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博士(工学)大山恭史 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)大山恭史 学位論文題名

微小重力振動場における粒子群の挙動と      運動制御に関する研究

学位論文内容の要旨

  本論文は、これまでほとんど知られていない、微小重力環境において振動を与えられた粉体の 挙動を明らかにし、そのうえで重カを必要としない粉体の輸送操作を可能とする操作原理に関す る研究である。

  微小重力場では、流体の対流、混合物の偏析、分離など、物質の密度差に起因する移動現象が 起こらない。このため多成分からなる物質においても均質な状態を得やすく、この利点を用いた 新材料の合成や新薬の開発などが期待されている。

  現在、スベースシャトルで様々な科学実験がおこなわれており、また国際宇宙ステーションの 建設も、2010年の完成を目標に着々と進んでいる。このような宇宙開発が推進されれば、必然的 にいずれは宇宙を生産活動の場として利用することが考えられ、材料・医薬品開発、環境整備、

資 源 開 発 な ど 様 々 な 観 点 か ら 粉 体 を 操 作 す る 必 要 が 生 じ て く る こ と が 予 想 で き る 。   その場合、地上における現行の粉体操作技術のいくっかは、そのまま活かすことができると考 えられる。しかし、微小重力環境や、さらには真空暴露環境などの特殊な環境で粉体を操作する には、解決しておかなければならない多くの問題がある。なぜなら、地上での粉体操作のほとん どは、大まかに重カと流体抗カというニつの外カを利用することによって行われているからであ る。しかし、微小重力場では重カを利用できず、さらに暴露環境では流体抗カも利用できない。

こ れ ら に 対 応 す る た め に は 、 新 た な 原 理 に 基 づ く 粉 体 操 作 が 必 要 で あ る 。   そこで、本論文では、そのような条件下で粉体を操作するために、容器の強制振動を駆動カに することを提案している。しかし、微小重力場での粉体の挙動を観察・検討した研究例は極めて 少なく、さらに振動を加えた系での研究は皆無といってよい。したがって、まずはこのような系 での粉体の挙動を知る必要がある。そのため、本論文では、落下孔および航空機の放物線飛行に よって得られる微小重力場での振動容器内粉体の分散挙動を、粗粒子(粒径350ロm)および微粒子

(粒径50Um)の双方について検討した。

  第2章では、微小重力振動場における微粒子の挙動について実験的に検討した。その結果、粉 体層を微小重力状態に移行させたところ、完全な単粒子分散には至らず凝集した粉体層が残り、

振動壁面上に沿って大きく変形しながらも集合体を維持することがわかった。これは、層が変形、

すなわち、内部の粒子の充填構造を変化させて振動壁面からの周期的な圧縮応カを緩和している

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ことを意味する。また、充填構造の変化が追従できないほど遠い圧縮周期を与えれば層は破壊し 粒子の容器内への分散を起こすことがわかった。また、仕込み粒子量を変えて、空間中の分散粒 子濃度を調べたところ、一定量を超えるとクラスターが発生し、固体微粒子にも気液系のような 飽和濃度が存在することが分かった。また、微粒子の仕込粒子量が容器の50%を超えるような高 濃度で振動を与えた場合には粒子層の積層化という特異な現象が発生することがわかり、振動条 件との関係を調ぺた。その結果、積層構造(層数、層厚み、層間の距離)は仕込粒子濃度に依存 せず、高周波数になるほど積層構造は緻密化することがわかった。

  第3章では、微小重力振動場での粗粒子の挙動について実験的に検討した結果、粗粒子は微粒 子と異なり容易に容器内へ分散したが、均一な分散状態ではなく、横振動方向では中央が高く、

縦方向では壁面が高い、「鞍型」の粒子濃度分布を生じることがわかった。さらに、隅形状が上 二カ所は円弧型、下二カ所は角形になった容器を用いたところ、角形隅を設けた容器底部のほう が上部に対して濃度が高くなるという傾向が見られ、容器形状で粒子の運動を制御できる可能性 を示唆することがわかった。

  第4章では、装置能カや微小重力実験の制約上、実験できなかった条件について二次元数値シ ミュレーションによる検討を行った。その結果、容器の隅形状により粒子の運動が制御され濃度 分布を生じることが、より明らかになった。

  第5章では、ここまでの知見をもとに、振動による粒子輸送機構の開発について検討を行った。

傾斜面が多段になった板を対向させ、この板を振動させて板の間の粒子を輸送する「振動対向鋸 波板粒子輸送器(Vibrating Serrate−plated Particle Conveyor、以下VSPC)」を考案し、VSPC 機構を側面に備えた密閉容器で粒子を移動できるか実験的に検討した。その結果、容器内でVSPC の効果による粒子群の移動が起こることを確認でき、本機構を粒子輸送器として用いることがで きる可能陸を見出した。

  第6章では、 前章で、実験的な制約で連続装置化できなかった両端解放のVSPCについて計算 機上で連続化し、二次元数値シミュレーションによる検討を行った。その結果、本機構は粒子物 性、容器寸法、操作条件の適切な設定により連続的に粒子を輸送することが可能で、本計算の条 件下では、約O. 02m/sの移動速度が得られることがわかった。

  以上のように、本研究の結果、これまでほとんどわかっていなかった微小重力振動場での粒子 群の挙動が明らかになるとともに、微小重力環境において粉粒体を輸送する新技術が開発できた。

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学 位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

篠 原 邦 夫 荒 井 正 彦 増 田 隆 夫 中 島 耀 二

学 位 論 文 題 名

微小 重力振 動場における粒子群の挙動と      運 動 制 御 に 関 す る 研 究    .

