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博 士 ( 歯 学 ) 水 上 直 弘

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 水 上 直 弘

     学位論文題名

Improvement of Osteoconductivity by Coating with   Thin Film of CaTi03 0n the Surface of Titanium     (CaTi03 薄膜によるチタンの骨伝導性向上に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

緒言

  現在、デンタルインプラント治療は欠損補綴治療の選択肢のーっとして普及しつつ あり、良好な予後が報告されている。インプラント治療の予後は埋入手技、材料およ び表面処理方法などに影響を受けると考えられており、インプラント体材料としてはチ タン(Ti)、Ti合金が使用されてきた。しかし、これらの材料は生体適合性、機械的強度 に優れるが、オッセオインテグレーションの獲得に長期間を要すると報告されている。

その改善を目的としてプラズマスプレ−、陽極酸化、酸エッチング、浸漬、イオン蒸着、

イオン注入など様々な表面改質に関する研究がなされている。―方、ハイドロキシア パタイト(HA)等のりン酸カルシウム系セラミックスは骨形成に有効であることから、現 在 、Tiの機械 的強度とHAの骨形成 能の両方 の長所を生 かしたプラズマスプレ―法 によるHAコーティングがデンタルインプラントに応用されている。臨床においても一般 的 に使用されているが、母材からの剥離、破折、溶解等の問題も報告されている。

我 々はこれらの問題点の原因と考えられている被膜厚さや結晶度の低下を解決する 方法として、Ti表面にチタン酸カルシウム(CaTi03)をマグネトロンスパッタにて蒸着し、

ア二一ル処理にて結晶度を高めるという、CaTi0ヨ薄膜処理に注目した。共同研究者 で ある大津は、被膜厚さは最低50nmまで薄くできること、擬似体液中でCaTi03薄膜 がHAの形成を促進することを報告し、さらに我々との共同研究でCaTi03薄膜処理さ れたTiに生体適合性、骨伝導性があることも報告している。しかし、チタン酸カルシウ ム 薄膜処理 法の研究 において 、生体反 応に対する アニ―ル 処理の影響が検討され ておらず、骨形成の詳細な評価は行われていない。また加vitrDでの実験は行われて い ないため骨髄細胞や骨芽細胞への影響についても不明である。本研究の目的は、

こ れらを詳細に検討し、チタン酸カルシウム薄膜処理が骨伝導性に与える影響につ いて明らかにすることである。

材料と方法

  複合イオンビーム成膜装置を利用し、純度99.9%のTiワイヤ―、Tiディスクそれぞ れの表面にF静マグネトロンスパッタによりCaTi03タ―ゲットを用いて、厚さ50nmの CaTiOヨ薄膜を作製後、大気中にて600℃、2時間アニール処理を行った。その後、走 査型電子顕微鏡(SEM)により薄膜表面性状の観察を行い、表面粗さの計測は走査型 プローブ顕微鏡を使用し、平均粗さ(Ra値)を計測した。表面組成の分析はエネルギ 一分散型X線分光(EDS)と薄膜X線回折(GIXD)にて計測を行い、GIXDは入射角ば=

(2)

1゜にて測定を行った。

  動物埋入実験では生後14週齢、Wistar系雄性ラット26匹を用い、アニ―ル処理済 みTiワイヤ ―(ATW)とCaTi03薄膜 処理Tiワイ ヤ―(CTW)をインプラント体としてラ ット左側大腿骨の長軸に対し垂直に貫通するよう、2本埋入した。その際骨標識として カルセインを投与した。埋入後2およぴ8週で摘出し、2本埋入したインプラント体の1 本を 周 囲 組織 と とも に パ ラフ イ ン包 埋 し 、パ ラ フ ィン 脱 灰標 本 を、も う1本を Villanueva一Bone染色後 、PMMA樹脂包 埋し非脱 灰標本を 作製した。脱灰標本は薄 切後、HE染 色を行い 光学顕微 鏡にて観 察し、非脱 灰標本は螢光顕微鏡にて観察し た。また、非脱灰標本から組織計量学的検索を行い、骨―インプラント体の接触率、

骨髄腔中央部の新生骨の占有率を計測した。

  また培養実験では6週齢Fisher系ラットの骨髄細胞を1週間初代培養後、ディッシ ユに付着 した骨髄 問質細胞 を、アニール処理済みTiディスク(ATD)、CaTi03薄膜処 理Tiディスク(CTD)上に1.0x10s cell/well播種し、2および3週間培養を行い、アル カリフオスファターゼ活性/DNA量(ALP)、オステオポンチン量(OP)、オステオカルシ ン量(OC)およびカルシウム量(Ca)を測定した。

