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博士(農学)栃原孝志 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)栃原孝志 学位論文題名

Arthrobacter globifor7n なT6 由来isomalto‑dextranase の 活性部位の特定および構造と機能に関する研究

学位論文内容の要旨

  デキストランは,工業的に生産される重要な細菌性グルカンであり,血漿増量剤や 抗血液凝固剤,クロマトグラフイーの担体に利用されるなど医薬あるいは生化学の分 野で広く利用されている.また,デキストランを部分加水分解して得られるイソマル トオリゴ糖は,ピフィズス菌など有用腸内細菌の増殖に著効を示すため,機能性オリ ゴ糖として食品分野においても広く利用されている.

  Arthrobacter globiformis T6由来isomaltoーdextranase (IMD; EC 3.2.1.94)はデキスト ランの非還元末端側から順次グリコシド結合を切断し,弘イソマルトースのみを遊離 す るexo型 加 水 分 解 反 応 を 触 媒 する .糖 質分解 酵素 の立 体構 造はa‑amylaseをは じ め数 多く の酵 素で 解析 され てき たが ,デ キスト ラン 加水 分解 酵素 に関 して は2例 し か報告されておらず,dextranaseの構造と機能の相関は未だ不明である.また,現在 ま で にIMDの ア ミ ノ 酸 配 列 と 高 い 相 同性 を 有 す る タ ン パ ク 質 は デー タベー ス上 に は存在しないため,近縁酵素を用いたタンパク質構造の類推は困難となっていた.そ のた め本 研究 では,IMDの活性アミノ酸残基の特定と立体構造の推定を目的とした・

(1)imd遺 伝 子 の 大 腸菌 発 現 系 の 構 築 とIMDの 加 水分 解 反 応 の 触 媒 部 位 の 特 定

  以降 の実験 にお いて 酵素 の調製等の迅速化を図るため,imd遺伝子の塩基配列情報 を 改 定し, 大腸 菌で のimd遺 伝子 の大量 発現 系を 構築 した .続 いて ,部 位特 異的 変 異導入法を用い,加水分解を直接触媒するカルボキシル基を有するアミノ酸残基の特 定を試みた.IMDのアミノ酸配列を,Glycoside hy(h・olasefamily(GHfamily)27に属 している立体構造既知の丗galactosidase(GAL)と〃‐aCeぢllQ‐D‐galactosaminidase

(NAG)の アミ ノ酸 配列 と整 列さ せた.8つ のア スパ ラギ ン酸 残基と1つ のグ ルタ ミ ン 酸 残基が すべ ての 酵素 で保 存さ れて いた .こ れら9ケ所 のア ミノ 酸残 基を アラ ニ ン ヘ 置 換 し た 変 異 酵 素 を 作 製 し たとこ ろ,227と342番目 のア スパ ラギ ン酸 をア ラ

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ニ ン に 置 換 し た 変 異 酵 素 (D227A お よ びD342A) は活性 を示 さな かっ た. また ,D227 およ びD342 を アス パラ ギン ,グ ルタ ミン 酸お よび グルタ ミンに置換した変異酵素を 作 製 し た が , い ず れ も 活 性を 検 出 で きな かっ た.さ らに ,こ れら の変 異体 をCD ス ペクトル分析したところ,変異導入による大きな構造の変化は認められなかったこと か ら , D227 お よ び D342 が IMD の 触 媒 ア ミ ノ 酸 残 基 で あ るこ と が 明 らか とな った .

