気的代謝過程に著明な影響を及ぼさない.

 2)靴師心配糖体共その中毒量投与では,心

筋における酸化的代謝過程を悪化せしめ,薬効 量投与ではその充進を招来する.肝臓及び骨儲 筋では中毒量,薬効寸々概して酸化過程を充進 せしめるが,配糖体蓄積高度なる:場合にはそれ を障碍するものの如くである.

1)Folin−Wu: J・Biol・chem・38,81,

(1919).   2)Van−Slyke: ∫.:Biol, Chem.

32, 464, (1917).      3)Lau(rsen−

W基hlla皿der:Bioch. Z.298,273,(1938).

4)Lu: 13ioch・J・33,1,(1939)・     5)

斎藤:光電比色計による臨床化学検査,南山堂,

東京,(昭27).   6)Mendel=K1. W.

No.6,262,(1925).   7)福喜多=京都 府立医科大学雑誌,48,163,(昭25)・   8)

藤井:Tohoku。 J・eγP・Med・11,9,(1921)・

9)河村:Mitt. med・Akad・Kioto 2,161,

(1928)・    10)堂森:十全会雑誌,40,

1658,(昭10)・   11)Dietrich= Naunyn−

Schmiedeberg,s Arch.173,221,(1933).

12)斎藤3稲岡医科大学雑誌,30,491,(昭12)・

13)Himwic11:Am・J・:Physio1・109,403,

(1934). 85, 751, (1930).

循誌,15,258,(昭26)・

誌,15,151,(昭26)・

誌,13,130,(昭24)・

誌,12,97,(昭23)・

二型爵言志,14,124,(偶召25)・

日循誌,13,134,(昭24)・

験消化器病学雑誌,5,403,(昭5)・

野:実験浦化器病学雑誌,5,9,(昭5)・

22) Parfeutjev :  ∫・ Bio1・ CI}em・ 93, 797,

(1931)・    23)田申・遠藤:十全会雑誌,

32,979,(昭2)・

  14)村上= 日  15)西川: 日循  16)佐藤i= 日循  17)前田:日記 18)稲垣及び不破3  19)小黒・其他=

 20)引間=実

     21)水

参照

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