博 士 ( 工 学 ) 斎 藤 学 位 論 文 題 名
央
太陽光発電・集熱機能複合化と杭基礎熱利用による
‐自律型エネルギーシステムに関する研究 学位論文内容の要旨
エネルギーの有効利用および地球環境負荷の低減化の観点から,住宅や個々の建築 物における再生可能エネルギーの適正な導入手法とエネルギー自律化のための新たな 技術開発が必要不可欠である.更なる普及が期待されている代表的技術として太陽光 発電と太陽熱給湯が挙げられる.ここで発電と熱を利用するために異なるパネルをそ れぞれ独立して設置する場合には,屋根面における配置計画の難しさなどの問題が生 じる.特に,北海道のような寒冷地においては,異なるパネルを設置した場合,冬期 間の冠雪がパネル間の段差を起点として発生し,滑雪しにくくなり,結果としてエネ ルギー効率が大幅に低下することになる.一方,暖房および冷房用の熱源としては,
普遍的に存在し,膨大な熱容量を有する大地(地盤)が優れた特性を有していると言 える.日本国内においては複雑な地盤性状を有するため,地中熱交換器の敷設費用が 極端に大きくなり,既往の技術の普及促進は困難である.新しい着想に基づく技術,
プログラム開発と実証のための実験が必須となる.さらに,再生可能エネルギーをハ イブリッドに活用したエネルギー自律型住宅の可能性を明らかにするためには,再生 可能エネルギーの特性と複合的活用,給湯・暖冷房方式,および建物を統合したトー タルシステムとしての評価を行うことが必要である,
本論文は,太陽エネルギーと多様な利用形態の可能性をもつ大地を利用したエネル ギーシステムの評価方法を提示し,その特性と実用可能性を明らかにするとともに,
戸建て住宅における導入効果を総合的に評価し,再生可能エネルギーの利用を中心に 据 え た エ ネ ル ギ ー 自 律 化 の あ り 方 に つ い て 提 案 す る こ と を 目 的 と し て い る . 本 論 文 は 7章 よ り 構 成 さ れ , 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る , 第1章では,環境負荷低減化を考慮した自律型エネルギーシステムの方向性を示し,
太陽および大地を利用したシステムの導入効果と建築におけるエネルギー自律化を研 究 対 象 と す る こ と の 意 義 を 述 べ る と と も に , 本 論 文 の 構 成 を 示 し た . 第2章では,国内外における太陽エネルギー利用技術に関する既往の研究を要約し,
その問題点を述べるとともに,太陽光発電・集熱機能複合技術の構築の必要性を述べ た.さらに,地下熱利用システムの既往の研究を概説し,杭基礎の熱利用方式を提案 することの意義を明確化し,本論文の位置づけを示した.
第3章 は, 戸建 て住 宅に おける太陽光発電・集熱機能複合システムの開発を目的と して,北海道大学構内のエネルギー自律型実験住宅において年間にわたる実証実験と 評価を行ったものである.まず,本システムに適用する太陽エネルギー利用ハイブリ ッドコレクタの特性を整理してL〕る.すなわち,変換効率は10〜13%,集熱効率は20℃ の低温集熱において40〜50 010,実際の利用温度に近い40℃において20%程度となるこ と,および集熱効率は若干の低下が見られるものの,エクセルギー効率の観点からは,
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ハイブリッドコレクタが最も有利となることを確認している,実証実験においては,
月別平均アレイ効率,集熱効率は,冬期を除いてそれぞれ8〜9%,25〜28%で安定し た推移を示した.また,年間の給湯用エネルギーに占める太陽熱集熱量の割合は46% に達した.さらに,年間の実験結果に基づき,商用電源とガスボイラによる従来方式 に対するペイバックタイムの概算を行った結果,エネルギー,二酸化炭素について,
それぞれ約2年,1年となった.太陽光発電と太陽熱給湯を個別に実施するコストペ イバックタイムを3年程度下回る結果を3割程度小さい設置スペースで達成し得るこ とを示した.
第4章では,建築物の杭基礎を空調用熱交換器としても利用するエネルギーパイル システムの導入可能性評価を目的として,建築物杭基礎敷設規模全国調査による478 件のデータペースを作成した.まず,杭基礎仕様に関する整理を行った結果,PHC杭 の利用頻度が最も高く46%を占め,次いでPC杭が18%,回転貫入鋼管杭が13%であ った,また,札幌における熱需要量と地下熱賦存量の関係について検討した結果,調 査件数全体の30〜40%程度において,エネルギーパイルシステムのみで建築物の暖房 需要量を全て賄い得る可能性があることがわかった.
