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博士(工学)藤井智史 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)藤井智史 学位論文題名

アレイ信号処理およびレーダ信号処理への ニューラルネットワークの応用に関する研究

学位論文内容の要旨

  アレ イア ンテ ナを 用いた到来方向推 定の高分解能化、レーダ信号処理におけるスペクトル 推 定の 高分 解能 化な どは、無線通信に おけるアンテナ指向性制御、電磁環境計測、レーダ利 用のりモートセンシングなどの応用分野に益するところが大きい。

  これ らの アレ イ信 号処 理や レー ダ信 号処 理に 用い ら れる スペ クト ル推 定手法として一般 的 には フー リエ 変換 法が使われるが、 このフーリ工変換法の分解能を超えて高分解能にスペ ク トル を推 定す る計 算方法が提案され てきた。その高分解能スベクトル推定法としては、ML (Maximum Likel ihood)法、MV (Minimum Variance)法、ME (Maximum Entropy)法、MUSIC (Multiple Signal Classification)法、MN(Minimum Norm)法¥、ESPRIT (Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法など数々の方法がある。一般的に、これらの高分 解 能ス ペク トル 推定 法は、逆行列変換 、固有値解析などの複雑かつ多量の演算を必要として い るた め、2次 元ア レイ な どの 様に セン サー 数が 多くなる場合やサンプリング数が増えてく ると演算量の増大とアルゴリズムの複雑さが問題となってくる。

  本研 究で は、 神経 回路網のおける高 度情報処理機能をモデル化したニューラルネットワー ク の集 団並 列計 算機 能に着目し、高分 解能スペクトル推定問題に適用する方法についてその 可 能性 と特 性に つい て計算機シミュレ ーションを用いて検討し、加えていくっかの応答例を 示している。

  まず 、本 研究 で用 いるHopf ield型ニ ュー ラル ネットワークの最適化の動作原理について 述 べた 後、 多重 波到 来環境での到来方 向推定問題への適用方法を検討した。具体的には、多 重 波到 来環 境で の到 来方向推定問題を 最適化問題として定式化し、その最適化問題に対して

Hopf ield型ニューラルネットワークを適合させた時の ニューロンの入出力関数、結合コンダ

ク タン ス行 列、 外部 入力電流といった ネットワーク構成要素を求めた。この要素で構成され る ニュ ーラ ルネ ット ワークを動作させ 、ネットワークのエネルギーが極小状態に収束してい く にっ れて 、方 向角 やスベクトル位置 に対応するように設定したニュー口ン出カのうち、所 望 のニ ュー ロン にの み出 カが あり 他の ニュ ー口 ン出カはOになるというように変化していく ことが確認された。これに よって、Hopf ield型ニュー ラルネットワークのスベクトル推定問 題への本適用手法がうまく動作したことになる。

  次に 、本 適用 手法 の特 性に つい て、 アレ イア ンテナを用いて2波到来環境において到来方

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向 推 定 を 行 な う 問 題 を 対 象 と し て 、 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ンに よ り検 証 し た。

  最初に、収束特性についてネットワークのエネルギ一変化とニュ一口ン出カとしての推定 スペクトルパターンの変化とを対比して考察し、工ネルギーが階段的に変化する時にニュー 口ン出カのバターンも変化することを示した。次に、分解能について検証した。2波到来環 境において2波間の角度間隔を変化させていき、どの角度差まで分解可能であるかを調ぺる ことにより、本適用手法は位相走査によるビーム形成(Conventional Beamforming:空間フ ーリェ変換に相当)で分解できる角度差の1/3倍程度まで分解できることを示した。次いで、

低SN比環境下での特性についてシミュレーションを行なった結果、MUSIC法やCapon法など の高分解能スベクトル推定法において分解不可能な場合においても、到来方向が分離できる 場合があることを示した。さらに、2波間に相関がある場合については、MUSIC法ではそのア ルゴリズムから空間平均法などを導入しない、と適用不可であるが、本手法においては無相関 の場合と同等に2波を分離できることを示した。

  これらの基本的な特性の評価をもとに、具体的なレーダ信号処理への応用も試みた。

  最初は、ステップ周波数レーダヘの応用とぃうことで、光集積回路や微小光学部品などの 診断可能を可能にする、周波数変化がTHzオーダとなるレーザ発振器を用いたステップ周波 数レーザレーダにおいて、距離特性を求める信号処理部分にニューラルネットワークのスベ クトル推定法を導入した。これについては空間光学実験系とフんイバ型光学実験系の2種類 の系で実験を行ない、各種測定対象物からの受信信号を本手法にて処理した。その結果、従 来の一般的な解析法であるフーリエ変換(FFT)を用いた場合は分解することのできない、光 フ ァ イ バ 断 面 の コ ア ー ク ラ ッ ド 構 造 、 複 屈 折 な ど も 計 測 で きる こ とを 示 し た。

  次に、ドップラレーダへの応用を考え、FMCW方式のドップラレーダの一種である短波海洋 レーダのドップラスペクトル推定部分への応用を試みた。短波海洋レーダは海面に電波を照 射させて海面でのBragg散乱による後方散乱波を受信し、そのドップラスペクトルから表層 流の流向流速を計測する。得られる速度情報としてのドップラスペクトルはレーダの照射領 域内で平均化されたものになっているが、搬送波周波数が短波帯であることからアンテナ開 口長が大きくなるため角度分解能をむやみに高くすることができず、距離方向についても周 波数帯域幅が限られるため、照射領域は一般的にkmオーダになる。この照射領域の大きさよ りも小さいサイズの流速場変動が存在する場合、ドップラスペクトルに複数の成分が表れる と考えられるが、その流速成分差が小さいと一般的なフーリエ変換では分解不可能になるが、

