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博士(歯学)加藤昭人 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)加藤昭人 学位論文題名

1 壁性骨欠損における歯根象牙質表面への BMP ― 2 塗布による歯周組織再生効果

学位論文内容の要旨

【緒言】

  これまでにBMP‑2を塗布した象牙質片をラット口蓋結合組織内に移植すると,象牙質表面に セメン卜質様硬組織が形成されたことが報告されている。このことから,BMP‑2を根面に塗布 する方法により,硬組織形成能が低い歯肉結合組織が根面に増殖してもセメント質が再生できる 可能性が示唆された。さらに,BMP‑2を根面に塗布する方法をイヌ裂開状骨欠損に応用した研 究では,接合上皮の深部増殖が抑制され,根面にセメント質様硬組織が形成されただけでなく,

同時に歯根膜や歯槽骨の再生も高められたことが報告されている。そこで本研究では,臨床応用 に向けて,裂開状骨欠損に比べて周囲に残存している歯周組織が少なく,再生が困難な欠損形態 である1壁性骨欠損において,歯根象牙質表面にBMPー2を塗布することが歯周組織再生に及ぼ す効果を病理組織学的に評価した。

【材料と方法】

  実験動物にはビーグル犬(雌,12 ¥‑16カ月齢)7頭を使用し,被験部位は下顎第二前臼歯近心 根と遠心根,およぴ第四前臼歯近心根の計42部位とした。前準備として下顎第一前臼歯と第三 前臼歯の抜歯を行った。抜歯後7週よルスケーリングとブラッシングによる機械的清掃と,0.2% グルクロン酸クロルヘキシジンによる化学的清掃を行い,臨床的に健康な歯周組織を確立した。

  抜歯から8週経過時に,全身麻酔下で被験部位の頬側および舌側の歯肉歯槽粘膜を部分層弁で 剥離して骨膜を除去し,セメントエナメル境から高さSmm,近遠心幅3mm,歯根の頬,舌側が 歯根中央部まで露出する1壁性骨欠損を作製した。露出した根面の歯根膜とセメント質を除去し,

最根尖側とセメントエナメル境にノッチを付与した。その後,24%EDTAで根面を3分間脱灰し,

生理 食塩水で根面の洗浄を行った。次にBMP群ではBMP‑2(1000yg/ml,アステラス製薬)を 根 面 に塗 布 し, 未 塗布 群 ではBMP‑2の塗 布 を行 わ ずに歯肉 歯槽粘膜弁 を復位縫合 した。

  手術 後3日 問 アン ピシリンナ トリウム(300mg/kg)を1日1回投与し, 術後7日 目に抜糸を 行った。その後,1週間に2回の割合でブラッシングによる機械的清掃と0.2%グルクロン酸ク ロ ル ヘ キ シ ジ ン に よ る 化 学 的 清 掃 を 行 い , 必 要 に 応 じ て ス ケ ー リ ン グ を 行 っ た 。   4週および8週の観察期間終了後に観察部位を摘出し,10%ギ酸クエン酸ナトリウム溶液で8 週間脱灰し,厚さ約6p,mの近遠心的縦断連続切片を作製した。その後ヘマ卜キシリン・エオジン 重染色を行い,光学顕微鏡を用いて病理組織学的観察と組織学的計測を行った。組織学的計測で

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は,各部位の歯根中央部の切片と中央部から頬舌方向にそれぞれ180ym離れた切片の計3枚を 選択して計測を行った。組織学的計測項目は,歯槽骨新生率,セメント質新生率,接合上皮深部 増 殖 率 , 骨 性 癒 着 率 と し , 統 計 学 的 分 析 に はMann‑WhitneyのU検 定 を 用 い た 。

【結果】

  1.病理組織学的観察結果   11未塗布群4週

  骨欠損部の大部分は結合組織によって満たされており,新生骨と新生セメント質が既存の歯 槽骨とセメント質に連続して,ごくわずかに根尖側ノッチ付近に形成されているのが観察され た 。 接 合 上 皮 の 深 部 増 殖 は 歯 冠 側 ノ ッ チ を 越 え て い た も の が 多 か っ た 。   2) BMP群4週