第5章で|ま,摩擦杭を空調用熱交換器として利用するエネルギーパイルシステムを 札幌市内の事務所建物に適用した,地下熱直接利用型冷房における地盤側熱媒返り温 度の期間平均値は20℃であった,また,搬送系電力消費量に対する室供給熱量の比と して定義したエネルギー使用効率は18.6と極めて高い値を示した,ヒートポンプによ る冷房運転時の地盤側熱媒返り温度の期間平均値,成績係数は,それぞれ24℃,3.9 であり,凝縮器のヒートシンクとして有効であることがわかった,四年間の暖房運転 時における期間平均成績係数は3.9〜4.5であり,長期にわたり高効率な運転が行われ ていることを示すとともに,本システムが長期的に利用可能であることを明らかにし た.従来の暖冷房方式に対する運用段階における年間の二酸化炭素削減率は33%であ った,さらに,ペイバックタイムによる評価を行った結果,摩擦杭利用による敷設段 階の負担低減化の効果が高いことを示した.
第6章は,太陽光発電・集熱機能複合化と杭基礎熱利用を中心に据え,再生可能エ ネルギーをハイブリッドに活用したエネルギー自律型住宅の国内各地域への適用可能 性の評価を行ったものである.まず,エネルギー自律型住宅解析プ口グラムを作成し,
各種再生可能エネルギー利用設備特性の計算値と実験値がよく一致することを検証し た.さらに,住宅用エネルギーシステムとしての導入効果が適正となる設備容量の設 計方法を示し,ペイバックタイムによる評価を行い,エネルギー消費量,二酸化炭素 排 出 量 に 関 し て は 早 い 段 階 で 回 収 が 可 能 と な る こ と を 明 ら か に し た . 第7章では,本研究で得られた結果を要約して述べた.
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学位論文審査の要旨 主査 教 授 窪田英樹 副査 教 授 繪内正道 副査 教授 横山真太郎 副査 助教授 濱田靖弘
学 位 論 文 題 名
太陽光発電・集熱機能複合化と杭基礎熱利用による 自律型エネルギーシステムに関する研究
エ ネ ル ギ ー の 有 効 利 用 お よ び 地 球 環 境 負 荷 の 低 減化 の 観 点か ら , 住宅 や 個 々 の建 築 物 に お け る 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 適 正 な 導 入 手 法 と エネ ル ギ 一自 律 化 のた め の 新 たな 技 術 開 発 が 必 要 不 可 欠 で あ る , 更 な る 普 及 が 期 待 さ れて い る 代表 的 技 術と し て 太 陽光 発 電 と 太 陽 熱 給 湯 が 挙 げ ら れ る . 一 方 , 暖 房 お よ び 冷房 用 の 熱源 と し ては , 普 遍 的に 存 在 し , 膨 大 な 熱 容 量 を 有 す る 大 地 ( 地 盤 ) が 優 れ た 特 性 を 有 し て い る と 言 え る . 本 論 文 は , 太 陽 エ ネ ル ギ ー と 多 様 な 利 用 形 態 の 可能 性 を もつ 大 地 を利 用 し た エネ ル ギ ー シ ス テ ム の 評 価 方 法 を 提 示 し , そ の 特 性 と 実 用 可能 性 を 明ら か に する と と も に,
戸 建 て 住宅 に お ける 導 入 効果 を 総 合的 に 評 価 し, 再 生 可能 エ ネ ルギ ー . の利 用 を中心 に 据 え た エ ネ ル ギ ー 自 律 化 の あ り 方 に つ い て 提 案 す る こ と を 目 的 と し て い る . 本 論 文 は 7章 よ り 構 成 さ れ , 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る . 第1章 で は , 環 境 負 荷 低減 化 を 考慮 し た 自律 型 エ ネル ギ ー シス テ ム の方 向 性 を 示し , 太 陽 お よび 大 地 を利 用 し たシ ス テ ムの 導 入 効 果と 建 築 にお け る エネ ル ギ ー自 律 化.を 研 究 対 象 と す る こ と の 意 義 を 述 べ る と と も に , 本 論 文 の 構 成 を 示 し て い る . 第2章 で は , 国 内 外 に おけ る 太 陽エ ネ ル ギー 利 用 技術 に 関 する 既 往 の研 究 を 要 約し , そ の 問 題 点 を 述 べ る と と も に , 太 陽 光 発 電 ・ 集 熱 機 能複 合 技 術の 構 築 の必 要 性 を 述べ て い る . さ ら に , 地 下 熱 利 用 シ ス テ ム の 既 往 の 研 究 を概 説 し ,杭 基 礎 の熱 利 用 方 式を 提 案 す る こ と の 意 義 を 明 確 化 し , 本 論 文 の 位 置 づ け を 示 し て い る . 