( 2 ) Sphingobacterium sp . 由来 新規 デキ ストラン分解タンパク質(DIIP) の酵素      化 学的 特性 と活 性ア ミノ 酸残 基の 特定

  Sphingob ロ cterium sp. V‑54 株 の ゲ ノ ム DNA 中に 見いだ され たIMD と 高い 相同 性 (40 % の 一 致 性 ) を 示す オ ー プ ン リ ー デ ィ ン グ フレ ーム(ORF) の機 能を 明ら かに す る 目的 で, 大腸菌組換えタンパク質を調製した.種々の解析から,この組換えタンパ ク 質 が , デ キ ス ト ラ ン を endo 型 に 加 水 分 解 す る 新 規 配 列 を 有 す る dextr 鰤 ase

(deXtranb ′droly 五ngprotein ;DHP )であることを明らかにした.また,DHP の触媒ア ミ ノ 酸 残 基 の 特 定を 試み た. GAL , NAG およ びIMD の触 媒ア ミノ 酸残 基の 情報 から , DHP の D201 , D270 お よび D318 を ア ラ ニ ン に 置 換 し た 変 異 酵 素 を 作 製 し た と ころ , D270 お よ び D318 を 置 換 し た 酵 素 に は 活 性 が 見い ださ れな かっ たこ とか ら, これ ら がDHP の触媒アミノ酸残基であると考えられた.

(3 )IMD のC 末端ドメインの機能の解明

  IMD の C 末 端領 域 に 見 い だ さ れ た Carbohydrate binding module family6(CBM6) と 相 同 な 推 定ド メ イ ン 構 造 の 機 能 を 推 定 した. IMD のC 末 端欠 失酵 素の 作製 を試 み た が , 発 現タ ンパク 質を 得る こと はで きな かっ た. DHP に はこ の配 列は 存在 しな い こ と か ら , IMD の C 末 端 領 域 を DHP の C 末 端 に 付 加 し た キ メ ラ 酵 素 を 作 製 し た . 精製 した キメ ラ酵 素は ,デキ スト ラン をendo 型 に加 水分 解し た.また,デキストラ ン に 対 す る 速 度 パ ラ メ ー タ ー を 算 出 し た と こ ろ , DHP と 同 じ Km 値 を 示 し たが , Vmax は DHP の 5 倍 以 上 で あ っ た . こ れ ら の こ と か ら , IMD の C 末 端 領 域 は 基 質 の 親 和 性や 反応様 式に は影 響せ ず, デキ スト ラン に対 する CBM と して ,触 媒活 性 を上 昇さ せる 機能 をも っと考 えら れた .

   以 上 の 知 見な ら び に IMD の 構 造 予 測 の 結果 か ら , IMD は 3 つ の ド メ イ ン( ドメ イ ン1 , 2 お よび 3 )か ら構 成さ れて いる と推 定し た. ドメイ ン1 は(p/a)8 ‑ バレル構造 を 持 っ 触 媒 ド メ イ ン と し て 機 能 し , ド メ イ ン 3 は CBM と し て デ キ ス ト ラ ン との 相 互作 用に 関与 する と考 えられ たが ,p ‐ス 卜ラ ンド のみか らな るドメイン2 の機能は

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不明のままである.今後,ドメイン構造のシヤッフルなどにより,糖質加水分解酵素

の種々のドメインの機能が明らかになり,また,新しい機能を持つ酵素の創製などが

可能になることが期待される.

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    松井博和 副 査    教授    横田    篤 副 査    教授    木村淳夫 副査   助教授   伊藤浩之

学 位 論 文 題 名

Arthrobacter globiforynis T6 由来isomalto‑dextranase の 活性部位の特定および構造と機能に関する研究

  本 論 文 は , 図38, 表14, 引 用 文 献115を 含 み ,6章 か らな る 総 ぺー ジ117の 和 文 論文 である.別に参考論文3編が添えられている.

