博士(工学)佐藤雄隆 学位論文題名
選択的正規化相関に基づくロバスト画像照合および 環境監視への応用に関する研究
学位論文内容の要旨
類似画像どうしを合理的評価尺度に基づぃて定量的に判定するための画像照合技術は,
パタン認識においても最も古いもののーっであり,FA分野における組立て工程や目視検 査のためのロボットビジョンなどを含む自動化を指向した産業応用技術,道路や駐車場等 の環境監視システム,汎用の画像計測システム,など広い分野における画像処理技術の中 核をなす 重要な技 術の1つである.近年高速・安価な汎用PC及び画像処理ハードウェア が普及し,従来実用的でなかった計算コストの大きなアルゴリズムの実利用の範囲が拡大 している・
その技術は大別して,エッジや明度・色ヒストグラムなどの特徴照合に基づくアプロー チと,画像を直接照合して相関値や累積2乗誤差によって類似度を評価するアプローチと に分けることができる.特徴照合アプローチでは,明度分布に比べて圧縮された特徴量を 用いるため,効率的な処理が実現でき,スケーリングや回転に対する不変化も容易である 利点をもつ.しかし,原画像から特徴抽出処理を経て得られるいわゆる2次データに基づ くため,しきい値などのパラメタの自動設定のための有効な方法がなく,更にその手順に 強く依存して特徴の不良や欠損が起こる場合も多い,一方,直接照合に基づく手法では,
明度配列という1次データを利用するという意味で理想的であって,処理が単純であるた めハードウェア化が容易であり,前者に比較してしきい値などのパラメタ設定に関わるあ いまいさは少ない.但し,冗長な情報も含まれているため照合処理を阻害することもあ り,不良照明などに起因する明度変化や遮蔽などに依存して性能を低下することが多い.
本論文ではこの直接照合アプローチを採りながら,それらの欠点を補う手法にっいて検 討する.直接照合アプローチとして,従来から残差2乗和,正規化相関,増分符号相関な どが提案されている.正規化相関は画像間の相互相関係数による方法であり,ノイズや一 様な明度変化の影響を押さえ明度値の一致を良好に評価することができる.また計算コス トは大きいが,近年ハードウェア化が進められており高速処理が可能になっている.しか し,局所的な明度変化や遮蔽された対象を照合することは一般的に難しい.残差2乗和は 明度差の累積2乗和を評価する手法であり,高速計算は可能であるが,明度変化及び遮蔽 に対して非常に弱い.増分符号相関は明度値自体ではなく,隣接明度値の増分の正負符号 の変化傾向の一致度合に基づく手法であり,陰影,遮蔽,ハイライトなどに対してロバス トな画像照合法として開発された,実際的な状況においても高いロバスト性を示す高速 な手法であるが,符号という形で情報量を削減しているので,画像サイズを小さくできな
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い,微妙な明度パタンを評価できない,などの問題もある.
そこで本論文では,陰影(局所的な明度変化),照明変化,ハイライト,遮蔽などを含 む場合においても,ロバストな照合を行うことができる手法として,選択的正規化相関法 を提案する.これは直接照合アプローチのーつである正規化相関を基本としているが,遮 蔽部分を推定してマスクするために増分符号画像を用いる.マスク生成には増分符号の統 計的性質を用いるため,しきい値等のパラメタ設定を一切必要としない,このマスク操作 によって,不良画素のもつ明度値の相互相関値への悪影響を自動的に低減し,類似部分の 明度分布を選択的に評価することが可能となる,
第 1章 で は , 研 究 の 背 景 と 位 置 づ け , 目 的 お よ び 意 義 に っ い て 述 べ る . 第2章では,選択的正規化相関法の定義を示し,遮蔽,光沢物体に対する照合実験を通 して検証を行う.選択的正規化相関法は正規化相関を基本としているが,増分符号の統計 的性質を用い,不良画素を推定してマスク画像を生成する.このマスク操作によって,不 良 画 素 の も つ 明 度 値 の 相 互 相 関 値 へ の 悪 影 響 を 自 動 的 に 低 減 す る . この章ではまず始めに,基本マスク画像の特性について理論的,実験的考察を行う.ま た計算コストについての検討を行う.次に,基本マスク画像の拡張について検討を行う.
