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平成26年度「非エネルギー起源温暖化対策海外貢献事業 (途上国における森林の減少・劣化の防止等への 我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業)」

南スマトラ州保護林における

二国間クレジット制度

REDD+プロジェクト実現可能性調査

調 査 報 告 書

平成

27 年 3 月

ワイ・エルビルディング株式会社

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【目次】 1. 要約 ... 1 1.1 目的 ... 1 1.2 概要 ... 2 2. インドネシアにおけるREDDプラス動向調査 ... 4 2.1 インドネシア国におけるREDDプラス関連の動向 ... 4 2.2 REDDプラス関連法制度および発行物 ... 4 2.2.1 政令 2014 年 12 号 ... 4 2.2.2 林業大臣令 2014 年 50 号 ... 4 2.2.3 林業大臣決定書 2014 年 633 号 ... 5 2.2.4 大統領決定書 2014 年 121 号 ... 5 2.2.5 大統領令 2015 年 16 号 ... 6 2.2.6 大統領令 2014 年 97 号 ... 6 2.2.7 環境林業大臣令 2014 年 97 号 ... 6 2.2.8 環境林業大臣令 2015 年 1 号 ... 7 2.3 REDDプラス関連機関・組織 ... 7 3. インドネシアにおけるREDDプラスの実装に向けての手続き ... 8 3.1 REDDプラス事業の事業許可 ... 8 3.1.1 REDDプラス事業対象地と事業許可 ... 8 3.1.2 本REDDプラス事業許可の取得 ... 9 3.1.3 事業許可と会費 ... 10 3.2 REDDプラス事業登録 ... 12 3.3 日本企業の参画体制の検討 ... 12 4. プロジェクト情報 ... 14 4.1 本事業の目的 ... 14 4.2 本事業の概要 ... 14 4.3 事業対象地情報 ... 15 4.3.1 対象地エリア ... 15 4.3.2 気候・地理 ... 19 4.3.3 事業対象地内の主要河川の分布 ... 22 4.3.4 許可取得エリア内の河川の分布 ... 23 4.3.5 植生分布 ... 25 4.3.6 村落分布 ... 26 4.3.7 村落・コニュニティ情報 ... 27 4.4 森林減少のドライバー ... 28 4.4.1 北部地域 ... 28

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4.4.2 南部地域 ... 38 4.5 事業活動内容 ... 40 4.5.1 実施体制 ... 41 4.5.2 活動内容 ... 45 4.5.3 セーフガード ... 51 5. 広域モニタリング手法の適用 ... 54 5.1 前年度までに構築したモニタリング方法論 ... 54 5.2 今年度のモニタリング・分析結果 ... 55 5.2.1 対象エリア ... 55 5.2.2 衛星画像による土地利用/土地被覆の現況把握 ... 55 5.2.3 時系列な衛星画像による土地利用/土地被覆の経年変化把握 ... 59 5.2.4 事業許可取得予定地の炭素ストック経年変化推定 ... 63 6. 方法論に基づいた算出結果 ... 65 6.1 RELの設定 ... 65 6.1.1 事業許可取得予定地(43,000ha)におけるRELの設定 ... 65 6.1.2 事業対象地全域(66,500ha)におけるRELの設定 ... 68 6.2 将来予測(森林減少防止) ... 71 6.2.1 事業許可取得予定地(43,000ha)における将来予測(森林減少防止) ... 71 6.2.2 事業対象地全域(66,500ha)における将来予測(森林減少防止) ... 73 6.3 将来予測(植林) ... 76 6.3.1 事業許可取得予定地(43,000ha)における将来予測(植林) ... 77 6.3.2 事業対象地全域(66,500ha)における将来予測(植林) ... 78 6.4 算定結果... 80 6.4.1 事業許可取得予定地(43,000ha)における将来予測 ... 80 6.4.2 事業対象地全域(66,500ha)における将来予測 ... 81 7. セーフガード ... 83 7.1 REDD+のセーフガードについて ... 83 7.2 JCMにおけるセーフガード ... 84 7.3 インドネシアにおけるセーフガードの検討状況 ... 85 7.4 インドネシアSISに準拠したプロジェクトレベルの取り組みの検討 ... 90 7.4.1 インドネシアSIS指標への対処方法の検討 ... 90 7.4.2 FPICに向けた取り組みの検討 ... 93 7.4.3 本事業でのセーフガード取り組みについて ... 95 7.5 本事業におけるセーフガードの取組状況 ... 97 7.5.1 村との合意形成 ... 97 7.5.2 政府との合意形成... 97

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7.5.3 森林保全 ... 98 7.5.4 生物多様性保全 ... 99 8. PDD案の作成 ... 101 8.1 JCMにおけるREDD+プロジェクトのPDDフォームの検討 ... 101 8.1.1 排出削減プロジェクトにおけるPDDフォームの内容 ... 101 8.1.2 他制度におけるPDDフォームの内容... 102 8.2 PDD案作成におけるフォーム内容 ... 104 8.3 PDD案の作成 ... 104 9. パイロットプロジェクト稼働 ... 105 9.1 本事業に関する公式会合の開催 ... 105 9.2 事業地での事業活動 ... 108 9.2.1 現地事務所(ペースキャンプ)の建設 ... 108 9.2.2 現地スタッフの配置 ... 109 9.2.3 セーフガード会合... 109 9.2.4 協力団体の組織化... 116 9.2.5 作業活動の実証実験 ... 116 9.2.6 本事業の周知活動... 121 10. ファイナンスの検討 ... 124 10.1 ODAを通じた実施に関するインドネシア政府の見解 ... 124 10.2 日本企業などからの事業資金調達の可能性調査 ... 124 10.3 今後の検討 ... 125 10.3.1 クレジット以外を目的とした企業との連携可能性 ... 125 10.3.2 資金メカニズムの活用可能性 ... 125 11. 今後の展開 ... 126 11.1 事業エリアの拡大可能性 ... 126 11.2 今後の事業計画 ... 126 11.3 今後の課題 ... 127 12. おわりに ... 129

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【表一覧】 表 3-1 会費が発生する事業許可の種類と種別料金表 ... 10 表 4-1 対象地エリア情報 ... 15 表 4-2 年間気温 ... 19 表 4-3 年間降水量 ... 20 表 4-4 年間湿度 ... 20 表 4-5 年間の気圧・風速・8 時間中の日照量 ... 21 表 4-6 事業対象地内の主要河川名 ... 23 表 4-7 対象地内の河川名 ... 24 表 4-8 植生分布面積 ... 26 表 4-9 事業対象地内の村落 ... 26 表 4-10 事業要素に対応する活動内容 ... 45 表 5-1 土地利用/土地被覆分類図の精度評価結果 ... 59 表 5-2 各時期の土地利用/土地被覆分類項目別面積 ... 63 表 5-3 事業許可取得予定地における炭素ストックの経年変化 ... 64 表 6-1 2013 年を基準とした場合の森林区分別面積変化(事業許可取得予定地) ... 65 表 6-2 2013 年を基準とした場合の森林区分別面積変化(事業対象地全域) ... 68 表 6-3 森林面積の将来予測(事業許可取得予定地) ... 71 表 6-4 炭素ストックの将来予測(事業許可取得予定地) ... 72 表 6-5 森林面積の将来予測(事業対象地全域) ... 74 表 6-6 炭素ストックの将来予測(事業対象地全域) ... 75 表 6-7 植林に伴う炭素ストックの将来予測(事業許可取得予定地) ... 77 表 6-8 炭素ストックの将来予測(事業対象地全域) ... 79 表 6-9 事業許可取得予定地における排出削減量・吸収量の推移 ... 80 表 6-10 事業対象地全域における排出削減量・吸収量の推移 ... 81 表 7-1 カンクン合意によるセーフガード 7 項目 ... 83 表 7-2 インドネシアSISにおける原則・基準・指標 ... 86 表 7-3 本事業におけるセーフガード作業内容案 ... 90 表 9-1 会合の情報 ... 105 表 9-2 スンガイ・バタン村とのセーフガード会合情報 ... 110