  骨が根面に沿って歯冠側方向に伸ぴており,欠損の半分程度まで新生骨の形成が認められた。

新生骨は幼弱な線維骨であり,骨梁間に多数の骨髄形成が観察された。また,既存のセメント 質と連続した新生セメント質形成が認められ,歯冠側の一部には既存のセメント質とは連続し な い セメ ン ト質 様 硬組 織 の形 成 が 認め ら れた 。 骨性 癒 着は 骨 頂部 で一部 観察された 。   3)未塗布群8週

  骨欠損底部で骨形成が認められたものの,多くの部分は結合組織によって満たされていた。歯 冠側ノッチ部では,接合上皮の深部増殖を認めた。

  4) BMP群8週

  新生骨が骨欠損底部だけでなく,さらに厚みの薄い骨が根面に沿って歯冠側ノッチ付近まで形 成されているのが観察された。また,BMP群4週に比べて骨梁の緻密化が認められた。新生セ メント質は,BMP群4週と比較して厚さが増大しており,歯冠側では既存のセメント質とは連 続しないセメント質様硬組織が一部に認められた。接合上皮の深部増殖は少なく,骨性癒着は BMP群4週 と同 様 に主 に 骨頂 部 で観 察 され た 。歯 根 吸収 は ほ とん ど 認められな かった。

  2.組織学的計測結果

  歯槽骨新生率は,4週では未塗布群17.0土6.0%,BMP群62.0士15.2%,8週では未塗布群32.2 士15.1%,BMP群70.0士12.9%で,BMP群は有意に大きかったゆく0.01)。セメント質新生率は,

4週では未塗布群7.0土5.4%,BMP群32.7土14.4%,8週では未塗布群13.4士10.6%,BMP群45.4 士10.0%で,BMP群は有意に大きかったゆく0.01)。また,接合上皮深部増殖率は,4週では未 塗布群:19.7土19.0%,BMP群:4.3土6.2%で,両群間に有意差は認められずゆ冫0.05),8週で は未塗布群8.4土10.0%,BMP群1.3士3.1%で,BMP群は有意に小さかったゆく0.05)。骨性癒 着 率は,4週では未塗 布群O% ,BMP群11.6土1813%で,BMP群は有意に大きくゆく0.05),8 週 で は 未 塗 布 群O%,BMP群13.1土10.0% で ,BMP群は 有 意に 大 きか っ たゆ くO.Ol)。

【考察】

  BMP群では未塗布群と比較して有意に多くの歯槽骨再生が認められ,また再生した歯槽骨の 形態は,両群で大きな差異が観察された。未塗布群では骨欠損部の大部分は結合組織によって満 たされ,新生骨は既存骨から連続してわずかに形成されていたのに対し,BMP群では新生骨が 既存骨から連続して形成されていただけでなく,さらに歯冠側ー歯根に沿った薄い骨が形成され ていた。この歯根に沿った骨新生は,根面から徐放されたBMP‑2が根面付近で高い濃度を維持

(3)

して新生骨形成に作用したためと考えられた。

  セメント質新生率において,BMP群は未塗布群と比べて有意に大きかったことから,BMP‑2 を根面に塗布することは,1壁性骨欠損においてもセメント質形成を促進することが明らかにな った。BMP群の新生セメント質の多くは既存のセメント質から連続して形成されていたが,既 存のセメント質とは連続しないセメント質様硬組織も歯冠側の一部に認められた。これは根面に 付着増殖した歯肉結合組織の硬組織形成能がBMP‑2によって上昇したことにより,既存のセメ ン ト 質 と は 連 続 し な い セ メ ン ト 質 様 硬 組 織 が 形 成 さ れ た も の と 考 え ら れ た 。   BMP‑2を根面に塗布することで接合上皮の深部増殖が抑制された。これまでにBMP‑2を歯周 組織再生に応用した多くの研究においても,接合上皮の深部増殖抑制が報告されている。本研究 の歯周組織再生には,接合上皮の深部増殖抑制も重要な役割を果たしていると考えられた。

