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,学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 薬 学 ) 板 垣 史 郎      学 位 論 文 題 名

     一

     ●    ●    ●

     、 Organic an10nSeCretionlnananlmalmode1 forWilSOn SdiSeaSe ( LOng ― EVanSCinnamonratS )

(Wilson 病モ デ ル動 物 LEC ラ ット における    有 機 ア ニ オ ン 排 泄 能 に 関 す る 研 究 )

,学位論文内容の要旨

はじめに

  Wilson病は日常生活において摂取される銅が生体内に過剰蓄積し、肝・腎・脳など全身諸臓器の 組織傷害をきたす遺伝性銅代謝異常症であり、小児期の慢性肝疾患としては最も頻度が高い病気であ る。Wilson病の症状のーっとして低尿酸血症が挙げられる。尿酸は核酸の構成成分であるプリン体 の最終代謝産物であり、ヒトでは大部分が尿中に排泄される。腎における尿酸などの有機アニオン輸 送に関与する担体の存在は古くから予測されており、pーaminohippuric acid (PAH)を典型的基質と して用いて多くの研究がなされてきた。しかしながら、その機能的重要性が明確であるにもかかわら ず、分子的実体については不明な点も多く残っている。Phenolsulfonphthalein (PSP)は腎近位尿細 管における薬物の分泌機構の存在を証明した最初の薬物であり、臨床において腎機能検査薬として繁 用されてきた。一方、PSPとPAHは異なった排泄経路を持つ可能性が示唆されている。薬物トラン スボータの研究はこの数年急速な進歩を遂げ、薬物トランスボータが薬物の動態制御に関与する重要 な因子であることが明らかにされつっある。本研究ではまずPSPの動態に関与するトランスボータ を明らかにすることを目的とした。次いで、Wilson病モデル動物LECラヅトにおける有機アニオン の 動 態 を 解 析 し た 結 果 、 新 た な 知 見 が 得 ら れ た の で 、 こ れ に つ い て 報 告 す る 。 結果及び考察

!:PSPの輸送機構Q鰹明

  腎近位尿細管における薬物の排泄は基底膜側からの取り込み、刷子縁膜からの排出という2つの過 程を経る。まず基底膜側からのPSPの取り込みに関与するトランスボータについて検討を行った。

腎スライスへのPSPの取り込みは濃度飽和性を示し、Eadie‑Hofstee plot解析の結果、2相性を示 した。このことから腎基底膜側からのPSPの取り込みには2種のトランスボータが関与しているこ と が明らかとなった。次いで、OatlとOat3の阻害剤を用いて腎スライスへのPSPの取り込みに対 するIC50値を算出した。その結果、Oat3の阻害剤がより強い阻害効果を示した。これらの結果よ りPSPの 腎 基 底 膜 か ら の 取 り 込 み に は Oat3の 寄 与 が 大 き い こ と が 明 か と な っ た 。   腎近位尿細管刷子縁膜に存在する電位依存的トランスボータは多くのアニオンの排出を担っている。

ウサギ・ブタではPAHと尿酸の輸送は同一あるいは近縁のトランスボータによって行われていると 考えられているが、ヒト・ラヅトではPAHと尿酸の輸送は異なるトランスボータを介していると考 えられている。腎刷子縁膜におけるPSPの輸送に対する電位依存的なトランスボータの寄与につい て検討を行った。腎刷子緑膜ベシクルへのPSPの取り込みは内部正の膜電位存在下で促進され、腎 刷子縁膜からのPSPの排出に電位依存的トランスボータが関与していることが明らかとなった。続 いて電位依存的なPSPの輸送に対する尿酸トランスボー夕.PAHトランスボータの寄与を検討した。

有機アニオン輸送阻害剤であるprobenecid,尿酸トランスボータの基質である尿酸.pyrazmoate     ―252−

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は 電 位 依 存 的 なPSPの 輸 送 を 阻 害 し た 。 一 方 、PAHは 電 位 依 存 的 なPSPの 輸 送 に 対 し 、 なん ら影 響を与 えなかった。尿酸による阻害の様式は競合型であった。 これらの結果より、腎刷子縁膜からの PSPの 排 出 に 電 位 依 存 的 尿 酸 ト ラ ン ス ボ ー タ が 関 与 し て い る こ と が 示 さ れ た 。   細胞 内か ら 細胞 外ヘATP依存的に基質を輸 送するATP binding cassette (ABC)トランスボータは多 くの臓 器に発現し、多剤耐性に関わるトランスボータとして知 られている。有機アニオンの輸送に関 わる代表的なものにMultidrug resistance‑associated protein (Mrp) familyが挙げられる。まず、Mrp2欠 損 モ デ ル ラ ヅ トEHBRを 用 い てPSPがMrp2の 基 質 と な る か 否 か に つ い て 検 討 し た 。EHBRにお ける PSPの 胆 汁 排 泄 ク リ ア ラ ン ス はSDラ ヅ ト に 比 ベ 、 低 下 し て おり 、PSPがMrp2の 基質 であ るこ とが 示 さ れ た 。 次 い で 、PSPの 尿 中 排泄 に対 するABCト ラン スボ ータ の寄 与に つい て検 討し た。ABCト ラ ンス ポー タ の阻 害剤cyclosporinA(CYA)の共存下でPSPの尿中排泄クリアランスは低下した。しか し なが ら、Mrp2は 腎刷 子縁 膜に 発現 して いる が、アニオンの尿中排泄に対する寄与はほとんどない こ とが 報告 さ れて いる 。こ の結 果か ら、Mrp2以外 のMrp familyがPSPの尿中排泄に関与している可 能性が示唆された。

