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不安における脳内cholecystokinin の関与について 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 泉    剛

     学位論文題名

不安における脳内cholecystokinin の関与について 学位論文内容の要旨

   最近、和 11 経ベプチドであるcholecystokinin (CCK) が内在性の不安関連物質とし て注 目 され て いる 。 本論 文 では 、 CCK と 不安 の 関連 に つい て 検討 を試みた 。   CCK は58fI 司のアミノ酸基よりなるペブチドとして産生され、体内でsulphated CCK8 (CCK8S) や CCK4 などの断 片に分解さ れる。 CCK の受容体と して CCKA 受容体 と CCKB 受 容 体 が 区 別 さ れ て い る 。 CCK8S に よ る 海 馬 細 胞 の 発 火 が benzodiazepine に よって抑制されることから、脳内CCK 受容体の活性化が不安を 惹起することが予想され、実際、ヒトに対する CCK4 の静脈内投与はバニック様発 作を弓|き 起こした。 また CCK4 や CCK8S の投与は、 elevated plus‑maze test や conflict test などの不安の動物モデルで不安増強を示し、非ベプチド性CCK 受容 体拮抗薬の投与は抗不安効果を示した。これらの研究でCCK が不安と関連している ことが示されたが、いくっかの問題点がある。ひとっはぺプチドである CCK を末梢 投与した場合、それらが血液脳関門を通過するかどうかという問題である。また、

CCK 受容体のサブタイプのうち、 A と B のいずれが不安に関与しているのかという問 題がある。抗不安作用が認められている CCK 拮抗薬はB 受容体に親和性が高いとい う報告が 多いが、 A 受容体 拮抗薬が抗 不安作 J1 ]を示 したという 報告もある 。    筆者はこれらの問題点を解決するため、非ペプチドの選択的なCCKB 受容体拮抗薬 である LY288513 、比較 的選択的な CCKA 受容体拮抗薬である lorglumide 、および IlI 枢に移行しない末梢性のCCKA/B 受容体拈抗薬である loxiglumide の急性投与が、

不安の動物モデルであるラットのconditioned fear stress (CFS) に及ぼす効果に ついて倹討した。CFS は footshock を負荷してショック箱に条件付けを行ったラッ トを、再度同じショック箱に入れる操作によって惹起される心理的ストレスである。

ラットは危険や苦痛を予測し、無動のまま休をすくませる防御行動(freezing )をと るが、この行動は抗不安薬の投与で拮抗される。

   結果である が、選択的 CCKB 受 容体拮抗薬 である LY288513 (0.03 ‐ 0.3 mg/kg) のfootshock30 分前の投与は24 時間後の CFS 試験 Il 寺における freezing の出現を有 意に扣 J 制した。 footshock5 分後の投与がfreezing の出現に影響しなかったことか ら、 footshock30 分 前の LY288513 投 与の効果は 、CFS の時 まで24 時間続 く長期 効果によるものではないと考えられる。また、 freezing の出現を有意に抑制した 0.3 mg/kg のJU 置カ;オ訂ji に影響しなカ)ったことカ)ら、footshoc た3 〇分前の

338―

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LY288513投′チによるfreezingのirll'iIJU効果は、飽|'j市f1〓J1・Jによるものではないと考え らj1る 。 した カsって 、LY288513の投fメはconditioned fearのj隻f廿過tl!をIjltlIニし た も の と 考 え ら れ る 。LY288513(0.03‑0.3 mg/kg)のCFS30分 前 の 投 与 も ま た 、 freezingの 出 現 を 有 意 に 抑 制 し た 。LY288513の0.3 mg/kgの 投 与 は 自 発 運 動 量 に 景 彡 響 し な か っ た こ と か ら 、 自 発 運 動 量 亢 進 に よ る 非特 異 的 効果 は 除 外で き る 。こ れ ら の 結 果 は 、LY288513の 投 与 がconditioned fearの 発 現 過 程 を 阻 止 し た こ と を 意味 し 、 この 効 果 は抗 不 安 作川 で あ ると 考 え ら れる 。 一 方、 比Il皎 的 選 択的 なCCKA一 受 容 体 拈 抗 薬 で あ るlorglumideのCFS30分 わ む の 投 与 は 、1.0 mg/kgのJ1] 量 で の み 有 意 にfreezingを 抑 制 し た 。lorglumideはCCKA受 容 体 拮 抗 薬 で あ る が 、in vitro の 受 容 体 結 合 実 験 で 、LY288513のCCKB受 容 体 阻 害 能 の 約30分 の1のCCKB受 容 体 m害 能 を 有 し て お り 、lorglumidel.0 mg/kgの 月 亅 量 はCCKB受 容 体 阻 害 能 か ら い え ばLY288513のfreezingに 対 す る 最 小 有 効 用 量 で あ る0.03 mg/kgに 相 当 す る 。 つ ま りlorglumidel.0 mg/kgで の 効 果 はCCKB受 容 体 阻 害 を 介 す る と 考 え て も 矛 盾 し な い 。 ま たr|J枢 に ほ と ん ど 移 行 し な い こ と が 確 認 さ れ て い るCCKA/B受 容 体 拮 抗 薬 で あ る |oxiglumideの 投 与 は 、30 mg/kgの 高 用 量 で もfreezingに 影 響 し な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 末 梢 のCCKAお よ びCCKB受 容 体 は 抗 不 安 作 用 に 関 与 し て い な い こ と を示 唆 す る。 以 上 より 、 [ |ゴ 枢 のCCKB受 容体 が 不 安に 関 与 して い る と考 え ら れる。

