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自らの生き方とつながる異文化理解教育の創造 : アイデンティティ形成方略という視点から

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(1)

社会系教科教

育学会

『社会

系教科教育学研究』第13

号 2001

(pp.127-134)

自らの生き方とつながる異文化理解教育の創造

う視

点か

Developing Cross-cultural Studies in

In View of Construction of Personal Identity

汝h Schoo1:

I 

問題の所在

を読む危険性は

,自分の考えが本を読むこ

とによって

,無意識に

変えられ

ている点てある」

という表現に出会った

。この文は

,ある女子大生

のエッセイ中の

一文である1

几ここに示され

てい

るのは

,厂

私のアイデンティティは

自己の意志の

力で周囲の文化とは無関係に形成され

ている

」と

いう思想

である

。この

ような意志表示には

『現代

社会』などの授

業においても

しば

しば遭遇す

なぜ

,彼

らは周囲の文化と自己とを隔絶

して認識

するようにな

ったのだ

ろうか

異文化について問う高校生アンケ

トでは,異

文化

を厂

日本以外のもの

」とす

る回答が

多く見

れた

。そ

して,多くの者は

自文化

(非

・異文化)

を伝統

的な

日本文化と同

一視

している。

しか

,稲作農耕文化

を基本とする日本の伝統

文化と現代の高校生の生活文化とはか

りの隔た

りが

ある

。このずれが

,多くの現代の若

い世代に

「どの文化にも属

していない自分

」という認識

もた

しているの

では

ないか

。そ

してその認識は

個人のアイデンティティの根拠を希薄

なものに

ている

。自己の確

立のため

には

,アイ

デン

ティティ

の背景となる自文化を客観視

,相対化する視

を持つことが必要なのではなか

ろうか

本研究では

,文化をその価値基準と

しての側面

を中心に取

り扱い

,集団アイデンティティか

(アイデンティティ本来の意味である)パ

ソナ

ルアイデンテ

ィティまでを

一連のもの

して論

ることとする

。また

,自文化とは

,自己の価値観

を形成する際に取

り込まれた周囲の文化の

ことで

り,自国文化

を意味

しない。

秋 

山 

明 

(神

戸市

楠高

学校)

H 

自分の文化を客観視す

ることを阻害す

るもの

.学習指導要領が内包す

る問題

学習指導要領は

,一貫

しで日本人と

しで 在

り方生き方を考

,国際社会に貢献するように求

ている

。そ

して,それ

は一層

「日本人らしさ」

を強調する方向へ進んでいる

。た

とえば,高等学

校学習指導要領公

民科

「 ̄

倫理

」平成元年版では

国際化社会での生き方は

,匚

(3)国際化と日本人

しての

自覚」として図

1のよ

うに別項を設けて

り扱

うようになっていた

1高等学校

学習指

導要領

公民科

「倫理

」平成元

年版の構

造図

2高等学校

学習指

導要領公

民科

「倫

」平成11

版の構

造図

平成

年版に

おいて

,青

年期

課題

と現代

の倫

考察

を経

国際

生き

る者

して

自己

形成

を行

うと

う知識の

がみ

られ

しか

し,その

造は

同平

n年版

では

なわれ

る。

同平成

n年版

では

,図

2の

うに

(1)

年期

と人

しての在

り方生

方の

一部

いで

ある

。現

代社

会の

なる種

々の

な葛藤

論的

究に

先ん

じて

“日本

して

127

(2)

国際

に生

いる”