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【図一覧】 図 4-1 南スマトラ州オーガン・コムリン・イリール県の位置 ... 16 図 4-2 オーガン・コムリン・イリール県保護林内の事業対象予定地 ... 17 図 4-3 事業許可取得地の 23,500haの図(赤線囲い内) ... 18 図 4-4 事業対象地内の主要河川の分布 ... 22 図 4-5 対象地内の天然河川 ... 24 図 4-6 RapidEye衛星画像から作成した土地被覆分類図 ... 25 図 5-1 これまでに構築したモニタリング方法論の概要 ... 54 図 5-2 事業許可取得予定地のRapidEye衛星画像 ... 56 図 5-3 RapidEye衛星画像から作成した土地利用/土地被覆分類図 ... 57 図 5-4 検証用データの配置 ... 58 図 5-5 過去のLANDSAT画像 ... 60 図 5-6 過去の土地利用/土地被覆分類図 ... 61 図 5-7 各時期の土地利用/土地被覆分類項目別面積の構成比 ... 63 図 5-8 事業許可取得予定地における炭素ストックの経年変化 ... 64 図 6-1 森林区分毎の面積変化と回帰式(事業許可取得予定地) ... 67 図 6-2 森林区分毎の面積変化と回帰式(事業対象地全域) ... 70 図 6-3 森林面積の将来予測(事業許可取得予定地) ... 72 図 6-4 炭素ストックの将来予測(事業許可取得予定地) ... 73 図 6-5 森林面積の将来予測(事業対象地全域) ... 74 図 6-6 炭素ストックの将来予測(事業対象地全域) ... 75 図 6-7 植林に伴う炭素ストックの将来予測(事業許可取得予定地) ... 78 図 6-8 植林に伴う炭素ストックの将来予測(事業対象地全域) ... 79 図 6-9 事業許可取得予定地における排出削減量・吸収量の推移 ... 81 図 6-10 事業対象地全域における排出削減量・吸収量の推移 ... 82 図 9-1 パイロットプロジェクト地の位置 ... 117 図 9-2 看板の絵柄 ... 121 図 11-1 事業実施スケジュール ... 126

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1

1.

要約

1.1 目的

IPCC によれば世界の温室効果ガスの排出量の約 17%が途上国の森林減少・劣化に 由来していると言われている。2007 年のバリ行動計画で次期枠組みの緩和行動の一種 として合意された途上国の森林減少・劣化等対策(REDD プラス)は、途上国の関心 も高く国連を含む様々な場で制度構築のための議論が進展している。本事業ホスト国の インドネシア国は、世界第3 位の熱帯雨林面積を有しており、森林区分地が国土の 70%、 1 憶 3,000 万 ha を占めるアジア地域でも最大の森林面積保有国である。インドネシア 国の温室効果ガス削減に関する国家行動計画では、削減量の約 88%が泥炭地を含めた REDD プラス分野とされており、REDD プラス活動に最も重点を置いていることが伺 える。先進各国もインドネシアREDD プラスに高い関心を持っており、インドネシア の潜在的な削減量を狙った支援や調査等が数多く参入している。 本事業で対象とするマングローブ林は、インドネシア国が世界一の面積を保有して いる。地震大国であり、また群島国という地理的条件から、高波被害や温暖化による海 面上昇の影響を受けるインドネシア国では、沿岸域マングローブ林による津波の緩衝や 海岸浸食防止などの防災効果が見直され、気候変動の適応としても注目が集まっている。 一方、日本国政府は、途上国等において、我が国の有する技術等を活用した排出削減 事業を実施し、そこで達成された排出削減に対する我が国の貢献を適切に評価する二国 間クレジット制度(JCM)の制度構築を進めており、この制度には REDD プラス分野 も含まれている。インドネシアがREDD プラス本格事業化の準備を推進・展開してい る中、REDD プラスの事業許可を取得している我が国の事業者は、まだ多くはない。 我が国の優位性や貢献度をアピールするためには、インドネシアにおける積極的な事業 立ち上げ、事業実施が必要であると考える。 本事業は、経済産業省の委託事業である平成23 年度「地球温暖化問題等対策調査(非 エネルギー起源温室効果ガス関連地球温暖化対策技術普及等推進事業)」、平成24 年度 「地球温暖化問題等対策調査(非エネルギー起源温室効果ガス関連地球温暖化対策技術 普及等推進事業)」及び平成25 年度「途上国における森林の減少・劣化の防止等への我 が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業」を通し、インドネシア国での REDD プラス事業立ちあげの準備を継続して進めており、2013 年に南スマトラ州オー ガン・コムリン・イリール(以下、「OKI」と省略)県の沿岸域に広がる保護林を対象 としたREDD プラス事業の事業許可を取得した。2014 年からは事業許可に基づき、事 業稼働を開始している。本事業を通して、インドネシア共和国における我が国の貢献を 可視化することを目的とする。

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1.2 概要

本事業は、インドネシア南スマトラ州オーガン・コムリン・イリール県(以下、「OKI 県」と省略。)におけるREDDプラス事業である。対象地は、OKI県沿岸部に広がる保 護林内66,500haである。OKI県沿岸部保護林は全体で 105,000haであるが、本事業で はスンガイ・スギハンからスンガイ・ルンプールまでの 66,500ha、海岸線距離にして 180kmのエリアを対象とする。対象地 66,500haの主要構成樹種は、マングローブと内 陸性湿地林であり、OKI県林業局の発表によると、65%1 本事業では、森林減少・劣化のドライバーへの対策、保全活動による森林の回復・成 長の促進と、草地や裸地での植林活動を実施する。これらの REDD プラス活動では、 保護林内に点在する村落コミュニティの人材育成、組織・制度構築を行い、村民の積極 的な事業参加を促し、住民と共に森林を守っていく体制及び仕組み作りを行っていく。 の面積が森林減少・劣化の状 態にある。OKI県保護林は、1986 年に林業大臣により保護林に指定されたが、制定以 前から人々の居住があり、比較的大きな河川の河口域には村落が構成されている。 本事業は、2011 年より調査を開始し、段階的に事業化及びその為の方法論開発、バ イオマス算出手法の検討、組織体制準備、地元コミュニティとの調整を進めている。 2011 年は、対象地 66,500ha にある河川および全ての村落を視察した。これは対象地 域の森林自然状況や村落の様子を知るためである。また、 本事業の為の方法論を調査・ 精査したが、適用できる方法論がなかったため、新規の方法論の開発が課題として抽出 された。 2012 年は、新規方法論の開発および、精度の高いバイオマス量算出手法の為に、地 上調査と航空機Lidar を用いた綿密な森林調査を実施し、精度の高いバイオマス算出手 法を確立した。また、汎用性のある新規方法論「マングローブ等が生息する劣化林にお けるREDD プラス活動のための方法論」を開発した。 2013 年は、広域バイオマス量算出手法の検討、方法論の改良および事業許可「炭素 吸収・固定のための保護林における環境サービス利用事業許可(IUPJL-HL)」の取得 を行った。OKI 県林業局との協議の結果、自然環境の差異などから北側エリアの 23,500ha について先に事業許可を取得した。事業許可取得後、事業計画書(RKU)お よび年次事業計画書(RKT)の承認を得た。これより、REDD プラス事業が開始でき る準備が整った。 2014 年は、事業許可に基づき REDD プラス事業を開始した。対象地内に現場事務所 を建設、現地の村から4 人の事業スタッフを起用し、パイロットプロジェクト地での植 林活動と水循環改善活動を開始している。また、林業省気候変動ワーキンググループ及

1 Dinas Kehutanan Babupaten Organ Komering Ilir. 2009. Rencana Pengelolaan

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び森林保護自然保全総局保護林担当部署との公式会合を開催、及び現地スンガイ・バタ ン村住民代表団とのセーフガード会合を開催した。また、JCM 事業登録を目標に PDD 作成及びセーフガードの項目検討も実施した。

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4

2.

