インドネシアの内航船需要に関する調査
2007 年 3 月
社団法人 日 本 中 小 型 造 船 工 業 会
助 成
は じ め に
17,000
余 り の 島 々 か ら 形 成 さ れ る 世 界 最 大 の 島 嶼 国 家 で あ る イ ン ド ネ シ ア で は 、社 会 経 済 の 発 展 、国 民 生 活 の 維 持 時・向 上 に 海 運 が 非 常 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。同 国 の 造 船 所 は 、規 模 と し て は 日 本 の 中 規 模 造 船 所 に 匹 敵 す る ス ラ バ ヤ の
P.T. PAL造 船 を は じ め 、 ジ ャ カ ル タ 、 バ タ ム 島 な ど 国 内 各 地 に 存 在 す る 。こ の イ ン ド ネ シ ア 造 船 業 界 は 今 、飛 躍 へ の チ ャ ン ス を 掴 み つ つ あ る 時 期 で も あ る 。従 来 同 国 は 、海 運 業 の 振 興 が お ろ そ か に さ れ 、日 本 を 始 め 殆 ど の 国 が
100% 自 国 籍 船 で 行 っ て い る 国 内 海 上 輸 送 の
45% が 外 国 籍 船 で 行 わ れ 、同 国 の 貿 易 外 収 支 を 悪 化 さ せ る 一 因 と な っ て い る 。こ れ に 対 し 、
JICAの 支 援 の 下 、 国 内 海 上 輸 送 を 将 来 イ ン ド ネ シ ア 国 籍 船 の み に す る こ と と し て お り 、こ れ に 伴 い イ ン ド ネ シ ア 造 船 業 界 は 国 内 船 主 か ら の 大 き な 造 船 需 要 が 期 待 で き る 状 況 に な っ て い る 。ま た 、バ タ ム 島 で は 海 外 か ら の 投 資 環 境 を 改 善 す る こ と な ど に よ り 、多 く の 外 資 に よ る 造 船 所( 特 に シ ン ガ ポ ー ル )が 進 出 し て い る 。ま た 、近 年 の 急 増 す る 鉄 鋼 需 要 に 伴 っ て 粗 鋼 生 産 の た め の 原 料 炭 の 増 産 が 行 わ れ て お り 、カ リ マ ン タ ン の 炭 鉱 の 新 規 開 発 な ど が 行 わ れ て お り 、 輸 送 用 船 舶 需 要 を 引 き 起 こ し て い る 。
加 え て 、
2004年
10月 に ユ ド ヨ ノ 新 大 統 領 が 就 任 し た 後 、
2005年
3月 に 外 国 船 の 国 内 貨 物 輸 送 を 原 則 禁 じ る 沿 岸 航 行 規 則 の 大 統 領 令 の 発 布 に よ り 海 運 振 興 を 図 っ た 。ま た 、新 造 船 建 造 資 金 を 獲 得 し 本 規 則 の 円 滑 な 運 用 を 図 る た め に 国 内 海 運 会 社 に 対 す る 外 国 資 本 の 導 入 を 認 め る 一 方 、シ ン ガ ポ ー ル の
1.4倍 、マ レ ー シ ア・タ イ の
2倍 と い わ れ る イ ン ド ネ シ ア の 港 湾 で の コ ン テ ナ 取 扱 料 金 の 引 き 下 げ を 決 定 し 外 航 船 誘 致 を 図 る な ど 、海 事 関 連 分 野 に お い て 積 極 的 な 振 興 策 を 実 現 可 能 な 方 法 で 進 め て き た 。
本 調 査 は 、こ の よ う な 状 況 の 下 、イ ン ド ネ シ ア の 海 運 、造 船 、関 連 工 業 を 取 り 巻 く 環 境 及 び 政 策 に つ い て も 調 査 、整 理 す る と と も に 、こ れ か ら の 展 望 、 内 在 す る 問 題 を 明 ら か に し 、わ が 国 造 船 業 、関 連 工 業 事 業 者 、及 び 海 事 関 係 者 の 参 考 に 供 す る こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。
ジ ェ ト ロ ・ シ ン ガ ポ ー ル ・ セ ン タ ー 船 舶 部
( 社 団 法 人 日 本 中 小 型 造 船 工 業 会 共 同 事 務 所 )
デ ィ レ ク タ ー 田 中 信 行
目 次
1 イ ン ド ネ シ ア の 経 済 ・ 投 資 環 境 ...1
1-1 イ ン ド ネ シ ア の 経 済 概 況...1
1-1-1 基 礎 デ ー タ...1
1-1-2 マ ク ロ 経 済...1
1-1-3 貿 易 動 向 ...6
1-2 イ ン ド ネ シ ア 投 資 動 向...8
1-2-1 投 資 環 境 全 般...8
1-2-2 低 調 に 終 わ っ た 2006年 の 直 接 外 国 投 資... 11
1-2-3 新 投 資 法 ... 12
1-2-4 投 資 促 進 に 向 け た 政 策 ... 12
1-3 2007 年 以 降 の イ ン ド ネ シ ア 経 済 動 向 見 通 し ... 15
2 イ ン ド ネ シ ア 海 運 業 の 現 状... 17
2-1 大 統 領 指 令 の 発 令 と そ の 背 景... 17
2-2 大 統 領 指 令 の 発 令 後 の 動 き ... 22
2-3 大 統 領 指 令 の 発 令 の イ ン パ ク ト... 25
3 海 運 会 社 ア ン ケ ー ト と 主 要 企 業 ... 27
3-1 海 運 会 社 ア ン ケ ー ト... 27
3-2 主 要 海 運 会 社 の 概 要... 35
4 造 船 業 界 の 現 状 ... 41
4-1 造 船 業 界 の 概 要... 41
4-2 造 船 所 ア ン ケ ー ト... 43
5 船 舶 需 要 ... 49
5-1 貨 物 量 予 測 ... 49
5-2 海 運 需 要 が 見 込 ま れ る 貨 物 ... 50
5-3 日 本 か ら の 輸 出 可 能 性... 53
別 添 資 料 1) ARPENI PRATAMA OCEAN LINE 所 有 船 舶 リ ス ト···57
2) BERLIAN LAJU TANKER 所 有 船 舶 リ ス ト ···58
3) HUMPSS所 有 船 舶 リ ス ト ···60
4) PT Pelayaran Tempuran Emas Tbk 所 有 船 舶 リ ス ト ···63
5) PERTAMINA SHIPPING所 有 船 舶 リ ス ト ···64
6) SAMUDERA 所 有 運 営 コ ン テ ナ 船 リ ス ト···65
7) SAMUDERA 子 会 社 所 有 船 舶 リ ス ト ···66
8) そ の 他 の ア ン ケ ー ト 回 答 海 運 会 社 7社 の 所 有 船 舶 リ ス ト···72
9) ア ン ケ ー ト 回 答 海 運 会 社 ( う ち 12 社 ) の 調 達 予 定 船 舶 リ ス ト···74
10) ア ン ケ ー ト 回 答 造 船 所 の 従 業 員 数···75
1 インドネシアの経済・投資環境
1-1 イ ン ド ネ シ ア の 経 済 概 況1-1-1 基 礎 デ ー タ
表 1
面 積 192.2万 平 方 キ ロ メ ー ト ル(日 本 の 5.1倍) 人 口 約 2 億 2,200 万 人 人(2005 年 時 点 推 計)
人 種 大 半 が マ レ - 系 ( ジ ャ ワ 、 ス ン ダ 等 27 種 族 に 大 別 ) 宗 教 イ ス ラ ム 教 87% 、 キ リ ス ト 教 10% 、 ヒ ン ズ - 教 2%
政 体 共 和 制
元 首 ス シ ロ・バ ン バ ン・ユ ド ヨ ノ 大 統 領(2004 年 10 月 20 日 就 任 、任 期 5 年 ) 国 会 (1) 国 民 協 議 会 (MPR、 定 数 700 名 、 内 500 名 が 国 会 議 員 の 兼 任 、135
