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博 士 ( 工 学 ) 吉 田 直 嗣

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 吉 田 直 嗣

学 位 論 文 題 名

高 り ん 低 炭 素 鋼 の 凝 固組 織 形成 と オ ー ス テ ナ イ ト 粒 径 制 御 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  低炭素 鋼材料 の連続 鋳造過 程で形 成されるオーステナイト結晶粒すなわち鋳造v粒は一般に数 mm以上の 粗大な 柱状晶であると認識されているが,その形成過程にっいて基本現象の理解は未だ 十分ではない.粗大な鋳造v粒は,高温延性を低下させ熱間割れの原因となるぱかりでなく.フェラ イト結晶粒微細化を目指した加工熱処理の障害にもなる.したがって,鋳造ッ粒組織制御は,熱間延 性 を 改 善 し 加 工 熟 処 理 に 適 し た 母 材 を創 形 ・ 創 質す る た め の重 要 な 課 題の ー つ で ある .   本研究は,鋳造ッ粒径の支配因子を明らかにし微細化のための指針を得ること,そして典型的な偏 析元素 である りん(P)が 強カなBCC安定化 作用を有することに着眼し,P添加によって鋳造ッ粒組 織を制御することを目的とした.本論文は全7章から構成されており,その概要は以下のとおりで ある,

  第1章では,凝固から連続する冷却過程で生じるオーステナイト結晶粒を鋳造ッ粒と定義し,鋼 の製造 工程に おける鋳造v粒の位置づけを概観するとともに,鋳造'粒の形成に関する従来の知見 をまとめ,本研究の目的を述べた.

  第2章では,鋳造ッ粒の形成に関する従来研究の知見から粒径予測の前提となる仮説を提示した 後,Burke‑Tumbunの古典的粒成長理論に基づぃて凝固後の冷却過程における粒径の予測モデルを 構 築 す る と と も に 予 測 モ デ ル の 妥 当 性 と 鋳 造 ッ 粒 径 の 支 配 因 子 を 検 討 し た .   鋳造ッ粒径は古典的粒成長モデルによる予測とよく一致し,予測モデルの前提から,ッ粒成長過程 は高温のv単相域における急成長過程が支配的であり,粒界移動律則による二乗則の正常粒成長に 従う. 鋳造ッ 粒の微 細化に は,急 成長開始温度1kの低温化と冷却速度Tの増大が有効であると考 えられる,冷却過程の途中から急冷凍結を行っても,包晶点付近の高温におけるッ粒成長量が非常に 大きいためッ粒の微細化は困難である.以上は,鋳造ッ粒径を制御するための指針となる基礎知見で ある,

  第3章で は,強 カなBCC安定化作 用を有 しかつ 代表的 な凝固 偏析元素であるりんの効果に注目 し,P含有鋼の平衡状態図を作成するとともに熱分析実験を行い,Pが凝固とその後の冷却過程にお ける相変態温度に及ぼす影響について検討した.

  Pは,状 態図に ッルー プを形 成し強 カなBCC安定化作用を有する.また,Pは平衡分配係数が比 較的小さく,BCC安定化作用とミクロ偏析の相乗作用によルッ単相化温度を低下させるのに最も適 する,

  0〜O.5massゲ。のPを含有 する0.10massワ。C鋼は,L→L十6→L十6十ッ→6十ッ→ッの凝固 パスを経ると推定される.鋼中のP量が増加すると,液相線温度,ッ相の晶析出開始温度,固相線温 度,ッ相の析出終了温度のいずれも低下するとともに,皿十6十ッ)三相共存域およぴ(6十ッ)ニ相 共存域の温度区間が低温側に拡大する.熱分析実験では,平衡状態図に比ベ,P量増大による固相線 温度およぴッ相析出終了温度の低温化傾向が助長されてより顕著に現れており,ミクロ偏析を伴つ た非平衡凝固が生じていることが示された,以上の知見は,Pが6相の存在する温度域を低温側に拡 大させ,ッ相組織形成に大きな影響を及ばすことを示唆する,

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  第4章 では, 最大0.2cloのPを含有するO.lgroC鋼のの100mm厚スラブを連続鋳造試験を行って,

