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博 士 ( 水 産 学 ) 篠 原 現 人 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 水 産 学 ) 篠 原 現 人

学 位 論 文 題 名

    Comparative Morphology and Phylogeny of the Suborder Hexagrammoidei and Related Taxa     (Pisces :Scorpaeniformes)

( ア イ ナ メ 亜 目 魚 類 と そ の 近 縁 群 の 比 較 形 態 学お よ び系 統 分類 学 的研 究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  アイナメ類は比較的小さな分類群で,5属12種が認められている。これらのアイナメ類は北太 平洋に固有で,一般に底生性で沿岸域に生息するが,中には沖合表層域に出現する種もいる。こ れ ら の う ち 数 種 は 大 量 に 漁 獲 さ れ る た め に 産 業 的 に 重 要 種 と な っ て い る 。   本魚類はRegan(1913)の分類学的研究以降アイナメ亜目としてカサゴ目内のひとっの自然 群とされてきた(例えば,Berg,1940;Rutenberg,1962;Quast,1965)。しかし,その単系 統性にっいては考察されておらず,従って,アイナメ亜目が単系統群であるか否かにっいては充 分な根拠に基づぃた見解がない。

  このような状況の下,アイナメ亜目魚類の系統学的位置にっいては外部形態の類似性から本亜 目魚類がギンダラ類と近縁であるとの考えが一般的になっていた(例えば,Jordan and Ever・ mann,1898;Lindberg,1971;Nelson,1976)。しかし,Quast(1965)は一部の骨格系の比 較から,本亜目魚類はカジカ類と近縁であるという画期的な考えを示した。この考えはGosline (1971)やNelson (1984)により支持されている。

  他方,本亜目内の系統類縁関係に関しては研究が皆無である。しかし,亜目内の分類学的取扱 いをみると ,Jordan and Evermann(1898)はアイナメ科,オフィオ ドン科,オキシレビウ ス科および ザニオレピス科の4科を認め たが,Regan(1913)とBerg(1940)はこれらをアイ ナメ科として統合した。また,Schultz and DeLacy(1935―1936)はアイナメ科およびオフィ オドン科の2科に分割したが,近年,Quast(1965)はアイナメ科とザニオレピス科の2科を認 めている。

(2)

  以上のように,本亜目はカサゴ目内での系統学的な位置が不明で,亜日内の類縁関係が解明さ れ て お ら ず , 従 っ て , 亜 目 内 の 分 類 体 系 に 一 定 の 見 解 が な い の が 現 状 で あ る 。   以上のことから,本研究は全骨格系fまもとより筋肉系,神経系などできるかぎり多くの形質を 用いて,これらの魚類の単系統性を検討し,系統類縁関係を明らかにし,類縁関係に基づいた分 類体系を確立することを目的として行われた。

  研究に用いた魚類は本亜目に含まれる5属12種および他のカサゴ目魚類36属38種でその成魚を 比較解剖し,骨格系,筋肉系,神経系および外部形態にっいて分析を行った。系統類縁関係の推 定には分岐分類学的手法を用いた。属間の形質の極性はアイナメ亜目を含むカサゴ目のさらに上 位の分類単位である棘鰭上日の基本状態を推定し,その状態と比較することにより決定した。本 亜目中最大の種数を持っアイナメ属魚類の種間関係の推定にっいては本研究で求められた属以上 の類縁関係から外群比較法により極性を決定した。

  本研究ではアイナメ亜目を含むカサゴ目属間で53個,アイナメ属種間で17個の派生形質を採択 し てこ れら を分 析 し, 以下 の分 岐関 係 を得た(図) 。本研究の結果を以下に要約 する。

  1)アイナメ亜目の単系統性の検討

  従来多くの研究者により扱われてきたアイナメ亜目fま側系統群で,この群はカジカ亜目を含め て 単 系 統 群 に な る 。 こ の こ と か ら 従 来 の ア イ ナ メ 亜 目 の 単 系 統 性 は 否 定 さ れ た 。   2)アイナメ亜目の系統学的位置

  従来の本亜目魚類はギンダラ類よりもカジカ類に近縁であることが判明した。また,本亜目と 近縁と考えられてきたギンダラ類はアイナメ亜目十カジカ亜目と姉妹群になることが明かにされ た。

