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博 士 ( 農 学 ) 今 西 弘 幸

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 今 西 弘 幸

学 位 論 文 題 名

クロミ ノウグイ スカグ ラ栽培 化の基 礎としての低温遭遇に 伴 う 樹 体 成 分の 変 化 な らび に 耐 凍 性の 変 動 に 関す る 研 究

学 位 論 文内 容 の 要 旨

  クロミノウグイスカグラ(Lonicera caerulea var.emphyllocalyx)の栽培化、栽培地域の 拡大、品種改良などを図る際の 基礎となる知見を得ることを目的として、耐凍性の変動お よ び 内 生 物 質 の 変 化 に つ い て 検 討 し た 。 内 容 の 概 要 は 以 下 の と お り で あ る 。 1. 生育地域と耐凍性

  北 海 道内 各地 で生 育し てい るク ロミ ノウ グイ スカグラ の耐凍性と、その地域の気象特 性に つ いて 調査 した 。耐 凍性 は、10月 下旬 から12月 下旬 にか け て高 くな り、翌年2月下 旬には、生育地域による差が認 められた。積雪深の小さい地域では、耐凍性が高いまま維 持さ れ てい たの に対 し、 積雪 深の 大き い地 域で は低くな ったことから、ク口ミノウグイ スカ グ ラの 耐凍 性は 、そ の地 域の 気温 と積 雪量 に関連し ているものと考えられる。っぎ に、 凍 害発 生状 況に つい て組 織学 的に 観察 した とこ ろ、11月 上 旬の 材料 では、‑30℃で 凍結 さ せる と、 芽の 基部 およ び皮 層の 一部 にお いて凍結 傷害が発生したが、12月下旬で は 、‑40℃ 凍 結 に おい て も全 ての 組織 が生 存し てい た。 さら に、3月上 旬に は―30℃ 凍 結で大部分の組織で発生した。 耐凍性は、腋芽では、頂端分裂組織および葉原基で高く、

芽の 基 部で 低か った 。ま た、 茎で は、 維管 束形 成層およ ぴ表皮直下の組織で皮層よりも 高 か っ た こ と か ら 、 耐 凍 性 に は 、 組 織 に よ る 差 異 の あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 2. 野外茎頂の耐凍性の変化

  再 生 法に より 、野 外茎 頂の 耐凍 性を 評価 した とこ ろ、8月か ら11月に かけ て徐々に高 まり、冬季に極めて高い状態を 維持したのち、春季に急速に低下することがわかった。ま た、 耐 凍性 が高 い時 期(10月 〜翌 年3月 )の 茎頂 は、超低温(ー196℃)で凍結した場合 にも 生 存し たが 、耐 凍性が低 くなる時期(4月)のものは 生存できないことが判明した。

っぎ に 、TTC還 元法 によ って評価したところ、茎頂の耐凍 性は、茎のそれよりも、早い時 期に 強 くな り、 冬季 間の 耐凍 性の 強い 時期 には 、茎頂と 茎との間に耐凍性の顕著な差異 はみられなかったが、冬季から 春季にかけての耐凍性が弱くなる時期には、茎頂の耐凍性 が 、 茎 の そ れ に 比 ペ 、 遅 く ま で 高 い 状 態 を 維 持 し て い る こ と が わ か っ た 。 3. 野 外 ク ロ ミ ノ ウ グ イ ス カ グ ラ 茎 頂 に お け る 含 水 率 お よ び 内 生 物 質 の 変 化   野 外 茎 頂 の 含 水 率は 、5月 から6月 にか けて の耐 凍 性が 弱い 時期 には 高< 、耐 凍性 が 強い10月〜 翌年3月 には 、他の時期のそれと比ぺて低く推 移することが明らかになった。

可 溶 性 糖 質 に つ い て調 べた とこ ろ、 総含 量お よび ス クロ ース 含量 は、8月 から 翌 年1月 まで 漸 増し 、そ の後 減少 して 、4月 から6月 にか けて低い 値で推移し、フルクトースおよ びグルコース含量は、季節を問 わず少ない状態にあり、変動の幅も小さかったが、ラフイ