撮像条件がよく制御されていない実環境下では,付加ノイズ,量子化ノイズ等の影響を受 け,マスクの有効性が低下する.そこで,近傍領域の中のマスク率を判定し近傍内全画素 を一括して強制的にマスク化する処理を導入し,マスクの有効性を増大させることを目指 す.実画像を用いた実験により,拡張前と比較して遮蔽に対してより高いロバスト性を持 っことを示す.
そして拡張されたマスク画像を用いて,遮蔽,光沢物体に対する照合実験を行う.実画 像を用いた実験の結果,および相関値分布の検討から,従来手法と比較して遮蔽や光沢の 影響を低減した照合を行うことができることを示す.また探索に必要なテンプレート画像 サイズについての検討を行う,本手法では,マスク処理によって画素を取捨選択すること により情報量が低下するが,適切なテンプレート画像サイズを与えることにより,安定な 探索が実現できることを示す.
第3章で は,選択 的正規化 相関法におけるマスク画像を,周辺増分符号相関(PISC)画 像として拡張し,環境監視処理への応用を検討する.PISC画像は,マスク画像が画像を1 次元系列と見立て,一定の方向性を持ちながら隣接画素の明度の増減傾向のみに基づいて 生成されていたのに対し,着目点の16近傍の明度の増減に着目しながら生成される.こ れは計算コストの面で不利となるが,ノイズや明度のゆらぎ等の影響を最小限に押さえ,
画像間の相違部分を高コントラストで抽出することが可能になる.環境監視処理では従 来,背景差分法など単純な画像間の差に基づく相違検出が主であったが,背景の照明変化 などを相違として誤検出するなどの問題があった.これに対しPISC画像は,出現した物 体の領域は良好に検出するが,背景の照明変化や陰影などは原理的に感知しない.この性 質を用いることで,照明の変化に影響されないロバストな出現判定を行う.更に,情景中 に現れた人物などの出現領域を抽出する処理を検討する.PISC画像内の背景領域と出現 物体領 域のセグ メンテー ションに は,独自に 提案して いるMF交叉法を用いた遺伝的ア ルゴリズムに基づく画像フィルタ最適化システムを用いる,実画像を用いた実験結果を示 し,手法の有効性を示す,
第 4章 で は , 第2章 お よ び 第3章 で 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し て 考 察 を 行 う ・ 第5章は,本研究のまとめである,
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学位 論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授 助教授
五十嵐 土谷 島 岸浪 金子
学 位 論 文 題 名
悟 武士 公脩 建史 俊一
選択 的正規化 相関に 基づくロ バスト 画像照合および 環境監 視への 応用に関する研究
類似 画像 どう しを 合理 的評 価尺 度 に基 づい て定 量的 に判 定す るた めの画像照合技術は,
バ タ ン 認 識 に お い て も 最 も 古 い も の のー つで あり ,FA分野 にお ける 組 立て 工程 や目 視検 査 のた めの ロボ ット ビジ ョン など を 含む 自動 化を 指向 した 産業 応用 技術,道路や駐車場等 の 環境 監視 シス テム ,汎 用の 画像 計 測シ ステ ム, など 広い 分野 にお ける画像処理技術の中 核 をな す重 要な 技術 の1つ であ る・
その 技術 は大 別し て, エッ ジや 明 度・ 色ヒ スト グラ ムな どの 特徴 照合に基づくアプロー チ と , 画 像を 直接 照合 して 相関 値や 累積2乗誤 差に よっ て類 似度 を評 価 する アブ ロー チと に 分け るこ とが でき る. 特徴 照合 ア プロ ーチ では ,明 度分 布に 比べ て圧縮された特徴量を 用 いる ため ,効 率的 な処 理が 実現 で き, スケ ーリ ング や回 転に 対す る不変化も容易である 利 点 を も つ. しか し, 原画 像か ら特 徴抽 出 処理 を経 て得 られ るい わゆ る2次 デー タに 基づ く ため ,し きい 値な どの バラ メタ の 自動 設定 のた めの 有効 な方 法が なく,更にその手順に 強 く依 存し て特 徴の 不良 や欠 損が 起 こる 場合 も多 い. 一方 ,直 接照 合に基づく手法では,
