博 士 ( 医 学 ) 陰 山 研
学位論文題名
灌 流ラット心臓におけるG 蛋白質 p サブュニットの ロアドレナリン受容体刺激による細胞内局在の変化
学位論文内容の要旨
G蛋白 質は 、細 胞膜 内側 にあ り細 胞膜 上に ある 受容体からの情報伝達を制御する
,p, ア三 量体 構造 からなる機能蛋白質である。現在までにaサブユニットは17種 類 ,pサ ブユ ニッ トは5種類 ,yサブ ュニ ット は6種 類同定されている。従来,G蛋白 質aサ ブ ユ ニッ ト (G ) が 効果 器に 対し て能 動的 な機能 を司 り、G蛋 白質pyサ ブ ユ ニッ ト(Gpア )はGaの機 能を 補助 する 付加 的な もの であ ると 考え られ てき た。
し かし 最近 にな って 、Gpア も効 果器 と直 接に 相互 作用 し、G・pアが 情報 伝達 系に お いて 重要 な役 割を 果たす こと が明 らか にな った 。また最近心臓において、G蛋白 質pサプ ユニ ット (Gp)の アイ ソフ オー ム特 異的 な発現と細胞内局在が、当研究室 より報告された。
本研 究の 目的 は、 慢性心 不全 時に みら れる カテ コラミンによるjアドレナリン受 容 体過 剰刺 激状 態が 、心臓 に特 異的 に存 在す るGpの細 胞内 局在 にど のよ うな 変化 を 引き 起こ すか を検 討し、その分子レベルのメカニズムと意義を明らかにすること である。
【方法】
1.実験動物
雄 性 Sprague‑Dawleyラ ッ ト ( 9週 齢 、 体 重 約 350g)を 用 い た 。 2.抗Gロ抗体
抗Gpポリ クロ ーナ ル抗体(p−636,p ‑637,p―638)は、ヒトGpのアイソフオー ム 間で 最も 相同 性の 低いN末端 から26〜39番 目の アミノ酸配列に相当する合成ペプ チ ド で あ る 、ADATLSQITNNIDP,GDSTLTQITAGLDP,ADVTしz¥ELVSGLEVを そ れ ぞ れ ウ サ ギ に 接 種 し 作 製 し たも ので 、p ‑636はplに、f ‑637は戸2に 、pー638は p3に 特 異 的 な ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 で あ る こ と が す で に 証 明 さ れ て い る 。 3.灌流心臓作成
心臓はランゲンドルフ法により60mmHgのK−H(Krebs‑Henseleit bicarbonate)緩衝液
で10分 間 予 備 灌 流 し た 後 、10/zMの イソ プ口 テレ ノー ル( 非選 択的p受容 体刺 激 薬 ) を 含 ん だ 緩 衝 液 、 あ る い はO.lmMの エピ ネフ リン を含 んだ緩 衝液 を用 いて30 分 間灌流 した 。ま たpアド レナ リン受 容体 拮抗 薬の 影響をみる実験では、10分間予 備 灌 流 し た 後 、O.lmMの プ ロ プ ラ ノ ロ ー ル ( 非 選 択 的p受 容 体拮 抗薬 )ま たは10
/ MのCGP20712A(pl受容 体選 択的 拮抗 薬) を含 んだ緩衝液を5分間灌流した後、
10/zMの イ ソ プ ロ テ レ ノ ー ル の存 在 下 にO.lmMの プ ロ プ ラ ノ口 ール また は10ルM のCGP20712A同 時 投 与 し た 緩 衝 液を 用い て30分間 灌流 した 。潅流 後の 心臓 は迅 速 に液体窒素にて凍結し、−80℃に保存した。
4.心臓細胞分画の調整
心臓全 体の ホモ ジェ ネー トをioooXgで10分 間遠 心し、得られた上清を105,000X gで1時間 遠心 し、 得ら れた 上清 を細 胞質 分画 、沈 殿を を粗 膜標本 とし た。 蛋白 の 定量にはLowry法を使用した。