とい

う与件

を重視

とが

求め

られ

したが

っで日本

しで の

方在

り方

を探

した

,現

代社

会の

を探

究す

こと

となる

習指

導要

を原

とす

ことは

当で

うが

,その

には

一的な

日本

人像

を求め

る姿

勢が

思想が

,国

ある

内の

とは

多様

指摘

文化

きる

を認め

る視

点が

「多文化社会

・アメリカ合衆

国」をモデル

する

ことに

よって生起す

る問題

日本社会が単

一文化的に扱われ

るのと同時に

米国が

多文化社会の

典型と扱われ

ることが

多い

しか

,米国を手本と

して

多文化社会の学習をす

ことは適

当であろうか

米国は

,自らの許容できる範囲に隕っての

多文

化主義

(ある

いは文化相

対主義)を主張

している

この

ことに起因

して人権

をめ

ぐる意見対立が深刻

,国際

的対立

を引き起

している。

米国においては

,多様な価値

を受容す

る前提と

なる徊文化や

自己の価値観の客観視は充分

ではな

。それは

,自国文化の持つ尺度

(資本主義

・キ

リス

ト教的人権観

)を絶対視

,その普遍吐

を主

しているか

らである。

従って

,教育の場面では

,米国で開発

されたカ

リキ

ュラム

を導入する際

,そこに米国文化の価値

観が内包

されていることに留意することが重要で

ある2

3。

「文化比較」の尺度

を普遍視

・絶対視するこ

とに

よって生起す

る問題

自文化と異文化を比較

して異

文化を理解

しよう

とする場合

,比較のための基準が必要である。当

然なが

ら厂

自文化の基準

しか持ち合わせていな

いの

,それ

にもとづいて厂

自文化」と匚

異文化」

とを比較する

。しか

し,匚

異文化」の側か

ら見る

,匚

自文化の基準」ではない

“不当な”基準に

もとづいて比較された

ことにな

,正当性

を欠

く。

だか

らといって

,絶対的価値

を定めてそこから比

較をす

ることは

,多文化主義とは相容れな

い。

ここでは

,暫定的な作業仮説

(=と

りあえず

しての妥

当性

をもつ基準が求め

られ

る。現在の

ところ

,この基準

して厂

人権

・民主主義」が用

いられることが

多い

。経済

を視

点と

した場合は,

市場経済

・資本主義」が基準となっているもの

も見られ

しか

し,これ

らは先に見た米国がそ

うであるように

,暫定的という枠

を超えた扱

いを

され

ることが

ある。

ユネスコが1994

年に出

した匚

平和

・人権

・民主

主義のための教育Education for Peace, Human

Rights and Democracy

」は次のように述べて

いる

。厂

最終的な目標は

,個々人の普遍的価値観

と平和文化の

基礎となる行動様式を発達させ

ると

ころにあ

,社会文化的に異なった文脈の

,普遍

的に認め

られ

た価値観

であっても統合す

ることが

可能である3

。 

しか

し,現実にはそれ

以前の

普遍的価値観とは何か

」で対立

している。

現状か

ら考えれば

,今用いている尺度を絶対視

せず

,暫定的な,とりあえずの作業仮説

(理論)

であることを認識する必要がある

。そのことで,

特定の文化の持つ価値尺度で異文化を測ることを

避ける

。そうすれ

ば,西欧的人権か

ら見ると人権

害と見

られるような文化

(例

えばカ

ース

ト制度

や儒教的道徳)を理解する際に

,不用意にそれ

の文化をおと

しめ

ることを防

ぐことができる

。価

値分析

をす

る際の尺度は暫定的なもの

であ

,常

にその有効欧

と有効範囲

を問

うことが

重要で

ある

Ⅲ 

業設計の実際

.先行研究の検証

・箕浦康子氏の実践4

箕浦康子氏は

,子どもの発達と文化という視曵

ら論を展開

している

。箕浦氏は1994

年に東京大

学教育学部附属中学校において

,英語

・家庭

社会科の連携に

よる総合学習

プロジ

ェク

トを実施

した

。その分析において

,箕浦氏は

,教師が匚

では

,米国では

,中国では」と国家の領域と文

化の領域

一致

させ

る観点で説明

したことなどか

ら匚

国家

=民族

=文化」の視

点で

プロジ

ェク

トを

考えていた

ことは否め

ないと反省

点を述べ

ている

また

,稲作文化

を共通

点と

してタイと日本の文

化をと

りあげた社会科の授業では

,稲作に結びつ

いた農村の年中行事や儀

礼は東京の

中学生の生活

感覚や実感

とは心理的に遠いことが分か

ったとい

う。匚

稲作文化」を教師ぱ われわれ

”の文化と

― 128

(3)

