日本ロシア文学会 関西支部会報 2017/2018 oo.2) 2018年7月 31日
日本 ロシア文学会 関 西 支 △ 報 ム
R P
目 立
発行
日本ロシア文学会関西支部事務局 住所
〒606‐8501京都市左京区吉田二本松町
京都大学大学院 人間・環境学研究科 服部文昭 研究室 電話 075‐753‐6732 Email hattori.動面よi.4xoyotO・u.acjp 郵便振替口座 009602‑48831日 本ロシア文学会関西支部
大 阪北部 地震 及 び 西 日本 豪 雨で被 災され た会 員 に対 す る会 費免 除 につ いて
中村唯史 すでに学会HP、 支部会メーリング等でお知らせを図つているところではありますが、被災された会員には全国 学会費を免除することが理事会で決定されました。
なお、この場を借りて、このたびの地震および豪雨で被災された方、生活やお仕事に影響を受けた皆さまに、
心よりお見舞い 申し上げます。
春 季 総 会・研 究発 表 会 の報 告
題 目:ペレーヴィンとロブ
=グ
リエ ー推理小説の 2018年 6月 9日 (土)、 神戸市看護大学においてパロディという遊び一
関西支部の春季研 究発表会ならびに総会が開催さ
司会者:中村 唯史 氏 れました。30名 近い参加者があり、懇親会も盛会でし
た。この場を借 りて、開催校 の藤代節先生 に改めて
支 部 総 会 お礼を申し上げます。
(1)会
員の異動入会:会員
研 究発 表 会
・占部 歩 氏(大阪大学大学院 言語文化研 究科 (1)発表者:中野 悠希 氏
博士課程、推薦:ヨコタ村上孝之氏、中村唯史氏)
題 目:ロシア語とポーランド語の前置詞句yん十生
・小り│1佐和子 氏(京都大学人文科学研究所、推 格の非規範的主語構文について
`
薦:大平陽一氏、中村唯史氏)
司会者:岡本 崇男 氏
・山本 法子 氏(兵庫県立美術館 営業・広報 グ (2)発表者:岡野 要 氏
ループ、推薦:楯岡求美氏、中村唯史氏)
題 目:スロヴァキア語における水 中・水上の移動を
(手
続き中も含む。なお、山本氏は 日本ロシア文学 表す動詞の意味と分布について会会員としては新規であるが、関西支部ではすでに 一 ロシア語およびほかのスラヴ諸語と対照して一
会友であり、支部会友からの会員への異動であること
司会者:田中 大 氏
も紹介され承認された)
(3)発表者:山本 法子 氏
入会:会友
題 目:オペラ『 太陽の征服』におけるコンテクスト性
・竹本 絵里 氏(同志社大学嘱託講師 、推薦:大 とパフォーマティヴィティ
平陽一氏、扇千恵氏)、 先の総会後の新会友
司会者:本田 晃子 氏
支部変更:菱川 邦俊 氏(近畿大学、関東支部よ (4)発表者:占部 歩 氏
り)
‑1‑
日本ロシア文学会 関西支部会報 2017/2018 oo.2) 2018年7月 31日 渡辺 圭 氏(島根県立大学、関東支部より)
退会:なし 逝去:なし
(2)支部規約の改正等に関して
関西支部の改正前の役員選任規 定では、日本 ロ シア文学会の理事を選ぶことに繋がる選挙に会友が 選挙権・被選挙権を持つことになつており、この点の 改正が異議 なく承認 されました。併せて、諸般 の事 情 により、支部長が職務を遂行できない場合 に関す る規定の改正もなされました。
なお、支部長、理事、運営委員の任期の年数制限 については、業務の継続性と滑らかな世代交代の両 方の観点から、運営委員会で慎重に審議したうえで、
可能であれ ば次国の総会 にお諮りすることになりまし た。
(3)次期 当番校の決定
支部長から、
2018/2019年
度秋季は、京都大学で の開催提案があり、異議無く承認されました。日本 ロシア文 学会 の報 告 (支部 長 より)
日本ロシア文学会理事会が、
2018年 7月
22日(日)午後
3時
から、東京大学本郷キャンパスで開か れました。重要事項 、関西支部会員・会友 に関わる 事項について、以下にご報告いたします。1)今年度の全国学会について
今年度の全国学会 は、
2018年
10月 27(土)、 28(日)日の両 日、名古屋外国語大学で開催されます。
理事会においてその概要が認 められました。報告者
23名
、パネル2件
の他 に、ロシアのカザン大学との 合 同シンポジウム「東と西の間の L.トルストイ:研究、アダプテーション、展望」が予定されています(使用 言語ロシア語)。 また、学会前 日の 10月 26日 (金)夕 方 には、作家の平野啓一郎氏を招いて、プレシンポ ジウム「カタストロフィの想像力とロシア文化」が予定 されています。
