博 士 ( 医 学 ) 朝 田 政 克
学 位 論 文 題 名
Effects of Pulsed Lasers on Agar Model Simulation of the Arterial Wall
(寒天動脈壁モデルに対するパルスレーザの効果)
学 位 論 文 内 容 の要 旨
要旨
近 年、経皮 的冠動 脈バル スレー ザ形成 術(PTLCA)が 臨床応 用される ようになってきた。しかし、柔 軟な マルチ フんイ バーカ テーテ ルが開 発され 、ガイドワイヤの使用によルカテーテルが動脈壁を穿通 しな いのに もかか わらず 、冠動 脈解離 や冠動 脈穿孔が発生することが報告されている。ー方、動脈壁 に対 するバ ルスレ ーザ照 射は、 数百バ ールの 衝撃波を発生させると報告されている。そこで、現在臨 床で 使用さ れてい るバルスレーザ照射のacoustic effectが、動脈解離や動脈穿孔を起こしうると仮説 を 立 て 、 新 た に 考 案 し た 寒 天 性 動 脈 モ デ ル を 使 用 し て こ の 効 果 を 証 明 し た 。 この研究の目的は、1)前述の仮説を動脈壁モデルを使用して、可視化する事により証明する:2)レー ザー 照射後 の動脈 壁障害 の大き さとレ ーザエ ネルギとの関係を明らかにする、3)holmiumーyttriumー
aluminium
ーgamet(HoーYAG)レーザとxenon chloride excimer (Excimer)レーザを比較することによって、赤外線レーザと紫外線レーザのどちらが安全かを評価することである。
実験方 法
1
.動脈 壁モデ ル(1)2
層モデ ル。2層 の薄い 寒天の 層に、 着色した油脂(平均2.8mg)を封じ込んだモデルを作成した。モデ ル の 厚 みは 約
5 mm
で あ る 。こ の モ デ ルは 動脈解 離の実 験に使 用した 。(2)1層モ デル。 約5mm の厚み の寒天 層に大 きさが2 mm
前後の 炭酸カ ルシウ ムの小 片を封入 したものである。このモデルは 動脈穿 孔の実 験に使 用した 。−96 ‑―
2. レーザプロトコ ール
Ho−YAGレ ー ザ(Eclipse社2100TM) 、 波 長2.lpm、 バ ル ス 幅250ルsec、 周 波 数5Hzと 、Excimerレ ー ザ(Specuanetics社CVX̲300TM)、 波 長308nrn、 バ ル ス 幅135nsec、 周 波 数25Hzを 使 用 し た 。Excimer レ ー ザ は1.4mmの マ ル チ フ ァ イ バ ー カ テ ー テ ル 、Ho−YAGレ ー ザ は1.5及 ぴ2.Ommの マ ル チ フ ァ イ パ ー カ テ ー テ ル を 使 用 し た 。 照 射 数 は 、 臨 床 で の 使 用 方 法 に 対 応 し てHo−YAGレ ー ザ で は パ ル ス 数10、 エ ネ ル ギ191〜539mj/pulseと し 、Excimerレ ー ザ で は パ ル ス 数50、fluence 35〜55mj/mm2と し た 。 3. 実 験
寒 天 内 の 封 入 物 に レ ー ザ を 照 射 し た 後 、 拡 大 写 真 を 撮 っ た 。 実 験 と 無 関 係 の2名 の 人 物 に よ り 封 入 物 の 最 大 飛 散 距 離(Dmax)が 測 定 さ れ た 。 レ ー ザ カ テ ー テ ル は 特 別 に 製 作 し た 支 持 具 に 固 定 し 、0.05N の 圧 で モ デ ル の 面 に 垂 直 に 照 射 し た 。
Ho‑ YAGレ ー ザ とExc伽erレ ー ザ の 効 果 の 比 較
こ の 実 験 はHoーYAGレ ー ザ とExcimerレ ー ザ 照 射 に よ る 、 封 入 物 の 最 大 飛 散 距 離(Da:Da=DmaxーL、 Lは 照 射 前 の 封 入 物 の 半 径 ) を 比 較 す る た め に 行 っ た 。 こ の 補 正 は 、2つ の レ ー ザ カ テ ー テ ル の 直 径 が 異 な る た め に 行 っ た 。
Daは6個 の 封 入 物 に 対 す る 照 射 の 平 均 と し た 。HoーYAGレ ー ザ は244か ら491 mj/pulse、Excimerレ ー ザ は9.6か ら15.6 mj/pulseの 間 で 照 射 工 ネ ル ギ を 段 階 的 に 増 加 し 、 そ れ ぞ れ のDaを 求 め た 。
4.デー夕解析
