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アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート造

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(1)

アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート造 十字形柱梁骨組の耐震性能評価に関する研究

宋 性勲

2016 年 9 月 首都大学東京

(2)

目次

I

目次

目次………. 発表論文……….

1序論

1.1 研究背景……….………1-1 1.2 研究目的……….………1-3 1.3 既往の研究……….………1-4

1.3.1 鉄筋コンクリート造柱梁接合部の曲げ破壊………1-4

1.3.2 アンボンドPCaPC梁部材における荷重-変形関係の評価手法………1-8

1.4 本論文の構成………1-12 [参考文献] ………1-15

2 柱梁曲げ強度比を変数としたアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の静的加力実験

2.1 はじめに………2-1 2.2 試験体の設計と製作………2-2

2.2.1 試験体の設計………2-2

2.2.2 試験体の製作………2-8

2.3 実験方法………2-10

2.3.1 加力方法………2-10

2.3.2 測定方法………2-15

2.4 材料試験結果………2-41

2.4.1 コンクリート及びグラウト材………2-41

2.4.2 鉄筋及び PC 鋼材………2-45

2.5 有効プレストレス力………2-47 2.6 部材耐力の計算………2-52 2.7 実験結果………2-65

2.7.1 破壊性状………2-65

2.7.2 層せん断力-層間変形角関係………2-82

2.7.3 PC 鋼材及び鉄筋のひずみ分布………2-86

2.7.4 PC 鋼材の応力度ひずみ関係………2-104

2.7.5 梁圧着面における目開き幅………2-113

2.7.6 スラブの等価協力幅………2-116

2.8 破壊モードに関する検討………2-122

2.8.1 耐力評価………2-122

(3)

目次

II

2.8.2 各部材の復元力特性………2-124

2.8.2.1 柱の復元力特性………2-124

2.8.2.2 梁の復元力特性………2-127

2.8.3 各部材の変形成分………2-130

2.8.3.1 各変形成分の割合………2-130

2.8.3.2 接合部のせん断変形及び曲げ回転………2-134

2.8.4 柱梁接合部の入力せん断応力度………2-135

2.8.4.1 水平方向における接合部入力せん断応力の算定法………2-135

2.8.4.2 鉛直方向における接合部入力せん断応力の算定法………2-137

2.8.4.3 水平方向における接合部入力せん断応力度………2-138

2.8.4.4 鉛直方向における接合部入力せん断応力度………2-140

2.8.5 破壊モードの判定………2-142

2.9 まとめ………2-146 [参考文献] ………2-147

3 梁曲げ破壊するアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の梁部材における力学特性

3.1 はじめに………3-1 3.2 残留変形角………3-2

3.2.1 残留変形率の算定………3-2

3.2.2 残留変形角の計算値と実験値の比較………3-4

3.3 梁部材における組立筋の影響………3-6

3.3.1 引張側組立筋の影響………3-6

3.3.2 圧縮側組立筋の影響………3-9

3.4 梁部材の任意断面における中立軸位置の評価………3-10

3.4.1 推定法の概要………3-10

3.4.2 梁部材に沿った中立軸位置分布の推定法………3-12

3.4.3 実験結果との比較検証………3-13

3.5 材軸方向への圧縮縁及び引張縁コンクリートひずみ分布の評価………3-16

3.5.1 圧縮縁コンクリートひずみ分布の推定法………3-16

3.5.2 引張縁コンクリートひずみ分布の推定法………3-18

3.5.3 実験結果との比較検証………3-19

3.6 まとめ………3-22 [参考文献]………3-23

4 十字形柱梁骨組の梁部材における荷重-変形関係の評価手法

4.1 はじめに………4-1 4.2 マクロモデルの提案………4-2

4.2.1 モデルの概要 ………4-2

(4)

目次

III

4.2.2 コンクリート及びPC鋼材の応力度-ひずみ関係のモデル化………4-4

4.2.3 組立筋の取り扱い………4-6

4.3 平面十字形柱梁骨組の梁部材における荷重―変形関係の評価手法………4-7

4.3.1 算定式の誘導手順………4-7

4.3.2 梁圧着面における回転角………4-9

4.3.3 梁材軸に沿った任意断面での圧縮合力及び中立軸の位置………4-10

4.3.4 梁材軸に沿った任意断面での圧縮縁コンクリートのひずみ………4-11

4.3.5 梁圧着面における全縮み量………4-13

4.3.6 PC 鋼材の伸び量とひずみ………4-13

4.3.7 梁曲げひび割れ発生時の耐力及び部材角の算定………4-15

4.3.8 PC 鋼材弾性限界時の耐力及び部材角の算定 ………4-16

4.3.9 梁曲げ終局時の耐力及び部材角の算定 ………4-20

4.3.10 梁曲げ終局時の梁圧着面における中立軸深さの略算法………4-23

4.4 提案評価手法の検証………4-25

4.4.1 PC 鋼材弾性限界時の梁せん断力及び梁部材角の算定法の検証………4-25

4.4.2 梁曲げ終局時の梁せん断力及び部材角の算定法の検証………4-27

4.4.3 荷重-変形関係の計算値と実験値の比較………4-31

4.4.4 中立軸深さの略算式を用いた計算結果と収束計算法による計算結果との比較………4-32

4.5 まとめ………4-35 [参考文献]………4-36

5 結論

5.1 本研究で得られた知見………5-1 5.2 今後の課題………5-4

(5)

目次

IV

(6)

発表論文

V

発表論文

[1] 宋性勲,晉沂雄,北山和宏:アンボンドPCaPC十字形架構の梁部材の任意断面における中 立軸位置の評価,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造Ⅳ,2016.8(掲載予定)

[2] 宋性勲,晉沂雄,北山和宏:アンボンド PCaPC 十字形架構の梁部材における曲げ終局時の 耐力および変形評価用マクロモデル,日本建築学会構造系論文集,Vol.81,No.72,pp.1121- 1131,2016.7(掲載予定)