2 Wilson痘玉乏2ヒ動物L旦C量型b壁霊泣るZ三左2挂出機撞

  Wilson病はP‑type ATPaseの異常により銅排出トラ ンスボータの機能が障害され、肝臓や脳に銅が 蓄 積し 、 肝・ 脳障 害を きた す疾 患で ある 。LECラヅ トは 北海 道大 学理学部実験動物センターで確立 さ れた 純 系ラ ヅト で、 生後4〜5ケ月 齢で重篤な黄疸 と体重減少を主症状とした急性肝炎の自然発症 が 認 め ら れ る 。LECラ ッ トで は 生後2日 齢よ り銅 が蓄 積し 始 め、 肝炎 発症 前の3ケ 月齢 に 肝細 胞毒 性 を呈 す るレ ベル に達 する 。LECラ ッ トはこれらの所見に加え、ヒトと同様P‑type ATPaseの異常が 観 察さ れ るこ とか ら、Wilson病 のモ デル 動物 とさ れて いる 。EHBRはMrp2機 能欠 損の ため 黄疸を発 症 する こ とか 知ら れて いる 。こ のこ とか ら、LECラ ヅト にお いて も何らかの有機アニオン排泄機能 が低 下している可能性が考えられる。肝機能検査薬としてsulfobromophthalein (BSP)を、腎機能検査 薬 とし てPSPを用 いてLECラ ット にお ける アニ オン 排泄 能に つい ての検討を行っ た。その結果、LEC ラ ット で はBSPの 胆汁 排泄 能の みな ら ずPSPの 尿中 排泄 能が 低下 し てい るこ とが 明ら かと なった。

  これ ま でに 報告 され てい るMrp2欠 損モ デル ラヅ トは いず れも 腎機能は正常で あった。LECラヅト は これ ら のラ ヅト とは 異な り、 腎に おけるアニオン 排泄能が低下していた。Wilson病患者では腎近 位尿 細管における尿酸の再吸収が低下しているために尿酸排 泄が亢進し、低尿酸血症を起こすことが 知 られ て いる 。し かし なが ら、Wilson病患者の近位 尿細管における有機アニオン排泄に着目して検 討 を行 っ た報告は無い。 糸球体で自由に限外濾過を受ける尿酸とは異なり、PSPはほば全量が尿細管 よ り分 泌 され る。 これ らの 点を ふま え、LECラ ヅト 腎近 位尿 細管 における有機アニオン排泄機能に つ い て 検 討 を 行 っ た 。LECラ ッ ト腎 スラ イス へのPSPの取 り 込み はコ ント ロー ルで あるLEAラ ット と同 様の傾向を示した。この結果より、両ラットで腎近位尿 細管基底膜側の輸送機構に差は無いこと が 明ら か とな った 。一 方、LECラッ ト 腎刷 子縁 膜ベ シク ルへ のPSPの取 り込 みは 内部 正の 膜電位存 在 下で も 促進 され なか った 。さ らにLECラ ット 腎刷 子縁 膜ベ シク ルへ のPAHの取 り込 みは 内部正の 膜 電位 存 在下で促進され た。これらの結果より、LECラットでは尿中への尿酸排泄を抑制するため、

腎近 位尿細管刷子縁膜に存在する電位依存的尿酸トランスボ ータの機能が低下している可能性が示唆 され た。

まと め

1. 腎 近 位 尿 細 基 底 膜 側 か ら のPSPの 取 り 込 み にはOatl及 びOat3が 関与 して おり 、特 にOat3の 寄     与が 大き いこ とが 明ら かと なっ た 。

2. 腎近 位 尿細 管刷 子縁 膜側 から のPSPの排出には電位依存的尿酸 トランスボータが関与しているこ     とが 示唆 され た。

3. PSPがMrp2の基 質で ある こと が明 らか とな った 。ま た、 腎臓 に おけ るPSPの 排出 にMrp family     が関 与し てい る可 能性 が示 唆さ れ た。

4. Wilson病 モ デ ル動 物LECラッ トで は、BSPの 胆汁 排泄 能の みな らずPSPの 尿中 排泄 能が 低下 し     てい るこ とが 明ら かと なっ た。

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5. LECラヅト腎近位尿細管刷子縁膜において電位依存的尿酸トランスボータの機能が低下している   可能性が示唆された。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   井 関   健 ( 臨 床 薬 剤 学 分 野 ) 副 査  教 授  宮 崎 勝 巳 ( 薬 物 動 態 解 析 学 分 野 ) 副 査  助 教 授  菅 原  満 ( 薬 物 動 態 解 析 学 分 野 ) 副 査  助 教 授  宮 内 正 二 ( 生 物 物 理 化 学 分 野 )