学会のプログラムや報告要 旨等については、
8月
末から漸次、学会サイト及び郵送で周知されます。
今年も充実した学会となることが予想されます。皆 さん、ぜひご参加ください。
2)国 際交流助成について
今年度は
6件
の申請があり、うち5件
に各4万
円 の助成 が認 められました。これは 日本以外で開催さ れる国際学会への参カロを支援する制度です。関西 支部からの申請 は皆無ではありませんが、概して低 調です。海外での発表を希望している方は、来年度 以降、ぜひこの制度の活用をお勧めします。3)名 簿作成 の延期について
学会名簿は、これまで
2年
ごとに作成してきました が、名簿の社会的位置づけの変化、業務 。経費削減 の観点から、これを4年
に1度の作成に変更すること になりました。したがつて新名簿は、2020年に作成の 見込みとなります。4)学会誌バックナンバーの頒布 について
学会誌「ロシア語ロシア文学研 究」のバックナンバ ーを、学会員には
1冊
につき 1,000円 、非会員には 3,000円で有料頒布することが認 められました。この 件に関する情報は近々、学会HP等
で公開の予定で す。5)大阪北部地震及び西 日本豪雨で被災された会 員 に対する会費免除について
すでに学会 HP、支部会メーリング等でお知らせを 図つているところではありますが、被災された会員 に は全国学会費を免除することが理事会で決定されま した。
大 平編集 委 員 長 より
(関西支部選 出の編集委員として 7月 22日 に開催 された理事会について報告する。)
支部総会でも話題 にしたが、学会誌編集委員会で は学会誌 に掲載された論文がネットで検索した場合 ヒットしにくく、余り読まれていないことを憂慮している。
そこで理事会 において、編集委員会として J―STAGE での公 開のための予算措置について陳情したところ、
理事会の承認をえることができた。
今後は、編集委員会において学会誌の刊行後どれ だけの猶予嬢間をおいてインターネット上での公 開 を行うか等の細部を詰めた上で、来年度(10月 下旬 の全国区大会以降)に一部のバックナンバーの論文 および書評を 」―STAGEにアップロードすることを目指 すことになつた。
‑2‑
ロシア語 とポーラン ド語の前置詞旬y/u+生格の非規範的主語構文 について
ロシア語の前置詞旬 y十生格 は、種々の述語 と 共起 して文の叙述 内容 に関与す る者 を表す。規範 的な主格主語 に対 し、斜格で表 され る意味上の主 語 を「メF規範的主語」と呼ぶな らば、ロシア語では y十生格 を「非規範的主語」とす る構文が よく発達 してい ると言 える。一方ポー ラン ド語で も、例(1)
のように前置詞旬
u+生
格 を「非規範的主語」と見 なせ る用法が見 られる。(1)U Ineぉzvzn glosjest niski,u kobict wysoki.
「男性 は声が低 く、女性 は高い。」
本報告では、この ように「所有」を合意す るポーラ ン ド語の u十生格 について、その使用状況 と使用 条件 とを明 らかにす ることを目指 した。
先行研究では、「所有」を合意す るロシア語の y 十生格 にはポーラン ド語の主格 十111ie6「持つ」、生 格
/所
有代名詞、与格、対格 が対応す ると指摘 さ れている。しか しポーラン ド語の「所有」のu十生 格 には言及がな く、 これがそ もそ も稀 な用法であ ることが窺 える。そこで、まず は「所有」のu十生 格 の使用頻度 を調べた。20世紀半 ばにポー ラン ド 語 で著 された長編小説 1作品 (及びそのロシア語 版)を
対象 に調査 した ところ、ポーラン ド語では「所有」 を表す u十生格 の使用頻度 はロシア語の 約26分の1と い う結果が出た。次 に、ロシア語の
「所有」 の y十生格 の用例 に対応す るポー ラン ド 語 の形式の割合 を調べた。最 も多かつたのは主格
―IIlle6「持つ」 の組合せで、与格、主格 (mie6以
外 の述語)、 生格、対格が続 き、これ らの形式が全 体 の
9割
を占めた。 しか し同時に、少数 なが らも ポー ラン ド語 のu+生
格 が ロシア語のy十生格 に 対応す る例 があることも確かめ られた。つづいて、ポーラン ド語の「所有」の
u+生
格 の 使用条件 を考察 した。まず例 (2)、 (3)に よって主 格一面e6と u十生格の棲 み分 けに注 目した。中野悠希 〔京都大学大学院〕
0)U WaSten typ wys切量.