って

いた

中学

生は

,そ

うは

思わ

なか

ったの

ある

。タイ

日本の

間の

的境界

を崩す試み

あった

,授

業では

日本

内の都

と農村の

化的

境界

を超

られ

った

。この

事実

日本

内の

文化の

を意

した授

業が

必要

ある

こと

を示

して

いる

。この

合は匚

日本の

でぱ稲

化は

共有

され

=農

とは

化が異

とい

う前提

ら授

をつ

る方

生徒

化認

に合

致す

る。

2。

「国家=文化」というスキーマを崩す実験

業5

そこで

「日本は国内に多くの異文化

を含む

文化社会であること

。文化とは個人の

生き方にか

かわるものであること。

」を理解させる授業を試

した

既に見たように学習者の

内面には

堅固な匚

日本

意識が築かれ

ている

。その

ことを受けて

,匚

国家=

文化

」の枠組み

を崩す教材と

して

,にぎ

りず

しを

りあげた

。江戸という大都市で始ま

った都市文

化であるにぎ

りず

しが世界の大都市に広ま

りつつ

ある

。∩こぎ

りず

しは都市文化である」といえ

る6

。匚

国」単位

ではな

く,都市文化と

して江戸

(学習者が暮らす)神戸

・パリ

・ロン

ドンの共通

を認識させ

。その

こと

を通

して

「国

家=文化」

の枠を超

えた文化認識を進めることを意図

したも

のである。

この授

業では匚

国家

=文化」の枠を壊す

だけで

,文化とは個

人の

ものである

ことにも眼

を向

けさせる

ことをね

らった

。しか

し,実際には文化

と個人の間の葛藤や文化とアイデンテ

ィテ

ィの相

互関係に踏み

込んだ授業にはならなかった

。理由

として学習者に匚

文化の

中に生きている私

」とい

う認識があま

り見

られ

なかったことが

あげられ

自らを包むスキ

ーマの

認識が不

足していたため,

それ

を相対化して考

えるところに進めなかったと

思われる

。これ

をどう解消するかが,授

業設計に

必要な視

点で

あることが明らかになった。

3。小単

「国際社

生き

日本

しての

」の授

業設

計7

以上の

分析

を経

て授

業案の

おこな

。小

元名は

,本研

究の

論旨か

らすれ

適切

記では

いが

,学

習指

導要

あわ

て厂

日本

して

」と

した

。この

業案は

国社

科教

学会

第49

回研

究大

会に

いて発

した

もの

を素

して

る。

(1)概念探究過程

I 

関西人と神戸人と私

日本文化の複合性を示すために

国内に見

られる

地域文化の差で示す

ことが

ある

。たとえば

,正月

料理の雑煮に用

いる餅の

形態が

,関ヶ原

を境に大

きく東西

日本で異なっていることは

,教科書にも

採用され

ている

。その中で,

“上方文化

(関西の

文化)”という概念は

,知名度も高い地域文化の

カテゴリ

である

。そ

して,関西文化は東京を中

とする文化に対比

してとらえられ

ることが

多い

東京VS

大阪という図式である

その

ことによって単

一の

関西文化像が形成され

関西人

」が作

りあげられた

。関西文化が大阪文

化と同

一視され

,大阪文化は

,東京文化の中心性

を証明するために

「 ̄

逸脱

した関西」像と

して流

され

ることとなる8

,という。

地方文化をこの

ように単

一文化像と

して理解す

ることは

“単一文化地域

しての

日本”の再生

産で

しかな

,文化の

多楡歐の

理解とはなってい

ない

。文化理解において,文化圏

を細分化す

るこ

とは

,文化の

多楡肬

の理解には直接つながるもの

ではないことを示

している

Oその

ことを生徒の生

活体験に

つなげて理解

させる

。そ

して,文化の

檣欧の理解は人間の

多様

性の理解から始まること

を理解

させる。

地域

を教材化す

るとき

,そこに

人々が生活を

ている限

,文化が存在する

。例

えば,多様な出

自の

生徒

が存在する新興住

宅地では

多くの

異なっ

た価値観の衝

突が見

られ

るであろう

歴史的

・伝統的なもの

だけが文化ではない

し,

しろ地域単位で文化

を見ることによって

,地域

に暮らす人々の文化を画

一的に認識する危険性が

じる

。文化の

多楡詮

を理解する視点と

して,人

を単位

して文化を見る視

点を提示する

(2)概念

を尊重

究過

る文

H 

化の

り方

ース

トラ

リア

に見

129

(4)

“オ

ース

トラ

リアのナシ

ョナル

・アイデンティ

ティの

変容”という視点か

らつくる授

業である

同化主義は個

しての

自由な生き方を阻む

。その

ことを

,オー

トラ

リア社会を題材に検証

し,多

文化が共存する社会のあ

り方

を考

えさせる

。この

半世紀の間に生

じたオ

ース

トラリアにおける国家

,オース

トラ

リア

人意識

(ナシ

ョナル

・アイデ

ンティテ

ィ)の変容を教材

した異文化理解教育

を構想する

かつてのオ

ース

トラ

リアの国是は

「白豪主義」

という名称で知られ

ている

。 

しか

し,英国のEC

加盟

,非英国系移

民の増加などによ

り,親英政策

の転換を余儀

なくされたオ

トラ

リアは

,アジ

を重視する政策に転換

した

。多文化社会

という

概念は

,今のオース

トラ

リアでは異質なものを含

んで発展するための国家統合(integration)

象徴と

して用いられ

ている

。民族国家や発展途上

国では

多文化主義は国家の

安定

を揺るがすもの

危険視

され

るの

とは対照的である

。経済で見

ると,

ース

トラリアは1995

年には

N諸国と韓国

向けの輸出金額合計が

,国別輸出額

で一位の

日本

を上回り

,アジアの一員としての

地位

を確立

して

いると見ることが

できる。

,オー

トラ

リアで行われていることは

,出

自でな

く理念

(多文化主義)で統合された新たな

民族

“オ

トラ

リア人”

を作

ろうとす

ることで

ある

。イ

々の

“オース

トラ

リア人”の判断の帰結

して,新たな

“オース

トラリア人像”