     学位論文題名

    Organic anion secretionlnananlmaln10de1 forWilSOn SdiSeaSe (LOng ―EVanSCinnamonratS )      ( Wilson 病 モ デル動 物 LEC ラ ットにおけ る      有 機 ア ニ オ ン 排 泄 能 に 関 す る 研 究 )

  本研究ではPSPの排泄動態に関与するトランスポータを明らかに、それらの結果から Wilson病モデル動物LECラットにおける有機アニオンの動態を解析したものである。Wilson 病は日常生活において摂取される銅が生体内に過剰蓄積する遺伝性銅代謝異常症であり、

その症状のーっとして低尿酸血症が挙げられる。尿酸はヒトでは大部分が尿中に排泄され るが、腎における尿酸などの有機アニオン輸送に関与する担体の存在は古くから予測され ており、pーaminohippuric acid (PAH)を典型的基質として用いて多くの研究がなされてき た。一方、Phenolsulfonphthalein (PSP)は腎近位尿細管における薬物の分泌機構の存在を 証明した最初の薬物であり、臨床において腎機能検査薬として繁用されてきた。本研究で は、まず基底膜側からのPSPの取り込みに関与するトランスポータ(Oatl、Oat3)につい て検討を行い、腎基底膜側からのPSPの取り込みにはこれら2種のトランスポータが関与 していること、PSPの腎基底膜からの取り込みにはOat3の寄与が大きいことを明らかにし た。

  一方、腎刷子縁膜におけるPSPの輸送に対する電位依存的なトランスポータの寄与につ いて検討を行った結果、PSPの取り込みは内部正の膜電位存在下で促進され、腎刷子縁膜 からのPSPの排出に電位依存的トランスポータが関与していることを実証している。電位 依存的なPSPの輸送に尿酸は競合的阻害効果を示したのに対しPAHはなんら影響を与えな かった。腎近位尿細管刷子縁膜に存在する電位依存的トランスポータは多くのアニオンの 排出を担っており、ヒト・ラットではPAHと尿酸の輸送は異なるトランスポータを介して いると考えられている。

  このことより腎刷子縁膜からのPSPの排出に電位依存的尿酸トランスポータが関与して いることが示された‐

  次に細胞内から細胞外ヘ有機アニオンを輸送する代表的なABCトランスポータである Multidrug resistance―associated protein (Mrp) familyの関与を明らかにする目的で、

Mrp2欠損モデルラットEHBRを用いてPSPがMrp2の基質となることを示した。しかしなが

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ら、Mrp2は腎刷子縁膜に発現しているが、アニオンの尿中排泄に対する寄与はほとんどな いことが報告されている。従って、Mrp2以外のMrp familyがPSPの尿中排泄に関与して いる可能性が示唆された。そこで肝機能検査薬としてsulfobromophthalein (BSP)を、腎 機能検査薬としてPSPを用いてLECラットにおけるアニオン排泄能にちぃての検討を行つ た。その結果、LECラットではBSPの胆汁排泄能のみならずPSPの尿中排泄能が低下して いることが明らかとなった。すなわち、これまでに報告されているMrp2欠損モデルラット とは異なり、LECラットは腎におけるアニオン排泄能が低下していることを明らかにした。

Wilson病患者では腎近位尿細管における尿酸の再吸収が低下しているために尿酸排泄が亢 進し、低尿酸血症を起こすことが知られている。しかしながら、Wilson病患者の近位尿細 管における有機アニオン排泄に着目して検討を行った報告は無い。これらの点をふまえ、

申請者はLECラット腎近位尿細管の有機アニオン排泄機能について検討し、LECラットと そのコントロールであるLEAラットとで腎近位尿細管基底膜側の輸送機構に差は無いこと を実証した。一方、LECラヅト腎刷子縁膜ベシクルを用いて、腎近位尿細管刷子縁膜に存 在する電位依存的尿酸トランスポータの機能が低下している可能性を示唆する結果を得て いる。

これらの研究成果は、病態生理学的にも臨床薬学の面においても極めて意義あることと認 められ、今後の新たな研究への発展が期待されるものである。

  審査に当たっては、各審査担当者による持ち回り審査を実施し、各審査員からのコメン トを基に申請者に対して主査より諮問並びに論文に対する加筆訂正を求めた。当論文提出 者から本論文および関連領域に関する試問に適切な応答が得られ、充分な学カを有するこ とが示された。

  以上から、本論文は学位(薬学)に値するものと判断する。

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