  現 在 、 将 来 に 向 け て 宇 宙 空 間 の 有 効 利用 のた め、 国際 的ス ケー ルで 、新 材 料を はじ め 医 薬 品 、 資 源 開 発 、 環 境 整 備 ・ 建 設 に 関わ る研 究が 盛ん に行 われ てい る。 そ の中 で、 粉 体 を 操 作 す る こ と は 必 須 で あ る が 、 こ れま で、 微小 重力 場で の粒 子挙 動に 関 する 研究 は ほ とん ど無 い 。

  本 論 文 で は 、 微 小 重 力 環 境 に お け る 粉体 操作 の上 でも っと も基 本的 な粒 子 の輸 送装 置 を 開 発 す る こ と を 目 的 と し 、 新 た な 原 理に 基づ く駆 動カ とし て強 制振 動を 用 いる こと を 初 めて 提案 し てい る珍 しい 研究 であ る。

  そ の た め 、 こ れ ま で ほ と ん ど 知 ら れ てい ない 微小 重力 場で の振 動容 器内 の 粒子 の運 動 を 実 際 に 観 察 し 貴 重 な 知 見 を 得 て お り 、そ のう えで 真空 ・暴 露な どの 特殊 な 環境 にも 適 用 で き る よ う に 流 体 を 必 要 と し な い 粉 体の 輸送 操作 を可 能に する 操作 原理 に 関し 、粒 子 を 大 別 し て 、 群 と し て 運 動 す る 微 粒 子 と個 別に 運動 する 粗粒 子に 分け て、 実 験と シミ ュ レ ーシ ョン に より 基礎 的な 検討 を行 って いる 。

  本 研 究 で は、 落下 孔茄 よU嚇 :空 機の 放物 線飛 行に よっ て得 られ る微 小重 力 場で の振 動 容 器 内 粉 体 の分 散挙 動を 、粗 粒子 讎。 隆350ルm) およ ぴ鋤 陸子 (粒 径50uめ の 双方 につ い て 検 討 し て お り 、 こ の よ う な 大 規 模 な 微小 重力 場を 用い ての 粉体 挙動 に関 す る観 察や 検 討 を し た 研 究 例 は 極 め て 少 な く 、 さ ら に振 動を 加え た系 での 研究 は皆 無と い って よい 。   第2章 で は 、 ま ず 微 小 重 力 振 動 場 に お け る 微 粒 子 の 挙 動 に つ い て実 験的 に 検討 した 結 果 、 粉 体 層 は 微 小 重 力 状 態 で 完 全 な 単 粒子 分散 には 至ら ず凝 集し た粉 体層 が 残り 、振 動 壁 面 上 に 沿 っ て 大 き く 変 形 し を が ら も 集合 体を 維持 し、 内部 の粒 子の 充填 構 造を 変化 さ せ て 振 動 壁 面 か ら の 周 期 的 な 圧 縮 応 カ を緩 和し てお り、 充填 構造 の変 化が 追 従で きな い ほ ど速 い圧 縮 周期 を与 えれ ぱ層 は破 壊し 粒子 の容 器内 への 分散 を起 こ すことがわかった。

ま た 、 仕 込 み 粒 子 量 が 一 定 量 を 超 え る とク ラス ター が発 生し 、空 中で 運動 す る微 粒子 群

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には飽和濃度が存在することを見出した。これは、固体微粒子にも気液系のような飽和 濃度が存在することが分かり、きわめて興味深い発見であり、通常の重力下での空気輸 送のプラグ発生や、循環流動層のライザーやダウンカマーなどでのクラスターの発生な ど の 粒 子 分 散 系 に お い て も 参 考 と な り 、 工 学 的 に 価 値 の あ る 知 見 と い え る 。   また、微粒子の仕込粒子量が容器内で高濃度の場合には粒子層の積層化という特異な 現象が発生し、積層構造(層数、層厚み、層間の距離)は仕込粒子濃度に依存せず、高 周波数になるほど緻密化することが新しくわかった。

  第3章では、微小重力振動場での粗粒子は、容易に容器内へ分散したが、横振動方向 では中央が高く、縦方向では壁面が高い、「鞍型」の粒子濃度分布を生じることがわかり、

第4章での二次元数値シミュレーションによっても角形隅を設けた容器底部のほうが上 部に対して濃度が高くなるという傾向が見られ、容器壁の形状で粒子の運動を制御でき る可能性が示唆された点は、貴重な発見である。

  第5章では、これまでの実験的知見をもとに、振動による粒子輸送機構の開発として、

傾斜面が多段になって対向した板を振動させて、板の間の粒子を輸送するバッチ型の輸 送機を考案し、実験的に粒子群の移動を確認できた。

  第6章では、この事実を基に、両端解放の輸送機について周期境界条件を設定したシ ミュレーションにより連続化を検討し、粒子輸送速度と容器寸法および振動条件の関係 について調べた。その結果、本粒子輸送機構が、微小重力下での粒子輸送装置として機 能することがわかり、将来的に宇宙環境での工業生産の場への適用が可能な新技術が開 発 で き た こ と は 、 非 常 に 有 用 で あ り 高 い 工 学 的 価 値 を 持 っ て い る と 言 え る 。   これを要するに、著者は、これまで未知であった微小重力振動場での粒子群の挙動を 系統的、実験的、シミュレーションによる研究により有用な新知見と新技術を開発した ものであり、微粒子工学およぴ化学工学的応用研究として貢献するところ大なるものが あ る。よっ て、北海道 大学博士(工学)の学位が授与される資格あるものと認める。

参照

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