を創

りつ

つある

しか

,近年オース

トラ

リアに持ち込まれる文

化は非欧州的移民がもた

らす

ものが多く

,英国的

旧オ

ース

トラ

リア文化とはか

け離れた文化集団

を形成

しつつある

oその文化を許容することは

従来のオ

ース

トラリア文化

を大き

く変容

させる

また

,平等に扱い,尊重する姿勢が要求

されるの

民族文化だけにとどまらない

。ジェンダー

や社

会に見

られ

る多くの下位

文化

,マイノリティ集

の文化をも擁護す

ることとな

,多くの価値観が

相対化された

oその

ことはオ

ース

トラリア社会に

ある種の不安感

をもた

らし

,保守反動的な政治運

動が起

きている

現在

では他文化に寛容とはいえ,民主主義や人

を制限

うな文

を承

認す

うか

とな

って

。例

えば

,アボ

リジ

文化

では

しての

が伝

化で

。これ

をど

うか

う選

を迫

られ

いる

トラ

リア社

変容の

果関係

を認識

とで

,個

を尊

重す

る社

(文

化)の

り方

化共存

生き

るため

要な

会認

を育

成す

。そ

して

,最終

では

多文

化社

で新

じて

いる価

値分

析の

問題

“多文

化共

存社

には

可避

な課

して

自分

しての

判断

くだす

を目標

とす

(3)知識の構造

この単元で修得すべき概

念的知識は

以下のとお

りである。

(I)個は周囲の文化に

よって規定され

るが

,そ

を逸脱

した文化的存在の最小単位と

しての

個も同時に存在す

る。

(H-1

)個の

自由な在

り方生き方を最大隕尊重す

る社会

・文化は価値観の衝突

を招

く。

(H-2

)互いの個の自由さを尊重するならば

,価

値観の衝突に際

しては

,対等な立場での話

いが最善の解決方法となる

この授業案を学会で発表

した際に質問

を大別

て3つ受けた

「人権を普遍的基準と考

えているのか」

2「オース

トラ

リアの地域学習に過ぎないので

はないか」

3 

地域学習では文化の

多様性は学べないので

はないか」

1に答

えるために

,匚

人権」に関する論争を取

りあげ

,相対主義であっても,共通ルール

して

人権

」を主張

しうることを示

した

。授業案にお

いては最後の価値選択問題

として

,そのまま学習

者に投げ返す

ことと

している

“常識”と

して賦

与されるものではなく

,学習者自らが決定すべき

課題と

して示

している

。また,

“ 厂

絶対」の基準

を定め

てすべ

を裁

ぐ の

ではな

ぐ と

りあえず

という基準を認識することで

“絶対一相対”の

二項対立か

ら脱す

る方略

を理解する

2に答

えるために

,オース

トラ

リア

をと

りあげ

る際の視

点を明確に

した

。先進国で唯一,先住

一130

(5)

に 正 式 に謝 罪 し

文 化

義 を

国 是 と

家 意

識 の 改 革 に 取 り

ん で

る オ

に据

る 授

, 理

念 と

改 革

チ ・

カ ル

チ ュ ラ

リ ズ

進 め

う よ

も, 多 民 族

し た 国 内

外 交 上

問 題 に

対 処

た め

一 種

産 物 で あ

知 識

を 獲 得 す

て, 多 文 化

効 果 的 な ”

価値 選 択

て 用

ら れて

る こ と を 理 解 す る。

の 厂

と 同

様 に, そ れ が 絶 対 で あ る 証 明 は

, プ ラ グ マ テ ィ ズ ム的

発 想 で 改 革 に取 り

る 姿 を

3 に関

は, 単 純 な 地 域 学 習 で は, 多 文 化 を

不 充 分 で あ る。 地 域 学 習 で は な く, 地 域

らす 私 ( 個 ) に 焦 点 を 当 て た授 業 案 と す る こ

の 文 化 と 個 の 関 わり を 認 識 さ せ る 授 業 と

る。

概 念 探 究 過 程 I に お い て は, あ え て 地 域 文 化 を

形 式 か ら 入 り , 文 化 を 類 型 化 す る。 し か し,

そ の 中 か ら

習 者 に 自 ら の 生 活 世 界 と 相 容 れ な い

部 分 が

在 す る こ と に気 づ か せ る。 地 域 を 小 さ く

す れ ば, 生 活 世 界 の 姿 を よ り よ く 表 現 す る か に見

が, そ

に示 さ れ た神 戸 人 , 神 戸 文 化 も や は

質 化 さ れ, 認 識 さ れ る 。 そ の 均 質 化 さ れ た

厂自 文 化 」 と 自 己 の ず れ を 確 認 す る こ と か ら 自 己

を 取 り

く文 化 を 客 観 視 し , 文 化 と 相 互 作 用 を し

て い る 自 己

見 い だ す 構 造 と な っ て い る。 実 験 授

ふ まえ , 学 習 者 が 文 化 を ど の よ

認 識

か を 確 認 し , 文 化 と 個 の相 互 性

識 を

深 め る

概 念

探 究

過 程 I に続 くHで は, 個 の立 場 か ら オ ー

ラ リ ア を

, 人 々

文 化 的 葛 藤 や そ の

比 べ な

ら 考 察 す る こ と を

し て

い る。 自

構 成 要 素 と 認 識 す

る こ

と を 経 て

化 認 識

異 文 化 理 解 ( そ の

自 文

化 で

さ せ る こ と

で き

た め の レ

ネ ス と

る。 最 後

過 程

お く (

IV  授業 モデ ル

概念探 究過 程I ・ Hか らつく られ る授業 モデ ル

は以下

であ

小単 元「国 際 社会に生 きる日 本人 としての自覚」

主 題(①∼⑩)と知 識目 標(全10時 間扱い)

I 関西人 と神戸 人と 私     

(3時間)

① “関西人 ”と私

化を説 明する際 に, 地域文化を用い

ること

があ るが,地 域内 を単純 化して 認識 してし

まう

危険 があ る。

② “神戸人

” と私

地 域を細分化

て も,そ れだけで は文化の多

楡 哇の説明 に はな らな い。

③個と して の私

個人 の生 き方を理 解す るた めに は,集団

の文

化 を見 るだ けで は不充 分で あ る。

II オー スト ラリ ア に見る 個人 を 尊 重す る文 化 の

あ り方 (6時 間)

④移民 政策 (政治 ・経 済問題) と して の白豪 主義

と, そ の撤 廃 の内的要 因

白豪主義 下 の暮 らしとそ の課題を 検証 す る。

⑤白豪 主義撤 廃 の外的要 因

欧州移民 の減 少と ア ジア諸 国 との関係深 化 な

ど により, 白豪主 義を 維持で きな くな った。

⑥国家 アイデ ンティテ ィとし ての白豪主 義 とマ ル

チ カ ルチュ ラリズ ム

同 化(assimilation) 政策 の失 敗 の反 省 の上

に多 文化 共 生 に よ る統 合(integration)

の理

念 が提案さ れた。

⑦ アボ リジニとよ ばれ る人 たち

白人移 住以 降, 伝 統社会 を破壊 して

たこ と

を, オースト ラリア政 府 は正式 に謝 罪し た

⑧民族 文化 の枠を超 え た多 文化主 義 の広がり

マルチ カルチ ュ ラリズ ムは, 社会 に存在 す る

さ まざま な文化集 団を平 等 に扱う こと にも適用

さ れるよ うにな ったo

⑨伝統 社会 の価値観 と現代 社会 の価値 観 の対

伝 統文化 の中 には,人 権思想 や資 本

義 ・市

場経 済に反 して

る ものがあ る

Ⅲ  価 値 分 析 過 程

( ⑩ 

1 時 間

-

131

(6)