「あなたたちにはその顔つきが現れた。」
(3)Antek ma typ sc血c霊.
「 ア ンテ クはユ ダヤ的 な顔 つ きを して い る。」
両者 の使 い分 けは統語的な制約 によるもの と見 ら れ る。すなわち mie6は 「所有物」の存在や状態 は 表せて も、「所有物」の動作や状態変化等は表せな い。このため専 ら「所有物」の存在や状態を表現す るmicこ と、それ以外 の表現 に対応するu十生格 と で、相補分布 を示す と考 えられ る。
次 に、例 (4)を もとに、「経験者」の与格 と「所 有」のu十生格 とを比較 した。
)Wargi皿墜siO shczyt iak u mletto dziecka.
「彼 は唇が幼い子供 のようにすぼんだ。」
主節の「彼」は出来事の「経験者Jと して与格で表 されてお り、したがってその比較対象であるjak節 内の「幼 い子供」 も与格での出現が期待 され ると ころだが、この例ではu十生格で現れている。母語 話者 によれば、u十生格が一般論 を表す一方、与格 は特定の一人の出来事 を表す ように感 じられ るた めjak節 内ではu十生格 の使用が適格だ とい う。
また ロシア語の
y+生
格 には動作主的用法 も見 られ る (例 :y Hac c ДcJIaMИ IIoKoHqCHO「 私 たちは 仕事 にけ りがついた」)が
、ポー ラン ド語のu十生 格 には同様 の用例 は認 め られなかった。以上か ら、ポー ラン ド語 の u十生格 にはロシア 語 の y十生格 と大 き く異なる特徴があることが分 かった。つま り、ロシア語の
y+生
格 が、述語の表す事象・状況の影響 を被 る「経験者」と見なされた り、 また時にはその事象・状況 を生み出す「動作 主」 と見なされた りと、述語 と密接な関わ りを持 ち得 る一方、ポーラン ド語のu十生格 は「所有者J
の域 を出ず、述語の表す事象 。状況が観察 され る
「場」 とい う以上の解釈 を許 さない。
ス ロヴァキア語 における水中・水上の移動を表す動詞の意味 と分布 について 一 ロシア語お よびほかのスラヴ諸語 と対照 して一
岡野
要 〔神戸市外国語大学〕
本報告ではスロヴァキア語における水 中・水上の移動 を表す動詞 ●eFbS Of aquamOtionhの 意味 と分布 についてロシア語 をは じめとす るほかの現代 スラヴ諸語一ポーラン ド語、セル ビア語、ル シン語― と対照 しなが ら考察 した。水中・水上の移動を表す動詞の研究は、個別言語 を対象 とし た語彙論的研究および語彙類型論の観点か らすでに大きな蓄積があ り、系統が同 じスラヴ語間で もこの意味野の語彙化パタンに一定の差があることが知 られている。スロヴァキア語における水 中・水上の移動 を表す動詞 の研究は、辞書を除けばその数が大きく限 られてお り、この意味野の 語彙化パ タンお よび系統的に近い言語 と比較 した ときの同根語 の意味的ふるまいの差異について はまだ知 られていないことが多い。本報告の考察ではモスクワ語彙類型論 グループのプロジェク トの用いる理論的枠組みに依拠 しなが ら、水中・水上の移動の意味野お よび これ らの下位領域 を 構成す るフ レームがス ロヴァキア語において どのよ うに語彙化 されるかを分析 した。
(水泳〉の意味領域は共通スラヴ語の動詞り θ″に由来す る2つの動詞、すなわち ′Zわαメ「泳 ぐ、漂 う」 とクJ″″sα「航行す る」によつて語彙化 される。1つ日の動詞 ′Jttαノは、有生の主体 が 自分の力で水中または水上を移動す る (能動的な水泳〉の意味、無生の主体が水な どに流 され て位置 を変化 させ る 〈受動的な水泳〉の意味お よび水面上または水中に浮いてい られ る状態 を表 す ことができるが、水上を移動す る船の移動または人間がこれ らの乗 り物を使用 して移動す るコ ンテクス トでは移動の方向が明示 されない場合 にその使用が限 られ ることが明 らかになった。一 方、動詞 pJo″ 諮 は動詞 ′Z″α′の表す ことの出来ない、水上を移動す る乗 り物が一方向へ と移動 す る状況お よび人間が乗 り物で水上を一方向へ と移動す る状況の描写に しか用い られない。