名 が 地 域 代 表 、65 名 が 諸 組 織 代 表 )
(2) 国 会(DPR、定 数 500名 、内 38 名 は 大 統 領 が 指 名 し た 軍 人 、比 例 代 表 制 、 任 期 5年 )
内 閣 内 閣 は 大 統 領 の 補 佐 機 関 で 、 大 統 領 が 国 務 大 臣 の 任 免 権 を 有 す る 。
出 所 :JETRO国 ・ 地 域 別 情 報 、 日 本 外 務 省
1-1-2 マ ク ロ 経 済 (1) 概 要
1980年 代 以 降 、イ ン ド ネ シ ア で は ス ハ ル ト 政 権 の も と で 積 極 的 な 外 資 導 入 政 策 が 採 用 さ れ 、 同 国 は 1990 年 に は 9% 、1995 年 に は 8.2%1と い う 高 い 経 済 成 長 を 達 成 し た 。 し か し 、1997年 7月 に タ イ で 発 生 し た 通 貨 危 機 の 影 響 を 受 け 、同 国 通 貨 ル ピ ア ア は 米 ド ル に 対 し 1 年 間 で 95% 切 り 下 が り 、外 貨 建 で 借 入 を 行 っ て い た 政 府 、企 業 の 負 担 は 増 大 し 、 通 貨 危 機 は 経 済 危 機 へ と 発 展 し た 。通 貨 危 機 後 は IMF プ ロ グ ラ ム に も と づ い た 経 済 運 営 が 行 わ れ た 。そ の 後 、経 済 の 混 乱 は 次 第 に 収 束 に 向 か い 、2000年 に は 経 済 成 長 率 4.9% に ま で 回 復 し た 。 し か し 、2001年 に は 3.8% に 再 度 落 ち 込 み 、 そ の 後 は 4% 前 半 の 成 長 率 に 留 ま っ て い た 。
2004年 10 月 、 イ ン ド ネ シ ア 初 の 大 統 領 直 接 選 挙 で ス シ ロ ・ バ ン バ ン ・ ユ ド ヨ ノ 大 統 領 が 国 民 の 高 い 支 持 を 受 け て 当 選 し た 。 同 年 の GDP成 長 率 は 5.1% と 5%台 を 回 復 し 、 翌 2005 年 に は 5.6% と い う 経 済 危 機 後 最 高 の 成 長 率 を 記 録 し た 。2006年 は 、前 半 は 4%
台 に 鈍 化 し た2が 、 最 終 的 に は 前 年 2005年 の 5.6% と ほ ぼ 横 ば い の 5.5%と な っ た3。 ユ ド ヨ ノ 大 統 領 は 、 ① 法 、 平 等 、 人 権 を 尊 重 す る 社 会 の 実 現 、 ② 治 安 の 安 定 、 ③ 貧 困 削 減・雇 用 拡 大 の た め の 経 済 成 長 促 進 、の 3 点 を 就 任 時 に 公 約 と し て 掲 げ て い る が 、こ の 公 約 の 達 成 に 向 け て 強 い リ ー ダ ー シ ッ プ を 取 り 続 け て お り 、 安 定 し た 政 権 基 盤 の 構 築 に 成 功 し た と 評 価 さ れ て い る4。2007 年 1 月 に ユ ド ヨ ノ 大 統 領 と 会 談 し た IMF の ラ ト 専 務 理 事 も 、「 マ ク ロ 経 済 の 安 定 と い う 観 点 か ら す れ ば 、イ ン ド ネ シ ア は 極 め て 重 要 な 成 果
1 ADB『Key Indicator of Developing Asian and Pacific Countries』 よ り
2 信 金 中 央 金 庫 『 イ ン ド ネ シ ア の 投 資 環 境 』2007年1月24日
3 2007年1月31日 、 ユ ド ヨ ノ 大 統 領 に よ る 年 頭 テ レ ビ 演 説 。(時 事 ニ ュ ー ス 2007年2月1日)
4 み ず ほ 総 合 研 究 所 『 ユ ド ヨ ノ 政 権 下 の イ ン ド ネ シ ア 経 済 』2006年2月 14日
を 達 成 し た 。」と 述 べ て い る 。た だ し 、同 専 務 理 事 は「 今 必 要 な の は 、成 長 を 加 速 さ せ る こ と だ 」 と も 指 摘 し て い る5。
表 2インドネシア主要経済指標
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
実質GDP成長率 (%) ▲13.1 0.8 4.9 3.8 4.3 4.5 5.1 5.6
失業率 (%) 5.5 6.4 6.1 8.1 9.1 9.6 9.9 10.3
貸出金利(運転資金) (%) 32.2 27.7 18.5 18.6 19.0 17.0 14.3 16.0
中央政府財政収支/GDP (%) ▲2.1 ▲2.3 ▲1.2 ▲2.8 ▲2.4 ▲1.9 ▲1.4 ▲0.5
一般政府総債務/GDP (%) 74.6 99.2 102.7 86.0 71.6 64.9 59.5 52.0
財サービス輸出額 (10億USドル) 54.8 55.8 70.6 62.9 65.8 69.4 88.4 100.1
財サービス輸入額 (10億USドル) 44.0 43.0 56.0 50.5 52.7 56.9 79.1 91.8
経常収支/GDP (%) 4.3 4.1 4.8 4.2 3.8 3.4 0.7 0.3
外貨準備(金除く) 10億USドル 22.7 26.4 28.5 27.2 31.0 35.0 35.0 33.0
輸入カバー倍率 (月) 6.2 7.4 6.1 6.5 7.1 7.4 5.3 4.3
総対外債務/GDP (%) 158.5 108.0 87.5 81.7 64.9 57.4 54.6 46.4
純対外債務/GDP (%) 118.7 76.4 63.3 58.2 44.2 38.4 37.7 30.2
外貨準備/短期対外債務 (倍) 0.0 1.4 1.3 1.3 1.4 1.6 1.7 1.4
総対外債務/輸出 (%) 275.7 270.8 204.5 213.3 200.8 197.3 159.1 133.3
純対外債務/輸出 (%) 206.6 191.6 148.0 151.9 136.8 131.9 109.7 86.7
デット・サービス・レシオ (%) 31.7 30.0 22.5 23.6 24.7 25.5 22.1 26.0
為替相場(年平均) (US$1=) 10,014 7,855 8,422 10,261 9,311 8,577 8,939 9,710 出 典 : 中 央 銀 行 、 財 務 省 、 中 央 統 計 局 、IMF、 世 界 銀 行 、ADB 出 所 : 日 本 格 付 研 究 所 ソ ブ リ ン レ ポ ー ト 2006年11月
(2) 産 業 構 造
イ ン ド ネ シ ア に お け る 産 業 構 造 を 、2005 年 の 業 種 別 GDP寄 与 度 か ら 見 る と 、下 記 図 表 1 に あ る と お り 製 造 業 が 28%と 最 も 高 く な っ て お り 、次 い で 商 業 の 17%、農 業 の 15%
と 続 い て い る 。
農業 15%
鉱業 9%
製造業 建築業 28%
6%
商業 17%
その他 5%
行政部門 4%
公益事業(電気、ガ ス、水道)
1%
金融・家屋賃貸 9%
運輸・通信 6%
図 1 2005年実質GDP業種別寄与度
出 所 :ADB Key Indicators 2006
各 業 種 別 の 成 長 率 を 見 る と 、2005 年 は 全 業 種 で プ ラ ス 成 長 と な っ た 。 特 に 運 輸 ・通 信 分 野 が 高 い 成 長 率 を 示 し て お り 対 前 年 比 13%増 で あ る 。 ま た 、 商 業 、 建 築 業 が 同 8.6%