試 作 し た ス ラ ブ の 鋳 造 組 織 を 調 査 し , 凝 固 組 織 に 及 ば すP添 加 の 影 響 を 検 討 し た .   P添 加は デ ン ド ライ ト 形 態を複 雑化す るが, デンド ライト の1次お よぴ2次 アーム 間隔はP添 加量によらずほぼ同程度である.また,P添加はデンドライト樹間のMn分散を促進し高固相率部の Mn偏析 を低減 する. このMn偏 析挙動 は,Pの ミクロ 偏析のBCC安定化 作用による三つの効果,す なわち,包晶反応の抑制・6/ッ間の溶質再分配の促進.6相中での速い拡散により生じる.また,旧 ッ粒 内部のP濃化ス ポットでは,球状aフェライトの生成が認められ,これが局所A3点が高まるこ とにより高温で優先的に形成したものと推定される,

  高P添加鋼のッ粒径は,P無添加鋼のそれに比べ約1/2に細粒化する,Pによるッ粒の微細化は,凝 固モ ードが6凝固化 するこ と,6相 の存在 温度範囲 が低温側に拡大すること,更にPの偏析がそれ を助長することにより,6相が第二相として作用してッ単相化温度範囲を低温側に狭め,高温域での ッ粒成長が抑制された結果と推定される.主要なメカニズムはデンドライト樹問において6相を低 温ま で残留 させる ことで ある,このように、Pの有するミクロ偏析とBCC安定化の相乗作用による 鋳造ッ粒の微細化効果を実験的に確認した,

  第5章では,Pのミクロ偏析に注目し,高りん低炭素鋼が液相から凝固を経て冷却される際のv相 組織形成過程を次の四つのアプローチによって考察した.1)高りん低炭素鋼特有の新しい凝固モー ドを提案しその妥当性は凝固解析によって検証した.2)高りん低炭素鋼の連続変態過程を直接観察 し,6→ッ変 態の際 一部の6相が残 留する こと,残 留した6相がッ‑a変態の優先サイトであること を確認した.3)スラブのミクロ偏析マップの熱力学的解析を行い局所変態温度を推定した,4)粒径 予測 モデル を用い ,P添加がミクロ偏析とBCC安定化の相乗作用によって鋳造ッ粒微細化を導く機 構を総括した.

  第6章で は,ニ アネット シェイ プ領域 の鋳造 厚2〜 100mmの薄鋼 板連続 鋳造にお ける鋳 造v粒 径について,第2章で導いた古典的粒成長モデルによる粒径予測式が適用可能であることを実証し,

鋳 造 厚 さ 低 減 に よ る 急 冷 の 効 果 , お よ び , り ん 添 加 の 効 果 に つ い て 指 標 化 し た ,   第7章は本論文の総括である.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

高りん低炭素鋼の凝固組織形成と オーステナイト粒径制御に関する研究

    低炭 素鋼材料の連続鋳造過程で形成されるオーステナイト結晶粒すなわち鋳造v粒は一般に数 mm以上 の粗大 な柱状 晶であ ると認 俄されているが,その形成過程について基本現象の理解は未だ 十分ではない,粗大な鋳造ッ粒は,高温延性を低下させ熟問割れの原因となるぱかりでなく,フェラ イト結晶粒微細化を目指した加工熱処理の障害にもなる,したがって,鋳造ッ粒組織制御は,熱間延 性 を 改 善 し 加 工 熱 処 理 に 適 し た 母 材 を 創 形 ・ 創 質 する た め の 重要 な 課 題 のー っ で あ る.

  本研究では,鋳造ッ粒径の支配因子を明らかにし微細化のための指針を得ること,および典型的な 偏析 元素で あるり ん口) が強カなBCC安定化作用を有することに着眼し,P添加によって鋳造ッ粒 組織を制御することを検討している.