2つ
の動詞の意味 と分布は以下の表 1の ようにま とめることができる:
表1.ス ロヴァキア語における (水泳
)を
表す動詞の分布 :●:動詞
│‐■■■主要な使用■ンテタスト
│メいぶ
有生の主体の能動的な水泳 (人間、魚、水鳥、泳 ぐことのできる動物)
水上 を移動す る乗 り物 を使 つた人 間の移動 乗 り物の水上または水 中の移動
受動 的 な、ほ とん ど動 きのない無生物 の主体 の移動 有生または無生の主体が水面上に位置す ること
pl御′Fsα 有生の主体の水上の乗 り物 を用いた特定の方向へ向か う移動 水上 の乗 り物 の特定 の方 向へ 向か う移動
(液体の流れ
)の
意味領域は動詞 ル″「流れ る」、″ジグゴ′「流れ る」、′′αr Sa「あふれ る、降るJによ り語彙化 され、それぞれの語彙単位 は異なるフレームを語彙化す るために用い られ る。動詞
riacメ は、この意味領域の基本動詞 として用い られ、川や涙、蛇 日か ら出る水 といつた様々な液体
の流れ を表す際に広 く用い られ、移動主体 となる液体の量を区別 しない。但 し、液体が一方向へ 向かつていることが前置詞句またはコンテクス トによ り明示 され るときは、液体の一方向への移 動 を表す動詞 ″郷 が用い られ、液体があふれ出る様子を描写す る際には集 中的な液体の移動 を
表す動詞JiaF sα が選択 され る。 この意味領域 を語彙化する動詞の意味 と分布 は表2のよ うにまと
めることができる:
表2.スロ ヴァキア語 にお ける (液体 の移動〉 を表す動詞 の分布
重 壺 言 ■ ‐1 主要な使用■│ンテ クス│卜■
液体の流れの移動 (河川、蛇 日か ら出る水)
いわゆる体液 の流れ (涙、血液、汗 な ど)
特定の方向へ向か う液体の移動
(水道管 を通 る水、体内を循環す る血液)
Jiarsα 液体の流れの集 中的な移動 (土砂降 りの雨、あふれ出る涙)
(水中の移動
)の
意 味領域 は動詞 ″商″ノsa「潜 る」、″ 中 αノ躍 「潜水す る、沈没す る」、切ガsa「溺れ る」の3つの動詞 によつて語彙化 され る:1つ日の動詞 ″励 F sα は有生の主体ま た は水 中に潜 るこ とのできる乗 り物が潜水す る様子 を描写す る際 に用い られ 、
2つ
目の動詞″ η メ∫αは有生の主体 と用い られ る際は主体の制御下にある潜水の意味を、船やボー トのよ う な無生の主体を主語に取 る際は沈没の意味を表す。
3つ
目の動詞 均ガ ″ は有生の主体が水 中で コン トロール を失い、蒻れ る様子を描写するために用い られ、無生の主体を主語に取ることは出 来ない。 (水中の移動)を
表す動詞の意味 と分布は表3のよ うにまとめることができる:表3.スロヴァキア語における (水中の移動
)を
表す動詞の分布 動詞 : 1主要‐な使用■│ン・テタス│卜■ρο 閣ノ
sa
有生の主体の水 中への移動 (潜る)水 中を移動 でき る乗 り物 の潜水 (潜水す る)
′ο毎 ぼ
"
有生 の主体 の水 面下 にお ける移動 (潜水す る)水 中を移動す る乗 り物の制御 を失った移動 (沈没)
水上を移動す る乗 り物または無生の主体の制御 を失つた移動 (沈没) rap′′sa 有生の主体の制御 を失 った水 中への移動 (溺れ る)
スラヴ語対照研究の観点か ら見た とき、スロヴァキア語 の水中・ 水上の移動 を表す動詞の語彙 体系はすでに分析 されてい るロシア語、ポー ラン ド語、セル ビア語、ル シン語の語彙体系 と部分 的に共通 しなが らも、い くつかの点で異なつていることが明 らかになつた。
ス ロヴァキア語は、ロシア語やポーラン ド語 と同様、 〈水泳〉の意味を表すための2つの語彙 単位 を有す る。 しか し、移動が一方向に行われ るか多方向に行われ るか とい う 〈移動の方向
)の
意 味パ ラメー タのみで対立す るロシア語の 初υ″b― 阻αGttbお よび ポー ラン ド語 の ノ″″ 一 メ
"″