増 、7.3%増 と 続 い て い る 。 製 造 業 は 、 上 記 図 表 2 の と お り 重 要 な 産 業 と な っ て い る が 、
5 Reuters 2007年 1月 24日
成 長 率 は 2004年 の 6.4%か ら 2005 年 に は 4.6%成 長 と 、や や 成 長 の ス ピ ー ド を 落 と し て い る 。
表 3 実質GDP各業種別成長率
区 分 2002年 2003年 2004年 2005年
農 業 3.2% 3.2% 3.3% 2.5%
鉱 業 1.0% -1.4% -4.5% 1.6%
製 造 業 5.3% 5.3% 6.4% 4.6%
公 益 事 業 ( 電 気 、 ガ ス 、 水 道 ) 8.9% 4.9% 5.2% 6.5%
建 築 業 5.5% 6.1% 7.5% 7.3%
商 業 3.9% 5.4% 5.7% 8.6%
運 輸 ・ 通 信 8.4% 12.2% 13.4% 13.0%
金 融 ・ 家 屋 賃 貸 6.4% 7.2% 7.7% 7.1%
行 政 部 門 0.4% 0.9% 1.7% 1.9%
そ の 他 7.4% 8.0% 7.9% 8.1%
出 所 :ADB Key Indicators 2006
(3) 為 替 お よ び イ ン フ レ 率
イ ン フ レ 率 は 2002 年 春 を ピ ー ク に 低 下 傾 向 を 辿 っ た こ と を 受 け 、中 央 銀 行(イ ン ド ネ シ ア 銀 行)は 利 下 げ を 継 続 し 、2004 年 以 降 イ ン フ レ が 上 昇 し 始 め て も 低 金 利 政 策 を 変 更 し な か っ た 。 イ ン フ レ は 加 速 し た が 、 低 金 利 政 策 が 続 い た た め 、 実 質 金 利 は 2005 年 に 入 っ て マ イ ナ ス と な っ た 。2005 年 8 月 に 入 り 、 中 央 銀 行 は 政 策 金 利 (BI 金 利 ) を 25bps(8.5%か ら 8.75%)へ と 引 き 上 げ た が 、 こ の 小 幅 な 利 上 げ は 金 融 引 き 締 め に 対 し 躊 躇 す る 態 度 を 市 場 に 示 す 結 果 と な っ た 。原 油 価 格 高 騰 、ス マ ト ラ 島 沖 地 震 ・津 波 後 の 食 料 価 格 の 上 昇 、 更 に 2005 年 の 燃 料 価 格 の 値 上 げ の 断 行 な ど を 背 景 に イ ン フ レ 圧 力 が 強 い 中 で の 上 記 金 融 引 き 締 め の 遅 れ は 、 投 資 家 の 市 場 に 対 す る 不 信 感 を 買 い 、 急 激 に 資 本 が 流 出 し 為 替 相 場 が 下 落 し 、株 価 も 同 時 に 下 落 す る と い う 混 乱 を き た し た 。2005年 8 月 に は 、 対 1US ド ル が 1 万 ル ピ ア ア を 超 え た 時 期 も あ る が 、 1 万 の 大 台 を 割 り 込 ん だ の は メ ガ ワ テ ィ 政 権 発 足 の 約 半 年 後 に 当 た る 2003 年 3 月 以 来 の 3 年 半 ぶ り で あ っ た 。
そ の 後 、2005 年 9 月 に 中 央 銀 行 は 8.75%で あ っ た 政 策 金 利 を 、10%に 引 き 上 げ 、同 年 末 ま で に さ ら に 12.5%に ま で 引 き 上 げ た 。 ま た 、 財 政 構 造 改 善 た め に 大 幅 な 燃 料 補 助 金 の 削 減 も 行 っ た 。 さ ら に 同 年 12 月 に は 、 経 済 閣 僚 を 中 心 に 内 閣 改 造 を 行 っ た 。 経 済 閣 僚 の 要 で あ る 経 済 担 当 調 整 相 に は 、 前 メ ガ ワ テ ィ 政 権 で マ ク ロ 経 済 運 営 の 実 績 が あ る ブ デ ィ オ ノ 前 財 務 相 、財 務 相 に は 元 IMF 理 事 の ス リ・ム リ ア ニ 前 国 家 開 発 企 画 庁 長 官 が 就 任 し た 。 中 核 経 済 閣 僚 の ポ ス ト に 実 績 の あ る テ ク ノ ク ラ ー ト を 起 用 し た 経 済 チ ー ム が 発 足 さ せ た の で あ る 。 こ の マ ク ロ 経 済 運 営 の 改 善 を 示 唆 す る 動 き を 受 け 、 海 外 投 資 家 の 信 認 は 回 復 し 、 ル ピ ア ア 金 利 の 高 さ も あ い ま っ て 多 額 の ポ ー ト フ ォ リ オ 資 本 が 流 入 す る よ う に な っ た 。 な お 、 ム リ ア ニ 財 務 相 は 、 英 投 資 情 報 誌 『 エ マ ー ジ ン グ ・ マ ー ケ ッ ツ 』 か ら ア ジ ア 地 域 の ベ ス ト 財 務 相 に 選 出 さ れ て お り 、 英 金 融 情 報 誌 『 ユ ー ロ マ ネ ー 』 か ら も
「 世 界 の 今 年 の 財 務 相 」 に 選 出 さ れ た6。
6 時 事 通 信 2006年 9月 19日
2005 年 10 月 に 引 き 上 げ ら れ た 燃 料 価 格 の 影 響 が 尾 を 引 き 、2006 年 9 月 ま で は 高 い イ ン フ レ 率 が 続 く が 、 同 年 10 月 以 降 は 落 ち 着 き 始 め た 。 中 央 統 計 局 の ル ス マ ン 長 官 は
「 イ ン フ レ 動 向 は 石 油 燃 料 値 上 げ の 影 響 が な く な り 、 新 し い 局 面 に 入 っ た 」 と 分 析 し て い る7。ま た 、政 策 金 利 も 2006 年 7 月 よ り 8 回 に わ た っ て 徐 々 に 下 げ る よ う 方 向 転 換 し て お り 、2007 年 2 月 現 在 は 9.25%と な っ て い る 。 イ ン フ レ 率 は 、2005年 末 発 足 の 新 規 経 済 チ ー ム の 主 導 下 で 落 ち 着 き 、2005年 で は 通 年 17.11% で あ っ た が 、2006 年 は 6.6% に 収 ま っ た 。
図 2 ルピアア対ドル為替相場の推移 図 3 インフレ率(対前年比)の推移
出 所 : イ ン ド ネ シ ア 中 央 銀 行
出 所 : イ ン ド ネ シ ア 中 央 銀 行 出 所 : イ ン ド ネ シ ア 中 央 銀 行
表 4 消費者物価指数(CPI)上昇率対(前月比)
2005年 2006年 2007 年
月 CPI 上 昇 率(%) CPI 上 昇 率(%) CPI 上 昇 率(%) 1月 118.53 1.43 138.72 1.36 -
2月 118.33 -0.17 139.53 0.58 - 3月 120.59 1.91 139.57 0.03 - 4月 121.00 0.34 139.64 0.05 - 5月 121.25 0.21 140.16 0.37 - 6月 121.86 0.50 140.79 0.45 - 7月 122.81 0.78 141.42 0.45 - 8月 123.48 0.55 141.88 0.33 - 9月 124.33 0.69 142.42 0.38 - 10月 135.15 8.70 143.65 0.86 - 11 月 136.92 1.31 144.14 0.34 - 12月 136.86 -0.04 145.89 1.21 - 通 年 CPI
上 昇 率 17.11 6.60 1.04
出 所 : イ ン ド ネ シ ア 中 央 統 計 局
7 時 事 通 信 2006年 11月 1日
0 5 10 15 20