  デ キ ス ト ラ ン 加水 分 解 酵素 は , デ キス ト ラ ンに 対 す る加 水 分 解様 式 の 相違 に よ り,

endo‑dextranaseとexo‑dextranaseに大別される.isomalto‑dextranase (IMD; EC 3.2.1.94)は,

土壌細菌Arthrobacter globiformis T6株が菌体外に生産するデキストラン加水分解酵素であ り, デ キ ス トラ ン の非 還元末端 から2番目のa‑l,6グル コシド結 合を順 次加水分 解し,伽 イソマ ルトース を遊離 するexo‑dextranaseである.アミノ酸配列の相同性に基づく糖質加水 分解 酵 素 の 分類 で は,IMDはglycosidehydrolaSc贓ly27(GH27)に属し ている, しかし , GH27の他のメンバーであるa‐gmactosidaSc(GAL)やN.ace炒1‐a ̄gmactosamimdase糾AG) と の 相 同 性 は 高 く な い ( 最 大 で も19% の 一 致 性) .dceGALやcmckenNAGの 立 体構 造 は 解析さ れている ものの ,相同性 の低さか ら分子 モデリン グによるIMDの構造予測は難しい,

本研究 では,IMDの構 造と機能 に関する 基礎的 知見を得 ることを目的とし,触媒に直接関与 する活性アミノ酸残基の特定とドメイン構造の推定を行った.

(1) fmd遺 伝 子 の 大 腸 菌 発 現 系 の 構 築 とIMDの 加 水 分 解 反 応 の 触 媒 部 位 の 特 定   IMDをコ ー ド する 遺 伝 子をpET‐23ベク タ ー に組 込 み , 組換 えIMDを 効 率的に 生産す る 系 を 構 築 し た . 精 製 し た 組 換 えIMDは ,AガD6ゆ 册 ぬT6培 養液 か ら 調製 し た 天然 型IMD と 同 様 の 酵 素 化 学 的 性 質 を 示 し た た め , こ の 系 を 以 降 の 実 験 で 使 用 し た .   多くの 糖質加水 分解酵 素では,活性解離基はアスパラギン酸あるいはグルタミン酸のカル ボ キ シ ル 基 で あ る こ と が 知 ら れ て い る .GH27の 轟ceGALとchjckenNAGで は 立体 構 造 か ら, 活 性 ア ミノ 酸 残 基と し て2つ の ア スパ ラ ギン 酸が特 定されて いる.IMDに関 しては,

反応速 度論的解 析から2つの カルボキ シル基 が活性解 離基であることが報告されているが,

特 定 に は 至 っ て い な い . そ こ で ,IMDの ア ミ ノ 酸 配 列 をdceGALお よ びcmckenNAGと 整列 さ せ た とこ ろ ,8カ 所 の アス パ ラ ギン 酸 残 基と1カ 所の グ ル タ ミン 酸 残基が3者で 保 存され ていた. これら をアラニ ンに置換 した変 異酵素を 作製し たところ ,227と342番目の アスパ ラギン酸 をアラ ニンに置 換した変 異酵素 (D227Aお よぴD342A)は, デキス トラン水

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解 活 性 を 示さ な か った . ま た,D227お よ びD342を ア ス パ ラギ ン ,グルタ ミンな らびにグ ル タ ミ ン 酸に 置 換 した 変 異 酵素 も 活 性を 示 さ なか っ た ,さ ら に ,D227Aお よぴD342A変異 酵 素 をCDス ペクトル 分析に 供したと ころ,変 異導入 による大 きな構 造の変化 は認め られな か った, これらの ことから,IMDのデキストラン水解反応における活性アミノ酸残基は,D227 およびD342であることが明らかとなった.

(2) Sphingobacterium sp.由来 新規デキ ストラン 分解タ ンパク質(DHP)の 酵素化学的特性と 活性アミノ酸残基の特定

  多分岐デ キストラ ン加水分解酵素生産菌として分離されたSphingobacterium sp. V‑54株の ゲ ノ ムDNA上 ,IMDと 高 い 相 同 性 ( アミ ノ 酸 レベ ル で40% の 一 致性 ) を 示す オ ー プン リ ー デ ィ ン グフ レ ー ムを 見 い だし た . この遺伝 子にコ ードされ たIMD相同タン パク質 の機能 を 明 ら か にす る た め,pET‑23ベク タ ーにIMD相同 タンパク 質をコ ードする 領域を 組込み,

