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博士(工学)佐藤和史 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)佐藤和史 学位論文題名

金属、合金の拡散の理論計算と計算機シミュレーション 学位論文内容の要旨

  金属、合金中におけ る様々を現象において、その速度やメカニズムを考える上で原子拡 散の知識は不可欠であ る。析出、再結晶や酸化等こ実用的に重要をプロセスにおける速度 とメカニズムを決定す るのは物質の拡散特性である。金属、合金における拡散は微視的に 見れば、原子移動の熱 活性化過程であり、活性化エネルギーによってその速度を特徴づけ ることができる。一方 、巨視的には、濃度勾配、より厳密には化学ポテンシャル勾配を駆 動カとした、連続体の 濃度プロファイルの変化として捉えられる。このように、スケール の違いによって拡散特 性を決定する因子も異をる。そこで、本論文では金属、合金中の拡 散現象の理論計算及び シミュレーションを三っの異教るスケールにおいて行い、各スケー ルにおける拡散現象を 考察することを目的とした。本論文は6章から構成されており、各 章の概要は以下の通りである。

  1章では本研究の背景と目的を述べた。

  2章 ではfcc金 属とbcc金 属の 活性 化エ ネル ギー の理 論計 算を 行っ た。fcc金属は遷 移 状態理論に基づく理論 計算により、活性化自由エネルギーの評価を行った。これまでの活 性 化エ ネル ギーの計算では温 度依存性を考慮せず、絶対零度における計算が主であっ た が 、本 研究 では活性化自由エ ネルギーの温度依存性と振動の非調和性の効果に焦点を 当 て、調和近似と準調和 近似による計算結果を比較し、その評価を行った。準調和近似の計 算結果は、内部エネル ギーは高温ではエネルギーの等分配則に従い、非調和性の影響を受 けず、非調和性はエン トロピー項に由来することを示した。またその結果、高温では非調 和性は活性化自由エネルギーを大きくすることもわかった。一方で、絶対零度での、static activation energyは体積の膨張とともに減少し、振動の自由エネルギーと逆の傾向を示し た。そのため、二つの 寄与は相殺し、活性化自由エネルギーはほば一定と橡り、その結果 ほとんど温度依存性が現れをいことがわかった。

  bcc金属の自己拡散の多くが、アレニウス則に従 わをいことが知られており、異常拡散 と呼ばれる。異常拡散 は古くから研究されているが、本研究では鞍点エネルギーの揺らぎ に基づぃた新しい異常 拡散のモデルを構築し、実験値との比較をして、モデルの妥当性を 検討した。

  3章と4章ではモデルA−B二元系、Llo、Ll2規則相中の原子拡散のon−theーfiy kinetic Monte Carlo simulation(on−theーfiy kMC)を行った。合金では原子配列に移動エネルギーが

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依存 す る た め、 非 常 に多 数 の 移動 エ ネ ルギ ー が存 在する 。従来のkMCで は移動エ ネル ギーを 入カパラ メータ として扱 っており 、移動 工ネルギーの原子配列依存性を厳密に考 慮することが困難であった。onーtheーfiy kMCではシミュレーション中に逐次、移動エネル ギーを計算するため、原子配列依存性を厳密に評価することができる。これは、規則合金 の拡散の微視的放メカニズムを明らかにするために非常に重要である。規則合金中の原子 拡散の理論的研究は現在までに数多く行われているが、そのほとんどが完全規則状態や、

移動エネルギーを定数とする教ど、単純化した場合である。本研究ではon‑theーfly kMCに よ り 、 近 似 を で き る 限 り 導 入 せ ず 、 原 子 拡 散 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た 。   Llo相 の拡散に おいて は、原子 種に依 存して拡 散のメカ ニズム が異顔る ことがわかっ た。活 性化工ネ ルギー の組成依 存性はA、B原子で 大きく異をり、それぞれの拡散メカニ ズムか ら説明で きるこ とを示した。B原子のみが強い拡散の異方性を示し、これは実験的 に報告されている傾向と定性的に一致した。拡散異方性の組成依存性について考察し、本 研 究 の 場 合 で は 、Bア ン チ サ イ ト 原 子 の 濃 度 で 説 明 で き る こ と を 示 し た 。   Ll2相 の 拡 散 に お い て は 、 メ ジ ャ ー 原 子(Ll2相 はAとBの 組 成比 が3:1で あ り、 メ ジャ ー 原 子 とは 組 成の 大きをAを指 し、マイ ナー原子 はBを指す) の拡散 が速いと いう CU3Au‑ruleが本研 究でも 成立して いるこ とが示さ れた。マイナー原子の拡散はメジャー 原子の拡散に律速されており、マイナー原子だけが活性化エネルギーの強い組成依存性を 示した 。これはLl2の 構造上、 マイナー 原子の 拡散はア ンチサ イト原子 が必然 的に伴う ためであることがわかった。また化学量論組成からのずれに依存して原子拡散の挙動は大 きく異をることがわかった。特にメジャー原子のアンチサイト濃度が高いときには、マイ ナー原子の拡散に大きを影響を与え、両原子の拡散が密接に関連していることを示した。