Jan- 04
May- 04
Sep- 04
Jan- 05
May- 05
Sep- 05
Jan- 06
May- 06
Sep- 06
Jan- 07
% 8500
9000 9500 10000 10500 11000 11500
2004 2005 2006 2007
表 5 政策金利(BIレート)の変動
変更期日 BI レート
2005/7/5 8.50%
2005/8/9 8.75%
2005/9/6 10.00%
2005/10/4 11.00%
2005/11/1 12.25%
2005/12/6 12.75%
2006/1/9 12.75%
2006/2/7 12.75%
2006/3/7 12.75%
2006/4/5 12.75%
2006/5/9 12.50%
2006/6/6 12.50%
2006/7/6 12.25%
2006/8/8 11.75%
2006/9/5 11.25%
2006/10/5 10.75%
2006/11/7 10.25%
2006/12/7 9.75%
2007/1/4 9.50%
2007/2/6 9.25%
出 所 : イ ン ド ネ シ ア 中 央 銀 行
(4) 財 政 運 営
経 済 の 成 長 、為 替 相 場 の 安 定 を 達 成 し 、財 政 赤 字 は 確 実 に 縮 小 し て い る 。2001年 に は 対 GDP 比 2.8%で あ っ た 財 政 赤 字 は 、2005 年 に は 0.5%に ま で 縮 小 し て い る(上 記 図 表 1 参 照)。 政 府 債 務 の 水 準 も 順 調 に 下 が り 、 総 債 務 (IMF 融 資 を 含 む ) の GDP 比 は 2006 年 6 月 末 に は 44%と 2000 年 末 の 103%か ら 大 き く 低 下 し た8。 さ ら に 、2006 年 6 月 に IMF 債 務 の 50%で あ る 約 37.6 億 USド ル を 、 同 年 10 月 に は 残 る 約 32 億 US ド ル を 返 済 し 、 前 倒 し 完 済 を 達 成 し た 。IMF 債 務 の 償 還 期 限 は 2010 年 で あ っ た が 、 大 幅 に 早 い 完 済 と な っ た 。
前 倒 し 債 務 完 済 の 背 景 に あ る の が 、 好 調 に 推 移 す る 経 常 収 支 と 外 貨 準 備 高 で あ る 。 イ ン ド ネ シ ア は 1997 年 に 始 ま っ た ア ジ ア 通 貨 危 機 で 打 撃 を 受 け 、 ス ハ ル ト 政 権 下 だ っ た 同 年 か ら IMF の 経 済 プ ロ グ ラ ム 下 に 入 っ た 。 ム ル ヤ ニ 財 務 相 は 、IMF の 貸 付 金 利 が 引 き 上 げ ら れ た こ と や 外 貨 準 備 高 の 増 加 を 背 景 に 、2006年 2 月 ご ろ か ら 前 倒 し 返 済 を 提 案 し た 。 前 倒 し 完 済 に よ り 、 金 利 負 担 を 前 半 の 50%返 済 だ け で 2 億 USド ル 削 減 で き た9。 外 貨 準 備 高 の 急 増 は 、2005年 9 月 以 降 の ポ ー ト フ ォ リ オ 資 本 の 流 入 に よ っ て 生 じ た も の で あ る10。こ の 資 金 流 入 は 、上 記(3)で 述 べ た と お り 、金 融 政 策 の 見 直 し(大 幅 な 利 上 げ)、 燃 料 補 助 金 の 削 減 、 信 頼 の 厚 い 経 済 閣 僚 の 就 任 に 伴 う 市 場 へ の 安 心 感 か ら も た ら さ れ た も の で あ る 。ま た 、政 治 的 な リ ス ク を 冒 し つ つ も 2005年 10月 に 断 行 さ れ た 燃 料 補 助 金 の 削 減 は 、 財 政 に 対 し て 石 油 価 格 の 上 昇 な ど に 対 す る よ り 強 い 抵 抗 力 を 与 え る こ と に な っ た 。
8 日 本 格 付 け 研 究 所 ソ ブ リ ン レ ポ ー ト 2006年 10月
9 時 事 通 信 2006年 9月 5日
10 日 本 格 付 け 研 究 所 ソ ブ リ ン ・ ・ク ォ ー タ リ ー ・ ・レ ビ ュ ー 2006年 6月30日
今 後 も 市 場 の 信 認 の 厚 い 経 済 チ ー ム に よ る 慎 重 な マ ク ロ 経 済 の 運 営 が 行 な わ れ る 中 で 、 債 務 の 水 準 は 低 下 し て ゆ く 可 能 性 が 高 い11。
1-1-3 貿 易 動 向 (1) 輸 出 入 動 向
2006年 の 輸 出 高 は 、対 前 年 度 比 17.5%増 の 、1,006 億 9,030 万 USド ル に 達 し 、史 上 初 め て 1,000億 USド ル の 大 台 を 突 破 し た 。一 方 、輸 入 高 は 前 年 比 5.9%増 の 610億 7,810 万 US ド ル で 、 貿 易 黒 字 は 同 41.7% 増 の 396 億 1220 万 ド ル に 拡 大 し た 。
品 目 別 で 見 る と 、輸 出 で は 石 油 ・ガ ス が 国 際 相 場 の 上 昇 を 反 映 し 前 年 比 10.2%増 の 211 億 8,830 万 ド ル と な っ た 。 非 石 油 ・ガ ス 部 門 は 対 前 年 比 19.7%増 の 795 億 200 万 ド ル と 好 調 な 伸 び を 見 せ た 。特 に 、電 気 機 器 ・部 品 部 門 の 占 め る 割 合 が 全 体 の 9.2%と 最 も 多 く 、 伸 び 率 も 前 年 比 26%増 と 堅 調 で あ る 。ま た 、パ ー ム 油 輸 出 の 好 調 を 受 け 、植 物 性 油 脂 の 輸 出 は 全 体 の シ ェ ア 7.56%、 対 前 年 比 54%増 で あ る 。
輸 入 を 品 目 別 に 見 る と 、 石 油 ・ガ ス 製 品 が 全 体 の 3 割 を 占 め る 。7 割 を 占 め る 非 石 油 ・ ガ ス 製 品 で は 、機 械 ・同 製 品 お よ び 鉄 鋼 ・同 製 品 が そ れ ぞ れ 輸 入 全 体 の 17.6%、6.8% を 占 め 、伸 び 率 も 33% 、24%と な っ て お り 、企 業 に お け る 設 備 投 資 、生 産 動 向 の 好 調 が 伺 え る 。
下 記 表 は 2005 年 ま で の デ ー タ と な っ て い る が 、 速 報 に よ る と 2006 年 の 非 石 油 ・ガ ス の 輸 入 元 は 2005 年 ま で は 日 本 が 首 位 で あ っ た が 、2006 年 は 中 国(55億 370 万 USド ル) が 初 の ト ッ プ と な っ た 。
11 日 本 格 付 け 研 究 所 ソ ブ リ ン ・ ・ク ォ ー タ リ ー ・ ・レ ビ ュ ー 2006年 9月25日
表 6 インドネシア商品別輸出入
注 :*2006年 に つ い て は 速 報 報 道(2007年 2月 1日)に よ り 記 入 。 ま た 、 灰 色 の 部 分 は 速 報 報 道 値 よ り 計 算 し 、 記 入 し た も の 。
出 典 : イ ン ド ネ シ ア 中 央 統 計 局 出 所 :2004-2005年 に つ い て は 『 ジ ェ ト ロ 貿 易 投 資 白 書 2006年 版 』 2006 年 に つ い て は 速 報 報 道 に よ り 記 入 表 7 インドネシア 主要国・地域別輸出入
2004年 2004年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