インドネシアにおける REDD プラス動向調査

2.1 インドネシア国における REDD プラス関連の動向

2014 年 10 月のインドネシア大統領の交代に伴い、省庁再編および閣僚人事が行わ れ、体制が大きく改変された。当初27 省庁に再編されるとの噂もあったが、最終的に は34 省で決定された。新しい閣僚人事では、専門家など民間からの登用が半数以上を 占め、それに伴い省内の人事も大きく動くと予想され、現在もまだ進行中である。 REDD プラス関連の動向として、特に注目すべき点は、新しい大統領令の発行に伴 い、REDD+管理庁及び国家気候変動協議会(DNPI)は、環境林業省に統合された。 統合先はまだ公表されていないが、環境林業省内に新設された気候変動制御総局に統合 されるとの見方が有力である。現在、環境林業省の総局再編に伴い、総局内の部署及び 人事が進行中である。これらが決定された後には、REDD プラスに関する法整備など が行われることと思われ、今後の動向に注目したい。 なお、前年度のまでのREDD プラスに関連する動向については、H25 年度の FS 報 告書をご参照頂きたい。

2.2 REDD プラス関連法制度および発行物

REDD プラス全般及び本事業に関連する法制度等について、2014 年、2015 年に発 行されたものを中心に記載する。 2.2.1 政令 2014 年 12 号2 タイトル:「林業省に適応される税以外の国家収入の種類と種別料金表」。 2014 年 2 月 14 日に制定されたこの政令は、林業事業における税金ではない国家 収入に関するものである。この政令の添付資料の中には、税金でない国家収入に関 する支払いが科せられる事業の種類とその種類別の支払金額が記載されている。 2.2.2 林業大臣令 2014 年 50 号3 タイトル:「インドネシア森林エリアの排出ガス削減証明書(Indonesia Certified Emission Reduction)の取引」。

2 Presiden Republik Indonesia. 2014. Peraturan Pemerintah Republik Indonesia

Nomor 12 Tahun 2014.

3 Menteri Kehutanan. 2014. Peraturan Menteri Kehutanan

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2014 年 7 月 14 日に制定されたこの法令は、インドネシア森林エリアの排出ガス 削減証明書(Indonesia Certified Emission Reduction)に関するものである。イン ドネシアにおける森林関連の排出ガス削減事業に関してインドネシア森林エリアの 排出ガス削減証明書の発行までの手順と取引について記されている。  管理許可/権利保有者は、PDD を作成することにより、投資候補者とともにプ ロジェクト開発者になる事ができる。  プロジェクト開発者は、国家登録庁にPDD を登録すること。  PDD はインドネシア法人の独立妥当性確認機関で妥当性の確認を受ける。  独立妥当性確認機関は、国家認可機関(Lembaga Akreditasi Nasional)により

認定済みの機関である。

 妥当性確認による炭素クレジットの算出結果は、排出削減購入協定を通じて取引 することができる。

 PDD は妥当性確認の結果に引き続き、独立検証機関の検証を受ける。

 独立検証機関は、国家認可機関(Lembaga Akreditasi Nasional)により認定済 みの機関である。  独立検証機関の検証の結果、インドネシア森林エリアの排出ガス削減証明書が発 行される。  インドネシア森林エリアの排出ガス削減証明書は、インドネシア炭素認定証市場 を通じて販売することができる。 2.2.3 林業大臣決定書 2014 年 633 号4

タイトル:「森林排出ガスリファレンス(Forest Reference Emission Level)レベルの 決定」。 2014 年 7 月 21 日に発行されたこの決定書では、森林排出ガスリファレンスレベ ルは、2000 年から 2006 年にかけての森林排出ガス平均および 2020 年までの森林 活動以外の開発のために使用する森林排出ガスの予測に基づき、0.816G トン CO2e とすると記載されている。 2.2.4 大統領決定書 2014 年 121 号5 タイトル:「2014 年から 2019 年までの勤労内閣の省の組織及び閣僚の任命)」。 2014 年 10 月 27 日に発行されたこの決定書で、大統領により 34 の省が組織され、 各省の大臣が任命された。

4 Menteri Kehutanan. 2014. Keputusan Menteri Kehutanan

Nomor:SK.633/Menhut-II/2014.

5 Presiden Republik Indonesia. 2014. Keputusan Presiden Republik Indonesia Nomor

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6 2.2.5 大統領令 2015 年 16 号6 タイトル:「環境林業省」 2015 年 1 月 23 日に制定されたこの大統領令は、大統領決定書 2014 年 121 号に で林業省と環境省が統合されたことに基づき、環境林業省の組織化が記されている。 1 つの事務総局、9 つの総局、1 つの部局、2 つの庁、5 人の顧問により組織されて いる。また、大統領令2013 年 62 号で規定された森林減少・森林劣化および泥炭地 からのGHG 削減管理庁(REDD+管理庁)及び大統領令 2008 年 46 号で規定された 国家気候変動評議会(DNPI)の機能は環境林業省の中に組み込まれる。 2.2.6 大統領令 2014 年 97 号7 タイトル:「窓口一本化サービス経営」 2014 年 9 月 18 日に制定されたこの大統領令は、投資認可に関わる申請手続きの 窓口を投資調整庁に一本化することが記されている。 2.2.7 環境林業大臣令 2014 年 97 号8 タイトル:「投資調整庁長官に宛てた窓口一本化サービス実装の枠組みにおける生活 環境部門及び林業部門の許認可/非許認可供与の権限の委譲」 2014 年 12 月 24 日に制定されたこの環境林業大臣令は、大統領令 2014 年 97 号 の制定を受けて、生活環境部門及び林業部門の許認可/非許認可供与の権限を委譲 することが記されている。権限が委譲された環境・林業における事業部門は、  生産林における木材林産物利用分野  生産林/保護林における環境サービス利用分野  林業分野  生産林/保護林地域利用分野  生産林/保護林地帯利用、森林地域開放及び森林地帯の土地利用転換分野  野生植物/野生動物及び保全地帯利用分野

6 Presiden Republik Indonesia. 2015. Keputusan Presiden Republik Indonesia Nomor

16 Tahun 2015.

7 Presiden Republik Indonesia. 2015. Keputusan Presiden Republik Indonesia Nomor

97 Tahun 2014.

8 Menteri Lingkungan Hidup dan Kehutanan. 2014. Peraturan Menteri Lingkungan

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7 2.2.8 環境林業大臣令 2015 年 1 号9 タイトル:「投資調整庁長官に宛てた窓口一本化サービス実装の枠組みにおける生活 環境部門及び林業部門の許認可/非許認可供与の権限の委譲に関する環境林業大臣 令2014 年 97 号の改訂」。 2015 年 1 月 30 日に制定されたこの環境林業大臣令は、環境林業大臣令 2014 年 97 号の改訂版であり、内容の一部が変更されている。  第1 条の 2 項 前出の97 号では、環境・林業部門の国内外の投資がみられる事業の許認可・ 非許認可供与の権限を投資調整庁長官に委譲すると記載されていたが、本法 令では、次の2 つの内容が追加されている。委譲された権限は、環境林業大 臣名の原則同意の署名と許認可・非許認可同意の署名を含む事、原則同意と 許認可・非許認可の同意署名以前の技術的な許認可・非許認可の手続きは、 環境林業省が行う。  第2 条 2 項及び 3 項 前出の97 号では、投資調整庁に出向した官僚は、許認可・非許認可の手続き の際に、環境林業省の代表としての任務を与えると記載されていたが、本法 令では、投資調整庁に出向した官僚の任務は、環境林業省との連絡係として、 許認可・非許認可の手続きに携わるとされている。

2.3 REDD プラス関連機関・組織

前節の「2.2.6 大統領令 2015 年 16 号」でも述べたように、REDD+管理庁及び DNPI が環境林業省に統合される形となった。環境林業省の1 総局である気候変動制御総局に 統合されるとの見方が有力であるが、2015 年 2 月末の現時点で、各総局内の部署や人 事はまだ決定されていない。今後これらの決定がなされた後には、REDD プラスに関 する部署等も明確になると思われる。今後の動向に注目したい。

9 Menteri Lingkungan Hidup dan Kehutanan. 2015. Peraturan Menteri Lingkungan

(14)

8

3.

インドネシアにおける REDD プラスの実装に向けての手続き

3.1 REDD プラス事業の事業許可

3.1.1 REDD プラス事業対象地と事業許可 REDD プラス事業対象地に関するインドネシア法規を精査した。 林業大臣法令2012 年 20 号10によると、森林炭素実施(Penyelenggaraan karbon hutan)が行えるエリアは以下の通りである。 a. 国有林 1. 生産林 2. 保護林 3. 保全林 b. 私有林/民有林 また、REDDプラス活動を行う事ができるエリアとして、林業大臣令 2009 年 30 号11 には以下のように記載されている。 a. 自然林木材林産物利用事業許可(IUPHHK-HA)エリア内 b. プランテーション木材林産物利用事業許可(IUPHHK-HT)エリア内 c. 社会林木材林産物林産物利用事業許可(IUPHHK-HKM)エリア内 d. 民有植林木材林産物利用事業許可(IUPHHK-HTR)エリア内 e. 生態系保全のための木材林産物利用事業許可(IUPHHK-RE)エリア内 f. 生産林管理ユニットエリア内 g. 保護林管理ユニットエリア内 h. 保全林管理ユニットエリア内 i. 保全林 j. 慣習林 k. 権利林 l. 村落林

10 Menteri Kehutanan. 2012. Peraturan Menteri Kehutanan

Nomor :P.20/Menhut-II/2012.