[3] 鈴木大貴,宋性勲,晉沂雄,北山和宏:アンボンドPC鋼材で圧着接合したプレストレスト コンクリート十字形部分架構の力学特性,コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.2,2016.7

(掲載予定)

[4] Kiwoong JIN, Kazuhiro KITAYAMA, Sunghoon SONG, Kiyo-omi KANEMOTOShear Capacity of Precast Prestressed Concrete Beam-Column Joint Assembled by Unbonded Tendon ACI Structural Journal2016.5.20Accept決定)

[5] 金本清臣,北山和宏,宋性勲,晉沂雄:アンボンドPC鋼棒で圧着接合したPCaPC 造柱梁 部分架構の構造性能,プレストレストコンクリート工学会,第24回プレストレストコンクリ ートの発展に関するシンポジウム,pp.113-118,2015.10

[6] 宋性勲,鈴木大貴,晉沂雄,北山和宏,金本清臣:柱梁曲げ強度比を実験変数としたアンボ

ンドPCaPC圧着接合骨組の耐震性能に関する研究(その1),日本建築学会大会学術講演梗

概集,構造Ⅳ,pp.711-712,2015.9

[7] 鈴木大貴,宋性勲,晉沂雄,北山和宏,金本清臣:柱梁曲げ強度比を実験変数としたアンボ

ンドPCaPC圧着接合骨組の耐震性能に関する研究(その1),日本建築学会大会学術講演梗

概集,構造Ⅳ,pp.713-714,2015.9

[8] 宋性勲,栗本健多,晉沂雄,北山和宏,金本清臣,田島祐之:鋼材の長さが異なるアンボン

PCaPC圧着接合骨組の耐震性能,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造Ⅳ,pp.745-746,

2014.9

[9] Sanghoon OH, Sunghoon SONG, Sangho LEE, Hyungjoon KIMExperimental Study of Seismic Performance of Base-Isolated Frames with U-shaped Hysteretic Energy-dissipating Devices Engineering StructuresVol.56pp.2014–20272013.8

[10] Sanghoon OH, Sunghoon SONG, Sangho LEE, Hyungjoon KIMSeismic Response of Base Isolating Systems with U-shaped Hysteretic DampersInternational Journal of Steel StructuresVol.12 No.02pp.285-2982012.6

[11] Sunghoon SONG, Myungkun CHA, Hongsik RYU, Sanghoon OH, Sangho LEEDynamic Response Characteristics of the Base-Isolated Structure for Shake Table TestArchitectural Institute of Korea Vol.26No.04pp.21-302010.4

[12] Sunghoon SONG, Sangho LEEDynamic Response Characteristics of Structure According to using a Seismic Isolation Device [Collections of Excellent Graduation Paper]Architectural Institute of KoreaVol.6No.1pp.353-3562010.4

(7)

発表論文

VI

[13] Sunghoon SONG, Sangho LEE, Sanghoon OH, Hongsik RYU:Shake Table Tests of the Structure According to using a Seismic Isolation System(Ⅰ),Earthquake Engineering Society of Korea-autumn conference,pp.11-15,2009.9

[14] Sunghoon SONG, Sangho LEE, Sanghoon OH, Hongsik RYU:Shake Table Tests of the Structure According to using a Seismic Isolation System(Ⅱ),Earthquake Engineering Society of Korea-autumn conference,pp.17-21,2009.9

[15] Sunghoon SONG, Hongsik RYU, Sanghoon OH, Sangho LEE:Shaking Table Test Plan for Evaluation of the Dynamic Characteristics of Structure According to using a Seismic Isolation System,

Architectural Institute of Korea-RA,Vol.01,No.2008,pp.273-276,2008.12

(8)

第 1 章

序 論

(9)

1 序論

1-1

1.1 研究背景

2011 年度東北地方太平洋沖地震や最近の熊本地震のような都市型地震災害では建物が倒壊し なかった場合でも,多くの建物が様々な損傷により継続使用不可能となった。この稼動停止時間 に原因する経済的損失は被害を受けた建物の修復費用以上になることもある。1981年に導入が始 まった新耐震設計法以降,まれに発生する中小地震に対しては建物が継続使用できること,極め てまれに発生する大地震に対しては建物が倒壊しないことを基本方針として設計が行われていた が,近年の社会的要求はより高い水準へ移行している。その結果,長寿命建築のようにより安全 で経済的な建築に対する需要が増加している。

よって大地震時の安全性の確保に加え,更に大地震後も使用を継続できる長寿命建築を目指す べきである。大地震の発生後において建物を無損傷と設定することも考えられるが,技術的・経 済的に実現可能な範囲として,大地震後に想定される損傷はある程度許容し,適切な補修・補強 を行なって直ちに使用が継続可能な建物を構築することが非常に重要と考える。つまり,極めて まれに発生する地震に対して主架構部材を小規模な補修で納まる程度の損傷に抑えることを目標 にする。

そこで,出来る限り地震時の損傷を低減し,地震後の早期復旧や機能維持を実現する構造形式 が必要となり,このような需要に対して,付着の無いアンボンドPC鋼材をプレキャスト(以下,

「PCa」という)柱及び梁部材に貫通して配筋し,この PC 鋼材に緊張力を導入して両者を圧着 接合するプレキャスト・プレストレストコンクリート(以下,「アンボンドPCaPC」という)構 造が有効な解決案となり得る。アンボンド PCaPC 構造は,圧着面における離間を許容すること で変形を圧着面に集中させ部材の損傷を最小限に留める損傷制御型構造を実現でき,PC 鋼材の 緊張力による高復元性を有するため,地震後の残留変形を抑制できる。更に,損傷・劣化した部 材を比較的簡易に交換できるなど,施工面においても現代のニーズに即した長寿命型建築に適し た構造と言える。