本手法を適用することにより分離可能であることを、実データの処理結果により示した。

  以上、Hopfield型ニューラルネットワークのスベクトル推定法への適用について検討し、

アレイ信号処理およびレーダ信号処理への応用について計算機シミュレーションと実際のデ ータへの適用によりその特性の検証を行なった。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

アレイ信号処理およびレーダ信号処理への ーユーラルネットワークの応用に関する研究

  本 論文は、 アンテ ナ指向性 制御、電 磁環境 計測、レ ーダ利 用のりモ ートセ ンシング などへ の 応用を目 的とした アレイ アンテナ を用い た到来方 向推定 の高分解 能化やレ ーダ信 号処理に お けるスベ クトル推 定の高 分解能化 技法の 開発に関 するも のである 。アレイ 信号処 理やレー ダ 信号処理 に用いら れるス ベクトル推定手法として一般的にはフーリエ変換法が用いられる。

一 方、この フーリエ 変換法 の分解能 を超え て高分解 能にス ペクトル を推定す る計算 方法が提 案 さ れ て来 て お り、ML (Maximum Likelihood)法 、MV (Minimum Variance)法、ME (Maximum Ent ropy)法など 数々の 方法があ る。一 般的に、 これら の高分解能スペクトル推定法は、逆行 列 変 換 、固 有 値 解析 な どの複雑 かつ多 量の演算 を必要 としてい るため、2次 元アレイ などの 様 にセンサ ー数が多 くなる 場合やサ ンプリ ング数が 増えて くると、 演算量の 増大と アルゴリ ズ ムの複雑 さが問題 となっ てくる。

  本 研究では 、神経 回路網に おける高 度情報 処理機能 をモデ ル化した ニュー ラルネッ トワー ク の集団並 列計算機 能に着 目し、高 分解能 スペクト ル推定 問題に適 用する方 法につ いてその 可 能性と特 性につい て計算 機シミュ レーシ ョンによ り検討 し、実際 的な問題 への適 用につい て 研究を行 っている 。

  第1章 は 序 論で あ り 、本論文 の研究 が行われ るに至 った背景 と目的を 述べ、 全体の概 要と 構 成を明か にしてい る。

  第2章 で は 、本 研 究 で用 い るHopf ield型 二 ユ ーラル ネットワ ークの 最適化の 動作原 理に つ いて述ベ 、多重波 到来環 境での到 来方向 推定問題 への適 用方法を 検討して いる。 具体的に は 、多重波 到来環境 での到 来方向推 定問題 を最適化 問題と して定式 化し、そ の最適 化問題に 対 してHopf ield型ニュ ーラルネ ットワ ークを適 合させ た時のニューロンの入出力関数、結合 コ ン ダ ク タ ン ス 行 列 、 外 部 入 力 電 流 と ぃ っ た ネ ッ ト ワ ー ク 構 成 要 素 を 求 め た 。   第3章 で は 、第2章 で述 べ た 原理 に 従 い、 本 研 究で開 発した手 法の多 重波到来 環境にお け る 方向推定 問題への 適用性 について 、コン ピュータ シミュ レーショ ンにより 検証し た。検証 と し て 、低S/N比 状 況 下および 互いに 相関を持 つ信号 が入射し た場合な どにつ いて、そ の能

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由 香

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カと他の到来方向推定手法との比較結果について考察を行っている。さらに、アレイアンテ ナを用いて2波到来環境において到来方向推定を行なう問題を対象として、計算機シミュレ ーションにより検証を行った。2波到来環境において2波間の角度間隔を変化させていき、

どの角度差まで分解可能であるかを調べることにより、本開発手法は位相走査によるビーム 形成(Conventional Beamforming:空間フーリ工変換に相当)で分解できる角度差の1/3倍 程度まで分解できることを示した。

  第4章では、第2章、第3章で得られた結果を実際のレーダ信号へ適用するための研究を 行っている。まず、ステップ周波数レーダヘの応用として、光集積回路や微小光学部品など の診断可能を可能にする、周波数変化がTHzオーダとなるレーザ発振器を用いたステップ周 波数レーザレーダにおいて、距離特性を求める信号処理部分にニューラルネットワークのス ペクトル推定法を導入した。これについては空間光学実験系とフんイバ型光学実験系の2種 類の系で実験を行ない、各種測定対象物からの受信信号を本手法で処理した。その結果、従 来の一般的な解析法であるフーリ工変換(FFT)を用いた場合は分解することのできない、光 フ ん イ バ 断 面 の コ ア ー ク ラ ッ ド 構 造 、 複 屈 折 な ど も計 測 で き る こ と を 示 し た 。   次に、ドップラレーダへの応用を考え、FMCW方式のドップラレーダの一種である短波海洋 レーダのドップラスペクトル推定部分への応用を試みた。短波海洋レーダは海面に電波を照 射させて海面でのBragg散乱による後方散乱波を受信し、そのドップラスベクトルから表層 流の流向、流速を計測する。その流速成分差が小さいと一般的なフーリ工変換では分解不可 能になる場合でも、本研究で開発した手法を適用することにより分離可能であることを実デ ータの処理結果により示した。

  第5章は結論であり、本研究の総括を行っている。

  このように著者は本論文において、電波の到来方向推定の高分解能化やレーダ信号処理に おけるスペクトル推定の高分解能化技法に関して新しい技法を開発し、実際に光周波数のス テップ周波数レーダや短波海洋レーダの信号処理に適用できる点を明らかにしている。

  これを要するに、著者はレーダ信号処理の分野において新知見を得ており、信号処理工学 お よ び 情 報 メ デ イ ア 工 学 に 貢 献 す る と こ ろ が 大 な る も の が あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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