とは異な り、動詞 メおarとノ″″囮 は 〈水泳の能動性〉お よび (移動の方向)とい う2つの意味パ ラメータで対立 していることが分かつた。 このよ うな分布 は 〈水泳
)を
表すために3つ の動詞 を用いるセル ビア語 (ci能 動的な水泳PJivari vs.乗 り物による移動′あッ″vs.受動的な水泳′滅arめ お よび 〈水泳〉 を表すための動詞が 認滋町のみのル シン語 とも異なっている。
ス ロ ヴァキア語 の (液体 の移動
)の
意 味領域 で は 〈移動 の方 向〉 が語彙 の選択 に影響す る(′′β
̀ノVS.″〃り。 この点では基本動詞
̀た と一方向への流れを表す動詞 ノ″″ を区別す るポーラ ン ド語 と共通 しているが、その一方で く少量の液体の流れ
)の
意味はポー ラン ド語 ← ηιsO、セル ビア語 ●″の 、ル シン語
oク
の の よ うに個別 の語彙 を持 たず、 ロシア語 の場合 と同 じく〈流れ
)を
表す基本動詞 虎″ を用いて語彙化 され ることが明 らかになつた。(水中の移動
)の
意味領域では、 〈有生性〉 と 〈移動の制御 可能性)に
よ り語彙が区別 され る とい う点でセル ビア語、ル シン語 と共通 しているが、語源的に共通す る語の表す意味範囲には言 語 間で差 が あ り、それ 故動詞 の分布 に一定の差異が見 られ る。例 えば、共通 ス ラヴ語 の動詞*raP"ま たはホraη″
(<*″
″9‑rilに起源 を持つ ロシア語 ″叫″bとポー ラン ド語 わ″̀は主体の有 生性 に関わ らず ヒ ト・モ ノが減れ るまたは沈む様子 を表すために用い られ るが、スロヴァキア語 では動詞 初ガ
"が
有生の主体が滋れ る状況 を、接頭辞 ″ ‐の付加 された動詞 ″"″
ノ∫αが有生の 主体の潜水お よび無生物の主体の沈没 を表 し、セル ビア語では動詞 razariは船 な どの無生の主体 の沈没のコンテクス トで しか用い られない といった同根語間の細かい差異が確認 された。
本報告 における分析で得 られた結果は以下の2点にま とめることができる:
1.ス
ロヴァキア語の 〈水 中・ 水上の移動)を
表す動詞 の語彙体系は、すでに類型論的研究でも 指摘 されているよ うに、い くつかの意味パ ラメータの対立によ り複雑ではあ りなが らも一定 の体系性 を有す る。 スロヴァキア語の語彙体系において関与的 となる意味パ ラメータとして〈水泳 の能動性)、 〈移動の方向〉、 〈主体の有生性〉、 〈主体の水泳の能力)、 〈移動の 制御可能性
)が
挙げ られ、語彙化の際の動詞の選択に影響 していることが明 らかになつた。2.ス
ラヴ諸語 との対照研究の観点か ら見 ると、スロヴァキア語はほかの現代スラヴ諸語 と同 じ よ うに共通スラヴ語の語彙層か ら継承 された動詞語彙 を有す るが 侍あ″ブ,■熱 、*関屹 *̀90、個 々の語彙 の意味的ふ るまいは各現代スラヴ語において部分的または全体的に異な り、スロ ヴァキア語 の水 申・水上の移動を表す動詞の分布お よび語彙体系はほかのスラヴ諸語 におけ るそれ らと細かい点で異なっていることが示 された。
ロシア文学学会関西支部
春季研 究発表 会 オペラ『 太陽の
anJに
おけるコンテクス ト性 と′tフォーマテ ィヴィテ ィ
山本法子 確 輔
『 太陽の征服』(1913年)は、詩人のアレクセイ・クルチョーメィフ (1886‑1968年)、 ヴェレミール・フレープニコフ (1885‑1922年)、 作山家のミハイル・マチューシン (1861‑1934年)、 そして画家のカジミール・マレーヴィチ (1878‑
1935年)によつて制作されたスペクタクルである。マレーヴィチはこの演劇の為に、分析的キュビズム1風の 22枚 の舞台 装置と衣装デザインのエスキースを制作したが、陰と陽を表すそのうちの一枚の舞台幕について自身の「最初のシュプレ マティスム絵画」であると宣言しており、これまでの研究では、このエスキースにおけるアイデアが後の『黒の正方形』