一方,アンボンド PCaPC 構造に関する日本建築学会の規準・指針として「プレストレストコ ンクリート設計施工規準・同解説」[1.1](以下,「PC規準」という)やプレストレスト鉄筋コンク リート(Ⅲ種PC)構造設計・施工指針・同解説」[1.2](以下,「PRC指針」という)等が刊行され た。これらの規準や指針では長期応力に対する許容応力度設計と,大地震動などによる終局強度 設計応力に対する終局強度型設計を行うことを基本としている。しかしながら 1995 年度兵庫県 南部地震の発生を契機として,諸々の構造性能を積極的に実現し,個々の部材及び建物全体の地 震時挙動の制御を可能とする新たな設計手法,即ち性能評価型設計法に関する社会的な要求が増 加した。このような流れを受け,日本建築学会のプレストレストコンクリート構造運営委員会で 20世紀末からPC部材の構造性能評価について検討を進めて来ており,その成果はPC部材終 局性能・設計法小委員会によって20051月に「プレストレスト(鉄筋)コンクリート部材の終 局性能評価手法-考え方の基礎から最前まで-」[1.3]にまとめられた。その後,2007年に国土交通 省告示が改正され,PC造建物の耐震設計に限界耐力計算を適用できるようになり,それまでは床 スラブ等への使用に限られていたアンボンド PCaPC 部材が建物の主要構造部材に利用すること

(10)

1 序論

1-2

が認められた。こうして PC 構造を用いた建物の構造設計には多種多様な様態が認められるよう になったが,所定の性能の発揮の如何を検証するためには,アンボンド PCaPC 部材の構造性能 評価手法の確立が不可欠である。このような背景のもとに,日本建築学会では 「プレストレスト コンクリート造建築物の性能評価型設計施工指針(案)・同解説」[1.4](以下,「PC性能評価指針」

という)を2015年度に刊行した。

以上の規準・指針の発展とともにアンボンドPCaPC構造の使用が増加しつつあるが,1.2で述 べるようにその性能評価型設計法の確立のためのデータは未だ十分とは言えず,耐震構造として 高優位性を有する本構造形式を普及・活用するためには,その部材並びに架構全体の保有耐力や 変形能力をより明らかに把握する必要がある。特に,梁曲げ破壊先行型として設計される本構造 形式において,地震時に架構に必要とされる耐震性能を検証するには,梁部材の荷重-変形関係 における特性点(ひび割れ発生点,部材の曲げ降伏点,曲げ強度点,限界変形点)の耐力及び変 形を適切かつ精緻に評価できる算定法が要求される。

また,近年鉄筋コンクリート(以下,「RC」という)構造の研究[1.5],[1.6]においては,梁曲げ終局 強度に対する柱曲げ終局強度の比,つまり柱梁曲げ強度比が 1.0 に近い場合には接合部せん断余 裕度(梁曲げ破壊時接合部の入力せん断力に対する接合部せん断余裕度の比)が 1.0 より大きい 場合,即ち接合部のせん断破壊に対して十分強く梁曲げ破壊と想定した試験体でも柱梁接合部内 で柱主筋と梁主筋の両方が引張り降伏し最大耐力に達する「接合部曲げ破壊機構」が指摘された。

接合部曲げ破壊が先行するときの最大耐力は梁曲げ終局強度の計算値より低く発揮される場合が 多いため,建物が大変危険になる可能性が高い。しかし,RC構造のように接合部曲げ破壊を想定 したアンボンド PCaPC 架構の研究事例,即ち柱梁曲げ強度比に着目した実験及び研究例は殆ど ない。以上に述べたように,PC構造のうち,PC鋼材とコンクリート間に付着がないアンボンド

PCaPC部材は建物の長寿命化や適応性に大きな可能性を持っているが,実用化のための課題は未

だ多い状態である。

(11)

1 序論

1-3

1.2 研究目的

前述(1.1 研究背景)したように,今後求められる性能評価型設計への移行に向けアンボンド

PCaPC部材の耐震性能を評価する手法が既往の研究成果より提示されつつある。

一方,本構造形式においては PC 鋼材とコンクリートのあいだに付着がないため,多スパンを 通して配筋された PC 鋼材が部材全長に渡って均一に伸び,架構全体での梁材軸方向の変形に適 合するように PC 鋼材のひずみが定まる特徴がある。そのため,PC 鋼材の降伏が発生し難くな り,PC 鋼材の降伏前に梁圧着面近傍のコンクリート圧壊が先行して曲げ終局耐力に達すること が参考文献[1.7]~[1.10]から確認されているが,PC 性能評価指針においてはアンボンド PC鋼材 の引張降伏よりコンクリート圧壊が先行する場合の梁部材における曲げ終局耐力及び変形の算定 法が明記されていない。また,力学的根拠に基づき梁曲げ終局時における PC 鋼材の降伏有無を 判定することや,PC 鋼材の弾性限界到達時における梁部材の曲げ耐力及び変形を精緻に評価す ることも非常に重要なテーマであるが,PC性能評価指針ではこれらの検討がなされていない。よ って,アンボンド PCaPC 架構の地震時挙動を精確に再現すべく架構全体を対象とした力学挙動 を考えた上で,これらの耐力や変形の評価法を明らかにする必要があるが,既往の研究事例[1.11]~

[1.14]では主に梁部材単体を対象としたものが殆どであり,複雑な数値計算を要する手法或いは実

験結果に基づく解析法である。更に,前述した通りアンボンド PCaPC構造形式において RC 造のように接合部曲げ破壊を想定して柱梁曲げ強度比に着目した実験研究も殆どない。

