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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 ) 新 美 君 枝 学 位 論 文 題 名

老イ匕促進マウスSenescence − accelerated mouse prone6 (SAMP6) の脳 高次機能に おける加 齢変化に関する研究

学位論文内容の要旨

  SAMP6の 骨 密 度 は4ケ 月 齢 で ピ ー ク 値 を 示 し 、 加齢 に伴っ てコ ント ロー ル マウ スよりも急速に骨密度が減少することから、促進老化を示す骨粗鬆症のモ デル動物とされてきた。近年、老化の指標とされる脳内Sl00ロの蓄積がS」`MP6 で加 齢に伴って増加していることが報告され、中枢神経系領域における老化モ デル 動物 とし ての可 能性 が注 目さ れて いる が、 その 検討 はあ まり進んでいな い。 そこで本研究では、1ケ月齢(若齢期)、4〜6ケ月齢(成熟期)、8〜12ケ 月 齢 ( 老齢 期 ) の ラ イフ ステー ジご とに 包括 的行 動解 析試 験を 行い 、SAMP6 の 加 齢 に 伴 う 行 動 特 性 の 変 化 と そ の メ カ ニ ズ ム を 検 討 し た 。   包 括的 行動 解析試 験に より 、対 照のS心 江R1マ ウス に比 べてS心江P6は生得 的な 高運動活性、低不安、短期記憶増加、運動協調性異常船よぴ抗鬱という行 動 特 性 を有 し て い る こと が明ら かと なっ た。SAMP6は 若齢期 から 成熟 期ま で は 高 運 動活 性 を 示 す が老 齢期で はSAMRlより も低 運動 活性を 示す こと から 、 SAMP6の 運 動 活 性 は、 骨密 度の 変化 と同 様に 成熟 期を ピーク とす る促 進老 化 パタ ーンを示すと考えられた。S」丶MP6の運動協調性にっいては、若齢期およ ぴ 老 齢 期で はSAMRlに 比べ て著 しい 異常 が認 めら れる が成熟 期で は部 分的 に 回復 する こと から、S心 岨P6は生 得的な運動協調性異常を示し、さらに成熟期 をピ ークとする促進老化パターンを示すと考えられた。ー方、低不安や抗鬱に っ い て は、 若 齢 期 を ピー クとし て加 齢に 伴っ てSAMR1との差 が減 少し たこ と から 、促進老化とは異なるパターンで加齢の影響を受ける行動特性であると考 えら れた。また、短期記憶増加にっいては明らかな加齢の影響は認められなか っ た 。 これ ら の 結 果 か ら 、SAMP6の 行動 様 式 を 対 照で あるS触江R1と 比較 し て加 齢の影響について分類すると、促進老化パターンを示す行動特性(促進老 化様 行動特性)として高運動活性および運動協調性異常、促進老化とは異なる パタ ーン の加 齢の影 響が 認め られ る行 動特 性( 加齢 依存 的変 化を伴う行動特

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性)として低不安およぴ抗鬱、明らかな加齢の影響が認められない行動特性(非 加齢依存的行動特性)として短期記憶増加、の3っに分類することが出来た。

そこで、それぞれの行動特性に関連すると報告されている脳内各部位の神経伝 達 物 質 の 含 量 、 生 合 成 酵 素 や 受 容 体 発 現 量 な ど を 測 定 し た 。   SAMP6の促進老化様行動特性のうちの高運動活性にっいて、運動機能に関 わる分子としてよく知られているドーパミンシステムに着目し、そのメカニズ ムを生化学的手法および薬理学的手法により検討した。若齢期のSAMP6の線 条体および側坐核で、ドーパミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素お よびそのりン酸化フオームの発現量が増加していることから、S」`MP6の脳内 ドーパミン量増加が示唆され、S心江P6の高運動活性に関わる生得的な異常の1 っ であると考 えられた。 また:成熟 期のSAMP6の 線条体でD1受容体の発現 量増加、D1受容体のシグナルカスケード亢進および側坐核のドーパミン含有 量増加が認められ、これらが成熟期のSAMP6の高運動活性に関わるメカニズ ムである可能性が示唆された。老齢期のSAMP6で、成熟期に比べて顕著にD1 受容体の感受性が低下していることから、この加齢に伴うD1受容体の感受性 低 下が老齢期 のSAMP6で認められる運動活性の低下に関わるメカニズムの1 つであることが示唆された。これらの結果は、SAMP6で認められた運動活性 の促進老化様変化に関わるメカニズムとしてD1受容体の感受性の変化が重要 であることを示している。また、成熟期のSAMP6で認められた小脳における D3受容体発現量増加がS心江P6の運動協調性異常に関わるメカニズムの1っで あると考えられた。