  3)アイナメ亜目内の系統類縁関係

  従来のアイナメ亜目は系統的に異なった2っの群―ザニオレピス属等を含むザニオレピス群お よびアイナメ属等を含むアイナメ群―で構成される。

  4)ザニオレピス群の類縁関係

  ザニオレピス群はザニオレピス属2種とオキシレビウス属1種からなり,この群の単系統性は 角骨の上向突起が退化するなど2個の派生形質で支持される。この群はアイナメ群十カジカ亜目 と姉妹群関係にある。

  5)アイナメ群の類縁関係

  アイナメ群はアイナメ属,ホッケ属およびオフィオドン属を含む。この群の単系統性は前鰓蓋 骨の鰓蓋下顎管域が閉顎筋に覆われるなど3個の派生形質で支持される。この群はカジカ亜目と

(3)

カ サ ゴ 亜 日 コチ亜目 ギンダラ亜目

ホッケ

キ タ ノ ホ ッ ケ エ ゾ ァ イ ナ メ アラスカアイナメ ウ サ ギ ァイ ナ メ ス ジ ア イ ナ メ アイナメ クジメ

カジカ亜目

姉 妹群 にな り,胸 鰭の腹 側立筋 が退 化する ことな ど6個の派 生形質 を共有 する 。また ,アイ ナメ 属は オフア オド ン属よ ルホッ ケ属に 近縁 である 。さら にアイナメ属内でIまエゾアイナメが最も早 期に 他種か ら分 岐し, アラス カアイ ナメ が次に 分かれ る。ウ サギア イナ メはスジアイナメと,ク ジメ はアイ ナメ と姉妹 群関係 になる 。

  6)ザニ オレ ピス群 ならび にアイ ナメ群 の動 物地理

  分 岐関係 および 現在の 分布域 の分 析から ザニオ レピス 群は ブリテ ィッシ ュコ口ンビアからカリ フォ ルニア 沿岸 域に起 源を持 ち,そ の祖 先が分 布して いた海 域を中 心に 分布を拡大したと推定さ れる 。他方 ,ア イナメ 群の起 源はア ラス カ湾近 海と推 定され ,この 海域 から西方または南方へ分 散し ,分布 を拡 大した と考え られる 。

  7)分 類体系

  本 研究で はザニ オレピ ス群に ザニ オレピ ス亜目 を新設 し, ザニオ レピス 科を設けた。一方,ア イナ メ群に はア イナメ 亜目を 当て, アイ ナメ科 とする 以下の 新分類 体系 を提唱した。この分類体 系 は 従 来の ア イ ナ メ 亜目 が 自 然 群 であ る と す る 過 去の い ず れ の 研究 と も異 なるも のであ る。

(4)

新 分 類 体 系 ( * は 本 研 究 で 新 た に 提 唱 す る 亜 目 ) Order Scorpaeniformes カサゴ目

  Subor ( lerSC0rpaCnoideiO ピ門SHNelS0n , 1984 )   カサゴ亜日   SuborderPlatyCephaloidei (S ピぬ S ば NelSOn ,1984 )コチ亜日   SuborderAnoplopomatoidei (S ピ門SHNelSOn ,1984 )ギンダラ亜目

*SuborderZaniolepidoidei   ザニオレピス亜日     FamilyZaniolepididae   ザニオレピス科     GenusZa 門f 〇 Z 印む   ザニオレピス属     GenuS 〇づセ6 ;〃ゴ   オキシレピウス属   SuborderHeXagran 】 moidei   アイナメ亜目     FamilyHeXagrammidae   アイナメ科

    GenuSf ねズロgr 口〃 2 ′ぬ〇5   アイナメ属     GenuSP 胞Hr 〇 gr ロ〃2m 甜 S   ホッケ属     GenuS くゅ´zf 〇 C め門   オフィオドン属

  SuborderCOttoideiO ピ門 5HNelSOn , 1984 ・)    カジ カ亜日

学位論文審 主査

副査 副査

教 授 教 授 助 教授

査の要旨 尼岡邦夫 箕田   嵩 仲谷一宏

ア イナ メ類は カサゴ 目に属 する 比較的 小さい 一群で ,5属12種 が知ら れてい る。本 類は北 太平 洋にの み分布 する 底生性沿岸魚で,産業的重要種を含んでいる。