11 Menteri Kehutanan. 2009. Peraturan Menteri Kehutanan

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9 REDD プラス事業許可に関するインドネシア法令を精査した。 政令2007 年 6 号 12「森林ガバナンス、森林管理計画の策定及び森林利用に関する」 法令の第19 条では、森林利用活動の事業許可として、以下の許可が挙げられている。 a. 地域利用事業許可(IUPK) b. 環境サービス利用事業許可(IUPJL) c. 木材林産物利用事業許可(IUPHHK) d. 非木材林産物利用事業許可(IUPHHBK) e. 木材林産物収穫許可(IPHHK) f. 非木材林産物収穫許可(IPHHBK) 3.1.2 本 REDD プラス事業許可の取得 本REDD プラス事業に関して、2013 年にコンセッション(事業許可)を取得した。 取得した事業許可名は、「株式会社ティアラ・アシア・プルマイに対するオーガン・コ ムリン・イリール県アイル・スギハン区ルンプール川 – ムスジまでの保護林、面積約 23,500 ヘクタールにおける炭素吸収固定のための保護林における環境サービス利用事 業 許 可 「 現 地 名 :IZIN USAHA PEMANFAATAN JASA LINGKUNGAN PADA HUTAN LINDUNG(IUPJL-HL) PENYERAPAN DAN PENYINPAN KARBON KEPADA PT. TIARA ASIA PERMAI SELUAS ±ELUASP(DUA PUTLUH TIGA RIBU LIMA RATUS ) HEKTAR DI KELONPOK HUTAN LINDUNG SUNGAI LUNPUR – MESUJI KECAMATAN AIR SUGIHAN KABUPATEN OGAN KOMERING ILIR(以下、IUPJL-HL と省略。)」で、OKI 県県知事決定書 2013 年 579 号 ( KEPUTUSAN BUPATI OGAN KOMERING ILIR NOMOR:579/KEP/D.KEHUT/2013)で発行された。 この IUPJL-HL は、インドネシア国が指定する保護林における、炭素吸収・固定の 為の環境サービスを実施する事業を許可するものである。IUPJL-HL の取得は、イン ドネシア国内において初めての事例である。 当時、この IUPJL-HL を取得するに当たっては、国内に先行事例がなく、また既存 法令には、「環境サービス利用事業許可(IUPJL)」という事業許可の種類や、森林炭素 活動実施エリアとして「保護林(HL)」というキーワードの記載はあるものの、「保護 林における環境サービス利用事業許可(IUPJL-HL)」の記載はなかったことから、慎 重に、関連するインドネシア法規を精査し直し、許可申請を行った。許可取得後にも、

12 Menteri Kehutanan. 2007. Peraturan Menteri Kehutanan

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10 林業省の気候変動ワーキンググループや森林保護自然保全総局保護林担当部署に対し て、本事業許可の参考法規の提示及び申請・取得プロセスについて説明し、違法性はな いとの正当性の確認を行った。 現在では、環境林業大臣令2014 年 97 号などに、「保護林における環境サービス利用 事業許可(IUPJL-HL)」という事業許可が記載されている。また、同年 10 月には長期 事業計画書(現地名:Rencana Kerja Usaha/以下、「RKU」と省略。)及び、年次事 業計画書(現地名:Rencana Kerja Tahunan/以下、「RKT」と省略。)を作成し、そ の両方についても承認を受領した。 3.1.3 事業許可と会費 政令2014 年 12 号「林業省に適用される税金以外の国家収入の種類と種別料金表」 において、林業事業における国家収入について記載されている。恐らく会費の様なもの と思われ、事業許可の種類別に金額が記載されている。本事業許可に関連するもの及び 他のREDD プラス事業に関わってくると思われるものを下記に記載する。 表 3-1 会費が発生する事業許可の種類と種別料金表 会費が発生する事業許可の種類 ユニット 料金額 自然林木材林産物利用事業許可 (IUPHHK-HA) a. スマトラ、スラウェシ、パプア地域 b. カリマンタン、マルク諸島地域 c. ヌサトゥンガラ地域 /許可/ha/年 /許可/ha/年 /許可/ha/年 Rp 3,750 Rp 5,000 Rp 2,000 人工再生植林木材林産物利用事業許可 (THPB) /許可/ha/年 Rp 250 非木材林産物利用事業許可 (IUPHHBK) a. 自然林 b. プランテーション /許可/ha/年 /許可/ha/年 Rp 500 Rp 250 地域利用許可 a. Silvopastural System b. Silvofishery System /許可/ha/年 /許可/ha/年 Rp 2,000 Rp 2,000 生産林における生態系保全木材林産物利用事業許可 (IUPHHK-RE) a. スマトラ、スラウェシ、パプア地域 b. カリマンタン、マルク諸島地域 c. ヌサトゥンガラ地域 /許可/ha/年 /許可/ha/年 /許可/ha/年 Rp 1,900 Rp 2,500 Rp 1,500

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11 生産林における環境サービス利用事業許可 /許可/ha/年 Rp 1,000 民有プランテーション林における木材林産物利用事 業許可 (IUPHHK-HTR) 社会林における木材林産物利用事業許可 (IUPHHK-HKm) 村落林における木材林産物利用事業許可 (IUPHHK-HD) /許可/ha Rp 2,600 会費が発生する活動

樹木損害賠償(Ganti Rugi Tegakan) 立米あたり 標 準 価 格 の 100% 樹木価値変更(Pengantian Nilai Tegakan) 立米あたり 標 準 価 格 の

100% 森林エリアからの炭素吸収固定活動取引 1ton あたり 炭 素 販 売 価 格の10% ※/許可/ha/年は、一つの許可に対して、1 ヘクタール当たり 1 年間に。 本事業許可は、保護林における環境サービス利用事業許可(IUPJL-HL)であり、会費 が発生する事業許可には、当てはまる項目は無い。つまり、本事業では、事業許可に対 する会費は発生しない。本事業で会費の支払いが必要とされるのは、炭素取引を行った 場合の炭素販売価格の10%である。 なお、上記以外にも木材及び林産物の収穫・持ち出しについて樹種別に立米単位ま たは重量単位で、料金が記載されているが、本事業では、木材・林産物の収穫・持ち出 しは一切行わない事から、これについては記載しない。 林業大臣令2009 年 36 号13の第13 条では、事業許可保有者が、1 年以内に会費の支 払いを完了しない場合、大臣、知事、あるいは県知事/市長は、事業許可承認を撤回す る事が記載されている。

13 Menteri Kehutanan. 2009. Peraturan Menteri Kehutanan

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12

3.2 REDD プラス事業登録

今年度FS では、REDD プラスの事業登録調査のための、既存法令を精査した。デ モンストレーションアクティビティの申請・承認手順が記載された林業大臣令2008 年 68 号、REDD 事業に関する申請、審査及び認証の手順が記載された林業大臣令 2009 年30 号、森林炭素経営について記載された林業大臣令 2012 年 20 号、これらどの法令 にも事業登録というシステムに関する記載はない。 林業大臣令2014 年 50 号はインドネシア CER に関する法令であり、この法令では、 第2 条の 4 項にプロジェクト開発者は国家登録庁(Badan Registrasi National)に PDD を登録すること、また、5 項に PDD はオンラインで国家登録庁に登録、記録される、 と記載されている。第1 条の 11 項には、国家登録庁とは、PDD の登録・記録する事を 任務とするとされている。しかしながら、現時点で国家登録庁がまだ設立されていない 為、その任務は林業省事務総局が負う事とされている。また、事業登録に際して提出す るPDD のフォーマット等は示されてない。今回の大統領交代による省庁再編による環 境林業省の設立に伴い、環境林業省の各総局の設置に関する環境林業大臣令2015 年 16 号は発行されているが、この中には、国家登録庁の記載はされてない。今後、国家登録 庁がどこに設置されるのかに注目していきたい。 今後もREDD プラス事業登録に関する調査も含め、本事業の事業登録の手続き準備 を継続していく。