  以上より,根面にBMP‑2を塗布する方法は,1壁性骨欠損においても歯周組織再生に有効で ある可能性が示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

1 壁性骨欠損における歯根象牙質表面への   BMP − 2 塗布 に よる 歯 周 組織 再 生効 果

  審 査 は 主 査 , 副 査 全 員 が 一 同 に 会 し て 口 頭 で 行 っ た 。 は じ め に 申 請 者 に 対 し , 本 論 文 の 要 旨 の 説 明 を 求 め た と こ ろ , 以 下 の 内 容 に つ い て 論 述 し た 。

  こ れ ま で にBMP‑2を 塗 布 し た 象 牙 質 片 を ラ ッ ト 口 蓋 結 合 組 織 内 に 移 植 す る と , 象 牙 質 表 面 に セ メ ン ト 質 様 硬 組 織 が 形 成 さ れ た こ と が 報 告 さ れ て い る 。 こ の こ と か ら ,BMP‑2 を 根 面 に 塗 布 す る 方 法 に よ り , 硬 組 織 形 成 能 が 低 い 歯 肉 結 合 組 織 が 根 面 に 増 殖 し て も セ メ ン ト 質 が 再 生 で き る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 さ ら に ,BMP‑2を 根 面 に 塗 布 す る 方 法 を イ ヌ 裂 開 状 骨 欠 損 に 応 用 し た 研 究 で は , 接 合 上 皮 の 深 部 増 殖 が 抑 制 さ れ , 根 面 に セ メ ン ト 質 様 硬 組 織 が 形 成 さ れ た だ け で な く , 同 時 に 歯 根 膜 や 歯 槽 骨 の 再 生 も 高 め ら れ た こ と が 報 告 さ れ て い る 。 そ こ で 本 研 究 で は , 臨 床 応 用 に 向 け て , 裂 開 状 骨 欠 損 に 比 べ て 周 囲 に 残 存 し て い る 歯 周 組 織 が 少 な く , 再 生 が 困 難 な 欠 損 形 態 で あ る1壁 性 骨 欠 損 に お い て , 歯 根 象 牙 質 表 面 にBMP‑2を 塗 布 す る こ と が 歯 周 組 織 再 生 に 及 ぼ す 効 果 を 病 理 組 織 学 的 に 評 価 し た 。

  実 験 動 物 に は ビ ー グ ル 犬 ( 雌 , 12 ‑v16カ 月 齢 )7頭 を 使 用 し , 被 験 部 位 は 下 顎 第 二 前 臼 歯 近 心 根 と 遠 心 根 , お よ ぴ 第 四 前 臼 歯 近 心 根 の 計42部 位 と し た 。 前 準 備 と し て 下 顎 第 一 前 臼 歯 と 第 三 前 臼 歯 の 抜 歯 を 行 っ た 。 抜 歯 か ら8週 経 過 時 に , 被 験 部 位 の 頬 側 お よ び 舌 側 の 歯 肉 歯 槽 粘 膜 を 部 分 層 弁 で 剥 離 し て 骨 膜 を 除 去 し , セ メ ン ト エ ナ メ ル 境 か ら 高 さ Smm, 近 遠 心 幅3mm, 歯 根 の 頬 , 舌 側 が 歯 根 中 央 部 ま で 露 出 す る1壁 性 骨 欠 損 を 作 製 し た 。 露 出 し た 根 面 の 歯 根 膜 と セ メ ン ト 質 を 除 去 し , 最 根 尖 側 と セ メ ン ト エ ナ メ ル 境 に ノ ッ チ を 付 与 し た 後 ,24EDTAで 根 面 を3分 間 脱 灰 し , 生 理 食 塩 水 で 洗 浄 を 行 っ た 。 次 に BMP群 で はBMP‑21000yg/ml, ア ス テ ラ ス 製 薬 ) を 根 面 に 塗 布 し , 歯 肉 歯 槽 粘 膜 弁 の 復 位 縫 合 を 行 っ た 。 未 塗 布 群 で は 根 面 の 脱 灰 後BMP‑2を 塗 布 せ ず に 縫 合 を 行 っ た 。4 お よ ぴ8週 の 観 察 期 間 終 了 後 , 観 察 部 位 を 摘 出 し , 通 法 に 従 い 厚 さ 約6岬 の 近 遠 心 的 縦 断 連 続 切 片 を 作 製 ,HE染 色 を 行 い , 病 理 組 織 学 的 観 察 と 組 織 学 的 計 測 を 行 っ た 。 組 織 学