小単元の主な 問いと知 識目標

過程 時 段階 主 な 問 い 獲 得 さ れ る べ き知 識

◇ 東 京 と大 阪 はよ く 比較 さ れ ます が, ど のよ う な違 い を 耳 にし たこ とか おり ます か。 ◇ あな たに は, その こと が当て はまる と思 いま すか。 ◇土 地 柄 とい う言 葉 があ るよ う に,文 化 は土 地 に よって 違 う とい う考 え方 が ある こ とを確 認す る。 な ぜ , 文 化 の多 様性 を 説 明 す る 際 に, 地 域 単 位 で 説 明 す る の か。 な ぜ , 文 化 とい う視 点 か ら あ る人 間 の生 き 方 を 説 明 す る際 に は, 個 人 を単 位 と す る こ と が 適 当 な のか 。 【 問 いA 】 な ぜ文 化 の多 揄 吐を 説 明 す る際 に, さ まざ ま な 地域文 化を 用 いる こと があ るの か。 【問 い A-1】 日本 各 地 には どのよ う な文 化的 多 楡 歐が あ る か。 【 問い A-2】 地方 文化 は東京 の文 化 と どの よ うに比 較 さ れて い るか。 【問 いA-3】 マ スメ デ ィア が集 中し て いる の はど こか そ れ は, どの よう に文化 に影 響を 与え てい るか。 【 知識 A】 土 地 によ って 文化 が違 う ので , 日本 国 内の文 化 の多 楡 哇を 説明 す る際 に,国 内 の地域 文化 を用 い る。 【知 識A-1 】地 域文化 の特 色とし て,方 言 や 食文化 が 取り あげ られ る。 【知 識A-2 】 東 京 の文化 が 標準 と さ れ, 地方文 化 はそ の反 証 と見 なさ れ る傾 向があ る。 【知 識A-3 】 マ スメデ ィ アの報 道 は東 京 中心 で あり, 東 京 の文 化 的優 位を 再生 産 して いる。

【 問 いB 】 な ぜ, 地 域文 化 を 用い て も, 文 化 の多 様 甌の 説 明 として は不充 分で あ るのか。 【問 い B崕 】 関西 文化 の 中 には どの よ うな多 様 歐 があ る か。 【 問いB-2 】 他 の地方 は, 関西文 化 をど の よう に理 解 し て いる か。 【 問 いB-3】 大 阪 の文 化 と 神戸 の文 化 はど のよ う に異 な る か。 その ことを 神戸 の人 はど う感 じて い るか。 【知 識 B】 関 西文化 とい う概 念を 用 いて も, そ の関 西 を単 一文 化的 に 認 識 し理解 し て しま う ので, 日 本よ り 狹い 関西 圏を 設定 し て も文化 の 多 様 歐の説明 と して は不充 分で あ る。 【知 識B-1 】 関 西 は, 府県 庁 所在 都市 を みた だ けで も 歴史 的背 景 が異 なり , 特有 の地 域文化 を もって い る。 【知 識B-2 】 関 西人 と いう 場合 , 関西 の 地域 内 の盖 は無 視 され, 東 京 ( 中央) との異質 性 を強 調さ れ た大 阪 像が関 西 像 とし て 広ま ってい る。 【知 識B-3 】 神戸 と大阪 は,言 葉遣 いを はじ め, いくつ も の点 で異 なっ た文 化 を もっ てい る。 神 戸人 は大阪人 とい っし よに扱 わ れるこ と に抵 抗を 感 じる。

【 問 い C】 な ぜ, 集 団 の文 化 を見 る だ けで は個人 の生 き 方を 理解 す るの に充分 で ない のか。 【 問 いC-1】 地域 に共 通 して い る と言え る文 化 に はど の よ うな もの があ るか。 【 問 いC-2】 文化 を 単一 的 に見 なす 扎 点 は, どの よう に して 作 られ るか。 【 問 いC-3 】文 化 に関す る ことで , 集団 単 位で 判 断し て はい けない こ とはど のよ うな こと か。 【知 識 C】 文化 には 色々 な側 面 があり , 地域 に共通 す る もの と個人 の 生 き方 にか か わ るも のと があ る。 個人 の生 き方 につ いて は, 一 人一 人 が 異な る文化 を もつ。 【知 識C-1 】 モノ の名 前 は, そ の地域 内 に共 通 して い ない とコ ミュニ ケー ショ ンが 成立 し ない。 し た がっ て地 域 ご とに文 化を 理 解し て も大 きな過 ち にはな らな い。 【知 識C-2 】挨 拶 など, 地域 内共 通性 が高 い文化 もある。 し か し, 多 く は人 間 の認 知 に は偏 り があ り, 自 分の ス キ ーマ に一 致 する一 部 の事 例を刪 投化 する ことで 作 られ る。 【知 識C-3 】 文 化を 集団 単 位で 見 た場 合, 集 団 内 の個人 に適用 で きる こ と と,個 人 に は適 用で きな い こと があ る。 アイ デ ンテ ィテ ィが文 化 との相 互作 用で形 成 されて い るこ とを理 解 する。

