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博 士 ( 医 学 ) 古 田 信 道

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 古 田 信 道

     学 位 論 文 題 名

Endocytic recycling in yeast is regulated by     putative phospholipid translocases     and the Ypt31p/32p − Rcylp pathway

(リン脂質トランスロケースとYpt31/32 ーRcyl 複合体による      エ ン ド シ テ イ ッ ク リ サ イ ク リ ン グ 経路 の制 御 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    目的と背景

  生体膜を構成するりン脂質は通常二重層の内外で非対称に分布しており、一般に動物細 胞ではホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンが外層に、ホスファチジルエタノール アミン、ホスファチジルセリンが内層に多く分布している。細胞膜におけるこれら膜リン 脂質の非対称性の破綻は細胞に様カな変化を及 ばす。例えぱ、ヒト赤血球膜ではATP非存 在下においてホスファチジルセリンが外層に露出し、赤血球の形態が通常の円盤状から金 平糖状に変形する。また、アポトーシスによる膜リン脂質の非対称性の破綻は、内層に存 在するホスファチジルセリンを細胞外層に露出させ、食細胞に対する食作用を誘発するシ グナルとなる。このように膜非対称性の保持は細胞を維持していく上で重要な役割を果た す。近年、これらりン脂質の非対称性の制御は細胞内小胞輸送にも重要な役割を果たして いることが明らかになりつっある。真核細胞内は膜によって隔てられた細胞内小器官によ って満たされているため、細胞内小胞輸送により各細胞内小器官が特定の蛋白質や因子を 効率的にやり取りし、緊密な連絡網を保っこと は細胞の機能維持にとって必要である。

  膜リン脂質非対称性を制御するりン脂質トランスロケースは、膜脂質配向性の変化と細 胞内小胞輸送の両方に関与する蛋白質として報告されているが、その機能にっいては未だ 不明な点が多い。出芽酵母において、リン脂質 トランスロケースとしてP型ATPaseである DRS2. DNF1丶DNF2. DNF3及びNE01 (DRS2ファミリー)が同定されている。出芽酵母は迅速 かつ的確な細胞生物学、分子遺伝学的手法を用いることが可能なため、分子細胞生物学領 域でモデル生物として多くの研究室で使われている。また、我々の研究室では以前、NE01 を除 くこ れらP型ATPaseの機 能的 サブ ユニ ット とし てCDC50. LEM3及びC1 (CDC50ファ ミリ ー) を同 定し た。Cdc50pはDrs2pと、Lem3pはDnflp並びにDnf2pと、CrflpはDnf3p とそれぞれ複合体を形成する。

  本論文ではりン脂質非対称性と細胞内小胞輸送との関連性を解明するため、Drs2pファミ リーとCdc50pファミリーに注目し、これらの細胞内における機能について解析を行った。

    結果

  我々 は先ず、CDC50遺伝子に変異 を導入し、同時にLEM3¥ CRF1遺伝子を欠損させること で高温感受性を示すようになるcdc50‑ts lem3A crf.′株を作成した(以下、cめ卯一姑株と

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記す)。次にcdc50‑ts株の高温感受性を高発現により抑圧する、っまりその遺伝子を高発 現させることで、cdc50‑ts株が高温でも増殖可能となる遺伝子を探索したところ、YPT31/32 を同定した。YPT31/32はRab/Yptフんミリーに 属するSmall GTPaseであり、細胞内小胞輸 送、特にゴルジ体 から細胞膜への輸送経路であるエキソサイトーシス、細胞膜から初期エ ンドソームを経由 しゴルジ体へと至り再ぴ細胞膜へ戻るといったりサイクリングを繰り返 す エ ン ド シ テ ィ ッ ク リ サ イ ク リ ン グ 経 路 に 関与 する とさ れて いる こと から 、 我々 は cdc50‑ts #i(;lrこおける細胞内小胞輸送に着目した。出芽酵母においてはゴルジ体から細胞膜 に至るエキソサイ トーシス、細胞膜から液胞に至るエンドサイトーシス、ゴルジ体から後 期エンドソームを 経由し液胞へ至るVPS経路、 それと前述のエンドシティックリサイクリ ング経路が存在し ている。しかし、cdc50ーむ株においてエキソサイトーシス、エンドサイ トーシス、VPS経路には異常は認められなかぅた。エンドシティックリサイクリング経路に よって細胞内を移 動するv―SNAREとしてSnclpが知られている。SnclpのGFP融合タンパク 質のcdc50‑ts株に おける局在を螢光顕微鏡を用いて観察したところ、GFPーSnclpが細胞の 出芽部位や細胞分 裂部位周辺の異常な構造物として観察された。このGFP−Snclpを含んだ 構造物は既知の初 期エンドソームマーカーと共局在を示したことから、初期エンドソーム に由来する構造物 であることが示された。電子顕微鏡観察の結果、cdc50‑ts株には出芽部 位や細胞分裂部位 周辺に異常な膜構造物が蓄積しており、さらに免疫電子顕微鏡観察によ りSnclpがこれらの異常な膜構造物に局在して いることが示された。これら観察された膜 構造物は後期ゴル ジ体からの小胞形成に異常が生じている変異株に特徴的に観察される構 造物と酷似してい たことから、cdc50‑ts株では初期エンドソームからゴルジ体へ至る経路 のうち、初期エン ドソームからの小胞形成が正常に行われていない可能性が示唆された。

