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学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

氏 名 後藤 七海 印

(学位論文のタイトル)

PARP1 V762A polymorphism affects the prognosis of myelodysplastic syndromes

PARP1 V762A多型は骨髄異形成症候群の予後に影響を与える。

(学位論文の要旨)2000字

【背景】骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes: MDS)は、高齢者に多い造血器腫瘍 である。多様な症状を呈し、形態学的な血球の異形成、無効造血、急性骨髄性白血病(acute myeloid le ukemia: AML)への移行リスクがあることが主な特徴である。近年の網羅的な遺伝子解析により造血幹 細胞レベルでさまざまな遺伝子変異があることがわかっており、MDSにおける遺伝子変異の重要性が示 唆されているところである。しかしながら、遺伝子変異の抑制に重要であるDNA修復機構とMDSの関係 性は未だ明らかになっていない。Poly(ADP-ribose)polymerase-1 (PARP1)はDNA損傷の修復に重要な 役割を果たしており、いくつかのがんにおいてはその進展に関与することが分かっている。また、PARP 1は正常な造血や骨髄系腫瘍と関連があることが報告されている。特に骨髄系腫瘍であるAMLにおいて

は、NKG2Dリガンドの欠損を介して、白血病幹細胞を免疫系の監視から回避させる役割を持つことが分

かっている。本研究では、PARP1の機能的な遺伝子多型であるV762A多型に着目した。この多型はPAR P1の触媒部位に存在し、酵素活性を低下させることが分かっている。アジア人において胃癌、子宮頸癌、

肺癌のリスクと関連することが報告されているほか、造血器腫瘍との関連においては非ホジキンリンパ 腫との関連が報告されている。しかしながら、MDSとの関連については我々の調べた限りでは報告がな い。従って、本研究では、MDSの病態におけるPARP1の役割を明らかにするために、PARP1 V762A多 型とMDSの発症リスクならびに臨床像との関連について調査した。

【方法】対象はMDS患者105名と健常者202名とした。患者は群馬大学医学部附属病院あるい は済生会前橋病院を受診し、WHO分類に従ってMDSと診断された。観察期間は2010年1月から2019年 7月までで、中央値は47.0ヶ月である。遺伝子型はPCR-RFLP法を用いて判定した。遺伝子型判定に用い たDNAサンプルは末梢血より抽出した。遺伝子型頻度の比較にはχ2検定を、臨床背景の比較にはχ2検 定およびt検定を用いた。多変量解析は、Cox比例ハザードモデルを使用した。統計解析には、SPSS ve r. 25およびEZRを用いた。p < 0.05を統計学的に有意とみなした。

【結果】PARP1 V762A多型の遺伝子型頻度は、MDS患者群と対照群において有意差はなかっ た。臨床背景との関連においては、PARP1 V762A多型non-AA型(高活性型)において、輸血を受けたこ とがある患者の頻度が有意に多かった(non-AA型 vs. AA型 = 67.9% vs. 38.1%, p = 0.01, OR = 0.29, 95% confidence interval = 0.11-0.79)。さらに、non-AA型(高活性型)患者において、AA型(低 活性型)患者に比較して、全生存期間(overall survival: OS)ならびに無イベント期間(event free surviv al: EFS)が有意に短縮した(OS: non-AA型 vs. AA型 = 114.6 months vs. not reached, p = 0.01.

(2)

EFS: non-AA型 vs. AA型 = 116.0 months vs. not reached, p = 0.04)。また、OSの多変量解析 でも、PARP1 V762A多型non-AA型(高活性型)は予後不良因子として抽出された(HR = 4.38, 95% CI = 1.34–14.4, p = 0.02)。加えて、患者群を治療の有無によって2群にわけて生存期間を解析した際に、

治療を受けた患者群において、non-AA型(高活性型)においてOSが有意に短縮した(non-AA型 vs. AA型 = 116.0 months vs. not reached, p = 0.02)。

【考察】Non-AA型(高活性型)において、輸血を受けたことがある患者の頻度が有意に多かった。

既報では、輸血依存性の患者は生存期間が短くなることが分かっており、non-AA型(高活性型)患者のM DSは活動性が高いことが示唆される。また、non-AA型(高活性型)は有意にOSが短縮したことから、こ の多型はMDSの予後不良因子となることが示唆された。近年の研究では、がんの進展におけるPARP1の 新しい役割が強調されている。造血器腫瘍においては、PARP1阻害剤を用いることでAML細胞にアポト ーシスを誘導することや、AMLモデルマウスの生存を改善することが分かっている。これらの報告は、P ARP1がMDSの進展に有利に働くという我々の知見を支持するものと言える。さらに、治療を受けた患 者群においても、non-AA型(高活性型)が予後不良となったことから、PARP1とMDSの治療反応性の関連 が示唆された。MDSの治療に用いられる薬剤の1つにアザシチジンがあるが、PARP1阻害剤とアザシチ ジンには相乗的な殺細胞効果が認められ、AMLモデルマウスの予後を改善することが報告されている。

また、背景でも述べた通り、PARP1は、白血病幹細胞のNKG2Dリガンドの発現を抑制することで、白血 病幹細胞が免疫系により排除されることを抑制している。PARP1を阻害することで白血病幹細胞のNKG 2Dリガンド発現が回復し、免疫系による排除が可能となるため、白血病モデルマウスのAML発症を防ぐ ことが報告されている。以上より、PARP1の活性が抑制されることが、よりよい治療反応性につながる 可能性があると言える。

【結語】本研究では、MDS患者のOSならびに治療反応性におけるPARP1 V762A多型の影響を 明らかにした。この多型がMDSの予後予測因子となる可能性があるほか、PARP1がMDSの新たな治療 標的となる可能性が示唆された。

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