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ノースおよびスタキオースの含量は、10月から増加し、11月から翌年3月まで高い値を 維持した。遊離アミノ酸の総含量、トレオニン、セリンおよびプロリンの含量は、春季に 増加したが、その他の時期にはそれほど変化しなかった。このことから、耐凍性増大に 関与する要因としては、組織内における含水率の低下、糖含量の増加、糖濃度の増大お よび糖組成の変化などが考えられ、特に、糖の中でもラフイノースおよびスタキオースの 含量の増減が密接に関連していると推測される。

4. In

itro

実 験 系 に よ る ク ロ ミ ノ ウ グ イ ス カ グ ラ 耐 凍 性 の 検 証

  

培養植物体の節部切片、節間部切片およびカルスを用いて、低温馴化処理および脱馴 化処理を行い、温度処理に伴う耐凍性の変動について検討した。低温馴化期間中の耐凍 性の変化についてみると、処理期間が長くなるにっれて増大し、処理開始12日 後以降に 最も高くなりその状態を維持したが、低温馴化処理を行わない場合では、耐凍性は低〈推 移することがわかった。低温馴化処理を14日間行った場合の耐凍性についてみると、い ずれの材料においても−5℃〜 ‑7℃の凍結後にも高い生存性を示し、無低温馴化処理区 においては、0℃以上の冷却温度域では高い生存性を示したが、0℃より低い冷却温度 域では急に生存性が低下することが明らかになった。

  

つぎに、脱馴化期間中の生存性の変化についてみると、節部切片および節間部切片で は、処理開始2日後から8日後にかけて徐々に低下し、カルスでは、処理2日後に著し く低下した。また、いずれの材料においても、処理開始8日後〜 12日後には、予め低温 馴化処理を行わず脱馴化処理も行わない区(無処理区)のものと同程度となった。また、

脱馴化していない場合(無脱馴化処理区)は、低温馴化処理により高くなった生存性を 維持していることがわかった。脱馴化処理を8日間行った節部および節間部切片の耐凍 性についてみると、0℃以下の温度域では冷却温度の低下に従って生存性が急激に低下 し、無低温馴化処理区の傾向と類似していたが、無脱馴化処理区の材料では、―5℃〜

‑9

℃の冷却温度域で比較的高い生存性を示すことが明らかになった。また、この傾向は

4

目間の脱馴化処理を行ったカルスにおいても同じであった。

  

組織学的観察を行ったところ、低温馴化した培養植物体の芽においては、茎頂部およ びその周辺の葉原基、ならびに茎においては、維管束形成層および表皮直下の組織の生 存性の高いことが確認され、カルスでは、低温馴化処理を行うと、組織全体の細胞が生存 することがわかった。

5.

ク口ミ丿ウグイスカグラ培養植物体における内生物質の変動

  

可溶性糖質の総含量についてみたところ、節部切片および節悶部切片においては、低 温馴化処理開始8日後には、ラフイノースが少量検出され、処理12日後から顕著に増加 したのち、20日後まで増加し続けた。また、カルスにおいては、可溶性糖質の総含量お よびスク口ース含量は低温馴化処理期間が長くなるに従って増加し、ラフイノースは処 理開始12日後から20日後にかけて蓄積した。遊離アミノ酸の総含量およびアミノ酸の組 成についてみると、いずれの材料におぃても、低温馴化処理の前後において顕著に変化 しないことがわかった。低温馴化処理したカルスから抽出したタンパク質には、等電点

5.4

、分子質量42kDaのスポットが認められた。

  

脱馴化に伴う可溶性糖質の変化についてみると、脱馴化処理開始8日後における節部 切片および節間部切片では、総含量およびスク口ース含量がやや減少し、ラフイノース は、脱馴化処理によって検出不可能な量にまで減少し、脱馴化処理4日間のカルスでは、

フルクトース、グルコースおよびスクロースの含量が減少し、それに伴い可溶性糖質の 総含量が減少した。また、ラフイノースは、脱馴化処理後には検出されなかった。遊離

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アミノ酸の総含量は、いずれの材料においても、脱馴化処理後に顕著な変化を示さなかっ たが、脱馴化したカルスから得たタンパク質(42kDa)が減少することがわかった。この ことから、節部切片、節間部切片およびカルスの低温馴化および脱馴化過程はラフイノー スに関連があり、カルスにおいては、さらに、タンパク質に関連があることが示唆され た。