  次に、加齢依存的変化を伴う行動特性であるSAMP6の低不安およぴ抗鬱に 関わるメカニズムについて、不安や鬱などの情動に関わる分子として良く知ら れているセロトニンシステムに着目し、検討した。若齢期のSAMP6の脳幹で、

セロトニン合成の律遠酵素であるトリプトファン水酸化酵素およぴそのりン 酸化フオームの発現量が増加していることから、SAMP6の脳内セロトニン量 増 加が示唆さ れ、SAMP6の低不安およぴ抗鬱に関わる生得的な異常の1っで あると考えられた。また、成熟期のSAMP6で大脳皮質およぴ側坐核のセロト ニン含有量が増加していることから、これが成熟期のSAMP6の低不安船よぴ 抗鬱に関わるメカニズムである可能性が示唆された。

  最後に、非加齢依存的行動特性であるS心江P6の短期記憶増加に関わるメカ ニズムにっいて、短期記憶に関わることが良く知られているドーパミン、セロ ト ニン、およ びNMDA型グルタミン酸受容体に着目し、検討した。若齢期の SAMP6の線条体船よび側坐核ではドーパミン合成の律速酵素であるチロシン

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水酸化酵素およびそのりン酸化フオームの発現量が増加し、脳幹ではセロトニ ン合成の律速酵素であるトリプトファン水酸化酵素およぴそのりン酸化フオ ームの発現量が増加していることから、SAMP6の脳内ドーパミン量およびセ ロトニン量増加がSAMP6の短期記憶増加に関わる生得的な異常の1っである こと が示 唆され た。 また 、成 熟期の前脳でNMDA受容体のNR2Bサブュニツ トの発現量が増加していることから、NMDA受容体シグナルカスケード亢進 もまた成熟期のSAMP6の短期記憶増加に関わるメカニズムの1つであること が示唆された。

  本研究より、SAMP6が加齢に伴って様々な病態を示すことが包括的行動解 析試験により明らかとなり、生化学的およぴ薬理学的研究手法を用いることに より、その病態メカニズムには複数の因子が関与していることが示唆された。

このマウスを用いて研究することで、加齢による脳高次機能の変化とそのメカ ニズムが明らかになり、さらに脳高次機能を活性化させるシグナルカスケード に作用する化合物を探索できれば、健康寿命の延長やQOL向上に貢献すると 思われる。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 名誉教授 教授 教授

伊藤 板倉 安居院 木村

茂男 智敏 高志 和弘

     学位論文題名

老イ匕促進マウスSenescence ― accelerated mouse prone6 (SAMP6) の 脳 高 次 機 能 に お け る 加 齢 変 化 に 関 す る 研 究