本類の 系統に 関する 研究は 断片 的にな されて いるが ,総 合的に なされた研究はないために の類は 単系統 群で あるか さえ不 明であ る。一 方, 本類の 系統的 位置関 係にっいて,外部形態の類 似 や一部 の骨格 の比較 から求 めた ものは あるが ,一定 の見 解に到 達していない。また,本類内の 系 統類縁 関係 は過去 におい て全く なさ れてい ない。 従って 本類の 分類体系は極めて安定性に欠け た もので ある 。

本論 文はア イナ メ類5属12種 ,他の カサゴ 目魚 類36属38種を比 較解剖 し,全 骨格系 ,筋 肉系 神経 系など から得 られ た53派生 形質を 用い て,分 岐分類 学的手 法によ って分析を行った。極性は

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棘鰭上目の基本状態を推定して决定した。また,種間関係の推定は本研究で得られた類縁関係か ら外群比較法により行った。

  本研究は本類の単系統性を検討し,系統的位置を明確にした後,本類内の系統類縁関係を求め ている。さらに,この関係を現在の各種の分布域から検討を加え,本分岐関係から分散の経路を 推 定 し て い る 。 最 後 に , そ の 関 係 を 反 映 し た 新 分 類 体 系 を 提 唱 し て い る 。   かかる内容の本論文の審査に当たり,主査,副査が特に評価した結果を要約すると次のようで ある。

  (1)単系統性にっいて,従来のアイナメ亜目は側系統群であり,この群はカジカ亜目を含める     ことによって単系統群を構成することを明らかにした。

  (2)系統的位置にっいて,本類は従来ギンダラ類と近縁とされていたが,カジカ類により近縁

.である。本類とカジカ類を合わせた群がギンダラ類と姉妹群を形成することを明らかにした。

  (3)系統類縁関係にっいて,得られた分岐関係から従来のアイナメ亜目は系統的に異なったザ     ニオレピス属などを含むザニオレピス群とアイナメ属などを含むアイナメ群からなることを     明らかにした。前群は角骨の上向突起が退化するなどの2個の派生形質を共有し,ザニオレ     ピス属とオキシレビウス属に分岐した。さらにザニオレピス属はZaniolepis frenataとZ.     latipinnisに分岐した。アイナメ群は前鰓蓋骨の鰓蓋下顎管域が閉顎筋で覆われるなどの3     個の派生形質で支持され,カジカ亜目魚類と姉妹群関係を形成する。これらの姉妹群は胸鰭     の腹側立筋が退化するなどの6個の派生形質を共有する。アイナメ群はまずオフィオドン属,

    次にホッケ属,最後にアイナメ属が分岐した。アイナメ属はオフアオドン属よルホッケ属に     近縁である。ホッケ属はホッケとキタノホッケに分かれた。アイナメ属内ではエゾアイナメ     がもっとも早く分岐し,次にアラスカアイナメ,最後にウサギアイナメとスジアイナメがア     イナメとクジメから分かれた。アイナメはスジアイナメやウサギアイナメよりもクジメに近     縁である。

  (4)動物地理との関係にっいて,本類の分岐関係と現生種の分布域の分析から,ザニオレピス     群はブリティッシュコ口ンビアからカリフォルニア沿岸域に起源を持ち,この海域を中心に     分布域を拡大した。他方,アイナメ群はアラスカ湾近海に起源を持ち,そこから西方と南方     へ分散し,分布域を拡大したと推定した。

  (5)分類体系に関しては,ザニオレピス群に対して亜目を新設し,それにザニオレピス科を設     け,サニオレピス属とオキシレビウス属を含ませた。アイナメ群に対してはアイナメ亜目,

    アイナメ科を当て,アイナメ属,ホッケ属及びオフアオドン属の3属を含ませた。このよう

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    に本類を2亜目2科5属12種とする新分類体系を樹立した。この分類体系は過去のいずれの     体系とも異なるものである。.

  以上のように,本論文は極めて混乱していたアイナメ亜目魚類を明確に定義づけ,本類の系統 的位置を明かにした後,本類内の系統類縁関係を樹立した。さらに,本研究で得られた系統類縁 関係と動物地理との関係を明らかにした。そして最後に,本亜目魚類に対して新分類体系を提唱 した。これらのことは魚類の系統分類学の分野に貴重な貢献をなしたものと高く評価された。

  以上の点を主査,副査が評価し,申請者が博士(水産学)の学位を受ける資格があると認定し た。

参照

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