  一方 、Ypt31p/32pのエフェクターとしてRcylpが報告されている。Ypt31p/32pはRcylp を初期エンドソー ム膜へと移送する過程を制御するとされており、rcylA株ではcdc50‑ts 株と同様に初期エ ンドソームが細胞内に異常蓄積することが報告されている。興味深いこ と にrcy彪株 の低 温感受性はの6閲と鰓鏐を同時に過剰発現させること により抑圧され、

同 時 にSnclpの 異 常 局 在 も 正 常 に 戻 さ れ た 。さ ら に共 免疫 沈降 実験 の結 果、Rcylpは Cdc50plDrs2p複合 体と結合していることが明らかとなった。次に門ル4株におけるCdc50p の局在を調べたと ころ、Cdc50pはSnclpと同様 の箇所に蓄積しているのが観察された。こ のことからRcylp欠損下ではCdc50p一Drs2pは初期エンドソーム膜に局在しているにも関わ らず、Cdc50―Drs2pの機能は失われていることが示唆された。

    考察

本研究では、Drs2p―Cdc50p複合体が初期エンドソーム膜上で膜リン脂質の配向性を制御す る こ と で 小 胞 形 成 に 機 能 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。Drs2p―Cdc50p複 合 体 と Ypt31p/32p―Rcylpとの関係性にっいては次のような仮説が立てられた。すなわち、(1)活 性化 されたYpt31p/32pが初期エンドソーム膜上にRcylpを移動させる。(2)膜に移動した RcylpはDrs2pーCdc50p複合体と結合することでりン脂質トランスロケースによるフリップ 活性を引き起こす。これにより膜リン脂質の 非対称性が増強される。(3)この膜リン脂質 の非対称性は小胞形成時における膜の形態変化や、小胞形成に必要な被覆分子の集合を促 す。これまでYpt/Rabファミリーが小胞形成機構に関与していることは報告されているが、

Ypt/Rabファミリ ーがりン脂質トランスロケースを介して小胞形成を制御している可能性 を示したのは本研究が始めてである。初期エンドソームからの小胞形成に必要な被覆分子 の探索や、実際にエンドソーム膜上において膜リン脂質配向性の変化がどのように小胞形 成機構に関与しているかにっいては今後の機能解析が期待される。小胞輸送の異常は細胞 極性形成不全や癌細胞の浸潤・転移に密接に関連している。本論文で出芽酵母を用いて得

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られた知 見がヒトにおける細胞内小胞輸送を解析するためのきっかけとなり、種々の疾患 を解明す る上で有効に活用されることが期待される。

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学位論 文審査の要旨

     学位論文題名

Endocytic recycling in yeast is regulated by     putative phospholipid translocases     and the Ypt31p732p ― Rcylp pathway

(リン脂質トランスロケースとYpt31/32 −Rcyl 複合体による      エ ン ド シ テ イ ッ ク リ サ イ ク リ ン グ 経 路 の 制 御 )

  生体膜 を構成す るりン 脂質は通 常二重 層の内外 で非対 称に分布 しており、リン脂質 の非対 称性の制 御は細 胞内小胞 輸送に おいて重 要な役割 を果た していることが明らか になり つっある 。細胞 内小胞輸 送は細 胞機能を 保つ上で 必要不 可欠である一方、細胞 内小胞 輸送を介 した微 生物の感 染が報 告されて いる。膜 リン脂 質非対称性を制御する りン脂 質トラン スロケ ースは、 膜脂質 配向性の 変化と細 胞内小 胞輸送の両方に関与す る蛋白 質として 報告さ れている が、そ の機能に ついては 未だ不 明な点が多い。出芽酵 母 にお い て 、リ ン 脂 質ト ラ ン スロ ケ ースと してP型ATPaseであ るDRS2、DNF1、DNF2.