    SAMP6の 骨 密 度 は40月 齢 で 最 大 と な り 、 加 齢 に 伴 っ て 急 速 に 減 少 す る 骨 粗 鬆 症 の 促 進 老 化 モ デ ル 動 物 で あ る 。SAMP6の 中 枢 神経 系の 老化 モデ ル動 物と して の可 能性 を調 べ る 目 的 で 、10月 齢 ( 若 齢 期 ) 、460月 齢 ( 成 熟 期 ) 、8120月 齢 ( 老 齢 期 ) に お い て 包 括 的 行 動 試 験 に よ り 行 動 変 化 を 解 析 し 、 次 い で 行 動 異 常 に 関 連す ると 考え られ る 中 枢 神 経 の 各 部 位 を 神 経 化 学 的 に 解 析 し 、 以 下 の 成 績 を 得 た 。   包 括 的 行 動 解 析 に よ り 、SAMP6は 生 得 的 な高 運動 活性 、運 動協 調性 異常 、低 不安 ・抗 鬱 お よ び 短 期 記 憶 増 加 と い う 行 動 特 性 を 示し た。 各期 でSAMP6の 行動 特性 を調 べ、 三つ の 型 に 分 類 し た 。1) 促 進 老 化 様 行 動 特 性 :SAMP6の 運 動 活 性 は 若 齢 期か ら成 熟期 まで は 高 運 動 活 性 を 示 す が 老 齢 期 で は 運 動 活 性 は 低 下 し 、 こ の パ タ ー ン は骨 密度 の促 進老 化 パ タ ー ン と 類 似 し て い た 。 運 動 協 調 性 は 若 齢 期 お よ ぴ 老 齢 期 で は 著し い異 常が 認め ら れ る が 、 成 熟 期 で は 部 分 的 に 回 復 し た 。 生 得 的 な 運 動 協 調 性 異 常 に加 えて 、成 熟期 に は 回 復 し 、 そ の 後 悪 化 す る 行 動 特 性 と 思 わ れ た 。2) 加 齢 依 存 的 行 動 特 性 : 若 齢 期 は 低 不 安 や 抗 鬱状 態が 強く 、加 齢 によ り不 安・ 鬱状 態へ と変 化す る行 動特 性で あっ た。

3) 非 加 齢 依 存 的 行 動 特 性 : 短 期 記 憶 増 加 に つ い て は 明 ら か な 加 齢 の 影 響 は 認 め ら れ な か っ た 。

    若 齢 期 の 線 条 体 と 側 坐 核 で 、 チ ロ シ ン 水 酸 化 酵 素 及 び そ の り ン 酸化 型の 発現 量が 増 加 す る こ と を 示 し 、 ド パ ミ ン (DA)量 の 増 加 が 生 得 的 なSAMP6の 高 運動 活性 に関 与す る こ と を 示 唆 し た 。 ま た 、 成 熟 期 の 線 条 体 で ド パ ミ ンDl受 容 体 の 発 現量 増加 とそ のシ グ ナ ル 伝 達 の 亢 進 及 び 側 坐 核 のDA量 増 加 を 明 ら か に し 、 老 齢 期 に は 顕著 にDl受容 体の 感 受 性 が 低 下 す る こ と を 示 し た 。 ま た 、 成熟 期のSAMP6小脳 では ドパ ミンD3受 容体 発現 量 が 増 加 す る こ と か ら 運 動 協 調 性 異 常 に 関 与 す る こ と を 示 唆 し た 。     若 齢 期 の 脳 幹 で 、 ト リ プ ト フ ァ ン 水 酸 化 酵 素 及 び そ の り ン 酸 化 型の 発現 量が 増加 す る こ と を 明 ら か に し 、 脳 内5― ヒ ド ロ キ シト リプ タミ ン(5―HT)量 の増 加が 生得 的な SAMP6の 低 不 安 と 抗 鬱 に 関 与 す る こ と を 示 唆し た。 また 、成 熟期 にお いて も大 脳皮 質と 側 坐 核 の5HT量 が 増 加 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。

    成 熟 期 の 前 脳 に お い てNMDA型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体2Bサ ブ ユ ニ ッ トの 発現 量が 増加 し 、 こ の 受 容 体 シ グ ナ ル カ ス ケ ー ド も 亢 進 し て い る こ と を 明 ら か に し、 これ が短 期記 憶 増 加 に 関 わ る 重 要 な メ カ ニ ズ ム の ー っ で あ る こ と を 示 し た 。 ま た 、若 齢期 の脳 内DA 量 及 び 5HT量 増 加 はSAMP6の 短 期 記 憶 増 加 に 関 与 す る 可 能 性 を 示 唆 し た 。

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    以上のように、SAMP6が若齢、成熟及ぴ老齢期で様々な特徴的な異常行動を示すこ と 、さらに 異常行動に関連する脳内各部位の神経伝達物質の含量、生合成酵素や受容 体発現量等を調べ、その病態メカニズムの一部を明らかにした。これらの発見は、SAMP6 マ ウスは促 進老化を示す骨粗鬆症モデルのみならず、中枢神経系の老化促進モデルと し ても有用 であること示している。よって、審査員一同は、上記学位論文提出者新美 君 枝氏が、 博士(獣医学)の学位を授与されるに十分な資格を有するものと認めた。

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参照

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