そこで本研究では,柱梁曲げ強度比及びスラブ或いは直交梁の有無を実験変数とし,まずこれ らがアンボンド PCaPC 造十字形柱梁骨組における柱梁接合部及び梁の耐震性能に与える影響を 実験的に検討する。そして,梁曲げ破壊性状が卓越し建物の殆どを占める十字形の柱梁部分架構 を対象に,力学的根拠に立脚した梁曲げ耐力及び変形評価用マクロモデルを構築する。本マクロ モデルでは,アンボンド PCaPC架構全体の梁PC 鋼材位置に生じる梁材軸方向への軸変形量と PC鋼材の全伸び量は等しいという変形の適合条件,梁断面におけるPC鋼材の引張合力とコンク リートの圧縮合力との力の釣り合い条件及び梁圧着面における平面保持の仮定等を用いる。最終 的には,このマクロモデルに基づき複雑な数値計算ではなく簡易な形で梁曲げ終局時の耐力及び 変形のみならず,PC 鋼材弾性限界時の梁曲げ耐力及び変形を実用的かつ精緻に定めることによ り,アンボンドPCaPC梁部材における骨格曲線の評価手法を提案することを主目的とする。

(12)

1 序論

1-4

1.3 既往の研究

アンボンド PCaPC 造十字形柱梁骨組における柱梁接合部を対象とした既往研究は少なく,さ らに本研究で対象としている接合部曲げ破壊に着目した実験研究はほとんどない。したがって,

その接合部曲げ破壊に関する検討に当たり,塩原らが執筆した RC構造における接合部曲げ破壊 に関する研究を大いに参考した。まず1.3.1では,本研究で特に参考にしたRC造柱梁接合部にお ける接合部曲げ破壊に関する既往研究の概要と結果のまとめを示す。次に1.3.2では,アンボンド

PCaPC 架構の梁部材における梁曲げ耐力及び変形評価法に関する代表的な既往の研究事例を紹

介する。

1.3.1 鉄筋コンクリート造柱梁接合部の曲げ破壊

(1)塩原等[1.15]は,鉄筋コンクリート造柱梁接合部の新たな破壊機構を提案した。従来の接合 部は一様なせん断変形を仮定しており,その変形の自由度は 1 自由度(図1.1(a)参照)

であった。しかし1自由度モデルにおいては,接合部の変形を表すパラメータがせん断変 形角一つしかないため,接合部内部の変形と接続する部材端部の変形の連続条件を満たす にはパラメータが不足している。そこで塩原の破壊機構では十字形柱梁部分架構において,

各柱・梁が接合部を含む4部材に分割され,それらが各々で並進及び回転するモデルを提 案した(9自由度モデル,図1.1(b)参照)。そのまとめを以下に示す。

・接合部で破壊が生じる RC造十字形柱梁接合部の破壊過程は①接合部パネルの入隅部 から斜めひび割れの発生,②接合部パネル中央における対角線方向の斜めひび割れの 発生,③接合部の横補強筋の降伏,④梁主筋の降伏,⑤柱主筋の降伏,⑥接合部パネ ル中央におけるコンクリートの圧壊となる(柱梁接合部曲げ破壊,1.2(a)参照)。一 方,梁及び柱の主筋量が多い場合は④あるいは⑤の主筋降伏の過程は経ないで接合部 パネルのコンクリートの圧壊が生じる(柱梁接合部の釣合い破壊,図1.2(b)参照)

・図1.3に示すように2つの接合部類型について,力の釣合い条件と,終局時のコンク リートの破壊条件と鉄筋の降伏条件を考慮して,柱梁接合部の終局モーメント及び釣 合い破壊モーメントの数式解を示した。

(a)1自由度 (b)9自由度 1.1 1自由度及び9自由度モデル

(13)

1 序論

1-5

(a)接合部曲げ破壊 (b)接合部釣合い破壊 1.2 柱梁接合部の曲げ破壊及び釣合い破壊

(a)接合部Ⅰの例 (b)接合部Ⅱの例 1.3 接合部の類型

(2)塩原等による文献[1.16]では,文献[1.15]の9自由度モデルを展開・拡張がした。1.4 ように接続する部材から柱梁接合部に作用する軸力・せん断力などの外部作用力の影響が 考慮できるよう,柱梁接合部の終局モーメント,釣合い破壊モーメント及び釣合い破壊時 の限界補強量に関する理論式を拡張した。更に,柱梁接合部の変形に影響を与える接合部 横補強筋,柱中段筋及び直交梁により生じる受動的拘束力,梁曲げ降伏型で設計された柱 梁接合部における非曲げ降伏部材の曲げ強度の余力等の影響を定量化する方法も提案し た。そのまとめを以下に示す。

・柱梁接合部の終局曲げモーメントは,部材せい,柱・梁の主筋量,鉄筋の材料強度,柱 及び梁主筋の間隔比の影響が主要因子であり,かつ,柱梁接合部に働く軸力や部材端 から接合部に作用するせん断力によっても変動することを示した。

・柱梁接合部の釣合いモーメントは,曲げ終局モーメントと同様に,部材せい,主筋量,

鉄筋の材料強度,柱及び梁主筋の間隔比の影響を受けるが,柱及び梁主筋間隔比が1.0 に近くなると,柱梁接合部を拘束する軸力の影響を受けなくなることが分かった。

・梁曲げ降伏先行型で設計される RC造架構において,柱梁接合部の終局曲げモーメン トは柱の梁に対する曲げ強度の余裕度の増加,接合部内横補強筋量による面内拘束,

直交梁主筋のダウエル効果による面内拘束によっても増大し,柱及び梁から接合部に 作用する軸力と等価な効果を有すると示した。

(14)

1 序論

1-6

1.4 柱梁接合部に働く外力:モーメントMj,軸力Nj,せん断力Vj

(3)塩原等による文献[1.17]は,文献[1.15],[1.16]で提案した柱梁接合部の終局モーメント及 び釣合い破壊モーメントに関する理論式を梁曲げ降伏型 RC 造架構における柱梁接合部 の耐震設計に適用する方法について述べた。柱梁接合部の終局強度の予測法と,柱梁接合 部への損傷集中を防ぐための定量的な設計条件を提案した。そのまとめを以下に示す。