DNF3及 ぴNE01 (DRS2フ ァミ リ ー )が 同定 されてい る。出 芽酵母は 迅速かつ 的確な 細 胞生物 学、分子 遺伝学 的手法を 用いる ことが可 能なため 、分子 細胞生物学領域でモデ ル生物 として多 くの研 究室で使 われて いる。以 前、我カ の研究 室ではNE01を除くこれ らP型ATPaseの機能 的サブ ユニット としてCDC50. LEM3及 びCRF1(CDC50ファミ リー)

を 同 定 し た 。Cdc50はDrs2と 、Lem3はDnfl並 びにDnf2と 、CrflはDnf3とそ れ ぞ れ 複合体 を形成す る。本 研究では 細胞内 小胞輸送 の制御機 構にお ける生体膜リン脂質非 対 称性 の 生理的 意義を解 明する ため、Drs2、およびCdc50フ ァミリー の細胞内 機能の 解析を試みた。

  先 ず 、CDC50遺伝 子に変 異を導入 し、同 時にLEM3、CRF1遺伝子を 欠損させ ること で 高 温感 受 性 を示 す よ うに な るcdc50― 温度感 受性変異 |em3欠損crfl欠損 株を作 成し た(以 下、cdc50―温度感受性株と記す)。次にcdc50―温度感受性株の高温感受性を高 発 現 に よ り 抑 圧 す る遺 伝 子 を探 索 し たと こ ろ 、YPT31/32を 同 定 し た。YPT31/32は Rab/Yptフ ァミリー に属す るSmall GTPaseであ り、細胞 内小胞 輸送に関 与する とされ ていることから、cdc50―・温度感受性株における細胞内小胞輸送に着目した。その結果、

cdc50‑温度感 受性株 において は初期 エンドソ ームから の小胞 形成に異常が生じている

  5 2 5

次 利

幸 馬

山 田

口 中

畠 志

野 田

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可能性が示唆された。一方、最近SegevらのグループによってYpt31/32はYpt31/32 のエフェクターであるRcylを初期エンドソーム膜へと移送する過程を制御し、初期工 ンドソームから後期ゴルジ体へと至る経路に関与するという報告がなされた。共免疫 沈降実験の結果、RcylはCdc50−Drs2複合体と結合していることが明らかとなった。

また、rcyl欠損株におけるCdc50の局在を調べたところ、Cdc50は初期工ンドソーム に蓄積して観察された。このことからRCY1欠損下ではCdc50−Drs2複合体の機能は失 われていることが示唆された。本研究によりCdc50ーDrs2複合体とYpt31/32―Rcylとの 関係性については次のような仮説が立てられた。すなわち、(1)活性化されたYpt31/32 が初期エンドソーム膜上にRcylを移動させる。(2)膜に移動したRcylはCdc50−Drs2 複合体と結合することでりン脂質トランスロケースによるフリップ活性を引き起こす。

これにより膜リン脂質の非対称性が増強される。(3)この膜リン脂質の非対称性は小 胞 形 成時に おける膜 の形態変 化や、小 胞形成に必 要な被覆 分子の集 合を促す 。   口頭発表において、副査の野口昌幸教授からCdc50―Drs2複合体とRcylとの膜を介 した結合についての質問があった。続いて副査の志田壽利教授から哺乳動物細胞にお けるYpt31/32、Rcyl、及びCdc50―Drs2複合体ファミリーの機能についての質問があ った。主査の畠山鎮次教授からはCdc50―Drs2複合体とRcylが結合して機能する上で 他の因子が関与している可能性についての質問があった。副査の田中一馬教授からは Cdc50−Drs2複合体が初期エンドソームに対して特異的に機能しているメカニズムにつ いての質問があった。これらに対し申請者は、自己の研究成果と文献的知識を基に概 ね妥当な回答を行った。

  この論文は、Ypt/Rabファミリーがりン脂質トランスロケースを介して小胞形成を 制御している可能性を初めて示した点で高く評価され、今後膜リン脂質の非対称性の 生理機構と細胞内小胞輸送との関連性の解析が、小胞輸送が関与する疾患や感染症の 発症機構の解明に繋がることが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得単位な ども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定

゛した。

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参照

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