5.ウェスタンブロッティングによるGロ蛋白量の比較
各心臓 の細 胞質 およ び粗 膜標 本を それ ぞれ60冖gある いは180卩gず つ、SDSポ リ アクリルアミドゲル電気泳動法にて分離した後、PVDF(polyvinylidene difluoride)膜に 電 気的に 転写 した 。そ のPVDF膜 を3% ウシ 血清 アル ブミ ンを 含むTTBS液に て3時 間 ブ ロ ッ キ ン グ し 、 各Gpア イ ソ フオー ムに 特異 的な 一次 抗体 を室 温に て8時 間反 応 さ せた後 、二 次抗 体と して 抗ウ サギ ・ヤ ギ抗 体を1時間 反応 させ た。 あら かじ め1 時間反応させておいたStreptavidinとBiotinylated Alkaline Phosphataseを加え、さらに 1時 間反 応さ せた 。次 に発 色液 により5分 間反 応さ せて 発色 させた 後、 反応 を止 め た。
【結果】
f 1)細胞質分画Gロ量のイソプロテレノールによる変化
灌流ラ ット 心臓 の細 胞質 分画 のG蛋 白質p3サ ブユ ニッ ト(Gp3) 量の 変化 を、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 法 に よ っ て 解析 し た 結 果 、36〜37kDaにGp3が 検出 され た。 イ ソプロテレノール′潅流´C、臓、エピネフリン灌流心臓のGp3量は、ともにコントロー ル に 比 較 し て 有 意 な 減 少 を 認 めた。G蛋 白質plサ ブュ ニツ ゛ト(Gpi)、G蛋白 質 p2サブユ ニッ ト(Gp2)は それ ぞれ36kDa,35kDaに 検出され、イソプロテレノール 灌 流 、 エ ピ ネ フ リ ン 灌 流 に よ る 有 意 な 量 的 変 化 は 認 め な か っ た 。 t21細胞膜分画Gロ量のイソプロテレノ―ルによる変化
灌 流 心 臓 の 細 胞 膜 分 画 に お けるGp3が 、36 ‑‑37kDaに検 出され た。 イソ プ口 テ レノール′灌流、エピネフリン灌流´C、臓のGp3量は、ともにコントロール に対して 有 意 な 増 加 を 認 め た 。Gpl,Gp2は そ れ ぞ れ36kDa,35kDaに 検出 され 、イ ソプ 口 テ レ ノ ー ル 潅 流 、 工 ピ ネ フ リ ン 潅 流 に よ る 有 意 な 変 化 は 認 め な か っ た 。
t3lイソ ブ ロテ レ ノ ール に より 減少 した細胞質 分画Gロ3量の プロプラノ ロ―
ルあるぃはCGP20712A同時投与の影響
イソプ口テレノール灌流と、イシプロテレノールとCGP20712A両方を含んだ潅 流心臓細胞質Gp3量は、コントロールに比ベ有意な減少を認めた。またイソプ口 テレノールとプロプラノ口ール両方を含んだ灌流心臓のGp3量は、コント口ール に比較して有意な変化を認めなかった。
(41イソプロ テレノール により増加 した細胞膜 分画Gロ3量の ブ口ブラノ ロー ルあるぃはCGP20712A同時投与による影響
イソプロテレノール灌流心臓では、コントロールに比ベ細胞膜Gp3量が有意に 増加した。またイソプロテレノールとプロプラノロール、あるいはイソプロテレノー ルとCGP20712Aを含んだ灌流心臓のGp3量はコントロールに比較して有意な変化 を認めなかった。
【考察】
GaとGpyが 細 胞膜 に 局在 し てい るとぃう 従来の概念 とは異なり 、心臓にお けるGp3が細胞膜分画ではなく、ほとんど細胞質分画に存在していることを当研 究室が最近報告した。