日本 15,962 18,049 21.1 13.1 6,082 6,906 12.0 13.6
アジアNIES *1 9,072 11,053 12.9 21.8 3,450 4,498 7.8 30.4
韓国 4,830 7,086 8.3 46.7 1,943 2,869 5.0 47.7
ASEAN *2 12,998 15,825 18.5 21.8 11,494 17,040 29.5 48.2
シンガポール 6,001 7,837 9.1 30.6 6,083 9,471 16.4 55.7
中国 4,605 6,662 7.8 44.7 4,101 5,843 10.1 42.5
中東 2,342 2,868 3.3 22.5 3,720 4,654 8.1 25.1
米国 8,767 9,868 11.5 12.6 3,225 3,879 6.7 20.3
中南米 828 1,025 1.2 23.9 985 1,114 1.9 13.1
EU25 9,006 10,238 12.0 13.7 5,321 5,827 10.1 9.5
ロシア・東欧 643 878 1.0 36.6 959 958 1.7 △0.1
アフリカ 1,359 1,669 1.9 22.8 2,341 1,607 2.8 △31.4
合計 71,585 85,660 100.0 19.7 46,525 57,701 100.0 24.0
[注] *1 シンガポールを除く。
*2 インドネシアを除くASEAN加盟9カ国
(単位:100万ドル, %) 輸入
輸出
2005年 2005年
出 所 :『 ジ ェ ト ロ 貿 易 投 資 白 書 2006 年 版 』 2004年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 構成比 伸び率
非石油・ガス製品 55,939 66,429 77.5% 18.8% 79,502 79.0% 19.7%
電気機器・部品 6,573 7,328 8.6% 11.5% 9,243 9.2% 26.1%
動植物性油脂 4,421 4,951 5.8% 12.0% 7,612 7.6% 53.8%
鉱物性燃料 2,916 4,486 5.2% 53.8% 8,196 8.1% 82.7%
ゴムおよび同製品 2,999 3,581 4.2% 19.4% 7,018 7.0% 96.0%
木材および木製品 3,271 3,111 3.6% △4.9% -- -- -- 石油・ガス製品 15,645 19,232 22.5% 22.9% 21,188 21.0% 10.2%
原油 6,241 8,146 9.5% 30.5% -- -- --
石油製品 1,654 1,921 2.2% 16.1% -- -- --
ガス 7,750 9,183 10.7% 18.5% -- -- --
総額 71,585 85,660 100.0% 19.7% 100,690 100.0% 17.5%
2004年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 構成比 伸び率
非石油・ガス製品 34,793 40,243 69.7% 15.7% 42,103 68.9% 4.6%
機械・同製品 6,311 8,076 14.0% 28.0% -- 17.6% -- 鉄鋼・同製品 2,717 3,345 5.8% 23.1% -- 6.8% -- 電気機器・部品 2,776 3,329 5.8% 19.9% -- -- -- 有機化学品 3,258 3,244 5.6% △0.4% 4,996 8.2% 54.0%
輸送機器 2,423 3,061 5.3% 26.3% 3,457 5.7% 12.9%
石油・ガス製品 11,732 17,458 30.3% 48.8% 18,975 31.1% 8.7%
原油 5,831 6,797 11.8% 16.6% -- -- --
石油製品 5,892 10,615 18.4% 80.2% -- -- --
ガス 9 15 0.0% 75.3% -- -- --
総額 46,525 57,701 100.0% 24.0% 61,078 100.0% 5.9%
貿易収支 25,060 27,959 11.6% 39,612 41.7%
(単位:100万ドル)
2005年
2005年 2006年*
輸 出
2006年*
輸 入
区 分
区 分 区 分
輸 出
輸 入
- - -
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(2) 自 由 貿 易 協 定 関 連
① 日 本 と の経 済 連 携 協 定 (EPA:Economic Partnership Agreement)12
日 本 と イ ン ド ネ シ ア の EPAに つ い て は 、2003年 よ り 予 備 協 議 が 開 始 さ れ 、2005 年 6 月 の ユ ド ヨ ノ 大 統 領 訪 日 の 際 に 両 国 首 脳 に よ っ て 日 本 ・ イ ン ド ネ シ ア 経 済 連 携 協 協 定
(JIEPA) 交 渉 の 開 始 が 合 意 さ れ た 。 第 1 回 交 渉 は 2005 年 7 月 に 行 わ れ 、 続 い て 同 年 10 月 、2006年 に は 2 月 、4 月 、8 月 、10 月 と 計 6 回 の 交 渉 が 行 わ れ 、同 年 11 月 に は 大 筋 合 意 に 達 し た 。
JIEPAの 網 羅 す る 内 容 は 物 品 貿 易 、サ ー ビ ス 貿 易 、税 関 手 続 き 、投 資 、自 然 人 の 移 動 と 関 連 す る 協 力 、 エ ネ ル ギ ー ・ 鉱 物 資 源 、 知 的 財 産 、 政 府 調 達 、 競 争 、 ビ ジ ネ ス 環 境 の 整 備 と 企 業 の 信 頼 の 醸 成 、そ し て 協 力 と 、広 範 囲 に 及 ん で い る 。物 品 貿 易 の 自 由 化 で は 、 両 国 と も 、協 定 発 効 後 10年 以 内 に ほ ぼ す べ て の 品 目 の 関 税 を 撤 廃 す る こ と に 合 意 し た 。 今 後 は 、 そ の 内 容 に 沿 っ て 、 日 ・ イ ン ド ネ シ ア 間 で 協 定 案 文 の 確 定 作 業 を 行 い 、 両 国 の 代 表 者 間 で 署 名 す る こ と と な る 。2007 年 中 の 発 効 を 目 指 し て い る 。
た だ し 、 イ ン ド ネ シ ア 側 に と っ て 同 協 定 の 最 終 合 意 の 前 提 条 件 で あ る 新 投 資 法 案 の 国 会 審 議 は 難 航 し て い る 。 イ ン ド ネ シ ア 政 府 は 、 新 投 資 法 の 2006 年 中 の 成 立 を 目 標 と し て い た が 、 国 会 各 会 派 は 慎 重 姿 勢 を 示 し 、 細 則 を 盛 り 込 む 意 見 が 強 く 、 審 議 は 硬 直 化 し て い る13。
② 中 国 ・ASEAN 自 由 貿 易 協 定 (ACFTA)
2002 年 11 月 、「ASEAN-中 国 包 括 的 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 」 が 締 結 さ れ 、 右 「枠 組 み 協 定 」に 則 り 、2004 年 11月 に「ASEAN-中 国 包 括 的 協 力 枠 組 み 協 定 に お け る 物 品 貿 易 協 定 」 が 締 結 さ れ た 。 「枠 組 み 協 定 」に 則 り 、 ア ー リ ー ハ ー ベ ス ト (EHP) が 2004 年 前 後 よ り 実 施 さ れ た(国 に よ っ て 開 始 年 が 異 な る)。 イ ン ド ネ シ ア の 中 国 と の EHP 対 象 品 目 は 46 品 目(パ ー ム 油 や 家 具 な ど)で 、2004 年 1 月 1 日 か ら 関 税 率 を 10%に 下 げ 、2006 年 1 月 に こ れ ら の 関 税 を 撤 廃 し た 。
