博 士 (獣 医 学 ) 桑山 正 成
学 位 論 文 題 名
ウ シ の 体 外 受 精 由 来 胚 盤 胞 の ガラ ス 化 保 存に 関 す る 研究
学 位 論 文 内 容の 要 旨
ウシ の体 外受 精由 来胚 盤胞 に適 した 実用 的な ガラ ス化保 存法 の開発を目的として、基 礎的ならびに応用的研究を行った。
1.グ リセ 口ー ルと プ口 ピレン グリ コールを用いたウシの体外受精由来胚盤胞のガラス化 保存
ウシ の体 外受 精由 来胚 盤胞 のガ ラス 化保 存法 を検 討する ため にグリセ口一ルとプ口ピ レ ング リコールを用いたガラス化液で実験を行った。まず、ガラス化液に必要な凍害保護 物 質の 最低濃度を検討レた結果、グリセ口ール22.5%およびプ口ピレングリコール22.5% で あ っ た 。次 に、 この 最低 有効 濃度 の凍 害保 護物質 を添 加し たガ ラス 化液 に1、2、4、 8お よ び16段 階で 胚を平 衡し 、ガ ラス 化液 への 平衡 条件 が胚 の生 存率 に及 ぼす影 響を 調 べ た。 各区 の生 存率 はそ れぞ れ56、89、100、100および100%だった。また、平衡後ガラ ス 化保 存し た胚 の生 存率 はそ れぞ れ0、10、79、82お よび87% で、4段階以上の区で有意 に高い値が得られた。次に2段階法(10%グリセロール、20010プ口ピレングリコール液中へ 10分間 胚を平衡後、ガラス化液へ胚を投入)および16段階法で処理した胚のガラス化保存 後の生存性を検査するとともに、フリーズレプリカ法を用いて微細構造の変化を観察した。
16段階法でtま高い生存率(83 u/o)が得られたが、2段階法では生存胚は得られなかった。また、
両 群と も細胞内外には氷晶の形成は観察されず、溶液の完全なガラス化が確認された。16 段 階法 では 原形 質膜 の微 細構 造に 大きな変化は見られなかったが、2段階法では原形質膜 と 細胞 内器官が著しく接近して膜内粒子の凝集、あるいは膜内粒子が著しく減少した部位 (aparticulatedomaりの 発生が 顕著 に観察された。さらに、ガラス化保存胚を10頭の受胚 ウ シに 移植 した 結果 、6頭が受 胎、5頭 の正 常な 子ウ シが得 られ 、ガラス化保存胚が正常 な胎子および産子へ発育することが確認された。
2.エチレングリコールとショ糖を用いたウシの体外受精由来胚盤胞のガラス化保存 体外受精由来ウシ胚の簡易かつ有効なガラス化保存法と野外応用のための凍害保護物 質のスト口ー内希釈法を開発するため、エチレングリコールとショ糖を用いたガラス化 保存法の検討を行った。10%グリセ口ールを添加した基本液(平衡液)に胚を5分間平 衡後、1Mショ糖と30%のグリセロールまたはエチレングリコールを添加レた基本液に 胚を曝露した結果、それぞれ87および100%の生存率が得られた。また、同様に平衡後ガ ラス化保存した胚の生存率は70および73%であった。次に、1Mショ糖と30%エチレン グリコールを添加したガラス化液でガラス化保存した胚を融解後、0〜20%の卵黄と0.5 Mショ糖を添加した希釈液で凍害保護物質の希釈を行い生存率を調べた結果、5〜15%の 卵黄添加区では無添加区に比較して有意に高い生存率が得られた。また、胚を1Mショ 糖と30%エチレングリコールを添加したガラス化液に平衡後、2種類のスト口ー内希釈 法を検討レた。あらかじめ150 ,u1の希釈液(10%卵黄十0.5Mショ糖添加)とその下部に 25彫1のガラス化液を吸引しておいたス卜口ーヘピペットにより胚を導入するス卜口ー内 希釈法を用いた場合、ガラス化保存後に高い生存率(93%)が得られた。さらに、スト ロー内希釈したガラス化保存胚を20頭の受胚ウシに1個ずつ移植を行ったところ、11頭 が受胎し9頭の正常な子ウシが得られた。