の誕生に関係 しているとされてきた。しかし、2015年の トレチャコフ美術館研究チームのX線による科学調査によつ て、『 黒の正方形』は2層の絵画のレイヤーの最上層に描かれたものであり、下層の絵画にはフランスの作家アルフォン ス・アレーの作品『夜の地下倉庫の中での黒人たちの闘い』を想起させるテキス トが発見された。アルフォンス・アレー の存在の浮上は、『 黒の正方形』及びシュプレマティスムと『 太陽の征服』制作との相関関係を再確認する必要性を提起 したといえる。
『 太陽
mに
おけるコンテクス ト性―一『上演」を構成する要素1.行
為者 (制作者)『 太陽の征服』の制作に携わったのは、実質的にはクルチ ョーヌィフ、マチューシン、マ レ ーヴィチの3人だつたが、彼 らはこの作品を「未来派による」演劇 と銘打って宣伝をした。 ロ シア未来派の芸術家たちにおいて最 も特徴づけられるのは、彼 らの持つある種のカ リスマ性に あると言える。例えば『 太陽の征服』の上演された 1913年 には、舞台装飾を担当したマ レーヴ ィチやマヤコフスキーについては、既に芸術家 としてある程度の評価を得ていた。また、未来 派が 日ごろか ら行つていた路上でのデモンス トレーションや逮捕などの騒動は、賛同者 とそ う でない者両方を扇動 し、スキャンダラスなパフォーマー集団とい うイメージを演出 していた。
フェイスペインティングは、自らの芸術を日常に拡張させ る手段 として、講演などの際ブル リ ュークらが行つていた。ブル リュークの山高帽、マヤコフスキーの黄色いシャツとスカーフの ネクタイなど、未来派は服装を奇抜にす ることで自身をアイコン化 させ、世間に前衛芸術家集 団としてのイメージを植え付けた。『 太陽の征服』の開演前の舞台幕が作者二人のポー トレー ト を用いたことや、『 悲劇 ウラジー ミル・マヤコフスキー』が自身の名前を題名にした自作 自演の 作品であつたことからも、これ ら一連の試みが「だれによつて」制作されたかに焦点が当てら れていることがわかる。それは対抗文化の精神を反映 した演劇の意義の一つである、マイノリ ティグループによる世間 (マジョリティ)に対するアイデンティティの確認 と提示であると言 える。
職 鶴 鮮 警
モスクワ新間 にお け る未来派 について風 刺画 (1913年)
2.視
客 と上演の 「Ij会場 となったルナ・ パル ク (■ yHa―
napK)劇
場 は、文字通 り遊園地の劇場であ り、1912年地元経営者のヤ リー シェフによつて建設 された娯楽施設 「ルナ・パル ク」の中に存在 した。 もともとこの地はサーカスや見世物が盛んに行わ れ ていた有数の歓楽街であ り、18世紀初頭 に作 られた 「ナ リーシュキン庭園のバクサール」 とい うペテルプル ク初の公 共娯楽施設 をその始 ま りとしている。ルナ・パル ク劇場は、女優 コミサルジェフスカヤの劇場 (1904̲1910)の跡地 に建 設 された とい う経緯があつた。マ レー ヴィチは舞台幕 と衣装の準備 をこの劇場の中で行 つていたが、劇場関係者や先に芝 居 を終 えたオペ レッタの役者か ら嘲笑 を浴びなが ら作業をしなければな らなかつた。またクルチ ョーメ ィアの回想 による と劇場関係者 によつて仕組まれた暴発事故が リハーサル中に発生 し、未来派 と劇場は常に緊張状態にあつたよ うである。『 太陽の征服』 は、騒動 に よる話題性 と効果的な宣伝広告一一新 聞≪peЧ Ь≫に掲載 された広告や街 中に貼 られたポ ス ターのおかげで、チケ ッ トは9ループル と高額だったにも関わ らずす ぐに売 り切れ るほ ど注 目を集 めた。 しか し訪れた 観客が 「着飾 った俗物 のブル ジ ョワ」ばか りで 「労働者」は皆無であったのは、ブル ジ ョワ向けに作 られた劇場の特性 に よるものであると言えるだろ う。観客のほ とん どは、未来派のスキャンダル を直接 自分の 日で見 よ うと押 しかけた者たち で、演劇が始まると彼 らは役者 に向かつて野次 を飛ば した。客席では、一部の未来派 を称賛す る者 と作品に憤慨す る者 と
1ピ カソとブラックによって創始されたキュビズムのうち、1909年から1911年頃までのものを指す。抑制された色彩 とモチーフを断片 化 。再構成することによる曖味な輪郭形成が特徴。