ま た 、「 物 品 貿 易 協 定 」 に 則 り 、2006 年 7 月 よ り EHP 対 象 品 目 以 外 の 品 目 に つ い て 関 税 の 引 き 下 げ が 実 施 さ れ 始 め た 。ASEAN6 お よ び 中 国 は 、2010 年 ま で に 物 品 の 90%
に つ い て 関 税 を 撤 廃 す る こ と に な る 。
イ ン ド ネ シ ア は そ の 他 に も 、 米 国 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 、 イ ン ド14と の FTA 開 始 に 向 け 研 究 し て い る が 、 い ず れ も 大 き な 進 展 は な い 。
1-2 イ ン ド ネ シ ア 投 資 動 向 1-2-1 投 資 環 境 全 般
イ ン ド ネ シ ア は 、か つ て は 日 本 か ら の 直 接 投 資 の 最 大 の 受 入 国 だ っ た が 、1997年 の ア ジ ア 危 機 を 境 に 日 本 か ら の 投 資 流 入 は 大 幅 に 減 少 し た 。 そ の 後 、 同 国 経 済 は 次 第 に 落 着
12経 済 連 携 協 定(EPA:Economic Partnership Agreement)は 、自 由 貿 易 協 定 の 内 容 を 基 礎 と し な が ら 、 投 資 や 、例 え ば 看 護 師 や 介 護 労 働 者 と い っ た ヒ ト の 移 動 を 促 進 さ せ た り 、政 府 調 達 、競 争 政 策 、知 的 財 産 な ど の 分 野 で の ル ー ル づ く り 、さ ら に は 様 々 な 分 野 で の 協 力 を 通 じ て 、各 種 経 済 制 度 の 調 和 等 を 図 る な ど 、 よ り 幅 広 い 対 象 分 野 に つ い て 経 済 関 係 の 強 化 を 図 る こ と を 目 的 と し た 協 定
13 時 事 通 信 2006年 12月27日
14 Xinhua、2005年8月 14日
き を 取 り 戻 し た が 、 日 本 か ら の 直 接 投 資 の 多 く は そ の 間 に 台 頭 し た タ イ 、 中 国 、 ベ ト ナ ム な ど に 向 か う よ う に な っ た 。 イ ン ド ネ シ ア に は こ れ と い っ た 投 資 優 遇 策 が 存 在 せ ず 、 ま た 機 械 部 品 な ど の 裾 野 産 業 が 国 内 に 育 っ て い な い な ど の 問 題 か ら 、 投 資 メ リ ッ ト を 充 分 に 活 用 し に く い 状 況 に あ る こ と が そ の 背 景 と し て 挙 げ ら れ る15。
こ れ に 加 え 、 高 速 道 路 や 港 湾 設 備 な ど の イ ン フ ラ の 整 備 の 遅 れ 、 労 働 問 題 、 賄 賂 の 横 行 、 治 安 の 悪 化 な ど の 要 因 が 、 外 資 に よ る 直 接 投 資 を 妨 げ て い る と い え る 。
(1) 投 資 環 境 の 改 善 課 題
JBICの ア ン ケ ー ト 調 査16で は 、イ ン ド ネ シ ア の 投 資 環 境 改 善 の 課 題 と し て 挙 げ ら れ て い る の が 、 ① 治 安 ・ 社 会 情 勢 が 不 安 、 ② イ ン フ ラ の 未 整 備 、 ③ 他 社 と の 激 し い 競 争 お よ び 通 貨 ・ 物 価 の 不 安 定 、 ④ 管 理 職 ク ラ ス の 人 材 確 保 が 困 難 で あ る こ と 、 ⑤ 法 制 の 運 用 が 不 透 明 で あ る こ と 、 で あ る 。 ま た 、 未 整 備 な イ ン フ ラ の 内 訳 と し て 最 も 深 刻 な も の と し て 挙 げ ら れ て い る の が 電 力 、 次 い で 道 路 、 通 信 、 水 関 連 で あ る 。
ま た 、 イ ン ド ネ シ ア 、 タ イ 、 マ レ ー シ ア 、 フ ィ リ ピ ン 、 ベ ト ナ ム 、 シ ン ガ ポ ー ル 、 イ ン ド 、 中 国 を 比 較 す る と 、 現 地 ト ッ プ マ ネ ジ メ ン ト の 不 在 を 問 題 視 す る 日 系 企 業 は イ ン ド ネ シ ア で 最 も 多 く な っ て い る 。 ま た 、 地 場 系 企 業 の 技 術 力 不 足 を 問 題 視 す る 企 業 の 数 は 、 中 国 に 次 い で 2 位 と な っ て い る 。
(2) 優 位 点
上 記 JBIC の 調 査(2006年 )に よ る と 、将 来 の 有 望 事 業 展 開 先 と し て イ ン ド ネ シ ア を 挙 げ る 企 業 数 は 前 年 よ り 減 少 し 、 全 体 に お け る 得 票 率 で も 減 少 し た 。 し か し イ ン ド ネ シ ア を 有 望 視 し て い る と 答 え た 企 業 が そ の 理 由 と し て 挙 げ て い る の は 、 ① 市 場 の 成 長 性 、
② 安 価 な 労 働 力 、 ③ 第 三 国 輸 出 拠 点 と し て の 位 置 付 け 、 ④ 市 場 の 現 状 規 模 で あ る17。 た だ し 2006 年 に 関 し て は 、 前 年 の 燃 料 価 格 上 昇 な ど に よ る 物 価 高 騰 を 反 映 し て 、 最 低 法 定 賃 金 上 昇 率 が 平 均 21% と 急 激 に 上 昇 し た 。水 準 の 高 い 地 域 は 、ジ ャ カ ル タ 、バ タ ム の ほ か 、 ベ カ シ 、 タ ン ゲ ラ ン な ど の 首 都 周 辺 地 域 で あ る 。 ス ハ ル ト 政 権 時 代 は 労 働 運 動 が 制 限 さ れ て い た が 、 同 政 権 後 は 民 主 化 に よ る 労 働 運 動 が 盛 ん に な っ て お り 、2006 年 は ジ ャ カ ル タ で 15.1% 、 バ タ ム 島 で 28.3% と 上 昇 率 が 大 き く な っ て い る 18。
15 信 金 中 央 金 庫 『 イ ン ド ネ シ ア の 投 資 環 境 』2007年1月 24日
16 JBIC『 わ が 国 製 造 業 企 業 の 海 外 事 業 展 開 に 関 す る 調 査 報 告 』2006年11月
17 同 上
18 信 金 中 央 金 庫 『 イ ン ド ネ シ ア の 投 資 環 境 』2007年1月 24日
- 10 -
表 8 アジア主要国の投資コスト比較(2005年)
(単位:USドル)
シンガポール タイ フィリピン ベトナム マレーシア 中国
比較項目 上海
ワーカー賃金(一般工職) 131(月額) 85~100(月額) 105~239(月額) 159~234(月額) ― 455~604(月額) 146(月額) 182(月額) 111~185(月額) 205(月額) 172~301(月額)
エンジニア賃金(中堅技術者) 270(月額) 351~501(月額) 303~498(月額) 339~648(月額) ― 1,668(月額) 316(月額) 279(月額) 249~373(月額) 790(月額) 334~593(月額)
