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博 士 ( 工 学 ) 東 中 雅 嗣

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 東 中 雅 嗣

学 位 論 文 題 名

複 数 ア ン テ ナ を 用 い た 広 帯 域 デ イ ジ タ ル 無 線 通 信 に お け る 高 度 受 信 信 号 処 理 に 関 す る 研 究

     学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近 年の 、携 帯 電話 に代 表さ れ る無 線通 信の 技術 革 新お よび 一般 ユー ザ への 浸透 は目 覚 まし いも のが ある 。特 に 最近 では 、音 声 通話 のみ なら ず、携帯端 末を用いてインターネットに アクセスする ユー ザの 割合 が 急激 に増 加し て おり 、大 容量 のマルチメ ディアコンテンツをストレス 無く伝送でき るような大容量無線通信 技術への要求が高まってい る。

  無 線通 信に お いて シス テム 周 波数 を広 げる こと な く大 容量 伝送 を実 現 でき る方 式と し て、MIMO (Multiple‑Input Multiple‑Output)シス テム の検討が盛 んに行われている。MIMOシス テムとは、広 義に は、 複数 の 信号 入出 力端 を 持つ シス テム 全般を指し 、狭義には、単一の送信機お よび受信機が 複数 のア ンテ ナ を装 備し 、同 一 時刻 、同 一周 波数に複数 の信号を同時に送信するシス テムを意味す る 。1990年 代 後 半 にMIMO伝 送 路 の 通 信 路 容 量 は 送受 信ア ンテ ナの 次 数に 比例 して 増大 す るこ と が証明されて以来、世界 中で活発な研究開発が進め られている。

  MIMOシ ス テ ム に お け る 信 号 伝 送 形 態 の ー っ に 、MIMO空 間 多 重 が 挙 げ ら れ る 。 こ れ は 、 複 数 の 送 信 ア ン テ ナ か ら 異 な る 情 報 を 並 列 伝 送 す る こと で大 容量 伝送 を 実現 する 手法 であ る 。MIMO 空間多重では、並歹IJ伝 送された信号が互いに干渉 となって受信機に到来する。 そのため、受信機に お い て 各 信 号 を 分 離 ・ 検 出 す る 必 要 が あ る 。MIMO空 間多 重の 伝送 性 能は 信号 分離 方式 に よっ て 大 き く 左 右 さ れ る こ と と な る 。MIMO空 間 多 重 に おけ る代 表的 な信 号 分離 方式 に空 間フ ィ ルタ と 最 尤 判 定 法(Maximum‑Likelihood Detection: MLD)が 挙げ られ る。 空 間フ イル タは 、所 望 の信 号 成分 のみ を抽 出 し、 他の 信号 成 分を 干渉 とみ なして除去 するような線形フイルタバン クを用いて並 列 伝 送 さ れ た 各 ス ト リ ー ムを 分離 する 方 式で ある 。MLDは 、受 信信 号 のレ プリ カを 取り う る全 て の送 信シ ンボ ル の組 み合 わせ に 対し て作 成し 、受 信 信号 と比 較し た上 で 最も 確か らし い もの を送 信 さ れ て い る も の と し て 判定 する 方式 で ある 。MLDは 理論 的に 最適 な 信号 分離 性能 を有 す るも の の、MIMO空間 多 重で ター ゲッ ト とす るよ うな 大容 量 伝送 時に は、 考慮 し なけ れば なら な いレ プリ カ の 組 み 合 わ せ 数 が 増 加 す る た め 、 膨 大 な 処 理 量 を 必 要 と す る 欠 点 が あ っ た 。   本 論 文 の 目 的 は 、MIMO空 間 多 重 を 用 い て 大 容 量 伝 送 を 実 現 す る た め に 要 求 さ れ る 高 性 能 受 信信 号処 理技 術 の確 立と その 有 効性 を示 すこ とに あ る。 大容 量伝 送を 実 現す るた めに 多 値変 調と :tvnMO空 間多 重 を併 用し た場 合 、高 い受 信感 度特 性 を有 する 受信 機の 実 現が 必須 であ る 。本 論文 で は 、 理 論 的 に 最 適 な 信 号 分 離 法 で あ るMLDに 着 目 し 、MLDが 有 す る 最 高 の 性 能 を 少 な い 演 算 量で 実現 でき る 受信 方式 の検 討 を行 う。 加え て、復調ア ルゴリズムを動作させるため に必要な無線 伝送 路を 推定 す る処 理を 高精 度 に実 現す る方 式に 関 する 検討 も行 う。 本論文は、以 下の6章から構

