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博士(工学)見藤 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)見藤 学位論文題名

合 成高分 子材料によるりンパ球系免疫細胞の 機能 制御に関する基礎的研究

学位論文内容の要旨

  生体材料の開発は,従来生体反応をいかに抑えるかが重要な課題とされてきた。しかし,生体 材料にとヮてはあくまで異物であり,その異物反応を完全に抑えることは不可能である。最近で は,生体と接触する材料と生体側の反応を,目的に応じて引き出すことが肝要と考えられ,その 生体反応の中心的役割りを果たす免疫系と生体材料 の相互作用の解明が重要な課題となってい る。また,人工透析においても,透析膜により補体の活性化が報告されて以来,透析膜の免疫系 に対する影響が合併症との関わりで論議されはじめ,多くの研究がなされてきた。しかし,いま だ各種医用高分子材料の免疫系に対する影響に関する詳細な知見は得られていない。本論文は以 上の問題点を踏まえ,各種合成高分子材料によって引き起こされる免疫細胞,また液成因子を介 した免疫細胞の機能変化を検討することを目的とし,実験を行った。また,免疫調節材料の開発 を 目 的 と し , 免 疫 賦 活 物 質 固 定 化 材 料 に 関 す る 基 礎 的 研 究 を 行 っ た 。   第1章は序論として, 生体材料の現状を概括し,各種生体材料の免疫系へ及ぼす影響と,免疫 療法の現状を解説し,本研究の目的と意義を述べて いる。

  第2章では,各種汎用 高分子材料と短時間接触したマウスリンパ球の機能変化に関する研究を 述べ てい る。 試料 として,セルロ ースアセテート(CA),ポリメチルメタクリレート,(PMMA) ポ リ ア ク リ ロ ニ ト リ ル(PAN), ポ リ プ ロ ピ レ ン(PP), ポ リ ビ ル ア ル コ ー ル(PVA)を 用 いた。マウス脾臓より調整したりンパ球を,各試料に2時間接触させた後に回収し,マイトジェ ン(ConA,PHA,LPS)を 加 え 培 養 し ,48時 間 後 の 細 胞 数 変 化 , 及 び ,3Hチ ミ ジ ン (3H・ TdR)の 取 り込 み量 より 増殖 能 を評 価し た。CA,PVA試料 に おい て, マイ トジ ェン 刺激 後に 回 収 さ れ た生 細胞 数は 細胞 培 養プ レ― トの みの コン トロ ール に較 ベ減 少を 示し た。PMMA, PAN,PP試料 では こ のよ うな 影響 を示 さな かっ た。 リン パ球 増殖 能を 測定 したところ,PM‑

MA,PAN,PPは コン ト口 ール と有 意な 差は なか った のに 対 し,CAは 全て のマ イジ ェン で,

PVAはConAとLPSに お い て 顕 著 に 減 少 し た 。 し か し ,PHA刺 激 系 で はPVAと 接 触 し た りンパ球は,その生細胞数が少ないのに係わらず,コントロールより大きな増殖能を示した。毒     ー25―

(2)

た .゜H・TdR取 り込 み量 を生 細胞 数 で規 格化 した とこ ろ,ConA刺激においても他の試料より PVAの 活 性 が 高 か っ た。 ナイ 口ン ウー ルカ ラム 非付 着 性細 胞に より 実験 を行 った 場合 ,PVA 試 料接 触リ ンパ 球が ,PHA刺激 に対 する 細胞 増殖 能を より 顕著 に 増強 させ るこ とが示され,

PVAが り ンパ 球に 何ら かの 作用を与えることが 明らかとなった。各試料に血清成分を吸着させ た 場合 ,細 胞数 変化 と増 殖能 において,試料間の差が認められなくなった 。特にLPSに対する CA, PVAの 制 御 は 血 清 処 理 に よ り 除 去 さ れ た 。 その ため ,血 清非 吸着 系に おい て ,CA及び PVAで 生 細胞 の割 合が 少な かった原因を調べる ため,試料から離脱・回収した直後の生細胞数 を 計測 した とこ ろ, 血清 成分 非吸 着 試料 と2時間 接触 後の細胞数は,PVAでは変化しなかった の に 対 し ,CAで は , 死 細 胞 が 多 く 観 測 さ れ た 。FACSによ る測 定に より ,B細胞 の 減少 が顕 著 に認 めら れた 。ま た,SEMに よる 観察 では ,CA試料 上の りン パ 球表 面に 変化 がみられ,接 触により何らかの 影響を与えることが示唆された。一方,CA試料をあらかじめ蒸留水に浸漬し,

表面の水を除去後 直ちに細胞を接触した場合,リンパ球の形態変化は見られなかった。したがっ てCAの り ン パ 球 に 対す る 作用 は, 試料 の含 水状 態と 密接 な関 係が ある こと が示 唆 され た。