中間管理職賃金(課長クラス) 618(月額) 300~1,003(月額) 737~1,219(月額) 660~1,320(月額) ― 2,831~3,154(月額) 584(月額) 649(月額) 572~1,054(月額) 1,643(月額) 772~1,521(月額)
非熟練工:61.32~63.51/月
準熟練工:62.42~64.61/月
熟練工:63.51~65.71/月
0.16 (月額) 40ドル/41年+管理費
0.075ドル
事務所賃料(平方メートル当り) 22.00~26.00(月額) 9.99(月額) 18.88~35.40(月額) 9.49~14.23(月額) 15.83~36.55(月額) 34.79~36.06(月額) 11.67(月額) 7.4(月額) 23.00(月額) 9.96~14.21(月額) 28.35(月額)
.駐在員用住宅借上料 1,800~2,500(月額) 1,470~1,881(月額) 1,535~3,289(月額) 1,534~2,631(月額) 767~4,933(月額) 1,528.5~2,645.5(月額) 1,581(月額) 1,726(月額) 2,200(月額) 924~1,056(月額) 3,400~3,500(月額)
3.39 2.26(6~9時、12~22時) 0.79~1.18 固定電話からの料金:0.79 0.79~1.18 (1)1.65、(2)1.35
(平日9~12時) 2.72(9~12時)(月間通話時間により異
なる) 携帯電話からの料金:0.94 (月間通話時間により異なる)
1.70(22~6時) (1)土日、7~23時
(平日料金) (2)(1)以外の時間帯
月間基本料金:2.71/
kVA 月間基本料金:2.79/
kVA 月間基本料金:なし 月間基本料金:3.95/kW 月間基本料金:7.76 (1)月額基本料金:
4.14/kW 月間基本料金:4.27~
5.39/kW 月間基本料金: 月間基本料金:なし 月間基本料金:4.57/kW 月額基本料金:なし
kWh当たり料金:0.04 kWh当たり料金:0.06 kWh当たり料金:0.09
kWh当たり料金:0.08(最初の 10万kWh)、0.09(それ以上の消
費) kWh当たり料金:0.06
(契約量内の場合。契約 量超過分は10.56Sドル
/kW)、
kWh当たり料金:0.041~
0.042 17.27+6.93/kW kWh当たり料金:0.05~
0.06(電圧により異なる) kWh当たり料金:0.05 1kwh当たり:0.04~0.11
(2)kWh当たり料金: (契約電力により異なる) kWh当たり料金:0.11 (時間帯により変動あ
り)
0.098(7~23時)、
0.058(23~7時)
0~5,000万ルピア:
10% 0~5,000万ルピア:10% 33.66% 33.66% 33.66% 20%(2008年課税年度より
18%) 30% 35% 28% 28% 33%
5,000万超~1億ルピ ア:15%
5,000万超~1億ルピア:
15% (実効税率) (実効税率) (実効税率) (実効税率) (実効税率) (実効税率) (実効税率) (実効税率) (実効税率)
1億ルピア超:30% 1億ルピア超:30%
10% 12.50% 12.50% 12.50% 5%(2007年7月1日より
7%) 7% 10% 0%、5%、10% 売上税:5~25% 17%
(国税) (VAT)(標準税率) (VAT)(標準税率) (VAT)(標準税率) (物品サービス税(GST)) (財貨サービス税(GST)) (VAT)(標準税率) (VAT)(標準税率) (品目により異なる) (VAT)(標準税率)
(品目により異なる)
サービス税:5%
ジャカルタ バタム島 ニューデリー バンガロール ムンバイ シンガポール バンコク マニラ ホーチミン クアラルンプール
法定最低賃金 82.16/月 81.75/月 69.41/月 54.68/月 ― 4.40/日 4.85/日 54.84/月 ― 85.50(月額)
インドネシア インド
工業団地借料(平方メートル当り) 3.60~4.10(月額) 3.94~6.06(月額) ― 3.79~5.92(月額) ― 4.95~12.50(月額) 4.86(月額) 1.00(月額) ― 1.00(月額)
.国際通話料金(日本向け3分) 0.9912 1.46 1.2 1.43 3
.業務用電気料金(KWhあたり)
法人所得税(%)
付加価値税(%) 10%
出所:ジェトロ海外情報ファイル『投資コスト比較』
(単位:USドル)
1-2-2 低 調 に 終 わ っ た 2006 年 の 直 接 外 国 投 資
直 接 外 国 投 資(実 現 額)は 、2005 年 に は 史 上 2 番 目 89 億 US ド ル を 記 録 し た 。 し か し 2005年 10 月 の 石 油 燃 料 値 上 げ に よ る コ ス ト 増 大 等 購 買 力 低 迷 が 響 き 、再 び 投 資 に ブ レ ー キ が か か り 、2006年 の 実 績 値 は 前 年 比33% 減 の59億 7,600万 USド ル に 留 ま っ た19。
(2007年 2 月 現 在 、投 資 調 整 庁 の URL に は 2006年 11 月 ま で の 数 値 し か 公 表 さ れ て い な い た め 、 下 記 図 表 10 は 11月 ま で の 数 値 の み 。)
分 野 別 で は 、2006 年 は 金 属 ・ 機 械 ・ 電 子 部 門 が 最 も 多 く 全 体 の 約 20%、 次 い で 紙 ・ 製 紙・印 刷 部 門 、自 動 車・そ の 他 輸 送 機 器 部 門 が そ れ ぞ れ 全 体 の 10%を 占 め 上 位 と な っ て い る(い ず れ も 同 年 11 月 ま で の 実 績)。2006 年 に 大 き く 減 少 し た の は 、 化 学 ・ 医 薬 品 部 門 、 運 輸 ・ 通 信 ・ 倉 庫 業 、 建 設 業 で あ る 。
表 9 インドネシア分野別外国直接投資実現額
( 単 位 :100 万 USド ル )
分類 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
(1-11月)
I 第一次産業 144.7 102.5 253.4 308.5 407.8 467.1 1 農業 64.1 9.0 219.2 161.0 171.5 336.3 2 牧畜業 4.3 8.0 1.1 20.2 52.8 16.5 3 林業 - - - - 118.8 - 4 水産業 11.0 1.1 1.0 5.3 5.8 15.8 5 鉱業 65.3 84.4 32.1 122.0 58.9 98.5 II 第二次産業 2,198.5 1,552.2 1,880.4 2,803.3 3,502.1 3,115.6 6 食品 133.1 219.3 319.2 574.3 598.8 314.6 7 繊維 286.9 117.7 152.4 165.5 70.9 418.1 8 皮革・製靴 21.4 57.4 5.8 13.2 47.8 51.8 9 木材 45.9 19.3 157.8 4.1 91.0 58.9 10 紙・製紙・印刷 376.5 26.5 8.4 414.3 9.9 440.3 11 化学・医薬品 710.1 527.5 282.2 614.1 1,152.9 196.6 12 ゴム・プラスチック 103.0 57.7 99.9 81.0 398.5 108.0 13 非金属鉱物 13.2 54.1 42.9 107.1 66.2 94.8 14 金属・機械・電子 385.3 352.5 434.5 312.8 522.9 890.6 15 医療器具・光学機器 3.7 0.4 6.5 13.0 3.1 0.2 16 自動車・その他輸送機器 91.7 90.0 313.5 402.6 359.7 424.8 17 その他 27.7 29.8 57.3 101.3 180.4 116.9 III 第三次産業 1,166.2 1,435.4 3,316.6 1,489.3 5,004.7 1,117.2 18 電気・ガス・水道 195.3 - 76.7 6.1 68.7 104.6 19 建設業 129.5 13.7 106.7 385.6 921.9 133.5 20 貿易・商業 81.8 162.8 307.4 672.7 380.2 398.9 21 ホテル・レストラン 35.5 18.2 80.3 89.5 180.3 110.9 22 運輸・通信・倉庫業 190.7 1,166.9 2,667.5 103.8 2,946.8 116.6 23 不動産・工業団地・オフィス関連 133.9 15.3 0.7 35.2 208.3 194.7 24 その他サービス 399.5 58.5 77.3 196.4 298.5 58.0