  

以上のように、本研究において得られた成果は、ク口ミノウグイスカグラの耐凍性の 発現および消失に関する基礎的知見を提起するとともに、栽培化および品種育成に寄与 するものと考えられる。

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学位論文審査の要旨

主査  教 授  原田  隆 副査  教 授  千葉 誠哉 副査  助 教授  増 田  清

副査  助教授  藤川清三( 北海道大学地球環境科学研究科)

学 位 論 文 題 名

クロミノウグイスカグラ栽培化の基礎としての低温遭遇に 伴う樹体成分の変化ならびに耐凍性の変動に関する研究

  本 論 文 は 、 緒 言 、 本 論6章 、 摘 要 、 引 用 文 献99、 図53、 表15を 含 む151頁 の 和 文 論 文 で 、 別 に 参 考 論 文3編 が 添 え ら れ て い る 。

  野 生 の 小 果 樹 と し て 珍 重 さ れ て い る ク ロ ミ ノ ウ グ イ ス カ グ ラ(Lonicera caerulea var.

emphyl locaJ yx)の 栽 培 化 、 栽 培 地 域 の 拡 大 、 品 種 改 良 な ど を 図 る 際 の 基 礎 と し て 重 要 な 耐 凍 性 に つ い て 調 べ る と と も に 、 そ の 変 動 と 内 性 物 質 の 変 化 と の 関 連 に つ い て 検 討 し た も の で 、 内 容 は 次 の よ う に 要 約 さ れ る 。

1. 秋 冬 季 に お け る 耐 凍 性 の 変 化 と 凍 害 発 生 部 位

  組 織 観 察 に よ り 調 べ 、 耐 凍 性 は 、10月 下 旬 か ら12月 下 旬 に か け て 高 く な る こ と が わ か っ た 。11月 上 旬 に 採 取 し た 枝 で は 、‑30℃ で 凍 結 さ せ る と 、 芽 の 基 部 お よ び 波 層 の 一 部 で 凍 結 傷 害 が 発 生 し た が 、12月 下 旬 の も の で は 、 耐 凍 性 が 高 く な り 、 ー40℃ で も 全 て の 組 織 が 生 存 し て い た 。3月 下 旬 に は 耐 凍 性 が 低 下 し 始 め 、‑30℃ で 大 部 分 の 組 織 で 凍 害 が 発 生 し た 。 耐 凍 性 は 、 腋 芽 に つ い て み る と 、 頂 端 分 裂 組 織 お よ び 葉 原 基 で 高 く 、 基 部 で は 低 か っ た 。 ま た 、 茎 に つ い て み る と 、 維 管 束 形 成 層 お よ び 表 皮 直 下 の 組 織 で 皮 層 よ り も 高 か っ た こ と か ら 、 部 位 に よ り 凍 害 発 生 が 異 な る こ と が わ か っ た 。 一 方 、 実 際 の 栽 培 面 か ら み る と 、 積 雪 に よ り 凍 害 が 軽 減 さ れ る 場 合 も あ っ た 。

2.培 養 再 生 法 お よ ぴ 、 :TTC還 元 法 に よ る 茎 頂 耐 凍 性 の 評 価

  再 生 培 養 法 に よ り 野 外 茎 頂 の 耐 凍 性 を 調 べ た と こ ろ 、8月 下 旬 か ら11月 に か け て 徐 々 に 高 く な り 、 冬 季 に 高 い 状 態 を 維 持 し た の ち 、 春 季 に 急 速 に 低 下 す る こ と が 明 ら カ ゝ に な っ た 。 ま た 、 耐 凍 性 が 高 い 時 期 (10月 〜 翌 年3月 ) の 茎 頂 は 、 超 低 温 ( ー196℃ ) で 凍 結 し た 場 合 に も 生 存 し た が 、 耐 凍 性 が 低 く な る 時 期 (4月 ) の も の は 生 存 で き な い こ と が 判 明 し た 。

