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博 士( 水 産科 学)堀 正和 学 位 論 文 題 名 Food web structure and dynamlCSattributed toaVianf6raglngandanOChthonouSinput intherockyintertidalhabitat

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Academic year: 2021

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博 士( 水 産科 学)堀

  

正和

    

学 位 論 文 題 名

Food web structure and dynamlCSattributed   toaVianf6raglngandanOChthonouSinput     intherockyintertidalhabitat

(岩礁潮間帯における鳥類、異地性資源供給と     食 物 網 構 造 ・ 動 態 に 関 す る 研 究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  現在の地球温暖化の進行は、気温、水温や降水量といった生物に直接影響す る物理環境要因の大規模かつ急激な変動を伴うため、生態系への広汎な影響が 懸念されている。従って地球温暖化が生態系に及ぼす影響を解明し、また予測 するためには、物理環境の時間変化に伴う生物群集の時間変異性の解明が重要 であると考えられている。

  自然界では生物群集や有機物といった生態系の構成要素は単一のハピタット内 のみに限定して存在することは稀で、複数のハピタット間で栄養塩、デトライタ ス等の物質や生物の移出入が起こっている。しかしながら、過去の生態学の理論 や実践研究の多くは単一のハピタット内で生じる過程のみを対象にしてきた。近 年、ハピタット間での物質の移出入が生物群集の形成維持機構に大きく貢献して いる場合があることが明らかにされ、過去の理論研究の反証と新しい理論の構築 が行われつっある。その一方で、生物のハピタット間での移動が群集の形成維持 機構に及ぼす影響については不明な点が多い。ハピタット間を移動する生物は群 集に対してしばしば強い影響を持つ高次の消費者が多いため、ハピタット間での 生物の移動は生物群集の形成維持機構に少なからず影響することが考えられる。

  ハピタット間を移動する主要な生物として鳥類が挙げられる。鳥類は広大な移

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動範囲を持ち、陸上から水中に至るあらゆるハピタットに出現する。近年では、

水域で採餌する鳥類が排泄物として水域の生産物を陸上へ運搬し、その排泄物が 陸上の腐食者の餌として、また陸上植物の栄養塩として働くことが報告されてい る。従って、鳥類は空間的に離れた生物群集間をつなぐ役割を果たしていること が推察される。

  海洋と陸域の境界に位置する岩礁潮間帯では、しばしぱ潮下帯由来の海藻や底 生生物が潮間帯の岩盤上に打ち上げられている。また、陸域由来の鳥類が最上位 捕食者として、潮間帯餌生物個体群にしばしば強い影響を及ぼしている。これら のことは、岩礁潮間帯生物群集が隣接したハピタットの影響を少なからず受けて いることを推察させる。そこで本研究では、岩礁潮間帯において、隣接するハビ タットとの相互作用が食物網構造に及ぼす影響の解明、及び潮間帯と他のハピタ ット間を移動して採餌する鳥類が食物網動態に及ぼす影響の解明、またこれらの 影響に起因する食物網構造・動態の時間変異性と沿岸海況との関係を解明するこ とを目的として研究を行った。

  最初に、岩礁潮間帯における鳥類の採餌と食物網構造全体の空間的広がりと時 間変異を明らかにするための野外調査を行った。その結果、主要な鳥類であるカ モメ類とカラス類は潮間帯の餌生物を大量に捕食しており、岩礁潮間帯のほかに 陸上の複数のハピタットで採餌していた。また、鳥類の潮間帯での主要な餌は潮 下帯から潮間帯に供給されてきたウニ類であった。さらに、鳥類は潮間帯餌生物 を時空間的に食い分けしていた。この鳥問で生じた餌資源分割によって、岩礁潮 間帯食物網構造に時空間的なコンパートヌントが生じ、それぞれの鳥を最上位捕 食者とした部分食物網に分かれていた。従って、岩礁潮間帯の生物群集は鳥の採 餌動態を介して隣接生態系と間接的に相互作用しており、食物網の空間スケール はハピタットの境界を越えた鳥類の採餌活動によって時間変動することが示唆さ れた。これらの定性的データは、隣接ハピタットからの資源供給及びハピタット 問を移動する生物が岩礁潮間帯生物群集の形成維持機構に少なからず影響を及ぽ

(3)

していることを示唆している。

  上記の鳥類の採餌活動と食物網構造の時間変異を調べた野外調査から、潮下帯 ハピタットから潮間帯ハピタットヘ供給されるウニが鳥類の主要な餌になってい ることと、鳥類は潮間帯の餌生物も大量に採餌することが明らかになった。従っ て、潮下帯からのウニ供給は、鳥の潮間帯餌生物への捕食量を変化させることで 潮間帯生物群集に影響を及ぽすことが考えられる。そこで、潮下帯から潮問帯へ のウニ類の供給量の時間変動と、それに伴う鳥類(カラス及びカモヌ)の潮間帯 生物群集への捕食圧の時間変動を明らかにするための野外調査を行った。さらに、