成されている。 837

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  第1章は序論であり、本研究に至る社会的背景および研究動向について述ぺた上で、本論文の目 的と意義を明らかにする。また、論文の全体構成について述ぺている。

  第2章 で は 、MIMO伝 送 路 お よびMIMO空 間 多重 の基本事 項を説 明する。 ここで 、MIMO伝送 路はMISO (Multiple‑Input SingleーOutput)やSIMO (Single‑Input Multiple‑Output)の構成を上回る 通 信路容量を有することを説明する。更に、具体的なMIMOシステムにおける送受信方式として MIMO空 間多重 を説明し 、MIMO空間 多重にお ける基 本的な信号分離方式である、空間フイルタ およびMLDの処理内容と性質をまとめる。

  第3章では、MLDの有する高い信号分離性能を維持したまま、その演算量を肖4減する演算量削 減型MLDについて、特に、最も確からしいシンボルを検出する際の演算貴削減の観点から検討を 行っている。本論文では、理論的にMLDと等価な性能を達成できるSD (Sphere Decoding)に着目 し、SDの演算量を決定付けるパラメータである超球の半径を複数の異なる基準から適応的に選択 する手法を提案している。評価の結果、従来方式と比較して提案方式は通信環境に依らず大きな処 理量削減効果が得られることを示している。本章では、更に、SDを同一チャネル干渉除去に応用 す る手法を提案し、SDはシングルユーザ環境におけるMIMO空間多重用の信号分離のみならず、

MIMOシステムにおける干渉キャンセルにも適用可能であることを明らかにしている。その上で、

干渉は不要な信号であることに着目し、所望信号と干渉信号を全て包含する受信信号モデルから、

干渉信号を削除した低次元モデルを再構築することで、大幅な演算量削減を実現可能であることを 示している。

  第4章では、演算量削減型MLDと軟入力復号器とを組み合わせて誤り訂正復号を行う場合の課 題である、復調器における軟判定計算方法の検討を行っている。演算量削減型MLDは、演算量削 減の過程において、軟判定計算に必要な尤度情報をも削減してしまい、精度の高い軟判定を生成す る ことができないという問題点があった。これに対して、MIMO空間多重の信号分離結果に基づ いて、空間フィルタと最尤判定法の処理を組み合わせた簡易な手法で必要な尤度を推定する方式 を提案している。提案方式を用いることで、演算量削減型MLDを用いた場合でも精度の高い軟判 定を生成することが可能になり、その結果高い復号性能を享受できることを示している。また、提 案方式は演算量削減型MLDの構成に依らず適用可能である、汎用的な方式であることを説明して いる。

  第5章で は、MIMO空 間多重 における伝送路推定法の検討を行っている。MIMO空間多重では、

復調に先立って推定しなければならなぃ無線伝送路応答の数がアンテナ構成に比例して増加してし まう。特に、シングルキャリア方式による広帯域伝送を考えると、複数シンボルに渡る遅延分散を 有する周波数選択性フェージングが生じるため、更に遅延シンボル数倍の伝送路係数を推定しなけ ればならない。このような多数の伝送路係数を干渉存在下で高精度に推定するために、伝送路推定 用のパイロット信号のみならずデー夕信号をも利用してパラメー夕推定を行う手法を検討する。そ の上で、デー夕信号を用いた伝送路推定でIま、ストリーム間干渉キャンセルを導入した、ストリー ム毎の逐次伝送路推定を行う構成にすることで、伝送路推定誤差がない場合に漸近する高い復号性 能を実現できることを示している。

  第6章は結論であり、本論文の内容および得られた知見を要約している。更に、今後の研究課題 を述べている。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    小 川恭孝 副査    教授    宮 永喜一 副査    教授    野 島俊雄 副査    教授    小 柴正則 副査   准教授   大鐘武雄

学 位 論 文 題 名

複数アンテナを用いた広帯域デイジタル無線通信における 高度受信信号処理に関する研究

  近年 、携 帯 端末 を用 いた インターネ ットアクセスが急増し、大容 量のマルチメディアコンテ ン ツを スト レ ス無 く伝 送で きるような 大容量無線通信技術への要求 が高まっている。その解決 策 とし て最 も 注目 され てい る技 術 が、 送信 機お よび 受信機が複数 のアンテナを装備した〜nMO (Multiple‑Input Multiple‑Output)シ ステムである。1990年代後半に1VnMO伝送路の通信路容量が 送受信アン テナの数に比例して増大することが証明されて以来、世界中で活発な研究開発が進めら れている。