  っ ぎ に 、TTC還 元 法 に よ り 調 べ た と こ ろ 、 茎 頂 の 耐 凍 性 は 、 茎 の そ れ よ り も 、 早 い 時 期 か ら 強 く な る こ と が わ か っ た 。 ま た 、 耐 凍 性 の 強 い 冬 季 に は 、 両 者 の 間 に 顕 著 な 差 は み ら れ な か っ た が 、 冬 季 か ら 春 季 に か け て 耐 凍 性 が 弱 く な る 過 程 で は 、 茎 頂 の 耐 凍 性 の ほ う

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が、茎のそれより遅くまで高い値を維持していた。

3. 野 外の 茎頂 にお ける 含水 率お よび 内生 物質の 変化

   野 外茎 頂の 含水 率は 、耐 凍性 が弱 い5 月 から 6 月に は高 く、耐凍性が強くなる10 月〜翌 年3 月に は、 低い状 態で 推移 することがわかった。可溶性糖質についてみると、総含量お よ びス クロ ース含 量は 、8 月か ら翌 年1 月 まで 徐々 に増 加し 、そ の後 減少し て、 4 月 から 6 月 にか けて 低い値 で推 移し た。フ渺クトースおよびグルコース含量は、季節によらず少 ない状態にあり、変動の幅も小さかったが、ラフイノースおよびスタキオースの含量は、

10 月 から 増加 し、 11 月 から 翌年 3 月ま で高 い値 を維 持し た。一方、遊離アミ,/ 酸の総含 量、トレオニン、セリンおよびブロリンの含量は、春季に増加したが、その他の時期には ほと んど 変化 しな かっ た。

   これらのことから、クロミノウグイスカグラの耐凍性増大には、含水率の低下、糖含量 の増加、糖組成の変化などが関与しており、特に、糖の中でもラフイノースおよびスタキ オー ス含 量の 増減 が密 接に 関連 して いる ことが 示唆 され た。

4. In vi とro 実験 系によ る耐 凍性 の検 証

   培養幼植物体に低温馴化処理を行うと、処理期間が長くなるにつれて耐凍性は増大し、

12 日後に最も高くなり、その後は同じ状態を維持した。一方、脱馴化処理を行うと、耐凍 性 は 、 節 部切 片 お よ び 節 間 部 切 片 では 、処 理開始 2 日 後か ら8 日 後に かけ て徐 々に 低下 し、 カル スで は、 2 日後 に著 しく 低下 した 。

   また、これらの場合における組織の状態について観察したところ、低温馴化した培養幼 植物 体の 芽に おい ては、 生長 点部 およ びそ の周 辺の 葉原 基の生存性が高く、茎において は 、 維 管 束 形 成 層 と 表 皮 直 下 の 組 織 の 生 存 性 が 高 い こ と を 確 認 し た 。 5. 培養 体に おけ る内 生物 質の 変動

   培養 幼植物の低温馴化に伴う可溶性糖質の変化についてみると、総含量は顕著な変化を 示 さな かっ たが 、低 温馴 化処 理開 始8 日後にラフイノースが検出され、12 日後から顕著に 増 加し 、20 日後まで増加し続けた。また、遊離アミノ酸の総含量および組成は、低温処理 の 前後 において顕著な変化を示さなかったが、低温馴化処理したカルスから抽出したタン パ ク 質 に は 、 等 電 点 5 . 4 で 分 子 量 42kDa の ス ポ ッ ト が 認 め ら れ た 。    一方 、脱 馴化 処理 を行 った 場合 についてみると、8 日後には、節部および節間部切片の 可 溶性 糖の総含量、スクロース含量がやや減少し、ラフイノースは検出不可能な量まで減 少 した 。ま た、 カル スで は、 4 日後 にフルクトース、グルコースおよびスクロースならぴ に 可溶 性糖の総含量が減少し、ラフイノースも検出されなかった。また、遊離アミノ酸の 総 含量 は、いずれの材料においても脱馴化処理によって顕著な変化を示さなかったが、脱 馴 化 し た カ ル ス で は 、 夕 ン パ ク 質 (42kDa) が 減 少 す る こ と を 確 認 し た 。    以上のように、本研究において得られた成果は、クロミノウグイスカグラの耐凍性に関 する基礎的知見を提起するとともに、栽培化および品種育成に役立っものとして高く評価 される。

   よって、審査員一同は、今西弘幸が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有す

るものと認めた。

参照

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