3,509.4
3,090.1 5,450.4 4,601.1 8,914.6 4,699.9 合計
出 所 : 投 資 調 整 庁 (BKPM)
国 別 で は 、2006 年 に お け る デ ー タ は 公 表 さ れ て い な い が 、BKPM の 担 当 者 に よ る と 日 本 か ら の 投 資 は 大 幅 に 減 少 し て い る20。下 記 の と お り 直 接 投 資(認 可)額 を 見 る と 、2005 年 に は シ ン ガ ポ ー ル が 金 融・通 信 業 へ 大 き く 投 資 し 、ト ッ プ に 踊 り 出 た 。2006 年 の 投 資 額 も 他 国 を 大 き く 引 き 離 し て お り 、 シ ン ガ ポ ー ル 一 国 で イ ン ド ネ シ ア 直 接 外 国 投 資 認 可 額 の 12.3%を 占 め る (10 月 期 ま で )。 た だ し 、1967 年~2006 年 ま で の 累 積 値 で 見 る と 、 日 本 か ら の 投 資 が 全 体 の 13.7%と ト ッ プ で あ る 。
19 時 事 通 信 2007年 1月 24日 お よ び 日 経 新 聞2007年 2月 5日
20 日 経 新 聞 2007年 2月 5日
表 10 インドネシア国別直接外国投資認可額
2000 2001 2002 2003 2004 2005
寄与度 寄与度
日本 1,819 818 519 1,252 1,689 1,176 362 (2.7%) 43,089 (13.7%)
英国 3,680 793 747 999 1,318 1,529 858 (6.5%) 27,892 (8.9%)
シンガポール 608 1,173 3,377 801 617 3,933 1,629 (12.3%) 31,016 (9.9%)
香港 141 41 1,712 258 20 125 288 (2.2%) 17,042 (5.4%)
台湾 134 84 83 117 69 133 216 (1.6%) 16,898 (5.4%)
米国 237 88 469 212 133 91 123 (0.9%) 11,715 (3.7%)
韓国 711 374 378 166 419 417 653 (4.9%) 12,441 (4.0%)
中国 124 6,055 47 264 25 205 100 (0.8%) 7,128 (2.3%)
その他とも合計 16,015 15,207 9,956 14,327 10,418 13,579 13,212 (100%) 314,421 (100%) 2006/1-10月 1967~2006/10累計
出 典 :BKPM資 料 出 所 : 信 金 中 央 金 庫 『 イ ン ド ネ シ ア の 投 資 環 境 』
2006年 は 輸 出 が 好 調 な パ フ ォ ー マ ン ス を 見 せ る 一 方 で 投 資 が 不 振 で あ り 、こ の 投 資 の 不 振 が 成 長 の ス ピ ー ド を 減 速 さ せ る 、 と い う 構 図 と な っ た 。 ユ ド ヨ ノ 大 統 領 は 年 頭 演 説 に お い て 、 投 資 低 迷 の 要 因 は ① 融 資 ア ク セ ス の 悪 さ と 高 金 利 、 ② 税 務 改 革 の 遅 れ 、 ③ 投 資 認 可 の 非 効 率 性 、④ 法 的 確 実 性 の 欠 如 、⑤ 治 安 問 題 、⑥ 政 局 、⑦ イ ン フ ラ 整 備 の 遅 れ 、
⑧ 労 働 問 題 、⑨ 投 資 を 阻 む 地 方 条 例 - の 9つ を 挙 げ 、2007年 は こ れ ら を 改 善 す る た め 各 種 政 策 や 優 遇 措 置 実 現 に 一 層 注 力 す る こ と を 強 調 し て い る21。
1-2-3 新 投 資 法
現 行 投 資 法 は 、外 国 投 資 法(1967年 制 定/70年 改 訂 )お よ び 内 国 投 資 法(68 年 制 定/70 年 改 訂 )の 2 法 か ら 成 る が 、そ の 後 の 環 境 変 化 に 対 応 す る た め 数 回 に わ た り 政 令 や 大 統 領 令 な ど の 形 で 実 質 的 に 部 分 的 な 改 訂 が 行 わ れ て き た 。 こ れ ら の 包 括 的 な 見 直 し が 行 わ れ 、2006年 3月 、 新 投 資 法 が 国 会 に 上 程 さ れ た 。
同 法 案 は 、 内 外 投 資 に 関 す る 基 本 的 な 法 的 枠 組 み を 示 す も の で あ る 。 投 資 関 連 行 政 に か か わ る 中 央 政 府 と 地 方 政 府 と の 関 係 、 投 資 調 整 庁 (BKPM) の 機 能 と 役 割 、 許 認 可 手 続 き 、 ネ ガ テ ィ ブ リ ス ト 、 税 制 上 の 恩 典 ( イ ン セ ン テ ィ ブ ) と い っ た 主 要 な 項 目 の 詳 細 は 、 別 途 制 定 さ れ る 政 令 や 大 統 領 令 ・ 規 則 な ど に 委 ね ら れ て い る 。 こ の よ う な 一 般 規 定 に と ど ま っ て い る 政 府 草 案 に 対 し 、 国 会 各 会 派 は 新 投 資 法 に 慎 重 姿 勢 を 示 し 、 細 則 を 盛 り 込 む 意 見 が 強 く 審 議 は 硬 直 化 し て い る 。
1-2-4 投 資 促 進 に 向 け た 政 策 (1) イ ン フ ラ の 整 備
上 記 1-2(1)で も 述 べ た と お り 、 ユ ド ヨ ノ 大 統 領 は 、 ① 法 、 平 等 、 人 権 を 尊 重 す る 社 会 の 実 現 、② 治 安 の 安 定 、③ 貧 困 削 減・雇 用 拡 大 の た め の 経 済 成 長 促 進 の 3 点 を 就 任 時 に 公 約 と し て 掲 げ て い る 。 ③ に つ い て は 、 イ ン ド ネ シ ア の 投 資 環 境 を 改 善 さ せ る こ と が 中 心 課 題 と さ れ た 。成 長 促 進 の た め に は 、投 資 を 拡 大 さ せ る こ と が 不 可 欠 と の 認 識 に 立 ち 、 投 資 環 境 改 善 を 通 じ て 企 業 の 投 資 意 欲 向 上 を 図 ろ う と し て い る
投 資 環 境 の 改 善 の た め の 課 題 と し て は 、●雇 用 機 会 の 改 善 と 創 出 、●投 資 環 境 の 改 善 と ビ ジ ネ ス の 保 証 、●民 間 部 門 の 参 加 を 通 じ た イ ン フ ラ 開 発 の 加 速 、 が 挙 げ ら れ て い る 。
21 時 事 通 信 2007年 2月 1日 区 分