角膜上皮におけるKチャンネルのアラキドン酸によ る調節
著者 櫻田 規全
著者別名 Sakurada, Norimasa
雑誌名 博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査
結果の要旨/金沢大学大学院医学研究科
巻 平成14年7月
ページ 28
発行年 2002‑07‑01
URL http://hdl.handle.net/2297/15694
医博甲第1510号 平成14年3月22日 櫻田規全
角膜上皮におけるKチャンネルのアラキドン酸による調節 学位授与番号
学位授与年月日 氏名 学位論文題目
教授河崎一夫 教授吉本谷博 教授東田陽博 論文審査委員主査
副査
内容の要旨及び審査の結果の要旨
角膜上皮におけるKチャンネルのこれまでの主な研究対象は,ウサギ角膜上皮に発現する大コン
ダクタンスK電流であった.このK電流は,シクロオキシゲナーゼ(cyclooⅣgenase)経路の阻害
剤であるフェナメート(fenamate)の細胞外投与によって増大する.近年,角膜損傷治癒の際,この フェナメートによって活`性化されるK電流が消失することが報告された.本研究は,角膜上皮細胞の K電流を同定し,アラキドン酸(arachidonicacid)あるいはその代謝産物によるKチャンネル調節 の解明を目的とした.実験には,新鮮単離ウシおよびヒト角膜上皮細胞を用いた.形態上は,ウシ,ヒトともに2種類の角膜上皮細胞が認められた.すなわち,極性に乏しい球状細胞および極性を有す る円柱状細胞であった.これらの細胞を5,MKナリンゲル液にて灌流し,パッチクランプ法を用いて ホールセル電流を測定した.ウシ角膜上皮には2種類のK電流が発現していた.1つめは,膜電位開 口型K電流であり,長い脱分極状態で不活`性化した.この不活性化K電流は円柱状細胞においてよ り多く発現していた.2つめは,不活性化しないノイズ様の外向きK電流であった.この持続型K電 流は,フェナメートにより増大し,ジルチアゼム(diltiazem)により阻害されることから,ウサギ角 膜上皮の大コンダクタンスK電流に相同と考えられた.持続型K電流は,細胞外アラキドン酸(5~
101M)により著明に増大した.アラキドン酸カスケードの基質となりえない他の脂肪酸も同様のチ
ャンネル刺激作用を有したことから,アラキドン酸が直接チャンネルに作用して,これを活性化する と推論された.アラキドン酸や上記の脂肪酸は,不活性化K電流には抑制的に作用した.ヒト角膜上皮においては,不活性化電流は認められなかった.アラキドン酸(2011M)および他の脂肪酸によっ
て活性化されたノイズ様の電流は,+10mVより陽性の電位で強い整流作用を示しγその作用はジルチアゼムには阻害されなかった.一方,100ILMアラキドン酸は,ジルチアゼムにより阻害されるK
電流を増大させた.すなわち,ヒト角膜上皮における持続型K電流が発現していた.本研究は,角膜 上皮のイオンチャンネルに関して新知見をもたらしたものであり,学位授与に値する労作と評価された.
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