  第3章では,前章の実験,すなわち各試料と 接触後,マイトジェンを加えて48時間培養後のり ン パ球 にっ いて ,そ の表 面抗 原の 変 化をFACSによ り解 析した結果を述べている。対象とした 表 面 抗 原 は ,CD4及 びCD8で あ っ た 。 マ ウ ス 血 清 成 分 非 吸 着 の 場 合 ,PMMA,PAN,PPと 接 触し たり ンパ 球で はコ ント ロー ル と較 べ変 化が なか った のに 対し ,CA,PVAにおいて有意 な 差 が み ら れ た 。CAに お いて はCD4―CD8一 分画 の減 少が 顕著 に観 察さ れた 。前 節 でも 述べ た が,CAにおいては接触後,脱離・回収した時 点で,その分画の減少が観察されており,その 影 響と 考え られ る。CD4゛/CD8゛比 を見 たと ころ ,コ ント 口一 ル と差 はみ られ なかった。一 方 ,PVAに お い てfま, 全 ての マイ トジ ェン 刺激 にお いて ,CD4―CD8ー の減 少が み られ ,さ ら にCD4゛/CD8゛ 比が 他の 試料 に対 して 増加 し, リン パ球 表面 抗 原の 発現 に関 しても何らか の 作用 を与 える こと が明 らか となった。一方,血清成分を表面に吸着したPVAでは,他の試料 との差は観測され なかった。

  第4章では,上記高分子材料上でマウスリン パ球を培養し,マイトジェンにより刺激した系に おける実験結果を 述べている。すなわち各試料がりンパ球の増殖時に基質として接触している場 合,その試料が及 ぼすりンパ球の細胞数変化,及び増殖能に対する影響に関し検討した。血清成 分 非 吸 着 の 場 合 ,PMMA,PAN,PPで は , コ ン ト 口ー ルと 較べ ,有 意な 差は 認め ら れな かっ た 。一 方,CA,PVAで は, 全て のマ イト ジェ ンに おい て, 細胞 数 ,増 殖能 とも に減少し,と   くにConA,及 びLPS刺激 系に おい て顕 著で あっ た。 血清 成分 を 吸着 させ た場 合,CAにおい て細胞数は増加し たが,コントロールに対する割合で示すと,ConA: 23%→38%,PHA: 33.3

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%‑ 70.2%,LPS:15% →25.8%への 増加にとどまり,低値を示した。増殖能に関しても,コ ントロールの値へは回復せず,第2章で述べた短期接触の場合とは異なる作用を示すことが明ら か と な っ た 。PVAに お け る 細 胞 数 増 加 は ,ConA:2%→4% ,PHA:9.8% →62% ,LPS: 1.4%→   10.5%であり,また,増殖能に関しても,ConA,LPS刺激系においてCAよりも低値 を 示した 。しかし ,PHA刺 激系に おいて, 生細胞数が少ないにも係わらず,コント口一ルと同 程 度の °H・TdR取 り込みを 生ずる ことが明 らかと なった。 また,ConA, LRS系に おいて も,

生 細胞数 で規格化 した場合 の3H̲TdR取り 込み量 は,コン トロ― ルと較ベ顕著に高値を示すこ と が明ら かとなった。試料に用いたP¥TAは架橋を施しておらず,本実験条件下では,膨潤した 高親水性基質となるため培養基質としては好ましくなく,細胞増殖に抑制的に作用することは十 分 考えら れる。し かし,上 記の実 験結果より,PVAは活性化されたりンパ球に特異的に作用す ることが示唆された。

  第5章では,前章の実験,すなわちマイトジェン存在下に各試料と長期接触させたりンパ球に っ い て ,そ の 表 面抗 原 を 調 べた 結 果 を述 べ て いる 。PMMA,PNA,PPにおい て,コ ントロー ル と 差 は な か っ た の に 対 し ,CAお よ びPVAに お い て 顕 著な 変 化 が 生じ ,CD4゛/CD8゛ 比 が 増加 した。 特にPVA‑にお いては ,血清成 分非吸 着―LPS刺激系 において ,コント ロール と 較べその比が著しく増加することが明らかになった。血清成分を吸着させた場合,各マイトジェ ン刺激系において,その増加率は減少するが,第3章で述べた短期接触の場合とは異なり,他試

料 と 較 ベ 有 意 の 差 異 を 示 す こ と が 明 ら か と な っ た 。

  第6章では,免疫調節材料の開発の試みとして,免疫賦活物質固定化材料に関する基礎的研究 を行い,IL・2をモデル物質として用い,その固定化方法の最適化を検討した結果を述べている。

エ チ レ ン ビ ニ ル ア ル コ ー ル共 重 合 体(EVAL)各 種及 びPVAを 担 体 基質 と し て用 い , 担体 の 水酸基 を各種 架橋剤と 反応さ せること によりIL・2を固定し,IL・2依存性T細胞クローン株で あるCTLL,2を 用いてIL・2活 性を評価 した。 固定方法 はIL・2のアミ ノ基に対 して結 合する 方 法が 最 も 活性 を 高 く保 て た 。 また 担 体 とし て は ,E¥TAL32が 最も良好 な活性を 示した 。   第7章では,本実験の総括として,実験に用いた汎用高分子材料の免疫細胞への作用に関し,