潮下帯から潮間帯へのウ二供給量の経年変動が生じるプロセスを明らかにするた めに、潮間帯へのウニ供給量の経年変異、潮下帯ウ二個体群サイズの経年変異及 び海況の経年変動の三者関係を検討した。

  その結果、カラスとカモヌは共に潮下帯から供給されるウニ類に対して高い選 択性を示したが、ウこ供給量の変化に対する両者の摂餌動態は異なっていた。カ ラスはウニの供給量が少なくなると潮間帯の餌生物に摂餌項目をスイッチしたが、

一方カモヌはウニの供給量が少なくなると潮間帯で採餌しなくなり、他のハピタ ットで摂餌した。このウニ供給量の変化に対する摂餌行動の違いによって、両者 が潮問帯生物群集に及ぼす影響が異なっていた。また、ウニ供給量の経年変動は その年の海況に依存して増減する潮下帯ウニ個体群サイズの経年変動に反映され ていた。従って、隣接ハピタットからの資源供給は海況に依存して経年変異しな が ら、 鳥 類を 介 して 潮間 帯食物網動 態に影響を 及ぼすこと が示唆され た。

  最後に、実際に鳥類の摂食圧が潮間帯生物群集構造と動態に及ぼす影響とその プ口セスを明らかにするために、鳥類の潮間帯餌生物への摂餌量を操作した野外 実験を行った。カモメは冬期に潮間帯一年生海藻類の競争的優占種を摂食し、カ ラスは春期にその海藻優占種のキャノピーに棲む小型甲殻類とキャノピー下に隠 れているヒザラガイ類を捕食している。野外操作実験の結果、海水温が相対的に 高い年には、カモメの摂食が海藻優占種のキャノピーを有意に減少させ、競争的

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劣位種の種多様性を増加させた。また、キャノピーの減少によって小型甲殻類の 生息密度が減少した。その結果、カラスはヒザラガイ類を選択的に捕食してその 密度を有意に減少させ、ヒザラガイ類の餌である付着珪藻類を増加させた。一方 で海水温が低い年には、カモメの摂食が海藻優占種のキャノピーを有意に増加さ せた。その結果、カラスは小型甲殻類を選択的に捕食してその密度を有意に減少 させ、付着珪藻類を有意に減少させた。カモヌが海藻優占種に与える影響の違い は、海況に依存して経年変化する海藻優占種の加入量と成長速度の違いが原因で あると推定された。従って、鳥類は海況に依存して潮間帯食物網構造と動態を変 化させることが示唆された。

  以上の野外調査と野外操作実験の結果より、岩礁潮間帯食物網の構造と動態は、

隣接したハピタットからの資源供給の影響と、ハピタット間を移動する鳥類の採 餌動態の影響を強く受けていることが明らかになった。これらの結果は岩礁潮間 帯の生物群集は隣接したハピタットとの問に明らかに相互作用をもち、その影響 なしでは潮間帯生物群集の構造と動態の変化は説明できないことを示唆している。

さらに、隣接ハピタットからの資源供給量と潮間帯由来の一次生産量は共に沿岸 海況の変化に敏感に反応して変化し、それらの変化が食物網構造と動態の時間変 異性を生じさせていた。この沿岸海況の変化は、海流系の変動を反映している可 能性が推察されている。従って、本研究の結果は岩礁潮間帯生物群集は大規模環 境 変 動 に よ っ て 容 易 に 変 化 し う る こ と を 示 唆 し て い る か も し れ な い 。

(5)

学位論文審査の要旨 主 査

  

教授

  

中尾

  

繁 副 査

  

教授

  

小城春雄 副査   助教授   五嶋聖治

    

学位論文題名

Food web structure and dynamics attributed   to avian foraglnganda110ChthonouSinput     intherockyintertidalhabitat

(岩礁潮間帯における鳥類、異地性資源供給と

  食 物 網 構 造 ・ 動 態 に 関 す る 研 究 )

  近年、ハピタット間での物質の移出入が生物群集の形成維持機構に大きく貢 献している例が明らかにされているが、生物のハピタヅト間での移動が群集の 形成維持機構に及ぼす影響については不明な点が多い。ハピタット間を移動す る生物は群集に対してしばしば強い影響をもつ高次の消費者が多いため、ハピ タット間での生物の移動は生物群集の形成維持機構に少なからず影響すること が考えられる。

  ハピタット間を移動する主要な生物として烏類が挙げられる。近年では、水 域で採餌する鳥類が排泄物として水域の生産物を陸上へ運搬し、その排泄物が 陸上の腐食者の餌として、また陸上植物の栄養塩として働くことが報告されて いる。

  岩礁潮間帯では、しばしば潮下帯由来の海藻や底生生物が運び込まれ、また 陸域由来の鳥類が最上位捕食者として、潮間帯餌生物個体群にしばしぱ強い影 響を及ぽしている。これらのことは、岩礁潮間帯生物群集が隣接したハピタッ トの影響を少なからず受けていることを推察させる。