本研究においてpアドレナリン受容体刺激により、細胞質分画、細胞膜分画のG pl,Gp2量は変化をせず、Gタ3のみ特異的に細胞質分画において減少し、細胞膜 分画において増加した。さらに非選択的p受容体拮抗薬によりこれらの変化は遮 断され、pl受容体選択的拮抗薬により細胞質分画の減少のみを認めた。これらの 実験結果はpアドレナリン受容体刺激によりGp3の一部が細胞質分画から細胞膜 分画に移行した可能性を示唆する。
Gpは常にG蛋白質アサ ブユニット (Gy)と会合してGpア二量体として細胞内 に存在する。Gyはイソプレニル化による脂質修飾を受け、細胞膜に存在している。
これとは対 照的にGp3が細胞質に局在する生化学的理由のーっとして、Gp3と結 合しているGyが通常の脂質修飾を受けていない可能性がある。その根拠は、網膜 より精製し たG13と結 合しているGアのN末端の 配列は、従 来のGア のアミノ酸 配列とは異なっており、新しいGアである可能性が高いとぃうFung等の報告である。
Gp3の細胞内移動はこのような脂質修飾の変化によるのか、他のメカニズムによ りGp3自身が細胞質から細胞膜へ移行する機能をもっているのか不明である。今 後、どのような分子メカニズムがGp3の細胞内移動と局在に関わっているのかが 興味深く、検討が必要であると考えられる。
学位論文審査の要旨 主 査 教 授 北 畠 顕 副 査 教 授 菅 野 盛 夫 副 査 教 授 石 橋 輝 雄
学 位 論 文 題 名
灌流 ラッ ト 心臓 にお ける G 蛋 白質 届サ ブュニットの 届アドレナリン受容体刺激 による細胞内局在の変化
G蛋白 質 は 、細 胞 膜内側 にあり細 胞膜上に ある受容 体からの 情報伝達 を制御する
,0,7三量 体 構 造から なる機能 蛋白質で ある。現 在までにaサブユニ ットは17種 類 ,pサブ ュ ニ ット は5種 類,yサブ ュニット は6種類同 定されて いるっ従 来,G蛋白 質 サ ブュニッ トが効果 器に対し て能動的 な機能を 司り、」?Yサ ブユニットは サ ブュニ ットの機 能を補助 する付加 的なもの であると 考えられて きたっし かし最近に なって `f?yサブ ユニット も効果器 と直接に 相互作用 し、情報伝 達系において重要 な役割 を果たす ことが明 らかにな ってきて いる。本 研究では、 慢性心不 全などにみ られるt?アドレ ナリン受 容体刺激 状態が、 心臓に特 異的に存在 するG蛋白質戸サブ ユ ニ ッ ト の 細 胞 内 局 在 に ど の よ う な 変 化 を 引 き 起 こ す か を 検 討 し た 。 方法と してはSprague‐Dawley雄性ラッ トの心臓を用いて、ランゲンドルフ法によ り、ク レブスヘ ンセライ ト緩衝液 でlO分間予 備灌流し た後、lO.′zMのイソプロテ レ ノー ル 、 ある い はlOO/zMのエピネ フリンを 用いて30分 間潅流し た。また メアド レナリ ン受容体 拮抗薬の 影響をみ る実験で は、10分間予備灌流した後、.loo′zMの プ ロ プ ラ ノ ロ ー ル ま た はlO′zMの メtア ド レ ナ リ ン 受 容 体 選 択 的拮 抗 薬 であ る CGP20712Aを5分間 濯流した 後、lOメMの イソプロ テレノー ルとIo′′ Mのプロプラ ノロー ル存在下 またはlO′ Mのイソ プ口テレ ノールとlO.′zMのCGP20712A存在下 で30分間 潅流した 。これら の心臓全 体のホモ ジェネートを|000XgでlO分間遠心し、
得 られ た 上 清をl05,OooXgで1時 間遠心し 、得られ た上清を 細胞質分 画、沈殿 をを 粗膜標 本とした 。各心臓 の細胞質 および粗 膜標本を 用いてウエ スタンブ ロット法に て戸1.p2.|?3各サブュニット量を比較した。ウエスタンブロット法には、各アイソ フ オー ム に 対す る 特異 性が証明 されてい る抗pサブ ュニット ポリク口 一ナル抗体 を
