本事業対象地では、保護林でありながらも村落が存在し、住民生活が営まれている。
このエリアに住む住民にも積極的に、本REDD プラス事業への参加を促し、最終的に は、住民自身が森を守り、また森林からの恩恵を受けられる仕組み作りを行っていく。
1) 住民の生活・生計への影響
北部地域のスンガイ・バタン村周辺では1990年代後半に製材所が乱立し、マ ングローブの違法伐採が行われていた。村民も森林伐採に参加し、木材販売によ る収入を得ていたが、2000年に入り違法伐採の取締りが強化され製材所は全て閉 鎖となった。製材所の最盛期の時には、従来の生業である漁業を中断し木材伐採 に従事する村民も多くいたが、製材所が閉鎖された今では、住民のほとんどが本 来の漁業を生業としている。つまり、現在は森林伐採による収入を得ている村民 はおらず、本REDDプラス事業の実施に伴い、村民の収入減少による生計への影 響は発生しない。
また、製材所があった当時、森林伐採による森林資源の消失により漁獲量が大幅 に減少した事が、住民への聞き取り調査から分かっている。製材所閉鎖後、森林 の自然再生による森林機能の回復に伴い、漁獲量が回復してきたとの情報もあり、
スンガイ・バタン村住民は、漁業による生活の安定のためには森林資源の拡充が 必要不可欠であるとの認識を持っている。その為、本REDDプラス事業に関して、
村全体から歓迎を受けている。
本 REDDプラス事業では、現地作業における活動をスンガイ・バタン村のク ロンポック(作業グループ)を中心とし、住民に担ってもらう計画である。その 為、現在の生業である漁業を行いつつ、事業による森林活動・作業が発生するこ とにより、雇用の機会つまり現金収入が追加的に得られる状態になる。
南部地域では、沿岸域のほとんどのエリアが養殖池に転換されている。これら の養殖池にシルボフィッシャリー技術を導入し、養殖池の中にマングローブの植 林を行うが、養殖池の土地を没収するなどの措置は取らず、住民は継続して養殖 業を営むことができ、住民生活及び生計は確保される。シルボフィッシャリー池 への転換時の、土地の造成やマングローブ植林作業などは、こちらから技術的・
資金的な支援を行い、住民がシルボフィッシャリーを導入しやすい体制及び仕組 み作りを実施する。また、シルボフィッシャリー池におけるマングローブの育成 管理や水産物の養殖技術に関する技術移転・サポートを継続して行うことにより、
恒久的な森林の維持及び養殖業での収穫を安定させることによる住民の生活基盤 の安定化に貢献する。
本REDDプラス事業により、住民生活及び生計に関しては、マイナス要因を発
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生させずに、エリア全体の村民の生活基盤を安定させることができる。
保護林の中ではいかなる森林の伐採も禁止されているが、住民生活の為には木 材の利用は必ず発生する。住民の住居や漁業の為の建材などを確保するために、
村落区域内に村林を造成する計画である。保護林から除外される住民居住区域内 に村落林を作り、伐採後には植林・育成し、また森林配給量を村全体で管理する ことで、持続的に生活木材の供給を確保するための支援を行う。循環型の村林経 営を行うことで、保護林を傷つけずに住民の生活に関わる木材利用の基盤を確保 する計画である。この点については、林業省森林保護自然保全総局保護林担当部 署と協議・調整を行いながら進めていく予定である。
保護林内の海水・汽水域にはマングローブが植生する地帯であるが、それ以外 には内陸性の植物が生息する。このエリアは、現在二次林として Melaleuca sp.
が進出、増加しているが、本来の原生林の樹種には、ジェルトンやプライなどで ある。その為、植林には、本来の原生種であるジェルトンの植林も適切な場所に 実施する計画である。ジェルトンは、ゴムの木のように樹液を採集することがで き、これはチューイングガムやラテックスの原料となる。また長期間の採集が可 能である事から、継続的な住民の副収入にも成りえる。このように、森を守り育 てることにより、木を伐採せずに、森林からの恩恵を受けられる。
2) 事業活動への参加とそれによる格差
本事業における現地活動の作業内容には、現場での労働と村内での事務的作業 がある。現場での労働に関しては、溝掘りや森林の中を長距離移動するモニタリ ング作業や植林作業など肉体的に重労働となる作業もあるため、男性が担う場面 が多くなることが予想される。しかし、植林用の種の収集・集計・選別やモニタ リングデータの集計・報告書の作成などの軽作業は女性や高齢者など体力的な制 限を受けずに担うことができる。本事業では適切な作業分担により、男性だけで なく女性などの参画を促し、ジェンダーによる格差を発生させない様、細心の注 意を図る。
2014 年に、本事業対象地内に、現場事務所(ベースキャンプの様なもの)を 建設した。この現場事務所には、村から4名のスタッフを雇用し、常駐させ、事 業者側と住民側のパイプ役を果たす。住民の考えや意見を広く集める場として、
常に現場事務所は住民に開放している。事業に関する問題の相談や疑問や不満を 伝える窓口としての役割を担い、双方のアクセス体制を整えておくことにより、
事業に対する安心感や理解を高め。事業への参加を促進する。
また村全体の公平性を担保するために、作業の請負単価の一定化や将来的に発
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生するクレジットの収益やジェルトンなどの副産物収入の分配などを開示する。
具体的には、現場事務所の前に掲示板などを設置し、これらの情報を公開するこ とで、住民全員が確認・理解できる様な仕組み作りを計画している。
3) 生物多様性への配慮
本事業では植林を実施するが、その際には外来種の持ち込みは行わず、その土 地の在来種を適切な場所に植林し、本来の生態系を壊さないように細心の注意を 払う。
生物に関しては、本保護林内には絶滅危惧種を含む生物が生息している。これ らの生物を傷つけたり、生活圏を脅かしたりする事の無いように細心の注意を払 う。また、これら絶命危惧種の扱いに関しては、インドネシアの法規に則り、パ レンバンにある自然資源保全事務所と報告・調整しながら行っていく予定である。
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広域モニタリング手法の適用5.1 前年度までに構築したモニタリング方法論
平成 24年度に実施したFS調査では、サンプリングプロットによる地上調査と衛星 画像及び航空レーザ測距(Lidar)によるリモートセンシング調査を組み合わせ、パイ ロットエリア(2,000ha)における高精度なバイオマス量推定とモニタリング手法開発 を実施した。
平成 25年度に実施した FS調査では、さらに広域のモニタリング手法を開発するた め、比較的低コストで広範囲の空間体積を把握することができる、ALOS/PRISM画像 を用い、これとLidar等による空間体積を比較することによって、事業許可取得済みの
23,500haを対象にバイオマス量推定とモニタリング手法開発を実施した。
これまでに構築したモニタリング方法論の概要を図 5-1に示す。
図 5-1 これまでに構築したモニタリング方法論の概要
55 5.2 今年度のモニタリング・分析結果