  全ての計測結果は、Mann−lWhitneyU検定により2群を比較し、有意水準を5%とし て統計学的に検索した。

結果

  SEM像から はATD、CTD共に 多くの結 晶粒界が認 められた が、著し い違いは 認め られ ず 、Ra値もATD、CTD間に有意 差は認めら れなかっ た。EDSによ る定性分 析の 結果、ATDからはカルシウムが検出されず、CTDからのみカルシウムが検出された。

またGIXDの結 果からATD、CTD共にルチ ル型ニ酸 化チタンのピークが確認され、ペ ロヴスカイト型CaTi03のピークはCTDからのみ確認された。

  組 織 学的 検 索結 果 と して 、 埋 入2週 後 のHE染 色 像で はATW、CTWともに幼 弱な 細胞が多 く骨形成 が活発で あるが、CTWと比較しATWの 方が骨細胞の数が多く、イ ンプラン ト体と新 生骨の間 に線維や肉芽組織の介在が認められた。埋入8週後では ATW、CTWと もに 骨 細胞 の 数 が減 り 、骨が成 熟してい たが、ATWはCTWと比較し 骨 の形成が連続ではなく、骨髄がインプラント体と接している部位が確認された。埋入2 週後 の 非 脱灰 標 本の 螢 光 像で はATW、CTW共 に埋入時 に投与し たカルセ インの沈 着で 確 認 され る 新生 骨 の 存在 が 確認 できたが 、ATWと比較 しCTWは新生 骨の幅が 厚く 、ATWは骨 が 連続 し て いな い 部位が 存在した 。埋入8週 後ではATWは2週時の も の と 比 較 し て 骨 が 厚 く な り 、 骨 の 連 続 し て い な い 部 位 が 確 認 で き た 。   組織計量学的検索結果では、骨―インプラント体の接触率は2週および8週におい てCTWはATWと 比較し有 意に高く (pく0.05)、ATWにお いて、8週 後の値は2週に比 較し 、 有 意に 高 かっ た (pく0.05)。また2週 後のATWと8週 のCTWの値の 問に有意 差は 認 め られ な かっ た 。 骨髄 腔 中央 部の新生 骨の占有 率は2週後 において はCTW はATWと比 較して有 意に高く (pく0.05)、CTWはATWの2倍近くで あったが 、8週に おい て は有意差 が認めら れなかった 。ATWにおい て8週は2週 より有意 に高かっ た が(pく0.05)、CTWにおいて、有意差は認められず、むしろ8週は減少傾向を示した。

  生 化 学的 検 索結 果 と して 、CTDのALPは2週 およ び3週 にお い てATDに比較し 、 有意に高かった(pく0.05)。OP、OC、Caについては2週では有意差が認められなかっ たが、3週後のCTDの値は、ATDに比較し有意に高く(pく0.05)、特にOPについては、

CTDの値はATDの2倍以上であった。

考察

(3)

表面性状の検索結果からチタン酸カルシウム薄膜処理は表面粗さに影響しないこ とが明らかとなり、CaTi0ヨ薄膜処理は表面の物理的性質に影響しないことが推察さ れ、CaTi03薄膜処理による化学的な性質が骨伝導性に関与していることが示唆され た。組織計量学的検索結果から、CaTi03薄膜処理をおこなうことにより、同じ接触率 を得るのに要する期間はアニール処理の174と短縮されることが示された。加vitr における生化学的検索の結果から、薄膜近傍の骨髄問質細胞の骨芽細胞への分化 が促進されたことが示され、CaTiOヨ薄膜処理は骨形成に有利であることが示唆され た。

結論

  チタン酸カルシウム薄膜処理は、骨髄問質細胞の骨芽細胞への分化を促進するこ とにより骨伝導性の改善することが明らかとなり、オッセオインテグレ―ションの早期 獲得や骨形成に有効である可能性が示唆された。

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Improvement of Osteoconductivity by Coating with   Thin Film of CaTi03 0n the Surface of Titanium     (CaTi03 薄膜によるチタンの骨伝導性向上に関する研究)