3.3 日本企業の参画体制の検討

ここでは、日本企業がインドネシア国でREDD プラス事業を実施するための参画体 制について検討する。 林業大臣法令2012 年 20 号には、森林炭素実施者として、以下の対象者が定義され ている。 a. 政府 b. (インドネシアの)国有企業/地域所有企業/民間企業 c. 組合 d. コニュニティ― b.の「(インドネシアの)民間企業」の解釈について、インドネシアにある民間の外

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13

資系企業(Perusahaan Modal Asing)は、これに該当するかどうかが焦点であり、様々 な推測がなされている。その為、この解釈について、林業省の気候変動ワーキンググル ープに確認を行った。その結果、「インドネシア国籍の企業であり、代表者がインドネ シア国籍及び100%インドネシア資本である企業」との回答を得た。つまり、外国籍の 企業および外資系のインドネシア国籍企業(Perusahaan Modal Asing)については、 REDD プラスに関する許可の取得は出来ない事となっている。また REDD プラスに関 する許可だけでなく、全ての林業コンセッションも同様である。 インドネシア投資調整庁にも、この「(インドネシアの)民間企業」の解釈について 確認を行った。投資調整庁の解釈では、インドネシアにある外資系企業(Perusahaan Modal Asing)は、インドネシア国籍であるため、「(インドネシアの)民間企業」とい う言葉には反していないとの見解であった。しかしながら、林業省の発行した法令であ るため、林業省の解釈に準ずるべきと思われる。 弊社の REDD プラス事業では、当初、ワイエルグループの現地法人である PT. Yamamoto Asri での許可取得を検討したが、上述した外資系企業の制約があったため に断念を余儀なくされた。その為、企業及び代表者がインドネシア国籍で、100%イン ドネシア資本企業であるPT. Tiara Asia Permai と協働契約を締結し、2013 年 7 月に PT. Tiara Asia Permai の名前で事業許可を取得した。本事業では、ワイ・エルビルデ ィングとPT. Tiara Asia Permai が事業の共同実施者となっている。

2014 年 7 月に発行された、林業大臣令 2014 年 50 号の中では、事業許可保有者と 投資候補者がプロジェクト開発者となりPDD を作成する事ができると記載されている。

(20)

14

4.

プロジェクト情報

4.1 本事業の目的

本事業は、インドネシア共和国南スマトラ州OKI 県の沿岸域に広がる保護林におけ るREDD プラス事業である。本事業では、森林保全及び森林再生・回復活動を実施し、 CO2 排出削減及び炭素ストックの増強を通して、炭素クレジットの創出及び獲得を目 的としている。現在インドネシア政府と日本政府間で合意された二国間クレジット制度 (JCM)の枠組みの下で本 REDD プラス事業を実装するために必要な調査及び準備を 進めるとともに、事業を実施した場合のインドネシア共和国に対する貢献を可視化する 事を目的とする。

4.2 本事業の概要

地元OKI 県林業局の発表によれば、OKI 県沿岸域に広がるに保護林の内、約 65% の面積において森林減少・劣化が進行している。OKI 県の沿岸域保護林は全体で約 105,000ha であるが、OKI 県林業局との協議の結果、本事業ではスギハン川からルン プール川までの 66,500ha をプロジェクト予定地と設定している。2013 年にスギハン 川からタパ岬までの23,500ha のエリアについて REDD プラスの事業許可を取得した。 まずは、この23,500ha を事業対象地として、REDD プラス事業の稼働を開始する。 本事業では、ドライバーに対する適切な予防策を講じ、森林減少・劣化の進行を抑 制することで、CO2 排出量を削減する。更に現在、回復傾向にある森林や幼・若齢林 の成長を促進するとともに、すでに草地化または裸地化したエリアに植林を行うことで 炭素の吸収固定の増強を行う。 当該保護林は、国により保護林として指定されているエリアにも関わらず、自然河 川の河口域には集落が形成され、住民生活が営まれている。インドネシア国において保 護林内の居住は認められていないが、保護林の制定以前から村落が形成されていたこと があり、OKI 県知事はこれらの集落を村(行政区)として認可しているというギャッ プが生じている。 本事業では、この保護林に居住するコミュニティ・住民と協力してREDD プラス事 業活動を実施する。その地に住む住民自身が森を守る意識が定着しない限り、REDD プラス事業は困難であると考えている為、積極的に住民を巻き込んだ事業体制を構築す る。特に森林内でのモニタリングや森林保全・植林活動をはじめとする現地作業などは、 現地住民に教育・技術移転を行い、最終的に彼らが現地作業全般を担えるようにする計 画である。現地住民は、就労機会と現金収入の向上というメリットがあり、またREDD プラス活動に直接従事することで、環境や森林保全に関する意識向上を見込むことがで

(21)

15 きる。

4.3 事業対象地情報

4.3.1 対象地エリア

本REDD プラス事業の事業対象エリアは、OKI 県の沿岸域保護林 105,000ha の内 の66,500ha を予定している。その内、北部の 23,500ha については、2013 年に許可を 取得した。事業対象地は、海岸線沿いに南北に細長く、海岸線距離約180km、幅約 2.5km ~約15km に広がっている。東側が海に面しており、西側が生産林地に隣接している。 当該保護林は、1986 年に林業大臣により保護林に制定された。保護林内の土地は国 有地であるが、保護林の管理・管轄・運営は地元OKI 県行政に委譲され、実務に関し てはOKI 県林業局が担っている。しかし、OKI 県林業局による森林減少・劣化に対す る対策および管理が行き届いていないのが現状である。その理由は、広大な保護林を管 理するための予算が確保できない事、行政区である県都カユ・アグン市から、陸路で3 時間及び水路(スピードボート使用)で6 時間とアクセスが困難な事などが挙げられる。 当保護林の中には、天然河川の河口部に村落の形成されているエリアもある。 表 4-1 対象地エリア情報 対象地 インドネシア共和国南スマトラ州 オーガン・コムリン・イリール県保護林内 面積 約66,500ha (海岸線の前進・後退により今後若干の面積変化は あり得る。) 内、23,500ha は、事業許可取得済み GPS 位置情報 東経105°33′-106°05′ 南緯2°23′-3°25′ 海岸線距離 約180km 面積幅 約2.5km-15km エリア境界 北側:スギハン川 南側:OKI 県保護林 東側:バンカ海峡 西側;内陸の生産林エリア 主要構成樹種 マングローブ及び熱帯の内陸性樹木 自然状況 65%の面積で森林減少・劣化がみられる。

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16 本事業は、66,500ha を事業対象予定地と設定しているが、現在は北部の 23,000ha のエリアにおいて事業許可を取得している。これは、北部地域が比較的森林被覆が残っ ている状況に対し、南部地域は、養殖場開発が進行し極端に森林被覆が少ない状況にあ り、大きな差異があることを理由に、事業コンセッションの種類が異なる可能性がある ため、事業許可取得に関してはエリアを分けることにした。これはOKI 県林業局との 協議の結果決定したことである。 図 4-1 南スマトラ州オーガン・コムリン・イリール県の位置

南スマトラ州

オーガン・コムリン・イリール県

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17 図 4-2 オーガン・コムリン・イリール県保護林内の事業対象予定地

色が付けられた部分が

プロジェクト予定地エリア

ルンプール川

スギハン川

(24)

18 図 4-3 事業許可取得地の 23,500ha の図(赤線囲い内)

バンカ海峡

スギハン川

生産林

保護林

事業対象地

タパ岬

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19 4.3.2 気候・地理 OKI県は年間を通じて熱帯気候であり、季節は乾季と雨季に分けられる。通常、5 月 から10 月が乾季、11 月から 4 月が雨季である。乾季が雨季よりも長くなる年が、5 年 に一度発生する14 下記に、年間気温、年間降水量、年間湿度、気圧・風速・日照量を表で示す。なお、 OKI 県のデータが公表されていない為、OKI 県の属する南スマトラ州のデータを使用 した。公表されている最新のデータは2011 年のデータである。 。 表 4-2 年間気温15 月 気温(℃) 最高気温 最低気温 平均気温 1 月 31.0 23.4 26.2 2 月 31.8 23.4 26.4 3 月 32.3 23.7 26.8 4 月 32.6 24.1 27.1 5 月 33.2 24.4 27.9 6 月 32.9 24.4 27.8 7 月 32.6 24.0 27.4 8 月 34.0 23.9 27.9 9 月 34.6 24.2 28.4 10 月 33.3 24.1 27.3 11 月 32.6 24.2 27.5 12 月 31.4 24.1 26.8

14 Organ Komering Ilir Dalam Angk292.4a 2014, Badan Pusat Statistik Kabupaten

Organ Komering Ilir.