光 人

雅 正

浪 村

川 田

授 授

教 教

査 査

主 副

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的計測項目は,歯槽骨新生率,セメント質新生率,接合上皮深部増殖率,骨性癒着率と し,統計学的分析にはMann‑WhitneyのU検定を用いた。

  未塗布群では,骨欠損部の大部分は結合組織によって満たされ,新生骨は骨欠損底部 に形成されていた。BMP群では,骨欠損部に新生骨が観察され,根面に沿った薄い骨が 歯冠側ノッチ付近まで形成されていた。また,新生セメント質が多く認められ,一部に 既 存 の セ メ ン ト 質 と は 連 続 し な い セ メ ン ト 質 様 硬 組 織 も 観 察 さ れ た 。   歯槽骨新生率は,4週では未塗布群17.0土6.0%,BMP群62.0士15.2%,8週では未塗布 群32.2士15.1%,BMP群70.0土12.9%で,BMP群は有意に大きかったゆく0.01)。セメ ント質新生率は,4週では未塗布群7.0土5.4%,BMP群32.7土14.4%,8週では未塗布群 13.4士10.6%,BMP群45.4土10.0%で,BMP群は有意に大きかったゆく0.01)。また,接 合上皮深部増殖率は,8週では未塗布群8.4土10.0%,BMP群113土3.1%で,BMP群は有 意に小さかったゆく0.05)。骨性癒着率は,4週では未塗布群O%,BMP群11.6士18.3% で,BMP群は有意に大きくゆく0.05),8週では未塗布群0%,BMP群13.1土10.0%で,

BMP群は有意に大きかったゆく0.01)。

  以上より,本研究のような歯周組織欠損の大きい1壁性骨欠損においてもBMP‑2を根 面に塗布することが,新生骨や新生セメント質の形成を促進し,接合上皮の深部増殖を 抑 制す るこ とが明 らか とな り,歯 周組 織再 生に有効である可能性が示唆された。

  引き続き審査担当者と申請者の間で,論文内容及ぴ関連事項にっいて質疑応答がなさ れた。主な質問事項として,

    ( 1) 従 来 の 歯 周 治 療 後 の 1壁 性 骨 欠 損 の 治 癒 形 態 に っ い て     (2)観察期間を4週、8週に設定した理由にっいて

    (3)未塗布群の欠損部を満たしている結合組織中の細胞成分が少ないことについて     (4)BMP群の新生セメント質周囲にセメント芽細胞がみられないことについて   (5)BMP群の根面と新生骨の間の疎な結合組織にっいて

    (6)BMP‑2と bFGF, BMP‑2と コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ の 併 用 法 に つ い て などであった。

  これらの質問に対し,申請者は適切な説明によって回答し,本研究の内容を中心とし た専門分野はもとより,関連分野にっいても十分な理解と学識を有していることが確認 された。本研究は再生が難しいとされている1壁性骨欠損において,歯根象牙質表面に BMP‑2を塗布する方法が,歯周組織再生に有効であることを示し,今後の歯周組織再生 療法において重要な指針を与えたことが高く評価された。本研究の内容は,歯科医学の 発展に十分貢献するものであり,審査担当者全員は,学位申請者が博士(歯学)の学位 を授与するのに値するものと認めた。

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