組 換えタ ンパク質 として 発現させ た.精 製した組換えタンパク質が,デキストランを加水分 解する新規のdextranase (dextran hydrolyzing protein; DHP)であることを明らかにした.また 種 々の多 糖および オリゴ糖に対する水解活性を検討した結果,Dextran T2000ならぴに重合度 6以上 のイソマ ルトオ リゴ糖に 対しては 生成物 を与えた が,そ の他の糖 質については生成物 が 検出さ れなかっ た,  Dextr.孤他000を基質としたときの加水分解生成物をTLCで調べたと こ ろ,グ ルコース および イソマル トオリ ゴ糖を与 えたため ,DHPはデキス トランに対し開あ 型 に 作用 す る と 考え ら れ た, ま た ,dceGALお よぴIMDの 活 性 ア ミノ 酸 残 基の 情 報 から , DHPのD201,D270お よ びD318を ア ラ ニ ン に 置 換 し た 変 異 酵 素 を 作製 し た とこ ろ ,D270 お よ びD318に対 す る 変異 酵 素 には 活 性 が見 い だ され な か った こ と か ら, こ れ ら2残 基 が DHPの活性アミノ酸残基であると考えられた.

(3)IMDのC末端ドメインの機能の解明

  MDのC末 端 領 域 に は ,DHPに 存 在 し な いcarbohydrateb恥ingmodule価mly6お よ び 35(CBM6&CBM35)と相同性を示す領域が存在する,この領域の機能を明らかにする目的で,

IMDのC末 端 領域 を 欠 失さ せ た3種 類 の 変異 酵 素 の作 製 を 試み た が , いず れ も 可溶 性 画 分 と し て発 現 タ ン パク 質 を 得る こ と がで き な かっ た , そこ で ,IMDの .C末 端 領 域をDHPの C末端 側に付加 したキ メラ酵素 を作製し た.精 製したキメラ酵素は,デキストランをP門あ型 に 加 水 分 解し た こ とか ら ,IMDのC末 端 領 域は 加 水 分解 の 作 用 様式に 影響しな いと考 えら れ た.ま た,この キメラ 酵素のデ キスト ランに対する速度パラメーターを算出したところ,

DHPの 野 生 型 酵 素 と 同 じR値 を 示 し た 一 方 で , 臨 ″ はDHPの5倍 以 上 の 値 を 示 し た . こ れ ら の こと か ら ,IMDのC末 端 領域 は 基 質の 親 和 性や 反 応 様 式には 影響せず ,デキ スト ランに対する触媒効率を上昇させる機能をもっと考えられた,

(4)IMDのドメイン構造の予測

  以 上 の 知 見 な ら ぴ にIMDの 構 造 予 測の 結 果 から ,MDは3つ の ドメ イ ン (ド メ イ ン1,2 および3)から構成されていると推定した.ドメイン1は(B/a)8‐バレル構造を持つ触媒ドメ イ ン と し て機 能 し ,ド メ イ ン3は デ キス ト ラ ンと の 相 互作 用 に 関与す るCBM様 ドメイ ンと し て機能 すると考 えられ たが,B‐スト ランド のみからなるドメイン2の機能は不明のままで ある.

  本 研 究 では , は じめ てIMDと 相 同性 を 示 すタ ン パ ク質(DHP)を見 いだし ,デキス トラン 水解活 性をもっ ことを 明らかに した.また,両酵素の活性アミノ酸残基を遺伝子工学的手法 を 駆使 し 特 定す る と とも に , ドメ イ ン 構造 を 推 定し た .さらに ,IMDのC末 端領域に はじ めてデ キストラ ンと結 合するド メインの存在を証明した.これらの成果は学術的に高い価値

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をもっだけでなく,今後,ドメイン構造のシャッフルなどによる新しい機能を持つ酵素創製 が 期 待 さ れ , タ ン パ ク 質 工 学 的 な 応 用 へ も 大 い に 貢 献 す る も の と 判 断 し た ,   よって審査員一同は,申請者である栃原孝志氏が博士(農学)の学位を受けるに十分な資 格を有すると認めた.

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参照

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