15 Organ Komering Ilir Dalam Angk292.4a 2014, Badan Pusat Statistik Kabupaten

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20 表 4-3 年間降水量16 月 降水量(mm) 雨天日数(日) 1 月 210.2 22 2 月 338.8 19 3 月 392.4 28 4 月 378.4 25 5 月 292.4 17 6 月 65.4 14 7 月 33.8 10 8 月 33.6 6 9 月 14.6 6 10 月 264.9 23 11 月 219.4 22 12 月 348.9 25 表 4-4 年間湿度17 月 湿度(%) 最高湿度 最低湿度 平均湿度 1 月 94 80 87 2 月 94 81 87 3 月 95 75 87 4 月 95 81 87 5 月 91 77 86 6 月 92 75 85 7 月 93 75 85 8 月 83 75 80 9 月 91 70 77 10 月 95 71 84 11 月 93 74 85 12 月 94 82 87

16 Organ Komering Ilir Dalam Angk292.4a 2014, Badan Pusat Statistik Kabupaten

Organ Komering Ilir.をもとに著者作成

17 Organ Komering Ilir Dalam Angk292.4a 2014, Badan Pusat Statistik Kabupaten

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21 表 4-5 年間の気圧・風速・8 時間中の日照量18 月 気圧(mb) 風速(knots) 8 時間中の日照量(%) 1 月 1,008.9 3 36 2 月 1,009.0 3 48 3 月 1,008.8 3 47 4 月 1,009.5 2 49 5 月 1,009.5 2 62 6 月 1,009.0 3 62 7 月 1,009.9 3 64 8 月 1,010.2 3 78 9 月 1,010.9 4 65 10 月 1,009.9 2 58 11 月 1,008.9 2 46 12 月 1,009.1 2 33

18 Organ Komering Ilir Dalam Angk292.4a 2014, Badan Pusat Statistik Kabupaten

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22 4.3.3 事業対象地内の主要河川の分布 事業対象地66,500ha 内には、海に繋がる無数の河川があり、船の往来が可能な川幅 を擁する主要河川では、河口付近に村落が形成されている。村落形成がみられる主要河 川は以下の通り。 図 4-4 事業対象地内の主要河川の分布

A

B

C

D

E

F

G

H

(29)

23 表 4-6 事業対象地内の主要河川名 地図上の 表示番号 河川名 GPS 位置情報 A スギハン川 Sungai Sugihan 2°24'58.31" S 105°33'42.36"E B バタン川 Sungai Batang 2°38'36.83"S 105°38'4.24"E C ジャヌン川 Sungai Janung ―――― D コン川 Sungai Kong 3°14′09.7″S 106°04′31.2″E E ピダダ川 Sungai Pidada 3°18′52.80″S 105°58′57.50″E F ドゥア・ブラス川 Sungai Dua Belas

3°20′15.53″S 105°57′11.85″E G ルボンヒトゥム川 Sungai Lebonghitem 3°21′26.30″S 105°55′47.60″E H ルンプール川 Sungai Lumpur 3°25′11.00″S 105°53′6.20″E 4.3.4 許可取得エリア内の河川の分布 本年度の事業活動において、REDD プラス許可取得エリア内でパイロットプロジェ クトの稼働を実施している。パイロットプロジェクト地は河川沿いの土地、または河川 を利用してアクセスする為、この項では許可取得エリア内の河川について記述する。 事業取得エリア内には、内陸から海に繋がる天然河川が数本存在し、名前がついてい るものだけでも北側から、バビ川、クンペ川、クロ川、チャクル川、バタン川の5 本の 河川が存在する。自然河川以外にも、人工的に水路が掘削されている。この水路は、隣 接する生産林会社が木材を海へ搬出する用途で作られた。 それらの河川の内、村落が形成されているのは、バタン川(スンガイ・バタン)のみ で、それ以外の川には村落はない。

(30)

24 図 4-5 対象地内の天然河川 表 4-7 対象地内の河川名 河川名(北側より) 現地名 村落形成 バビ川 Sungai Babi なし クンペ川 Sungai Kumpai なし クロ川 Sungai Kero なし チャクル川 Sungai Cakur なし バタン川 Sungai Batang あり

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25 4.3.5 植生分布

下の図は2012 年時点の対象地エリア 23,500ha の土地の被覆を分類したものである。

(32)

26

図 4-6 は土地の被覆を表しており、白色の雲がかかっている部分、黒色の雲の影の 部分、青色の水域の部分以外は、それぞれの植生の分布である。濃い緑と薄い緑のエリ アはRhizophora sp.及びBruguiera sp.が分布、黄緑色のエリアはAvicennia sp.が分布、 濃いスミレ色のエリアはMelareuca sp.が分布、薄桃色は、ジェルトン・プライなどの 二次林が分布、薄スミレ色のエリアはNypa sp.が分布、薄橙色のエリアは草地が分布、 灰色のエリアは裸地である。 下記の表は、対象地内66,500ha 内の植生分布面積を表している。 表 4-8 植生分布面積 植生の種類 面積(ha) Rhizophora sp.及びBruguiera sp. 15,086 Avicennia sp. 989 Melaleuca sp. 4,485 二次林 1,903 Nypa sp. 883 草地 12,681 裸地(主だった植生なし) 10,694 4.3.6 村落分布 これらの主要河川の河口部分には、村落が形成されている。これらの村落は、保護林 が制定された1986 年以前の 1978~1979 年に国策として実施されたトランスイミグレ ーションにより移住してきた人々により構成されている。 これらの村落の中で、最も人口が少ない村落は、スンガイ・ジャヌン村の約30 世帯、 最も人口が多い村はルンプール村の約1,000 世帯である。

スギハン川(図 4-4、A)にも 村落は存在するが、スギハン川は OKI 県と Banyuasin 県の県境の河川となり、集落はBanyuasin 県に属する。 表 4-9 事業対象地内の村落 番 号 河川名(Sungai) 村落名(Desa) 行 政 区 (Kecamatan) B バタン川 Sungai Batang スンガイ・バタン村 Desa Sungai Batang

アイル・スギハン区 Kecamatan Air Sugihan C ジャヌ川 Sungai Janung スンガイ・ジャヌン村 Sungai Janung トゥルン・スラパン区 Kecamatan Tulung Serapan

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27 D コン川 Sungai Kong スンガイ・コン村 Sungai Kong トゥルン・スラパン区 Kecamatan Tulung Serapan E ピダダ川 Sungai Pidada シンパン・ティガ・ジャヤ村 Desa Sinpang Tiga Jaya

トゥルン・スラパン区 Kecamatan Tulung Serapan

F ドゥア・ブラス川 Sungai Dua Belas

クアラ・ドゥア・ブラス村 Kuala Dua Belas

トゥルン・スラパン区 Kecamatan Tulung Serapan G ルボンヒトゥム川 Sungai Lebonghitem シンパン・ティガ・マクムル村 Simpang Tiga Makmur

トゥルン・スラパン区 Kecamatan Tulung Serapan H ルンプール川 Sungai Lumpur スンガイ・ルンプール村 Sungai Lumpur トゥルン・スラパン区 Kecamatan Tulung Serapan 上記表の様に、事業対象地エリア66,500ha 内には集落が点在している。スンガイ・ バタン村はアイル・スギハン区、それ以外の村は、トゥルン・スラパン区と行政区画が 異なる。それらの集落の中で、スンガイ・バタン村、シンパン・ティガ・ジャヤ村、ル ボンヒトゥム村の3 村は、OKI 県県知事により公式に村落として認可されている。 4.3.7 村落・コニュニティ情報 取得したREDD プラス事業許可の 23,500ha のエリアは、保護林内に位置するアイ ル・スギハン区域を網羅している。保護林内のアイル・スギハン区に所属する村は、唯 一スンガイ・バタン村のみであり、スンガイ・バタン村に関しての村落・コニュニティ に関する調査は、現在までに完了している。スンガイ・バタン村の情報は、H24 年度 及びH25 年度の FS 報告書に記載した為、ここでは割愛させて頂く。