の間で暴動が起 き、また観客はその無秩序 を見物す るためにボ ックスに 詰 め寄 った。観 客の野次 に対 して、舞台上 の役者 はスポ ッ トライ トを引 きず り降 ろ し、客席に向けて照射す るな どして観客を挑発 し返 した。ル ナ・パル ク劇場に備 え付けられた最新式の舞台照明は、スク リャー ビン の『 プロメテウスの火』(モスクワ公演、1911年)やクレイグの『 ハムレ ッ ト』(1911,1912年)における光のスターク効果に影響を受けて用いら れたとされていたが、当時の レヴューから客席 と交信する道具 としてこ のように即興的な用い られ方もしていたことがわかつた。2こぅした舞台
と客席 との間で行われた相互作用は、19世紀末の演劇において主流だつ たプロセニアム劇場や額縁舞台の形式を打破 し新 しい劇場空間を再構築す るものである。舞台空間を客席 と乖離 させ、「覗き見る」感覚を促進する日
的で使用 される照明器具が、その目的 とは対照的に、舞台 と客席を繋げる使われ方をしているのもユーモラスである。
3。 革命前夜 と機械賛実の時代
『 太陽の征服』のテキス トは極めて同時代的であり、 日露戦争や土露戦争、都市の工業化や技術革新などの時代的背景 を映 しだ してお り、特に「太陽」に象徴 される古い権力を捕まえるとい う部分は後の革命を予感 させ る。『 太陽の征服』
のテキス トにある時代 と空間の転換は、現実世界の古い権力 と価値観の転覆を期待 しているかのようであり、その一方で 時代の急激な変化についていけず 「自殺する者 もいた」 とい う部分は、自分自身が新時代の到来を期待 しながらも、同時 に不安を感 じていることを暗に示 している。1913年の『 太陽の征服』では、 5yATo 6paЛИ nOpT―ApTyp"(ま るで旅順港 占領 したかのようだ)とい う箇所において 日露戦争に触れているが、この演劇では全体を通 して「敵」を非難するのでは なく観衆に対 して行動をおこせ とメッセージを送つてお り、国粋主義的思想からインターナショナ リズム的思想への過渡 期にあつたと言える。
一方で劇中の「タイム トラベラー」が飛行機の墜落事故を起こすシーンは、未来派の詩人カメンスキーの飛行機事故か ら着想を得ていると考えられるが、20世紀初頭に西欧から流入 した蒸気機関車や 自動車、飛行機などの動力を都市にお ける新 しい運動のダイナ ミズムとして迎合 しながらも、一方で人間を破滅 させ うる力に対 して不安を感 じていたことが伺 える。
まとめ
『 太陽の制服』は単純な綜合芸術 としてだけでなく、巧みなブランディングと扇動によつて戦略化 された側面を持ちな がらも、場当た り的で即興的なパフォーマンスであるとい う点において、アヴァンギャル ドを象徴する作品と言える。 こ の作品は、未来派によつて 日常的に繰 り返 されていた騒動あるいはパフォーマンスの延長線上に位置 し、その反復は芸術 家がアクションを起こし聴衆がそれに (賛同するか罵声を浴びせるかの形で)応えるとい う儀式的な約束事を決定する。
『 太陽の征服』上演に未来派のスキャンダル見たさに野次馬が押 し寄せたのは、劇場で行われるこの演劇に対 しても、こ れまでと同様の騒動を期待あるいは予想 したか らである。それによつて『 太陽の征服』は、役者一観客、観客一観客 とい
う相互的な関係性において作用する演劇空間を形成 し、即興的で自己省察的なパフォーマンスとして上演 された。
参考文献
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日本 ロシア文学会関西支部研究発表会
2018 2018年
6月 9日ヴィク トル・ ペ レー ヴィン とアラン・ ロブ
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リエ ー推理小説 のパ ロデ ィとい う遊び一大阪大学大学院言語文化研究科 占部歩 発表の趣旨:アラン・ ロプ=グリエの特に後期作品とヴィク トル・ペ レーヴィンの比較対象を行い、両作 家が推理小説のパ ロディとい う形式を利用 して、アイデンティティの問題を遊戯的に語つていることを論 証する。
・捕饉里/1漏流とは