短時間及び長時間接触の実験結果を比較,検討し,考察を述べている。また,材料と免疫細胞と の相互作用による免疫調節の可能性にっいて述べている。

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教 授 教 授 教 授 助 教 授

勇 田 敏 山 本 克 小野江和 村林

夫 之

則(医学研究科)

  生 体 材 料 に よ る免 疫系 への 作用 は ,そ の材 料の 生体 適 合性 の見 地の み なら ず, 新た な免 疫 調節 材 料 の 開 発 の た めに も重 要な 課題 と なっ てい るが ,材 料 の免 疫系 への 影 響, 特に 免疫 担当 細 胞へ の 作用 に関 す る研 究は いま だ 十分 には 行わ れて い ない 。

  本 論 文 は , こ のよ うな 現状 にお い て, 人工 透析 膜等 と して 広く 用い ら れて いる 各種 合成 高 分子 材 料 を 試 料 と し て用 い, その 接触 が マウ スリ ンパ 球の 増 殖能 ,及 び表 面 抗原 の変 化に 及ぼ す 影響 を 述べ たも の であ る。 また , 免疫 調節 材料 の開 発 の基 礎研 究と して,免疫 賦活物質固定化を試み,

そ の 固 定 化 基 質 , 固 定 方 法 を 検 討 し た も の で あ り , そ の 成 果 は , 以 下 に 要 約 さ れ る 。   ま ず , 試 料 と し て セ ル ロ ー ス ア セ テ ー 卜(CA), ポ リ メ チ ル メ タ ア ク リ レ ー ト(PMMA), ポ リ ア ク リ ロ ニ ト リ ル(PAN), ポ リ プ ロ ピ レ ン(PP), ポ リ ビ ニ ル ア ル コ ー ル(PVA)を 用 い , マ ウ ス リ ン パ 球 を 各 試 料 と2時 間 接 触 後 , 脱 離 ・ 回 収 し , マ イ ト ジ ェ ン(ConA,PHA,LPS) を 加 え , そ の 増 殖 能 , 及 び 表 面 抗 原 を 調 べ た と こ ろ ,CA,PVAに お い て , 大 き な 変 化 が 生 じ , 一 方 他 試 料 に お い て は , 全 く 影 響 を 与 え な い こ と を 明 ら か に し て い る 。CAで はBリ ン パ 球 , 及 び マ ク ロ フ ァ ー ジ分 画に 特異 的に 作 用し ,脱 離時 にす で に不 可逆 的変 性 を生 じさ せて いる こ と,

ま た , そ の 原 因 と し て ,CA膜 の 含 水 状 態 が 関 与 し て い る 事 を 示 し て い る 。PVAで は , 脱 離 時 に お け る 変 性 は 生じ させ ない が, 各 マイ トジ ェン に対 す る感 受性 に変 化 を生 じさ せ, リン パ 球の 各 亜 群 に 特 異 的 な作 用を する こと , また ,そ の作 用機 構 に血 清成 分の 抗 体, 楠体 等が 関与 し てい る こと を明 ら かに して いる 。

  次 に , 各 試 料 上で マウ スリ ンパ 球 を培 養し ,マ イト ジ ェン によ り刺 激 した 系に おい て検 討 して い る が ,CA,PVAに お い て 大 き ナ ょ 変 化 が 生 じ , 一 方 他 試 料 に お い て は , 全 く 影 響 を 与 え な い こ と を 明 ら か と し て い る 。CA,PVAに お け る そ の 作 用 は , 短 期 接 触 の 場 合 と 同 傾 向 の 結 果 で あ る が よ り 顕 著 に 発 現 し , 免 疫 調 節 の 観 点 か ら 興 味 あ る 知 見 を 明 ら か と し て い る 。   さ ら に , 免 疫 調節 材料 の開 発の 試 みと して ,成 分比 が 異な る各 種工 チ レン ビニ ルア ルコ ー ル共 重 合 体 , ポ リ エ チ レ ン 及 びPVAを 担 体 基 質 と し て 用 い ,IL.2を モ デ ル 免 疫 賦 活 物 質 と し て 固 定 化 し , そ の 固 定 方 法 の 最 適 化 を 検 討 し て いる 。そ の固 定化 担 体に よりIL・2の 吸着 挙動 が 異な     ―28−

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ること,また,吸着IL・2のカ価が経時的に増加すること,さらに,共有結合によりIL・2を固 定化した場合には,IL・2のカ価はビニルアルコールの量に比例せず,ある特定の最適量が存在 することなど,免疫賦活物質固定化材料の開発にあたって,非常に有意義な知見を見いだしてい る。

  これを要するに,著者は,汎用合成高分子材料が免疫細胞の機能へ変化を与えることを明確に 示し,さらに免疫調節材料開発の際の基材としての合成高分子材料が果たす役割の重要性を示し た も の で あ り , 生 体 材 料 , さ ら に 生 体 工 学 の 進 歩 に 寄 与 し た と こ ろ が 大 き い 。   よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照

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