Statworksを用いStudent.s t‑testとliner regression analysisにより統計的有意差を求めた。pく0.05をもって 有意とした。
結 果
HoーYAGレ ー ザ を2層 モ デ ル に 対 し 照 射 し た と こ ろ 、 封 入 物 は 同 心 円 状 又 は 放 射 状 に 飛 散 し た 。 こ れ に 対 しExcimerレ ー ザ照 射で は 封入 物の 飛 散は 僅か で あっ た。
1層 モ デ ル に 対 す るHoーYAG‑レ ー ザ の 照 射 で は 、 鋭 い 亀 裂 が 寒 天 に 生 じ た 。 一 方 、Excimerレ ー ザ 照 射 で は 、 一 部 の 封 入 物 で 僅 か な 亀 裂 が 生 じ た の み で あ り 、 多 く は 亀 裂 を 生 じ る こ と な く 封 入物 を蒸 散 し た 。
Excimerレ ー ザ は2層 モ デ ル の 封 入 物 を 殆 ど 飛 散 さ せ な か っ た た め 、 レ ー ザ エ ネ ル ギ とDmaxの 関 係 は HoーYAGレ ー ザ の み で 行 い 、16個 の2層 モ デ ル に 照 射 し た 。Dmaxは 照 射 し た レ ー ザ エ ネ ル ギ(E)
― 97−
の関数、
Dmax=O.J 5E0.87̲1.17
で表された(相 関係数‑ 0.94.Pく0.001)。
Ho
ーYAGレーザのDa
はExcimerレーザと比較し て有意に大きかった(pく0.01)。考察
パルスレーザが動脈壁に 照射されると組織は素散され ると同時に局所に極めて高 い圧が発生し、衝撃 波が発生する。パルスレ ーザの効果は蒸散作用だけで なく、 この高圧と衝撃波による組織の粉砕も主 な作用であると考えられ ている。そこで我々は、動脈 解離はバルスレーザの機械 的作用で発生しうる と考えた。又従来、動脈 穿孔はパルスレーザが動脈壁 を蒸散させるために壁が穿 孔すると考えられて いた。しかし、カテーテ ルが動脈に平行に位置し動脈 壁を蒸散させていないにも かかわらず動脈穿孔 が発生した事実から、パ ルスレーザの機械的作用自体 が動脈穿孔の原因になって いると考えた。そし てパルスレーザの種類及 び機械的作用と、組織障害の 関係を定量的に表すことが できれぱ、より安全 で効 果的 なレ ー げの 波長 とエ ネル ギ を決 定す るこ と に有 用で ある と考 え この 研究 をお こな っ た。
2
層モ デ ルで は、 この 層 の問 には さま れた 封 入物 にHo‑YAGレー ザ が照 射さ れる と 封入 物は2
層 の間 に飛 散し た。 一 方、Excimer
レーザの照射では殆ど封 入物は飛散せず照射された 部分が蒸散したのみ で あ っ た 。 っ ま り 、Excimer
レ ー ザ は よ り 動 脈 解 離 を 発 生 し に く い 線 種 で あ る と考 えら れた 。Ho‑YAG
レ ーザ で は、 解離 の大 きさ は レー ザエ ネルギ の関数で表すことができた 。っまルレーザ照射1
回あ た りの エネ ルギ が 大きくなれぱなるほど組織障 害は大きくなるため、より 小さなエネルギで照 射を 行う こと が 望ま しい と考えられる。Excimerレー ザのエネルギはHo‑YAGレー ザの1/30程度である ため 、組 織障 害 はよ り小 さく なっ た とも の思 われ る 。臨 床使 用で の効 果はHo‑YAGレーザもExcimer レーザも同程度であるが 、この原因はそれぞれのレー ザのバルス幅の違いにある と考えられる。っま りより大きなパワをもつ レーザがより有用であると思 われる。1
層モ デ ルに 対し てバ ル スレーザが照射されると、寒 天壁に亀裂が生じた。この 現象は実際の動脈へ のレーザ照射でも起こっ ていると考えられる。レーザ 照射が動脈穿孔を起こす機 序は、レーザが動脈 壁を蒸散し穴を開けるた めではなく、動脈の狭窄部位 あるぃは閉塞部位への照射 で壁に亀裂が生じ、この 亀裂 が外 膜 に達 し動 脈穿孔となると考えられる 。定量的な比較は行わなかっ たがExcimerレーザ によ り生 じた 亀 裂は
Ho‑YAG
レーザより小さく、この 点からもExcimerレーザはよ り動脈穿孔を起こし づらい線種であると考え られた。ー 98−
結論
(1)パルスレーザ照射による動脈壁の機械的損傷の大きさと、レーザーエネ´レギとの関係を明らか にした。(
2
)Excimerレーザによる機械的損傷はHo‑YAG
レーザより小さく、冠動脈パルスレーザ 形成術により適した線種である。一 99―