用いた。
その結果 、細胞質 分画にお けるイソプ口テレノール潅流心臓、エピオ、フリン灌流 心臓 のp3サブユ ニット量 は、ともに コントロ ールと比 較して有 意な減少 を認めた 。 また メ1サ ブユ ニ ッ ト、p2サブ ュニ ットはそ れぞれイ ソプロテ レノール 潅流、エ ピ ネフ リン灌流 による有 意な量的変 化を認め なかった 。これに 対して細 胞膜分画 にお けるイ、 ソプロテ レノール 灌流心臓、 エピネフ リン灌流 心臓のt?3サブュニットは、
ともにコント口ールと比較して有意な増加を認めた。またf・ヲ1サブュニット`f.ゴ2サ ブュ ニットは それぞれ 、イソプロ テレノー ル潅流、 エピネフ リン潅流 による有 意な 変化は認めなかった。イソプ口テレノールにより減少した細胞質分画f・?3サブユニツ 卜 量 の プ ロ プ ラ ノ 口 ― ル あ る い はCGP20712Aに よるpア ド レ ナリ ン 受容 体 遮 断の 影 響 を 検 討 し た 結 果、 イ ソプ ロ テ レノ ー ル、 イ ソ プロ テ レ ノー ル とCGP20712A存 在下の, ?3サブユ ニット量 は、コント 口ールに 比ベ有意 な減少を認めた。またイソ プロ テ レ ノー ル とプ ロ プ ラノ ロ ール 存 在 下のp3サブ ユ ニッ ト 量は、コ ントロー ル に比較し て有意な 変化を認 めなかった 。これに 対して、 イソプ口テレノールによI) 増加 し た 細胞 膜 分画t?3サ ブ ユニ ット量の プロプラ ノロール あるいはCGP20712Aに よる ヶアドレ ナリン受 容体遮断の 影響を検 討した結 果、イソ プロテレ ノールで は、
コントロ ールに比 ベ、メ3サ ブュニット 量は有意 に増加し た。またイソプロテレノー ルと プ ロ プラ ノ ロー ル 、 ある い はイ ソ プ ロテ レ ノー ル とCGP20712A存 在下のァ3サ ブ ュ ニ ッ ト 量 は コ ン ト ロ ー ル に 比 較 し て 有 意 な 変 化 を 認 め な か っ た 。 こ れ らの 結 果よ り 、pIア ド レナ リ ン受 容 体 刺激 に よりfヲ3サブ ュニット の一部 が細胞質から細胞膜に移行した可能性が示唆された。
口頭発表 の審査会 において 、菅野教授よりG蛋白質メ3サプュニ・ソトの量的変化が f?アドレナリン受容体以外の受容体刺激で起こるかどうかについて`fヲ3サブユニッ トと 相互作用 している 可能性のあ る他の蛋 白質につ いての質 問がなさ れた。石 橋教 授よ7)、 メ3サブュ ニットと 会合してい るyサブヱ 二゛ソトも同時に細胞膜に移行し て い る か ど う か 、 またyサ ブ ユニ ッ ト の脂 質 修飾 に つ いて 、p3サ ブ ュニ ッ ト が細 胞質 か ら 細胞 膜 ヘ移 動 す る機 構 について 、pアドレ ナリン受 容体刺激 時間につ いて の質 問がなさ れた。こ れらに対し 、申請者 はおおむ ね妥当な 回答を行 った。そ の後 行っ た 菅 野、 石 橋両 審 査 教授 と の試 問 に おい て も、 概 ね 妥当 な回答 がなされ た。
本研究は 、メアド レナリン 受容体刺激 によりG蛋 白質fヲ3サブユニットが細胞質か ら細 胞 膜 に一 部 移行 し た 可能 性 を示唆し たもので あり、こ のことはG蛋白質に おい て は 初 め て の 報 告 で あ り 、 有 意 義 な 研 究 と 考 え ら れ 、 学f立 授 与 に 値 す る 。
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