・図 1.5 に示すように柱梁接合部の終局曲げモーメント Mjuと梁危険断面の曲げ終局モ ーメント Mbuに達するときの節点モーメントを比較することにより,柱梁接合部の損 傷集中の判別方法を提案した。接合部損傷増大を防止するためには,柱梁曲げ強度比 と柱及び梁主筋間距離比が主要な要因であり,接合部曲げ破壊が起こる架構の強度は 梁曲げ終局強度に基づき推定した強度を下回ることを示した。

・現行の柱梁接合部の耐震設計法では,柱梁接合部の入力せん断力の制限は規定されて いるが,柱梁曲げ強度比の限界値は規定されていない。しかし,柱梁曲げ強度比が1.0 に近くなるほど,主筋量が増大するほど,柱梁接合部の破壊が起こりやすくなり,か つ,強度低下比(梁曲げ終局強度に対する実際に発揮する強度の比)も小さくなる。

・柱梁接合部の釣合い破壊時の接合部せん断応力度は,現行の基準による柱梁接合部の せん断応力度の制限値とおおむね同じ制限となるが,梁の主筋間隔比が大きい場合に は現行規定より本理論による接合部せん断応力度が少し大きいことが分かった。

(a)梁主筋量と終局モーメントの関係

(15)

1 序論

1-7

(b)2種類の終局モーメント 1.5 柱梁接合部の設計の原理

(4)楠原文雄,塩原等[1.18]は,文献[1.15],[1.16],[1.17]では数式表現の簡略化のため柱と梁 の断面形状,配筋及び外力の対称条件を仮定しており,柱梁接合部に接続する柱と梁のせ いが異なるなど柱と梁の条件が著しく異なる場合の具体的な適用法は示されてない。そこ で本文献では柱と梁断面形状,配筋,作用する応力等が対称ではない場合の接合部終局強 度算定法を示した。提案した算定法では柱梁接合部の曲げモーメント抵抗機構に基づき,

梁,柱及び接合部の設計因子を直接取り込んだ柱梁接合部の終局モーメント及び釣合モー メントの算定式を示した。そのまとめを以下に示す。

・図1.6に示した仮想断面上の応力と外力において,接合部の横補強筋と柱中段筋は複 数の鉄筋の応力をそれぞれの合力として材軸上に作用するものとし,軸力も材軸上に,

せん断力は接合部の中心に作用するものとした。

・実験結果との比較により,同文献で示した算定法は現行の設計法では考慮されていな い柱梁曲げ強度比などの影響を定量的に評価できるものであり,既往の実験データベ ースに対しても適合性が良いことを示した。

(a)鉄筋の応力 (b)コンクリートの応力 1.6 仮想断面に生じる応力

(16)

1 序論

1-8

1.3.2 アンボンドPCaPC梁部材における荷重-変形関係の評価手法

日本建築学会編「プレストレストコンクリート造建築物の性能評価型設計施工指針(案)・同解

説」[1.4](以下,「PC 性能評価指針」という)において,梁の荷重-変形関係(復元力特性)は,

ひび割れ発生や鋼材降伏等,部材の剛性が急変する時点や材料の状態が変化する時点を特性点と して,実際の部材の荷重-変形関係をトレースするようにモデル化した。

なお,PC性能評価指針では図1.74つの特性点,即ち①曲げひび割れ発生点,②部材の曲げ 降伏点,③最大曲げ耐力点,④安全限界点を用いて荷重-変形関係のスケルトンを設定する方法 について示している。これらの点のうち,①~③を用いることにより,架構解析に一般的に用い られる部材の荷重-変形関係(トリリニア型)を設定することが可能となる。日本建築学会編「プ レストレストコンクリート設計施工規準・同解説」[1.1]では前述の各点での耐力については記述が あるものの変形量については記述が無い。上記の各特性点における変形量についても検討してい ることが本指針の特徴である。PC性能評価指針で示す荷重-変形関係の設定法の概略について,

以下に述べる。

曲げひび割れ発生点

曲げひび割れ発生点は弾性理論を用いて定めている。即ち,コンクリートを含む全ての材料 が弾性状態であって,部材全断面が有効である状態を仮定し,引張縁応力がコンクリートの 曲げ引張強度に達する時点を曲げひび割れ発生点と定義する。

部材の曲げ降伏点

PC部材の曲げ降伏点は,RC 部材とは異なり,普通鉄筋の降伏により決定されるとは限ら ない。PC部材では圧縮側コンクリートに大きな圧縮ひずみが作用する場合や,PC 鋼材の 降伏等も部材剛性の低下の要因となる。従って,PC 鋼材量とその配置位置,コンクリート 強度等の条件により,これらの要因の一つ或いは複数が部材の剛性低下に大きな影響を及 ぼすことになるが,これらのどの条件が部材剛性低下を支配するのかを簡易に求めること はできない。従って,本指針では部材の剛性低下点すなわち降伏点が概ね最大曲げ耐力点

(曲げ終局耐力)の90%程度の時点を部材の曲げ降伏点としている。

最大曲げ耐力点(曲げ終局耐力点)

最大曲げ耐力点は,部材断面における力の釣り合いを基本とし,コンクリートの応力をスト レスブロック係数を用いた算定法によって求める。また圧縮側に位置する PC 鋼材の応力 を有効プレストレス(設計時のPC 鋼材の緊張力),引張側に位置するPC 鋼材応力を降伏 応力とし,曲げ終局耐力を計算する最大曲げ耐力点での部材変形を「引張側に位置するPC 鋼材ひずみが降伏ひずみに達する点」と考え,解説中にその算定手法を示している。

(17)

1 序論

1-9

1.7 PC梁部材の荷重-変形関係のモデル化

以上のように,PC性能評価指針では,PC造梁の荷重-変形関係の設定法に対して梁曲げ終局 耐力算定式が提示されているが,アンボンド PC 鋼材の引張降伏よりコンクリートの圧壊が先行 する場合の梁曲げ終局耐力及び変形の算定法が明記されていない。それゆえ,以下に述べるよう に平面保持を仮定した断面解析を用いる等によってアンボンド PCaPC 梁部材における曲げ終局 時の耐力及び変形を推定する既往研究[1.11]~[1.14]が存在する。これらの既往研究の概要と結果を以 下にまとめて示す。