明 度 配 列 とい う1次 デー タを 利用 する とい う意 味で 理想 的で あっ て, 処 理が 単純 であ るた め ハー ドウ ェア 化が 容易 であ り, 前 者に 比較 して しき い値 など のパ ラメ夕設定に関わるあ い ま い さ は 少 な い . 但 し , 冗 長 な 情 報も 含ま れて いる ため 照合 処理 を 阻害 する こと もあ り ,不 良照 明な どに 起因 する 明度 変 化や 遮蔽 など に依 存し て性 能を 低下することが多い・
本 論 文 で は こ の 直 接 照 合 ア ブ ロ ー チを 採り なが ら, それ らの 欠点 を 補う 手法 につ いて 検 討し ,陰 影( 局所 的な 明度 変化 ) ,照 明変 化, ハイ ライ ト, 遮蔽 などを合む場合におい て も, ロバ スト な照 合を 行う こと が でき る手 法と して ,選 択的 正規 化相関法を提案してい る .こ れは 直接 照合 アプ ロー チの ー つで ある 正規 化相 関を 基本 とし ているが,遮蔽部分を 推 定し てマ スク する ため に増 分符 号 画像 を用 いて いる .マ スク 生成 には増分符号の統計的 性 質を 用い るた め, しき い値 等の バ ラメ 夕設 定に 合理 的な 手続 きを 導入した.このマスク 操 作に よっ て, 不良 画素 のも つ明 度 値の 相互 相関 値へ の悪 影響 を自 動的に低減し,類似部
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分の明度分布を選択的に評価することを可能としている.
撮像条件がよく制御されていない実環境下では,付加ノイズ,量子化ノイズ等の影響を 受け,マスクの有効性が低下するが,近傍領域の中のマスク率を判定し近傍内全画素を一 括して強制的にマスク化する処理を導入し,処理コストの増大を抑えながら,マスクの有 効性を増大させる改良を行っている.拡張されたマスク画像を用いて,遮蔽,光沢を含む 実画像に対する照合実験を行い,実験結果および相関値分布の検討から,従来手法と比較 して遮蔽や光沢の影響に対して口バストな照合を行うことができることを示している・
さらに,選択的正規化相関におけるマスク画像を,周辺増分符号相関(PISC)画像とし て拡張し,環境監視処理への応用を検討している.マスク画像が一定の方向性を持つ隣接 画素の明度の増減傾向のみに基づいて生成されていたのに対し,PISC画像は,着目点の 16近傍の明度の増減に着目しながら生成される.これは計算コストの面で不利となるが,
ノイズや明度のゆらぎ等の影響を最小限に押さえ,画像間の相違部分を高コントラストで 抽出することが可能になる.環境監視処理では従来,背景差分法など単純な画像間の差に 基づく相違検出が主であったが,背景の照明変化などを相違として誤検出するなどの問題 があった.これに対しPISC画像は,出現した物体の領域は良好に検出するが,背景の照 明変化や陰影などは原理的に感知しない.この性質を用いることで,照明の変化に影響さ れない口バストな出現判定を可能としている.更に,情景中に現れた人物などの出現領域 を抽出する処理を検討している.PISC画像内の背景領域と出現物体領域のセグメンテー ションには,独自のMF交叉法を用いた遺伝的アルゴリズムに基づく画像フイル夕最適化 システムを提案している.実画像を用いた実験により,出現領域を精度良く抽出すること ができることを示し,手法の有効性を実証している.
これを要するに著者は,実環境下において安定でロバストな画像照合を可能とする,選 択的正規化相関と呼ぷ手法,およびこの手法の遮蔽検出機構を拡張して,環境中の出現物 体の高精度検出を可能とする,周辺増分符号相関と呼ぷ手法を,それそれ新たに提案し,
実画像を用いた実験により,これらの有効性を実証したものであり,画像認識工学,画像 情報処理技術の分野に対して貢献するところ大なるものがある.よって著者は,北海道大 学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.
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