  MIMOシス テ ムに おけ る信 号伝 送 形態 のー っに 、MIMO空間 多重 が挙 げ られ る。これは、複数 の 送信アン テナから異なる情報を並列伝 送することで大容量伝送を 実現する手法である。lvnMO 空間多重で は、並列伝送された信号が互いに干渉となって受信機に到来するため、受信機において 各信号を分 離・検出する必要がある。 このとき、MIMO空間多重の伝 送性能は信号分離方式によっ て 大き く左 右 され る。MIMO空間多重に おける代表的な信号分離方式 としては、空間フイルタと 最尤判定法(Maximum‑I´ikelihood Detection: MI,D)が挙げられる。空間フイルタは、他の信号成 分を干渉と みぬして除去し、所望の信号成分のみを抽出する線形フイルタパンクを用いて、並列伝 送された各 ストリームを分離する方式 である。一方.、MLDは、取り得る全ての送信シンポルの組 み合わせに 対して受信信号のレプリカを作成し、受信信号と比較した上で最も確からしいものを送 信 信号 とし て 判定 する 方式 である。MLDは理論的に最適な信号分離 性能を有するものの、rvnMO 空間多重で 対象とする大容量伝送時には、レプリカの組み合わせ数が指数的に増加するため、膨大 な処理量を 必要とする欠点があった。

  本論 文の 目 的は 、MIMO空 間多重を用 いて大容量伝送を実現するた めに要求される高性能な受 信信号処理 技術の確立とその有効性を 示すことにある。ここでは、理論的にMLDと等価な性肓皀を 達成できるSD (Sph.ereDec0曲lg)に着目し、SDの演算量を決定付けるパラメータである超球の半     ―839−

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径を複数の異なる基準から適応的に選択する手法を提案した。評価の結果、提案方式は通信環境に よらず大きな処理量削減効果が得られることを明らかにしている。また、このような演算量削減型 MLDを軟入 力復号 器と組 み合わ せて誤り 訂正復 号を行 う場合 、演算量削減の過程において軟判定 計算に必要な尤度情報をも削減してしまい、精度の高い軟判定を生成することができないという問 題点が あった。 これに 対して 、MIMO空 間多重の信号分離結果に基づぃて、空間フイルタと最尤判 定法の処理を組み合わせた簡易な手法で必要な尤度を推定する方式を提案した。この手法により、

演算量 削減型MIDを用い た場合 でも精度 の高い 軟判定 を生成 することが可能になり、その結果高 い復号性能を享受できることを明らかにしている。さらに、これらのアルゴリズムを動作させるた めに必要な無線伝送路を推定する処理を高精度に実現する方式も新たに開発している。本論文は、

以下の6章から構成されている。

  第1章は 序論であり、本研究に至る社会的背景および研究動向について述べた上で、本論文の目 的と意義を明らかにしている。

  第2章 で は 、MIMO伝送 路 お よ びrvnMO空 間多 重 の 概 要と し て 、MIMO通信 路 容 量 を導 出 し 、 MIMO空間 多 重 に おける 基本的 な信号 分離方 式である 空間フ イルタ およぴMLDについ て述べ る。

  第3章で は、MLDの 有する 高い信 号分離 性能を 維持し たままそ の演算 量を削 減する 演算量削減 型MLDとし てSDくSp hereDecoding) に着目 し、SDの 演算量 削減手法にっいて提案するとともに その特性評価を行っている。

  第4章で は、演 算量削 減型MLDに おける 軟判定 計算方 法の提案 を行っ ている 。さら に、本手法 が演算 量削減型MLDを用 いた場 合でも精 度の高 い軟判 定を生 成可能であること、また、演算量削 減 型MLDの 構 成 に 依 ら ず 適 用 可 能 な 汎 用 的 方 式 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。   第5章で は、MI|0空間多 重にお いて、 多数の 伝送路 係数を干 渉存在 下で高 精度に 推定する逐 次伝送路推定手法を提案し、伝送路推定誤差がない場合に漸近する高い復号性能を実現できること を示している。

  第 6章 は 結 論 で あ り 、 本 論 文 の 内 容 お よ ぴ 得 ら れ た 知 見 を 要 約 し て い る 。   これを 要する に、著 者は、大 容量伝 送を実 現でき るMn10シス テムに おいて 高性能 な受信信号 処理について提案するとともに、高い復号処理を低演算量で達成できることを明らかにしたもので あり、無線通信工学に貢献するところ大なるものがある。よって、著者は北海道大学博士(工学)の 学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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