(a)前田・岸本・西山[1.11]は,圧着接合架構の変形が梁圧着面に集中し,その集中程度は PC 鋼材の付着-すべり関係に大きく影響される点に着目してボンドタイプのみならずアン

ボンドPCaPC梁部材にも適用できる解析法を提案したが,この手法は図1.8のように分

割要素法に基づくため,設計実務に適用するには多少煩雑である。

1.8 PC部材を対象とする分割要素モデル

(b)松茂良・越川・菊池[1.12]は,図1.9のようにアンボンドPCaPC梁部材を対象に,梁圧着 面において実験結果に合わせた塑性ヒンジ領域の概念を導入した断面解析法を用い,梁曲 げ終局時の耐力と回転角の算定式を提案した。同筆者らの文献[1.13]ではアンボンド

PCaPC 十字形部分架構を対象としたが,文献[1.12]で提案した断面解析法に基づき,パラ

メトリック解析により得られた係数を用いて梁曲げ終局耐力とそのときの回転角を評価 した。

(18)

1 序論

1-10

(a) 想定部材形状と解析範囲

(b) 変形状態と断面要素

1.9 十字型試験体を想定した断面解析モデル

(c)津田[1.14]は,アンボンドPCaPC 梁部材の曲げ挙動に関する理論的な算定手法を提案した が,図1.10のように梁圧着面からある一定区間までを圧縮応力度の影響範囲と仮定して 梁部材角を算定し,かつせん断補強筋によるコンクリートの圧縮強度の増大及び圧縮応力 度の分布を実験結果及びFEM解析に基づきモデル化した。

かぶりコンクリート圧縮強度時 コア内コンクリート圧縮強度時

(a)クリティカルセクションの圧縮応力度影響範囲の仮定

(19)

1 序論

1-11

(b)緊張材の降伏後のひずみ度算定法

(c)FEM解析モデル

1.10 十字型試験体を想定した断面解析モデル

(20)

1 序論

1-12

1.4 本論文の構成

本論文の構成を図式化して,図1.11に示す。また各章の概要を以下に述べる。

1 序論

本論文の導入章として,研究の背景及び目的を示す。長寿命建築というより安全で経済的な建 築に対する社会的要求を実現するための構造形式の中の一つであるアンボンド PCaPC 構造と関 連規準・指針を説明し,性能評価型設計法を実現すべく,まだなお存在する課題から本論文で解 明すべき点を明らかにする。また本章では,論文の構成と全章の概要を併せて述べるとともに,

本研究と関連する既往の研究を以下の項目別に紹介する。

1.鉄筋コンクリート造柱梁接合部の曲げ破壊

2.アンボンドPCaPC梁部材における荷重-変形関係の評価手法

2 柱梁曲げ強度比を変数としたアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の静的加力実験 RC 構造のように接合部曲げ破壊を想定して柱梁曲げ強度比及び試験体形状を実験変数とした アンボンド PCaPC 十字形柱梁骨組試験体の概要,実験計画,材料試験結果,耐力計算結果及び 実験結果を示し,柱梁接合部の曲げ破壊について実験的に検討する。対象試験体は内柱梁接合部 を想定した平面十字形試験体が2体であり,直交梁無しでスラブのみを取り付けた立体十字形試 験体が1体,直交梁とスラブ付き立体十字形試験体が1体とし,計4体の試験体を製作して正負 交番繰り返し載荷実験を行う。各部材の耐力評価は断面解析と「プレストレストコンクリート造 建築物の性能評価型設計施工指針(案)・同解説」[1.4]及び参考文献[1.18],[1.19]で提示されている評価式 を用いている。予想破壊モードは柱梁曲げ強度比が 2.0 に近い試験体は梁曲げ破壊であり,柱梁 曲げ強度比が1.0に近い試験体では接合部曲げ破壊であるが,現行の梁曲げ耐力評価法[1.2]~[1.4] りですと,梁曲げ破壊になる可能性もある。これらの実験結果に基づき,柱梁曲げ強度比がアン

ボンド PCaPC 造十字形部分架構の破壊モードや耐力に及ぼす影響について詳細に分析し,梁部

材の荷重-変形関係とその特性点,即ちひび割れ発生時,PC鋼材の弾性限界時等との関係につい ても詳しく検討する。

3 梁曲げ破壊するアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の梁部材における力学特性

2 章の実験結果に基づきPC鋼材の降伏以前に梁付け根コンクリートの圧壊が先行する梁部 材の力学特性についてより詳細に把握する。PC鋼材の降伏よりも梁付け根コンクリートの圧壊が 先行する梁部材の荷重-変形関係評価法はまだ確立されていない。よって,第 4章の「十字形柱 梁骨組の梁部材における荷重-変形関係の評価手法」を提案するため,最も重要となる因子,即 ち梁材軸に沿った任意断面での中立軸位置や圧縮縁及び引張縁コンクリートのひずみ分布等を実 験結果から分析する。更に,アンボンドPCaPC部材固有の構造特性を用いてこれらの推定式を理 論的に提案し,その推定値と実験値を比較することにより提案手法の妥当性を検証する。

(21)