第3章 は , 戸 建 て 住 宅 に お け る 太 陽 光 発 電 ・ 集 熱 機 能 複 合 シ ス テ ム の 開 発 を 目的 と し て , 北 海 道 大 学 構 内 の エ ネ ル ギ ー 自 律 型 実 験 住 宅 にお い て 年間 に わ たる 実 証 実 験と 評 価 を 行 っ た も の で あ る . ま ず , 本 シ ス テ ム に 適 用 する 太 陽 エネ ル ギ ー利 用 ハ イ ブリ ッ ド コ レク タ の 特性 を 整 理し て い る. す な わ ち, 変 換 効率 は10〜13%, 集 熱 効率は20℃ の 低 温 集熱 に お いて40〜50%,‐ 実 ゛ 際 の利 用 温 度に 近い40℃ におい て20%程度 となる こ と , お よび 集 熱 効率 は 若 干の 低 下 が見 ら れ る もの の , エク セ ル ギー 効 率 の観 点 からは , ハ イ ブ リ ッ ド コ レ ク タ が 最 も 有 利 と な る こ と を 確 認 して い る .実 証 実 験に お い て は,
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月別 平均 アレ イ効 率, 集熱 効率は,冬期を除いてそれぞれ8〜9%,25〜28%で安定し た推 移で あっ たこ とを 示し ている.また,年間の給蕩甬エネルギーに占める太陽熱集 熱量 の割 合は46% に達 して いる.さらに,年間の実験結果に基づき,商用電源とガス ボイ ラに よる 従来 方式 に対 するぺイバックタイムの概算を行い,エネルギー,二酸化 炭 素に つい て, それ ぞれ 約2年 ,1年と なる ことを 示し てい る, 太陽 光発 電と 太陽 熱 給 湯を 個別 に実 施す るコ スト ペイ バッ クタ イムを3年 程度 下回 る結 果を3割程 度小 さ い設置スペースで達成し得ることを示している.
第4章 では ,建 築物の 杭基 礎を 空調 用熱 交換 器と して も利用するエネルギーパイル シス テム の導 入可 能性 評価 を目 的と して ,建 築物杭 基礎 敷設規模全国調査による478 件のデータベースを作成している.まず,杭基礎仕様に関する整理を行った結果,PHC 杭 の利 用頻 度が 最も 高く46% を占 め, 次い でPC杭 が18%, 回転 貫入 鋼管 杭が13% で ある,.ことを示している,また,札幌における熱需要量と地下熱賦存量の関係について 検討 した 結果 ,調 査件 数全 体の30〜40%程度において,エネルギーパイルシステムの み で 建 築 物 の 暖 房 需 要 量 を 全 て 賄 い 得 る 可 能 性 が あ る と し て い る , 第5章 では ,摩 擦杭を 空調 用熱 交換 器と して 利用 する エネルギーパイルシステムを 札幌 市内 の事 務所 建物 に適 用している.地下熱直接利用型冷房における地盤側熱媒返 り温 度の 期間 平均 値は20℃ ,搬送系電力消費量に対する室供給熱量の比として定義し たエネルギー使用効率1ま 18.6と極めて高い値を示している.ヒートポンプによる冷房 運転時の地盤側熱媒返り温度の期間平均値,成績係数は,それぞれ24℃,3.9であり,
凝縮 器の ヒー トシ ンク とし て有効性を実証している.四年間の暖房運転時における期 間平 均成 績係 数は3.9〜4.5であり,長期にわたり高効率な運転が行われていることを 示す とと もに ,本 シス テム が長期的に利用可能であることを明らかにしている.従来 の暖 冷房 方式 に対 する 運用 段階における年間の二酸化炭素削減率は33%である.さら に, ペイ バッ クタ イム によ る評価を行った結果,摩擦杭利用による敷設段階の負担低 減化の効果が高いことを示している.
第6章 は, 太陽 光発電 ・集 熱機 能複 合化 と杭 基礎 熱利 用を中心に据え,再生可能エ ネル ギー をハ イプ リッ ドに 活用したエネルギー自律型住宅の国内各地域への適用可能 性の評価を行ったものである,まず,エネルギー自律型住宅解析プログラムを作成し,
各種 再生 可能 工ネ ルギ ー利 用設備特性の計算値と実験値がよく一致することを検証し てい る. さら に, 住宅 用エ ネルギーシステムとしての導入効果が適正となる設備容量 の設 計方 法を 示し ,ペ イバ ックタイムによる評価を行い,エネルギー消費量,二酸化 炭 素 排 出 量 に 関 し て は 早 い 段 階 で 回 収 が 可 能 と な る こ と を 明 ら か に し て いる , 第7章では,本研究で得られた結果を要約して述べた.
これを要するに,著者は,太陽エネルギーと多様な利用形態の可能性をもつ大地を 利用 した エネ ルギ ーシ ステ ムの評価方法を提示し,その特性と実用可能性を明らかに する とと もに ,戸 建て 住宅 における導入効果を総合的に評価し,再生可能エネルギー の利 用を 中心 に据 えた エネ ルギー自律化の指針にっいて知見を得たものであり,暖冷 房 工学 ,建 築環 境工 学, エネ ルギ ー利 用工 学に貢 献す ると ころ 大な るも のが ある , よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.
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