  次 に 、 ス ト レ ス 時 に お け るCCK受 容 体 拮 抗 薬 の 脳 内 モ ノ ア ミ ン 系 に 対 す る 効 果 を 調 べ る た め 、CCK受 容 体 拮 抗 薬 投 与 時 の ラ ッ ト の 脳 内 モ ノ ア ミ ン 代 謝 を 高 速 液 体 ク 口 マ ト グ ラ フ イ ー(HPLC)を 用 い て 測 定 し た 。  LY288513のconditioned fear群 と 非conditioned fear群 に 対 す る 投 与 で は 、LY288513投 与 に よ っ て 内 側 前 頭 前 野 の5‑HT、 側 坐 核 のDA、DOPAC、HVAの 増 加 が 認 め ら れ 、2元 配 置 分 散 分 析 で 交 互 作JHが な い こ と か ら 、CFSに 関 係 し な いLY288513単 独 の 効 果 で あ る と 考 え ら れ た 。 ま たCFSに よ っ て 側 坐 核 、 線 条 体 、 扁 桃 体 、 海 馬 のDOPAC、 内 側 前 頭 前 野 、 側 坐 核 、 線 条 体 のHVA、 内 側 前 頭 前 野 、 扁 桃 体 の5‑HIAAが 増 加 し 、2元 配 置 分 散 分 析 で 交 互 作 用 が な い こ と か ら 、LY288513投 与 に 関 係 し な いCFS単 独 の 効 果 で あ る と 考 え ら れ た 。CFSとLY288513投 与 の 交 互 作 用 は 内 側 前 頭 前 野 のDOPACで 認 め ら れ 、CFSて 内 側 前 頭 前 野 のDOPACが 増 カ 口 し た が 、LY28851投 与 に よ っ てCFSに よ るDOPAC増 カuカsさ ら に 増 強 し た 。 し た カsっ て 、 内fJW前 頭 前 野 のDOPAC増 加 カs LY288513の抗不安作用と関連している可能性が示唆される。

  さ ら にfootshock負 荷 時 の ラ ッ ト の 内 側 前 頭 前 野 、 側 坐 核 、 線 条 体 、 扁 桃 体 、 海 J罵 、l11心 灰 自 質 で のCCK8Sの 含 量 をradioimmunoassay(RIA) で 定 量 し た 。 こ の う ち 、 扁 桃 体 でCCK8S含 量 の 低 下 が 認 め ら れ た 。 こ の 結 果 か ら 、 ス ト レ ス に よ っ て CCK8Sの シ ナ プ ス 間 隙 へ の 放 出 お よ び 代 謝 が 増 加 し てCCK8Sが 枯 渇 し た 可 能 性 と 、 CCKの 合 成 自 体 が 低 下 し た 可 能 性 が 考 え ら れ る が 、 ラ ッ ト の 断 頭 は ス ト レ ス 負 荷 を

‖ ‖ 始 し て か ら30分 後 に 行 わ れ て お り 、 時 間 経 過 か ら前 者 の 可能 性 が 高い も の と思 わ れ る 。 こ れ は 、 不 安 に お い て 扁 桃 体 のCCKが 関 与 し て い る こ と を 示 唆 し て い る 。   以 上 よ り 、cholecystokininB (CCKB) 受 容 体 拮 抗 薬 が 抗 不 安 作 用 を 有 す る こ と

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を示し、同薬物の作用が、内側前頭前野のdopamine 代謝の亢進と関連している可