1 序論

1-13

4 十字形柱梁骨組の梁部材における荷重-変形関係の評価手法

2章の実験結果及び第3章の検討結果に加え,力学的根拠に立脚した梁曲げ耐力及び変形評 価用マクロモデルを構築し,複雑な数値計算ではなく簡易な形で PC 鋼材弾性限界時及び梁曲げ 終局時の耐力及び変形を定める実用的な評価式を提案する。本マクロモデルでは梁断面の PC 材が上下等量・対称配置されたアンボンド PCaPC 造十字形柱梁骨組を対象としており,架構全 体の梁 PC 鋼材位置に生じる梁材軸方向への軸変形量と PC鋼材の全伸び量は等しいという変形 の適合条件,梁断面における PC 鋼材の引張合力とコンクリートの圧縮合力との力の釣り合い条 件,また梁圧着面における平面保持の仮定等を用いている。最後に,提案した評価手法により求 めた各特性点での梁せん断力及び梁部材角と第2章の実験結果及び既往の実験研究から得られた 実験値との比較を行い,本提案式の妥当性について検証する。

5 結論

本研究から得られた結果を総括するとともに,今後も引き続き検討すべき課題について記術す る。

(22)

1 序論

1-14

1.11 本論文の構成

研究の背景,研究の目的,既往の研究,論文の構成 1章:序論

柱梁曲げ強度比及び試験体形状を実験変数とした十字形柱梁骨組の静的実験結果を用い,

柱梁曲げ強度比がアンボンドPCaPC架構の耐震性能に与える影響及び復元力特性を検討 2章:柱梁曲げ強度比を変数としたアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の静的加力実験

梁曲げ破壊型十字形柱梁骨組の梁材軸に沿った任意断面での中立軸位置及び 圧縮縁コンクリートひずみ分布の推定式を提案

2章及び既往の実験結果を用い,本推定式の妥当性を検討

3章:梁曲げ破壊するアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の梁部材における力学特性

十字形柱梁骨組の梁部材における荷重-変形関係評価用マクロモデル構築 平面十字形柱梁骨組の荷重-変形関係の評価手法提案

(マクロモデル,曲げひび割れ点,PC鋼材弾性限界強度点,梁曲げ終局強度点)

2章及び既往の実験結果を用い,本算定法の適用性及び妥当性を検討 4章:十字形柱梁骨組の梁部材における荷重-変形関係の評価手法

研究のまとめ及び今後の課題 5結論

全試験体とも柱梁曲げ強度比に関わらず,

・最大耐力は梁曲げ終局強度による計算値と概ね対応

・梁の曲げ破壊性状はPC鋼材の降伏以前に梁付け根コ ンクリートの圧壊が先行

・梁材軸に沿った任意断面での中立軸位置の推定式

・梁材軸に沿った任意断面での圧縮縁ひずみの推定式

(23)

1 序論

1-15

[参考文献]

[1.1] 日本建築学会:プレストレストコンクリート設計施工規準・同解説,第4版,1998.11

[1.2] 日本建築学会:プレストレスト鉄筋コンクリート(Ⅲ種PC)構造設計・施工指針・同解説,

2版,2003.2

[1.3] 日本建築学会:プレストレスト(鉄筋)コンクリート部材の終局性能評価手法-考え方の基

礎から最前まで-,2005.1

[1.4] 日本建築学会:プレストレストコンクリート造建築物の性能評価型設計施工指針(案)・同解

説,第1版,2015.2

[1.5] 楠原文雄,塩原等:柱と梁の曲げ強度の比が小さい鉄筋コンクリート造十字形柱梁接合部の

耐震性能,日本建築学会構造系論文集,第75巻,第656号,pp.1873-1882,2010. 10

[1.6] 楠原文雄,塩原等:柱と梁の曲げ強度の比が小さい鉄筋コンクリート造ト字形柱梁接合部の

耐震性能,日本建築学会構造系論文集,第78巻,第693号,pp.1939-1948,2013.11

[1.7] 岸田慎司,北山和宏,森山健作,丸田誠:圧着接合されたプレストレスト・コンクリート十

字形部分架構の復元力特性に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.2,

pp.421-426,2002

[1.8] 山下仁,溝口光男,越川武晃,菊地優:スティールバンドを有するアンボンドPCaPC圧着

接合による柱・梁ト型試験体及び十字型試験体の繰返し載荷実験,日本建築学会大会学術講 演梗概集,構造Ⅳ,pp.865-866,2009.8

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ート工学年次論文集,Vol.30,No.3,pp.511-516,2008

[1.10] キムキョンミン,塩原等,楠原文雄:施工性と修復性の向上を目指したアンボンドPCaPC

十字型部分架構の耐震実験,コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.3,pp.343-348,

2008

[1.11] 前田博司,岸本一蔵,西山峰広:PC鋼材の付着すべりを考慮したプレキャストPC部材の

履歴挙動解析法,コンクリート工学年次論文集,Vol.26,No.2,pp.709-714,2004

[1.12] 松茂良諒,越川武晃,菊池優:アンボンド PCaPC梁部材を対象とした断面解析モデルの

適用性に関する一検証,構造工学論文集,Vol.59B,pp.73-80,2013.3

[1.13] 松茂良諒,越川武晃,菊池優:断面解析モデルを用いたアンボンド PCaPC梁部材の曲げ

終局耐力点評価,日本建築学会構造系論文集,Vol.79,No.701,pp.1005-1013,2014.7

[1.14] 津田和明:アンボンド型プレストレストコンクリート造梁の曲げ挙動算定法に関する研究,

日本建築学会構造系論文集,Vol.80,No.710,pp.659-668,2015.4

[1.15] 塩原等:鉄筋コンクリート柱梁接合部:見逃された破壊機構,日本建築学会構造系論文集,

73 巻,第531 号,pp.1641-1648,2008.9

[1.16] 塩原等:鉄筋コンクリート柱梁接合部:終局強度と部材端力の相互作用,日本建築学会構

造系論文集,第74 巻,第635号,pp.121-128,2009.1

[1.17] 塩原等:鉄筋コンクリート柱梁接合部:梁曲げ降伏型接合部の耐震設計,日本建築学会構

(24)

1 序論

1-16

造系論文集,第74 巻,第640号,pp.1145-1154,2009.6

[1.18] 楠原文雄,塩原等:鉄筋コンクリート造十字形柱梁接合部の終局モーメント算定法,日本

建築学会構造系論文集,Vol.75,No.657,pp.2027-2035,2010.11

[1.19] 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説,第2版,1999.8

(25)