◇ オ ースト ラリ アに対 して は, ど のよう な イメ ージを持 っ て い るか。 ◇一 般 に広 まって い る オー スト ラリ ア のイ メ ー ジは, 観光 的 な もので あ る。 【 問 いD 】 な ぜ, オ ース ト ラ リ ア は, 白 豪主 義 を 捨 て て マ ル チ カ ル チ ュ ラ リ ズ ムを 社 会 の あ る べ き 姿 と し た か。 【問 いD-1】 白豪主義 と はどのよ うな ものか。 ①  ど のよ うに して白人以 外 の移 住を禁 止し たか。 また, 当 初の目的以 外 に人 々 の暮 らし にどのよ うな影響 が出 たか。 主 と して誰 が白 豪主義 に賛 成し たのか。 反対 し たの は誰 か。 ② 例外 はなか ったのか, あっ たとしたら,どのよ うなヶ− スか。 【 問いD,2】多文 化主 義へ転 換 した内的 要因 とは何 か。 ① 1947年 か ら は,年 1 %の移民 による人 口増加を 目 標と し たが, 順調 に進ん だか。 ② 移民 に はど のような ことが要 求さ れた かo 【知識D-1 】 白豪主義 とは, オ ースト ラリア連邦 政府成立 直後につく られ た,移住制限法 り 帚化 法などか らなる一 連の政策につけられた通称である。 移民 制限法 は,語学 力( 書き取り) テストを行うこ とで, ア ジア系移民 の流 入を 事実上禁止 するものであ った。 外国 からの低賃金労 働者 や熟練工の流入 が, 白人 の雇 用を圧迫してい た ので, 労働組合や労 働党 が雇用確保 の点 から, 白豪主義を 強く主張し た。 経済 活動や外交 上の理由, 人道的配慮 などで有色人種 滞在が=部 認 めら れ た。 【知 識D-2 】内的 要因と は, 非 アングロ サクソ ン(以下AS )文化 圏か ら の移民 のAS 文化 への同化 に失 敗し たので, それら の住民 やア ボリ ジニを も統 合する新たな国家 のあり方 が求 められたことであ る。 移民 計画目 標をを下回 るこ とが多 くな ったので,AS 文化圏以 外の広い 範囲 から移民を集 めるようになっ た。 AS 的 な オースト ラリア文化 に同 化させ る政策を進 めたが次第 に困難 に 直面 した。

【 問いD, 3】 多文 化主 義 へ転換 し た外的 要因 と は何か。 ① 近 年, ど の地域 と経 済関 係が 深ま って きた か。 ② 経 済以 外 にど のよ うな関 係が 深 まって きた か。 ③  がっ て の オ ースト ラ リ ア はど こ の国 と の関 係 を最 重 要 視 して いた か。 【知 識D-3 】 外 的要 因 と は, 経済 ・外 交 政策 上 の理 由で あ る。 貿 易関 係 に おい て ア ジア の占 める割 合 が大 き くな っ たこ と, 外交 政策 で は英 米 と一 線を 圉 すMiddlePower 論 に転 じ たこと であ る。 東北 ・ 東南 ア ジ ア地域 の経 済 成長 に と もない, そ れら の地域 との貿 易 が一 層重 要 にな った。 経 済関 係 が深 ま るにつ れて , 政治 問 題が 絡 んで きて ア ジア と のつ き 合 い方 も複 雑 になっ た。 独立 後は イギ リス連邦 の一員 として, ま た, 第二 次世 界大戦 後の オー スト ラ リアは米 国追 従外 交を 展開 し た。

― 132 −

(7)

【 問 いD-4】 法 律上, 白豪主 義 を廃 止 し た後 の問 題 とは どのよ う な問題 か。 ①  白 豪主 義 の 終焉 と は 具体 的 に はど の よう に行 わ れた か。 ②  同化 政策 を あ き らめ た後, 移民 に対 す る政 策 はど の よう に変更 さ れた か。 ③  自 文化 を 大 事 にし た 移民 集 団 はど のよ う に変 化し た か。 【 知識D-4 】 移住 制限 とし て の白豪主 義 が終 わ って も,AS 文 化 への同 化 政策 は終 わ ってな かっ た。 1966年 に オー スト ラリ ア連邦 政 府 は政策 変 更し, 移 住制 限 とし て の 白毫主 義政 策 は終焉 し た。 同化(assimilation) 政 策 の失 敗 の反 省 の上 に多 文 化 共生 によ る統 合(integration) の理 念が 提案 され た。 移民 に関 する ト ラブ ル は移民 で はな く社 会 構造 に責 任 か おる こと が 指摘 され た。 民族 の文化 ( エ スニ シ ティ) にプ ライド を もち, 自信 をつ け た生 き 方 が知 られる よう にな った。