事業対象地66,500ha に内、事業許可を取得した 23,500ha 以外の 43,000ha につい ては、トゥルン・スラパン区域である。この43,000ha のエリアについては、事業許可 をまだ取得していない為、村落での詳細な調査は実施していない。今後、調査を行って いく予定である。

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28

4.4 森林減少のドライバー

REDD プラス事業を予定している 66,500ha について、ドライバーの特定を行った。 66,500ha のエリアにおいて、ドライバーは北部地域、南部地域により大きく異なる事 から、これらを分けてドライバーの分析を行った。 4.4.1 北部地域 事業対象地 66,500ha の内、北部側のスギハン川からカイット岬手前までの約 52,700ha を北部地域として分析を行った。 【ドライバー1】隣接する生産林の火入れによる延焼や不審火 対象地の内陸側には生産林が広がっている。生産林と保護林の間には境界とし て水路が設けられているが、生産林側の野焼きの火が水路を越え保護林内部にま で及ぶことがある。火入れは雨期が始まる直前に行われ、雨による自然鎮火を予 測して行われるが、雨期の始まりの遅れにより鎮火が遅れ、延焼が広範囲に及ぶ ことも近年ではしばしば発生している。また、次の【ドライバー2】で述べる違 法伐採の際の火災の延焼もある。 【ドライバー2】木材利用の為の違法伐採 保護林内では、現在も違法伐採が行われている。伐採の対象は以前はマングロ ーブの大木、現在はMelaleuca sp.の伐採が行されている。 マングローブの伐採は、バタン川河口域で、1990 年代中盤から後半にかけて 行われていた。全盛期にはバタン川周辺に20 ヵ所の製材所が乱立し、建材用に マングローブの大木の伐採が行われていたが、2000 年に入り、保護林内の違法 伐採の取り締まりが強化され、製材所はすべて閉鎖された。 現在は、バタン村以外の村落がない河川や人工水路でMelaleuca sp.を対象と した伐採が定期的に行われており、今年度の現地調査でその現場跡地を確認でき た。Melaleuca sp.は耐水性が高く、水上高床式民家の足場や柱に多く用いられ、 沿岸地域では建材としてメジャーな木材である。成長が早く、5 年程度で木材利 用に適した大きさになる。今回数か所の伐採現場跡地を確認したが、全てにおい て火を使った伐採が行われていた。Melaleuca sp.は樹幹が細く背丈が高くなり 樹冠が小さい為、Melaleuca sp.の周りには下草が生えやすい。また蔦などの植 物が樹幹に絡まり成長する。その為、伐採の前に森に火を放ち、下草や樹幹に絡 まった蔦などを焼き払い、足場を確保し作業がしやすい状態にしてから伐採され る。Melaleuca sp.は樹皮が何層にも厚く形成されており、火災に遭っても木材 に利用される芯の部分までは燃えにくいため、この様な伐採方法がとられている

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29 と考えられる。河川や水路沿いに伐採現場跡地が見られ、伐採された樹木は河口 付近の河川沿いに運ばれ山積みにされていた。山積みにされた木材には札が立て られ所有者の名前が書かれている。おそらく伐採し集めた木材を、後日大きな船 で運搬すると思われる。この周辺の唯一の村落のバタン村の住民を中心に聞き取 り調査を行ったところ、この不法伐採者は対岸のバンカ島から来ているそうであ る。対岸のバンカ島は波が穏やかな状態ならスピードボートで1 時間の距離であ る。バンカ島から漁業などで訪れた船が、帰りに木材を山積みにして帰っている 様子を見たことがあるとの情報もあった。次の5 枚の写真は、今回撮影した伐採 現場跡地の様子と山積みにされた木材の様子である。 写真 4-1 伐採現場跡地の様子1

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写真 4-2 伐採現場跡地の様子 2

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写真 4-4 伐採した木材を河川沿いに山積みにしている様子

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32 【ドライバー3】養殖場の開拓 養殖場開発の為の伐採及び土地の掘削は、外部からの侵入者により行われたケ ースがほとんどである。OKI 県の南側に位置するランプン州ではエビ養殖が盛ん であるが、ランプン州内での養殖場開発は飽和状態であり、新規開拓地を求めて ランプン州からこの OKI 県に北上進出している。養殖池は、海の波の影響を受 けず、また水流確保のために自然河川の中腹に作られており、海側からは見えに くい位置にある。 この北部地域内では、現在使用されている養殖池はほとんどなく、跡地となっ ている。跡地の形状から、2 パターンの養殖場形態が確認された。1 つ目は、河 川沿いの土地のマングローブ林を皆伐し池を掘るタイプで、通常よくみられる養 殖場の形である。2 つ目は、細い小川を利用したもので、堀を巡らせる様に溝を 掘り小川の水を引き込み、堰を設置しその堀の中で養殖する形態である。この方 法は森林の皆伐を行わず森林被覆率の減少が顕著には現れない為、周囲からは開 拓の事実を気づかれにくい。 現在はこれらの養殖場は放棄され、森林の自然回復傾向にあるが、今後、養殖 池の開拓が再燃する可能性は高い。その理由は3 つあげられる。1 つ目は、近年 のエビ価格の高騰によるエビ養殖業者が増加する事。2 つ目は、南部地域がすで に養殖池開拓が飽和状態にある為、養殖池開拓がこの地域にも北上してくる事。 これは、OKI 県の北側に隣接する Banyuasin 県でも養殖池開拓が行われている ことから、その中間地点にあり沿岸域という養殖池に適した立地条件のこの保護 林でも開発が再燃すると考えれらる。3 つ目は、稚エビ業者が Banyuasin 県に 稚エビ生産場を建設する予定がある事である。現在この周辺エリアで稚エビの生 産業者はなく、購入する場合は、ランプン州の業者から購入しなければならない。 その為、長時間輸送に弱い稚エビを購入することは、養殖業者または養殖農民に とってリスクが高かったが、近隣で稚エビの生産が開始されれば、長時間輸送に よる稚エビの衰弱のリスクが軽減され、エビ養殖業への参入好機が高まる事が考 えられる。これらの要因により、養殖場開発が再燃する可能性は高いと考えられ、 今後の大きなドライバーとなり得る。

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33 写真 4-6 養殖場開発の跡地の様子 【ドライバー4】水路造成及び土壌堆積に起因した環境変化による森林の荒廃 ≪人為的水路造成≫ 内陸に隣接する生産林エリアから海にかけて、保護林内を横断する形で、木材 搬出用用水路が、生産林業者による造成されている。重機を使用し水路を掘り、 その土を水路脇に積上げ、盛り土のようになっている。盛り土状になっているこ とから周辺地帯において、本来の水流が堰き止められ、水循環が悪化したことに よる植生が枯死、荒廃していることが考えられる。このような人工の水路は対象 地内に、現在の使用頻度の違いはあるものの10 本程度確認されている。保護林 内に水路を掘削する場合に、本来は中央の林業省の許可が必要であるが、OKI 県が掘削の許可を発行していることから、中央の林業省内ではこの水路の存在は 認識されていない。また、水路掘削による水循環及び植生の変化については、 OKI 県行政でも認識されいない。

(40)

34

写真 4-7 人工的に造成された水路の様子

バタン川からタパ岬のエリアでは、水路造成による森林荒廃が顕著である。次ペー ジにLANDSAT および Rapid Eye の衛星画像による 1989 年から 2012 年までの経年 変化の様子を示している。黄色い線は境界線を示しており、海岸線から内陸に向かって 保護林を横断するように引かれている境界線は、水路のバッファーゾーンとして事業対 象エリアから外れている。2004 年の画像では水路は確認できないが、2009 年の画像で は造成された水路が明確に確認できる。この2004 年から 2009 年の間に水路が造成さ れ、それに伴って森林の荒廃が進んでいる様子がわかる。