論文要旨

  本研究の目的は、Ti表面に蒸着したチタン酸カルシウム(CaTi03)薄膜上での 骨形成をむ 汀voおよぴむガtroで検討することにより、骨伝導性の向上に関 するCaTi0ヨ薄膜処理の有効性を明らかにすることである。複合イオンビーム成 膜装置にて、Tiワイヤー、Tiディスクそれぞれの表面に厚さ50nmのCaTi03薄 膜を作製後、600℃で2時間アニール処理を行った。その後、走査型電子顕微鏡 (SEM)による薄膜表面性状の観察、薄膜X線回折(XRD)およびエネルギー分散型X 線分光法(EDX)による表面組成の分析、さらに原子間力顕微鏡を用いた表面粗さ の計測を行 った。アニール処理済みのTiワイヤー(ATW)と薄膜処理Tiワイヤ ー(CTW)を14週 齢ラットの大腿骨に埋入し、2および8週後に摘出し、病理組 織学的ならぴに組織計量学的検索を行った。また6週齢ラットから骨髄細胞を 採取後、ア ニール処理(ATD)、アニ ール処理済 み薄膜処理Tiディスク(CTD) 上に播種し、2および3週間培養後アルカリフオスファターゼ(ALP)活性/DNA量、

オステオポンチン(OP)、オステオカルシン(OC)とカルシウム(Ca)量を測定した。

SEM像から はATDとCTDの表面性状に差違は認められず、EDXからはCTDにのみ Caの存在が、 またXRDか らはCTDに のみPerovskite型CaTi03の存在が確認さ れた。表面粗さは両者の間に有意差は認められなかった。動物実験に茄いては、

埋入後2週で骨一インプラント体接触率および骨髄中央部の新生骨占有率は、

CTWはATWと比較し有意に高く、8週においても骨ーインプラント体接触率では 有意差が認められた。む汀む〇で館3週後では全ての計測項目において両群間 に有意差が認められた。以上の結果からCaTi03薄膜上では早期に骨髄細胞の骨 芽細胞への分化が促進され、その結果、骨伝導性が向上することが明らかとな り、CaTi03薄膜処理のデンタルインプラントへの応用の可能性が示唆された。

審査の内容

1.プラズマスプレーによるハイドロキシアパタイト(HA)コーティングインプ     ラントの欠点について

    ―519一

郎 夫

敦 文

山 理

横 亘

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

    HAをプラズマ溶射するとコーティング層には熱分解によるガラス層が形成   さ れ、骨との 親和性の低 下、コーテ ィング層の剥離が報告されている。

2.実験部位にっいて

    大腿骨を実験部位として用いた理由は、当教室では同部位を用いた研究が   なされており実験方法が確立していること、棒状の試料を用いた研究は、長   管骨が実験部位として使用されることが多いことからこの部位を用いた。

3.チタン酸カルシウム薄膜に対する骨基質蛋白結合と骨基質形成のメカニズ ムについて

    OC、OPなどは、石灰化骨基質のカルシウムと結合することが知られている   一方、骨芽細胞の基質に対する定着や分化などにも影響を及ぼすことが報告   されている。従ってチタン酸カルシウム薄膜はOC、OPなどの基質蛋白を結合   することで骨芽細胞の定着・基質合成に影響を及ばす可能性が推測される。

4. Tiイ ン プ ラ ン ト 周 囲 に HAが 析 出 す る メ カ ニ ズ ム に っ い て     チタン表面の酸化膜は体液中でマイナスにチャージするため、体液中のナ   トリウムイオンがチタン表面に速やかに誘導され、これに牽引されたりン酸   イオンの析出が増大し、カルシウムイオンが誘導される。ナトリウムがカル   シ ウ ム と 置 換 さ れ る こ と に よ り、 チ タン 表 面に はHAが 形 成さ れ る。

5.細 胞 培 養 に お け る 観 測 時 期 を 2船 よ ぴ3週 と し た 理 由 に っ い て     骨髄細胞の培養では、OP、OC、Caが検出されるのは、2週から4週である   ことが多くの文献で報告されている。さらに予備実験において培養期間が長   期間に及ぶと、細胞やその生成物が培養ディスクから剥がれやすくなり、ば   らっきが生じやすくなった。以上のことから計測時期を2および3週とした。

6.脱 灰 標 本 作 成 時 に お け る イ ン プ ラ ン ト 除 去 の 手 技 に っ い て     インプラント体の1本を周囲組織とともに脱灰し、インプラント体の長軸   方向と平行にインプラント体に沿って切断した。その後細心の注意を払いぬ   がらインプラント体の除去を行った。

  本研究結果からCaTi03薄膜処理は、臨床におけるオッセオインテグレーショ ンの早期獲得や埋入初期の骨形成に有効である可能性も示され、新たなるチタ ンの表面処理方法として期待できる。今後さらに研究を進めることにより臨床 に反映しうると考えられ、将来性の点においても高く評価されるものであった。

よ って 学 位申 請 者 は博 士 (歯 学 )の学位 授与に値す るものと判 定した。

参照

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