  鋳造ッ粒の形成に関する従来研究の知見から粒径予測の前提となる仮説を提示し,Burke‑lYrnbull の古典的粒成長理論に基づいて凝固後の冷却過程における粒径の予測モデルを構築するとともに予 測モデルの妥当性と鋳造ッ粒径の支配因子を検討した.鋳造ッ粒径は古典的粒成長モデルによる予 測とよく一致し,予測モデルの前提から,ッ粒成長過程は高温のッ単相域における急成長過程が支配 的であり,粒界移動律速による二乗則の正常粒成長側に従うことを明らかにしている.また,鋳造y 粒の 微細化 には, 急成長 開始温度Trgの低温化と冷却速度Tの増大が有効であることを示し,冷却 過程 の途中 から急冷凍結を行っても,包晶点付近の高温におけるッ粒成長量が非常に大きいためv 粒の微細化は困難であることを示し,鋳造ッ粒径を制御するための指針となる基礎知見を明らかに している.

  次に ,強カ なBCC安定 化作用 を有しかつ代表的ナょ凝固偏析元素であるPが凝固とその後の冷却 過程における相変態温度に及ばす影響にっいて検討した.鋼中のP量が増加すると,液相線温度,v 相の晶析出開始温度,固相線温度,ッ相の析出終了温度のいずれも低下するとともに,皿十6十ッ)

三相共存域およぴ(6十ッ)二相共存域の温度区間が低温側に拡大することを確認し,りん添加によ り,ミクロ偏析を伴った非平衡凝固が生じることを示した.以上の知見より,Pが6相の存在する温 度 域 を 低 温 側 に 拡 大 さ せ , ッ 相 組 織 形 成 に 大 き な 影 響 を 及 ば す こ と を 明 ら か に し た .   続い て , 最 大0.2%のPを含 有 す る0.1%C鋼 の の100mm厚 スラ プ の連 続鋳造 試験を 行い,試 作 したスラブの鋳造組織を調査し,凝固組織に及ぼすP添加の影響を検討した.その結果,P添加はデ ンド ライト 形態を 複雑化 するが, デンド ライト の1次お よぴ2次アーム間隔はP添加量によらずほ ば同 程度で あるこ と,ま た,P添 加はデン ドライ ト樹間 のMn分散を促進し高固相率部のMn偏析を 低減 するこ とを明らかにした.さらに,高P添加鋼のッ粒径は,P無添加鋼のそれに比べ約1/2に細 粒化することを示し,その理由は,凝固モードが6凝固化すること,6相の存在温度範囲が低温側に     ‑ 162−

一 明

宏 徹

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拡大 するこ と,更 にPの偏析がそれを助長することにより,6相が第二相として作用してッ単相化 温度範囲を低温側に狭め,高温域でのッ粒成長が抑制されることであることを示した.このようにv 粒微細化の主要なメカニズムはデンドライト樹聞において6相を低温まで残留させることであるこ とを実験的に確認した.

  またPのミクロ偏析に注目し,高りん低炭素鋼が液相から凝固を経て冷却される際のッ相組織形 成過程を次の四つのアプローチによって考察した.1)高りん低炭素鋼特有の新しい凝固モードを提 案しその妥当性を凝固解析によって検証した.2)高りん低炭素鋼の連続変態過程を直接観察し,6→ ッ変 態の際 一部の6相が残留すること,残留した6相がッ→ば変態の優先サイトであることを確認 した.3)スラブのミクロ偏析マップの熟力学的解析を行い局所変態温度を推定した.4)粒径予測モ デル を用い ,P添加 がミクロ偏析とBCC安定化の相乗作用によって鋳造ッ粒微細化を導く機構を総 括した.

  以上の知見に基づいて,ニアネットシェイプ領域の鋳造厚2'‑‑‑100mmの薄鋼板連続鋳造における 鋳造ッ粒径について,導いた古典的粒成長モデルによる粒径予測式が適用可能であることを実証し,

鋳 造 厚 さ 低 減 に よ る 急 冷 の 効 果 , お よ び , り ん 添 加 の 効 果 に つ い て 指 標 化 し た .   これを要するに,著者は,低炭素鋼の鋳造ッ粒の形成機構を明らかにし,冷却速度制御とりん添加 による鋳造ッ粒微細化法を新たに提案し,その効果を実証したもので,鉄鋼材料工学に対して寄与す るところ大なるものがある.よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるも のと認める,

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