  本研究は、岩礁潮間帯において、隣接するハピタットとの相互作用が食物網 構造に及ぽす影響の解明、及び潮間帯と他のハピタット間を移動して採餌する 鳥類が食物網動態に及ぼす影響の解明、またこれらの影響に起因する食物網構 造・動態の時間変異性と沿岸海況との関係を解明することを目的にして進めら れている。

(6)

  最初に、岩礁潮間帯における鳥類の採餌、および食物網構造全体の空間的広 がりと時間変異を明らかにするための野外調査をした。その結果、主要な鳥類 であるカモメ類とカラス類は潮間帯の餌生物を大量に捕食しており、他にも陸 上の複数のハピタットで採餌していた。また、烏類の潮間帯での主要な餌は潮 下帯から潮間帯に供給されてきたウ二類であった。さらに、鳥類は潮間帯餌生 物を時空間的に食い分けていた。この烏間で生じた餌資源分割によって、岩礁 潮間帯食物網構造に時空間的なコンバートメントが生じ、それぞれの烏を最上 位捕食者とした部分食物網に分かれていた。従って、岩礁潮間帯の生物群集は 鳥の採餌動態を介して隣接生態系と間接的に相互作用しており、食物網の空間 スケールはハピタットの境界を越えた鳥類の採餌活動によって時間変動するこ とが示唆された。

  潮下帯ハピタットから潮間帯ハピタットヘ供給されるウニが鳥類の主要な餌 になると同時に、烏類は潮間帯の餌生物も大量に採餌するが、ウニ供給は、鳥 の潮間帯餌生物への捕食量を変化させることで潮間帯生物群集に影響を及ぽす ことが考えられる。

  そこで、潮下帯から潮問帯へのウ二類の供給量の時間変動と、それに伴うカ ラス類及びカモメ類の潮間帯生物群集への捕食圧の時間変動を明らかにするた めの野外調査をした。さらに、ウニ供給量の経年変動が生じるプロセスを明ら かにするために、ウニ供給量の経年変化、潮下帯ウニ個体群サイズの経年変異 及び海況の経年変動の三者関係を検討した。

  その結果、カラスとカモメは共に潮下帯から供給されるウニ類に対して高い 選択性を示したが、ウニ供給量の変化に対する両者の摂餌動態は異なっていた。

カラスはウニの供給量が少なくなると潮間帯の餌生物に摂餌項目をスイッチし たが、カモメは潮間帯で採餌しなくなり、他のハピタットで採餌した。この摂 餌行動の違いによって両者が潮間帯生物群集に及ぼす影響が異なっていた。ま た、ウニ供給量の経年変動はその年の海況に依存して増減する潮下帯ウニ個体 群サイズの経年変動に反映されていた。従って、隣接ハピタットからの資源供 給は海況に依存して経年変異しながら、鳥類を介して潮間帯食物網動態に影響 することが示唆された。

  最後に、実際に鳥類の摂食圧が潮間帯生物群集の構造と動態に及ぽす影響と そのプロセスを明らかにするために、鳥類の潮間帯餌生物への摂餌量を操作し た野外実験をした。

  カモメは冬期に潮間帯一年生海藻類の競争的優占種を摂食し、カラスは春期 にその海藻優占種のキャノピーに棲む小型甲穀類とキャノピー下に隠れている ヒザラガイ類を捕食している。海水温が高い年には、カモメの摂食が海藻優占     ‑ 1396

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種のキャノピーを有意に減少させ、競争的劣位種の種多様性を増加させた。ま た、キャノピーの減少によって小型甲殻類の生息密度が減少した。その結果、

カラスはヒザラガイ類を選択的に捕食して、その密度を有意に減少させ、ヒザ ラガイ類の餌である付着珪藻類を増加させた。一方、海水温が低い年には、カ モメの摂食が海藻優占種のキャノピーを有意に増加させた。その結果、カラス は小型甲殻類を選択的に捕食してその密度を有意に減少させ、付着珪藻類を有 意に減少させた。カモメが海藻優占種に与える影響の違いは、海況に依存して 経年変化する海藻優占種の加入量と成長速度の違いが原因であると推定された。

従って、烏類は海況に依存して潮間帯食物網構造と動態を変化させることが示 唆された。

  以上の野外調査と野外操作実験の結果より、岩礁潮間帯食物網の構造と動態 は、隣接したハピタットからの資源供給の影響と、ハピタット間を移動する鳥 類の採餌動態の影響を強く受けている。これらの結果は、岩礁潮間帯の生物群 集は隣接したハゼタットとの間に相互作用を持ち、その影響を無視して潮間帯 生物群集の構造と動態の変化は説明できないことを示唆している。さらに、隣 接ハピタットからの資源供給量と潮間帯由来の一次生産量は共に沿岸海況の変 化に敏感に反応して変化し、それらの変化が食物網構造と動態の時間変異性を 生じさせていた。

  以上の結果は、あるハピタットの生物群集の形成維持機構の解明には複数ハ ピタットの相互作用が重要であることを示し、新しい生態学理論の構築に道を 開くと同時に、岩礁潮間帯保全にも極めて重要な知見を提出している。よって、

本論文は博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるものと判定した。

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