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35 図 4-7 事業対象地南側エリアの経年変化

1989年 LANDSAT

2004年 LANDSAT

2009 年 LANDSAT

2012年 Rapid Eye

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36 ≪自然的土壌堆積≫ スギハン川以南の岬の中心部分で森林減少・劣化が進行している。現地調査で このエリア全体に水が常時停滞している状態であることが確認された。このエリ ア の 植 生 は 、Rhizophora sp.及び Avicennia sp.の樹木が確認できたが、 Rhizophora sp.は立木の状態で枯死し樹幹部は腐朽が始まっており、Avicennia sp.に関しても立木の状態で枯れが始まっている部分があり、樹冠部分の葉量が 減少している。こうした衰退エリアにおける樹冠被覆率は 10%~50%程度であ る。森林衰退の原因としては、滞水による水温や塩分濃度の上昇が考えられる。 滞水の原因究明については追加調査が必要であるが、おそらく岬の海岸線の前進 に関係があると思われる。水流などで土壌が流出し、その土砂が海岸線前面に堆 積し、海岸線が前進する。それと同時に前面に堆積した土砂により内側の排水が 悪くなり、内部からの水流が海に流れ出ることができずに、北部岬の中心部に滞 留していると考えられる。 写真 4-8 北部岬の中心エリアの滞水の様子 水路造成及び土壌堆積等に起因する環境変化により、エリア内の水循環に大き な影響が生じていることが現地調査で確認された。 対象地内の衛星画像による経年変化を観察すると、低被覆地または滞水状態に ある土地の面積が拡大していることがわかる。

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図 4-8 対象地北部岬エリアの衛星画像(青~薄水色のエリアは滞水または低被覆の土地を表す)

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38 【ドライバー5】境界線誤認とそれによる開発 バタン川からタパ岬では、保護林の境界線が明確化されていない。下の地図の 黄緑色の部分が保護林エリアであり、薄橙色の部分が生産林エリアである。赤色 で囲まれた線内が、今回の REDD プラス事業許可取得地域であるが、この地図 に示された地帯では、保護林と生産林の境界線が正確に反映されていない。これ は、生産林会社の境界線の誤認により、保護林内まで開発が及んでいるため、事 業地のコンセッション取得エリアに含まず、保留となっているエリアである。将 来的には、保護林の境界線を正確に反映させる為にも、境界線を明確化させる必 要がある。 図 4-9 対象地の南側エリアの様子 4.4.2 南部地域 事業対象地66,500ha の内、カイット岬手前からルンプール川までの約 13,800ha を 南部地域として分析を行った。この地域では、まだ事業許可を取得していない為、本格 的な現地調査は行えておらず、4 回の現地視察と衛星解析からドライバーを推定してい る。今後、現地調査を通して更なるドライバーの調査が必要であるが、現時点で確認さ れているドライバーについて記述する。 【ドライバー】養殖池開発による伐採 南部地域では、沿岸域一帯に養殖池が分布している。養殖池開発以前は、マン グローブなどの森林であったエリアであるが、養殖池へ転換されるために森林が 伐採されてしまっている。下の図は、南部地域の衛星画像であるが、沿岸域一帯 に四角に区画分けされたものは全て養殖池である。河川の河口には、村落が形成 されており、村落に居住する住民により、現在も養殖業が営まれている。この地

(45)

39 域は、ランプン州に近い事からランプン州との行き来が多く、またルンプール川 は河川が内陸の町と繋がっておりアクセスの良さから、この保護林内で一番大き い村落が形成されている。多くの住民が養殖業に従事しており、今後この養殖池 が放棄され、森林に戻る可能性はき極めて低いと考えられる。 図 4-10 南部地域の様子

H ルンプール川

G ルボンヒトゥム川

F ドゥア・ブラス川

(46)

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4.5 事業活動内容

本事業では、一般的な REDD 要素の森林減少・劣化の抑制だけでなく、森林管理に よる幼・若齢木の成長や自然回復の促進に加え、植林活動による森林の量的・質的の拡 充によるCO2 排出削減・吸収固定を積極的に評価する REDD プラス事業である。 【事業のCO2 排出削減・吸収固定の要素】 ① 森林減少・劣化の抑制によるCO2 排出量削減。 ② 成長過程にある幼・若齢木の成長促進、及び自然回復傾向にあるエリアの森林再 生の促進による炭素吸収固定量の増強。 ③ 草地や裸地などの荒廃地での植林活動による炭素吸収固定量の増進。 図 4-11 事業による CO2 削減・吸収固定のイメージ図

③植林

(AR)

時間経過 CO2 吸収固定量

1990

プロジェクト開始

例)30年間

①森林保護(

REDD)

②自然回復・成長(IFM)

REDD+

(47)

41 4.5.1 実施体制 以下の図は、事業の実施体制のイメージ図である。 図 4-12 実施体制イメージ図 インドネシア政府 日本政府 二国間協定 林業省 森林保護自然保全総局 その他関係省庁 技術相談・報告 報告・調整 準国インベントリー OKI県政府 南スマトラ州政府 OKI県林業局 事業許可発行 実 施 者 ワイエル グループ PT.TAP 協働契約 事業開発・総括 許可取得 事業実施 合同委員会 クレジット申請 クレジット発行 現場事務所 スンガイ・バタン村 コミュニティ コミュニティ調整サポート 協働契約 村長 クロンポック 村民 他の村々 村長 クロンポック 村民 スンガイ・スギハン村 コミュニティ 村長 クロンポック 村民 パレンバン自然資源保全事務所 メダン第2地区 マングローブ林管理事務所 パレンバン第2地区 森林エリア安定化事務所

・・・

協力関係

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42 ● ワイエルグループ

REDD プラス REDD プラス事業の開発及び総括を行う。事業計画、方法論開発、 セーフガード検討、PDD 作成、資金運営、事業関係者全体との調整を行う。PT. Tiara Asia Permai と協働契約を締結し、REDD プラス事業の開発者及び共同実施者とな る。

ワイエルグループは、インドネシア現地法人PT. Yamamoto Asri を持ち、PT. Yamamoto Asri は日本のワイエルグループと PT. Tiara Asia Permai との関係構 築・協力関係のサポートを行う。

● PT.Tiara Asia Permai

インドネシア国籍の企業(BUMS)で、インドネシア人が代表を務める 100% インドネシア資本の企業である。ワイ・エルビルディング株式会社開発部部長兼 PT. Yamamoto Asri 代表取締役が取締役に就任し、ワイエルグループと共同で REDD プラス事業実施を前提として IUPJL-HL の事業許可を取得。現地活動の指 揮統括、技術移転、人材育成、作業実施体制の構築、作業グループの組織化、現地 コミュニティとの調整やセーフガードの実施、各関連省庁などへの報告、普及・啓 蒙活動などを実施する。 2014 年に、スンガイ・バタン村に現場事務所(ベースキャンプの様な施設)を 建設し、スンガイ・バタン村から 2 名、スンガイ・スギハン村から 2 名、合計 4 名の事業スタッフを雇用し、常駐させている。現地事務所に関する活動詳細は、後 の「9 パイロットプロジェクト稼働」の項目で後述する。 ● スンガイ・バタン村コミュニティ スンガイ・バタン村の中でクロンポック(作業グループ)を結成している。村 長をクロンポックリーダーとし、約80 名で構成されている。現地での作業では、 クロンポックを中心とした住民が作業を担う為、村内での説明会・セミナー・技術 移転・人材育成などを実施していく。クロンポックメンバーにまず技術移転し、現 地作業の中核を担う人材を育成する。その後にクロンポックメンバーから住民への 技術移転等を実施していく。保護林内の作業活動は重労働な作業は多くなる為、現 地作業は男性が中心となるが、現地データの集計や報告書作成など、村内で行える 事務的な作業には女性の参画を促し、男女の適切な作業分担により、ジェンダーに よる区別なくREDD プラス活動に参加できる環境を準備する。 スンガイ・バタン村への作業活動は、スンガイ・バタン村にある協同組合 (Koperasi)を通して作業活動実施の発注、支払いを行う。

図  4-6    RapidEye 衛星画像から作成した土地被覆分類図
図   4-6 は土地の被覆を表しており、白色の雲がかかっている部分、黒色の雲の影の 部分、青色の水域の部分以外は、それぞれの植生の分布である。濃い緑と薄い緑のエリ アは Rhizophora  sp.及び Bruguiera  sp.が分布、黄緑色のエリアは Avicennia  sp.が分布、
図   4-8  対象地北部岬エリアの衛星画像(青~薄水色のエリアは滞水または低被覆の土地を表す)
図  5-2  事業許可取得予定地の RapidEye 衛星画像
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参照

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