笠井潔によれば「謎一解明」の構造を備え、それを中心に構成 される形式主義的な小説。
・「探偵 (推理)小説の被害者は、機関銃で泥人形 さながらに打ち倒 された壁壕の死者 とは比較にならない ほど、栄光ある特権的な存在である。なぜなら犯人は、狡知をつ くして犯行計画を練 りあげ、それを周到 に実行するのだか ら。探偵小説における死者は、大量死をとげた戦場の死者 とは異なる固有の死者、意味 ある死者、ようするに名前のある死者である」(笠井潔)
→推理小説 とは「議す解明」の構造 とい う強園な図式と、それを通 して行われるアイデンティティの保持: 旦雀 とい う機能を備えた、機械・装置 としての小説ジャンル としての一面を持つ とい うことが出来る。
。そのパロディとは
「(ロブ=グリエの小説は)謎が謎のまま終わる、解決のない推理小説である」(平岡篤頼)
→ 「自分 とはいかなる条件において確立 されるものなのか」 といつた疑間の遊戯幽ム展開。
遊戯的 とは :確実な答えのない、堂々巡 りのような語 りの性質。
推理小説のパ ロディとは、「『 謎=解明』の構造を持ちながら、それをよそに答えの出ない哲学的思素に遊 戯的に没頭する小説」 と定義出来る。
・ノくロディの二つの型
推理小説の一貫性 とい う原則をゼロ化 と複数化の二つの操作を用いて解体
→ 「単一の結論に収飲する」とい う推理小説の原則をパロディ。
*ゼロ化:表象や事象が内破 し、他のものとの記号 としての連関を形成出来なくなる。
複数化:表象や事象が拡散 し、単一の結論を確定出来なくなる。
・ 名前における操作
R・ G:名前の複数化 :一 つの小説において同一キャラクターの名前が一定 しない。
P:名前のゼ ロ化 :固 有名詞 が本来の機能 を果た していない。
・語 りにおける操作
R・
G:語
りのゼ ロ化 :誰 が語 っているのかが終始曖味。P:語りの複数化1語り手 と語 られ る内容 との間に距離が設 けられている。
前の複数化 ×語 りのゼ ロ化=反推理ノ 口化 ×語 りの複数化
=
→反推理小説 :推理小説 を成立 させ る条件を否亀
脱唯理小説 :そ の条件 に見 られ る形式主義 を遊戯的に歪曲 し、盤ム を魏
ま とめ
ヴィク トル・ ペ レー ヴィンとアラン・ ロブ=グリエ とい う二人の作家を、アイデ ンテ ィテ ィとい う概念 を キー ワー ドに して結び付 け、 さらに推理小説のパ ロデ ィとい う形式に着 目す ることで彼 らがアイデ ンティ ティの問題 を遊戯的に扱 っていることを示 した。
推理小説 のパ ロデ ィとい う形式で2人の作家が語つているのは 「謎」である。小説のプロッ ト中にい くつ もの謎 が提 出 され るが、それは決 して読者が期待す る形で解明 され、解決す ることはない。それは彼 らの 作 品が謎解 きの物語ではな く、アイデ ンテ ィテ ィの問題 を扱 つているか らである。彼 らの関心はあくまで も「人はいか に して 自分 自身た りうるのか」 とい うテーマを、虚構の枠組みの中で展開す ることにあ り、
そのために推理小説 とい う形式が提示す る「謎=解明」の構造 を口実に しているに過 ぎない とさえいえる。
その よ うに考 えれば、文学史において常に傍流の位置 に甘ん じてきた推理小説 とい うジャンルは、文学の 最 も大 きなテーマの一つであるアイデンテ ィテ ィを正攻法 とは違 う観点か ら扱 う為の有用な手段であ り、
文学史的にも大きな意義 を持つ ものであると考えることが出来 る。
引用作品
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《膿 M yxaca》 0悶pョ旺磁
Mり
,Moctta,2005 アラン 。ロブ=グリエ『迷路のなかで』平岡篤頼訳、講談社、東京、1998年
『快楽の館』若林真訳、河出書房新社、東京、2009年
『 反復』平岡篤頼訳、自水社、東京、2004年
参考文献
『探偵小説は「セカイ」と遭遇した』笠井潔著、南雲堂、。 2008年
・『 ミステリーが生まれる』成娑大学文学部学会編、風間書店、2008年
・『「ヌーヴォー・ロマン」とレアリス トの幻想』小畑精和著、明石書店、2005年