【 問 いD- 5】 先 住民 アボ リ ジニ はど のよ うに 扱 われて き たか。 ①  ア ボリ ジニ は植民者 にど のよう に扱 われて き たか。 ②  ア ボリ ジニ に対 する 同化 政 策 は ど のよ う に行 わ れ た か。 ③  ア ボリ ジニ は 現在, ど のよ う に( 場 所・ 態 度) 暮 ら して い るか。 ④  現 在 の オ ー スト ラ リア政 府 は, ア ボ リジ ニ に対 して ど のよ うな 態度を と ってい るか。 【 知 識D-5 】 オ ー スト ラリ ア先 住民 と して ア ボリ ジ ニが生 活 して い た が, ヨ ーロ ッパか ら の入 植 が始 まる とそ の文化 ・社 会 は破壊 さ れた。 先 住民 ア ボリ ジニ は人 間扱 いさ れ ず,そ の文 化・ 社会 は破 壊さ れた。 キリ スト 教会 ・ ボ ラン ティ ア団 体 は, “善 意” を もっ て, ア ボ リ ジ ニ の子 ど もを伝 統社 会 か ら隔離 し, 同 化教 育( キリ スト 教 と英語 ) を 推し 進 めた。 ア ボリ ジニ の多 く は都市 で生 活 し, スポ ーツ など で活 躍 する こ とも 多 くな っ た。差 別 さ れて き た歴史 が ある ので 自分 たちへ の評 価 に敏 感 であ る。 近年 にな って オ ースト ラ リア政 府 はア ボ リジ ニ同化 政 策を 正式 に謝 罪 した。 裁判 で はア ボリ ジニ の財産 権を認 め る判決 が下 さ れた。

8 学

◇ シド ニ ーオ リ ンピ ッ クで 日本 選 手 は日 本文 化 らし さを 出 してい た か。 ◇国対 抗で はあ るが, 内容 は, 個人・ チ ームが世 界共通 のル ール に則 っ て競 争 する, 国家 を超越 し た もので ある。 【 問 い E 】 民 族 らし さ と は, ど のよ う な も の か。 な ぜ , マ ル チ カ ル チ ュ ラ リ ズ ム は 民 族 文 化 に 限 らず 広 が って い っ た か。 【 問い E-6】 日本 人 らし さ とは, ど のよ う な ものだ ろ う か。 ①  日 本国 内に はど のよ うな文 化が あ るか。 ②  ど のよ う に行 動 す れば, “ 日本 人” とし て多 文 化主 義 に貢 献し たと いえ るか。 ( 例:羽 織・ 袴を 着 ればい い のか ?) 【 問い E-7】 オ ー スト ラリ ア の他文 化を 尊重 す る姿 勢 は どのよ う に適用 され てい るか。 ①  性 によ って 社 会 的 に有 利 不利 が あ る こと は どう な の か。 ② 医 療 現 場で , 医 師 と患 者 の 間 に上下 関係 が ある こ と はどう な のか。 ③ 学 校で はど うな のか。 【知 識E-6 】民族 という言 葉 の定義 は作 為的 で, あい まい であ る。 日本 に はさ まざ まな 文化 が あ るが, 意 識 しな い と国内 に あ る文 化 の 差 異に気 づ かない。 日本 の文 化 が多 様な ので , 日本 出 身者 と して, どう行 動 す れば オ ー スト ラリア の多文 化主 義 に貢献 し たこ とにな る のか不明 確で あ る。 【知 識E-7 】異文 化 を尊重 す る姿勢 は, 民族 文化 以外 に も適用 さ れる。 オ ースト ラリ アで は固定 化 され た男女 の役 割分 担( ジェ ン ダー) は, 大 変少 ない。 医療 現 場で は, 医 師・ 看 護婦・ 理 学療 法士 等 が対 等 の立 場で 協力 す る。 学校 で は教師 の言 うこ とを丸 飲 みす る生 徒 は少 ない。

9 学

◇ 日 本 も江 戸 時代 や そ れ以 前 の やり方 を西 欧 文化 と合 わ ない も の とし て放 棄 し て きた 歴史 が あり ます。 ア ボ リ ジ ニの場 合 はどう でし よう か。 ◇ 伝統 とい って も, 身分制 社 会に戻 って 差別 があ る のはィャ だ。 ◇ 武士 な らなっ て もよい。 ◇ 西欧化 し なか っ たら植民 地 にな って いた ので はない か。

【 問 い F 】 な ぜ, 先 住 民 の 伝 統 文化 は 現 代 社 会 に受 け入 れ ら れ に く い か。 【 問 いF-8 】 ア ボ リ ジニの 伝統文 化 はどこ が現 代社 会 に なじ まない か。 ①  資 本主 義 経 済と, ア ボ リ ジニ社 会 は ど の点 で異 な っ て い るか。 ② 人 権 思想と, ア ボリ ジニ社会 の思 想は どの点 で異 なっ てい るか。 【 問 いF-9 】 自 分 の もって い る価値 観 が相 対化 さ れ ると どの よう に感 じる か。 ① 「One Nation 」 とは, どのよ う な政 党 か。 ど のよ うな人 々 に支持 さ れたか。 ②  人 間 の判 断 に影 響 し てい る も のに は, ど のよ う な も のが ある か。 【 知識F-8 】 ア ボリ ジニ の伝 統文 化 は資 本主 義・ 市 場経 済 に 適応 して いない。 資 本主 義 に慣 れて いな い ア ボリ ジニ は, 市場 経 済 に参加 す るよ う に なって も それが生 活 の向上 につな が らない。 ア ボ リ ジニの 伝統文 化 に は, オ ー スト ラリ アの 法 に触 れる もの( 私 刑 ・体 罰) があ る ので非難 する意 見が ある。 【 知 識F-9 】文 化 的相 対主 義 によ っで よ りど ころ の無 ざ とい う不 安 を 感じ る人 々 がい る。 こ の感 覚 は, 価値 観が 相対 化 さ れる と きに共 通して 感 じら れる不 安で あ る。 オ ースト ラ リア の人 々 の中 に多文 化主 義 の行 き着 く先 に不安 を 感 じ て い たので, 1996 年 ごろ 厂One Nation 」 と いう 政党 が急速 に 支持を 集め たo 合 理的 思 考で 論理 的 に解 決し た とし て も, 感情 の問 題 は解 決し て い ない。