能性を示唆した。さらにストレス時の脳内CCK 含量の検討から、扁桃体もCCK の不

安惹起作川と関迎している可能性を示した。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

不安における脳内cholecystokinin の関与について

   最近、神経ベプチドであるcholecystokinin (CCK) が内在性の不安関連物質とし て 注 目 さ れ て い る 。 sulphated CCK8(CCK8S) に よ る 海 馬 細 胞 の 発 火 が benzodiazepine によって抑制されることから、脳内CCK 受容体の活性化が不安を 惹起することが予想され、実際、ヒトに対する CCK4 の静脈内投与はパニック様発 作を弓1 き起こした。またCCK4 やCCK8S の投与は不安の動物モデルで不安増強を示 し、非ベプチド性CCK 受容体拮抗薬の投与は抗不安効果を示した。これらの研究で CCK が不安と関連していることが示されたが、ベプチドであるCCK が血液脳関門を 通過するかどうか、またCCK 受容体のサブタイプのうち、A とB のいずれが不安に関 与しているかという問題が残された。筆者はこれらの問題点を解決するため、非ペ プ チ ド の 選 択 的 な CCK 受 容 体拮 抗 薬 が 、 不 安 の 動 物モ デル である ラッ トの conditioned fear stress (CFS) に 及 ぼ す 効 果 に つ い て検 討 し た 。 CFS は footshock を負荷してショック箱に条件付けを行ったラットを、再度同じショック 箱に入れる操作によって惹起される心理的ス卜レスである。ラットは危険や苦痛を 予測し、無動のまま体をすくませる防御行動(freezing) をとる。結果であるが、選 択 的 CCKB 受 容体 拮抗薬 であ る LY288513 のfootshock30 分前の投与はCFS 試験時 に おけ るfreezing の出 現を 有意に抑制した。したがって、LY288513 の投与は conditioned fear の獲得過程を阻止したものと考えられる。LY288513 の CFS30 分前の投与もまた、 freezing の出現を有意に抑制した。この結果は、LY288513 の 投与がconditioned fear の発現過程を阻止したことを意味し、この効果は抗不安作 用 で あ る と 考 え ら れ る 。 一方 、 比 較 的 選 択 的 な CCKA 受容 体 拮 抗 薬 で あ る lorglumide のCFS30 分前の投与は、高用量でのみ有意にfreezing を抑制した.

lorglumide は LY288513 の 約 30 分 の 1 の CCKB 受 容 体 阻 害能 を 有 し て お り 、 lorglumide の高用I での効果は CCKB 受容体阻害を介すると考えても矛盾しない。

中 枢に ほと んど 移行し ない ことが確認されているCCKA/B 受容体拮抗薬である 司 夫

   

   

山 野

小 菅

授 授

教 教

査 査

主 副

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loxiglumide の投与は、高用量でもfreezing に影響しなかった。以上より、中枢の CCKB 受容体が不安に関与していると考えられる。次に、ストレス時におけるCCK 受容体拮抗薬の脳内モノアミン代謝に対する効果を調ぺるため、CCK 受容体拮抗薬 投与時のラッ卜の脳内モノアミン代謝を高速液体クロマトグラフィ―を用いて測定 した。 LY288513 のconditioned fear 群と非 conditioned fear 群に対する投与 では 、 CFS と LY288513 投 与 の 交互 作 用 が 内 側 前頭 前野 のDOPAC で認め られ 、 LY28851 投与に よっ てCFS による DOPAC 増加が増強した。したがって、内側前頭 前野のDOPAC 増加が LY288513 の抗不安作用と関連している可能性が示唆された。

さらに footshock 負 荷時 のラ ットの 脳内 CCK8S の 含量 をradioimmunoassay で定 量したところ、扁桃体で含量の低下が認められた。この結果から、ストレスによっ てCCK8S のシナプス間隙への放出が増加して CCK8S が枯渇した可能性が示唆され た。これは、不安において扁桃体のCCK が関与していることを示唆している。以上 の発表に際し、質問を受け解答した。吉岡充弘教授。(1 )CCKB 受容体拮抗薬の CFS に対する効果は、記憶に対する効果ではないのか。−CFS の発現に対する効果は 抗不安効果だが、獲得については記憶に対する効果を除外できない。(2 )不安と 脳内ドーバミン系の関係は。―2 次的なものと考える。( 3 )CCKB 受容体拮抗薬 は筋弛緩や依存などの副作用を有するか。一持たない。菅野盛夫教授。(1 )CCK 作働性 ニュ ーロ ンと GABA と の関 係は 。‐CCK はGABA のCO − transmitter として 作用レている。(2 )CFS の雄雌差と経時的変化について。―雄雌差は確認していな い。CFS は獲得 2 週間 後にも保持されていた。(3 ) CCKB 受容体拮抗薬の臨床応 用について。―抗潰瘍薬として開発が進められている。(4) CFS の不安の動物モデ ルとしての有用性について。−ベンゾジアゼピン以外の抗不安薬のスクリ一二ング にも適しており、有用である。

   本研究の結果は、不安と脳内CCK の関係を明らかにするものである。また、今後、

不安の病態生理をさらに解明するのに役立つことが期待される。審査員―同は、こ

れらの成績を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を

有するものと判定した。

参照

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