第 2 章

柱梁曲げ強度比を変数としたアンボンド

PCaPC 造十字形柱梁骨組の静的加力実験

(26)

2 柱梁曲げ強度比を変数としたアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の静的加力実験

2-1

2.1 はじめに

近年,RCという鉄筋コンクリート系構造の柱梁接合部に関する研究[2.1]では,柱と梁の曲げ強 度の値が近い場合,すなわち梁曲げ終局強度に対する柱曲げ終局強度の比(以下,「柱梁曲げ強度 比」という)が1.0 に近い場合には,接合部せん断余裕度(梁曲げ破壊時接合部の入力せん断力 に対する接合部せん断終局強度の比)が 1.0 より大きい場合,すなわち接合部のせん断破壊に対 して十分強く梁曲げ破壊と想定した接合部でも,梁の曲げ破壊に先行して柱梁接合部内で柱と梁 の主筋が引張降伏し,変形の増大により接合部パネルのコンクリートが圧壊して最大耐力に達す る接合部曲げ破壊機構(以下,「接合部曲げ破壊」という)が指摘された。これは今までなかった 新たな破壊機構である。また,接合部曲げ破壊が先行する時の最大耐力は梁曲げ終局強度の計算 値より低い場合が多いため,建物が危険な状態になる可能性が高い。

一方,アンボンド PCaPC 構造における柱梁接合部の構造性能については,既往の研究により 明らかにされつつあるが,接合部曲げ破壊を想定した事例,すなわち柱梁曲げ強度比に着目した 実験及び研究例は殆どない。更に,アンボンド PCaPC 部材ではPC 鋼材とコンクリート間に付 着がないため,PC鋼材の圧縮側及び引張側ひずみが等しく伸び,PC鋼材の降伏が生じ難いこと,

有効プレストレス力による部材軸力が生じること等から接合部における構造特性や挙動が RC とは異なる可能性があり,その構造性能については明らかになっているとは言えない。柱梁接合 部の強度および損傷集中の特性は,部材の軸力,柱梁接合部に接続する部材のせん断力,接合部 のせん断補強筋量,通し主筋の付着性能,主筋位置などの影響を受けると考えられる。既往の研 究より柱の圧縮軸力,接合部のせん断筋量による接合部の強度への影響は少なく,最も大きく影 響を与える柱梁曲げ強度比及びスラブ或いは直交梁に注目した。

そこで本章では,柱梁曲げ強度比及びスラブ或いは直交梁の有無を実験変数としたアンボンド

PCaPC造十字形柱梁骨組試験体の静的載加実験を行い,これらの実験変数が本構造における柱梁

接合部及び梁部材の耐震性能に与える影響を実験的に検討した。

(27)

2 柱梁曲げ強度比を変数としたアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の静的加力実験

2-2

2.2 試験体の設計と製作

2.2.1 試験体の設計

各試験体の諸元一覧を表2.1に,各試験体の配筋詳細を図2.1にそれぞれ示す。本研究におけ る試験体は計4体で,内部柱梁接合部を想定した平面十字形試験体が2体であり,直交梁無しで スラブのみを取り付けた立体十字形試験体及び直交梁とスラブ付き立体十字形試験体がそれぞれ 1体である。全試験体共に約1/2 スケールで製作し,RC造柱及びPC造梁の断面形状,架構寸法 は共通で,PC鋼材の付着はないものである。全試験体共に梁幅を250mm,梁せいを400mm,柱

断面を350mm×350mm,柱心から梁支持点までを1600mm,柱芯から上柱加力点及び下柱支持点

までをそれぞれ1415mm,せん断スパン比を3.91(Lo/d = 1425mm/364mm)とした。立体試験体 において,スラブ幅は片側を640mm,スラブ厚さは70mmとした。

試験体PCJ07及びPCJ08は平面十字形で,試験体PCJ07は柱梁曲げ強度比を2.11とし,試

験体PCJ08は柱主筋量を減らして柱梁曲げ強度比を1.32と設定した。試験体PCJ09は柱梁接合

部の挙動に対するスラブの効果を検証すべく,試験体PCJ08に直交梁無しでスラブのみを付加し たものとし,その柱梁曲げ強度比は1.19である。試験体PCJ10は試験体PCJ08に直交梁とスラ ブを付加したもので,その柱梁曲げ強度比は試験体PCJ09と同値(1.19)である。

一方,接合部せん断余裕度(梁曲げ終局時接合部の入力せん断力に対する接合部せん断終局強

[2.2],[2.6]の比)は全試験体共に1.3以上とした。以上より,試験体PCJ07の予想破壊モードは梁

曲げ破壊である。試験体PCJ08からPCJ10においても現行の梁曲げ理論によれば梁曲げ破壊と 予想されるが,RC 構造における柱梁曲げ強度比と接合部曲げ破壊との関係[2.1]がアンボンド

PCaPC 構造においても成り立つとすると,その破壊モードは接合部曲げ破壊になる可能性もあ

る。

なお,柱曲げ終局強度は平面保持を仮定した断面解析により計算し,コンクリート圧縮縁ひず

みが0.003に到達するときを曲げ終局状態とした。梁曲げ終局強度はひずみ適合係数を0.1[2.3],[2.4]

とした断面解析により算出した。ここでひずみ適合係数とは,梁断面における PC 鋼材位置での コンクリートひずみに対するPC鋼材の伸びひずみの比であり,PC鋼材とコンクリート間の付着 程度の影響を間接的に評価できる指標である。また,柱梁接合部の曲げ終局強度(スラブ筋の引 張力は梁主筋量に加算)は文献[2.5],柱梁接合部せん断終局強度は文献[2.6]及び[2.7]に基づき算 定した。

図 1.10  十字型試験体を想定した断面解析モデル
図 2.2  加力装置

参照

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