10

資 本 主 義 ・ 市場 経 済 に 適 応 し な い 文 化 は, 不 利 で あ っ て か ま わ な い か 。 人 権 尊 重 と い う 考 え方 と 合 わ な い 文 化 を 認 め る こ と が で き る か 。 どち らを 選択 する か。 その理 由 は何か。 ○ 資本主 義( 市場 経済 ) に適応 して い ない文化 は不利 で もやむを 得 ない。 圜 資本主 義( 市場 経 済) に適応 し ない ない文化 が 不利 にな らな いよ うに する。 ○ 暴力( 体罰 )を 肯定 す る文化 を認 め るこ とがで き る。 ■ 暴力( 体罰 )を 肯定 す る文化 は認 め るこ とはで きな い。

133 −

(8)

V。結語

1.授

業モデルの成果

本研究では

,高等学校の

「倫理」という設定を

与件と

している

。そ

して,アイデンテ

ィテ

ィと文

化が遊離

して認識され

ている状況をうち破るため

の授業を

,異文化理解の前提となる

自文化理解の

知識構造から示した

。本研究のめ

ざす

ところは,

一には異文化認識の前提

となる,自らのアイデ

ンティテ

ィと密接に関係する

自文化の存在

を認識

させることである

。そのため,グ

ローバル

・ロー

カルなど文化をカテゴリ

化することを避け,

」と厂

文化」の関わ

り合いに焦

点化

した構成

した

。また,広

く人文諸科学の最新の学問的成

果や研究動向に注意を払い

,文化と個のアイデン

ィティを繋げて認識

させ

る構造

を構築するよう

に意

を払った。

国際理解教育」に

おいては,海外在住経験の

ある日本

人や在

日の

留学生などを教室に招

いて

あるいは聞き取

りに行って

,情報

を得ることが見

られる

しか

し,一見

して

「 ̄

人」を中心に据えて

いるような授業で

あっても

,在

り方生き方が見え

てくるとは限らな

。文字資料が絵にな

り動画に

という延長線

上に

“実物資料”と

して匚

人」

を持ち込んだに

とどま

,人を食事や風習

を語る

り部と

して

しま

う危険性が

ある。

「○○国人

」というとらえ方ではなく,彼らの

「個

」と

しての在

り方生き方を授

業の中心に据え

ることが必要である

。例

えば在

日留学生の場合は

“出身地を距離的にも文化的にも遠

く離れ

,異文

化との摩擦

を承知の

上で

,日本に勉強するために

未だ というその個人としての価値判断が教材

なる9

。匚

他者」の生き

ざまが,自己の在

り方生

き方とつな

ぐことの

できる異文化理解の教材とな

るのである

2。今後の課題

今後の課題は

,次の

2点である。

1に

,本研究で構築

した授

業モデル

したがっ

て実践を行

,学習者の認識の変容

を追究

し,研

究仮説を検証

していくことである

2に

,最新の人文諸科学の成果をと

りいれ

授業による検証をくり返す

ことによって,現代社

会における在

り方生き方を考えるための教

育理論

してさらなる修

・発展

をさせていくことであ

多様

な価

値観

を容認す

る異

文化理解教育が

,たっ

一つの方略に集約され

ることは

,自己矛盾を生

じる

学習

。社会や学習者の文化認識に合わせて

を設定す

ることが必要である。

多様な

[註]

1)The Kobe Shimbun Mail Magazine

日刊

・ラフ」508

号2000

/10

/12.

神戸新聞社

メディア開発局

2)歴史教育だけでなく地誌教育も価値教育に転

化することが指摘され

ている

。例

えば,草原和

「文化誌研究と

しての地理教

地誌教育改

革論の

プロ

トタイ

プを求め

」兵庫教育大学

教科教育学会紀要第14

号 2001.3.1

3) Final Report

International Conference

on

Education 44th Session Geneva

4)箕浦康子

『子供と教育 

地球市

民を育てる教

育』岩波書店 1997

5)この授

業の詳細は

,日本社会科教育学会第50

回研究大会で発表

した

6)日比野光敏

『す

しの歴史を訪ねる』岩波新書

1999 

玉村豊男

『回転スシ世界

一周』世界文化

社2000

を参照された

い。

7)詳細に

ついては

,秋山明之

『自らの

生き方と

つなが

る異文

化理解

教育の

創造 

−ア

イデンテ

ティ形成方略という視点か

ら』

(2000

年度 兵

庫教育大学修

士論文)を参照

されたい

8)東京発信のメディアが大阪文化をどうとらえ

ているかの例が

いくつも挙

げられ

ている

。松本

『全国アホ

・バカ分布考』新潮文庫 1993.

12

『大阪弁の世界

JN

K大阪弁プロジ

ェク

編 

営書院 1995.3

9』その

ような授

業実践と

しては

,全国社会科教

育学会第49

回研究大会

(:1999)

のシンポ

ジウム

で発表され

た長岡素巳氏の実践をあげる

ことが

できる

o匚

生き方と学び方の統合を図る総合的

な学習の実践 

∼福祉

・国際理解

をテー

マに

∼」

島根大学教育学部附属中学校

― 134

参照

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