  5章 ではTi−Al拡 散対の 反応拡散の解析を行った。Ti―Al二元系には多くの中間相が存 在する にもかか わらず 、Ti‑Al拡 散対の 反応拡散 ではTiAl3相のみ形成されることが知ら れている。化学ポテンシャル勾配下の拡散では、拡散係数は移動度と熱力学因子の積で与 えられる。本研究では、第一原理電子状態計算とMonte Carlo simulationから求めた熱力 学因子 を用いて 、拡散 方程式を数値的に解き、反応拡散を解析した。その結果、TiAl3相 のみが 現れるの は、熱 力学因子 がTiAl3周辺の組 成で大きいことに1つの原因があること がわかった。熱力学因子の大きさは規則相の生成エネルギーと関係付けることができ、隣 接する 規則相間 の生成 エネルギーの相対差がTiAl3相の熱力学因子を大きくしていること がわかった。

  6章は本論文の総括である。

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学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教 授 教 授 准 教 授

毛 利 矢 久 保 大 野

学 位 論 文 題 名

哲夫 考介 rl‑.

刃く  

金 属、合金 の拡散の 理論計 算と計算機シミュレーション

  金属、合金中における機械的特性や機能特性を解析・設計するに際して原子拡散の知見が不可欠 である。拡散現象は、ミクロスケールにおける個々の原子の移動過程がマクロスケールにおける濃 度変化や相変態過程として捉えられるものであるが、これを理論的に考察するためには、離散格子 から連続体に至るマルチスケールの解析が必須である。本論文は、統計力学、固体電子論、連続体 力学の立場から、分子動力学やモンテカルロ法等の数値計算の手法を用いて、固体における拡散現 象に ついて マルチ スケール解析を行ったものである。以下に本論文の6つの章において得られた知 見を要約する。

  第1章では本研究の背景と目的を述べている。

  第2章 では遷 移状態 理論に 基づく 理論計 算によって、プロトタイプfcc結晶の活性化自由エネル ギーの評価を行っている。特に調和近似と準調和近似による計算結果を比較し、非調和性の影響を 論じ 、さら にbcc金属の異常拡散について新しいモデルを提案し、実験値と比較してその妥当性を 検討した。内部エネルギーは高温ではェネルギーの等分配則に従い、準調和近似の範囲内では非調 和性の影響を受け顔いこと、非調和性はエントロピー項に由来し、高温で調和近似よりもェントロ ピー差を大きくすること、static activation energyと振動の自由エネルギーの寄与が相殺し、活性化 自由エネルギーはほば一定と教り、その結果、ほとんど温度依存性が現れ教いこと顔どを明らかに した 。又、bcc金属の異常拡散のアレニウス則からのずれを再現すべく、鞍点エネルギーの揺らぎ に基づぃた新しいモデルを提唱している。

  第3章 と第4章 ではモ デルA‑B二元系規 貝U相Llo相とLl2相 中の原 子拡散のonーthe‑fly kinetic Monte Carlo simulationを行い、拡散の微視的をメカニズムを明らかにしている。Llo相の拡散に おいては、結合の強い方の原子種は副格子内をほばランダムに移動し、他方の原子種は副格子間を ASB(Anti Structural Bridge)メカニズムにより拡散していることを示した。又、アンチサイト濃度 と相 関係数 から、 活性化エネルギーの組成依存性が説明できることを明らかにしている。L12相の 拡散 におい ては、 メジャ ー原子 の拡散が 速いというCU3Au‑ruleが妥当であることを示した。又、

マイ ナー原 子の活 性化エネルギーの強い組成依存性が、Ll2相の構造上、必然的に付随するアンチ サイト原子に起因することを明らかにしている。

  第5章 では、Ti‑Al拡散 対の反 応拡散 をASW (Augumented Spherical Wave)法による第ー原理電 子状態計算と、Monte Carlo simulationから求めた熱力学因子を用いて拡散方程式を解くことで解 析し ている 。Ti‑Al拡散 対にお いて、TiAl3相の みが現 れるのは 熱力学因子がTiAl3周辺の組成で     ‑ 701―

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大きいことがーつの要因であること、又、熱力学因子の大きさは規則相の生成エネルギーと関係付 けることができ、隣接する規則相間の生成エネルギーの相対差がTiAl3相の熱力学因子を大きくし ていることを示した。

  第6章は総括である。

  このように、純金属の自己拡散、規則相中の原子拡散、拡散対の濃度変化に対して、計算材料科 学の諸手法を駆使し、ミクロからマクロに至る理論計算及びシミュレーションが極めて有効である ことを示した。これは、拡散現象の理解に有益教だけではをく、計算材料科学という新しい学問手 法の確立に対しても大きを歩を進めるものである。

  これを要するに、著者は金属、合金の固体内拡散について、微視的過程から巨視的過程に至る拡 散機構について新知見を得たものであり、材料科学、材料工学に対して貢献するところ大顔るもの がある。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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