以上のことから、グリセ口一ルとプ口ピレングリコールを用いたガラス化法において は、ガラス化液への平衡を緩慢にすることによって平衡時の胚の障害を緩和し、ガラス 化保存後のウシの体外受精由来胚盤胞の高い生存性を得られることが明かとなった。ま た、30010工チレングリコールと1Mショ糖を含むガラス化液および0.5Mショ糖と5〜15% 卵黄を添加した希釈液を使用することによって、2段階の簡易な平衡方法でもウシの体外 受精由来胚盤胞を高率にガラス化保存することができ、さらに、ガラス化保存胚は凍結 スト口ー内で凍害保護物質の希釈を可能にすることが示された。すなわち、ウシの体外 受精由来胚盤胞の簡易なガラス化保存とストロー内希釈法による実用化の可能性が示唆 された。
学位論文審査の要旨 主 査 教 授 金 川弘 司 副 査 教 授 斉 藤昌 之 副 査 教 授 渡 邊智 正 副査 助教授 高橋芳幸
学 位 論 文 題 名
ウシの体外受精由来胚盤胞のガラス化保存に関する研究
本 研究 で は 、ウシ の体外受精 由来胚盤 胞のガラ ス化保存 法を開発 するとと もに、ガラ ス 化 保 存過 程 にお ける胚の障 害の機構 に関する 知見を得 る目的で 実験を行 った。まず 、 グ リ セ 口ー ル とプ ロピレング リコール を含むガ ラス化液 への平衡 がガラス 化保存後の 生 存 性 に 及ぼ す 影 響を 検 討し た 結 果、16段 階 で 緩慢 に 平 衡を 行 うこ と に より 、高い生存 率 の 得 られ る こ とが 明 らか と な った 。 次に 、16段 階 で 平衡 後 にガ ラ ス 化保 存した胚の 微 細 構 造の 観 察を 行ったとこ ろ、細胞 内外溶液 の完全な ガラス化 と微細構 造の維持が 観 察 さ れ た。‑方 、 生存 胚 が 得ら れ な かっ た2段 階で 平 衡 後に ガ ラス 化 し た胚 では原形質 膜 と 細 胞内 器 官が 著しく接近 して、膜 内粒子の 凝集、あ るいは著 しく減少 した部位が 顕 著 に 観 察さ れ た。 さらに、よ り実用的 なガラス 化保存法 を開発す るため、 各種ガラス 化 溶 液 と スト ロ ー 内封 入 法の 検 討 を行 っ た。 そ の 結果 、1Mシ ョ 糖と30%の エチ レングリ コ ー ル を合 む ガ ラス 化 液お よ び5へ15% の卵 黄と0.5Mショ糖を 添加した 希釈液を 用い、
連 続 し た希 釈 液と ガラス化液 のカラム を作成す ることに よルガラ ス化保存 胚のスト口 ー 内 希 釈 が可 能 で 、移 植 後、 正 常 な産 子 率(45%) の得られ ることが 分かった 。これらの 実 験 結 果よ り 、ウ シの体外受 精由来胚 盤胞はガ ラス化保 存が可能 であるこ とをはじめ て 明 ら か にし 、 また 、ガラス化 保存後の 高い胚生 存率を得 るために は、細胞 内外溶液の ガ ラ ス 化 と胚 の 微細 構造変化は 最小であ ることが 必要なこ とも明ら かにした 。さらに、 本 研 究 で 開発 さ れた ガラス化保 存胚のス トロー内 希釈法は 、簡易で かつ高い 生存性の得 ら れ ることも 実証した 。
こ れらの成 果|ま、 ウシ胚の 保存技術 を効率化し、畜産および発生工学の発展に貢献す る と こ ろが 大 きい 。よって、 審査員一 同は、桑 山正成氏 が博士( 獣医学) の学位を受 け る 資格を有 するもの と認めた 。